JP7233846B2 - 熱可塑性樹脂組成物、その製造方法及び成形品 - Google Patents
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Description
〔1〕体積平均粒子径が80~250nmである、ポリオルガノシロキサンとアルキル(メタ)アクリレート系重合体との複合ゴム質重合体(a)の存在下に、ビニル系単量体混合物(m1)を重合してなるグラフト共重合体(A)と、シアン化ビニル系単量体単位31~50質量%、芳香族ビニル系単量体単位50~69質量%、及び他のビニル系単量体単位0~30質量%からなるビニル系共重合体(B)と、を含み、
前記グラフト共重合体(A)の割合が30~70質量%、前記ビニル系共重合体(B)の割合が30~70質量%(但し、前記グラフト共重合体(A)と前記ビニル系共重合体(B)の合計を100質量%とする)である熱可塑性樹脂組成物。
〔2〕前記ビニル系共重合体(B)が、前記シアン化ビニル系単量体単位31~43質量%、前記芳香族ビニル系単量体単位57~69質量%、及び前記他のビニル系単量体単位0~30質量%からなる前記〔1〕の熱可塑性樹脂組成物。
〔3〕前記ビニル系共重合体(B)の重量平均分子量が8万~12万である前記〔1〕又は〔2〕の熱可塑性樹脂組成物。
〔4〕熱可塑性樹脂組成物中に含まれる全ゴム質重合体成分の割合が、15~35質量%である前記〔1〕~〔3〕のいずれかの熱可塑性樹脂組成物。
〔5〕前記〔1〕~〔4〕のいずれかの熱可塑性樹脂組成物を用いた成形品。
本発明の成形品は、低温環境下での耐衝撃性、及び発色性に優れる。
「体積平均粒子径」は、動的光散乱方式の粒度分布測定器を用いて測定される体積基準の粒子径分布から求められる値である。
「成形品」とは、熱可塑性樹脂組成物を成形してなるものである。
「(メタ)アクリル酸エステル」とは、アクリル酸エステル又はメタクリル酸エステルを意味する。
数値範囲を示す「~」は、その前後に記載された数値を下限値及び上限値として含むことを意味する。
本発明の熱可塑性樹脂組成物は、グラフト共重合体(A)とビニル系共重合体(B)とを含む。グラフト共重合体(A)は、ポリオルガノシロキサンとアルキル(メタ)アクリレート系重合体との複合ゴム質重合体(a)の存在下にビニル系単量体混合物(m1)を重合してなる。
本発明の熱可塑性樹脂組成物は、必要に応じて、本発明の効果を損なわない範囲内で、グラフト共重合体(A)及びビニル系共重合体(B)以外の他の熱可塑性樹脂を含んでいてもよい。
本発明の熱可塑性樹脂組成物は、必要に応じて、本発明の効果を損なわない範囲内で、熱可塑性樹脂以外の他の成分を含んでいてもよい。
以下、各成分について説明する。
複合ゴム質重合体(a)は、ポリオルガノシロキサンとアルキル(メタ)アクリレート系重合体から構成される、シリコーン系-アクリル系複合ゴム質重合体である。複合ゴム質重合体(a)がシリコーン系-アクリル系複合ゴム質重合体であると、成形品の耐衝撃性及び発色性のバランスに優れる。
複合ゴム状重合体(a)を構成するポリオルガノシロキサンとしては、オルガノシロキサンの重合体であれば特に制限されない。ポリオルガノシロキサンのなかでも、ビニル重合性官能基を含有するポリオルガノシロキサン(ビニル重合性官能基含有ポリオルガノシロキサン)が好ましく、ビニル重合性官能基含有シロキサン単位と、ジメチルシロキサン単位とを有するポリオルガノシロキサンがより好ましい。
ポリオルガノシロキサンの好ましい態様としては、ビニル重合性官能基含有シロキサン単位0.3~3モル%と、ジメチルシロキサン単位99.7~97モル%(ただし、ビニル重合性官能基含有シロキサン単位とジメチルシロキサン単位の合計を100モル%とする。)とからなり、3個以上のシロキサン結合を有するケイ素原子がポリオルガノシロキサン中の全ケイ素原子に対し1モル%以下であるポリオルガノシロキサンが挙げられる。
ビニル重合性官能基含有シロキサンのなかでも、ジメチルシロキサンとの反応性を考慮すると、ビニル重合性官能基を含有する各種アルコキシシラン化合物が好適である。
