JP2007191528A - 熱可塑性樹脂組成物およびこれを用いた自動車用ランプハウジング、自動車用ランプ - Google Patents

熱可塑性樹脂組成物およびこれを用いた自動車用ランプハウジング、自動車用ランプ Download PDF

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Abstract

【課題】成形品表面の平滑性が高く、成形直後に熱板溶着しても糸引きが起こりにくい熱可塑性樹脂組成物、自動車用ランプハウジングを提供する。
【解決手段】熱可塑性樹脂組成物は、特定のグラフト共重合したグラフト重合体(A)が含まれるゴム強化スチレン系樹脂(C)と、無機充填剤(D)と、式(イ)で表される重合鎖を有する重合体および有機アニオン化合物(ロ)が含まれる帯電防止剤(E)とを含有する。
Figure 2007191528

【選択図】なし

Description

本発明は、ポリメチルメタクリレート(PMMA)やポリカーボネート(PC)等の透明樹脂と熱板溶着するのに適した熱可塑性樹脂組成物に関する。また、自動車のテールランプ、ストップランプ等に使用される自動車用ランプハウジング、該ランプハウジングを有する自動車用ランプに関する。
テールランプ、ストップランプ等の自動車用ランプは、PMMAやPC等の透明樹脂からなるランプレンズと、それを支持するランプハウジングとから構成されている。ランプハウジングとしては、鉄やアルミニウム等の金属製ハウジングの他に、軽量で生産性が高い等の理由から、ゴム強化スチレン系樹脂、ポリプロピレンやPC系ポリマーアロイ等の樹脂で作製されたハウジングも広く採用されている。
ランプハウジングが樹脂製である場合、ランプハウジングとランプレンズとを、ホットメルト接着剤により接合し、一体化していたが、近年では、生産性を高めるため、ランプハウジングとランプレンズとを熱板溶着法により接合する方法が採用されている。熱板溶着法は、ランプハウジングとランプレンズの、互いに接合しようとする部分に、加熱した熱板を数秒間押し当てて加熱溶融し、速やかに熱板を取り去って両者を接合する方法である。
自動車用ランプハウジングを構成する樹脂としては、耐候性に優れることから、ASA樹脂やAES樹脂が用いられることが多い。しかし、ASA樹脂やAES樹脂製のランプハウジングを用いた熱板溶着法では、熱板を取り去る際に、ランプハウジングおよびランプレンズの一部が高温の熱板に付着したままになり、その付着した樹脂が引き延ばされて糸を引くことがあった。この糸引きは自動車用ランプの生産性を低下させるため、熱板溶着に用いる材料としては糸引きしにくいものが求められる。
そこで、糸引き防止性を高めることを目的として、例えば、特許文献1には、自動車用ランプハウジングを構成するゴム強化スチレン系樹脂に帯電防止剤を添加する方法が提案されている。
特開2000−276909号公報
しかしながら、特許文献1に記載された帯電防止剤をゴム強化スチレン系樹脂に添加した場合には、成形後ある一定時間エージングさせた条件下での糸引き防止性は良好であるものの、成形直後での糸引き防止性が向上していなかった。そのため、近年の自動車業界におけるハイサイクル化等の厳しい要求に充分に応えていなかった。
また、近年、自動車用ランプの製造では、生産性を向上させるために、ランプハウジングへのアンダーコートを省略して金属を蒸着するダイレクト蒸着法が適用されている。ダイレクト蒸着法を適用するためには、ランプハウジング表面の平滑性が高いことが求められる。
本発明は、成形品表面の平滑性が高く、成形直後に熱板溶着しても糸引きが起こりにくい熱可塑性樹脂組成物を提供することを目的とする。また、表面の平滑性が高く、ダイレクト蒸着性に優れる上に、成形直後であっても熱板溶着の際の糸引きが起こりにくい自動車用ランプハウジングを提供することを目的とする。また、高い生産性で得られる上に、優れた外観を有する自動車用ランプを提供することを目的とする。
本発明の熱可塑性樹脂組成物は、ビニル重合性官能基含有シロキサン単位を含むポリオルガノシロキサンおよびアルキルアクリレートゴムからなる複合ゴム質重合体(L)に、シアン化ビニル単量体、芳香族ビニル単量体、これらと共重合可能な他のビニル単量体から選ばれた少なくとも1種がグラフト共重合されたグラフト重合体(A)が含まれるゴム強化スチレン系樹脂(C)と、
無機充填剤(D)と、
