JP5672476B2 - ポリオルガノシロキサン系樹脂改質剤及びその製造方法、熱可塑性樹脂組成物、並びに成形体 - Google Patents

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Description

本発明は、ポリオルガノシロキサン系ゴムを含有する樹脂改質剤及びその製造方法、熱可塑性樹脂に該樹脂改質剤を配合した熱可塑性樹脂組成物、並びに該熱可塑性樹脂組成物を成形して得られる成形体に関する。
家電分野、電気・電子機器分野、プリンタ等のOA機器をはじめとする種々の分野では、熱可塑性樹脂を用いた成形体が広く用いられている。該成形体には優れた耐衝撃性、難燃性、耐候性等が要求され、また成形に用いる樹脂組成物には優れた流動性が要求される。特に、近年ではコスト低減を目的として成形体の薄肉化及び軽量化が進められている。そのため、軽量・薄肉化を行なっても充分な耐衝撃性、難燃性、流動性を得る必要がある。
熱可塑性樹脂を用いた成形体の耐衝撃性、難燃性等の機能を向上させる方法として、以下に示す方法が示されている。
例えば、ポリオルガノシロキサン系ゴムとポリアルキル(メタ)アクリレート系ゴムとからなる複合ゴムにビニル単量体をグラフト重合させた複合ゴムグラフト共重合体を配合する方法(特許文献1)が示されている。
また、低架橋のポリオルガノシロキサン系ゴムに対して、多官能性ビニル単量体を主成分とするビニル単量体をグラフト重合させたグラフト共重合体を配合する方法(特許文献2)が示されている。
しかしながら、特許文献1及び2に示されている方法では、難燃性の向上効果が充分ではなく、また、流動性も充分ではない。
特開2000−17029号公報 特開2003−238639号公報
本発明は、熱可塑性樹脂に配合することで、耐衝撃性、難燃性及び流動性の向上効果を有する、ポリオルガノシロキサン系ゴムを含有する樹脂改質剤及びその製造方法、該樹脂改質剤を配合した熱可塑性樹脂組成物、並びに該熱可塑性樹脂組成物を成形して得られる成形体の提供を目的とする。
本発明は、前記課題を解決するために以下の構成を採用した。
[1]ポリオルガノシロキサン系ゴム(A)60〜93質量%の存在下で、多官能性ビニル単量体(b1)を主成分とするビニル単量体(B)7〜40質量%を重合して得られたグラフト共重合体(C)のラテックスと、ビニル単量体(s)を重合して得られたビニル重合体(S)のラテックスを、グラフト共重合体(C)55〜90質量%、ビニル重合体(S)10〜45質量%の比率で混合した後、粉体化する、樹脂改質剤の製造方法。
[2]熱可塑性樹脂100質量部に対して、前記[1]記載の樹脂改質剤1〜20質量部を配合して得られる熱可塑性樹脂組成物。
[3]前記[2]記載の熱可塑性樹脂組成物を成形して得られる成形体。
本発明の製造方法で得られる樹脂改質剤は、熱可塑性樹脂に配合することで、耐衝撃性、難燃性及び流動性に優れた熱可塑性樹脂組成物とすることができる。
本発明の熱可塑性樹脂組成物は、耐衝撃性、難燃性及び流動性が優れる。
また、本発明の成形体は、耐衝撃性に優れ、充分な難燃性を有する。
本発明の樹脂改質剤は、ポリオルガノシロキサン系ゴム(A)の存在下で、多官能性ビニル単量体(b1)を主成分とするビニル単量体(B)を重合して得られたグラフト共重合体(C)のラテックスと、ビニル重合体(S)のラテックスを、特定の比率で混合した後、粉体化して製造される。
本発明で用いるポリオルガノシロキサン系ゴム(A)は、ビニル重合性官能基を有するポリオルガノシロキサン系ゴムであることが好ましい。
ポリオルガノシロキサン系ゴム(A)は、下記成分(a1)〜(a3)を重合することにより得られる。
成分(a1):ジメチルシロキサン
成分(a2):ビニル重合性官能基を有するシロキサン
成分(a3):シロキサン系架橋剤
成分(a1)としては、例えば、3員環以上のジメチルシロキサン系環状体が挙げられ、3〜7員環のものが好ましい。具体的には、例えば、ヘキサメチルシクロトリシロキサン、オクタメチルシクロテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、ドデカメチルシクロヘキサシロキサンが挙げられる。なかでも、粒子径分布の制御が容易である点から、主成分としてオクタメチルシクロテトラシロキサンを用いることが好ましい。
成分(a1)は、1種を単独で又は2種以上を併用することができる。
成分(a2)は、ビニル重合性官能基を有し、成分(a1)とシロキサン結合を介して結合し得るシロキサン化合物である。成分(a2)は、ポリオルガノシロキサンの側鎖又は末端にビニル重合性官能基を導入するための成分であり、このビニル重合性官能基は、後述するビニル単量体(B)から形成されるビニル(共)重合体と化学結合する際のグラフト活性点として作用するものである。