ビニル重合性官能基を含有するアルコキシシラン化合物としては、具体的には、β-メタクリロイルオキシエチルジメトキシメチルシラン、γ-メタクリロイルオキシプロピルジメトキシメチルシラン、γ-メタクリロイルオキシプロピルメトキシジメチルシラン、γ-メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、γ-メタクリロイルオキシプロピルエトキシジエチルシラン、γ-メタクリロイルオキシプロピルジエトキシメチルシラン、δ-メタクリロイルオキシブチルジエトキシメチルシラン等のメタクリロイルオキシシロキサン;テトラメチルテトラビニルシクロテトラシロキサン、p-ビニルフェニルジメトキシメチルシラン等のビニルシロキサン等が挙げられる。これらビニル重合性官能基含有シロキサンは、1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
これらのなかでも、後述するシロキサンラテックスのラテックスの安定化作用にも優れている点で脂肪族置換ベンゼンスルホン酸が好ましく、n-ドデシルベンゼンスルホン酸が特に好ましい。また、n-ドデシルベンゼンスルホン酸と硫酸等の鉱酸とを併用すると、ポリオルガノシロキサンの製造に用いた乳化剤の色が成形品の色に与える影響を小さく抑えることができる。
酸触媒の添加量は適宜決めればよいが、通常、シロキサン混合物100質量部に対して0.1~20質量部程度である。
複合ゴム状重合体(a)を構成するアルキル(メタ)アクリレート系重合体は、アルキル(メタ)アクリレート単量体を1種以上含む単量体成分を重合して得られるものである。この単量体成分には、アルキル(メタ)アクリレート単量体以外の単量体(他の単量体)が含まれていてもよい。
単量体成分100質量%中のアルキル(メタ)アクリレート単量体の割合は、80~100質量%が好ましく、90~100質量%がより好ましい。
複合ゴム状重合体(a)の製造方法は特に制限されないが、ポリオルガノシロキサンとアルキル(メタ)アクリレート系重合体を各々含む複数のラテックスをヘテロ凝集もしくは共肥大化する方法;ポリオルガノシロキサン及びアルキル(メタ)アクリレート系重合体のいずれか一方を含むラテックス存在下で、他の一方の重合体を形成する単量体成分を重合させて複合化させる方法などが挙げられる。特に複合ゴム状重合体(a)の体積平均粒子径及び粒子径分布を上述した範囲内となるように容易に調整できることから、ラテックス状のポリオルガノシロキサンの存在下で、アルキル(メタ)アクリレート単量体を1種以上含む単量体成分をラジカル重合させて共重合体ラテックスを得た後(ラジカル重合工程)、該共重合体ラテックスと酸基含有共重合体ラテックスとを混合することにより、共重合体ラテックスを肥大化させる(肥大化工程)方法が好ましい。さらに、共重合体ラテックスと酸基含有共重合体ラテックスとを混合する前に、共重合体ラテックスに縮合酸塩を添加することが好ましい。
ラジカル重合工程は、ラテックス状のポリオルガノシロキサンの存在下で、アルキル(メタ)アクリレート単量体を1種以上含む単量体成分をラジカル重合する工程である。アルキル(メタ)アクリレート単量体を1種以上含む単量体成分は、ラテックス状のポリオルガノシロキサンに一括して添加してもよいし、連続的に、あるいは断続的に添加してもよい。
グラフト交叉剤、架橋剤としては、例えば、メタクリル酸アリル、シアヌル酸トリアリル、イソシアヌル酸トリアリル、ジビニルベンゼン、ジメタクリル酸エチレングリコールジエステル、ジメタクリル酸プロピレングリコールジエステル、ジメタクリル酸1,3-ブチレングリコールジエステル、ジメタクリル酸1,4-ブチレングリコールジエステルなどが挙げられる。これらは、1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