下記一般式(イ)で表される重合鎖を有する重合体、および、有機アニオン化合物(ロ)が含まれる帯電防止剤(E)とを含有する。
Figure 2007191528
(式中、Rはアルキレン基を表し、Rは水素原子、ハロゲン原子、炭化水素基のいずれかを表し、Xは水素原子、炭化水素基、RNHCO−、RC(O)−(Rは炭化水素基)、アニオン性親水基のいずれかを表す。また、pは1以上、qは2以上の整数を表す。)
本発明の熱可塑性樹脂組成物においては、ゴム強化スチレン系樹脂(C)には、シアン化ビニル単量体単位、芳香族ビニル単量体単位、これらと共重合可能な他のビニル単量体単位から選ばれた少なくとも1種からなるビニル系重合体(B)が、該ゴム強化スチレン系樹脂中に0〜90質量%含まれていてもよい。
本発明の自動車用ランプハウジングは、上述した熱可塑性樹脂組成物を成形してなる。
本発明の自動車用ランプは、上述した自動車用ランプハウジングと、ランプレンズとを有し、これらが熱板溶着法によって一体化されたものである。
本発明の熱可塑性樹脂組成物は、成形品表面の平滑性が高く、ダイレクト蒸着性に優れる上に、成形直後に熱板溶着しても糸引きが起こりにくいため、自動車用ランプ製造のハイサイクル化に充分に対応できる。したがって、本発明の熱可塑性樹脂組成物は、自動車のテールランプ、ストップランプ等の自動車用ランプの製造に極めて有用である。
本発明の自動車用ランプハウジングは、表面の平滑性が高く、ダイレクト蒸着性に優れる上に、成形直後であっても熱板溶着の際の糸引きが起こりにくい。
本発明の自動車用ランプは、高い生産性で得られる上に、優れた外観を有する。
「熱可塑性樹脂組成物」
本発明の熱可塑性樹脂組成物は、ゴム強化スチレン系樹脂(C)と無機充填剤(D)と帯電防止剤(E)とを含有するものである。
本発明の各成分について詳細に説明する。
(ゴム強化スチレン系樹脂(C))
ゴム強化スチレン系樹脂(C)は、複合ゴム質重合体(L)にグラフト成分がグラフト共重合されたグラフト重合体(A)を必須成分として含み、ビニル系重合体(B)を任意成分として含むものである。
<グラフト重合体(A)>
本発明におけるグラフト重合体(A)は、複合ゴム質重合体(L)に、シアン化ビニル単量体、芳香族ビニル単量体、これらと共重合可能な他のビニル単量体(以下、「他のビニル単量体」ともいう)からなる群から選ばれる少なくとも1種がグラフト成分としてグラフト共重合された共重合体である。
[複合ゴム質重合体(L)]
本発明における複合ゴム質重合体(L)は、ポリオルガノシロキサンとアルキルアクリレートゴムとからなっている。
ポリオルガノシロキサンは、ビニル重合性官能基シロキサン単位を含有するポリオルガノシロキサンであり、好ましくは、ビニル重合性官能基含有シロキサン単位0.3〜3モル%およびジオルガノシロキサン単位97〜99.7モル%からなり、3個以上のシロキサン結合を有するケイ素原子がポリオルガノシロキサン中の全ケイ素原子に対し1モル%以下であるポリオルガノシロキサンである。
ポリオルガノシロキサン中のビニル重合性官能基含有シロキサン単位が0.3モル%以上であれば、アルキルアクリレートゴムと充分に複合化でき、該熱可塑性樹脂組成物から得た成形体の表面外観がより良好になる。また、ポリオルガノシロキサン中のビニル重合性官能基含有シロキサン単位が3モル%以下、または3個以上のシロキサン結合を有するケイ素原子がポリオルガノシロキサン中の全ケイ素原子に対し1モル%以下であれば、熱可塑性樹脂組成物の耐衝撃性が高くなる傾向にある。熱可塑性樹脂組成物の耐衝撃性と成形外観の両方を考慮すると、ポリオルガノシロキサン中のビニル重合性官能基含有シロキサン単位は、好ましくは0.5〜2モル%、さらに好ましくは0.5〜1モル%である。
ビニル重合性官能基含有シロキサンは、ビニル重合性官能基を含有し、かつジオルガノシロキサンとシロキサン結合を介して結合しうるものである。
ビニル重合性官能基含有シロキサンとしては、具体的には、β−メタクリロイルオキシエチルジメトキシメチルシラン、γ−メタクリロイルオキシプロピルジメトキシメチルシラン、γ−メタクリロイルオキシプロピルメトキシジメチルシラン、γ−メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メタクリロイルオキシプロピルエトキシジエチルシラン、γ−メタクリロイルオキシプロピルジエトキシメチルシラン、δ−メタクリロイルオキシブチルジエトキシメチルシラン等のメタクリロイルオキシシロキサン;テトラメチルテトラビニルシクロテトラシロキサン等のビニルシロキサン;p−ビニルフェニルジメトキシメチルシラン;γ−メルカプトプロピルジメトキシメチルシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン等のメルカプトシロキサンが挙げられる。これらビニル重合性官能基含有シロキサンは、単独で、または二種以上の混合物として用いることができる。
