JP2009046602A - 肥大化ゴムの製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】600nm以上の質量平均粒子径を有する肥大化ゴムを生産性よく製造できる方法を提供する。
【解決手段】ゴム状重合体ラテックス(A)、縮合酸塩(B)および酸基含有共重合体ラテックス(C)を混合することによって、ゴム状重合体を肥大化させて、質量平均粒子径が600〜3000nmの肥大化ゴムを製造する方法であって、ゴム状重合体ラテックス(A)の固形分100質量部に対して、縮合酸塩(B)が0.1〜10質量部であり、酸基含有共重合体ラテックス(C)が固形分で0.1〜10質量部であり、酸基含有共重合体ラテックス(C)が、水中にて、酸基含有単量体5〜30質量%および不飽和カルボン酸エステル系単量体95〜70質量%を含む単量体混合物を重合して得られたものである。
【選択図】なし

Description

本発明は、肥大化ゴムの製造方法に関する。
従来から、耐衝撃性に優れた成形品を得ることができる熱可塑性樹脂組成物としては、ABS(アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン)樹脂、ASA(アクリレート−スチレン−アクリロニトリル)樹脂等が知られている。該熱可塑性樹脂組成物は、熱可塑性樹脂(スチレン−アクリロニトリル樹脂、α−メチルスチレン−アクリロニトリル樹脂、スチレン−アクリロニトリル−フェニルマレイミド樹脂等。)に、グラフト共重合体を配合して調製される。
グラフト共重合体は、熱可塑性樹脂との相溶性に優れたポリマーを形成しうる単量体を、ゴム状重合体にグラフト重合して得られるものである。耐衝撃性に優れた成形品を得るためには、ゴム状重合体の平均粒子径を適正な範囲とする必要がある。ゴム状重合体の平均粒子径が小さすぎると、耐衝撃性を発現できないため、通常は、平均粒子径が150〜400nmのゴム状重合体が用いられる。しかし、最近では、成形品に意匠性等を付与する目的から、平均粒子径が600nm以上のゴム状重合体が要求されることが多い。
乳化重合にて得られるゴム状重合体ラテックスに含まれるゴム状重合体の平均粒子径は、乳化重合の時間と密接に関係する。例えば、平均粒子径が600nm以上のゴム状重合体を乳化重合で製造する場合、数十時間以上の時間を要し、極めて生産性が悪い。そのため、通常は、平均粒子径が150nm未満のゴム状重合体をあらかじめ製造し、該ゴム状重合体を何らかの方法で肥大化して肥大化ゴムを製造することが行われる。
肥大化ゴムの製造方法としては、下記の方法が知られている。
(1)ゴム状重合体ラテックスに酸化合物を添加する方法(特許文献1、2)。
(2)酸基含有ジエンまたは酸基含有共重合体ラテックスを、ゴム状重合体ラテックスの製造中または製造後に添加する方法(特許文献3〜6)。
(3)ゴム状重合体ラテックスに、酸基含有共重合体ラテックスおよび電解質を添加する方法(特許文献7、8)。
しかし、(1)の方法では、凝塊物の発生を避けるためにラテックスの濃度を薄くする必要があり、生産性が低くなる問題がある。
(2)の方法では、平均粒子径が600nm以上の肥大化ゴムを製造するためには、共重合体に酸基を多く導入する必要がある。そのため、酸基含有共重合体を製造する際に、多量の凝塊物が発生する問題がある。
(3)の方法では、平均粒子径が600nmを超える肥大化ゴムを製造できない問題がある。
特公昭42−3112号公報 特公平2−9601号公報 特公昭56−45921号公報 特開平1−126301号公報 特開平3−212401号公報 特開平8−59704号公報等 特開昭56−166201号公報 特開平4−220452号公報
本発明は、600nm以上の質量平均粒子径を有する肥大化ゴムを生産性よく製造できる方法を提供する。
本発明の肥大化ゴムの製造方法は、ゴム状重合体ラテックス(A)、縮合酸塩(B)および下記酸基含有共重合体ラテックス(C)を混合することによって、ゴム状重合体を肥大化させて、質量平均粒子径が600〜3000nmの肥大化ゴムを製造する方法であって、ゴム状重合体ラテックス(A)の固形分100質量部に対して、縮合酸塩(B)が0.1〜10質量部であり、酸基含有共重合体ラテックス(C)が固形分で0.1〜10質量部であることを特徴とする。
