JP6896539B2 - 熱可塑性樹脂組成物およびその成形品 - Google Patents

熱可塑性樹脂組成物およびその成形品 Download PDF

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Description

本発明は、熱可塑性樹脂組成物およびその成形品に関する。
剛性、耐衝撃性に代表される樹脂材料の強度を向上させることは、自動車分野、電気・電子機器分野など工業的な有用性が非常に高く、これまで様々な手法が検討されてきた。例えば、剛性に優れた成形品が得られる熱可塑性樹脂材料として、ポリブチレンテレフタレート(PBT)樹脂やポリエチレンテレフタレート(PET)樹脂などの結晶性樹脂、ガラスフィラー(GF)で強化した非結晶性樹脂などがある。耐衝撃性に優れた成形品が得られる熱可塑性樹脂材料として、ABS樹脂(アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体)、ハイインパクトポリスチレン(HIPS)樹脂、変性ポリフェニレンエーテル(PPE)樹脂などがある。
ABS樹脂は、ガラス転移温度(Tg)や弾性率の低いゴム成分を樹脂マトリックス中に分散させることにより優れた耐衝撃性が付与された樹脂材料の代表例として幅広く利用されている。
しかし、ABS樹脂は、共役ジエン系ゴムであるポリブタジエンをゴム成分として用いているため、紫外線により劣化しやすく、得られる成形品は耐候性に劣るという欠点があった。また、ABS樹脂などの非結晶性樹脂の成形品に剛性を発現させるためには、GFなどの強化材を添加する必要があった。
成形品の耐候性を改良するために、ASA樹脂(アクリロニトリル−スチレン−アルキル(メタ)アクリレート共重合体)が使用されている。ASA樹脂は、飽和ゴムであるアルキル(メタ)アクリレート系重合体をゴム成分として用いているため、耐候性に優れるという特長を有し、車両外装材や屋外電気機器などにも利用が可能となっている。
成形品の耐衝撃性および耐候性を向上させる手段として、ポリオルガノシロキサンとアルキル(メタ)アクリレート系重合体との複合ゴムをゴム成分として用いた樹脂(以下、「SAS樹脂」とも言う。)も提案されている(例えば特許文献1〜5参照)。
ところで、自動車部品で複雑な形状や薄肉成形品を得るためには流動性が必要である。流動性が高く、耐衝撃性および耐候性に優れた成形品が得られる熱可塑性樹脂組成物として、SAS樹脂と、芳香族アルケニル化合物成分とシアン化ビニル化合物を必須の構成成分とする共重合体と、メタクリル酸エステル成分を必須の構成成分とする重合体とからなるものが提案されている(例えば特許文献6参照)。
特開平6−25492号公報 特開平11−199642号公報 特開平11−228764号公報 特開2005−132987号公報 特開2004−346189号公報 特開平11−35783号公報
特許文献1〜6に記載の技術は、耐衝撃性、流動性、耐候性のいずれかの改良効果はあるものの、剛性についての改良効果は不足しており、車両外装材や屋外電気機器などへの要求性能を十分には満たすことはできない。
本発明は、流動性に優れ、剛性、耐衝撃性および耐候性に優れた成形品が得られる熱可塑性樹脂組成物およびその成形品を提供することを目的とする。
本発明者らは鋭意検討した結果、ポリオルガノシロキサンとアルキル(メタ)アクリレート系重合体とが複合した複合ゴム状重合体を用いたグラフト共重合体において、複合ゴム状重合体の体積平均粒子径と粒子径分布を特定し、ポリメタクリル酸メチルと組み合わせることによって、上記の課題を解消できることを見出し、本発明に到達した。
すなわち、本発明は、以下の態様を包含する。
〔1〕ポリオルガノシロキサンとアルキル(メタ)アクリレート系重合体とが複合した複合ゴム状重合体に、1種以上のビニル系単量体がグラフト重合したグラフト共重合体(E)と、ポリメタクリル酸メチル(F)とを含有し、
前記複合ゴム状重合体の体積平均粒子径が100〜200nmであり、前記複合ゴム状重合体の全粒子中に占める、粒子径が300〜500nmである粒子の割合が5〜25体積%である、熱可塑性樹脂組成物。
〔2〕前記複合ゴム状重合体のゲル含有率が70〜99質量%である〔1〕の熱可塑性樹脂組成物。
〔3〕前記複合ゴム状重合体の全粒子中に占める、粒子径が300〜500nmである粒子の割合が5〜15体積%である〔1〕または〔2〕の熱可塑性樹脂組成物。
〔4〕前記ポリメタクリル酸メチル(F)の230℃、荷重3.7kgでのメルトボリュームフローレートが5〜25cm/10分である〔1〕〜〔3〕のいずれかの熱可塑性樹脂組成物。
〔5〕前記ポリメタクリル酸メチル(F)が、230℃、荷重3.7kgでのメルトボリュームフローレートが15〜25cm/10分であるポリメタクリル酸メチルと、230℃、荷重3.7kgでのメルトボリュームフローレートが5〜10cm/10分であるポリメタクリル酸メチルとを含む〔1〕〜〔4〕のいずれかの熱可塑性樹脂組成物。
〔6〕前記〔1〕〜〔5〕のいずれかの熱可塑性樹脂組成物からなる成形品。
本発明の熱可塑性樹脂組成物は、流動性に優れる。また、本発明の熱可塑性樹脂組成物によれば、剛性、耐衝撃性および耐候性に優れた成形品が得られる。
本発明の成形品は、剛性、耐衝撃性および耐候性に優れる。
以下、本発明を詳細に説明する。
なお、以下の説明において、「成形品」とは、本発明の熱可塑性樹脂組成物を成形してなるものである。
数値範囲を示す「〜」は、その前後に記載された数値を下限値および上限値として含むことを意味する。
「熱可塑性樹脂組成物」
本発明の熱可塑性樹脂組成物は、グラフト共重合体(E)と、ポリメタクリル酸メチル(F)とを含有する。
グラフト共重合体(E)は、ポリオルガノシロキサン(A)とアルキル(メタ)アクリレート系重合体(B)とが複合した複合ゴム状重合体(C)に、1種以上のビニル系単量体(d)がグラフト重合した共重合体である。
本発明の熱可塑性樹脂組成物は、必要に応じて、本発明の効果を損なわない範囲内で、グラフト共重合体(E)およびポリメタクリル酸メチル(F)に加えて、添加剤をさらに含有してもよい。
<ポリオルガノシロキサン(A)>
複合ゴム状重合体(C)を構成するポリオルガノシロキサン(A)としては、特に制限されないが、ビニル重合性官能基を含有するポリオルガノシロキサン(ビニル重合性官能基含有ポリオルガノシロキサン)が好ましく、ビニル重合性官能基含有シロキサン単位と、ジメチルシロキサン単位とを有するポリオルガノシロキサンがより好ましい。
ビニル重合性官能基としては、例えば、メタクリロイルオキシアルキル基、アクリロイルオキシアルキル基、ビニル基、ビニル置換フェニル基等が挙げられる。メタクリロイルオキシアルキル基、アクリロイルオキシアルキル基におけるアルキル基の炭素数は、例えば1〜12であってよい。
ビニル重合性官能基含有シロキサン単位は、ビニル重合性官能基以外の他の有機基を有していてもよい。他の有機基としては、例えばメチル基等のアルキル基、フェニル基等が挙げられる。
ビニル重合性官能基含有シロキサン単位の含有量は、ポリオルガノシロキサン(A)を構成する全単位の総モル数(100モル%)に対し、0.3〜3モル%が好ましい。ビニル重合性官能基含有シロキサン単位の含有量が上記範囲内であれば、ポリオルガノシロキサン(A)とアルキル(メタ)アクリレート系重合体(B)とが十分に複合化し、成形品の表面においてポリオルガノシロキサン(A)がブリードアウトしにくくなる。よって、成形品の耐衝撃性がより向上する。
ポリオルガノシロキサン(A)としては、発色性がさらに良好となることから、3個以上のシロキサン結合を有するケイ素原子の含有量が、ポリオルガノシロキサン(A)中の全ケイ素原子の総モル数(100モル%)に対し、0〜1モル%であるものが好ましい。
ポリオルガノシロキサン(A)の好ましい一態様として、ビニル重合性官能基含有シロキサン単位0.3〜3モル%と、ジメチルシロキサン単位99.7〜97モル%(ただし、ビニル重合性官能基含有シロキサン単位とジメチルシロキサン単位の合計を100モル%とする。)とからなり、3個以上のシロキサン結合を有するケイ素原子の含有量が全ケイ素原子の総モル数に対して1モル%以下であるポリオルガノシロキサンが挙げられる。