ビニル重合性官能基含有シロキサンとしては、ジメチルシロキサンとの反応性を考慮すると、メタクリロイルオキシシロキサン等のアルコキシシラン化合物が好ましい。
ジオルガノシロキサンとしてはジメチルシロキサンが挙げられ、さらに、ジメチルシロキサンとしては、3員環以上のジメチルシロキサン系環状体が挙げられ、中でも、3〜7員環のものが好ましい。具体的には、ヘキサメチルシクロトリシロキサン、オクタメチルシクロテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、ドデカメチルシクロヘキサシロキサン等が挙げられる。これらは単独でまたは二種以上混合して用いられる。
ポリオルガノシロキサンは、シロキサン系架橋剤によって架橋されていてもよい。シロキサン系架橋剤としては、3官能性または4官能性のシラン系架橋剤、例えば、トリメトキシメチルシラン、トリエトキシフェニルシラン、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラブトキシシラン等が挙げられる。
ポリオルガノシロキサンは、乳化重合法で製造することが好ましい。乳化重合法によるポリオルガノシロキサンの製造では、例えば、まず、ジオルガノシロキサンとビニル重合性官能基含有シロキサンと必要に応じてシロキサン系架橋剤とを混合し、得られたシロキサン混合物を乳化剤と水によって乳化させてラテックスを調製する。次いで、このラテックスを、高速回転による剪断力で微粒子化するホモミキサーや、高圧発生機による噴出力で微粒子化するホモジナイザー等を使用して微粒子化する。その後、酸触媒を用いて高温下でジメチルシロキサンとビニル重合性官能基含有シロキサンとを重合させ、次いでアルカリ性物質により酸を中和し、重合を停止させてラテックス状のポリオルガノシロキサンを得る。
上記乳化重合で使用される乳化剤としては、アニオン系乳化剤が好ましく、アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル硫酸エステルナトリウムなどの中から選ばれた乳化剤がより好ましく、アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ラウリルスルホン酸ナトリウムなどのスルホン酸系の乳化剤が特に好ましい。
乳化剤は、シロキサン混合物100質量部に対して0.05〜5質量部程度の範囲で使用することが好ましい。乳化剤量が0.05質量部以上であると、分散状態が安定になり微小な粒子径の乳化状態が保たれる。また、5質量部以下であると、乳化剤に起因する熱可塑性樹脂組成物および成形体の着色が減少する。
酸触媒としては、脂肪族スルホン酸、脂肪族置換ベンゼンスルホン酸、脂肪族置換ナフタレンスルホン酸などのスルホン酸類、および硫酸、塩酸、硝酸などの鉱酸類が挙げられる。これらの酸触媒は一種でまたは二種以上を組み合わせて用いられる。また、これらの中では、ポリオルガノシロキサンラテックスの安定化作用にも優れている点で、脂肪族置換ベンゼンスルホン酸が好ましく、n−ドデシルベンゼンスルホン酸が特に好ましい。また、n−ドデシルベンゼンスルホン酸と硫酸などの鉱酸とを併用すると、ポリオルガノシロキサンラテックスの乳化剤成分に起因する熱可塑性樹脂組成物の着色を低減させることができる。
酸触媒の添加方法としては、シロキサン混合物、乳化剤および水に添加する方法、シロキサン混合物の微粒子を含むラテックスを、高温の酸触媒水溶液中に一定速度で滴下する方法等が挙げられる。中でも、ポリオルガノシロキサンの粒子径を制御しやすいことから、シロキサン混合物の微粒子を含むラテックスを高温の酸触媒水溶液中に一定速度で滴下する方法が好ましい。
シロキサン混合物、乳化剤、水、酸触媒を混合する方法としては、高速撹拌による混合、ホモジナイザーなどの高圧乳化装置による混合などが挙げられる。中でも、ホモジナイザーを使用した方法は、ポリオルガノシロキサンラテックスの粒子径の分布が小さくなるので好ましい。