ラジカル重合開始剤としては、過酸化物、アゾ系開始剤、酸化剤と還元剤とを組み合わせたレドックス系開始剤などが挙げられる。これらの中では、レドックス系開始剤が好ましく、特に硫酸第一鉄とエチレンジアミン四酢酸二ナトリウム塩とナトリウムホルムアルデヒドスルホキシレートとハイドロパーオキサイドとを組み合わせたスルホキシレート系開始剤が好ましい。
肥大化工程は、ラジカル重合工程にて得られる共重合体ラテックスと、酸基含有共重合体ラテックスとを混合することにより、共重合体ラテックスを肥大化させる工程である。
肥大化に用いる酸基含有共重合体ラテックスは、水中にて、酸基含有単量体、アルキル(メタ)アクリレート単量体、及び必要に応じてこれらと共重合可能な他の単量体を含む単量体成分を重合して得られる酸基含有共重合体のラテックスである。
アルキル(メタ)アクリレート単量体としては、例えば、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸n-ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸t-ブチル、アクリル酸2-エチルヘキシル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸n-ブチル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸t-ブチル、メタクリル酸2-エチルヘキシルなどが挙げられる。アルキル(メタ)アクリレート単量体は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
アルキル(メタ)アクリレート単量体のなかでも、炭素数1~8のアルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレートが特に好ましい。
乳化重合で使用される乳化剤としては、オレイン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ロジン酸のアルカリ金属塩、アルケニルコハク酸のアルカリ金属塩等で例示されるカルボン酸系の乳化剤;アルキル硫酸エステル、アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム、アルキルスルホコハク酸ナトリウム、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル硫酸エステルナトリウム等の中から選ばれたアニオン系乳化剤など、公知の乳化剤が挙げられる。これら乳化剤は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
また、乳化重合の際には、pHを調節するためにアルカリや酸を添加することができる。
また、乳化重合の際には、減粘剤として電解質を添加することができる。
酸基含有共重合体ラテックスは、共重合体ラテックスに一括して添加してもよいし、滴下により連続的又は断続的に添加してもよい。
縮合酸塩は、共重合体ラテックスに一括して添加することが好ましい。
肥大化を行う際の温度は特に制限されないが、20~90℃が好ましく、30~80℃がより好ましい。温度がこの範囲外であると、肥大化が十分に進行しない場合がある。
ビニル系単量体混合物(m1)は、1種以上のビニル系単量体から構成される。
ビニル系単量体としては、芳香族ビニル系単量体、シアン化ビニル系単量体、その他のビニル系単量体等が挙げられる。
ビニル系単量体混合物(m1)は、成形品の耐衝撃性、流動性がより向上する点から、芳香族ビニル系単量体及びシアン化ビニル系単量体を含むことが好ましい。
シアン化ビニル系単量体としては、アクリロニトリル、メタクリロニトリル等が挙げられる。
他のビニル系単量体としては、不飽和カルボン酸系単量体、不飽和カルボン酸無水物系単量体、不飽和カルボン酸エステル系単量体、マレイミド系単量体等が挙げられる。他の単量体の具体例としては、(メタ)アクリル酸、無水マレイン酸、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n-プロピル、(メタ)アクリル酸n-ブチル、(メタ)アクリル酸t-ブチル、(メタ)アクリル酸n-ヘキシル、(メタ)アクリル酸クロロメチル、N-メチルマレイミド、N-エチルマレイミド、N-シクロヘキシルマレイミド、N-フェニルマレイミド等が挙げられる。