成分(a2)としては、例えば、β−メタクリロイルオキシエチルジメトキシメチルシラン、γ−メタクリロイルオキシプロピルジメトキシメチルシラン、γ−メタクリロイルオキシプロピルメトキシジメチルシラン、γ−メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メタクリロイルオキシプロピルエトキシジエチルシラン、γ−メタクリロイルオキシプロピルジエトキシメチルシラン及びδ−メタクリロイルオキシブチルジエトキシメチルシラン等のメタクリロイルオキシシラン;テトラメチルテトラビニルシクロテトラシロキサン等のビニルシロキサン;p−ビニルフェニルジメトキシメチルシラン等のビニルフェニルシラン;γ−メルカプトプロピルジメトキシメチルシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン等のメルカプトシロキサンが挙げられる。
成分(a2)は、1種を単独で又は2種以上を併用することができる。
成分(a3)としては、3官能性又は4官能性のシラン系架橋剤が挙げられる。例えば、トリメトキシメチルシラン、トリエトキシフェニルシラン、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラブトキシシランが挙げられる。
成分(a3)は、得られる成形体の耐衝撃性及び難燃性が優れることから、ポリオルガノシロキサン系ゴム(A)中に1〜5質量%含有されていることが好ましい。
ポリオルガノシロキサン系ゴム(A)の製造方法としては、例えば、成分(a1)〜(a3)を含むシロキサン混合物を、乳化剤と水によって乳化させてオルガノシロキサンラテックスとし、高速回転による剪断力で微粒子化するホモミキサー又は高圧発生機による噴出力で微粒子化するホモジナイザー等を使用して前記オルガノシロキサンラテックスを微粒子化した後、酸触媒を用いて高温下で重合を行ない、次いでアルカリ性物質により酸を中和してポリオルガノシロキサンラテックスを得る方法が挙げられる。
重合に用いる酸触媒の添加方法としては、例えば、シロキサン混合物、乳化剤及び水と共に混合する方法と、シロキサン混合物が微粒子化されたオルガノシロキサンラテックスを、高温の酸水溶液中に一定速度で滴下する方法が挙げられる。
ポリオルガノシロキサン系ゴム(A)の製造方法としては、粒子径を制御しやすい点から、シロキサン混合物、乳化剤及び水と、ミセル形成能のない酸水溶液とを混合させて重合を行なう方法が好ましい。
ポリオルガノシロキサン系ゴム(A)の製造に用いる乳化剤としては、アニオン系乳化剤が好ましい。アニオン系乳化剤としては、例えば、ラウリル硫酸ナトリウム、アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル硫酸エステルナトリウムが挙げられる。なかでも、アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウムが特に好ましい。
これら乳化剤は、1種を単独で又は2種以上を併用することができる。
ポリオルガノシロキサン系ゴム(A)の重合に用いる酸触媒としては、例えば、脂肪族スルホン酸、脂肪族置換ベンゼンスルホン酸、脂肪族置換ナフタレンスルホン酸等のスルホン酸類;硫酸、塩酸、硝酸等の鉱酸類が挙げられる。なかでも、ミセル形成能のない硫酸、塩酸、硝酸等の鉱酸類を用いることが好ましい。鉱酸類を用いることにより、ポリオルガノシロキサンラテックスの粒子径分布を狭くすることが容易になり、またポリオルガノシロキサンラテックスの乳化剤成分に起因する樹脂組成物の外観不良を低減しやすい。また、低温における衝撃強度向上の点でも好ましい。
これら酸触媒は、1種を単独で又は2種以上を併用することができる。
ポリオルガノシロキサン系ゴム(A)を製造する際の重合温度は、50〜95℃が好ましく、70〜90℃がより好ましい。
また、ポリオルガノシロキサン系ゴム(A)の重合時間は、酸触媒をシロキサン混合物、乳化剤及び水と共に混合し、微粒子化を行なった後に重合する場合、2〜15時間が好ましく、5〜10時間がより好ましい。
重合は、反応液を冷却し、更にポリオルガノシロキサンラテックスを水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム等のアルカリ性物質で中和することにより停止させることができる。
ポリオルガノシロキサン系ゴム(A)の体積平均粒子径(dv)は、50〜600nmであることが好ましく、100〜500nmであることがより好ましい。ここで、前記体積平均粒子径とは、キャピラリー式粒度分布測定器で測定される値を意味する。前記体積平均粒子径が50nm以上であれば、低温における耐衝撃性が発現しやすい。また、前記体積平均粒子径が600nm以下であれば、得られる成形体の難燃性が優れる。
ポリオルガノシロキサン系ゴム(A)のトルエン不溶分は特に制限されるものではないが、50質量%以上が好ましく、80質量%以上がより好ましい。前記トルエン不溶分が50質量%以上であれば、優れた耐衝撃性が得られ、80質量%以上であれば耐衝撃性が更に向上する。
ポリオルガノシロキサン系ゴム(A)のトルエン不溶分は、ポリオルガノシロキサン系ゴム(A)中の成分(a3)の含有率を調節することにより制御できる。成分(a3)の含有率が高いほど、ポリオルガノシロキサン系ゴム(A)のトルエン不溶分の値が高くなる。