ポリオルガノシロキサン(A)の平均粒子径は、特に制限されないが、耐衝撃性がさらに良好となることから、400nm以下が好ましく、150nm以下がより好ましい。下限値については、20nm以上が好ましい。
ここで、ポリオルガノシロキサン(A)の平均粒子径は、動的光散乱方式の粒度分布測定器を用いて質量基準の粒子径分布を測定し、得られた粒子径分布より算出される値(質量平均粒子径)である。
(ポリオルガノシロキサン(A)の製造方法)
ポリオルガノシロキサン(A)は、例えばジメチルシロキサンオリゴマーとビニル重合性官能基含有シロキサンとを含むシロキサン混合物を重合することで得られる。
ジメチルシロキサンオリゴマーとしては、3員環以上のジメチルシロキサン系環状体が好ましく、3〜7員環のジメチルシロキサン系環状体がより好ましい。具体的には、ヘキサメチルシクロトリシロキサン、オクタメチルシクロテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、ドデカメチルシクロヘキサシロキサンなどが挙げられる。これらジメチルシロキサンは、1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
ビニル重合性官能基含有シロキサンとしては、ビニル重合性官能基を含有し、かつ、ジメチルシロキサンオリゴマーとシロキサン結合を介して結合し得るものであれば特に制限されないが、ジメチルシロキサンオリゴマーとの反応性を考慮すると、ビニル重合性官能基を含有するアルコキシシラン化合物が好ましい。
ビニル重合性官能基を含有するアルコキシシラン化合物として具体的には、β−メタクリロイルオキシエチルジメトキシメチルシラン、γ−メタクリロイルオキシプロピルジメトキシメチルシラン、γ−メタクリロイルオキシプロピルメトキシジメチルシラン、γ−メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メタクリロイルオキシプロピルエトキシジエチルシラン、γ−メタクリロイルオキシプロピルジエトキシメチルシラン、δ−メタクリロイルオキシブチルジエトキシメチルシランなどのメタクリロイルオキシシロキサン;テトラメチルテトラビニルシクロテトラシロキサン、p−ビニルフェニルジメトキシメチルシランなどのビニルシロキサン;などが挙げられる。これらビニル重合性官能基含有シロキサンは、1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
シロキサン混合物の重合の方法としては特に制限されないが、乳化重合が好ましい。乳化重合は、通常、乳化剤と水と酸触媒とを用いて行われる。
乳化剤としてはアニオン系乳化剤が好ましい。具体的には、アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ラウリルスルホン酸ナトリウム、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル硫酸エステルナトリウムなどが挙げられる。これらの中でも、アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ラウリルスルホン酸ナトリウム等のスルホン酸系の乳化剤が好ましい。これら乳化剤は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
乳化剤の使用量は、シロキサン混合物100質量部に対して0.05〜5質量部が好ましい。乳化剤の使用量が0.05質量部以上であれば、シロキサン混合物の分散状態が安定しやすく、微小な粒子径の乳化状態を保持しやすくなる。一方、乳化剤の使用量が5質量部以下であれば、乳化剤に起因する耐候性の劣化を抑制できる。
酸触媒としては、スルホン酸類(例えば脂肪族スルホン酸、脂肪族置換ベンゼンスルホン酸、脂肪族置換ナフタレンスルホン酸など)などの有機酸触媒;鉱酸類(例えば硫酸、塩酸、硝酸など)などの無機酸触媒などが挙げられる。これら酸触媒は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
これらの中でも、後述するシロキサンラテックス(a)の安定化作用にも優れている点で、脂肪族置換ベンゼンスルホン酸が好ましく、n−ドデシルベンゼンスルホン酸が特に好ましい。また、n−ドデシルベンゼンスルホン酸と硫酸等の鉱酸とを併用すると、ポリオルガノシロキサン(A)の製造に用いた乳化剤の色が成形品の色に与える影響を小さく抑えることができる。
酸触媒の添加量は適宜決めればよいが、通常、シロキサン混合物100質量部に対して0.1〜20質量部程度である。
酸触媒は、シロキサン混合物と乳化剤と水とを混合するタイミングでそれらと混合してもよいし、シロキサン混合物と乳化剤と水とを混合し乳化させてラテックス(シロキサンラテックス(a))とし、シロキサンラテックス(a)を微粒子化した後、微粒子化したシロキサンラテックス(a)と混合してもよい。
得られるポリオルガノシロキサン(A)の粒子径を制御しやすいことから、シロキサンラテックス(a)を微粒子化した後に、微粒子化したシロキサンラテックス(a)と酸触媒とを混合することが好ましい。特に、微粒子化したシロキサンラテックス(a)を酸触媒水溶液中に一定速度で滴下することが好ましい。
酸触媒をシロキサン混合物と乳化剤と水とを混合するタイミングで混合する場合は、これらを混合した後に微粒子化することが好ましい。
シロキサンラテックス(a)は、例えばホモミキサーやホモジナイザーなどを使用することで微粒子化できる。ホモミキサーは、高速回転による剪断力で微粒子化を行う。ホモジナイザーは、高圧発生機による噴出力で微粒子化を行う。
シロキサン混合物と乳化剤と水と酸触媒とを混合する方法や、微粒子化したシロキサンラテックス(a)と酸触媒とを混合する方法としては、例えば高速攪拌による混合、ホモジナイザーなどの高圧乳化装置による混合などが挙げられる。中でも、ポリオルガノシロキサン(A)の粒子径の分布を小さくできる点から、ホモジナイザーを使用した方法が好適である。
重合温度は、50℃以上が好ましく、80℃以上が好ましい。
なお、微粒子化したシロキサンラテックス(a)を酸触媒水溶液中に滴下する場合、酸触媒水溶液の温度は50℃以上が好ましく、80℃以上が好ましい。
重合時間は、シロキサン混合物と乳化剤と水とを混合するタイミングで酸触媒を混合する場合は、2時間以上が好ましく、5時間以上がさらに好ましい。一方、微粒子化したシロキサンラテックス(a)と酸触媒とを混合する場合は、微粒子化したシロキサンラテックス(a)を酸触媒水溶液中に滴下した後、1時間程度保持することが好ましい。
重合の停止は、反応液を冷却した後、反応液の25℃におけるpHが6〜8程度になるように水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウムなどのアルカリ性物質で反応液を中和することによって行うことができる。
上記のようにして、ポリオルガノシロキサン(A)のラテックスが得られる。
ポリオルガノシロキサン(A)の平均粒子径は、シロキサン混合物の組成、酸触媒の使用量(酸触媒水溶液中の酸触媒の含有量)、重合温度などを調整することで制御できる。例えば、酸触媒の使用量が少なくなるほど平均粒子径は大きくなる傾向にあり、重合温度が高くなるほど平均粒子径は小さくなる傾向にある。
<アルキル(メタ)アクリレート系重合体(B)>
複合ゴム状重合体(C)を構成する(メタ)アクリレート系重合体(B)は、アルキル(メタ)アクリレート単位を有する重合体である。「アルキル(メタ)アクリレート」とは、アルキルアクリレートまたはアルキルメタクリレートを示す。
(メタ)アクリレート系重合体(B)は、アルキル(メタ)アクリレート単位以外の単量体(他の単量体)単位をさらに有していてもよい。
アルキル(メタ)アクリレートのアルキル基の炭素数は、例えば1〜12であってよい。