これらのビニル系単量体はいずれか1種を単独で用いてもよく2種以上を組み合わせて用いてもよい。
各単量体の含有量(質量%)は、ビニル系単量体混合物(m1)の総質量、つまり全単量体の合計質量に対する割合である。他のビニル系単量体が0質量%とは、他のビニル系単量体を含まないことを示す。後述するビニル系単量体混合物(m2)においても同様である。
グラフト共重合体(A)は、複合ゴム質重合体(a)の存在下にビニル系単量体混合物(m1)を重合してなる。
なお、グラフト共重合体(A)においては、複合ゴム質重合体(a)の存在下にビニル系単量体混合物(m1)がどのように重合しているか、特定することは困難である。例えば、ビニル系単量体混合物(m1)が重合したビニル系重合体としては、複合ゴム質重合体(a)に結合したものと、複合ゴム質重合体(a)に結合していないものとが存在し得る。また、複合ゴム質重合体(a)に結合したビニル系重合体の分子量、構成単位の割合等を特定することも困難である。すなわち、グラフト共重合体(A)をその構造又は特性により直接特定することが不可能であるか、又はおよそ実際的でないという事情(不可能・非実際的事情)が存在する。したがって、本発明においては、グラフト共重合体(A)は「複合ゴム質重合体(a)の存在下にビニル系単量体混合物(m1)を重合してなる」と規定することがより適切とされる。
重合法としては、反応が安定して進行するように制御可能である点から、乳化重合法が好ましい。具体的には、複合ゴム質重合体(a)にビニル系単量体混合物(m1)を一括して仕込んだ後に重合する方法;複合ゴム質重合体(a)にビニル系単量体混合物(m1)の一部を先に仕込み、随時重合させながら残りを重合系に滴下する方法;複合ゴム質重合体(a)にビニル系単量体混合物(m1)の全量を滴下しながら随時重合する方法等が挙げられる。ビニル系単量体混合物(m1)の重合は、1段で行ってもよく、2段以上に分けて行ってもよい。2段以上に分けて行う場合、各段におけるビニル系単量体混合物(m1)の種類や組成比を変えて行うことも可能である。
グラフト共重合体(A)のラテックスからグラフト共重合体(A)を回収する方法としては、グラフト共重合体(A)のラテックスを、凝固剤を溶解させた熱水中に投入することによってスラリー状に凝析する湿式法;加熱雰囲気中にグラフト共重合体(A)のラテックスを噴霧することによって半直接的にグラフト共重合体(A)を回収するスプレードライ法等が挙げられる。
なお、圧搾脱水機や押出機から排出されたグラフト共重合体(A)を回収せず、直接、熱可塑性樹脂組成物を製造する押出機や成形機に送って成形品としてもよい。
ビニル系共重合体(B)は、シアン化ビニル系単量体単位及び芳香族ビニル系単量体単位を含み、必要に応じて、他のビニル系単量体単位をさらに含んでいてもよい。
シアン化ビニル系単量体、芳香族ビニル系単量体、他のビニル系単量体はそれぞれ前記と同様のものが挙げられる。これらのビニル系単量体はいずれか1種を単独で用いてもよく2種以上を組み合わせて用いてもよい。
シアン化ビニル系単量体単位の含有量が前記上限値以下、芳香族ビニル系単量体単位の含有量が前記下限値以上であると、流動性が優れる。
ビニル系共重合体(B)のMwは、ゲル浸透クロマトグラフィ(GPC)を用いて測定された、標準ポリスチレン換算の値である。
ビニル系単量体混合物(m2)は、シアン化ビニル系単量体31~43質量%、芳香族ビニル系単量体57~69質量%、及び他のビニル系単量体0~30質量%からなることが好ましく、シアン化ビニル系単量体単位33~43質量%、芳香族ビニル系単量体単位57~67質量%、及び他のビニル系単量体単位0~30質量%からなることがより好ましい。
