JP2015093927A - グラフト共重合体、および熱可塑性樹脂組成物 - Google Patents

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Abstract

【課題】耐衝撃性、表面平滑性、顔料着色性に優れ、ブロンズ現象が起こりにくい成形品を得ることができる熱可塑性樹脂組成物の材料として好適なグラフト共重合体、および熱可塑性樹脂組成物の提供。【解決手段】平均粒子径の異なる2種類以上のポリオルガノシロキサン3〜20質量%と、アルキル(メタ)アクリレート単量体80〜97質量%とをラジカル重合して得られる、平均粒子径が100〜300nmの複合ゴム質重合体に、特定の単量体をグラフト重合して得られるグラフト共重合体であって、前記2種類以上のポリオルガノシロキサンは、平均粒子径が30〜60nmである第一のポリオルガノシロキサン(Ss)と、平均粒子径が100〜200nmである第二のポリオルガノシロキサン(Sm)とを少なくとも含み、これらの質量比率((Ss):(Sm))が10〜50:90〜50であるグラフト共重合体。【選択図】なし

Description

本発明は、グラフト共重合体、および熱可塑性樹脂組成物に関する。
車両外装用途などに用いられる樹脂材料やその成形品には、従来求められている成形加工性や表面外観(表面平滑性や顔料着色性など)といった特性に加え、近年では軽量化やデザイン性を重視した設計を満たす特性が求められることも多い。つまり耐衝撃性、耐候性、成形加工性、表面外観といった複数の特性を高いレベルで併せ持った樹脂材料やその成形品のニーズが高まっている。
耐衝撃性に優れた成形品が得られる熱可塑性樹脂として代表的なものに、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体(ABS樹脂)が知られている。
しかし、ABS樹脂はゴム成分として共役ジエン系ゴムであるポリブタジエンを使用しており、これが紫外線により分解されやすいことから、ABS樹脂より得られる成形品は耐候性に劣るという欠点があった。
成形品の耐候性を改良するために、アクリル酸エステル系ゴムをゴム成分とするアクリレート−スチレン−アクリロニトリル共重合体(AAS樹脂)が使用されている。
しかし、AAS樹脂より得られる成形品は、ABS樹脂より得られる成形品に比べ一般的に耐衝撃性に劣る傾向にある。
耐衝撃性、顔料着直性、および耐候性に優れる熱可塑性樹脂組成物として、例えば特許文献1には、数平均粒子径が0.003〜0.06μmであるポリオルガノシロキサンとアルキル(メタ)アクリレートゴム成分からなる複合ゴムに、ビニル系単量体がグラフト重合した、数平均粒子径が0.01〜0.07μmであるグラフト共重合体を含有する熱可塑性樹脂組成物が開示されている。
ところで、ABS樹脂やAAS樹脂などの熱可塑性樹脂には、着色剤が配合されることがある。着色剤を配合した熱可塑性樹脂より得られる成形品には、着色剤を用いた場合に特有の現象であるブロンズ現象と呼ばれる問題が生じることがある。ブロンズ現象とは、直射日光が差し込まない室内や室内灯の下では色相が良好であるのに対し、直射日光の下やガラスを介して直射日光が差し込んでいる場所では本来の着色した色相に加え、赤から黄色の範囲の色が重なって見える現象のことである。ブロンズ現象は成形品の品質イメージを低下させ、商品価値を損なうものであるため、ブロンズ現象を解決することが求められている。
ブロンズ現象を解決した熱可塑性樹脂組成物として、例えば特許文献2には、ポリオルガノシロキサンとポリアルキル(メタ)アクリレートから構成される、トルエン溶媒下で測定したゲル含有量が60〜90%であり、質量平均粒子径が0.10〜0.30μmの複合ゴム質重合体に、ビニル系単量体等がグラフト重合したグラフト共重合体を含有する熱可塑性樹脂組成物が開示されている。
特開平6−25492号公報 特開2003−26890号公報
しかしながら、特許文献1に記載の熱可塑性樹脂組成物より得られる成形品は、表面外観に対する近年の高い要求レベルを十分に満足するものではなかった。また、耐衝撃性についても、必ずしも満足するものではなかった。
特許文献2に記載の熱可塑性樹脂組成物より得られる成形品も、表面外観に対する近年の高い要求レベルを十分に満足するものではなかった。また、耐衝撃性とブロンズ現象の抑制についても、必ずしも満足するものではなかった。
本発明は、耐衝撃性、表面平滑性、顔料着色性に優れ、ブロンズ現象が起こりにくい成形品を得ることができる熱可塑性樹脂組成物の材料として好適なグラフト共重合体、および熱可塑性樹脂組成物を提供することを目的とする。
本発明者らは鋭意検討した結果、複合ゴム質重合体を構成するゴム成分の1つとして、平均粒子径の異なる2種類以上のポリオルガノシロキサンを特定量用い、かつ該ポリオルガノシロキサンのうちの少なくとも2種類のポリオルガノシロキサンの平均粒子径と質量比率を規定し、さらに複合ゴム質重合体の平均粒子径も規定することで、上記の課題を解消できることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、以下の態様を包含する。
[1] 平均粒子径の異なる2種類以上のポリオルガノシロキサン3〜20質量%と、アルキル(メタ)アクリレート単量体80〜97質量%(ただし、2種類以上のポリオルガノシロキサンとアルキル(メタ)アクリレート単量体の合計を100質量%とする。)とをラジカル重合して得られる複合ゴム質重合体に、芳香族アルケニル化合物単量体、シアン化ビニル化合物単量体、およびアルキル(メタ)アクリレート単量体からなる群より選ばれる1種以上の単量体をグラフト重合して得られるグラフト共重合体であって、前記2種類以上のポリオルガノシロキサンは、平均粒子径が30〜60nmである第一のポリオルガノシロキサン(Ss)と、平均粒子径が100〜200nmである第二のポリオルガノシロキサン(Sm)とを少なくとも含み、かつ、第一のポリオルガノシロキサン(Ss)と第二のポリオルガノシロキサン(Sm)の質量比率((Ss):(Sm))が10〜50:90〜50であり、前記複合ゴム質重合体の平均粒子径が100〜300nmである、グラフト共重合体。
[2] [1]に記載のグラフト共重合体を含有する、熱可塑性樹脂組成物。
本発明のグラフト共重合体は、耐衝撃性、表面平滑性、顔料着色性に優れ、ブロンズ現象が起こりにくい成形品を得ることができる熱可塑性樹脂組成物の材料として好適である。
また、本発明の熱可塑性樹脂組成物は、耐衝撃性、表面平滑性、顔料着色性に優れ、ブロンズ現象が起こりにくい成形品を得ることができる。
以下、本発明を詳細に説明する。
なお、以下の説明において、「成形品」とは、本発明のグラフト共重合体を含有する熱可塑性樹脂組成物を成形してなるものである。
「グラフト共重合体」
本発明のグラフト共重合体(A)は、平均粒子径の異なる2種類以上のポリオルガノシロキサン(S)(以下、「(S)成分」ともいう。)と、アルキル(メタ)アクリレート単量体(b1)とをラジカル重合して得られる複合ゴム質重合体(G)に、芳香族アルケニル化合物単量体、シアン化ビニル化合物単量体、およびアルキル(メタ)アクリレート単量体からなる群より選ばれる1種以上の単量体(c)(以下、「(c)成分」ともいう。)をグラフト重合して得られる共重合体である。
なお、詳しくは後述するが、複合ゴム質重合体(G)は、(S)成分と、アルキル(メタ)アクリレート単量体(b1)を主成分とするポリアルキル(メタ)アクリレート(B)とが複合した複合ゴムである。
<(S)成分>
(S)成分は、平均粒子径の異なる2種類以上のポリオルガノシロキサン(S)である。
(S)成分は、平均粒子径が30〜60nmである第一のポリオルガノシロキサン(Ss)と、平均粒子径が100〜200nmである第二のポリオルガノシロキサン(Sm)とを少なくとも含む。
