JP7195798B2 - グラフト共重合体の製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、グラフト共重合体および熱可塑性樹脂組成物に関する。
アクリル系樹脂を成形した成形品は透明性や耐候性に優れており、幅広い用途に使用されているが、耐衝撃性が低いという問題がある。
耐衝撃性を高める方法として、アクリル系樹脂にグラフト共重合体を配合することが知られている。例えば、特許文献1には、シリコーン系共重合体にメチルメタクリレートがグラフト重合したグラフト共重合体と、アクリル系樹脂とを含む組成物が開示されている。
特表2004-529992号公報
しかしながら、特許文献1に記載の技術は耐衝撃性の改良効果はあるものの、特許文献1に記載の組成物から得られる成形品は耐候性や発色性を十分に満足していない。また、温水に曝される白化することがある。
本発明は、耐候性、耐温水白化性、耐衝撃性、および発色性に優れる成形品が得られる熱可塑性樹脂組成物と、該熱可塑性樹脂組成物の材料として好適なグラフト共重合体を提供することを目的とする。
本発明者らは鋭意検討した結果、特定量のポリオルガノシロキサンとアルキル(メタ)アクリレート系重合体とが複合した複合ゴム状重合体を用いたグラフト共重合体において、複合ゴム状重合体の体積平均粒子径と粒子径分布を特定したグラフト共重合体を用いれば、上記の課題を解消できることを見出し、本発明に到達した。
すなわち、本発明は以下の態様を包含する。
[1] ポリオルガノシロキサンとアルキル(メタ)アクリレート系重合体とが複合した複合ゴム状重合体に、1種以上のビニル系単量体がグラフト重合したグラフト共重合体であって、
前記ポリオルガノシロキサンと前記アルキル(メタ)アクリレート系重合体との合計を100質量%としたときに、前記ポリオルガノシロキサンの割合が4~14質量%であり、
前記複合ゴム状重合体の体積平均粒子径が240nmを超えて360nm以下であり、かつ前記複合ゴム状重合体の全粒子中に占める、粒子径が300~800nmである粒子の割合が7.5~25体積%である、グラフト共重合体。
[2] 前記複合ゴム状重合体の全粒子中に占める、粒子径が600nm以上である粒子の割合が5体積%以下である、[1]に記載のグラフト共重合体。
[3] [1]または[2]に記載のグラフト共重合体と、アクリル系樹脂とを含有する、熱可塑性樹脂組成物。
本発明のグラフト共重合体は、耐候性、耐温水白化性、耐衝撃性、および発色性に優れる成形品が得られる熱可塑性樹脂組成物の材料として好適である。
また、本発明の熱可塑性樹脂組成物によれば、耐候性、耐温水白化性、耐衝撃性、および発色性に優れる成形品が得られる。
以下、本発明を詳細に説明する。
なお、以下の説明において、「成形品」とは、本発明の熱可塑性樹脂組成物を成形してなるものである。
「(メタ)アクリレート」とは、「アクリレート」および「メタクリレート」の総称である。
「(メタ)アクリル酸」とは、「アクリル酸」および「メタクリル酸」の総称である。
「(メタ)アクリル系モノマー」とは、「アクリル系モノマー」および「メタクリル系モノマー」の総称である。
「グラフト共重合体」
本発明のグラフト共重合体(E)は、ポリオルガノシロキサン(A)とアルキル(メタ)アクリレート系重合体(B)とが複合した複合ゴム状重合体(C)に、1種以上のビニル系単量体(d)がグラフト重合した共重合体である。
なお、グラフト共重合体(E)においては、複合ゴム状重合体(C)に1種以上のビニル系単量体(d)がどのように重合しているか特定することは困難である。すなわち、グラフト共重合体(E)をその構造または特性により直接特定することが不可能であるか、またはおよそ実際的ではないという事情(不可能・非実際的事情)が存在する。したがって、グラフト共重合体(E)は「複合ゴム状重合体(C)に1種以上のビニル系単量体(d)がグラフト重合した」と規定することがより適切とされる。
<ポリオルガノシロキサン(A)>
複合ゴム状重合体(C)を構成するポリオルガノシロキサン(A)としては特に制限されないが、ビニル重合性官能基を含有するポリオルガノシロキサン(ビニル重合性官能基含有ポリオルガノシロキサン)が好ましく、ビニル重合性官能基含有シロキサン単位と、ジメチルシロキサン単位とを有するポリオルガノシロキサンがより好ましい。
ビニル重合性官能基としては、例えば、メタクリロイルオキシアルキル基、アクリロイルオキシアルキル基、ビニル基、ビニル置換フェニル基等が挙げられる。メタクリロイルオキシアルキル基、アクリロイルオキシアルキル基におけるアルキル基の炭素数は、例えば1~12であってよい。
ビニル重合性官能基含有シロキサン単位は、ビニル重合性官能基以外の他の有機基を有していてもよい。他の有機基としては、例えばメチル基等のアルキル基、フェニル基等が挙げられる。
ビニル重合性官能基含有シロキサン単位の含有量は、ポリオルガノシロキサン(A)を構成する全単位の総モル数(100モル%)に対し、0.3~3モル%が好ましい。ビニル重合性官能基含有シロキサン単位の含有量が上記範囲内であれば、ポリオルガノシロキサン(A)とアルキル(メタ)アクリレート系重合体(B)とが十分に複合化し、成形品の表面においてポリオルガノシロキサン(A)がブリードアウトしにくくなる。よって、成形品の表面外観が向上し、耐衝撃性もより向上する。
ポリオルガノシロキサン(A)としては、成形品の表面外観が良好となり、発色性もさらに良好となることから、3個以上のシロキサン結合を有するケイ素原子の含有量が、ポリオルガノシロキサン(A)中の全ケイ素原子の総モル数(100モル%)に対し、0~1モル%であるものが好ましい。
ポリオルガノシロキサン(A)の好ましい一態様として、ビニル重合性官能基含有シロキサン単位0.3~3モル%と、ジメチルシロキサン単位99.7~97モル%(ただし、ビニル重合性官能基含有シロキサン単位とジメチルシロキサン単位の合計を100モル%とする。)とからなり、3個以上のシロキサン結合を有するケイ素原子の含有量が、ポリオルガノシロキサン(A)中の全ケイ素原子の総モル数に対して1モル%以下であるポリオルガノシロキサンが挙げられる。
ポリオルガノシロキサン(A)の平均粒子径は特に制限されないが、成形品の表面外観が良好となり、耐衝撃性もさらに良好となることから、400nm以下が好ましく、150nm以下がより好ましい。ポリオルガノシロキサン(A)の平均粒子径は、20nm以上が好ましい。
ここで、ポリオルガノシロキサン(A)の平均粒子径は、動的光散乱方式の粒度分布測定器を用いて質量基準の粒子径分布を測定し、得られた粒子径分布より算出される値(質量平均粒子径)である。
(ポリオルガノシロキサン(A)の製造方法)
ポリオルガノシロキサン(A)は、例えばジメチルシロキサンと、ビニル重合性官能基含有シロキサンとを含むシロキサン混合物を重合することで得られる。
ジメチルシロキサンとしては、3員環以上のジメチルシロキサン系環状体が好ましく、3~7員環のジメチルシロキサン系環状体がより好ましい。具体的には、ヘキサメチルシクロトリシロキサン、オクタメチルシクロテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、ドデカメチルシクロヘキサシロキサンなどが挙げられる。これらジメチルシロキサンは、1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
ビニル重合性官能基含有シロキサンとしては、ビニル重合性官能基を含有し、かつ、ジメチルシロキサンとシロキサン結合を介して結合し得るものであれば特に制限されないが、ジメチルシロキサンとの反応性を考慮すると、ビニル重合性官能基を含有する各種アルコキシシラン化合物が好適である。