ポリオルガノシロキサン系ゴム(A)は、ポリアルキル(メタ)アクリレートを複合化させた複合ゴムでもよい。ポリアルキル(メタ)アクリレートは、ブチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート等を重合したものであることが、優れた耐衝撃性が得られることから好ましい。
本発明で用いるビニル単量体(B)は、多官能性ビニル単量体(b1)を主成分とする。
ビニル単量体(B)は、多官能性ビニル単量体(b1)を55〜100質量%含有し、75〜100質量%含有することが好ましい。ビニル単量体(B)中の多官能性ビニル単量体(b1)の含有率が55質量%以上であれば、難燃性の向上効果が充分に発現する。
多官能性ビニル単量体(b1)は、分子内に重合性不飽和結合を2つ以上有する単量体であり、例えば、アリルメタクリレート、トリアリルシアヌレート、トリアリルイソシアヌレート、ジアリルフタレート、エチレングリコールジメタクリレート、1,3−ブチレングリコールジメタクリレート、ジビニルベンゼンが挙げられる。なかでも、耐衝撃性、流動性及び難燃性を発現させる効果が高いことから、アリルメタクリレートが好ましい。
これら多官能性ビニル単量体(b1)は、1種を単独で又は2種以上を併用することができる。
ビニル単量体(B)は、必要に応じて、他のビニル単量体(b2)を含有することができる。
ビニル単量体(B)は、他のビニル単量体(b2)を0〜45質量%含有し、0〜25質量%含有することが好ましい。ビニル単量体(B)中の他のビニル単量体(b2)の含有率が45質量%以下であれば、難燃性の向上効果が充分に発現する。
他のビニル単量体(b2)としては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート、フェニルメタクリレート等の(メタ)アクリレート;スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン等の芳香族ビニル単量体;(メタ)アクリロニトリル等のシアン化ビニル単量体;(メタ)アクリル酸、(無水)マレイン酸、フマル酸等の不飽和カルボン酸;マレイミド、N−メチルマレイミド等のマレイミド類が挙げられる。
これらの単量体は、1種を単独で又は2種以上を併用することができる。
ポリオルガノシロキサン系ゴム(A)の存在下で、多官能性ビニル単量体(b1)を主成分とするビニル単量体(B)を重合する方法は、ポリオルガノシロキサン系ゴム(A)のラテックスにビニル単量体(B)を加え、ラジカル重合法により一段又は多段で行なうことができる。
グラフト共重合体(C)は、ポリオルガノシロキサン系ゴム(A)60〜93質量%の存在下で、ビニル単量体(B)7〜40質量%を重合して得られる。ここで、(A)と(B)の合計は100質量%である。
グラフト共重合体(C)は、ポリオルガノシロキサン系ゴム(A)70〜93質量%の存在下で、ビニル単量体(B)7〜30質量%を重合して得ることが好ましい。
ポリオルガノシロキサン系ゴム(A)の前記使用量が60質量%以上であれば、充分な難燃性が発現する。また、ポリオルガノシロキサン系ゴム(A)の前記使用量が93質量%以下であれば、充分な耐衝撃性が発現する。
ビニル単量体(B)の前記使用量が7質量%以上であれば、充分な耐衝撃性が発現する。また、ビニル単量体(B)の前記使用量が40質量%以下であれば、充分な難燃性が発現する。
本発明のビニル重合体(S)は、ビニル単量体(s)を重合して得られる。
ビニル単量体(s)としては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート、フェニルメタクリレート等の(メタ)アクリレート;スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン等の芳香族ビニル単量体;(メタ)アクリロニトリル等のシアン化ビニル単量体;(メタ)アクリル酸、(無水)マレイン酸、フマル酸等の不飽和カルボン酸;マレイミド、N−メチルマレイミド等のマレイミド類が挙げられる。
これらの単量体は、1種を単独で又は2種以上を併用することができる。
ビニル重合体(S)は、各種熱可塑性樹脂中での樹脂改質剤の分散性が良好となること、燃焼時の有毒ガス発生の虞がないこと、重合性が良好であることから、炭素数1〜4のアルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレート単位を70質量%以上含有することが好ましい。
炭素数1〜4のアルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレートとしては、例えば、
メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレートが挙げられ、樹脂改質剤の取扱性及び保存安定性が良好となることから、メチルメタクリレートが好ましい。
ビニル重合体(S)は、ビニル単量体(s)を用いて、公知の重合方法、例えば、ラジカル重合開始剤を用いた乳化重合法により製造することができる。
ラジカル重合開始剤としては、例えば、有機過酸化物、無機過酸化物、アゾ系開始剤、酸化剤と還元剤を組み合わせたレドックス系開始剤が挙げられる。