アルキル(メタ)アクリレートとしては、例えばアクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n−プロピル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸2−エチルヘキシルなどのアクリル酸アルキルエステル;メタクリル酸ヘキシル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸n−ラウリルなどのメタクリル酸アルキルエステルなどが挙げられる。これらアルキル(メタ)アクリレートは、1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。中でも、成形品の耐衝撃性がより向上する点で、アクリル酸n−ブチルが好ましい。
他の単量体としては、アルキル(メタ)アクリレートと共重合可能であれば特に制限されないが、芳香族ビニル化合物(例えば、スチレン、α−メチルスチレン、p−メチルスチレンなど)、シアン化ビニル化合物(例えば、アクリロニトリル、メタクリロニトリルなど)などが挙げられる。これら他の単量体は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
アルキル(メタ)アクリレート系重合体(B)中、アルキル(メタ)アクリレート単位の含有量は、全単量体単位の総質量に対し、80〜100質量%が好ましく、90〜100質量%がより好ましい。
アルキル(メタ)アクリレート系重合体(B)は、アルキル(メタ)アクリレートを1種以上含む単量体成分を重合して得られる。この単量体成分には、他の単量体が含まれていてもよい。
単量体成分の重合方法は特に制限されず、公知の方法に従って行うことができる。
<複合ゴム状重合体(C)>
複合ゴム状重合体(C)は、ポリオルガノシロキサン(A)とアルキル(メタ)アクリレート系重合体(B)とが複合した複合ゴムである。
複合ゴム状重合体(C)におけるポリオルガノシロキサン(A)とアルキル(メタ)アクリレート系重合体(B)との比率は特に制限されないが、成形品の耐衝撃性と耐候性がより優れたものとなることから、ポリオルガノシロキサン(A)とアルキル(メタ)アクリレート系重合体(B)との合計を100質量%としたときに、ポリオルガノシロキサン(A)の割合が4〜14質量%であることが好ましい。
複合ゴム状重合体(C)は粒状であり、熱可塑性樹脂組成物中においても粒状で存在している。
複合ゴム状重合体(C)の体積平均粒子径は100〜200nmであり、120〜180nmが好ましい。体積平均粒子径が前記範囲の下限値以上であると、成形品の耐衝撃性が優れる。体積平均粒子径が前記範囲の上限値以下であると、成形品の耐候性が優れる。
ここで、複合ゴム状重合体(C)の体積平均粒子径は、動的光散乱方式の粒度分布測定器を用いて複合ゴム状重合体(C)の体積基準の粒子径分布を測定し、得られた粒子径分布より算出される値である。
複合ゴム状重合体(C)中の全粒子中に占める、粒子径が300〜500nmである粒子の割合は5〜25体積%である。すなわち、複合ゴム状重合体(C)は、粒子径が300〜500nmである粒子が全粒子中に5〜25体積%の割合を占める粒子径分布(体積基準)を有する。粒子径が300〜500nmである粒子の割合が5体積%以上であると、成形品の耐衝撃性が優れ、25体積%以下であると、成形品の耐候性が優れる。成形品の耐衝撃性と耐候性のバランスがより良好なものとなることから、粒子径が300〜500nmである粒子の割合は、5〜15体積%が好ましい。
また、複合ゴム状重合体(C)中の全粒子中に占める、粒子径が500nm超である粒子の割合は、成形品の耐候性がより良好となる点から、1体積%未満が好ましく、0.1体積%未満がより好ましい。
ここで、粒子径が300〜500nmである粒子の割合、粒子径が500nm超である粒子の割合はそれぞれ、動的光散乱方式の粒度分布測定器を用いて複合ゴム状重合体(C)の体積基準の粒子径分布を測定し、得られた粒子径分布より算出される値である。
複合ゴム状重合体(C)の体積基準の粒子径分布は、熱可塑性樹脂組成物に含まれる全ての複合ゴム状重合体(C)全体での値である。したがって、体積平均粒子径、粒子径が300〜500nmである粒子の割合、粒子径が500nm超である粒子の割合もそれぞれ、熱可塑性樹脂組成物に含まれる全ての複合ゴム状重合体(C)全体での値である。
熱可塑性樹脂組成物に用いられるグラフト共重合体(E)が2種以上である場合、全体としての体積平均粒子径および粒子径が300〜500nmである粒子の割合が前記範囲内である限り、2種以上のグラフト共重合体(E)のなかに、複合ゴム状重合体(C)の体積平均粒子径または/および粒子径が300〜500nmである粒子の割合が前記範囲外であるグラフト共重合体(E)が含まれていてもよい。成形品の耐衝撃性、耐候性の点では、複合ゴム状重合体(C)の体積平均粒子径および粒子径が300〜500nmである粒子の割合が前記範囲内であるグラフト共重合体(E)が1種以上含まれていることが好ましい。
複合ゴム状重合体(C)の体積平均粒子径および粒子径が300〜500nmである粒子の割合が、そのまま熱可塑性樹脂組成物中の複合ゴム状重合体(C)の体積平均粒子径および粒子径が300〜500nmである粒子の割合を示すことを、電子顕微鏡写真の画像解析によって確認した。
複合ゴム状重合体(C)のゲル含有率は、70〜99質量%が好ましい。ゲル含有率が70質量%以上であると、成形品の剛性がより優れる。ゲル含有率が99質量%以下であると、成形品の耐衝撃性がより優れる。
本発明におけるゲル含有率とは、複合ゴム状重合体(C)をアセトンに浸漬し、アセトンに溶解しなかった不溶解分を乾燥させた場合の、アセトン浸漬前の複合ゴム状重合体(C)の質量に対する、乾燥させたアセトン不溶解分の質量の割合である。詳しくは、後述する実施例に記載の方法により測定される。
(複合ゴム状重合体(C)の製造方法)
複合ゴム状重合体(C)の製造方法としては、特に制限されないが、ポリオルガノシロキサン(A)とアルキル(メタ)アクリレート系重合体(B)を各々含む複数のラテックスをヘテロ凝集もしくは共肥大化する方法;ポリオルガノシロキサン(A)およびアルキル(メタ)アクリレート系重合体(B)のいずれか一方を含むラテックスの存在下で、他方の重合体を形成する単量体成分を重合させて複合化させる方法;などが挙げられる。
複合ゴム状重合体(C)の体積平均粒子径および粒子径分布を上述した範囲内となるように容易に調整できることから、ラテックス状のポリオルガノシロキサン(A)の存在下で、アルキル(メタ)アクリレートを1種以上含む単量体成分をラジカル重合させて共重合体ラテックスを得る工程(ラジカル重合工程)と、前記共重合体ラテックスと酸基含有共重合体ラテックスとを混合することにより、共重合体ラテックスを肥大化させる工程(肥大化工程)とを有する方法が好ましい。この方法は、ラジカル重合工程の後、肥大化工程の前に、共重合体ラテックスに縮合酸塩を添加する工程(縮合酸塩添加工程)をさらに有することが好ましい。
ラジカル重合工程:
ラジカル重合工程は、ラテックス状のポリオルガノシロキサン(A)の存在下で、アルキル(メタ)アクリレートを1種以上含む単量体成分をラジカル重合する工程である。
アルキル(メタ)アクリレートを1種以上含む単量体成分は、ラテックス状のポリオルガノシロキサン(A)に一括して添加してもよいし、連続的に、あるいは断続的に添加してもよい。
アルキル(メタ)アクリレートを1種以上含む単量体成分をラジカル重合させる際には、必要に応じてグラフト交叉剤や架橋剤を用いてもよい。
グラフト交叉剤または架橋剤としては、例えば、メタクリル酸アリル、シアヌル酸トリアリル、イソシアヌル酸トリアリル、ジビニルベンゼン、ジメタクリル酸エチレングリコールジエステル、ジメタクリル酸プロピレングリコールジエステル、ジメタクリル酸1,3−ブチレングリコールジエステル、ジメタクリル酸1,4−ブチレングリコールジエステルなどが挙げられる。これらは、1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