ここで、ポリオルガノシロキサンの平均粒子径は、粒度分布測定器を用いて質量基準の粒子径分布を測定し、得られた粒子径分布より算出される値(質量平均粒子径)である。
(第一のポリオルガノシロキサン(Ss))
第一のポリオルガノシロキサン(Ss)は、成形品の顔料着色性を向上させるとともに、ブロンズ現象を抑制する効果を有する。
第一のポリオルガノシロキサン(Ss)の平均粒子径は30〜60nmであり、30〜50nmが好ましい。平均粒子径が30nm以上であれば、成形品の耐衝撃性が向上する。一方、平均粒子径が60nm以下であれば、成形品の表面平滑性および顔料着色性が向上し、ブロンズ現象を抑制できる。
第一のポリオルガノシロキサン(Ss)としては、ビニル重合性官能基を含有するポリオルガノシロキサンが好ましく、ビニル重合性官能基含有シロキサン単位と、ジメチルシロキサン単位とを有するポリオルガノシロキサンがより好ましく、その中でも、3個以上のシロキサン結合を有するケイ素原子がポリジメチルシロキサン中の全ケイ素原子に対し1モル%以下からなるポリオルガノシロキサンが特に好ましい。ビニル重合性官能基含有シロキサン単位の割合は0.3〜3モル%が好ましく、ジメチルシロキサン単位の割合は97〜99.7モル%(ただし、ビニル重合性官能基含有シロキサン単位とジメチルシロキサン単位の合計を100モル%とする。)が好ましい。
ビニル重合性官能基としては、ポリアルキル(メタ)アクリレート(B)と交叉結合可能なものであれば特に限定されるものではないが、ポリアルキル(メタ)アクリレート(B)との反応性を考慮すると、メタクリル基、ビニル基、芳香族アルケニル基、メルカプト基、アゾ基などが好ましく、さらに好ましくはメタクリル基である。
第一のポリオルガノシロキサン(Ss)は、例えばビニル重合性官能基含有シロキサンと、ジメチルシロキサンと、必要に応じてシロキサン系架橋剤とを含むシロキサン混合物を重合することで得られる。重合の方法としては特に制限されないが、乳化重合により製造することが好ましい。
ビニル重合性官能基含有シロキサンは、ビニル重合性官能基を含有し、かつジメチルシロキサンとシロキサン結合を介して結合しうるものである。ジメチルシロキサンとの反応性を考慮すると、ビニル重合性官能基含有シロキサンとしてはビニル重合性官能基を含有する各種アルコキシシラン化合物が好ましい。具体的には、β−メタクリロイルオキシエチルジメトキシメチルシラン、γ−メタクリロイルオキシプロピルジメトキシメチルシラン、γ−メタクリロイルオキシプロピルメトキシジメチルシラン、γ−メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メタクリロイルオキシプロピルエトキシジエチルシラン、γ−メタクリロイルオキシプロピルジエトキシメチルシラン、δ−メタクリロイルオキシブチルジエトキシメチルシラン等のメタクリロイルオキシシロキサン;テトラメチルテトラビニルシクロテトラシロキサン等のビニルシロキサン;p−ビニルフェニルジメトキシメチルシラン;γ−メルカプトプロピルジメトキシメチルシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン等のメルカプトシロキサンなどが挙げられる。
これらビニル重合性官能基含有シロキサンは、1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
シロキサン混合物中のビニル重合性官能基含有シロキサンの含有量は、ジメチルシロキサンとの合計を100質量%としたときに、0.3〜3質量%が好ましい。
ジメチルシロキサンとしては、3員環以上のジメチルシロキサン系環状体が挙げられ、3〜7員環のジメチルシロキサン系環状体が好ましい。具体的には、ヘキサメチルシクロトリシロキサン、オクタメチルシクロテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、ドデカメチルシクロヘキサシロキサン、トリメチルトリフェニルシクロトリシロキサン、テトラメチルテトラフェニルシクロテトラシロキサン、オクタフェニルシクロテトラシロキサン等が挙げられる。
これらジメチルシロキサンは、1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
シロキサン混合物中のジメチルシロキサンの含有量は、ビニル重合性官能基含有シロキサンとの合計を100質量%としたときに、97〜99.7質量%が好ましい。
シロキサン系架橋剤としては、3官能性または4官能性のシラン系架橋剤が挙げられる。具体的には、トリメトキシメチルシラン、トリエトキシフェニルシラン、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラブトキシシラン等が挙げられる。
これらシロキサン系架橋剤は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
シロキサン混合物中のシロキサン系架橋剤の含有量は、ビニル重合性官能基含有シロキサンとジメチルシロキサンの合計100質量部に対して、0〜3質量部が好ましい。
シロキサン混合物の重合は、通常、乳化剤と水と酸触媒とを用いて行われる。
乳化剤としてはアニオン系乳化剤が好ましい。具体的には、アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ラウリルスルホン酸ナトリウム、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル硫酸エステルナトリウムなどが挙げられる。これらの中でも、アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ラウリルスルホン酸ナトリウム等のスルホン酸系の乳化剤が好ましい。
これら乳化剤は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
乳化剤の使用量は、シロキサン混合物100質量部に対して0.05〜5質量部が好ましい。乳化剤の使用量が0.05質量部以上であれば、分散状態が安定しやすく、微小な粒子径の乳化状態を保持しやすくなる。一方、乳化剤の使用量が5質量部以下であれば、乳化剤に起因する成形品の着色を抑制できる。
酸触媒としては、スルホン酸類(例えば脂肪族スルホン酸、脂肪族置換ベンゼンスルホン酸、脂肪族置換ナフタレンスルホン酸など)等の有機酸触媒;鉱酸類(例えば硫酸、塩酸、硝酸など)等の無機酸触媒などが挙げられる。これら酸触媒は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
これらの中でも、後述するシロキサンラテックス(s)の安定化作用にも優れている点で脂肪族置換ベンゼンスルホン酸が好ましい。脂肪族置換ベンゼンスルホン酸における脂肪族置換基としては炭素数9〜20のアルキル基が好ましく、特に炭素数12のn−ドデシルベンゼンスルホン酸がより好ましい。また、n−ドデシルベンゼンスルホン酸と硫酸等の鉱酸とを併用すると、シロキサンラテックス(s)の乳化剤成分に起因するグラフト共重合体(A)の着色を低減させることができる。
酸触媒の混合は、シロキサン混合物と乳化剤と水とを混合するタイミングで行ってもよいし、シロキサン混合物を乳化剤と水によって乳化させたラテックス(シロキサンラテックス(s))とし、これを微粒子化した後でもよい。第一のポリオルガノシロキサン(Ss)の粒子径の制御のしやすさを考慮すると、シロキサンラテックス(s)を微粒子化した後に、該微粒子化したシロキサンラテックス(s)と酸触媒とを混合することが好ましい。特に、微粒子化したシロキサンラテックス(s)を酸触媒水溶液中に一定速度で滴下することが好ましい。
なお、酸触媒をシロキサン混合物と乳化剤と水とを混合するタイミングで混合する場合は、これらを混合した後に微粒子化することが好ましい。
シロキサンラテックス(s)は、例えば高速回転による剪断力で微粒子化するホモミキサーや、高圧発生機による噴出力で微粒子化するホモジナイザー等を使用することで微粒子化できる。