有機過酸化物としては、例えば、キュメンハイドロパーオキサイド、t−ブチルハイドロパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート、ジ−t−ブチルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシラウレイト、ラウロイルパーオキサイド、コハク酸パーオキサイド、シクロヘキサンノンパーオキサイド、アセチルアセトンパーオキサイドが挙げられる。
無機過酸化物としては、例えば、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウムが挙げられる。
アゾ系開始剤としては、例えば、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス−2,4−ジメチルバレロニトリルが挙げられる。
レドックス系開始剤としては、例えば、硫酸第一鉄・エチレンジアミン四酢酸二ナトリウム塩・ロンガリット・ハイドロパーオキサイドの組み合わせが挙げられる。
ビニル重合体(S)は、分子量又はグラフト率を調整するため、各種連鎖移動剤を添加することができる。
連鎖移動剤としては、例えば、t−ドデシルメルカプタン、n−オクチルメルカプタン、n−テトラデシルメルカプタン、n−ヘキシルメルカプタンが挙げられる。
ビニル重合体(S)の乳化重合に用いる乳化剤としては、アニオン系乳化剤が好ましく、スルホン酸塩乳化剤、硫酸塩乳化剤、カルボン酸塩乳化剤がより好ましい。特に、熱可塑性樹脂として、エステル結合を有する熱可塑性樹脂を用いる場合には、加水分解を抑制する点からスルホン酸塩乳化剤が更に好ましい。
ビニル重合体(S)の質量平均分子量(Mw)は、20,000〜4,000,000が好ましく、20,000〜100,000がより好ましく、20,000〜50,000が更に好ましい。
Mwが20,000以上であれば、粉体としての取扱性が向上する。4,000,000以下であれば、流動性の向上効果が発現する。
ビニル重合体(S)の体積平均粒子径(dv)は、50〜150nmが好ましく、50〜100nmがより好ましい。
ビニル重合体(S)の体積平均粒子径がこの範囲内であれば、樹脂改質剤の分散性が良好となる。
本発明の樹脂改質剤は、グラフト共重合体(C)55〜90質量%、ビニル重合体(S)10〜45質量%の比率でラテックスを混合した後、粉体化して得られる。ここで、(C)と(S)の合計は100質量%である。
樹脂改質剤は、グラフト共重合体(C)65〜85質量%、ビニル重合体(S)15〜35質量%の比率でラテックスを混合することが好ましい。
グラフト共重合体(C)の前記使用量が55質量%以上であれば、難燃性の向上効果が充分に発現する。また、グラフト共重合体(C)の前記使用量が90質量%以下であれば、耐衝撃性と難燃性の向上効果が優れる。
ビニル重合体(S)の前記使用量が10質量%以上であれば、耐衝撃性と難燃性の向上効果が優れる。また、ビニル重合体(S)の前記使用量が45質量%以下であれば、難燃性の向上効果が充分に発現する。
グラフト共重合体(C)とビニル重合体(S)の混合ラテックスは、塩化カルシウム、酢酸カルシウム、硫酸マグネシウム、硫酸アルミニウム等の金属塩を溶解した熱水中に投入し、塩析及び凝固して、粉体化する。この操作により、樹脂改質剤を粉体として得ることができる。
また、グラフト共重合体(C)とビニル重合体(S)の混合ラテックスを、噴霧乾燥して粉体化し、樹脂改質剤を粉体として得ることもできる。
特に、熱可塑性樹脂として、エステル結合を有する熱可塑性樹脂を用いる場合には、加水分解を抑制する点から、カルシウム塩による塩析により粉体化することが好ましい。
本発明で用いる熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリカーボネート系樹脂(PC系樹脂);ポリメタクリル酸メチル(PMMA)等のアクリル系樹脂(Ac系樹脂);ポリスチレン(PS)、ハイインパクトポリスチレン(HIPS)、(メタ)アクリル酸エステル・スチレン共重合体(MS)、スチレン・アクリロニトリル共重合体(SAN)、スチレン・無水マレイン酸共重合体(SMA)、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン共重合体(ABS)、アクリロニトリル・スチレン・アクリレート共重合体(ASA)、アクリロニトリル・エチレン−プロピレン−ジエン・スチレン(AES)等のスチレン系樹脂(St系樹脂);ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)等のポリエステル系樹脂(PEs系樹脂);ポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)等のオレフィン系樹脂;ポリアミド系樹脂(PA系樹脂);(変性)ポリフェニレンエーテル系樹脂(PPE系樹脂)、ポリオキシメチレン系樹脂(POM系樹脂)、ポリスルフォン系樹脂(PSO系樹脂)、ポリアリレート系樹脂(PAr系樹脂)、ポリフェニレン系樹脂(PPS系樹脂)、熱可塑性ポリウレタン系樹脂(PU系樹脂)等のエンジニアリングプラスチックスが挙げられる。