ラジカル重合には、通常、ラジカル重合剤および乳化剤が用いられる。
ラジカル重合開始剤としては、過酸化物、アゾ系開始剤、酸化剤と還元剤とを組み合わせたレドックス系開始剤などが挙げられる。これらの中では、レドックス系開始剤が好ましく、特に硫酸第一鉄とエチレンジアミン四酢酸二ナトリウム塩とナトリウムホルムアルデヒドスルホキシレートとハイドロパーオキサイドとを組み合わせたスルホキシレート系開始剤が好ましい。
乳化剤としては特に制限されないが、ラジカル重合時のラテックスの安定性に優れ、重合率を高められることから、サルコシン酸ナトリウム、脂肪酸カリウム、脂肪酸ナトリウム、アルケニルコハク酸ジカリウム、ロジン酸石鹸等の各種カルボン酸塩が好ましい。これらの中では、得られるグラフト共重合体(E)およびこれを含む熱可塑性樹脂組成物を高温成形した際にガス発生を抑制できることから、アルケニルコハク酸ジカリウムが好ましい。
重合条件は、例えば重合開始温度が40〜70℃で、重合開始から終了までの時間が0.5〜3.0時間であってよい。
縮合酸塩添加工程:
縮合酸塩添加工程は、ラジカル重合工程で得られた共重合体ラテックスに縮合酸塩を添加する工程である。肥大化工程に先立ち、共重合体ラテックスに縮合酸塩を添加しておくことで、肥大化が進行し易くなることで酸基含有共重合体ラテックスの添加量を減らすことが可能となり、複合ゴム状重合体(C)の体積平均粒子径および粒子径分布を上述した範囲内に調整することが容易になる。
縮合酸塩としては、例えばリン酸、ケイ酸等の縮合酸と、アルカリ金属および/またはアルカリ土類金属との塩が用いられる。これらの中でも、リン酸の縮合酸であるピロリン酸とアルカリ金属の塩が好ましく、ピロリン酸ナトリウムまたはピロリン酸カリウムが特に好ましい。
縮合酸塩の添加量は、複合ゴム状重合体(C)の体積平均粒子径および粒子径分布が上述した範囲内となるように調整すればよいが、通常は、ラジカル重合工程にて得られる共重合体ラテックスの固形分100質量部に対し、0.1〜5質量部とすることが好ましく、0.3〜3質量部がより好ましい。縮合酸塩の添加量が前記範囲の下限値以上であれば、肥大化が十分に進行し、前記範囲の上限値以下であれば、肥大化が十分に進行する、あるいはゴムラテックスが安定化しやすく、多量の凝塊物が発生するのを抑制できる。
縮合酸塩は、共重合体ラテックスに一括して添加することが好ましい。
縮合酸塩が添加された共重合体ラテックス(共重合体ラテックスと縮合酸塩との混合物)の25℃におけるpHは7以上であることが好ましい。pHが7以上であれば肥大化が十分に進行しやすくなる。pHを7以上とするために、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどの一般的なアルカリ化合物を使用することができる。
肥大化工程:
肥大化工程は、ラジカル重合工程にて得られ、必要に応じて縮合酸塩添加工程にて縮合酸塩が添加された共重合体ラテックスと、酸基含有共重合体ラテックスとを混合することにより、共重合体ラテックスを肥大化させる工程である。これにより、複合ゴム状重合体(C)のラテックスが得られる。
酸基含有共重合体は、酸基含有単量体単位と、アルキル(メタ)アクリレート単位とを有する。必要に応じて、これら以外の他の単量体単位をさらに有していてもよい。
酸基含有単量体としては、カルボキシ基を有する不飽和化合物が好ましい。カルボキシ基を有する不飽和化合物としては、(メタ)アクリル酸、イタコン酸、クロトン酸などが挙げられ、(メタ)アクリル酸が特に好ましい。(メタ)アクリル酸とは、アクリル酸またはメタクリル酸を示す。酸基含有単量体は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
アルキル(メタ)アクリレートとしては、(メタ)アクリル酸と、炭素数1〜12の直鎖または分岐のアルキル基を有するアルコールとのエステルが挙げられ、例えば、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸t−ブチル、アクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸t−ブチル、メタクリル酸2−エチルヘキシルなどが挙げられる。これらの中でも、炭素数1〜8のアルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレートが特に好ましい。アルキル(メタ)アクリレートは、1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
他の単量体は、酸基含有単量体およびアルキル(メタ)アクリレートと共重合可能な単量体であり、かつ酸基含有単量体およびアルキル(メタ)アクリレート以外の単量体である。他の単量体としては、芳香族ビニル化合物(例えば、スチレン、α−メチルスチレン、p−メチルスチレン等)、シアン化ビニル化合物(例えば、アクリロニトリル、メタクリロニトリル等)、2つ以上の重合性官能基を有する化合物(例えば、メタクリル酸アリル、ジメタクリル酸ポリエチレングリコールエステル、シアヌル酸トリアリル、イソシアヌル酸トリアリル、トリメリット酸トリアリル等)などが挙げられる。他の単量体は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
酸基含有共重合体としては、酸基含有共重合体を構成する全単量体単位の総質量(100質量%)に対して、酸基含有単量体単位の含有量が5〜40質量%、アルキル(メタ)アクリレート単位の含有量が60〜95質量%、他の単量体単位の含有量が0〜48質量%である共重合体が好ましく、酸基含有単量体単位の含有量が8〜30質量%、アルキル(メタ)アクリレート単位の含有量が70〜92質量%、他の単量体単位の含有量が0〜30質量%である共重合体がより好ましい。酸基含有単量体単位の含有量が前記下限値以上、アルキル(メタ)アクリレート単位の含有量が前記上限値以下であれば、十分な肥大化能力が得られる。酸基含有単量体単位の含有量が前記上限値以下、アルキル(メタ)アクリレート単位の含有量が前記下限値以上であれば、酸基含有共重合体ラテックス製造の際に多量の凝塊物が生成するのを抑制できる。他の単量体単位の含有量が前記上限値以下であれば、酸基含有共重合体ラテックスが十分な肥大化能力を有することができる。
酸基含有共重合体ラテックスは、水中にて、酸基含有単量体、アルキル(メタ)アクリレート、および必要に応じてこれらと共重合可能な他の単量体を含む単量体成分を重合して得られる。重合方法としては、一般的な乳化重合法を用いることができる。
乳化重合で使用される乳化剤としては、オレイン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ロジン酸のアルカリ金属塩、アルケニルコハク酸のアルカリ金属塩などのカルボン酸系の乳化剤;アルキル硫酸エステル、アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム、アルキルスルホコハク酸ナトリウム、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル硫酸エステルナトリウムなどのアニオン系乳化剤など、公知の乳化剤が挙げられる。これら乳化剤は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
乳化剤は、重合初期に全量を一括して添加してもよいし、連続的に、あるいは断続的に添加してもよい。乳化剤量やその使用方法によっては、酸基含有共重合体ラテックスの粒子径を、ひいては肥大化された複合ゴム状重合体(C)ラテックスの粒子径に影響を及ぼす場合があるため、適正な量および使用方法を選択することが好ましい。
乳化重合に用いる重合開始剤としては、熱分解型開始剤やレドックス型開始剤などが挙げられる。熱分解型開始剤としては、過硫酸カリウム、過硫酸ナトリウム、過硫酸アンモニウムなどが挙げられる。レドックス型開始剤としては、クメンハイドロパーオキシドに代表される有機過酸化物−ナトリウムホルムアルデヒドスルホキシレート−鉄塩等の組み合わせが例示される。これら重合開始剤は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