シロキサン混合物と乳化剤と水と酸触媒とを混合する方法や、微粒子化したシロキサンラテックス(s)と酸触媒とを混合する方法としては、例えば高速攪拌による混合、ホモジナイザー等の高圧乳化装置による混合などが挙げられる。中でも、ホモジナイザーを使用した方法は、第一のポリオルガノシロキサン(Ss)の粒子径の分布を小さくできるので好適である。
重合温度は、50℃以上が好ましく、80℃以上が好ましい。
なお、微粒子化したシロキサンラテックス(s)を酸触媒水溶液中に滴下する場合、酸触媒水溶液の温度は50℃以上が好ましく、80℃以上が好ましい。
重合時間は、シロキサン混合物と乳化剤と水とを混合するタイミングで酸触媒を混合する場合は、2時間以上が好ましく、5時間以上がさらに好ましい。一方、微粒子化したシロキサンラテックス(s)と酸触媒とを混合する場合は、微粒子化したシロキサンラテックス(s)を酸触媒水溶液中に滴下した後、1時間程度保持することが好ましい。
重合の停止は、反応液を冷却した後、反応液のpHが6〜8程度になるように水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウムなどのアルカリ性物質で反応液を中和することによって行うことができる。
第一のポリオルガノシロキサン(Ss)の平均粒子径は、シロキサン混合物の組成、酸触媒の使用量(酸触媒水溶液中の酸触媒の含有量)、重合温度などを調整することで制御できる。例えば、酸触媒の使用量が少なくなるほど平均粒子径は大きくなる傾向にあり、重合温度が高くなるほど平均粒子径は小さくなる傾向にある。
(第二のポリオルガノシロキサン(Sm))
第二のポリオルガノシロキサン(Sm)は、成形品の耐衝撃性と表面平滑性を向上させる効果を有する。
第二のポリオルガノシロキサン(Sm)の平均粒子径は100〜200nmであり、120〜180nmが好ましい。平均粒子径が100nm以上であれば、成形品の耐衝撃性表面平滑性が向上する。一方、平均粒子径が200nm以下であれば、成形品の顔料着色性が向上し、ブロンズ現象を抑制できる。
第二のポリオルガノシロキサン(Sm)は、オルガノシロキサンを重合することで得られる。重合の方法としては特に制限されないが、乳化重合により製造することが好ましい。具体的には、有機酸触媒および無機酸触媒と水とを含む水性媒体に、オルガノシロキサンを乳化剤と水によって乳化させたラテックス(シロキサンラテックス(m))を滴下させて重合することが好ましい。
水性媒体は、有機酸触媒と無機酸触媒と水とを混合攪拌することで得られる。
有機酸触媒および無機酸触媒としては、第一のポリオルガノシロキサン(Ss)の説明において先に例示した酸触媒が挙げられる。有機酸触媒および無機酸触媒は、それぞれ1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
有機酸触媒としては、シロキサンラテックス(m)の安定化作用にも優れている点で脂肪族置換ベンゼンスルホン酸が好ましい。脂肪族置換ベンゼンスルホン酸における脂肪族置換基としては炭素数9〜20のアルキル基が好ましく、特に炭素数12のn−ドデシルベンゼンスルホン酸がより好ましい。
無機酸触媒としては、硫酸が好ましい。
水性媒体のpHは、第二のポリオルガノシロキサン(Sm)の平均粒子径を制御する因子の1つである。水性媒体のpHは有機酸触媒および無機酸触媒の含有量により調整されるが、25℃におけるpHが1.2以下となるように、水性媒体中の有機酸触媒および無機酸触媒の含有量を調節することが好ましい。水性媒体のpHが上記範囲内であれば、粒子径分布の狭い第二のポリオルガノシロキサン(Sm)が得られやすくなる。
水性媒体の25℃におけるpHは、pHの調整が容易であることから、0.1〜1.2がより好ましく、0.5〜1.2が特に好ましい。
有機酸触媒の含有量は、水性媒体100質量%中、0.1〜5.5質量%であることが好ましく、より好ましくは0.1〜2.5質量%である。一方、無機酸触媒の含有量は、水性媒体100質量%中、0.5〜2.0質量%であることが好ましく、より好ましくは1.3〜2.0質量%である。有機酸触媒および無機酸触媒の含有量が上記範囲内であれば、水性媒体の25℃におけるpHを1.2以下に調整しやすい。特に、無機酸触媒の含有量が上記範囲内であれば、複合ゴム質重合体(G)やグラフト共重合体(A)が無機酸触媒により分解したり、着色したりするのを抑制できる。
シロキサンラテックス(m)は、オルガノシロキサンと、乳化剤と、水とを例えば高圧乳化装置によって混合することで得られる。
オルガノシロキサンとしては、鎖状オルガノシロキサン、環状オルガノシロキサンのいずれも用いることができるが、重合安定性が高く、重合速度が大きい点で、環状オルガノシロキサンが好ましい。
環状オルガノシロキサンとしては、3〜7員環のジメチルシロキサン系環状体が好ましい。具体的には、第一のポリオルガノシロキサン(Ss)の説明において先に例示した3員環以上のジメチルシロキサン系環状体などが挙げられる。
これらオルガノシロキサンは、1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
シロキサンラテックス(m)には、シロキサン系架橋剤およびシロキサン系グラフト交叉剤の少なくとも一方を含有させることができる。
シロキサンラテックス(m)がシロキサン系架橋剤を含有すれば、架橋構造を有する第二のポリオルガノシロキサン(Sm)が得られる。
シロキサン系架橋剤としては、シロキシ基を有するものが好ましい。具体的には、トリメトキシメチルシラン、トリエトキシフェニルシラン、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラ−n−プロポキシシラン、テトラブトキシシラン等の3官能性または4官能性のシラン系架橋剤が挙げられる。これらの中でも、4官能性のシラン系架橋剤が好ましく、テトラエトキシシランが特に好ましい。これらシロキサン系架橋剤は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
シロキサンラテックス(m)中のシロキサン系架橋剤の含有量は、オルガノシロキサン100質量部に対して、0.1〜30質量部が好ましく、0.5〜5質量部がより好ましく、0.5〜3質量部が特に好ましい。
シロキサン系グラフト交叉剤としては、シロキシ基を有するものが好ましい。具体的には、ビニル重合性官能基含有シロキサンの説明において先に例示したメタクリロイルオキシシロキサンおよびメルカプトシロキサンや、ビニルフェニルエチルジメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシランなどが挙げられる。これらシロキサン系グラフト交叉剤は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
シロキサンラテックス(m)中のシロキサン系グラフト交叉剤の含有量は、オルガノシロキサン100質量部に対して、0.05〜20質量部が好ましい。
シロキサン系架橋剤とシロキサン系グラフト交叉剤は併用することが好ましく、オルガノシロキサン100質量部に対して、シロキサン系架橋剤を0.5〜5質量部、シロキサン系グラフト交叉剤を0.05〜5質量部を用いることが好ましい。
乳化剤としては、アニオン系乳化剤、ノニオン系乳化剤が好ましい。
アニオン系乳化剤としては、例えばアルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム、アルキルジフェニルエーテルジスルホン酸ナトリウム、アルキル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンアルキル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル硫酸エステルナトリウムなどが挙げられる。