また、スチレン系エラストマー、オレフィン系エラストマー、塩化ビニル系エラストマー、ウレタン系エラストマー、ポリエステル系エラストマー、ポリアミド系エラストマー、フッ素系エラストマー、1,2−ポリブタジエン、トランス1,4−ポリイソプレン等の熱可塑性エラストマー(TPE);PC/ABS等のPC系樹脂/St系樹脂アロイ、ポリ塩化ビニル(PVC)/ABS等のPVC系樹脂/St系樹脂アロイ、PA/ABS等のPA系樹脂/St系樹脂アロイ、PA系樹脂/TPEアロイ、PA/PP等のPA系樹脂/ポリオレフィン系樹脂アロイ、PBT系樹脂/TPE、PC/PBT等のPC系樹脂/PEs系樹脂アロイ、ポリオレフィン系樹脂/TPE、PP/PE等のオレフィン系樹脂同士のアロイ、PPE/HIPS、PPE/PBT、PPE/PA等のPPE系樹脂アロイ、PVC/PMMA等のPVC系樹脂/Ac系樹脂アロイ等のポリマーアロイ;硬質、半硬質、軟質塩化ビニル樹脂が挙げられる。
これらは、1種を単独で又は2種以上を併用することができる。
これらの中では、耐衝撃性、難燃性及び流動性が向上することから、ポリカーボネート系樹脂が好ましい。
本発明の熱可塑性樹脂組成物は、熱可塑性樹脂100質量部に対して、樹脂改質剤1〜20質量部を配合して得られる。樹脂改質剤の前記配合量は、2〜10質量部であることが好ましい。
樹脂改質剤の前記配合量が1質量部以上であれば、優れた耐衝撃性及び難燃性が発現する。また、樹脂改質剤の前記配合量が20質量部以下であれば、熱可塑性樹脂の本来の性質が損なわれることがない。
本発明の熱可塑性樹脂組成物には、必要に応じて、各種添加剤を配合してもよい。
添加剤としては、例えば、顔料;染料;ガラス繊維、金属繊維、金属フレーク、炭素繊維等の補強剤;充填剤;グラフト共重合体等の相溶化剤;2,6−ジ−ブチル−4−メチルフェノール、4,4’−ブチリデン−ビス(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)等のフェノール系酸化防止剤;トリス(ミックスド、モノ及びジニルフェニル)ホスファイト、ジフェニル・イソデシルホスファイト等のホスファイト系酸化防止剤;ジラウリルチオジプロピオネート、ジミリスチルチオジプロピオネートジアステリアルチオジプロピオネート等の硫黄系酸化防止剤;2−ヒドロキシ−4−オクトキシベンゾフェノン、2−(2−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール等のベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤;ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジニル)等の光安定剤;ヒドロキシルアルキルアミン、スルホン酸塩等の帯電防止剤;エチレンビスステアリルアミド、金属石鹸等の滑剤;テトラブロムフェノールA、デカブロモフェノールオキサイド、テトラブロモビスフェノールA(TBA)エポキシオリゴマー、TBAポリカーボネートオリゴマー、三酸化アンチモン、トリフェニルホスファイト(TPP)、リン酸エステル等の難燃剤;PTFE(ポリテトラフルオロエチレン);ビニル単量体を重合して得られた硬質重合体とフッ素樹脂を混合した変性フッ素樹脂が挙げられる。
変性フッ素系樹脂は、フッ素樹脂を分散させた液中でビニル単量体を重合することや、ビニル単量体を重合して得られた硬質重合体とフッ素樹脂を分散液又は固体同士で混合して得ることができる
ビニル単量体としては、例えば、メチル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリレート;スチレン等の芳香族ビニル単量体;酢酸ビニル、酪酸ビニル等のカルボン酸ビニル単量体;エチレン、プロピレン等のオレフィン系単量体が挙げられる。
変性フッ素樹脂としては、変性PTFEが好ましい。変性PTFEの市販品としては、例えば、商品名「メタブレンA3800」、「メタブレンA3750」(以上、三菱レイヨン(株)製)、商品名「TSAD001」、「CX−500」(以上、パシフィックインターケム(株)製)、商品名「Blendex449」(ケムチュラ(株)製)が挙げられる。
変性フッ素樹脂を配合する場合、変性フッ素樹脂の配合量は、熱可塑性樹脂100質量部に対して、0.05〜10質量部が好ましく、0.1〜5質量部がより好ましい。
変性フッ素樹脂の前記配合量が0.05質量部以上であれば、難燃性が向上する。また、フッ素系樹脂の前記配合量が10質量部以下であれば、成形外観を損なわない。
本発明の熱可塑性樹脂組成物は、熱可塑性樹脂、樹脂改質剤、及び必要に応じて各種添加剤を所定量配合し、ロール、バンバリーミキサー、単軸押出機、2軸押出機等の通常の混練機で混練することにより調製することができる。これらは回分的又は連続的に運転することができ、各成分の混合順序は特に限定されない。また、必要に応じて少量の溶剤を併用してもよい。
本発明の熱可塑性樹脂組成物は、ペレット状にすることが好ましい。