乳化重合の際には、分子量を調整するためにメルカプタン類(例えばt−ドデシルメルカプタン、n−オクチルメルカプタン等)、テルピノレン、α−メチルスチレンダイマー等の連鎖移動剤を使用したり、pHを調節するためにアルカリや酸、減粘剤として電解質を添加したりすることもできる。
肥大化工程における酸基含有共重合体ラテックスの添加量(固形分換算量)は、複合ゴム状重合体(C)の体積平均粒子径および粒子径分布が上述した範囲内となるように調整すればよいが、通常は、ラジカル重合工程にて得られる共重合体ラテックスの固形分100質量部に対し、0.1〜5質量部が好ましく、0.3〜3質量部がより好ましい。酸基含有共重合体ラテックスの添加量が0.1質量部以上であれば、肥大化が十分に進行する。また、凝塊物が多量に発生するのを抑制できる。一方、酸基含有共重合体ラテックスの添加量が5質量部以下であれば、肥大化ラテックスのpHが低下するのを抑制でき、ラテックスが不安定になりにくい。
酸基含有共重合体ラテックスは、共重合体ラテックスに一括して添加してもよいし、滴下により連続的または断続的に添加してもよい。
肥大化時の攪拌は適度に制御することが好ましい。攪拌が不十分な場合には、局部的に肥大化が進行することにより未肥大のゴム状重合体が残留することがある。一方、過度に攪拌を行うと、肥大化ラテックスが不安定になり、凝塊物が多量に発生することがある。
肥大化を行う際の温度は特に制限されないが、20〜90℃が好ましく、30〜80℃がより好ましい。温度がこの範囲外であると、肥大化が十分に進行しない場合がある。
なお、複合ゴム状重合体(C)は、上記のように酸基含有共重合体ラテックスを用いて肥大化した後、アルキル(メタ)アクリレートを1種以上含む単量体成分をさらに添加して重合させることにより製造してもよい。
<ビニル系単量体(d)>
ビニル系単量体(d)としては特に制限されないが、芳香族ビニル化合物、(メタ)アクリル酸アルキルエステル、シアン化ビニル化合物などが好ましい。芳香族ビニル化合物としては、例えばスチレン、α−メチルスチレン、p−メチルスチレンなどが挙げられる。(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、例えばメタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸t−ブチルなどが挙げられる。シアン化ビニル化合物としては、例えばアクリロニトリル、メタクリロニトリルなどが挙げられる。中でも、成形品の耐衝撃性がより向上することから、スチレンとアクリロニトリルとを併用することが好ましい。
<グラフト共重合体(E)>
グラフト共重合体(E)は、複合ゴム状重合体(C)に1種以上のビニル系単量体(d)がグラフト重合した共重合体である。
なお、グラフト共重合体(E)においては、複合ゴム状重合体(C)に1種以上のビニル系単量体(d)がどのように重合しているか特定することは困難である。すなわち、グラフト共重合体(E)をその構造または特性により直接特定することが不可能であるか、またはおよそ実際的ではないという事情(不可能・非実際的事情)が存在する。したがって、グラフト共重合体(E)は「複合ゴム状重合体(C)に1種以上のビニル系単量体(d)がグラフト重合した」と規定することがより適切とされる。
複合ゴム状重合体(C)と1種以上のビニル系単量体(d)との質量比は特に制限されないが、成形品の耐衝撃性と耐候性とのバランスがより良好なものとなることから、複合ゴム状重合体(C)を10〜80質量%、1種以上のビニル系単量体(d)を20〜90質量%とすることが好ましく、複合ゴム状重合体(C)を30〜70質量%、1種以上のビニル系単量体(d)を30〜70質量%とすることが特に好ましい(ただし、複合ゴム状重合体(C)と1種以上のビニル系単量体(d)との合計を100質量%とする。)。かかる質量比であると、熱可塑性樹脂組成物の流動性、および成形品の耐衝撃性と耐候性がより優れたものとなる。
(グラフト共重合体(E)の製造方法)
グラフト共重合体(E)は、複合ゴム状重合体(C)に1種以上のビニル系単量体(d)をグラフト重合して得られる。
グラフト重合を行う方法としては、特に制限されないが、反応が安定して進行するように制御可能であることから、乳化重合が好ましい。具体的には、複合ゴム状重合体(C)のラテックスに1種以上のビニル系単量体(d)を一括して仕込んだ後に重合する方法;複合ゴム状重合体(C)のラテックスに1種以上のビニル系単量体(d)の一部を先に仕込み、随時重合させながら残りを重合系に滴下する方法;複合ゴム状重合体(C)のラテックスに1種以上のビニル系単量体(d)の全量を滴下しながら随時重合する方法などが挙げられ、これらを1段ないしは2段以上に分けて行うことができる。2段以上に分けて行う場合、各段における1種以上のビニル系単量体(d)の種類や組成比を変えて行うことも可能である。
乳化重合には、通常、ラジカル重合開始剤および乳化剤が用いられる。これらラジカル重合開始剤および乳化剤としては、複合ゴム状重合体(C)の製造方法の説明において先に例示したラジカル重合開始剤および乳化剤などが挙げられる。
重合の際には、得られるグラフト共重合体(E)の分子量やグラフト率を制御するため、各種公知の連鎖移動剤を添加してもよい。
重合条件は、例えば重合開始温度が60〜90℃で、重合開始から終了までの時間が2.0〜5.0時間であってよい。
乳化重合で得られるグラフト共重合体(E)は、通常、ラテックスの状態である。
グラフト共重合体(E)のラテックスからグラフト共重合体(E)を回収する方法としては、例えばグラフト共重合体(E)のラテックスを、凝固剤を溶解させた熱水中に投入することによってスラリー状に凝析する湿式法;加熱雰囲気中にグラフト共重合体(E)のラテックスを噴霧することによって半直接的にグラフト共重合体(E)を回収するスプレードライ法などが挙げられる。
湿式法に用いる凝固剤としては、硫酸、塩酸、リン酸、硝酸などの無機酸;塩化カルシウム、酢酸カルシウム、硫酸アルミニウムなどの金属塩などが挙げられ、重合で用いた乳化剤に応じて選定される。例えば、乳化剤として脂肪酸石鹸やロジン酸石鹸などのカルボン酸石鹸のみが使用されている場合には、上述した凝固剤の1種以上を用いることができる。また、乳化剤としてアルキルベンゼンスルホン酸ナトリウムなどの酸性領域でも安定な乳化力を示す乳化剤を使用した場合には、凝固剤としては金属塩が好適である。
湿式法を用いると、スラリー状のグラフト共重合体(E)が得られる。
スラリー状のグラフト共重合体(E)から乾燥状態のグラフト共重合体(E)を得る方法としては、まず残存する乳化剤残渣を水中に溶出させて洗浄し、次いで、このスラリーを遠心またはプレス脱水機等で脱水した後に気流乾燥機等で乾燥する方法;圧搾脱水機や押出機等で脱水と乾燥とを同時に実施する方法などが挙げられる。かかる方法によって、粉体または粒子状の乾燥グラフト共重合体(E)が得られる。
洗浄条件としては特に制限されないが、乾燥後のグラフト共重合体(E)100質量%中に含まれる乳化剤残渣量が0.5〜2質量%の範囲となる条件で洗浄することが好ましい。グラフト共重合体(E)中の乳化剤残渣が0.5質量%以上であれば、得られるグラフト共重合体(E)およびこれを含む熱可塑性樹脂組成物の流動性がより向上する傾向にある。一方、グラフト共重合体(E)中の乳化剤残渣が2質量%以下であれば、熱可塑樹脂組成物を高温成形した際にガス発生を抑制できる。乳化剤残渣量は、例えば洗浄時間などによって調整できる。
乾燥温度は、例えば60〜80℃であってよい。
得られたグラフト共重合体(E)中の複合ゴム状重合体(C)の体積平均粒子径および体積基準の粒子径分布は、グラフト共重合体(E)の製造に用いた複合ゴム状重合体(C)のラテックスにおける複合ゴム状重合体(C)の体積平均粒子径および体積基準の粒子径分布と同じである。