酸基含有共重合体ラテックス(C):水中にて、酸基含有単量体5〜30質量%および不飽和カルボン酸エステル系単量体95〜70質量%を含む単量体混合物を重合して得られた酸基含有共重合体のラテックス。
前記縮合酸塩(B)は、ピロリン酸と、アルカリ金属との塩であることが好ましい。
本発明の肥大化ゴムの製造方法によれば、600nm以上の質量平均粒子径を有する肥大化ゴムを生産性よく製造できる。
本明細書においては、(メタ)アクリル酸は、アクリル酸またはメタクリル酸を意味する。
(ゴム状重合体ラテックス(A))
ゴム状重合体ラテックス(A)は、ゴム質重合体が粒子状態で水中に分散したものである。
ゴム状重合体ラテックス(A)としては、例えば、アクリル酸エステル系ゴムラテックス、エチレン−プロピレンゴム(EPR)ラテックス、エチレン−プロピレン−ジエン系ゴム(EPDM)ラテックス、ジエン系ゴムラテックス、ポリオルガノシロキサンラテックス等が挙げられ、ASA樹脂を得る場合、アクリル酸エステル系ゴムラテックスが特に好ましい。
アクリル酸エステル系ゴムラテックスは、例えば、水中にて、アクリル酸エステルとグラフト交叉剤および/または架橋剤とを含む単量体混合物を重合して得られる。
アクリル酸エステルとしては、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸−t−ブチル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル等が挙げられる。
グラフト交叉剤としては、メタクリル酸アリル、シアヌル酸トリアリル、イソシアヌル酸トリアリル等が挙げられる。
架橋剤としては、ジメタクリル酸エチレングリコールエステル、ジメタクリル酸プロピレングリコールエステル、ジメタクリル酸1,3−ブチレングリコールエステル、ジメタクリル酸1,4−ブチレングリコールエステル、ジアクリル酸1,6−ヘキシル、ジビニルベンゼン等が挙げられる。
グラフト交叉剤および架橋剤の合計量は、単量体混合物(100質量%)中、0.1〜5質量%が好ましい。
ゴム状重合体ラテックス(A)に含まれるゴム状重合体の質量平均粒子径は、150nm以下が好ましく、120nm以下がより好ましい。肥大化によって生産性を向上するという本発明の目的からすれば、質量平均粒子径の大きいゴム状重合体をあらかじめ製造する意義は薄い。
(縮合酸塩(B))
縮合酸塩(B)は、縮合酸と、アルカリ金属との塩が好ましい。
縮合酸は、オキソ酸が縮合した多核構造の酸である。縮合酸としては、ポリリン酸(ピロリン酸等。)等が挙げられる。
縮合酸塩(B)としては、ピロリン酸とアルカリ金属との塩が好ましく、ピロリン酸ナトリウムまたはピロリン酸カリウムが特に好ましい。
(酸基含有共重合体ラテックス(C))
酸基含有共重合体ラテックス(C)は、水中にて、酸基含有単量体5〜30質量%、不飽和カルボン酸エステル系単量体95〜70質量%、および必要に応じてこれらと共重合可能な他の単量体0〜25質量%を含む単量体混合物(単量体の合計100質量%)を重合して得られた酸基含有共重合体のラテックスである。
酸基含有単量体としては、カルボキシ基を有する不飽和化合物が好ましく、該化合物としては、(メタ)アクリル酸、イタコン酸、クロトン酸等が挙げられ、(メタ)アクリル酸が特に好ましい。酸基含有単量体は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
不飽和カルボン酸エステル系単量体としては、(メタ)アクリル酸アルキルエステルが好ましく、炭素数1〜12のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルがより好ましい。
(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、アクリル酸またはメタクリル酸と、炭素数1〜12の直鎖または分岐のアルキル基を有するアルコールとのエステルが挙げられ、例えば、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸t−ブチル、アクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸t−ブチル、メタクリル酸2−エチルヘキシル等が挙げられ、炭素数1〜8のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルが特に好ましい。