重合温度としては、50℃以上が好ましく、80℃以上がより好ましい。
重合時間としては、酸触媒をシロキサン混合物、乳化剤および水とともに添加し、微粒子化させて重合する方法では、2時間以上であることが好ましく、5時間以上であることがより好ましい。酸触媒の水溶液中にシロキサン混合物が微粒子化したラテックスを滴下する方法では、ラテックスの滴下終了後1時間程度保持することが好ましい。
重合を停止する際に添加するアルカリ性物質としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウムなどが挙げられる。
本発明における複合ゴム質重合体(L)を構成するアルキルアクリレートゴムは、単官能アルキルアクリレート単位と多官能性アルキル(メタ)アクリレート単位とを構成成分として有するものである。
単官能アルキルアクリレートとしては、例えば、メチルアクリレート、エチルアクリレート、n−プロピルアクリレート、n−ブチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート等が挙げられる。これらは、単独で用いてもよいし、二種以上を併用してもよい。これらの内、n−ブチルアクリレートを使用することが、生産性(コスト)が優れる点で好ましい。単官能アルキルアクリレート単位の複合ゴム質重合体(L)中の量は、40〜98.9質量%であることが好ましく、75〜93.8質量%であることがより好ましく、79〜89.8質量%であることが特に好ましい。単官能アルキルアクリレート単位の量が40質量%以上であれば、該熱可塑性樹脂組成物の成形体の成形外観が良好になり、98.9質量%以下であれば、得られる熱可塑性樹脂組成物の耐衝撃性が高くなる。
多官能性アルキル(メタ)アクリレートとしては、例えば、アリルメタクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、プロピレングリコールジメタクリレート、1,3−ブチレングリコールジメタクリレート、1,4−ブチレングリコールジメタクリレート、トリアリルシアヌレート、トリアリルイソシアヌレート等が挙げられる。これらは、単独で用いてもよいし、二種以上を併用してもよい。多官能性アルキル(メタ)アクリレートの併用例としては、ゴム架橋度とグラフト量のバランスに優れる点で、アリルメタクリレートと1,3−ブチレングリコールジメタクリレートとの併用が好ましい。
多官能性アルキル(メタ)アクリレート単位の複合ゴム質重合体(L)中の量は、0.1〜20質量%であることが好ましく、0.2〜5質量%であることがより好ましく、0.2〜1質量%であることが特に好ましい。多官能性アルキル(メタ)アクリレートの量が0.1質量%以上であれば、該熱可塑性樹脂組成物を成形した成形体の成形外観が良好になり、また、20質量%以下であれば、得られる熱可塑性樹脂組成物の耐衝撃性が高くなる。
複合ゴム質重合体(L)の製造方法としては、例えば、ポリオルガノシロキサンのラテックスと、アルキルアクリレートおよび多官能性アルキル(メタ)アクリレートからなるアクリレート成分とを混合し、ラジカル重合開始剤を作用させてアクリレート成分を重合する方法が挙げられる。
ここで、ポリオルガノシロキサンのラテックスとアクリレート成分とを混合する方法としては、ポリオルガノシロキサンのラテックスとアクリレート成分とを一括で混合する方法、ポリオルガノシロキサンのラテックス中にアクリレート成分を一定速度で滴下する方法などが挙げられる。これらの中でも、熱可塑性樹脂組成物の耐衝撃性が高くなることから、ポリオルガノシロキサンのラテックスとアクリレート成分とを一括で混合する方法が好ましい。
ラジカル重合開始剤としては、過酸化物、アゾ系開始剤、または酸化剤・還元剤を組み合わせたレドックス系開始剤が用いられる。この中では、レドックス系開始剤が好ましく、特に硫酸第一鉄・エチレンジアミン四酢酸二ナトリウム塩・ロンガリット(ホルムアルデヒドナトリウムスルホキシラート二水塩)・t−ブチルハイドロパーオキサイドを組み合わせたスルホキシレート系開始剤が好ましい。
複合ゴム質重合体(L)中のポリオルガノシロキサンの量は、特に限定されないが、1〜40質量%が好ましい。ポリオルガノシロキサンの量が1質量%以上であれば、熱可塑性樹脂組成物の耐衝撃性が向上し、40質量%以下であれば、熱可塑性樹脂組成物の顔料着色性が良好になる。また、熱可塑性樹脂組成物の耐衝撃性と顔料着色性の両方を考慮すると、複合ゴム質重合体中のポリオルガノシロキサンの量は好ましくは6〜20質量%、さらに好ましくは10〜20質量%である。