ビニル重合性官能基を含有するアルコキシシラン化合物として具体的には、β-メタクリロイルオキシエチルジメトキシメチルシラン、γ-メタクリロイルオキシプロピルジメトキシメチルシラン、γ-メタクリロイルオキシプロピルメトキシジメチルシラン、γ-メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、γ-メタクリロイルオキシプロピルエトキシジエチルシラン、γ-メタクリロイルオキシプロピルジエトキシメチルシラン、δ-メタクリロイルオキシブチルジエトキシメチルシラン等のメタクリロイルオキシシロキサン;テトラメチルテトラビニルシクロテトラシロキサン等のビニルシロキサン;p-ビニルフェニルジメトキシメチルシラン、γ-メルカプトプロピルジメトキシメチルシラン、γ-メルカプトプロピルトリメトキシシラン等のメルカプトシロキサンなどが挙げられる。これらビニル重合性官能基含有シロキサンは、1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
シロキサン混合物の重合の方法としては特に制限されないが、乳化重合が好ましい。乳化重合は、通常、乳化剤と水と酸触媒とを用いて行われる。
乳化剤としてはアニオン系乳化剤が好ましい。具体的には、アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ラウリルスルホン酸ナトリウム、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル硫酸エステルナトリウムなどが挙げられる。これらの中でも、アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ラウリルスルホン酸ナトリウム等のスルホン酸系の乳化剤が好ましい。これら乳化剤は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
乳化剤の使用量は、シロキサン混合物100質量部に対して0.05~5質量部が好ましい。乳化剤の使用量が0.05質量部以上であれば、シロキサン混合物の分散状態が安定しやすく、微小な粒子径の乳化状態を保持しやすくなる。一方、乳化剤の使用量が5質量部以下であれば、乳化剤に起因する成形品の着色を抑制できる。
酸触媒としては、スルホン酸類(例えば脂肪族スルホン酸、脂肪族置換ベンゼンスルホン酸、脂肪族置換ナフタレンスルホン酸など)等の有機酸触媒;鉱酸類(例えば硫酸、塩酸、硝酸など)等の無機酸触媒などが挙げられる。これら酸触媒は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
これらの中でも、後述するシロキサンラテックス(a)のラテックスの安定化作用にも優れている点で、脂肪族置換ベンゼンスルホン酸が好ましく、n-ドデシルベンゼンスルホン酸が特に好ましい。また、n-ドデシルベンゼンスルホン酸と硫酸等の鉱酸とを併用すると、ポリオルガノシロキサン(A)の製造に用いた乳化剤の色が成形品の色に与える影響を小さく抑えることができる。
酸触媒の添加量は適宜決めればよいが、通常、シロキサン混合物100質量部に対して0.1~20質量部程度である。
酸触媒の混合は、シロキサン混合物と乳化剤と水とを混合するタイミングで行ってもよいし、シロキサン混合物に乳化剤と水とを添加して乳化させラテックス(シロキサンラテックス(a))とし、これを微粒子化した後でもよい。
得られるポリオルガノシロキサン(A)の粒子径を制御しやすいことから、シロキサンラテックス(a)を微粒子化した後に、微粒子化したシロキサンラテックス(a)と酸触媒とを混合することが好ましい。特に、微粒子化したシロキサンラテックス(a)を酸触媒水溶液中に一定速度で滴下することが好ましい。
なお、酸触媒をシロキサン混合物と乳化剤と水とを混合するタイミングで混合する場合は、これらを混合した後に微粒子化することが好ましい。
シロキサンラテックス(a)は、例えば高速回転による剪断力で微粒子化するホモミキサーや、高圧発生機による噴出力で微粒子化するホモジナイザー等を使用することで微粒子化できる。
シロキサン混合物と乳化剤と水と酸触媒とを混合する方法や、微粒子化したシロキサンラテックス(a)と酸触媒とを混合する方法としては、例えば高速攪拌による混合、ホモジナイザー等の高圧乳化装置による混合などが挙げられる。中でも、ホモジナイザーを使用した方法は、ポリオルガノシロキサン(A)の粒子径の分布を小さくできるので好適である。
重合温度は、50℃以上が好ましく、80℃以上が好ましい。
なお、微粒子化したシロキサンラテックス(a)を酸触媒水溶液中に滴下する場合、酸触媒水溶液の温度は50℃以上が好ましく、80℃以上が好ましい。
重合時間は、シロキサン混合物と乳化剤と水とを混合するタイミングで酸触媒を混合する場合は、2時間以上が好ましく、5時間以上がさらに好ましい。一方、微粒子化したシロキサンラテックス(a)と酸触媒とを混合する場合は、微粒子化したシロキサンラテックス(a)を酸触媒水溶液中に滴下した後、1時間程度保持することが好ましい。
重合の停止は、反応液を冷却した後、反応液の25℃におけるpHが6~8程度になるように水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウムなどのアルカリ性物質で反応液を中和することによって行うことができる。
上記のようにして、ポリオルガノシロキサン(A)のラテックスが得られる。
ポリオルガノシロキサン(A)の平均粒子径は、シロキサン混合物の組成、酸触媒の使用量(酸触媒水溶液中の酸触媒の含有量)、重合温度などを調整することで制御できる。例えば、酸触媒の使用量が少なくなるほど平均粒子径は大きくなる傾向にあり、重合温度が高くなるほど平均粒子径は小さくなる傾向にある。
<アルキル(メタ)アクリレート系重合体(B)>
複合ゴム状重合体(C)を構成する(メタ)アクリレート系重合体(B)は、アルキル(メタ)アクリレート単量体を1種以上含む単量体成分を重合して得られるものである。すなわち、(メタ)アクリレート系重合体(B)は、1種以上のアルキル(メタ)アクリレート単量体単位を有する重合体である。
この単量体成分には、アルキル(メタ)アクリレート単量体以外の単量体(他の単量体)が含まれていてもよい。すなわち、(メタ)アクリレート系重合体(B)は、他の単量体単位をさらに有していてもよい。
アルキル(メタ)アクリレート単量体としては、例えばアクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n-プロピル、アクリル酸n-ブチル、アクリル酸2-エチルヘキシル等のアクリル酸アルキルエステル;メタクリル酸ヘキシル、メタクリル酸2-エチルヘキシル、メタクリル酸n-ラウリル等のメタクリル酸アルキルエステルなどが挙げられる。これらアルキル(メタ)アクリレート単量体は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。中でも、成形品の耐衝撃性がより向上する点で、アクリル酸n-ブチルが好ましい。
単量体成分の総質量に対するアルキル(メタ)アクリレート単量体の割合は、80~100質量%が好ましく、90~100質量%がより好ましい。すなわち、アルキル(メタ)アクリレート系重合体(B)中のアルキル(メタ)アクリレート単量体単位の含有量は、全単量体単位の総質量に対して、80~100質量%が好ましく、90~100質量%がより好ましい。
他の単量体としては、アルキル(メタ)アクリレート単量体と共重合可能であれば特に制限されないが、芳香族ビニル化合物(例えばスチレン、α-メチルスチレン、p-メチルスチレン等)、シアン化ビニル化合物(例えばアクリロニトリル、メタクリロニトリル等)などが挙げられる。これら他の単量体は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
アルキル(メタ)アクリレート系重合体(B)の製造方法は特に制限されず、公知の方法に従って行うことができる。
<複合ゴム状重合体(C)>
複合ゴム状重合体(C)は、ポリオルガノシロキサン(A)とアルキル(メタ)アクリレート系重合体(B)とが複合した複合ゴムである。
複合ゴム状重合体(C)におけるポリオルガノシロキサン(A)とアルキル(メタ)アクリレート系重合体(B)との比率は、成形品の耐衝撃性と耐温水白化性のバランスが優れたものとなることから、ポリオルガノシロキサン(A)とアルキル(メタ)アクリレート系重合体(B)との合計を100質量%としたときに、ポリオルガノシロキサン(A)の割合が4~14質量%となる比率である。特に、ポリオルガノシロキサン(A)の割合が、4質量%以上であると成形品の耐衝撃性が優れ、14質量%以下であると成形品の発色性が優れる。