ノニオン系乳化剤としては、例えばポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンジスチレン化フェニルエーテル、ポリオキシエチレントリベンジルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコールなどが挙げられる。
これら乳化剤は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
シロキサンラテックス(m)中の乳化剤の含有量は、オルガノシロキサンを微小な油滴状に分散させ、この油滴と水性媒体に含まれる有機酸触媒とを適切に接触させシラノールの生成を促進させることが可能な量であることが好ましい。具体的には、シロキサンラテックス(m)中の乳化剤と、水性媒体に含まれる有機酸触媒との総量がオルガノシロキサン100質量部に対して0.5〜6質量部が好ましく、0.8〜6質量部がより好ましく、0.8〜3質量部が特に好ましい。有機酸触媒の含有量を少なくする場合は、有機酸触媒と乳化剤の総量が上記範囲内となるように乳化剤の含有量を増やせばよい。
有機酸触媒と乳化剤の総量が0.5質量部以上であれば、平均粒子径が200nm以下の第二のポリオルガノシロキサン(Sm)が得られやすくなる。また、第二のポリオルガノシロキサン(Sm)の粒子径分布を狭くすることができる。一方、有機酸触媒と乳化剤の総量が6質量部以下であれば、平均粒子径が100nm以上の第二のポリオルガノシロキサン(Sm)が得られやすくなる。また、第二のポリオルガノシロキサン(Sm)の粒子径分布を狭くすることができる。
また、シロキサンラテックス(m)中の乳化剤の含有量は、オルガノシロキサン100質量部に対して、0.05質量部以上、6質量部未満が好ましい。乳化剤の含有量が0.05質量部以上であれば、シロキサンラテックス(m)の機械的安定性が向上する。一方、乳化剤の含有量が6質量部未満であれば、複合ゴム質重合体(G)やグラフト共重合体(A)が着色するのを抑制できる。
水性媒体にシロキサンラテックス(m)を滴下する際は、オルガノシロキサンの総使用量を100質量部としたときに、オルガノシロキサンの供給量が0.05〜0.5質量部/分となる速度で滴下することが好ましく、より好ましくは0.08〜0.3質量部/分である。供給速度が上記範囲内であれば、粒子径分布の狭い第二のポリオルガノシロキサン(Sm)を効率よく生産することができる。
また、シロキサンラテックス(m)を滴下する際の水性媒体の温度は、60〜100℃が好ましい。水性媒体の温度が上記範囲内であれば、重合反応を効率よく進行させることができる。
シロキサンラテックス(m)を滴下した後は、オルガノシロキサンから発生したシラノールをほぼ完全に反応させることができる点で、60〜100℃の温度を2〜50時間程度維持することが好ましい。
なお、水性媒体の温度を30℃以下とする場合には、シラノール間の架橋反応が進行しやすくなることから、ポリオルガノシロキサンの架橋密度を上げるために、30℃以下の温度で5時間から100時間程度保持することもできる。
重合の停止は、反応液を冷却した後、反応液のpHが6〜8程度になるように水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウムなどのアルカリ性物質で反応液を中和することによって行うことができる。
第二のポリオルガノシロキサン(Sm)の平均粒子径は、上述したように、有機酸触媒および乳化剤の使用量、水性媒体のpH、シロキサンラテックス(m)の滴下速度などを調整することで制御できる。例えば、有機酸触媒と乳化剤の総量が多くなるほど平均粒子径は小さくなる傾向にあり、有機酸触媒と乳化剤の総量が少なくなるほど平均粒子径は大きくなる傾向にある。
<他の成分>
(S)成分は、第一のポリオルガノシロキサン(Ss)および第二のポリオルガノシロキサン(Sm)のみで構成されていてもよいし、本発明の効果を損なわない範囲内であれば、第一のポリオルガノシロキサン(Ss)および第二のポリオルガノシロキサン(Sm)以外の第三のポリオルガノシロキサンを含んでいてもよい。第三のポリオルガノシロキサンは、平均粒子径が30nm未満、60nm超100nm未満、200nm超のいずれかに該当するものである。
<質量比率>
(S)成分中の第一のポリオルガノシロキサン(Ss)と第二のポリオルガノシロキサン(Sm)の質量比率((Ss):(Sm))は、10〜50:90〜50であり、20〜50:80〜50が好ましい。第一のポリオルガノシロキサン(Ss)の割合が少なくなると、成形品の顔料着色性が低下したり、ブロンズ現象が発生したりしやすくなる。一方、第一のポリオルガノシロキサン(Ss)の割合が多くなると、成形品の耐衝撃性および表面平滑性が低下する。
(S)成分中の第三のポリオルガノシロキサンの含有量は、第一のポリオルガノシロキサン(Ss)および第二のポリオルガノシロキサン(Sm)の含有量の合計を100質量部としたときに、10質量部以下が好ましく、5質量部以下がより好ましい。
<複合ゴム質重合体(G)>
複合ゴム質重合体(G)は、(S)成分とアルキル(メタ)アクリレート単量体(b1)とをラジカル重合して得られるものである。このようにして得られる複合ゴム質重合体(G)は、(S)成分と、アルキル(メタ)アクリレート単量体(b1)を主成分とするポリアルキル(メタ)アクリレート(B)とが複合した複合ゴムである。
ここで、「主成分」とは、アルキル(メタ)アクリレート単量体(b1)に由来する単位を96質量%以上含むことである。
(S)成分とアルキル(メタ)アクリレート単量体(b1)とのラジカル重合は、架橋剤およびグラフト交叉剤の少なくとも一方(以下、これらを総称して「(b2)成分」ともいう。)の存在下で行うことが好ましい。(b2)成分の存在下でラジカル重合を行えば、成形品の発色性を改善できる。
(b2)成分の存在下でラジカル重合を行う場合、アルキル(メタ)アクリレート単量体(b1)に由来する単位と、架橋剤に由来する単位およびグラフト交叉剤に由来する単位の少なくとも一方とを有するポリアルキル(メタ)アクリレート(B)と、(S)成分とが複合した複合ゴム質重合体(G)が得られる。
アルキル(メタ)アクリレート単量体(b1)としては、重合性不飽和基を1つ含むアルキル(メタ)アクリレートを用いることが好ましく、例えばメチルアクリレート、エチルアクリレート、n−プロピルアクリレート、n−ブチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート等のアルキルアクリレート;ヘキシルメタクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート、n−ラウリルメタクリレート等のアルキルメタクリレートなどが挙げられる。これらの中でも、n−ブチルアクリレートが好ましい。
これらアルキル(メタ)アクリレート単量体(b1)は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
架橋剤は、重合性不飽和基を2つ以上含むアルキル(メタ)アクリレートであり、具体的には、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,3−ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブチレングリコールジ(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
グラフト交叉剤は、重合性不飽和基を2つ以上含むアルキル(メタ)アクリレートであり、具体的には、アリル(メタ)アクリレート、トリアリルシアヌレート、トリアリルイソシアヌレートなどが挙げられる。
これら架橋剤およびグラフト交叉剤は、それぞれ1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