なお、ビニル系単量体混合物(m2)中のシアン化ビニル系単量体の含有量(質量%)は、ビニル系共重合体(B)中の全単位の合計に対するシアン化ビニル系単量体単位の含有量(質量%)とみなすことができる。芳香族ビニル系単量体及び他のビニル系単量体も同様である。
重合方法としては、乳化重合、懸濁重合、塊状重合又はこれらを複合した方法等の公知の重合方法をいずれも適用できる。
他の熱可塑性樹脂としては、アクリロニトリル-スチレン共重合体(AS樹脂)、スチレン-無水マレイン酸共重合体、アクリロニトリル-スチレン-N-置換マレイミド三元共重合体、スチレン-無水マレイン酸-N-置換マレイミド三元共重合体、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン共重合体(ABS樹脂)(ただし、グラフト共重合体(A)を除く。)、アクリロニトリル-スチレン-アルキル(メタ)アクリレート共重合体(ASA樹脂)(ただし、グラフト共重合体(A)を除く。)、アクリロニトリル-エチレン-プロピレン-ジエン-スチレン共重合体(AES樹脂)(ただし、グラフト共重合体(A)を除く。)、ポリメタクリル酸メチル、ポリカーボネート樹脂、ポリブチレンテレフタレート(PBT樹脂)、ポリエチレンテレフタレート(PET樹脂)、ポリ塩化ビニル、ポリオレフィン(ポリエチレン、ポリプロピレン等)、スチレン系エラストマー(スチレン-ブタジエン-スチレン(SBS)、スチレン-ブタジエン(SBR)、水素添加SBS、スチレン-イソプレン-スチレン(SIS)等)、各種オレフィン系エラストマー、各種ポリエステル系エラストマー、ポリスチレン、メチルメタクリレート-スチレン共重合体(MS樹脂)、アクリロニトリル-スチレン-メタクリル酸メチル共重合体、ポリアセタール樹脂、変性ポリフェニレンエーテル(変性PPE樹脂)、エチレン-酢酸ビニル共重合体、ポリフェニレンサルファイド(PPS樹脂)、ポリエーテルサルフォン(PES樹脂)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK樹脂)、ポリアリレート、液晶ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂(ナイロン)等が挙げられる。他の熱可塑性樹脂は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
他の成分としては、添加剤等が挙げられる。
添加剤としては、各種の安定剤(酸化防止剤、光安定剤等)、滑剤、可塑剤、離型剤、染料、顔料、帯電防止剤、難燃剤、金属粉末、無機充填剤等の添加剤が挙げられる。添加剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
すなわち、グラフト共重合体(A)/ビニル系共重合体(B)で表される質量比(以下、「(A)/(B)」とも記す)は、30/70~70/30であり、35/65~65/35が好ましく、40/60~60/40がより好ましい。
グラフト共重合体(A)の割合が前記範囲の下限値以上(ビニル系共重合体(B)の割合が前記範囲の上限値以下)であると、成形品の耐衝撃性が優れる。グラフト共重合体(A)の割合が前記範囲の上限値以下(ビニル系共重合体(B)の割合が前記範囲の下限値以上)であると、熱可塑性樹脂組成物の流動性が優れる。
本発明の熱可塑性樹脂組成物は、グラフト共重合体(A)と、ビニル系共重合体(B)と、必要に応じて他の任意成分とを、V型ブレンダー、ヘンシェルミキサー等によって混合分散させ、混合物をスクリュー式押出機、バンバリーミキサー、加圧ニーダー、ミキシングロール等の溶融混練機等を用いて溶融混練することによって製造できる。また、必要に応じてペレタイザー等を用いて溶融混練物をペレット化してもよい。
本発明の成形品は、本発明の熱可塑性樹脂組成物を用いたものであり、本発明の熱可塑性樹脂組成物を成形して得られる。
成形方法としては、公知の成形方法であってよく、射出成形法、プレス成形法、押出成形法、真空成形法、ブロー成形法等が挙げられる。