不飽和カルボン酸エステル系単量体は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
他の単量体は、酸基含有単量体および不飽和カルボン酸エステル系単量体と共重合可能な単量体であり、かつ酸基含有単量体および不飽和カルボン酸エステル系単量体を除く単量体である。
他の単量体としては、芳香族ビニル系単量体(スチレン、α−メチルスチレン、p−メチルスチレン等。)、シアン化ビニル系単量体(アクリロニトリル、メタクリロニトリル等。)、2つ以上の重合性官能基を有する化合物(メタクリル酸アリル、ジメタクリル酸ポリエチレングリコールエステル、シアヌル酸トリアリル、イソシアヌル酸トリアリル、トリメリット酸トリアリル等。)等が挙げられる。他の単量体は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
酸基含有単量体の割合は、単量体混合物(100質量%)中、5〜30質量%であり、8〜25質量%が好ましい。酸基含有単量体の割合が5質量%以上であれば、ゴム状重合体を十分に肥大化できる。酸基含有単量体の割合が30質量%以下であれば、酸基含有共重合体ラテックス(C)の製造の際、凝塊物の発生が抑えられる。
不飽和カルボン酸エステル系単量体の割合は、単量体混合物(100質量%)中、70〜95質量%であり、75〜92質量%が好ましい。
他の単量体の割合は、単量体混合物(100質量%)中、0〜25質量%であり、0〜20質量%が好ましい。
酸基含有重合体ラテックス(C)は、乳化重合により製造できる。
乳化重合で用いる乳化剤としては、アニオン系乳化剤等が挙げられる。
アニオン系乳化剤としては、カルボン酸系乳化剤(脂肪酸(オレイン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ロジン酸等。)のアルカリ金属塩、アルケニルコハク酸のアルカリ金属塩等。)、アルキル硫酸エステル、アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム、アルキルスルホコハク酸ナトリウム、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル硫酸エステルナトリウム等が挙げられる。
乳化剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
乳化剤は、重合初期に全量を一括で仕込んでもよく、一部を重合初期に仕込み、残りを重合中に間欠的または連続的に追加してもよい。
乳化剤の量および仕込み方によって、酸基含有重合体ラテックス(C)に含まれる酸基含有重合体の質量平均粒子径、さらには肥大化ゴムの質量平均粒子径を調整できる。
酸基含有重合体ラテックス(C)に含まれる酸基含有重合体の質量平均粒子径は、200nm以下が好ましく、150nm以下がより好ましい。酸基含有重合体の質量平均粒子径が大きいと酸基含有重合体ラテックスの安定性が低下する傾向にあるが、酸基含有重合体の質量平均粒子径が200nm以下であれば、凝塊物の発生を抑えて酸基含有重合体の重合を行うことができる。
乳化重合で用いる重合開始剤としては、熱分解型開始剤、レドックス型開始剤等が挙げられる。
熱分解型開始剤としては、過硫酸カリウム、過硫酸ナトリウム、過硫酸アンモニウム等が挙げられる。
レドックス型開始剤としては、有機過酸化物(クメンハイドロパーオキシド等。)−ナトリウムホルムアルデヒドスルホキシレート−鉄塩等の組み合わせが挙げられる。
重合開始剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
乳化重合の際には、分子量を調整する連鎖移動剤(メルカプタン類(t−ドデシルメルカプタン、n−オクチルメルカプタン等。)、テルピノレン、α−メチルスチレンダイマー等。)、pHを調節するアルカリまたは酸、減粘剤である電解質を用いてもよい。
(肥大化ゴムの製造方法)
肥大化ゴムの製造方法は、ゴム状重合体ラテックス(A)、縮合酸塩(B)および酸基含有共重合体ラテックス(C)を混合することによって、ゴム状重合体を肥大化させる方法である。