本発明の成形体は、前述の熱可塑性樹脂組成物を成形して得られるものである。本発明の成形体は、優れた耐衝撃性を有し、また充分な難燃性を有している。
本発明の成形体は、例えば、建材、自動車、玩具、文房具等の雑貨、OA機器、家電機器等の低温における耐衝撃性と難燃性とが必要とされる成形体に広く利用できる。
本発明の成形体の製造方法は、本発明の熱可塑性樹脂組成物を用いる以外は公知の製造方法を用いることができる。
以下、実施例を示して本発明を詳細に説明する。但し、本発明は以下の記載によって限定されるものではない。本実施例における「部」及び「%」は、それぞれ「質量部」及び「質量%」を意味する。
本実施例における各測定は、以下のようにして行なった。
[トルエン不溶分]
2−プロパノールを用いてポリオルガノシロキサン系ゴム(A)のラテックスから、ポリオルガノシロキサン系ゴム(A)を抽出し、それを常温で乾燥させた後、真空乾燥して2−プロパノールを完全に除去した。
得られたポリオルガノシロキサン系ゴム(A)を0.5g精秤して、常温でトルエン80mLに24時間浸漬し、12,000rpmにて60分間遠心分離した。この後、ポリオルガノシロキサン系ゴム(A)を再度精秤することにより、トルエン不溶分(%)を算出した。
[体積平均粒子径(dv)]
ラテックスを蒸留水で希釈して、濃度約3%の試料0.1mLを調製し、キャピラリー式粒度分布測定器(CHDF2000型、MATEC社製(米国))を用いて測定した。
測定条件は、流速1.4mL/分、圧力約2.76MPa(約4,000psi)、温度35℃とした。また、測定には粒子分離用キャピラリー式カートリッジ及びキャリア液を用い、液性はほぼ中性にした。
尚、試料の測定前には、粒子径既知の単分散ポリスチレン(DUKE社製(米国))を標準粒子径物質とし、20〜800nmの合計12点の粒子径を測定して、検量線を作成した。
[質量平均分子量(Mw)]
重合体のアセトン溶液を試料とし、ゲルパーミェーションクロマトグラフィー(GPC)を用いて測定した。
測定条件は下記の通りであり、標準ポリスチレンによる検量線からMwを求めた。
装置 :「HLC8220」(東ソー(株)製)
カラム :「TSKgel SuperHZM−M」(東ソー(株)製)
(内径4.6mm×長さ15cm×4本、排除限界4×10
溶離液 :テトラヒドロフラン
溶離液流量:0.35mL/分
測定温度 :40℃
試料注入量:10μL(試料濃度0.1%)
[耐衝撃性]
ASTM D−256に準じて、ノッチつき1/4インチバーを用いて23℃及び−30℃でのアイゾット衝撃試験を行ない、耐衝撃性を評価した。
[難燃性]
1/16インチの燃焼棒を用い、UL94V試験により難燃性を評価した。
[流動性]
JIS K7210に準拠して、熱可塑性樹脂組成物のペレットを用いてメルトフローレート(MFR)を測定することにより、流動性を評価した。
MFRの測定は、温度:280℃、荷重:5.0kgfの条件で行なった。
[製造例1] ポリオルガノシロキサン系ゴム(A1)ラテックスの製造
下記の原料混合物をホモミキサーにて10,000rpmで5分間攪拌した後、ホモジナイザーに20MPaの圧力で2回通し、安定な予備混合ラテックス(1)を得た。
原料混合物;
成分(a1):YF393 96部
成分(a2):KBM502 2部
成分(a3):AY43−101 2部
乳化剤:ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム 1部
脱イオン水 150部
冷却管を備えたセパラブルフラスコに前記の予備混合ラテックス(1)250部を投入し、硫酸0.2部と脱イオン水49.8部との混合物を3分間に亘り滴下した。その後、該水溶液を80℃に加熱した状態で7時間保持して重合させた後に冷却した。
次いで、反応物を常温で6時間保持した後、水酸化ナトリウム水溶液で中和してポリオルガノシロキサン系ゴム(A1)ラテックスを得た。
ポリオルガノシロキサン系ゴム(A1)ラテックスを180℃で30分間乾燥して固形分を求めた(以下、固形分の測定方法は同様の方法を用いた。)。
ポリオルガノシロキサン系ゴム(A1)ラテックスの固形分は29.8%であり、体積平均粒子径は260nmであった。
[製造例2] ポリオルガノシロキサン系ゴム(A2)ラテックスの製造
下記の原料混合物をホモミキサーにて10,000rpmで5分間攪拌した後、ホモジナイザーに20MPaの圧力で2回通し、安定な予備混合ラテックス(2)を得た。
原料混合物;
成分(a1):YF393 96部
成分(a2):KBM502 2部
成分(a3):AY43−101 2部
乳化剤:ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム 0.67部
酸触媒:ドデシルベンゼンスルホン酸 0.67部
脱イオン水 200部
冷却管を備えたセパラブルフラスコに前記の予備混合ラテックス(2)300部を投入し、80℃に加熱した状態で7時間保持して重合させた後に冷却した。
次いで、反応物を常温で6時間保持した後、水酸化ナトリウム水溶液で中和してポリオルガノシロキサン系ゴム(A2)ラテックスを得た。