本発明の成形品の用途としては、車両外装部品、車両内装部品、OA機器、家電部品等が挙げられ、車両外装部品が好適である。
以下、「部」及び「%」は、それぞれ「質量部」及び「質量%」を意味する。
(体積平均粒子径)
動的光散乱式粒子径分布測定装置(日機装株式会社製、Nanotrac UPA-EX150)を用い、動的光散乱法によってラテックスにおける重合体の体積基準の粒子径分布を測定し、粒子径分布から体積平均粒子径を求めた。
ビニル系共重合体(B)をテトラヒドロフランに溶解して得られた溶液を測定試料として、GPC(ゲル浸透クロマトグラフィー)(東ソー(株)製)を用いて測定し、標準ポリスチレン換算法にて算出した。
ISO 3167に準拠して、射出成形機(東芝機械株式会社製、IS55FP-1.5A)を用い、ペレット状の熱可塑性樹脂組成物から試験片(タイプA,ノッチ付き)(成形品)を作製した。試験片のシャルピー衝撃強度をISO 179に準拠して、-20℃雰囲気下で測定した。シャルピー衝撃強度が大きいほど耐衝撃性に優れる。
4オンス射出成形機(株式会社日本製鋼所製)を用い、シリンダ設定温度260℃、金型温度60℃、射出率20g/秒の条件で、ペレット状の熱可塑性樹脂組成物から、長さ100mm、幅100mm、厚み2mmの板状の試験片(成形品)を作製し、測色計CM-508d(コニカミノルタ社製)により明度(L*値)を測定した。L*値が小さいほど発色性に優れる。
ペレット状の熱可塑性樹脂組成物のMVRは、メルトインデックサ(株式会社東洋精機製作所製、「F-F01」)を用い、ISO 1133に準拠し、シリンダ温度220℃、荷重10kgで測定した。MVRが大きいほど流動性に優れる。
反応器に、体積平均粒子径が30nmのポリオルガノシロキサンのラテックスを固形分換算で7部、イオン交換水(以下、単に水と記す。)295部、アルケニルコハク酸ジカリウム0.1部、n-ブチルアクリレート43部、アリルメタクリレート0.3部、1,3-ブチレングリコールジメタクリレート0.1部、t-ブチルヒドロパーオキシド0.04部を撹拌下で仕込み、反応器を窒素置換した後、内容物を昇温した。内温60℃にて、ナトリウムホルムアルデヒドスルホキシレート0.18部、硫酸第一鉄七水和物0.00009部、エチレンジアミン四酢酸二ナトリウム0.00027部、水8部からなる水溶液を添加し、重合を開始させた。重合発熱が確認された後、ジャケット温度を75℃とし、重合発熱が確認されなくなるまで重合を継続し、さらに1時間保持し、体積平均粒子径が100nmのシリコーン系-アクリル系複合ゴム質重合体(a1)のラテックスを得た。
酸基含有共重合体ラテックス(K-1)の製造:
反応器に、水200部、オレイン酸カリウム2部、ジオクチルスルホコハク酸ナトリウム4部、硫酸第一鉄七水塩0.003部、エチレンジアミン四酢酸二ナトリウム0.009部、ナトリウムホルムアルデヒドスルホキシレート0.3部を窒素雰囲気下で仕込み、60℃に昇温した。60℃になった時点から、アクリル酸n-ブチル90部、メタクリル酸10部、クメンヒドロパーオキシド0.5部からなる混合物を120分かけて連続的に滴下した。滴下終了後、さらに2時間、60℃のまま熟成を行い、体積平均粒子径が60nmである酸基含有共重合体ラテックス(K-1)を得た。
反応器に、製造例1で得られた体積平均粒子径が100nmのシリコーン系-アクリル系複合ゴム質重合体(a1)のラテックスを、固形分換算で50部、5%ピロリン酸ナトリウム水溶液を固形分として1.0部添加し、内温を70℃になる様にジャケット温度の制御を行った。ここへ、内温70℃にて、酸基含有共重合体ラテックス(K-1)を固形分として0.6部添加し、内温70℃を保持したまま30分撹拌し、肥大化を行い、体積平均粒子径が230nmのシリコーン系-アクリル系複合ゴム質重合体(a3)のラテックスを得た。