複合ゴム状重合体(C)の体積平均粒子径は240nmを超えて360nm以下であり、240nmを超えて300nm以下が好ましい。体積平均粒子径が240nmを超えていると、成形品の耐衝撃性、耐候性および耐温水白化性が優れる。体積平均粒子径が360nm以下であると、成形品の耐候性が優れる。
ここで、複合ゴム状重合体(C)の体積平均粒子径は、動的光散乱方式の粒度分布測定器を用いて複合ゴム状重合体(C)の体積基準の粒子径分布を測定し、得られた粒子径分布より算出される値である。
複合ゴム状重合体(C)の全粒子中に占める、粒子径が300~800nmである粒子の割合は7.5~25体積%である。すなわち、複合ゴム状重合体(C)は、粒子径が300~800nmである粒子が全粒子中に7.5~25体積%の割合を占める粒子径分布(体積基準)を有する。粒子径が300~800nmである粒子の割合が7.5体積%以上であると成形品の耐候性、および耐温水白化性が優れ、25体積%以下であると成形品の耐候性が優れる。成形品の耐衝撃性と耐候性のバランスがより良好なものとなることから、粒子径が300~800nmである粒子の割合は7.5~15体積%が好ましい。
また、複合ゴム状重合体(C)の全粒子中に占める、粒子径が600nm以上である粒子の割合は、成形品の耐衝撃性と耐候性のバランスがさらに良好なものとなる点から、5体積%以下が好ましく、3体積%以下がより好ましく、1体積%以下がさらに好ましい。
ここで、粒子径が300~800nmである粒子の割合、粒子径が600nm以上である粒子の割合はそれぞれ、動的光散乱方式の粒度分布測定器を用いて複合ゴム状重合体(C)の体積基準の粒子径分布を測定し、得られた粒子径分布より算出される値である。
(複合ゴム状重合体(C)の製造方法)
複合ゴム状重合体(C)の製造方法は特に制限されないが、ポリオルガノシロキサン(A)とアルキル(メタ)アクリレート系重合体(B)を各々含む複数のラテックスをヘテロ凝集もしくは共肥大化する方法;ポリオルガノシロキサン(A)およびアルキル(メタ)アクリレート系重合体(B)のいずれか一方を含むラテックス存在下で、他の一方の重合体を形成する単量体成分を重合させて複合化させる方法などが挙げられる。
特に複合ゴム状重合体(C)の体積平均粒子径および粒子径分布を上述した範囲内となるように容易に調整できることから、ラテックス状のポリオルガノシロキサン(A)の存在下で、アルキル(メタ)アクリレート単量体を1種以上含む単量体成分をラジカル重合させて共重合体ラテックスを得た後(ラジカル重合工程)、前記共重合体ラテックスと酸基含有共重合体ラテックスとを混合することにより、共重合体ラテックスを肥大化させる(肥大化工程)方法が好ましい。さらに、ラジカル重合工程の後、肥大化工程の前に、共重合体ラテックスに縮合酸塩を添加すること(縮合酸塩添加工程)が好ましい。
ラジカル重合工程:
ラジカル重合工程は、ラテックス状のポリオルガノシロキサン(A)の存在下で、アルキル(メタ)アクリレート単量体を1種以上含む単量体成分をラジカル重合する工程である。
アルキル(メタ)アクリレート単量体を1種以上含む単量体成分は、ラテックス状のポリオルガノシロキサン(A)に一括して添加してもよいし、連続的に、あるいは断続的に添加してもよい。
アルキル(メタ)アクリレート単量体を1種以上含む単量体成分をラジカル重合させる際には、必要に応じてグラフト交叉剤や架橋剤を用いてもよい。
グラフト交叉剤または架橋剤としては、例えばメタクリル酸アリル、シアヌル酸トリアリル、イソシアヌル酸トリアリル、ジビニルベンゼン、ジメタクリル酸エチレングリコールジエステル、ジメタクリル酸プロピレングリコールジエステル、ジメタクリル酸1,3-ブチレングリコールジエステル、ジメタクリル酸1,4-ブチレングリコールジエステルなどが挙げられる。これらは、1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
ラジカル重合には、通常、ラジカル重合剤および乳化剤を用いる。
ラジカル重合開始剤としては、過酸化物、アゾ系開始剤、酸化剤と還元剤とを組み合わせたレドックス系開始剤などが挙げられる。これらの中では、レドックス系開始剤が好ましく、特に硫酸第一鉄とエチレンジアミン四酢酸二ナトリウム塩とナトリウムホルムアルデヒドスルホキシレートとハイドロパーオキサイドとを組み合わせたスルホキシレート系開始剤が好ましい。
乳化剤としては特に制限されないが、ラジカル重合時のラテックスの安定性に優れ、重合率を高められることから、サルコシン酸ナトリウム、脂肪酸カリウム、脂肪酸ナトリウム、アルケニルコハク酸ジカリウム、ロジン酸石鹸等の各種カルボン酸塩が好ましい。これらの中では、得られるグラフト共重合体(E)およびこれを含む熱可塑性樹脂組成物を高温成形した際にガス発生を抑制できることから、アルケニルコハク酸ジカリウムが好ましい。
重合条件は、例えば重合開始温度が40~70℃で、重合開始から終了までの時間が0.5~3.0時間であってよい。
縮合酸塩添加工程:
縮合酸塩添加工程は、ラジカル重合工程で得られた共重合体ラテックスに縮合酸塩を添加する工程である。肥大化工程に先立ち、共重合体ラテックスに縮合酸塩を添加しておくことで、肥大化が進行し易くなることで酸基含有共重合体ラテックスの添加量を減らすことが可能となり、複合ゴム状重合体(C)の体積平均粒子径および粒子径分布を上述した範囲内に調整することが容易になる。
縮合酸塩としては、例えばリン酸、ケイ酸等の縮合酸と、アルカリ金属および/またはアルカリ土類金属との塩が用いられる。これらの中でも、リン酸の縮合酸であるピロリン酸とアルカリ金属の塩が好ましく、ピロリン酸ナトリウムまたはピロリン酸カリウムが特に好ましい。
縮合酸塩の添加量は、複合ゴム状重合体(C)の体積平均粒子径および粒子径分布が上述した範囲内となるように調整すればよいが、通常は、ラジカル重合工程にて得られる共重合体ラテックスの固形分100質量部に対し、0.1~5質量部とすることが好ましく、0.3~3質量部がより好ましい。縮合酸塩の添加量が0.1質量部以上であれば肥大化が十分に進行し、5質量部以下であれば肥大化が十分に進行する、あるいはゴムラテックスが安定化しやすく、多量の凝塊物が発生するのを抑制できる。
縮合酸塩は、共重合体ラテックスに一括して添加することが好ましい。
縮合酸塩が添加された共重合体ラテックス(共重合体ラテックスと縮合酸塩との混合物)の25℃におけるpHは7以上であることが好ましい。pHが7以上であれば肥大化が十分に進行しやすくなる。pHを7以上とするために、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどの一般的なアルカリ化合物を使用することができる。
肥大化工程:
肥大化工程は、ラジカル重合工程にて得られ、必要に応じて縮合酸塩添加工程にて縮合酸塩が添加された共重合体ラテックスと、酸基含有共重合体ラテックスとを混合することにより、共重合体ラテックスを肥大化させる工程である。これにより、複合ゴム状重合体(C)のラテックスが得られる。
肥大化工程に用いる酸基含有共重合体ラテックスは、水中にて、酸基含有単量体、アルキル(メタ)アクリレート単量体、および必要に応じてこれらと共重合可能な他の単量体を含む単量体成分を重合して得られる酸基含有共重合体のラテックスである。
酸基含有単量体としては、カルボキシ基を有する不飽和化合物が好ましい。カルボキシ基を有する不飽和化合物としては、(メタ)アクリル酸、イタコン酸、クロトン酸などが挙げられ、(メタ)アクリル酸が特に好ましい。これら酸基含有単量体は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