なお、圧搾脱水機や押出機から排出されたグラフト共重合体(E)を回収せず、直接、樹脂組成物を製造する押出機や成形機に送って成形品とすることも可能である。
<ポリメタクリル酸メチル(F)>
ポリメタクリル酸メチル(F)の230℃、荷重3.7kgでのメルトボリュームフローレート(以下、「MVR」とも言う。)は、5〜25cm/10分が好ましく、7〜20cm/10分がより好ましい。ポリメタクリル酸メチル(F)のMVRが前記下限値以上であれば、熱可塑性樹脂組成物の流動性がより優れ、前記上限値以下であれば、成形品の剛性がより優れる。
MVRは、ISO 1133に従って測定される。
ポリメタクリル酸メチル(F)として、1種を単独で用いてもよく、MVRの異なる2種以上を併用してもよい。
熱可塑性樹脂組成物の流動性と成形品の剛性とのバランスがより良好になることから、ポリメタクリル酸メチル(F)として、下記の2種類のポリメタクリル酸メチル(F−1)および(F−2)を併用することが好ましい。
(F−1):230℃、荷重3.7kgでのMVRが15〜25cm/10分であるポリメタクリル酸メチル。
(F−2):230℃、荷重3.7kgでのMVRが5〜10cm/10分であるポリメタクリル酸メチル。
(F−1)のMVRは、18〜22cm/10分が好ましい。
(F−2)のMVRは、5〜8cm/10分が好ましい。
2種類のポリメタクリル酸メチル(F−1)と(F−2)との質量比は、特に制限されないが、成形品の剛性と流動性とのバランスがより良好なものとなることから、(F−1)と(F−2)との合計質量を100質量%としたときに、(F−1)が20〜60質量%、(F−2)が20〜60質量%であることが好ましく、(F−1)が40〜60質量%、(F−2)が40〜60質量%であることがより好ましい。
<添加剤>
添加剤としては、酸化防止剤や光安定剤などの各種安定剤、滑剤、可塑剤、離型剤、染料、顔料、帯電防止剤、無機充填剤などが挙げられる。
<各成分の含有割合>
熱可塑性樹脂組成物中のグラフト共重合体(E)とポリメタクリル酸メチル(F)との合計質量を100質量%としたときに、グラフト共重合体(E)の含有量が20〜50質量%、ポリメタクリル酸メチル(F)の含有量が50〜80質量%であることが好ましく、グラフト共重合体(E)の含有量が25〜40質量%、ポリメタクリル酸メチル(F)の含有量が60〜75質量%であることがより好ましい。グラフト共重合体(E)の含有量が前記下限値以上、ポリメタクリル酸メチル(F)の含有量が前記上限値以下であると、耐衝撃性がより優れる。グラフト共重合体(E)の含有量が前記上限値以下、ポリメタクリル酸メチル(F)の含有量が前記下限値以上であると、流動性、剛性がより優れる。
熱可塑性樹脂組成物の総質量に対する、グラフト共重合体(E)とポリメタクリル酸メチル(F)との合計質量の割合は、70〜100質量%が好ましく、90〜100質量%がより好ましい。
<熱可塑性樹脂組成物のMVR>
本発明の熱可塑性樹脂組成物の220℃、荷重10kgでのMVRは、6.0〜16.0cm/10分が好ましく、9.0〜16.0cm/10分がより好ましい。熱可塑性樹脂組成物のMVRが前記下限値以上であれば、熱可塑性樹脂組成物の流動性がより優れる。熱可塑性樹脂組成物のMVRが前記上限値以下であれば、成形品の成形性がより優れる。
熱可塑性樹脂組成物のMVRは、ポリメタクリル酸メチル(F)のMVR、含有量および分子量等によって調整できる。
<熱可塑性樹脂組成物の製造方法>
本発明の熱可塑性樹脂組成物の製造方法は特に限定されない。例えば、グラフト共重合体(E)と、ポリメタクリル酸メチル(F)と、必要に応じて添加剤とを、V型ブレンダ、ヘンシェルミキサーなどの混合機を用いて混合分散させ、これにより得られた混合物をスクリュー式押出機、バンバリーミキサ、加圧ニーダ、ミキシングロールなどの溶融混練機などを用いて溶融混練することにより製造される。また、必要に応じて、ペレタイザーなどを用いて溶融混練物をペレット化してもよい。
<作用効果>
以上説明した本発明の熱可塑性樹脂組成物にあっては、ポリオルガノシロキサン(A)とアルキル(メタ)アクリレート系重合体(B)とが複合した複合ゴム状重合体(C)に1種以上のビニル系単量体(d)がグラフト重合したグラフト共重合体(E)と、ポリメタクリル酸メチル(F)とを含有し、複合ゴム状重合体(C)の体積平均粒子径が100〜200nmであり、複合ゴム状重合体(C)の全粒子中に占める、粒子径が300〜500nmである粒子の割合が5〜25体積%であるため、流動性に優れ、また、剛性、耐衝撃性および耐候性に優れた成形品を得ることができる。
「成形品」
本発明の成形品は、本発明の熱可塑性樹脂組成物からなる。
本発明の成形品は、本発明の熱可塑性樹脂組成物を用いているため、剛性、耐衝撃性、耐候性に優れる。
本発明の成形品は、本発明の熱可塑性樹脂組成物を成形することにより得られる。
成形方法としては、特に限定されず、公知の成形方法を用いることができ、例えば射出成形法、プレス成形法、押出成形法、真空成形法、ブロー成形法などが挙げられる。
成形品の用途としては、例えばピラー、ドアミラー、ラジエターグリル、スポイラーなどの車両用部品、OA機器、家電部品、壁材、窓枠などの建材部品、玩具、文房具などの雑貨などが挙げられ、車両用灯具が好適である。
以下、実施例および比較例により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。なお、以下の例中の「%」および「部」は明記しない限りは質量基準である。
後述する実施例および比較例における各種測定および評価方法は、以下の通りである。
「測定・評価」
<複合ゴム状重合体(C)の粒子径分布および体積平均粒子径の測定>
ナノトラック粒度分布計(日機装株式会社製、「UPA−EX150」)を用い、測定溶媒として純水を用いて、複合ゴム状重合体(C)ラテックスの体積基準の粒子径分布を測定し、得られた粒子径分布より体積平均粒子径、および粒子径が300〜500nmの粒子の割合を求めた。これらはそれぞれ、熱可塑性樹脂組成物中の複合ゴム状重合体(C)の体積平均粒子径、および粒子径が300〜500nmの粒子の割合とみなすことができる。実際、複合ゴム状重合体(C)の体積平均粒子径、および粒子径が300〜500nmである粒子の割合が、そのまま熱可塑性樹脂組成物中の複合ゴム状重合体(C)の体積平均粒子径、および粒子径が300〜500nmである粒子の割合を示すことを、電子顕微鏡写真の画像解析によって確認した。
2種類のグラフト共重合体(E)を併用した例では、電子顕微鏡の画像解析によって、熱可塑性樹脂組成物中の複合ゴム状重合体(C)の体積平均粒子径、および粒子径が300〜500nmの粒子の割合を確認した。
<ゲル含有率の測定>
複合ゴム状重合体(C)の水性または溶媒分散体を塩化カルシウムにて凝固させ、メタノール洗浄、24時間真空乾燥して得られた凝固粉試料[D1]0.5gを、100mLのアセトン中に添加しスパチュラで撹拌し、23℃で24時間浸漬してアセトン含有試料を得た。次いで、遠心分離用セル[D2]を秤量し、この遠心分離用セルに前記アセトン含有試料の全量を入れ、1400rpmで4時間超遠心分離し、上澄みをデカンテーションにより除去し、残存した不溶解分を遠心分離用セルごと23℃で24時間真空乾燥した。その乾燥物[D3]の質量を測定し、下記式(1)から、複合ゴム状重合体(C)のゲル含有率を求めた。
ゲル含有率(%)=(乾燥物質量[D3](g)−遠心分離用セル質量[D2](g))/凝固粉試料質量[D1](g)・・・(1)
<ポリメタクリル酸メチル(F)のMVRの測定>
ポリメタクリル酸メチルのMVRは、メルトインデックサ(株式会社東洋精機製作所製、「F−F01」)を用い、ISO 1133に準拠し、シリンダ温度230℃、荷重3.7kgで測定した。
<剛性の評価>
ISO 3167に準拠して、ペレット状の熱可塑性樹脂組成物から、射出成形機(東芝機械株式会社製、「IS55FP−1.5A」)を用いて試験片(成形品)を作製した。この試験片の曲げ弾性率をISO 178に準拠して、23℃雰囲気下で測定した。曲げ弾性率が大きいほど剛性に優れる。