反応器に、水240部、アルケニルコハク酸ジカリウム(花王社製、ラテムルASK)0.7部、アクリル酸n-ブチル50部、メタクリル酸アリル0.15部、1,3-ブタンジオールジメタクリル酸エステル0.05部、t-ブチルヒドロパーオキシド0.1部を撹拌下で仕込み、反応器を窒素置換した後、内容物を昇温した。内温55℃にて、ナトリウムホルムアルデヒドスルホキシレート0.2部、硫酸第一鉄七水和物0.00015部、エチレンジアミン四酢酸二ナトリウム0.00045部、水10部からなる水溶液を添加し、重合を開始させた。重合発熱が確認された後、ジャケット温度を75℃とし、重合発熱が確認されなくなるまで重合を継続し、さらに1時間保持し、体積平均粒子径が100nmのアクリル系ゴム質重合体(a4)のラテックスを得た。
酸基含有共重合体ラテックス(K-2)の製造:
反応器に、水200部、オレイン酸カリウム2部、ジオクチルスルホコハク酸ナトリウム4部、硫酸第一鉄七水塩0.003部、エチレンジアミン四酢酸二ナトリウム0.009部、ナトリウムホルムアルデヒドスルホキシレート0.3部を窒素雰囲気下で仕込み、60℃に昇温した。60℃になった時点から、アクリル酸n-ブチル80部、メタクリル酸20部、クメンヒドロパーオキシド0.5部からなる混合物を120分かけて連続的に滴下した。滴下終了後、さらに2時間、60℃のまま熟成を行い、体積平均粒子径が150nmである酸基含有共重合体ラテックス(K-2)を得た。
アクリロニトリル34部及びスチレン66部を公知の懸濁重合により重合し、N,N-ジメチルホルムアミド溶液から25℃で測定した還元粘度が0.62dl/gであるアクリロニトリル-スチレン共重合体を得た。これをビニル系共重合体(B-1)とする。
アクリロニトリル35部及びスチレン65部を公知の懸濁重合により重合し、N,N-ジメチルホルムアミド溶液から25℃で測定した還元粘度が0.78dl/gであるアクリロニトリル-スチレン共重合体を得た。これをビニル系共重合体(B-2)とする。
アクリロニトリル42部及びスチレン58部を公知の懸濁重合により重合し、N,N-ジメチルホルムアミド溶液から25℃で測定した還元粘度が0.49dl/gであるアクリロニトリル-スチレン共重合体を得た。これをビニル系共重合体(B-3)とする。
アクリロニトリル47部及びスチレン53部を公知の懸濁重合により重合し、N,N-ジメチルホルムアミド溶液から25℃で測定した還元粘度が0.71dl/gであるアクリロニトリル-スチレン共重合体を得た。これをビニル系共重合体(B-4)とする。
アクリロニトリル27部及びスチレン73部を公知の懸濁重合により重合し、N,N-ジメチルホルムアミド溶液から25℃で測定した還元粘度が0.62dl/gであるアクリロニトリル-スチレン共重合体を得た。これをビニル系共重合体(B-5)とする。
(実施例1~6、比較例1~7)
表3に示す量(部)のグラフト共重合体(A)及びビニル系共重合体(B)、並びにエチレンビスステアリルアミド「アルフローH50S」0.5部と、酸化防止剤「アデカスタブ AO-50」(株式会社ADEKA製)1部と、光安定剤「アデカスタブ LA-77Y」(株式会社ADEKA製)1部と、紫外線吸収剤「アデカスタブLA-31」(株式会社ADEKA製)0.5部と、酸化マグネシウム「キョーワマグ150」(協和化学工業製)0.1部と、カーボンブラック「♯966B」(三菱ケミカル社製)1部を、ヘンシェルミキサーを用いて混合した。スクリュー式押出機(株式会社日本製鋼所製、TEX-30α型二軸押出機)を用いて、得られた混合物を250℃にて溶融混練した後、ペレタイザーにてペレット化し、熱可塑性樹脂組成物を得た。熱可塑性樹脂組成物のMVRを表3に示す。なお、表3中の空欄は、その成分が配合されていないことを示す。
一方、比較例1、2、3、4の熱可塑性樹脂組成物は、グラフト共重合体(A)に使用されているゴム質重合体が、シリコーン系-アクリル系複合ゴム質重合体でなかったため、得られた成形品が発色性に劣っていた。
比較例5の熱可塑性樹脂組成物は、グラフト共重合体(A)に使用されているゴム質重合体が、シリコーン系-アクリル系複合ゴム質重合体でなく、さらにビニル系共重合体(B)のシアン化ビニル系単量体比率が31質量%未満であるため、得られた成形品が発色性と低温環境下での耐衝撃性に劣っていた。