(複合ゴム質重合体(G)の製造)
複合ゴム質重合体(G)は、(S)成分のラテックスにアルキル(メタ)アクリレート単量体(b1)を添加し、通常のラジカル重合開始剤および乳化剤を作用させて重合することによって得られる。(b2)成分の存在下でラジカル重合を行う場合は、(S)成分のラテックスにアルキル(メタ)アクリレート単量体(b1)と(b2)成分とを添加し、ラジカル重合開始剤および乳化剤を作用させて重合すればよい。
アルキル(メタ)アクリレート単量体(b1)や(b2)成分の添加方法としては、(S)成分のラテックスにアルキル(メタ)アクリレート単量体(b1)や(b2)成分を一括で添加する方法;(S)成分のラテックスにアルキル(メタ)アクリレート単量体(b1)や(b2)成分を一定速度で滴下する方法などが挙げられる。成形品の耐衝撃性を考慮すると、(S)成分のラテックスに一括で添加する方法が好ましい。
なお、(b2)成分の存在下でラジカル重合を行う場合、アルキル(メタ)アクリレート単量体(b1)と(b2)成分は個別に添加してもよいし、これらを予め混合して混合物とした後に、該混合物を(S)成分に一括または一定速度で添加してもよい。
ラジカル重合に用いるラジカル重合開始剤としては、過酸化物、アゾ系開始剤、酸化剤と還元剤とを組み合わせたレドックス系開始剤などが挙げられる。これらの中では、レドックス系開始剤が好ましく、特に硫酸第一鉄とピロリン酸ナトリウムとブドウ糖とハイドロパーオキサイドとを組み合わせたレドックス系開始剤や、硫酸第一鉄とエチレンジアミン四酢酸二ナトリウム塩とロンガリットとハイドロパーオキサイドとを組み合わせたレドックス系開始剤が好ましい。
ラジカル重合に用いる乳化剤としては特に制限されないが、重合時のラテックスの安定性に優れ、重合率を高められることから、サルコシン酸ナトリウム、脂肪酸カリウム、脂肪酸ナトリウム、アルケニルコハク酸ジカリウム、ロジン酸石鹸等の各種カルボン酸塩;アルキル硫酸エステル、アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル硫酸エステルナトリウム等のアニオン系乳化剤などが好ましく、これらは目的に応じて使い分けられる。
乳化剤の使用量は、第一のポリオルガノシロキサン(Ss)および第二のポリオルガノシロキサン(Sm)の製造に用いる乳化剤との合計が、(S)成分とアルキル(メタ)アクリレート単量体(b1)との合計100質量部に対して、0.2〜1.5質量部となる量が、粒子径調整の点から好ましい。
(S)成分の使用量は3〜20質量%であり、アルキル(メタ)アクリレート単量体(b1)の使用量は80〜97質量%(ただし、(S)成分とアルキル(メタ)アクリレート単量体(b1)の合計を100質量%とする。)である。(S)成分の使用量が3質量%未満であり、アルキル(メタ)アクリレート単量体(b1)の使用量が97質量%超であると、(S)成分の使用量が少ないため、成形品の耐衝撃性が低下する。一方、(S)成分の使用量が20質量%超であり、アルキル(メタ)アクリレート単量体(b1)の使用量が80質量%未満であると、成形品の表面平滑性および顔料着色性が低下する。また、ブロンズ現象が起こりやすくなる。
耐衝撃性と表面平滑性および顔料着色性とのバランスを考慮すると、(S)成分の使用量は6〜18質量%が好ましく、8〜16質量%がより好ましい。また、アルキル(メタ)アクリレート単量体(b1)の使用量は82〜94質量%が好ましく、84〜92質量%がより好ましい。
また、(b2)成分の存在下で重合を行う場合、(b2)成分の使用量は、アルキル(メタ)アクリレート単量体(b1)100質量部に対して、0.1〜4質量部が好ましく、0.4〜3質量部がより好ましい。
このようにして得られる複合ゴム質重合体(G)の平均粒子径は100nm〜300nmであり、100nm〜200nmであることが好ましい。複合ゴム質重合体(G)の平均粒子径が100nm以上であれば、成形品の耐衝撃性および表面平滑性が向上する。一方、複合ゴム質重合体(G)の平均粒子径が300nm以下であれば、成形品の表面平滑性および顔料着色性が向上する。また、ブロンズ現象が起こりにくくなる。
ここで、複合ゴム質重合体(G)の平均粒子径は、レーザ回折・光散乱法により測定される体積基準の平均粒子径(体積平均粒子径)である。
また、高レベルな表面平滑性を有する成形品が得られやすくなる点で、複合ゴム質重合体(G)100質量%あたり、粒子径が400nm以上の粒子の割合が4質量%以下であることが好ましく、より好ましくは3質量%以下であり、特に好ましくは2質量%以下である。
<グラフト共重合体(A)の製造方法>
本発明のグラフト共重合体(A)は、複合ゴム質重合体(G)に(c)成分をグラフト重合して得られる。
(c)成分は、芳香族アルケニル化合物単量体、シアン化ビニル化合物単量体、およびアルキル(メタ)アクリレート単量体からなる群より選ばれる1種以上の単量体である。
芳香族ビニル化合物単量体としては、例えばスチレン、α−メチルスチレン、o−メチルスチレン、p−メチルスチレン、2,4−ジメチルスチレン、p−t−ブチルスチレン、ハロゲン化スチレン、ビニルトルエンなどが挙げられる。これらの中でも、スチレンが好ましい。
シアン化ビニル化合物単量体としては、例えばアクリロニトリル、メタクリロニトリル、エタクリロニトリル、マレオニトリル、フマロニトリルなどが挙げられる。これらの中でも、アクリロニトリルが好ましい。
アルキル(メタ)アクリレート単量体としては、例えばメチルメタクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート、メチルアクリレート、エチルアクリレート、n−ブチルアクリレートなどが挙げられる。
これら芳香族ビニル化合物単量体、シアン化ビニル化合物単量体、およびアルキル(メタ)アクリレート単量体は、それぞれ1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
グラフト重合は、複合ゴム質重合体(G)のラテックスに(c)成分を加え、通常のラジカル重合開始剤および乳化剤を作用させて一段であるいは多段で行うことができる。成形品の耐衝撃性や顔料着色性を考慮すると、二段以上で重合を行うことが好ましい。
複合ゴム質重合体(G)の使用量は10〜80質量%であることが好ましく、(c)成分の使用量は20〜90質量%(ただし、複合ゴム質重合体(G)と(c)成分との合計を100質量%とする。)であることが好ましい。複合ゴム質重合体(G)と(c)成分の使用量が上記範囲内であれば、成形品の耐衝撃性および表面平滑性がより向上する。
耐衝撃性と表面平滑性のバランスを考慮すると、複合ゴム質重合体(G)の使用量は30〜70質量%がより好ましく、(c)成分の使用量は30〜70質量%がより好ましい。
また、グラフト重合に使用される(c)成分の組成比率は特に制限されないが、成形品の物性バランスの観点から、芳香族ビニル化合物単量体の割合が5〜95質量%であり、シアン化ビニル化合物単量体の割合が0〜50質量%であり、アルキル(メタ)アクリレート単量体の割合が0〜95質量%(ただし、各単量体の合計を100質量%とする。)であることが好ましい。
グラフト重合に用いるラジカル重合開始剤および乳化剤としては、複合ゴム質重合体(G)の製造方法の説明において先に例示したラジカル重合開始剤および乳化剤などが挙げられる。
なお、グラフト共重合体(A)の製造においては、複合ゴム質重合体(G)の製造に用いた乳化剤をそのまま利用することができ、グラフト重合時に乳化剤を改めて添加しなくてもよい。
また、グラフト重合を行う際には、得られるグラフト共重合体(A)の分子量やグラフト率を制御するため、各種公知の連鎖移動剤(例えばメルカプタン系化合物、テルペン系化合物、α−メチルスチレン二量体等)を添加してもよい。
重合条件は特に限定されない。