アルキル(メタ)アクリレート単量体としては、(メタ)アクリル酸と、炭素数1~12の直鎖または分岐のアルキル基を有するアルコールとのエステルが挙げられ、例えばアクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸n-ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸t-ブチル、アクリル酸2-エチルヘキシル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸n-ブチル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸t-ブチル、メタクリル酸2-エチルヘキシルなどが挙げられる。これらの中でも、炭素数1~8のアルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレートが特に好ましい。これらアルキル(メタ)アクリレート単量体は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
他の単量体は、酸基含有単量体およびアルキル(メタ)アクリレート単量体と共重合可能な単量体であり、かつ酸基含有単量体およびアルキル(メタ)アクリレート単量体以外の単量体である。
他の単量体としては、芳香族ビニル化合物(例えばスチレン、α-メチルスチレン、p-メチルスチレン等)、シアン化ビニル化合物(例えばアクリロニトリル、メタクリロニトリル等)、2つ以上の重合性官能基を有する化合物(例えばメタクリル酸アリル、ジメタクリル酸ポリエチレングリコールエステル、シアヌル酸トリアリル、イソシアヌル酸トリアリル、トリメリット酸トリアリル等)などが挙げられる。これら他の単量体は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
これら単量体の使用量としては、酸基含有共重合体を構成する全単量体単位の総質量(100質量%)に対して、酸基含有単量体単位の含有量が5~40質量%となる量、アルキル(メタ)アクリレート単量体単位の含有量が60~95質量%となる量、他の単量体単位の含有量が0~48質量%となる量が好ましく、酸基含有単量体単位の含有量が8~30質量%となる量、アルキル(メタ)アクリレート単量体単位の含有量が70~92質量%となる量、他の単量体単位の含有量が0~30質量%となる量がより好ましい。酸基含有単量体単位の含有量が5質量%以上、アルキル(メタ)アクリレート単量体単位の含有量が95質量%以下であれば、十分な肥大化能力が得られる。また、酸基含有単量体単位の含有量が40質量%以下、アルキル(メタ)アクリレート単量体単位の含有量が60質量%以上であれば、酸基含有共重合体ラテックス製造の際に多量の凝塊物が生成するのを抑制できる。また、他の単量体単位の含有量が48質量%以下であれば、得られる酸基含有共重合体ラテックスが十分な肥大化能力を有することができる。
酸基含有共重合体ラテックスは一般的な乳化重合法により製造することができる。
乳化重合で使用される乳化剤としては、オレイン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ロジン酸のアルカリ金属塩、アルケニルコハク酸のアルカリ金属塩等で例示されるカルボン酸系の乳化剤;アルキル硫酸エステル、アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム、アルキルスルホコハク酸ナトリウム、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル硫酸エステルナトリウム等の中から選ばれたアニオン系乳化剤など、公知の乳化剤が挙げられる。これら乳化剤は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
乳化剤は、重合初期に全量を一括して添加してもよいし、連続的に、あるいは断続的に添加してもよい。乳化剤量やその使用方法によっては、酸基含有共重合体ラテックスの粒子径を、ひいては肥大化された複合ゴム状重合体(C)ラテックスの粒子径に影響を及ぼす場合があるため、適正な量および使用方法を選択することが好ましい。
乳化重合に用いる重合開始剤としては、熱分解型開始剤やレドックス型開始剤などが挙げられる。熱分解型開始剤としては、過硫酸カリウム、過硫酸ナトリウム、過硫酸アンモニウムなどが挙げられる。レドックス型開始剤としては、クメンハイドロパーオキシドに代表される有機過酸化物-ナトリウムホルムアルデヒドスルホキシレート-鉄塩等の組み合わせが例示される。これら重合開始剤は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
乳化重合の際には、分子量を調整するためにメルカプタン類(例えばt-ドデシルメルカプタン、n-オクチルメルカプタン等)、テルピノレン、α-メチルスチレンダイマー等の連鎖移動剤を使用したり、pHを調節するためにアルカリや酸、減粘剤として電解質を添加したりすることもできる。
肥大化工程における酸基含有共重合体ラテックスの添加量(固形分換算量)は、複合ゴム状重合体(C)の体積平均粒子径および粒子径分布が上述した範囲内となるように調整すればよいが、通常はラジカル重合工程にて得られる共重合体ラテックスの固形分100質量部に対し、0.1~5質量部が好ましく、0.3~3質量部がより好ましい。酸基含有共重合体ラテックスの添加量が0.1質量部以上であれば、肥大化が十分に進行する。また、凝塊物が多量に発生するのを抑制できる。酸基含有共重合体ラテックスの添加量が5質量部以下であれば、肥大化ラテックスのpHが低下するのを抑制でき、ラテックスが不安定になりにくい。
酸基含有共重合体ラテックスは、共重合体ラテックスに一括して添加してもよいし、滴下により連続的または断続的に添加してもよい。
肥大化時の攪拌は適度に制御することが好ましい。攪拌が不十分な場合には、局部的に肥大化が進行することにより未肥大のゴム状重合体が残留することがある。一方、過度に攪拌を行うと、肥大化ラテックスが不安定になり、凝塊物が多量に発生することがある。
肥大化を行う際の温度は特に制限されないが、20~90℃が好ましく、30~80℃がより好ましい。温度がこの範囲外であると、肥大化が十分に進行しない場合がある。
なお、複合ゴム状重合体(C)は、上記のように酸基含有共重合体ラテックスを用いて肥大化した後、アルキル(メタ)アクリレート単量体を1種以上含む単量体成分をさらに添加して重合させることにより製造してもよい。
<ビニル系単量体(d)>
ビニル系単量体(d)としては特に制限されないが、芳香族ビニル化合物、(メタ)アクリル酸アルキルエステル、シアン化ビニル化合物などが好ましい。
芳香族ビニル化合物としては、例えばスチレン、α-メチルスチレン、p-メチルスチレンなどが挙げられる。
(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、例えばメタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸2-エチルヘキシル、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n-ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸t-ブチルなどが挙げられる。
シアン化ビニル化合物としては、例えばアクリロニトリル、メタクリロニトリルなどが挙げられる。
これらの中でも、成形品の耐衝撃性がより向上することから、スチレンとアクリロニトリルとを併用することが好ましい。
<グラフト共重合体(E)の製造方法>
グラフト共重合体(E)は、複合ゴム状重合体(C)に1種以上のビニル系単量体(d)をグラフト重合して得られる。
グラフト重合を行う方法としては特に制限されないが、反応が安定して進行するように制御可能であることから乳化重合が好ましい。具体的には、複合ゴム状重合体(C)のラテックスに1種以上のビニル系単量体(d)を一括して仕込んだ後に重合する方法;複合ゴム状重合体(C)のラテックスに1種以上のビニル系単量体(d)の一部を先に仕込み、随時重合させながら残りを重合系に滴下する方法;複合ゴム状重合体(C)のラテックスに1種以上のビニル系単量体(d)の全量を滴下しながら随時重合する方法などが挙げられ、これらを1段ないしは2段以上に分けて行うことができる。2段以上に分けて行う場合、各段における1種以上のビニル系単量体(d)の種類や組成比を変えて行うことも可能である。