比較例6の熱可塑性樹脂組成物は、複合ゴム質重合体(a)の体積平均粒子径が250nmを超えているため、得られた成形品が発色性に劣っていた。
比較例7の熱可塑性樹脂組成物は、ビニル系共重合体(B)のシアン化ビニル系単量体比率が31質量%未満であるため、得られた成形品が低温環境下での耐衝撃性に劣っていた。
Claims (7)
- 体積平均粒子径が230~250nmである、ポリオルガノシロキサンとアルキル(メタ)アクリレート系重合体との複合ゴム質重合体(a)の存在下に、芳香族ビニル系単量体60~76質量%、シアン化ビニル系単量体24~40質量%、及びそれらの単量体と共重合可能な他のビニル系単量体0~16質量%からなるビニル系単量体混合物(m1)を重合してなり、前記ビニル系単量体混合物(m1)が重合したビニル系重合体が前記複合ゴム質重合体(a)に結合したグラフト共重合体と、前記ビニル系単量体混合物(m1)が重合したビニル系重合体であって前記複合ゴム質重合体(a)に結合していないビニル系重合体とからなる成分(A)と、シアン化ビニル系単量体単位31~50質量%、芳香族ビニル系単量体単位50~69質量%、及び他のビニル系単量体単位0~19質量%からなるビニル系共重合体(B)と、を含み、
前記成分(A)の割合が30~70質量%、前記ビニル系共重合体(B)の割合が30~70質量%(但し、前記成分(A)と前記ビニル系共重合体(B)の合計を100質量%とする)であり、
熱可塑性樹脂組成物中に含まれる全ゴム質重合体成分の割合が、15~35質量%である熱可塑性樹脂組成物。 - 前記ビニル系共重合体(B)が、前記シアン化ビニル系単量体単位31~43質量%、前記芳香族ビニル系単量体単位57~69質量%、及び前記他のビニル系単量体単位0~12質量%からなる請求項1に記載の熱可塑性樹脂組成物。
- 前記ビニル系共重合体(B)の重量平均分子量が8万~12万である請求項1又は2に記載の熱可塑性樹脂組成物。
- 成分(A)とビニル系共重合体(B)とを溶融混錬する、熱可塑性樹脂組成物の製造方法であって、
前記成分(A)は、体積平均粒子径が230~250nmである、ポリオルガノシロキサンとアルキル(メタ)アクリレート系重合体との複合ゴム質重合体(a)の存在下に、芳香族ビニル系単量体60~76質量%、シアン化ビニル系単量体24~40質量%、及びそれらの単量体と共重合可能な他のビニル系単量体0~16質量%からなるビニル系単量体混合物(m1)を重合してなり、前記ビニル系単量体混合物(m1)が重合したビニル系重合体が前記複合ゴム質重合体(a)に結合したグラフト共重合体と、前記ビニル系単量体混合物(m1)が重合したビニル系重合体であって前記複合ゴム質重合体(a)に結合していないビニル系重合体とからなり、
前記ビニル系共重合体(B)は、シアン化ビニル系単量体単位31~50質量%、芳香族ビニル系単量体単位50~69質量%、及び他のビニル系単量体単位0~19質量%からなり、
前記成分(A)の割合が30~70質量%、前記ビニル系共重合体(B)の割合が30~70質量%(但し、前記成分(A)と前記ビニル系共重合体(B)の合計を100質量%とする)であり、
熱可塑性樹脂組成物中に含まれる全ゴム質重合体成分の割合が、15~35質量%である熱可塑性樹脂組成物の製造方法。 - 前記ビニル系共重合体(B)が、前記シアン化ビニル系単量体単位31~43質量%、前記芳香族ビニル系単量体単位57~69質量%、及び前記他のビニル系単量体単位0~12質量%からなる請求項4に記載の熱可塑性樹脂組成物の製造方法。
- 前記ビニル系共重合体(B)の重量平均分子量が8万~12万である請求項4又は5に記載の熱可塑性樹脂組成物の製造方法。
- 請求項1~3のいずれか一項に記載の熱可塑性樹脂組成物を用いた成形品。
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