<耐衝撃性の評価>
ISO 3167に準拠して、ペレット状の熱可塑性樹脂組成物から、射出成形機(東芝機械株式会社製、「IS55FP−1.5A」)を用いて試験片(成形品)を作製した。この試験片のシャルピー衝撃強度(ノッチ付)をISO 179に準拠して、23℃雰囲気下で測定した。シャルピー衝撃強度が大きいほど耐衝撃性に優れる。
<流動性の評価>
ペレット状の熱可塑性樹脂組成物のMVRは、メルトインデックサ(株式会社東洋精機製作所製、「F−F01」)を用い、ISO 1133に準拠し、シリンダ温度220℃、荷重10kgで測定した。MVRが大きいほど流動性に優れる。
<耐候性の評価>
ペレット状の熱可塑性樹脂組成物から、(株)日本製鋼所製4オンス射出成形機を用い、シリンダー設定温度260℃ 、金型温度60℃、射出率20g/秒の条件で、長さ100mm、幅100mm、厚み3mmの板状の成形品を作製した。
次いで、得られた成形品の表面を長さ45mm、幅50mmに切削し、サンシャインウエザーメーター(スガ試験機製 WEL−SUN−HCH−B)を用い、JIS D 0205、JIS K 7350−4に準拠し、63℃、雨有り条件下で1000時間試験を行った。
そして、試験前後の成形品の変色の度合い(ΔE)を、測色計(ミノルタ製 CM−508d D65 10°SCE方式)を用いて測定した。ΔEが小さいほど耐候性に優れる。
「ポリオルガノシロキサンの製造」
<製造例1:ポリオルガノシロキサン(A)の製造>
オクタメチルシクロテトラシロキサン98部、γ−メタクリロイルオキシプロピルジメトキシメチルシラン2部を混合してシロキサン混合物100部を得た。これに、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム0.67部、イオン交換水300部からなる水溶液を添加し、ホモミキサーにて10000回転/分で2分間撹拌した後、ホモジナイザーに300kg/cmの圧力で2回通し、安定な予備混合オルガノシロキサンラテックスを得た。
別途、試薬注入容器、冷却管、ジャケット加熱機および攪拌装置を備えた反応器内に、ドデシルベンゼンスルホン酸10部と、イオン交換水90部とを投入し、10%のドデシルベンゼンスルホン酸水溶液(酸触媒水溶液)を調製した。
この酸触媒水溶液を85℃に加熱し、その状態で酸触媒水溶液に、予備混合オルガノシロキサンラテックスを2時間にわたって滴下し、滴下終了後3時間その温度を維持した後、40℃以下に冷却した。次いで、この反応物を10%水酸化ナトリウム水溶液でpH7.0に中和して、ポリオルガノシロキサン(A)のラテックスを得た。
得られたポリオルガノシロキサン(A)のラテックスを180℃で30分乾燥して固形分を求めたところ18.2%であった。また、ポリオルガノシロキサン(A)の質量基準の平均粒子径は30nmであった。
「酸基含有共重合体ラテックスの製造」
<製造例2:酸基含有共重合体ラテックス(K−1)の製造>
試薬注入容器、冷却管、ジャケット加熱機および撹拌装置を備えた反応器内に、イオン交換水200部、オレイン酸カリウム2部、ジオクチルスルホコハク酸ナトリウム4部、硫酸第一鉄七水塩0.003部、エチレンジアミン四酢酸二ナトリウム塩0.009部、ナトリウムホルムアルデヒドスルホキシレート0.3部を窒素気流下で仕込み、60℃に昇温した。60℃になった時点から、アクリル酸n−ブチル85部、メタクリル酸15部、クメンヒドロパーオキサイド0.5部からなる混合物を120分かけて連続的に滴下した。滴下終了後、さらに2時間、60℃を維持した状態で熟成を行い、固形分が33%、重合転化率が96%、酸基含有共重合体の体積平均粒子径が120nmである酸基含有共重合体ラテックス(K−1)を得た。
<製造例3:酸基含有共重合体ラテックス(K−2)の製造>
オレイン酸カリウムを1.5部、アクリル酸n−ブチルを88部、メタクリル酸を12部に変更した以外は製造例2と同様にして、固形分が33%、重合転化率が97%、酸基含有共重合体の体積平均粒子径が60nmである酸基含有共重合体ラテックス(K−2)を得た。
「グラフト共重合体の製造」
<製造例4:グラフト共重合体(E−1)の製造>
試薬注入容器、冷却管、ジャケット加熱機および攪拌装置を備えた反応器内に、ポリオルガノシロキサン(A)のラテックスを固形分換算で5.0部と、アルケニルコハク酸ジカリウム0.6部と、イオン交換水190部とを仕込んで混合した。次いで、アルキル(メタ)アクリレート系重合体(B)を構成する単量体としてアクリル酸n−ブチル45.0部、アリルメタクリレート0.6部、1,3−ブチレングリコールジメタクリレート0.09部、t−ブチルハイドロパーオキサイド0.02部からなる混合物を添加した。この反応器に窒素気流を通じることによって雰囲気の窒素置換を行い、内温を60℃まで昇温した。内温が60℃に達した時点で、硫酸第一鉄七水塩0.000075部、エチレンジアミン四酢酸二ナトリウム塩0.00023部、ナトリウムホルムアルデヒドスルホキシレート0.2部、イオン交換水10部からなる水溶液を添加し、ラジカル重合を開始させた。重合発熱が確認された後、ジャケット温度を75℃とし、重合発熱が確認されなくなるまで重合を継続し、さらに1時間この状態を維持し、ポリオルガノシロキサンとポリブチルアクリレートゴムとが複合した複合ゴムのラテックスを得た(ラジカル重合工程)。得られた複合ゴムの体積平均粒子径は90nmであった。
反応器内部の液温が70℃に低下した後、5%ピロリン酸ナトリウム水溶液を固形分として0.20部添加した(縮合酸塩添加工程)。次いで、内温70℃で制御した後、酸基含有共重合体ラテックス(K−1)を固形分として0.26部添加し、30分撹拌、肥大化を行い、複合ゴム状重合体(C)のラテックスを得た(肥大化工程)。
得られたラテックス状の複合ゴム状重合体(C)の体積平均粒子径は150nmであった。また、複合ゴム状重合体(C)の全粒子中に占める、粒子径が300〜500nmである粒子の割合は15体積%、ゲル含有率は95質量%であった。
この複合ゴム状重合体(C)のラテックスに、硫酸第一鉄七水塩0.001部、エチレンジアミン四酢酸二ナトリウム塩0.003部、ナトリウムホルムアルデヒドスルホキシレート0.3部、イオン交換水10部からなる水溶液を添加した。次いで、アクリロニトリル8.8部、スチレン26.2部、t−ブチルハイドロパーオキサイド0.16部からなる混合液を80分間にわたって滴下し、重合した。滴下終了後、温度75℃の状態を30分保持した後、アクリロニトリル3.8部、スチレン11.2部、t−ブチルハイドロパーオキサイド0.07部、n−オクチルメルカプタン0.02部からなる混合物を20分にわたって滴下し、重合した。滴下終了後、温度75℃の状態を30分保持した後、クメンヒドロパーオキシド0.05部を添加し、さらに温度75℃の状態を30分保持した後、冷却し、複合ゴム状重合体(C)に、アクリロニトリルとスチレンをグラフト重合させたシリコーン/アクリル複合ゴム系のグラフト共重合体(E−1)のラテックスを得た。
次いで、1%酢酸カルシウム水溶液150部を60℃に加熱し、この中へグラフト共重合体(E−1)のラテックス100部を徐々に滴下して凝固した。そして、析出物を分離し、脱水、洗浄した後に乾燥して、グラフト共重合体(E−1)を得た。
<製造例5:グラフト共重合体(E−2)〜(E−10)の製造>
ラジカル重合工程で用いたアリルメタクリレートおよび1,3−ブチレングリコールジメタクリレートの量と、肥大化工程で用いたピロリン酸ナトリウムの量と、酸基含有共重合体ラテックスの種類および量を表1に示すように変更した以外は、製造例4と同様にしてグラフト共重合体(E−2)〜(E−10)を得た。
<製造例6:グラフト共重合体(E−11)の製造>