複合ゴム状重合体(C)と1種以上のビニル系単量体(d)の質量比は特に制限されないが、成形品の耐衝撃性と耐候性とのバランスがより良好なものとなることから、複合ゴム状重合体(C)を10~80質量%、1種以上のビニル系単量体(d)を20~90質量%とすることが好ましく、複合ゴム状重合体(C)を30~70質量%、1種以上のビニル系単量体(d)を30~70質量%とすることが特に好ましい(ただし、複合ゴム状重合体(C)と1種以上のビニル系単量体(d)の合計を100質量%とする。)。かかる質量比でグラフト重合すると、成形品の耐衝撃性と耐候性がより優れたものとなる。
グラフト重合には、通常、ラジカル重合開始剤および乳化剤を用いる。これらラジカル重合開始剤および乳化剤としては、複合ゴム状重合体(C)の製造方法の説明において先に例示したラジカル重合開始剤および乳化剤などが挙げられる。
また、ラジカル重合を行う際には、得られるグラフト共重合体(E)の分子量やグラフト率を制御するため、各種公知の連鎖移動剤を添加してもよい。
重合条件は、例えば重合開始温度が60~90℃で、重合開始から終了までの時間が2.0~5.0時間であってよい。
乳化重合で得られるグラフト共重合体(E)は、通常、ラテックスの状態で得られる。
グラフト共重合体(E)のラテックスからグラフト共重合体(E)を回収する方法としては、例えばグラフト共重合体(E)のラテックスを、凝固剤を溶解させた熱水中に投入することによってスラリー状に凝析する湿式法;加熱雰囲気中にグラフト共重合体(E)のラテックスを噴霧することによって半直接的にグラフト共重合体(E)を回収するスプレードライ法などが挙げられる。
湿式法に用いる凝固剤としては、硫酸、塩酸、リン酸、硝酸等の無機酸;塩化カルシウム、酢酸カルシウム、硫酸アルミニウム等の金属塩などが挙げられ、重合で用いた乳化剤に応じて選定される。例えば、乳化剤として脂肪酸石鹸やロジン酸石鹸等のカルボン酸石鹸のみが使用されている場合には、上述した凝固剤の1種以上を用いることができる。また、乳化剤としてアルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム等の酸性領域でも安定な乳化力を示す乳化剤を使用した場合には、凝固剤としては金属塩が好適である。
湿式法を用いると、スラリー状のグラフト共重合体(E)が得られる。このスラリー状のグラフト共重合体(E)から乾燥状態のグラフト共重合体(E)を得る方法としては、まず残存する乳化剤残渣を水中に溶出させて洗浄し、次いで、このスラリーを遠心またはプレス脱水機等で脱水した後に気流乾燥機等で乾燥する方法;圧搾脱水機や押出機等で脱水と乾燥とを同時に実施する方法などが挙げられる。かかる方法によって、粉体または粒子状の乾燥グラフト共重合体(E)が得られる。
洗浄条件としては特に制限されないが、乾燥後のグラフト共重合体(E)100質量%中に含まれる乳化剤残渣量が2質量%以下の範囲となる条件で洗浄することが好ましい。グラフト共重合体(E)中の乳化剤残渣が2質量%以下であれば、成形品の耐温水白化性がより向上する傾向にある。乳化剤残渣量は、例えば洗浄時間などによって調整できる。
乾燥温度は、例えば60~80℃であってよい。
得られたグラフト共重合体(E)中の複合ゴム状重合体(C)の体積平均粒子径および体積基準の粒子径分布は、グラフト共重合体(E)の製造に用いた複合ゴム状重合体(C)のラテックスにおける複合ゴム状重合体(C)の体積平均粒子径および体積基準の粒子径分布と同じである。
なお、圧搾脱水機や押出機から排出されたグラフト共重合体(E)を回収せず、直接、樹脂組成物を製造する押出機や成形機に送って成形品とすることも可能である。
<作用効果>
以上説明した本発明のグラフト共重合体(E)は、上述した複合ゴム状重合体(C)に1種以上のビニル系単量体(d)をグラフト重合して得られるものである。複合ゴム状重合体(C)は、特定量のポリオルガノシロキサン(A)と、アルキル(メタ)アクリレート系重合体(B)とが複合したものである。また、複合ゴム状重合体(C)の体積平均粒子径が240nmを超えて360nm以下であり、かつ複合ゴム状重合体の全粒子中に占める、粒子径が300~800nmである粒子の割合が7.5~25体積%である。このようなグラフト共重合体(E)は、耐候性、耐温水白化性、耐衝撃性、および発色性に優れる成形品が得られる熱可塑性樹脂組成物の材料として好適である。
本発明のグラフト共重合体(E)は、アクリル系樹脂と併用されることが好ましい。
「熱可塑性樹脂組成物」
本発明の熱可塑性樹脂組成物は、本発明のグラフト共重合体(E)と、アクリル系樹脂(F)とを含有する。
本発明の熱可塑性樹脂組成物は、本発明の効果を損なわない範囲内で、必要に応じて、各種添加剤や他の樹脂等の任意成分を含んでいてもよい。
<グラフト重合体(E)>
本発明の熱可塑性樹脂組成物に含まれるグラフト共重合体(E)は、上述した本発明のグラフト共重合体(E)であるため、その説明を省略する。
グラフト共重合体(E)は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
<アクリル系樹脂(F)>
本発明の熱可塑性樹脂組成物に含まれるアクリル系樹脂(F)としては、例えばポリメタクリル酸メチル(メタクリル酸メチルの単独重合体)、メタクリル酸メチル以外の他の(メタ)アクリル系モノマーとメタクリル酸メチルとの共重合体、メタクリル酸メチルおよび他の(メタ)アクリル系モノマー以外の他のビニル系モノマーとメタクリル酸メチルとの共重合体等が挙げられる。これら共重合体は、共重合体を構成する全単量体単位の総質量(100質量%)に対して、メタクリル酸メチル単位の含有量が50質量%以上であることが好ましく、60質量%以上100質量%未満であることがより好ましい。
これらの中でも、ポリメタクリル酸メチルを用いた場合に本発明の効果がより有効に発揮される。
他の(メタ)アクリル系モノマーとしては、例えばメタクリル酸メチル以外のメタクリル酸エステル、アクリル酸エステル、メタクリル酸、アクリル酸等が挙げられる。
メタクリル酸メチル以外のメタクリル酸エステルとしては、例えばメタクリル酸エチル、メタクリル酸n-ブチル、メタクリル酸2-エチルヘキシル、メタクリル酸2-ヒドロキシエチル、メタクリル酸3-ヒドロキシプロピル等が挙げられる。
アクリル酸エステルとしては、例えばアクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル等、アクリル酸2-エチルヘキシル、アクリル酸2-ヒドロキシエチル、アクリル酸3-ヒドロキシプロピル等が挙げられる。
これら他の(メタ)アクリル系モノマーは、1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
他のビニル系モノマーとしては、芳香族ビニル(例えばスチレン、α-メチルスチレン等)、シアン化ビニル(例えばアクリロニトリル、メタクリロニトリル等)、ビニルエステル(例えば酢酸ビニル等)が挙げられる。これら他のビニル系モノマーは、1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
また、アクリル系樹脂(F)は、N-置換マレイミド単量体単位を含んでもよい。
N-置換マレイミド単量体としては特に限定されないが、例えばN-フェニルマレイミド、N-o-クロロフェニルマレイミド等のN-置換アリールマレイミド類、N-メチルマレイミド、N-エチルマレイミド、N-プロピルマレイミド、N-ブチルマレイミド、N-t-ブチルマレイミド等のN-置換アルキルマレイミド類、N-シクロヘキシルマレイミド等のN-置換シクロアルキルマレイミド類などが挙げられる。これらのうち、耐熱性向上効果が高いN-フェニルマレイミドが好ましい。これらのN-置換マレイミド単量体についても、必要に応じて2種類以上を併用することができるが、2種類以上を併用する場合、N-置換マレイミド単量体の総質量に対して、N-フェニルマレイミドを25質量%以上含むことが好ましく、50質量%以上含むことがさらに好ましい。