グラフト共重合体(A)は、通常、ラテックスの状態で得られる。グラフト共重合体(A)のラテックスからグラフト共重合体(A)を回収する方法としては、凝固剤を溶解させた熱水中にラテックスを投入して、スラリー状態に凝析することによって回収する方法(湿式法);加熱雰囲気中にラテックスを噴霧することによって、半直接的にグラフト共重合体(D)を回収する方法(スプレードライ法)などが挙げられる。
凝固剤としては、例えば塩化カルシウム、酢酸カルシウム、硫酸アルミニウム等の金属塩などが挙げられる。
グラフト共重合体(A)のグラフト率は、10〜150質量%が好ましい。グラフト共重合体(D)のグラフト率が上記範囲内であれば、熱可塑性樹脂組成物の成形性および成形品の耐衝撃性がより向上する。
成形性と耐衝撃性のバランスを考慮すると、グラフト共重合体(A)のグラフト率は20〜100質量%がより好ましい。
ここで、「グラフト率」とは、複合ゴム質重合体(G)に対し、ゴムに直接グラフト結合している(c)成分の割合のことである。
グラフト共重合体(A)のグラフト率は、以下のようにして測定できる。
グラフト共重合体(A)1gを80mLのアセトンに添加し、65〜70℃にて3時間加熱還流し、得られた懸濁アセトン溶液を遠心分離機にて14,000rpm、30分間遠心分離して、沈殿成分(アセトン不溶成分)とアセトン溶液(アセトン可溶成分)を分取する。そして、沈殿成分(アセトン不溶成分)を乾燥させてその質量(Y(g))を測定し、下記式(1)によりグラフト率を算出する。なお、式(1)におけるYは、グラフト共重合体(A)のアセトン不溶成分の質量(g)、XはYを求める際に使用したグラフト共重合体(A)の全質量(g)、ゴム分率はグラフト共重合体(A)の複合ゴム質重合体(G)の固形分換算での含有割合である。
グラフト率(質量%)={(Y−X×ゴム分率)/X×ゴム分率}×100 ・・・(1)
<作用効果>
以上説明した本発明のグラフト共重合体(A)は、上述した複合ゴム質重合体(G)に(c)成分をグラフト重合して得られるものである。複合ゴム質重合体(G)は、特定量の(S)成分と、アルキル(メタ)アクリレート単量体(b1)を主成分とするポリアルキル(メタ)アクリレート(B)とが複合化したものであり、特定の平均粒子径を有する。また、(S)成分は、少なくとも第一のポリオルガノシロキサン(Ss)と第二のポリオルガノシロキサン(Sm)とを特定の質量比率で含むものである。このような構成のグラフト共重合体(A)は、耐衝撃性、表面平滑性、顔料着色性に優れ、ブロンズ現象が起こりにくい成形品を得ることができる熱可塑性樹脂組成物の材料として好適である。
「熱可塑性樹脂組成物」
本発明の熱可塑性樹脂組成物は、上述した本発明のグラフト共重合体(A)を含有する。熱可塑性樹脂組成物はグラフト共重合体(A)のみで構成されていてもよいが、グラフト共重合体(A)以外の熱可塑性樹脂(他の熱可塑性樹脂(D))を含有することが好ましい。また、熱可塑性樹脂組成物は添加剤を含有していてもよい。
他の熱可塑性樹脂(D)としては、例えばアクリロニトリル−スチレン共重合体(AS樹脂)、アクリロニトリル−スチレン−N−フェニルマレイミド共重合体、アクリロニトリル−スチレン−α−メチルスチレン−N−フェニルマレイミド共重合体、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体(ABS樹脂)、アクリロニトリル−エチレン−プロピレン−ジエン−スチレン共重合体(AES樹脂)、ポリメタクリル酸メチル、ポリカーボネート樹脂、ポリブチレンテレフタレート(PBT樹脂)、ポリエチレンテレフタレート(PET樹脂)、ポリ塩化ビニル、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン、スチレン−ブタジエン−スチレン(SBS)、スチレン−ブタジエン(SBR)、水素添加SBS、スチレン−イソプレン−スチレン(SIS)等のスチレン系エラストマー、各種オレフィン系エラストマー、各種ポリエステル系エラストマー、ポリスチレン、メチルメタクリレート−スチレン共重合体(MS樹脂)、アクリロニトリル−スチレン−メタクリル酸メチル共重合体、ポリアセタール樹脂、変性ポリフェニレンエーテル(変性PPE樹脂)、エチレン−酢酸ビニル共重合体、PPS樹脂、PES樹脂、PEEK樹脂、ポリアリレート、液晶ポリエステル樹脂およびポリアミド樹脂(ナイロン)等が挙げられる。
これら他の熱可塑性樹脂(D)は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
添加剤としては、酸化防止剤や光安定剤等の各種安定剤、染料や顔料等の着色剤、滑剤、可塑剤、離型剤、帯電防止剤、無機充填剤などが挙げられる。
熱可塑性樹脂組成物中のグラフト共重合体(A)の含有量は20〜60質量%であることが好ましく、他の熱可塑性樹脂(D)の含有量は40〜80質量%(ただし、グラフト共重合体(A)と他の熱可塑性樹脂(D)の合計を100質量%とする。)であることが好ましい。
熱可塑性樹脂組成物は、グラフト共重合体(A)と、他の熱可塑性樹脂(D)と、必要に応じて添加剤とをV型ブレンダやヘンシェルミキサー等により混合分散させ、これにより得られた混合物をスクリュー式押出機、バンバリーミキサ、加圧ニーダ、ミキシングロール等の溶融混練機等を用いて溶融混練することにより製造される。また、必要に応じてペレタイザー等を用いて溶融混練物をペレット化してもよい。
<作用効果>
以上説明した本発明の熱可塑性樹脂組成物は、本発明のグラフト共重合体(A)を含有するので、耐衝撃性、表面平滑性、顔料着色性に優れ、ブロンズ現象が起こりにくい成形品を得ることができる。
「成形品」
本発明により得られる成形品は、本発明の熱可塑性樹脂組成物を公知の成形方法によって成形してなるものであり、耐衝撃性、表面平滑性、顔料着色性に優れ、ブロンズ現象が起こりにくい。
成形方法としては、例えば射出成形法、プレス成形法、押出成形法、真空成形法、ブロー成形法等が挙げられる。
成形品の用途としては、車両外装部品、事務機器、家電、建材等が挙げられ、車両外装部品が好適である。
以下、実施例および比較例により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。なお、以下の例中の「%」および「部」は明記しない限りは質量基準である。
以下の実施例および比較例における各種測定および評価方法は、以下の通りである。
「測定・評価」
<ポリオルガノシロキサンの平均粒子径の測定>
粒度分布計(MATEC APPLIED SCIENCES社製、「CHDF−2000」)を用い、キャリア液として2XGR500(商品名)を用いて、ポリオルガノシロキサンの質量基準の平均粒子径を測定した。
<複合ゴム質重合体の平均粒子径の測定>
ナノトラック粒度分布計(日機装株式会社製、「UPA−EX150」)を用い、測定溶媒としてイオン交換水を用いて、複合ゴム質重合体ラテックスの体積基準の平均粒子径を測定した。これを複合ゴム質重合体の平均粒子径とする。
<耐衝撃性の評価>
ISO 3167に準拠してペレット状の熱可塑性樹脂組成物から、射出成形機(東芝機械株式会社製、「IS55FP−1.5A」)によって試験片を作製した。この試験片のシャルピー衝撃強度をISO 179に準拠して、23℃雰囲気下で測定した。
<表面平滑性の評価>
ペレット状の熱可塑性樹脂組成物から、4オンス射出成形機(株式会社日本製鋼所製、)を用い、シリンダー設定温度260℃、金型温度60℃、射出率が60g/秒の条件で、長さ100mm、幅100mm、厚み3mmの板状の試験片を作製した。
次いで、得られた試験片上に、真空蒸着機(アルバック機工株式会社製、「VPC−1100」)により、真空度6.0×10−3Pa、成膜速度1nm/秒の条件で膜厚50nmのアルミニウム蒸着膜を形成した。このようにしてダイレクト蒸着を行った成形品について、反射率計(有限会社東京電色製、「TR−1100AD」)を用いて拡散反射率を測定した。拡散反射率が小さいほど、表面平滑性に優れることを意味する。