肥大化ゴムの製造方法としては、ゴム状重合体ラテックス(A)に、縮合酸塩(B)および酸基含有共重合体ラテックス(C)を添加する方法が好ましく;ゴム状重合体ラテックス(A)を撹拌しながら、ゴム状重合体ラテックス(A)に縮合酸塩(B)を添加し、ついで酸基含有重合体ラテックス(C)を添加する方法がより好ましい。
縮合酸塩(B)は、0.1〜10質量%の水溶液として添加することが好ましい。
縮合酸塩(B)の量は、ゴム状重合体ラテックス(A)の固形分100質量部に対して、0.1〜10質量部であり、0.5〜7質量部が好ましい。縮合酸塩(B)の量が0.1質量部以上であれば、ゴム状重合体の肥大化が十分に進行する。縮合酸塩(B)の量が10質量部以下であれば、ゴム状重合体の肥大化が十分に進行し、かつラテックスが安定化して凝塊物の発生が抑えられる。
ゴム状重合体ラテックス(A)に縮合酸塩(B)を添加した段階で、混合液のpHは7以上が好ましい。pHが7以上であれば、ゴム状重合体の肥大化が十分に進行し、目的とする質量平均粒子径が600nm以上の肥大化ゴムを得やすくなる。pHを7以上とするために、アルカリ(水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等。)を用いてもよい。
酸基含有重合体ラテックス(C)は、一括で添加してもよく、連続的または断続的に滴下してもよい。
酸基含有重合体ラテックス(C)の量は、ゴム状重合体ラテックス(A)の固形分100質量部に対して、酸基含有重合体ラテックス(C)が固形分で0.1〜10質量部となる量が好ましく、0.3〜7質量部となる量がより好ましい。酸基含有重合体ラテックス(C)の固形分の量が0.1質量部以上であれば、ゴム状重合体の肥大化が十分に進行し、目的とする質量平均粒子径が600nm以上の肥大化ゴムを得やすくなる。また、凝塊物の発生が抑えられる。酸基含有重合体ラテックス(C)の固形分の量が10質量部以下であれば、ラテックスのpHの低下が抑えられ、ラテックスが安定化する。
肥大ゴムと小粒子または中粒子のゴムを併存させる場合には、酸基含有重合体ラテックス(C)の添加後に、さらにゴム状重合体ラテックス(A)を添加してもよい。
肥大化を行う際の撹拌は適度に制御する必要がある。撹拌が十分であれば、肥大化が均一に進行することにより、未肥大のゴム状重合体の残留が抑えられ、目的とする質量平均粒子径が600nm以上の肥大化ゴムを得やすくなる。なお、過度に撹拌を行うと、ラテックスが不安定になり、凝塊物が多量に発生することがある。
肥大化を行う際の温度は、10〜90℃が好ましく、20〜80℃がより好ましい。温度が10〜90℃であれば、ゴム状重合体の肥大化が十分に進行し、目的とする質量平均粒子径が600nm以上の肥大化ゴムを得やすくなる。
(肥大化ゴム)
肥大化ゴムの質量平均粒子径は、600〜3000nmであり、600〜2000nmが好ましい。肥大化ゴムの質量平均粒子径が600nm以上であれば、得られる成形品の意匠性が良好となる。肥大化ゴムの質量平均粒子径が3000nm以下であれば、ラテックスが安定化する傾向が強くなり、肥大化を行う際に凝塊物の発生を抑制できる。
肥大化ゴムは、ハイインパクトポリスチレン(HIPS)樹脂、ABS樹脂、ASA樹脂、AES(アクリロニトリル−EPDM−スチレン)樹脂、ACS(アクリロニトリル−塩素化ポリエチレン−スチレン)樹脂等のスチレン系樹脂の製造;ゴム強化MS(メタクリル酸メチル−スチレン)樹脂、ゴム強化PMMA(メタクリル酸メチル共重合体)樹脂、ゴム強化塩化ビニル樹脂、ゴム強化ポリカーボネート樹脂等の樹脂組成物の製造に利用できる。
以下に実施例を用いて本発明をさらに具体的に説明する。本発明は、これらの実施例により限定されるものではない。実施例における部は、質量部を意味し、%は質量%を意味する。
(平均粒子径)
ゴム状重合体および肥大化ゴムの質量平均粒子径は、日機装社製のMicrotrac Model:9230UPAを用いて光子相関法より求めた。
(固形分)
ラテックスの固形分は、ラテックス1gを正確に秤量し、200℃で20分かけて揮発分を蒸発させた後の残渣物を計量し、下記の式より求めた。
固形分(%)=残渣物質量/ラテックス質量×100。
(重合転化率)
重合転化率は、前記固形分を測定し、下記の式より求めた。
重合転化率(%)={固形分÷100×総仕込質量−単量体・水以外の仕込質量}/単量体総質量×100。
式中、総仕込質量は、単量体、水等、反応器に仕込んだ物質の総質量を示す。