アクリル系樹脂(F)が、メタクリル酸メチルと芳香族ビニルとN-置換マレイミド単量体とを共重合してなる共重合体である場合、アクリル系樹脂(F)を構成する全単量体単位の総質量(100質量%)に対して、メタクリル酸メチル単位を50~90質量%、芳香族ビニル単位を5~50質量%、N-置換マレイミド単量体単位を2~30質量%含むことが好ましい。
アクリル系樹脂(F)が、メタクリル酸メチルと芳香族ビニルとシアン化ビニルとを共重合してなる共重合体である場合、アクリル系樹脂(F)を構成する全単量体単位の総質量(100質量%)に対して、メタクリル酸メチル単位を40~80質量%、芳香族ビニル単位を10~40質量%、シアン化ビニル単位を10~40質量%含むことが好ましい。
アクリル系樹脂(F)は、メタクリル酸メチルと、必要に応じて用いられる他の(メタ)アクリル系モノマー、他のビニル系モノマー、N-置換マレイミド単量体との混合物(単量体成分)を重合することによって得られる。重合方法は特に限定されず、公知の重合方法(乳化重合法、懸濁重合法、溶液重合法等)が挙げられる。
乳化重合法によるアクリル系樹脂(F)の製造方法としては、例えば、反応器内に単量体成分と乳化剤と重合開始剤と連鎖移動剤とを仕込み、加熱して重合し、生成したアクリル系樹脂(F)を含む水性分散体から析出法によってアクリル系樹脂(F)を回収する方法が挙げられる。
乳化剤としては、通常の乳化重合に用いられる乳化剤(例えばロジン酸カリウム、アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム等)が挙げられる。
重合開始剤としては、有機、無機の過酸化物系開始剤が挙げられる。
連鎖移動剤としては、メルカプタン類、α-メチルスチレンダイマー、テルペン類などが挙げられる。
懸濁重合法によるアクリル系樹脂(F)の製造方法としては、例えば、反応器内に単量体成分と懸濁剤と懸濁助剤と重合開始剤と連鎖移動剤とを仕込み、加熱して重合し、スラリーを脱水、乾燥してアクリル系樹脂(F)を回収する方法が挙げられる。
懸濁剤としては、例えばアニオン系水溶性高分子、ノニオン系水溶性高分子、水難溶性無機塩等が挙げられる。
アニオン系水溶性高分子としては、例えばポリアクリル酸、ポリアクリル酸ナトリウム、ポリアクリル酸カリウム、ポリメタクリル酸、ポリメタクリル酸ナトリウム、ポリメタクリル酸カリウム、メタクリル酸ナトリウム-メタクリル酸アルキルエステル共重合体などが挙げられる。これらアニオン系水溶性高分子は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、ポリアクリル酸ナトリウム、ポリメタクリル酸ナトリウムが好ましい。
ノニオン系水溶性高分子としては、例えばポリビニルアルコール、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ポリビニルピロリドン、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポリエチレンオキシドなどのポリアルキレンオキシド、ポリオキシエチレン-ポリオキシプロピレンブロック共重合体、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンセチルエーテル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンラウリルアミンなどが挙げられる。これらノニオン系水溶性高分子は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、ポリビニルアルコール、ポリオキシエチレン-ポリオキシプロピレン共重合体が好ましく、ポリオキシエチレン-ポリオキシプロピレンブロック共重合体がより好ましい。
水難溶性無機塩としては、例えば硫酸バリウム、第三リン酸カルシウム、炭酸マグネシウムなどが挙げられる。これら水難溶性無機塩は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも第三リン酸カルシウムが好ましい。
懸濁剤は、単量体成分100質量部に対して0.1~3質量部用いることが好ましい。
懸濁助剤としては、例えばカルボン酸塩(例えば、サルコシン酸ナトリウム、脂肪酸カリウム、脂肪酸ナトリウム、アルケニルコハク酸カリウム、アルケニルコハク酸ジカリウム、ロジン酸石鹸等)、アルキル硫酸エステル塩、アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム、アルキルスルホコハク酸ナトリウム、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル硫酸エステルナトリウム等のアルキル基および/またはアルケニル基を有する二塩基酸もしくはその塩などが挙げられる。これら懸濁助剤は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、製造時の安定性、得られるアクリル系樹脂(F)の発色性等の点から、アルケニルコハク酸カリウムが好ましい。
懸濁助剤は、単量体成分100質量部に対して0.0001~1質量部用いることが好ましい。
重合開始剤としては、例えば有機ペルオキシド類が挙げられる。
重合開始剤は、単量体成分100質量部に対して0.01~1.0質量部用いることが好ましい。
連鎖移動剤としては、例えばメルカプタン類、α-メチルスチレンダイマー、テルペン類などが挙げられる。これら連鎖移動剤は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
連鎖移動剤は、単量体成分100質量部に対して0.05~1.0質量部用いることが好ましい。
アクリル系樹脂(F)の質量平均分子量は特に制限されないが、10,000~300,000が好ましく、70,000~100、000がより好ましい。アクリル系樹脂(F)の質量平均分子量が上記範囲内であれば、成形品の耐候性がより優れたものとなる。
ここで、アクリル系樹脂(F)の質量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)を用い、テトラヒドロフラン(THF)に溶解して測定したものを標準ポリスチレン(PS)換算で示したものである。
<任意成分>
任意成分としては、グラフト共重合体(E)およびアクリル系樹脂(F)以外の他の熱可塑性樹脂(G)や、添加剤などが挙げられる。
他の熱可塑性樹脂(G)としては特に制限されないが、例えばアクリロニトリル-スチレン共重合体(AS樹脂)、アクリロニトリル-α-メチルスチレン共重合体(αSAN樹脂)、スチレン-無水マレイン酸共重合体、アクリロニトリル-スチレン-N-置換マレイミド三元共重合体、スチレン-無水マレイン酸-N-置換マレイミド三元共重合体、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン共重合体(ABS樹脂)、アクリロニトリル-スチレン-アルキル(メタ)アクリレート共重合体(ASA樹脂)、アクリロニトリル-エチレン-プロピレン-ジエン-スチレン共重合体(AES樹脂)、ポリカーボネート樹脂、ポリブチレンテレフタレート(PBT樹脂)、ポリエチレンテレフタレート(PET樹脂)、ポリ塩化ビニル、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン、スチレン-ブタジエン-スチレン(SBS)、スチレン-ブタジエン(SBR)、水素添加SBS、スチレン-イソプレン-スチレン(SIS)等のスチレン系エラストマー、各種オレフィン系エラストマー、各種ポリエステル系エラストマー、ポリスチレン、ポリアセタール樹脂、変性ポリフェニレンエーテル(変性PPE樹脂)、エチレン-酢酸ビニル共重合体、PPS樹脂、PES樹脂、PEEK樹脂、ポリアリレート、液晶ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂(ナイロン)などが挙げられる。これら他の熱可塑性樹脂(G)は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
添加剤としては、例えば酸化防止剤や光安定剤等の各種安定剤、滑剤、可塑剤、離型剤、染料、顔料、帯電防止剤、無機充填剤などが挙げられる。
<各成分の含有割合>