試薬注入容器、冷却管、ジャケット加熱機および攪拌装置を備えた反応器内に、ポリオルガノシロキサン(A)のラテックスを固形分換算で6.0部と、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム0.1部と、イオン交換水190部とを仕込んで混合した。次いで、アルキル(メタ)アクリレート系重合体(B)を構成する単量体としてアクリル酸n−ブチル44.0部、アリルメタクリレート0.4部、1,3−ブチレングリコールジメタクリレート0.09部、t−ブチルハイドロパーオキサイド0.12部からなる混合物を添加した。この反応器に窒素気流を通じることによって雰囲気の窒素置換を行い、内温を60℃まで昇温した。内温が60℃に達した時点で、硫酸第一鉄七水塩0.000075部、エチレンジアミン四酢酸二ナトリウム塩0.00023部、ナトリウムホルムアルデヒドスルホキシレート0.2部、イオン交換水10部からなる水溶液を添加し、ラジカル重合を開始させた。重合発熱が確認された後、ジャケット温度を75℃とし、重合発熱が確認されなくなるまで重合を継続し、さらに1時間この状態を維持し、ポリオルガノシロキサンとポリブチルアクリレートゴムとが複合した複合ゴムのラテックスを得た(ラジカル重合工程)。得られた複合ゴムの体積平均粒子径は90nmであった。
この複合ゴム状重合体(C)のラテックスに、ナトリウムホルムアルデヒドスルホキシレート0.2部、イオン交換水10部からなる水溶液を添加した。次いで、アクリロニトリル2.5部、スチレン7.5部、t−ブチルハイドロパーオキサイド0.1部からなる混合液を20分間にわたって滴下し、重合した。滴下終了後、温度75℃の状態を30分保持した後、アクリロニトリル10部、スチレン30部、t−ブチルハイドロパーオキサイド0.2部からなる混合物を80分にわたって滴下し、重合した。滴下終了後、温度75℃の状態を30分保持した後、クメンヒドロパーオキシド0.05部を添加し、さらに温度75℃の状態を30分保持した後、冷却し、複合ゴム状重合体(C)に、アクリロニトリルとスチレンをグラフト重合させたシリコーン/アクリル複合ゴム系のグラフト共重合体(E−11)のラテックスを得た。
次いで、1%酢酸カルシウム水溶液150部を60℃に加熱し、この中へグラフト共重合体(E−11)のラテックス100部を徐々に滴下して凝固した。そして、析出物を分離し、脱水、洗浄した後に乾燥して、グラフト共重合体(E−11)を得た。
各例でグラフト共重合体(E−1)〜(E−11)の製造に用いた複合ゴム状重合体(C)の体積平均粒子径、全粒子中に占める、粒子径が300〜500nmである粒子の割合、およびゲル含有率を表1に示す。
表1中の「(d)成分」は、複合ゴム状重合体(C)にグラフト重合したビニル系単量体であり、「AN」はアクリロニトリルであり、「ST」はスチレンである。
Figure 0006896539
「ポリメタクリル酸メチル(F)」
<ポリメタクリル酸メチル(F−1)>
三菱レイヨン株式会社製の「SVK」(MVR:20.0cm/10分)をポリメタクリル酸メチル(F−1)として用いた。
<ポリメタクリル酸メチル(F−2)>
三菱レイヨン株式会社製の「VH5」(MVR:5.5cm/10分)をポリメタクリル酸メチル(F−2)として用いた。
<ポリメタクリル酸メチル(F−3)>
三菱レイヨン株式会社製の「VHM」(MVR:3.1cm/10分)をポリメタクリル酸メチル(F−3)として用いた。
「実施例1〜17、比較例1〜8」
表2に示す種類と量(部)のグラフト共重合体(E)およびポリメタクリル酸メチル(F)と、EBS−WAX(花王製)0.4部と、アデカスタブLA−36(株式会社ADEKA製)0.4部と、アデカスタブLA−63PK(株式会社ADEKA製)0.4部と、カーボンブラック0.8部とを、ヘンシェルミキサーを用いて混合した。得られた混合物を、スクリュー式押出機(株式会社日本製鋼所製、「TEX−28型二軸押出機」)を用いて、250℃にて溶融混練した後、ペレタイザーにてペレット化してペレット状の熱可塑性樹脂組成物を得た。
得られた熱可塑性樹脂組成物の流動性、その成形品の剛性、耐衝撃性、耐候性を前記のとおり評価した。これらの結果を表2、3に示す。
Figure 0006896539
Figure 0006896539
表2、3中の「体積平均粒子径」は、グラフト共重合体(E)の製造に用いた複合ゴム状重合体(C)の体積平均粒子径(nm)である。
「300〜500nmの粒子割合」は、グラフト共重合体(E)の製造に用いた複合ゴム状重合体(C)の全粒子中に占める、粒子径が300〜500nmである粒子の割合(体積%)である。
「ゲル含有率」は、グラフト共重合体(E)の製造に用いた複合ゴム状重合体(C)のゲル含有率(質量%)である。
表2、3に示すように、実施例1〜17の熱可塑性樹脂組成物は流動性に優れており、各熱可塑性樹脂組成物から得られた成形品は剛性、耐衝撃性、耐候性に優れていた。
一方、各比較例1〜8の熱可塑性樹脂組成物は、流動性、成形品の剛性、耐衝撃性および耐候性のいずれか一以上の特性が劣っていた。
本発明によれば、流動性に優れ、剛性、耐衝撃性、耐候性に優れる成形品を得ることができる熱可塑性樹脂組成物を提供することができる。特に成形品の耐衝撃性と耐候性のバランスは、従来知られている熱可塑性樹脂組成物より高いレベルであり、ピラー、ドアミラー、ラジエターグリル、スポイラーなどの車両用部品、OA機器、家電部品、壁材・窓枠などの建材部品、玩具、文房具などの雑貨などへの利用価値は極めて高い。

Claims (7)

  1. ポリオルガノシロキサンとアルキル(メタ)アクリレート系重合体とが複合した複合ゴム状重合体に、1種以上のビニル系単量体がグラフト重合したグラフト共重合体(E)と、ポリメタクリル酸メチル(F)とを含有し、
    前記複合ゴム状重合体の体積平均粒子径が100〜200nmであり、前記複合ゴム状重合体の全粒子中に占める、粒子径が300〜500nmである粒子の割合が5〜25体積%であり、
    前記複合ゴム状重合体のゲル含有率が70〜99質量%である、熱可塑性樹脂組成物。
  2. 前記複合ゴム状重合体の全粒子中に占める、粒子径が300〜500nmである粒子の割合が5〜15体積%である請求項1に記載の熱可塑性樹脂組成物。
  3. 前記ポリメタクリル酸メチル(F)の230℃、荷重3.7kgでのメルトボリュームフローレートが5〜25cm/10分である請求項1または2に記載の熱可塑性樹脂組成物。
  4. 前記ポリメタクリル酸メチル(F)が、230℃、荷重3.7kgでのメルトボリュームフローレートが15〜25cm/10分であるポリメタクリル酸メチルと、230℃、荷重3.7kgでのメルトボリュームフローレートが5〜10cm/10分であるポリメタクリル酸メチルとを含む請求項1〜のいずれか一項に記載の熱可塑性樹脂組成物。
  5. ポリオルガノシロキサンとアルキル(メタ)アクリレート系重合体とが複合した複合ゴム状重合体に、1種以上のビニル系単量体がグラフト重合したグラフト共重合体(E)と、ポリメタクリル酸メチル(F)とを含有し、
    前記複合ゴム状重合体の体積平均粒子径が100〜200nmであり、前記複合ゴム状重合体の全粒子中に占める、粒子径が300〜500nmである粒子の割合が5〜25体積%であり、
    前記ポリメタクリル酸メチル(F)の230℃、荷重3.7kgでのメルトボリュームフローレートが5〜25cm /10分である、熱可塑性樹脂組成物。
  6. ポリオルガノシロキサンとアルキル(メタ)アクリレート系重合体とが複合した複合ゴム状重合体に、1種以上のビニル系単量体がグラフト重合したグラフト共重合体(E)と、ポリメタクリル酸メチル(F)とを含有し、
    前記複合ゴム状重合体の体積平均粒子径が100〜200nmであり、前記複合ゴム状重合体の全粒子中に占める、粒子径が300〜500nmである粒子の割合が5〜25体積%であり、
    前記ポリメタクリル酸メチル(F)が、230℃、荷重3.7kgでのメルトボリュームフローレートが15〜25cm /10分であるポリメタクリル酸メチルと、230℃、荷重3.7kgでのメルトボリュームフローレートが5〜10cm /10分であるポリメタクリル酸メチルとを含む、熱可塑性樹脂組成物。
  7. 請求項1〜のいずれか一項に記載の熱可塑性樹脂組成物からなる成形品。
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