<顔料着色性(発色性)の評価>
ペレット状の熱可塑性樹脂組成物から、4オンス射出成形機(株式会社日本製鋼所製、)を用い、シリンダー設定温度260℃、金型温度60℃、射出率が60g/秒の条件で、長さ100mm、幅100mm、厚み3mmの板状の試験片を作製した。
得られた試験片について、分光測色計(コニカミノルタ株式会社製「CM−508D」)を用いて明度(L)を、SCE方式にて測定した。Lが低いほど黒色となり、顔料着色性(発色性)に優れることを意味する。
<ブロンズ現象の評価>
ペレット状の熱可塑性樹脂組成物から、4オンス射出成形機(株式会社日本製鋼所製、)を用い、シリンダー設定温度260℃、金型温度60℃、射出率が60g/秒の条件で、長さ100mm、幅100mm、厚み3mmの板状の試験片を作製した。
得られた試験片にLED光源装置(株式会社ケンコー・トキナー製、「テクノライトKTL−100」)を用いて光を照射し、ブロンズ現象の発生の有無を目視にて確認し、以下の評価基準にて評価した。
○:ブロンズ現象が発生していない。
△:ブロンズ現象が僅かに発生した。
×:ブロンズ現象が顕著に発生した。
「ポリオルガノシロキサンの製造」
<製造例1:ポリオルガノシロキサン(Ss−1)の製造>
オクタメチルシクロテトラシロキサン98部、γ−メタクリロイルオキシプロピルジメトキシメチルシラン2部を混合してシロキサン混合物100部を得た。これに、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム0.67部、イオン交換水300部からなる水溶液を添加し、ホモミキサーにて10000回転/分で2分間撹拌した後、ホモジナイザーに300kg/cmの圧力で2回通し、安定な予備混合オルガノシロキサンラテックスを得た。
別途、試薬注入容器、冷却管、ジャケット加熱機および攪拌装置を備えた反応器内に、ドデシルベンゼンスルホン酸10部と、イオン交換水90部とを投入し、10%のドデシルベンゼンスルホン酸水溶液(酸触媒水溶液)を調製した。
この酸触媒水溶液を85℃に加熱した状態で、予備混合オルガノシロキサンラテックスを2時間にわたって滴下し、滴下終了後3時間その温度を維持した後、40℃以下に冷却した。次いで、この反応物を10%水酸化ナトリウム水溶液でpH7.0に中和して、ポリオルガノシロキサン(Ss−1)のラテックスを得た。
得られたポリオルガノシロキサン(Ss−1)のラテックスを180℃で30分乾燥して固形分を求めたところ18.2%であった。また、質量基準の平均粒子径は30nmであった。平均粒子径の測定結果を表1に示す。
<製造例2:ポリオルガノシロキサン(Ss−2)、(Ss−3)の製造>
表1に示す組成の酸触媒水溶液を用い、かつ該酸触媒水溶液の温度を表1に示すように変更した以外は、製造例1と同様にしてポリオルガノシロキサン(Ss−2)、(Ss−3)のラテックスを得た。
得られたポリオルガノシロキサン(Ss−2)、(Ss−3)のラテックスの固形分と質量基準の平均粒子径を表1に示す。
Figure 2015093927
<製造例3:ポリオルガノシロキサン(Sm−1)の製造>
環状オルガノシロキサン混合物として、3員環のジメチルシロキサン系環状体5%と、4員環のジメチルシロキサン系環状体85%と、5員環のジメチルシロキサン系環状体3%と、6員環のジメチルシロキサン系環状体6%と、7員環のジメチルシロキサン系環状体1%とからなる混合物(信越化学工業株式会社製、「DMC」)を用いた。
環状オルガノシロキサン混合物97.5部、テトラエトキシシラン2部、γ−メタクリロイルオキシプロピルジメトキシメチルシラン0.5部を混合してシロキサン混合物100部を得た。これにドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム0.68部、イオン交換水300部からなる水溶液を添加し、ホモミキサーにて10000回転/分で2分間撹拌した後、ホモジナイザーに200kg/cmの圧力で1回通し、安定な予備混合オルガノシロキサンラテックスを得た。
別途、試薬注入容器、冷却管、ジャケット加熱機および攪拌装置を備えた反応器内に、ドデシルベンゼンスルホン酸1.0部と、硫酸1.38部と、イオン交換水90部とを投入し、25℃でのpHが0.84の水性媒体を調製した。
この水性媒体を90℃に加熱した状態で、予備混合オルガノシロキサンラテックスの供給量が0.42部/分となる速度(実質4時間)で滴下し、滴下終了後2時間その温度を維持した後、冷却した。次いで、この反応物を室温(25℃)で12時間保持した後、10%水酸化ナトリウム水溶液でpH7.0に中和して、ポリオルガノシロキサン(Sm−1)のラテックスを得た。
得られたポリオルガノシロキサン(Sm−1)のラテックスを180℃で30分乾燥して固形分を求めたところ17.3%であった。また、質量基準の平均粒子径は133nmであった。平均粒子径の測定結果を表2に示す。
<製造例4:ポリオルガノシロキサン(Sm−2)〜(Sm−5)の製造>
表2に示す組成の水性媒体を用い、かつ予備混合オルガノシロキサンラテックスの供給量を表2に示す供給速度になるように変更した以外は、製造例3と同様にしてポリオルガノシロキサン(Sm−2)〜(Sm−5)のラテックスを得た。
得られたポリオルガノシロキサン(Sm−2)〜(Sm−5)のラテックスの固形分と質量基準の平均粒子径を表2に示す。
Figure 2015093927
「グラフト共重合体の製造」
<製造例5:グラフト共重合体(A−1)の製造>
試薬注入容器、冷却管、ジャケット加熱機および攪拌装置を備えた反応器内に、ポリオルガノシロキサン(Ss−1)のラテックスを固形分換算で1.0部と、ポリオルガノシロキサン(Sm−1)のラテックスを固形分換算で6.0部と、アルケニルコハク酸ジカリウム0.48部と、イオン交換水190部とを仕込んで混合した。次いで、n−ブチルアクリレート43.0部、アリルメタクリレート0.26部、1,3−ブチレングリコールジメタクリレート0.09部、t−ブチルハイドロパーオキサイド0.11部からなる混合物を添加した。この反応器に窒素気流を通じることによって雰囲気の窒素置換を行い、内温を60℃まで昇温した。内温が60℃に達した時点で、硫酸第一鉄七水塩0.000075部、エチレンジアミン四酢酸二ナトリウム塩0.00023部、ロンガリット0.2部、イオン交換水10部からなる水溶液を添加し、ラジカル重合を開始させた。アクリレート成分の重合により、液温は78℃まで上昇した。1時間この状態を維持し、アクリレート成分の重合を完結させてポリオルガノシロキサンとn−ブチルアクリレートゴム(ポリアルキル(メタ)アクリレート)とが複合した複合ゴム質重合体(G)のラテックスを得た。
得られた複合ゴム質重合体(G)の体積基準の平均粒子径は162nmであった。平均粒子径の測定結果を表3に示す。
反応器内部の液温が70℃に低下した後、この複合ゴム質重合体(G)のラテックスに、硫酸第一鉄七水塩0.001部、エチレンジアミン四酢酸二ナトリウム塩0.003部、ロンガリット0.3部、イオン交換水10部からなる水溶液を添加した。次いで、アクリロニトリル10部、スチレン30部、t−ブチルハイドロパーオキサイド0.18部からなる混合液を80分間にわたって滴下し、重合した。滴下終了後、温度75℃の状態を30分保持した後、アクリロニトリル2.5部、スチレン7.5部、t−ブチルハイドロパーオキサイド0.05部、n―オクチルメルカプタン0.02部からなる混合物を20分にわたって滴下し、重合した。滴下終了後、温度75℃の状態を30分保持した後、クメンヒドロパーオキシド0.05部を添加し、さらに温度75℃の状態を30分保持した後、冷却し、複合ゴム質重合体(G)に、アクリロニトリルとスチレンをグラフト重合させたシリコーン/アクリル複合ゴム系のグラフト共重合体(A−1)のラテックスを得た。