熱可塑性樹脂組成物中のグラフト共重合体(E)の含有量は20~60質量%、アクリル系樹脂(F)の含有量は40~80質量%、他の熱可塑性樹脂(G)の含有量は0~30質量%(ただし、グラフト共重合体(E)とアクリル樹脂系(F)と他の熱可塑性樹脂(G)の合計を100質量%とする。)であることが好ましい。
グラフト共重合体(E)の含有量が20質量%以上、アクリル系樹脂(F)の含有量が80質量%以下であると、成形品の耐衝撃性がより優れる。グラフト共重合体(E)の含有量が60質量%以下、アクリル系樹脂(F)の含有量が40質量%以上であると、熱可塑性樹脂組成物の流動性、および成形品の剛性が優れる。
熱可塑性樹脂組成物の総質量に対する、グラフト共重合体(E)とアクリル系樹脂(F)と他の熱可塑性樹脂(G)との合計質量の割合は、70~100質量%が好ましく、90~100質量%がより好ましい。
<熱可塑性樹脂組成物の製造方法>
熱可塑性樹脂組成物は、グラフト共重合体(E)と、アクリル系樹脂(F)と、必要に応じて他の熱可塑性樹脂(G)や添加剤とをV型ブレンダやヘンシェルミキサー等の混合機により混合分散させ、これにより得られた混合物をスクリュー式押出機、バンバリーミキサ、加圧ニーダ、ミキシングロール等の溶融混練機などを用いて溶融混練することにより製造される。また、必要に応じてペレタイザー等を用いて溶融混練物をペレット化してもよい。
<作用効果>
以上説明した本発明の熱可塑性樹脂組成物にあっては、上述した本発明のグラフト共重合体(E)と、アクリル系樹脂(F)とを含有するので、耐候性、耐温水白化性、耐衝撃性、および発色性に優れた成形品を得ることができる。
「成形品」
本発明により得られる成形品は、本発明の熱可塑性樹脂組成物を公知の成形方法によって成形してなるものであり、耐候性、耐温水白化性、耐衝撃性、および発色性に優れる。
成形方法としては特に限定されず、公知の成形方法を用いることができ、例えば射出成形法、プレス成形法、押出成形法、真空成形法、ブロー成形法等が挙げられる。
成形品の用途としては内装・外装等の車両用部品、OA機器や家電部品、壁材、窓枠等の建材部品、玩具、文房具等の雑貨などが挙げられる。
以下、実施例により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は以下の例に限定されるものではない。なお、以下の例中の「%」および「部」は明記しない限りは質量基準である。
以下の例における各種測定および評価方法は、以下の通りである。また、以下の例において用いたグラフト共重合体(E)、アクリル系樹脂(F)、および他の熱可塑性樹脂(G)は、以下のようにして製造した。
「測定・評価」
<複合ゴム状重合体(C)の粒子径分布および平均粒子径の測定>
ナノトラック粒度分布計(日機装株式会社製、「UPA-EX150」)を用い、測定溶媒として純水を用いて、ラテックス状の複合ゴム状重合体(C)の体積基準の粒子径分布を測定し、得られた粒子径分布より体積平均粒子径、および粒子径が300~800nmの粒子と600nm以上の粒子の割合を求めた。
<耐衝撃性の評価>
ISO 3167に準拠して、射出成形機(東芝機械株式会社製、「IS55FP-1.5A」)を用い、ペレット状の熱可塑性樹脂組成物から成形品(i)を作製した。
得られた成形品(i)のシャルピー衝撃強度をISO 179に準拠して、23℃雰囲気下で測定した。シャルピー衝撃強度が大きいほど耐衝撃性に優れる。
<発色性の評価>
4オンス射出成形機(株式会社日本製鋼所製)を用い、シリンダー設定温度260℃ 、金型温度60℃、射出率20g/秒の条件で、ペレット状の熱可塑性樹脂組成物から、長さ100mm、幅100mm、厚み3mmの板状の成形品(ii)を作製した。
得られた成形品(ii)について、SCE方式の測色計(コニカミノルタジャパン株式会社製「CM-508D」)を用い、成形品(ii)の色調(L)をSCE方式にて測定した。Lが低いほど発色性に優れることを意味する。
<耐候性の評価>
発色性の評価と同様にして成形品(ii)を作製した。
得られた成形品(ii)について、アイスーパーUVテスター(岩崎電気株式会社製、「SUV-W151型」) を用い、ブラックパネル温度63℃、サイクル条件360分(照射240分、暗黒120分、切替時水シャワー有)の条件で200時間処理した。
そして、処理前後の成形品(ii)の変色の度合い(ΔE)を、色差計を用いて測定した。ΔEが小さいほど耐候性に優れる。
<耐温水白化性の評価>
発色性の評価と同様にして成形品(ii)を作製した。
得られた成形品(ii)を80℃の温水に8時間浸水させた。
そして、浸水前後の成形品(ii)の変色の度合い(ΔE)を、SCE方式の測色計(コニカミノルタジャパン株式会社製「CM-508D」)を用いて測定した。ΔEが小さいほど耐温水白化性に優れる。
「ポリオルガノシロキサンの製造」
<ポリオルガノシロキサン(A)の製造>
オクタメチルシクロテトラシロキサン98部、γ-メタクリロイルオキシプロピルジメトキシメチルシラン2部を混合してシロキサン混合物100部を得た。これに、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム0.67部、イオン交換水300部からなる水溶液を添加し、ホモミキサーにて10000回転/分で2分間撹拌した後、ホモジナイザーに300kg/cmの圧力で2回通し、安定な予備混合オルガノシロキサンラテックスを得た。
別途、試薬注入容器、冷却管、ジャケット加熱機および攪拌装置を備えた反応器内に、ドデシルベンゼンスルホン酸10部と、イオン交換水90部とを投入し、10%のドデシルベンゼンスルホン酸水溶液(酸触媒水溶液)を調製した。
この酸触媒水溶液を85℃に加熱した状態で、予備混合オルガノシロキサンラテックスを2時間にわたって滴下し、滴下終了後3時間その温度を維持した後、40℃以下に冷却した。次いで、この反応物を10%水酸化ナトリウム水溶液でpH7.0に中和して、ポリオルガノシロキサン(A)のラテックスを得た。
得られたポリオルガノシロキサン(A)のラテックスを180℃で30分乾燥して固形分を求めたところ18.2%であった。また、ポリオルガノシロキサン(A)の質量基準の平均粒子径は30nmであった。
「酸基含有共重合体ラテックスの製造」
<酸基含有共重合体ラテックス(K)の製造>
試薬注入容器、冷却管、ジャケット加熱機および撹拌装置を備えた反応器内に、イオン交換水200部、オレイン酸カリウム2部、ジオクチルスルホコハク酸ナトリウム4部、硫酸第一鉄七水塩0.003部、エチレンジアミン四酢酸二ナトリウム塩0.009部、ナトリウムホルムアルデヒドスルホキシレート0.3部を窒素気流下で仕込み、60℃に昇温した。60℃になった時点から、アクリル酸n-ブチル85部、メタクリル酸15部、クメンヒドロパーオキサイド0.5部からなる混合物を120分かけて連続的に滴下した。滴下終了後、さらに2時間、60℃を維持した状態で熟成を行い、固形分が33%、重合転化率が96%、酸基含有共重合体の体積平均粒子径が120nmである酸基含有共重合体ラテックス(K)を得た。
「グラフト共重合体の製造」
<グラフト共重合体(E-1)の製造>
試薬注入容器、冷却管、ジャケット加熱機および攪拌装置を備えた反応器内に、ポリオルガノシロキサン(A)のラテックスを固形分換算で5.0部と、アルケニルコハク酸ジカリウム0.48部と、イオン交換水190部とを仕込んで混合した。次いで、アルキル(メタ)アクリレート系重合体(B)を構成する単量体としてアクリル酸n-ブチル45.0部、アリルメタクリレート0.4部、1,3-ブチレングリコールジメタクリレート0.09部、t-ブチルハイドロパーオキサイド0.12部からなる混合物を添加した。この反応器に窒素気流を通じることによって雰囲気の窒素置換を行い、内温を60℃まで昇温した。内温が60℃に達した時点で、硫酸第一鉄七水塩0.000075部、エチレンジアミン四酢酸二ナトリウム塩0.00023部、ナトリウムホルムアルデヒドスルホキシレート0.2部、イオン交換水10部からなる水溶液を添加し、ラジカル重合を開始させた。重合発熱が確認された後、ジャケット温度を75℃とし、重合発熱が確認されなくなるまで重合を継続し、さらに1時間この状態を維持し、ポリオルガノシロキサンとポリブチルアクリレートゴムとが複合した複合ゴムを得た(ラジカル重合工程)。得られた複合ゴムの体積平均粒子径は90nmであった。