ポリオルガノシロキサン系ゴム(A2)ラテックスの固形分は29.3%であり、体積平均粒子径は140nmであった。
製造例1,2で用いた、成分(a1)〜(a3)の内訳は下記の通り。
YF393 (商品名、オクタメチルシクロテトラシロキサン、モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン(株)製)
KBM502 (商品名、γ−メタクリロイルオキシプロピルジメトキシメチルシラン、信越化学(株)製)
AY43−101 (商品名、テトラエトキシシラン、東レ・ダウコーニングシリコーン(株)製)
製造例1,2で得たポリオルガノシロキサン系ゴム(A)の、トルエン不溶分、体積平均粒子径を表1に示す。
Figure 0005672476
[製造例3] グラフト共重合体(C1)ラテックスの製造
下記の原料混合物をセパラブルフラスコに投入し、フラスコ内に窒素気流を通じて窒素置換を行ない、攪拌しながら昇温させた。
液温が50℃に達した時点で下記の還元剤水溶液を投入して重合を開始し、液温を70℃に1時間保持して、重合を完結させた。
原料混合物;
ポリオルガノシロキサン系ゴム(A1)ラテックス 302部
(ポリマー換算で90部)
多官能性ビニル単量体(b1):アリルメタクリレート 10部
重合開始剤:t−ブチルハイドロパーオキサイド 2.2部
脱イオン水 200部
還元剤水溶液;
硫酸第一鉄 0.001部
エチレンジアミン四酢酸二ナトリウム塩 0.003部
ロンガリット 0.24部
脱イオン水 10部
[製造例4〜9] グラフト共重合体(C2)〜(C7)ラテックスの製造
表2に記載の原料を用い、製造例3と同様にして製造した。
製造例3〜9で得たグラフト共重合体(C)の、体積平均粒子径を表2に示す。
Figure 0005672476
尚、表中の略号は下記の通り。
AMA :アリルメタクリレート
MMA :メチルメタクリリレート
PhMA:フェニルメタクリレート
[製造例10] ビニル重合体(S1)ラテックスの製造
下記の原料混合物をセパラブルフラスコに投入し、フラスコ内に窒素気流を通じて窒素置換を行ない、攪拌しながら昇温させた。
液温が50℃に達した時点で下記の還元剤水溶液を投入して重合を開始し、液温を70℃に2時間保持して、重合を完結させた。
原料混合物;
メチルメタクリレート 80部
ブチルアクリレート 20部
乳化剤:ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム 3部
重合開始剤:t−ブチルハイドロパーオキサイド 0.1部
脱イオン水 200部
還元剤水溶液;
硫酸第一鉄 0.001部
エチレンジアミン四酢酸二ナトリウム塩 0.003部
ロンガリット 0.24部
脱イオン水 10部
[製造例11] ビニル重合体(S2)ラテックスの製造
表3に記載の原料を用い、製造例10と同様にして製造した。
製造例10,11で得たビニル重合体(S)の、質量平均分子量、体積平均粒子径を表3に示す。
Figure 0005672476
尚、表中の略号は下記の通り。
MMA:メチルメタクリリレート
BA :ブチルアクリレート
[実施例1] 樹脂改質剤(1)粉体
グラフト共重合体(C1)とビニル重合体(S1)を、表4に記載の比率で配合し、常温で30分間混合し、樹脂改質剤(1)ラテックスを得た。
酢酸カルシウム5%濃度の水溶液500部を攪拌しながら60℃に加熱し、該水溶液中に樹脂改質剤(1)ラテックスを徐々に滴下して凝固させ、分離、水洗した後に乾燥して樹脂改質剤(1)粉体を得た。
(熱可塑性樹脂組成物の製造)
30mmφ二軸押出機(PCM−30、池貝製作所製)を用い、下記の配合成分を280℃で溶融混練し、ペレット状に賦型して熱可塑性樹脂組成物を得た。
次いで、得られた熱可塑性樹脂組成物を、100t射出成形機(SE−100DU、住友重機製作所製)を用い、280℃で成形し、アイゾット試験片及び燃焼試験片を得た。
評価結果を表4に示す。
配合成分;
樹脂改質剤(1)粉体 5部
熱可塑性樹脂:「ユーピロンS2000F」(商品名、ビスフェノールAタイプポリカーボネート、粘度平均分子量約22,000、三菱エンジニアリングプラスチックス(株)製) 100部
酸化防止剤:「イルガノックス245」(商品名、チバ・ジャパン(株)製)
0.3部
「アデカスタブPEP36」(商品名、(株)ADEKA製)
0.3部
滴下防止剤:「メタブレンA3800」(商品名、アクリル変性ポリテトラフルオロエチレン、三菱レイヨン(株)製) 1部
[実施例2〜12、比較例1〜2]
配合組成を表4に示す通りに変更した以外は、実施例1と同様にして樹脂改質剤粉体を得た。
また、樹脂改質剤粉体を用いて、実施例1と同様にして、熱可塑性樹脂組成物を製造し、アイゾット試験片及び燃焼試験片を得た。評価結果を表4に示す。
[比較例3]
下記の第1原料混合物をセパラブルフラスコに投入し、フラスコ内に窒素気流を通じて窒素置換を行ない、攪拌しながら昇温させた。
液温が50℃に達した時点で下記の還元剤水溶液を投入して重合を開始し、液温を70℃に1時間保持して、重合を完結させた。
第1原料混合物;
ポリオルガノシロキサン系ゴム(A1)ラテックス 242部