次いで、1%酢酸カルシウム水溶液150部を60℃に加熱し、この中へグラフト共重合体(A−1)のラテックス100部を徐々に滴下して凝固した。そして、析出物を分離し、脱水、洗浄した後に乾燥して、グラフト共重合体(A−1)を得た。
<製造例6:グラフト共重合体(A−2)〜(A−119)の製造>
(S)成分の種類と量、n−ブチルアクリレートの量、およびアルケニルコハク酸ジカリウムの量を表3〜7に示すように変更した以外は、製造例5と同様にしてグラフト共重合体(A−2)〜(A−119)を製造した。各例で得られたグラフト共重合体(A−2)〜(A−119)を構成する複合ゴム質重合体(G)の平均粒子径を表3〜7に示す。
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「他の熱可塑性樹脂(D)」
<製造例7:他の熱可塑性樹脂(D−1)の製造>
アクリロニトリル25部およびスチレン75部を公知の懸濁重合により重合し、N,N−ジメチルホルムアミド溶液から25℃で測定した還元粘度が0.51dl/gであるアクリロニトリル−スチレン共重合体を得た。これを他の熱可塑性樹脂(D−1)とする。
<製造例8:他の熱可塑性樹脂(D−2)の製造>
アクリロニトリル28部、スチレン26部、α−メチルスチレン36部、N−フェニルマレイミド10部を公知の懸濁重合により重合し、N,N−ジメチルホルムアミド溶液から25℃で測定した還元粘度が0.62dl/gであるアクリロニトリル−スチレン−α−メチルスチレン−N−フェニルマレイミド共重合体を得た。これを他の熱可塑性樹脂(D−2)とする。
<他の熱可塑性樹脂(D−3)>
ポリカーボネート樹脂(三菱エンジニアリングプラスチック株式会社製、「ユーピロンS2000F」)を他の熱可塑性樹脂(D−3)として用いた。
<他の熱可塑性樹脂(D−4)>
ポリメタクリル酸メチル(三菱レイヨン株式会社製、「アクリペットSVK」)を他の熱可塑性樹脂(D−4)として用いた。
<他の熱可塑性樹脂(D−5)>
ポリメタクリル酸メチル(三菱レイヨン株式会社製、「アクリペットVHSK」)を他の熱可塑性樹脂(D−5)として用いた。
「実施例1〜74、比較例1〜47」
表8〜17に示す量のグラフト共重合体(A)および他の熱可塑性樹脂(D)と、エチレンビスステアリルアミド0.8部と、シリコーンオイルSH200(東レ・ダウコーニング株式会社製)0.2部と、アデカスタブAO−50(株式会社ADEKA製)0.2部と、カーボンブラック0.8部とをヘンシェルミキサーを用いて混合した。スクリュー式押出機(株式会社日本製鋼所製、「TEX−30α型二軸押出機」)を用いて、得られた混合物を260℃にて溶融混練した後、ペレタイザーにてペレット化した熱可塑性樹脂組成物を得た。
得られた熱可塑性樹脂組成物を用いて試験片を作製し、耐衝撃性、表面平滑性、顔料着色性、ブロンズ現象を評価した。これらの結果を表8〜17に示す。
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表8〜17中の「(Ss)の平均粒子径」、「(Sm)の平均粒子径」は、グラフト共重合体(A)の製造に用いた複合ゴム質重合体(G)に含まれるポリオルガノシロキサン(Ss)、(Sm)の質量基準の平均粒子径である。また、「(G)の平均粒子径」は、グラフト共重合体(A)の製造に用いた複合ゴム質重合体(G)の体積基準の平均粒子径である。
「(Ss):(Sm)」は、グラフト共重合体(A)の製造に用いた複合ゴム質重合体(G)に含まれるポリオルガノシロキサン(Ss)とポリオルガノシロキサン(Sm)の使用量の質量比率である。
「(S):(b1)」は、グラフト共重合体(A)の製造に用いた複合ゴム質重合体(G)に含まれる(S)成分とn−ブチルアクリレートとの合計を100質量%とした場合の、(S)成分とn−ブチルアクリレートの使用量の質量比率である。
表8〜13、17に示すように、各実施例で得られた熱可塑性樹脂組成物からは、耐衝撃性、表面平滑性、顔料着色性に優れ、ブロンズ現象が起こりにくい成形品が得られた。
一方、表14〜17に示すように、各比較例の場合、成形品の耐衝撃性、表面平滑性、顔料着色性の何れかの項目に劣るか、ブロンズ現象の発生を抑制できなかった。
具体的には、比較例1〜12の場合、ポリオルガノシロキサン(Ss)の平均粒子径が80nmであったため、表面平滑性および顔料着色性に劣っていた。また、ブロンズ現象が発生した。
比較例13〜24の場合、ポリオルガノシロキサン(Sm)の平均粒子径が90nmであったため、耐衝撃性および表面平滑性に劣っていた。
比較例25〜36の場合、ポリオルガノシロキサン(Sm)の平均粒子径が213nmであったため、顔料着色性に劣っていた。また、ブロンズ現象が発生した。
比較例37、38の場合、(S)成分の量が2質量%であり、アルキル(メタ)アクリレート単量体(b1)の量が98質量%であったため、耐衝撃性に劣っていた。
比較例39、40の場合、(S)成分の量が24質量%であり、アルキル(メタ)アクリレート単量体(b1)の量が76質量%であったため、表面平滑性および顔料着色性に劣っていた。また、ブロンズ現象が発生した。
比較例41の場合、ポリオルガノシロキサン(Ss)を用いなかったため、顔料着色性に劣っていた。また、ブロンズ現象が発生した。
比較例42の場合、ポリオルガノシロキサン(Ss):ポリオルガノシロキサン(Sm)の質量比率が4:96であったため、顔料着色性に劣っていた。また、ブロンズ現象が発生した。
比較例43、44の場合、ポリオルガノシロキサン(Ss):ポリオルガノシロキサン(Sm)の質量比率が60:40、または96:4であったため、耐衝撃性および表面平滑性に劣っていた。
比較例45の場合、ポリオルガノシロキサン(Sm)を用いなかったため、耐衝撃性および表面平滑性に劣っていた。
比較例46の場合、複合ゴム質重合体(G)の平均粒子径が320nmであったため、表面平滑性および顔料着色性に劣っていた。また、ブロンズ現象が発生した。
比較例47の場合、複合ゴム質重合体(G)の平均粒子径が90nmであったため、耐衝撃性および表面平滑性に劣っていた。
本発明によれば、耐衝撃性、表面平滑性、顔料着色性に優れ、ブロンズ現象が起こりにくい成形品を得ることができる熱可塑性樹脂組成物の材料として好適なグラフト共重合体、および該グラフト共重合体を含有する熱可塑性樹脂組成物を提供することができる。特に成形品の耐衝撃性、表面平滑性、および顔料着色性のバランスは、従来の熱可塑性樹脂組成物を成形した成形品では得られない非常に高いレベルであり、車両用外装部品、OA機器、電気・電子機器等、各種工業用材料としての利用価値は高い。また、本発明の熱可塑性樹脂組成物は、ダイレクト蒸着用としても好適である。

Claims (2)

  1. 平均粒子径の異なる2種類以上のポリオルガノシロキサン3〜20質量%と、アルキル(メタ)アクリレート単量体80〜97質量%(ただし、2種類以上のポリオルガノシロキサンとアルキル(メタ)アクリレート単量体の合計を100質量%とする。)とをラジカル重合して得られる複合ゴム質重合体に、芳香族アルケニル化合物単量体、シアン化ビニル化合物単量体、およびアルキル(メタ)アクリレート単量体からなる群より選ばれる1種以上の単量体をグラフト重合して得られるグラフト共重合体であって、
    前記2種類以上のポリオルガノシロキサンは、平均粒子径が30〜60nmである第一のポリオルガノシロキサン(Ss)と、平均粒子径が100〜200nmである第二のポリオルガノシロキサン(Sm)とを少なくとも含み、かつ、第一のポリオルガノシロキサン(Ss)と第二のポリオルガノシロキサン(Sm)の質量比率((Ss):(Sm))が10〜50:90〜50であり、
    前記複合ゴム質重合体の平均粒子径が100〜300nmである、グラフト共重合体。
  2. 請求項1に記載のグラフト共重合体を含有する、熱可塑性樹脂組成物。
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