反応器内部の液温が70℃に低下した後、5%ピロリン酸ナトリウム水溶液を固形分として1.0部添加した(縮合酸塩添加工程)。次いで、内温70℃で制御した後、酸基含有共重合体ラテックス(K)を固形分として1.25部添加し、30分撹拌、肥大化を行い、複合ゴム状重合体(C)のラテックスを得た(肥大化工程)。
得られたラテックス状の複合ゴム状重合体(C)の体積平均粒子径は285nmであった。また、複合ゴム状重合体(C)の全粒子中に占める、粒子径が300~800nmである粒子の割合は20体積%であった。粒子径が600nm以上である割合は2%体積%であった。
この複合ゴム状重合体(C)のラテックスに、硫酸第一鉄七水塩0.001部、エチレンジアミン四酢酸二ナトリウム塩0.003部、ロンガリット0.3部、イオン交換水10部からなる水溶液を添加した。次いで、アクリロニトリル10部、スチレン30部、t-ブチルハイドロパーオキサイド0.18部からなる混合液を80分間にわたって滴下し、重合した。滴下終了後、温度75℃の状態を30分保持した後、アクリロニトリル2.5部、スチレン7.5部、t-ブチルハイドロパーオキサイド0.05部、n―オクチルメルカプタン0.02部からなる混合物を20分にわたって滴下し、重合した。滴下終了後、温度75℃の状態を30分保持した後、クメンヒドロパーオキシド0.05部を添加し、さらに温度75℃の状態を30分保持した後、冷却し、複合ゴム状重合体(C)に、アクリロニトリルとスチレンをグラフト重合させたシリコーン/アクリル複合ゴム系のグラフト共重合体(E-1)のラテックスを得た。
次いで、1%酢酸カルシウム水溶液150部を60℃に加熱し、この中へグラフト共重合体(E-1)のラテックス100部を徐々に滴下して凝固した。そして、析出物を分離し、脱水、洗浄した後に乾燥して、グラフト共重合体(E-1)を得た。
<グラフト共重合体(E-2)~(E-7)の製造>
ラジカル重合工程で用いたポリオルガノシロキサン(A)、およびアクリル酸n-ブチルの量と、肥大化工程で用いたピロリン酸ナトリウムの量、および酸基含有共重合体ラテックス(K)の量を表1に示すように変更した以外は、グラフト共重合体(E-1)と同様にしてグラフト共重合体(E-2)~(E-7)を得た。
各例で得られたグラフト共重合体(E-2)~(E-7)を構成する複合ゴム状重合体(C)の体積平均粒子径、および複合ゴム状重合体(C)の全粒子中に占める、粒子径が300~800nmである粒子と600nm以上である粒子の割合を表1に示す。
Figure 0007195798000001
表1中の「体積平均粒子径」は、グラフト共重合体(E)の製造に用いた複合ゴム状重合体(C)の体積平均粒子径(nm)である。
「300~800nmの粒子割合」は、グラフト共重合体(E)の製造に用いた複合ゴム状重合体(C)の全粒子中に占める、粒子径が300~800nmである粒子の割合(体積%)である。
「600nm以上の粒子割合」は、グラフト共重合体(E)の製造に用いた複合ゴム状重合体(C)の全粒子中に占める、粒子径が600nm以上である粒子の割合(体積%)である。
「(d)成分」は、複合ゴム状重合体(C)にグラフト重合したビニル系単量体(d)であり、「AN」はアクリロニトリルであり、「ST」はスチレンである。
「アクリル系樹脂(F)」
<アクリル系樹脂(F-1)の製造>
撹拌機付の20リットル耐圧反応槽に、メタクリル酸メチル74部、N-フェニルマレイミド10部、スチレン16部からなる混合物100部と、パーブチルPV(日油株式会社製)0.1部と、パーブチルO(日油株式会社製)0.05部と、パーヘキサHC(日油株式会社製)0.05部と、t-ドデシルメルカプタン0.6部と、α-メチルスチレンダイマー0.2部とを投入して、混合した。次いで、純水200部、第三リン酸カルシウム0.5部、アルケニルコハク酸カリウム0.003部からなる混合溶液を20リットル耐圧反応槽に仕込み、40℃から重合を開始させた。重合反応における昇温速度は5~10℃/hrで9時間反応を行い、120℃にて重合を終了後、冷却、洗浄、濾過、乾燥工程を経てビーズ状の重合体であるアクリル系樹脂(F-1)を得た。
「実施例1~3、比較例1~4」
表2に示す種類と量(部)のグラフト共重合体(E)、およびアクリル系樹脂(F)と、エチレンビスステアリルアミド1部と、アデカスタブLA-77Y(株式会社ADEKA製)0.4部と、アデカスタブLA-31(株式会社ADEKA製)0.4部と、カーボンブラック0.8部とをヘンシェルミキサーを用いて混合した。スクリュー式押出機(株式会社日本製鋼所製、「TEX-30α型二軸押出機」)を用いて、得られた混合物を250℃にて溶融混練した後、ペレタイザーにてペレット化した熱可塑性樹脂組成物を得た。
得られた熱可塑性樹脂組成物を用いて成形品を作製し、耐衝撃性、発色性、耐候性および耐温水白化性を評価した。これらの結果を表2に示す。
Figure 0007195798000002
表2に示すように、実施例1~3で得られた熱可塑性樹脂組成物からは、耐候性、耐温水白化性、耐衝撃性、および発色性に優れた成形品が得られた。
一方、比較例1~4で得られた成形品は、耐候性、耐温水白化性、耐衝撃性、および発色性のいずれか1つ以上の特性が劣っていた。
具体的には、体積平均粒子径が360nmを超えている複合ゴム状重合体(C)を用いた比較例1では、成形品の耐候性が劣っていた。
体積平均粒子径が240nm以下の複合ゴム状重合体(C)を用いた比較例2では、成形品の耐衝撃性、耐候性、および耐温水白化性が劣っていた。
ポリオルガノシロキサン(A)の割合が4質量%未満である複合ゴム状重合体(C)を用いた比較例3では、成形品の耐衝撃性が劣っていた。
ポリオルガノシロキサン(A)の割合が14質量%を超えている複合ゴム状重合体(C)を用いた比較例4では、成形品の発色性が劣っていた。
なお、グラフト共重合体(E-2)を用いた実施例2は比較例である。グラフト共重合体(E-2)の製造に使用した肥大化後の複合ゴム状重合体(C)の全粒子中に占める、粒子径が600nm以上である粒子の割合は7体積%である。
なお、グラフト共重合体(E-3)を用いた実施例3は比較例である。グラフト共重合体(E-3)の製造に使用した肥大化後の複合ゴム状重合体(C)の体積平均粒子径は245nmである。
本発明によれば、耐候性、耐温水白化性、耐衝撃性、および発色性に優れた成形品を提供できる。特に成形品の耐衝撃性と耐温水白化性のバランスは、従来知られている熱可塑性樹脂組成物では得られない非常に高いレベルであり、例えば内装・外装等の車両用部品、OA機器や家電部品、壁材・窓枠等の建材部品などの各種工業用材料や、玩具、文房具等の雑貨などとしての利用価値は極めて高い。

Claims (1)

  1. 体積平均粒子径が20~150nmであるポリオルガノシロキサンの存在下で、アルキル(メタ)アクリレート系重合体を形成する1種以上のアルキル(メタ)アクリレート単量体をラジカル重合させて複合化させた複合ゴム状重合体を得る工程1と、
    前記複合ゴム状重合体と、酸基含有共重合体ラテックスとを混合することにより、肥大化して体積平均粒子径が285~360nmとなった肥大化複合ゴム状重合体を得る工程2と、
    前記肥大化複合ゴム状重合体に、1種以上のビニル系単量体グラフト重合させることにより、グラフト共重合体を得る工程3と、
    を有する、グラフト共重合体の製造方法であって、
    前記工程1において前記複合ゴム状重合体を得る際、前記ポリオルガノシロキサンと前記アルキル(メタ)アクリレート単量体との合計を100質量%としたときに、前記ポリオルガノシロキサンの割合が4~14質量%であり、
    前記工程2において得た前記肥大化複合ゴム状重合体の全粒子中に占める、粒子径が300~800nmである粒子の割合が7.5~25体積%であり、かつ、粒子径が600nm以上である粒子の割合が5体積%以下である、グラフト共重合体の製造方法
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