(ポリマー換算で72部)
多官能性ビニル単量体(b1):アリルメタクリレート 8部
重合開始剤:t−ブチルハイドロパーオキサイド 2.2部
脱イオン水 200部
還元剤水溶液;
硫酸第一鉄 0.001部
エチレンジアミン四酢酸二ナトリウム塩 0.003部
ロンガリット 0.24部
脱イオン水 10部
次いで、下記の第2原料混合物を10分間に亘って滴下し、液温を60℃以上に1時間保持して重合を完結させ、樹脂改質剤(15)ラテックスを得た。
第2原料混合物;
他のビニル単量体(b2):メチルメタクリレート 18部
他のビニル単量体(b2):ブチルアクリレート 2部
重合開始剤:t−ブチルハイドロパーオキサイド 2.2部
酢酸カルシウム5%濃度の水溶液500部を攪拌しながら60℃に加熱し、該水溶液中に樹脂改質剤(15)ラテックスを徐々に滴下して凝固させ、分離、水洗した後に乾燥して樹脂改質剤(15)粉体を得た。
樹脂改質剤(15)粉体を用いて、実施例1と同様にして、熱可塑性樹脂組成物を製造し、アイゾット試験片及び燃焼試験片を得た。評価結果を表5に示す。
[比較例4]
配合組成を表5に示す通りに変更した以外は、比較例3と同様にして樹脂改質剤(16)粉体を得た。
また、樹脂改質剤(16)粉体を用いて、実施例1と同様にして熱可塑性樹脂組成物を製造し、アイゾット試験片及び燃焼試験片を得た。評価結果を表5に示す。
Figure 0005672476
Figure 0005672476
尚、表中の略号は下記の通り。
PC :「ユーピロンS2000F」(商品名、三菱エンジニアリングプラスチックス(株)製)
Irg245:「イルガノックス245」 (商品名、チバ・ジャパン(株)製)
PEP36 :「アデカスタブPEP36」(商品名、(株)ADEKA製)
A3800 :「メタブレンA3800」 (商品名、三菱レイヨン(株)製)
表4及び5から明らかなように、本発明の樹脂改質剤を配合した実施例1〜12の熱可塑性樹脂組成物は、耐衝撃性、難燃性及び流動性に優れていた。特に、燃焼時間が短縮され、流動性が向上するという特徴を有している。
ポリオルガノシロキサン系ゴム(A)の含有率が高く、多官能性ビニル単量体(b1)の含有率が低い樹脂改質剤(13)を配合した比較例1の熱可塑性樹脂組成物は、耐衝撃性が劣り、流動性が劣る結果であった。
グラフト共重合体(C)の含有率が低く、ビニル重合体(S)の含有率が高い樹脂改質剤(14)を配合した比較例2の熱可塑性樹脂組成物は、低温での耐衝撃性が劣り、燃焼時間が長いという結果であった。
ポリオルガノシロキサン系ゴム(A)の存在下で、多官能ビニル単量体(b1)を重合した後、他のビニル単量体(b2)を重合した(ビニル重合体(S)を用いない)樹脂改質剤(15)を配合した比較例3の熱可塑性樹脂組成物は、燃焼時間が長く、流動性が劣る結果であった。
ポリオルガノシロキサン系ゴム(A)の存在下で、他のビニル単量体(b2)を主成分とするビニル単量体(B)を重合した後、他のビニル単量体(b2)を重合した(ビニル重合体(S)を用いない)樹脂改質剤(16)を配合した比較例4の熱可塑性樹脂組成物は、燃焼時間が長く、流動性が劣る結果であった。
樹脂改質剤(15)は、ポリオルガノシロキサン系ゴム(A)に、多官能ビニル単量体(b1)と他のビニル単量体(b2)をグラフト重合したものである。また、樹脂改質剤(16)は、ポリオルガノシロキサン系ゴム(A)に、他のビニル単量体(b2)を主成分としてグラフト重合したものである。
ビニル単量体(b2)を重合して得られるビニル重合体は可燃性の高い成分であることから、ポリオルガノシロキサン系ゴム(A)は可燃性の高い成分の影響を受けることが予想される。これより、樹脂改質剤(15)及び(16)の難燃性は低下し、燃焼時間が長くなったものと推測する。
本発明の樹脂改質剤は、グラフト共重合体(C)とビニル重合体(S)が化学的に結合していないため、熱可塑性樹脂組成物の中では、グラフト共重合体(C)とビニル重合体(S)が独立に存在していることが予想される。これより、ポリオルガノシロキサン系ゴム(A)は、可燃性の高い成分の影響を受けず、難燃性の向上効果が充分に発現したものと推測する。

Claims (3)

  1. ジメチルシロキサン(a1)、ビニル重合性官能基を有するシロキサン(a2)及びシロキサン系架橋剤(a3)を重合することにより得られるポリオルガノシロキサン系ゴム(A)60〜93質量%の存在下で、多官能性ビニル単量体(b1)を主成分とするビニル単量体(B)7〜40質量%を重合して得られたグラフト共重合体(C)のラテックスと、
    ビニル単量体(s)を重合して得られたビニル重合体(S)のラテックスを、
    グラフト共重合体(C)55〜90質量%、ビニル重合体(S)10〜45質量%の比率で混合した後、粉体化する、
    樹脂改質剤の製造方法。
  2. 熱可塑性樹脂100質量部に対して、請求項1記載の樹脂改質剤1〜20質量部を配合して得られる熱可塑性樹脂組成物。
  3. 請求項2記載の熱可塑性樹脂組成物を成形して得られる成形体。
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