〔合成例1〕
ゴム状重合体ラテックス(A−1)の製造:
試薬注入容器、冷却管、ジャケット加熱機および撹拌装置を備えた反応器内に、脱イオン水(以下、単に水と記す。)360部、アルケニルコハク酸ジカリウム(花王社製、ラテムルASK)1部、アクリル酸n−ブチル100部、メタクリル酸アリル0.2部、ジメタクリル酸1,3−ブチレングリコールエステル0.1部、t−ブチルハイドロパーオキシド0.2部を撹拌下で仕込み、反応器内を窒素置換した後、内容物を昇温した。
内温55℃にて、ナトリウムホルムアルデヒドスルホキシレート0.5部、硫酸第一鉄七水塩0.0003部、エチレンジアミン四酢酸二ナトリウム0.0009部、水10部からなる水溶液を添加し、重合を開始させた。重合発熱が確認された後、ジャケット温度を75℃とし、重合発熱が確認されなくなるまで重合を継続した。重合開始から3時間後に冷却し、固形分が21%、ゴム状重合体の質量平均粒子径が110nmであるゴム状重合体ラテックス(A−1)(アクリル酸エステル系ゴムラテックス)を得た。
〔合成例2〕
ゴム状重合体ラテックス(A−2)の製造:
アクリル酸n−ブチル100部を、アクリル酸n−ブチル60部、アクリル酸2−エチルヘキシル40部に変更した以外は合成例1と同様にして、固形分が21%、ゴム状重合体の質量平均粒子径が120nmであるゴム状重合体ラテックス(A−2)(アクリル酸エステル系ゴムラテックス)を得た。
〔合成例3〕
酸基含有共重合体ラテックス(C−1)の製造:
試薬注入容器、冷却管、ジャケット加熱機および撹拌装置を備えた反応器内に、ナトリウムホルムアルデヒドスルホキシレート0.3部、水200部、オレイン酸カリウム2部、ジオクチルスルホコハク酸ナトリウム4部、硫酸第一鉄七水塩0.003部、エチレンジアミン四酢酸二ナトリウム0.009部を窒素フロー下で仕込み、60℃に昇温した。60℃になった時点から、アクリル酸n−ブチル82部、メタクリル酸18部、クメンヒドロパーオキシド0.5部からなる混合物を120分かけて連続的に滴下した。滴下終了後、さらに2時間60℃のまま熟成を行い、固形分が33%、重合転化率が96%、酸基含有共重合体の質量平均粒子径が145nmである酸基含有共重合体ラテックス(C−1)を得た。
〔合成例4〕
酸基含有共重合体ラテックス(C−2)の製造:
アクリル酸n−ブチル82部、メタクリル酸18部を、アクリル酸n−ブチル88部、メタクリル酸12部に変更した以外は、合成例3と同様にして、固形分が33%、重合転化率が95%、酸基含有共重合体の質量平均粒子径が110nmである酸基含有共重合体ラテックス(C−2)を得た。
〔合成例5〕
酸基含有共重合体ラテックス(C−3)の製造:
オレイン酸カリウム2部、ジオクチルスルホコハク酸ナトリウム4部、アクリル酸n−ブチル82部、メタクリル酸18部を、オレイン酸カリウム3部、ジオクチルスルホコハク酸ナトリウム5部、アクリル酸n−ブチル75部、メタクリル酸25部に変更した以外は、合成例3と同様にして、固形分が33%、重合転化率が93%、酸基含有共重合体の質量平均粒子径が120nmである酸基含有共重合体ラテックス(C−3)を得た。
〔合成例6〕
酸基含有共重合体ラテックス(C−4)の製造:
アクリル酸n−ブチル82部、メタクリル酸18部を、アクリル酸n−ブチル93部、アクリル酸7部に変更した以外は、合成例3と同様にして、固形分が33%、重合転化率が95%、酸基含有共重合体の質量平均粒子径が110nmである酸基含有共重合体ラテックス(C−4)を得た。
〔合成例7〕
酸基含有共重合体ラテックス(C−5)の製造:
アクリル酸n−ブチル82部、メタクリル酸18部を、アクリル酸n−ブチル70部、アクリル酸メチル20部、クロトン酸10部に変更した以外は、合成例3と同様にして、固形分が33%、重合転化率が96%、酸基含有共重合体の質量平均粒子径が110nmである酸基含有共重合体ラテックス(C−5)を得た。
〔合成例8〕
酸基含有共重合体ラテックス(C−6)の製造:
アクリル酸n−ブチル82部を、アクリル酸n−ブチル79部、スチレン3部に変更した以外は、合成例3と同様にして、固形分が33%、重合転化率が96%、酸基含有共重合体の質量平均粒子径が140nmである酸基含有共重合体ラテックス(C−6)を得た。
〔合成例9〕
酸基含有共重合体ラテックス(C−7)の製造:
アクリル酸n−ブチル82部、メタクリル酸18部を、アクリル酸n−ブチル97部、メタクリル酸3部に変更した以外は、合成例3と同様にして、固形分が33%、重合転化率が96%、酸基含有共重合体の質量平均粒子径が100nmである酸基含有共重合体ラテックス(C−7)を得た。
〔合成例10〕
酸基含有共重合体ラテックス(C−8)の製造:
アクリル酸n−ブチル82部、メタクリル酸18部を、アクリル酸n−ブチル55部、メタクリル酸45部に変更した以外は、合成例3と同様の操作を行ったが、滴下中に反応器内の内容物が固結し、酸基含有共重合体ラテックス(C−8)を得ることはできなかった。
Figure 2009046602
〔実施例1〕
試薬注入容器、ジャケット加熱機および撹拌装置を備えた反応器内に、ゴム状重合体ラテックス(A−1)476部(固形分100部)を仕込み、撹拌下でジャケット加熱機により内温を30℃に昇温した。ピロリン酸ナトリウム1部を5%水溶液として反応器内に添加し、十分に撹拌した後、酸基含有共重合体ラテックス(C−1)1.2部(固形分0.4部)を添加した。内温30℃を保持したまま30分撹拌し、肥大化ゴムの質量平均粒子径が690nmである肥大化ゴムラテックスを得た。
〔実施例2〜15〕
表2に示したゴム状重合体ラテックス(A)、縮合酸塩(B)または他の電解質、酸基含有共重合体ラテックス(C)を用い、表2に示した温度で実施例1と同様にして、肥大化ゴムラテックスを得た。
Figure 2009046602
〔比較例1〜7〕
表3に示したゴム状重合体ラテックス(A)、縮合酸塩(B)または他の電解質、酸基含有共重合体ラテックス(C)を用い、表3に示した温度で実施例1と同様にして、肥大化ゴムラテックスを得た。比較例2では、凝塊物が多量に発生し、肥大化ゴムラテックスを得ることはできなかった。
Figure 2009046602
実施例および比較例より、次のことが明らかとなった。
(1)実施例1〜15は、質量平均粒子径が600nm以上の大粒子径肥大化ゴムが短時間で製造できることを示しており、工業的利用価値が高い。
(2)特に実施例3、4、9、15は、肥大化ゴムの質量平均粒子径が1000nmを超える、従来では製造が困難であった大粒子径の肥大化ゴムが短時間で製造できることを示しており、工業的利用価値が極めて高い。
(3)比較例1〜4は、縮合酸塩および酸基含有共重合体の量が本発明の範囲以外では、質量平均粒子径が600nmを超える大粒子径の肥大化ゴムを得ることが困難なことを示している。
(4)比較例5、6は、肥大化ゴムの質量平均粒子径が、それぞれ560nm、440nmであり、意匠性を発現するための600nmより小さく、工業的利用価値が低い。従来の酸基含有共重合体と電解質とを併用する方法では、600nm以上の大粒子径の肥大化ゴムを得ることが困難なことを示している。
(5)比較例7は、酸基含有共重合体の製造に用いる酸基含有単量体が5質量%未満では、600nmを超える大粒子径の肥大化ゴムを得ることが困難なことを示している。また、合成例6は、酸基含有共重合体の製造に用いる酸基含有単量体が40質量%を超えると酸基含有共重合体の製造が困難なことを示している。
本発明の製造方法で得られた肥大化ゴムは、耐衝撃性、表面外観の良好な成形品を得ることができるABS樹脂、ASA樹脂等のゴム強化熱可塑性樹脂の原料として有用である。

Claims (2)

  1. ゴム状重合体ラテックス(A)、縮合酸塩(B)および下記酸基含有共重合体ラテックス(C)を混合することによって、ゴム状重合体を肥大化させて、質量平均粒子径が600〜3000nmの肥大化ゴムを製造する方法であって、
    ゴム状重合体ラテックス(A)の固形分100質量部に対して、縮合酸塩(B)が0.1〜10質量部であり、酸基含有共重合体ラテックス(C)が固形分で0.1〜10質量部である、肥大化ゴムの製造方法。
    酸基含有共重合体ラテックス(C):水中にて、酸基含有単量体5〜30質量%および不飽和カルボン酸エステル系単量体95〜70質量%を含む単量体混合物を重合して得られた酸基含有共重合体のラテックス。
  2. 前記縮合酸塩(B)が、ピロリン酸と、アルカリ金属との塩である、請求項1記載の肥大化ゴムの製造方法。
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