本発明における複合ゴム質重合体(L)の質量平均粒子径は、特に限定されないが、耐衝撃性と顔料着色性とのバランスが優れる観点から、0.08〜2.0μmであることが好ましく、0.1〜1.0μmであることがより好ましい。
[グラフト成分]
グラフト重合体(A)のグラフト成分におけるシアン化ビニル単量体としては、例えば、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、cis−2−ペンテンニトリル、フマロニトリルなどが挙げられる。これらは単独で使用してもよいし、併用してもよい。これらの中でも、アクリロニトリルが好ましい。
芳香族ビニル単量体としては、例えば、スチレン、α−メチルスチレン、o−メチルスチレン、1,3−ジメチルスチレン、p−メチルスチレン、p−t−ブチルスチレン、p−エチルスチレン、α−ハロゲン化スチレン、o−ハロゲン化スチレン、m−ハロゲン化スチレン、p−ハロゲン化スチレン等が挙げられる。これらは単独で使用してもよいし、併用してもよい。これらの中でも、スチレンが好ましい。
他のビニル単量体としては、例えば、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル等のメタクリル酸エステル、N−フェニルマレイミドなどのマレイミド単量体等が挙げられるが、特にこれらに限定されるものではない。
シアン化ビニル単量体、芳香族ビニル単量体、他のビニル単量体のうち、熱可塑性樹脂組成物の耐衝撃性や熱安定性を考慮すると、シアン化ビニル単量体、芳香族ビニル単量体、他のビニル単量体の2種以上を含むことが好ましい。
本発明におけるグラフト重合体(A)は、例えば、複合ゴム質重合体(L)のラテックスに、シアン化ビニル単量体、芳香族ビニル単量体、他のビニル単量体からなる群から選ばれる少なくとも1種を含む単量体成分を添加し、ラジカル重合による一段あるいは多段のグラフト共重合によって製造される。得られる熱可塑性樹脂組成物の耐衝撃性および顔料着色性を考慮すると、二段以上のグラフト共重合が好ましい。
グラフト共重合の際の単量体成分の量は、複合ゴム質重合体(L)100質量部に対して、50〜300質量部であることが好ましく、80〜150質量部であることがより好ましい。なお、グラフト共重合の際、単量体の全部がグラフト成分にならず、それらの一部が、複合ゴム質重合体(L)に結合していない共重合体を形成しても差し支えない。
単量体成分における各単量体の割合は、シアン化ビニル単量体15〜35質量%、芳香族ビニル単量体65〜85質量%、他のビニル単量体0〜15質量%であることが好ましい。また、シアン化ビニル単量体20〜30質量%、芳香族ビニル単量体70〜80質量%、他のビニル単量体0〜5質量%であることがさらに好ましい。これらの割合から外れると、熱可塑性樹脂組成物の耐衝撃性や熱安定性、さらに顔料着色性を損なうおそれがある。
グラフト共重合の際には、単量体成分の他に、グラフト重合体(A)の分子量やグラフト率を調整するための各種連鎖移動剤を添加することができる。
また、グラフト共重合の際には、重合ラテックスを安定化させるために、新たに乳化剤を添加することができる。乳化剤としては、カチオン系乳化剤、アニオン系乳化剤、ノニオン系乳化剤が挙げられ、好ましくは、スルホン酸塩乳化剤あるいは硫酸塩乳化剤とカルボン酸塩乳化剤との併用である。
グラフト共重合が終了した後には、グラフト重合体のラテックスを、酢酸カルシウムや硫酸アルミニウム等の金属塩を溶解した熱水中に投入して、固形分を凝固させる。そして、固形分を分離し、回収し、さらに、乾燥工程などを経て、粉状のグラフト重合体(A)を得ることができる。
<ビニル系重合体(B)>
ビニル系重合体(B)は、シアン化ビニル単量体単位、芳香族ビニル単量体単位、他のビニル単量体単位から選ばれた少なくとも1種からなる重合体である。これら各単量体については、上述のグラフト重合体(A)で例示した単量体が挙げられる。
ビニル系重合体(B)は、好ましくは、シアン化ビニル単量体単位、芳香族ビニル単量体単位、他のビニル単量体単位から選ばれた少なくとも2種以上の単量体からなる重合体であり、好ましい具体例として、アクリロニトリル単位とスチレン単位とα−メチルスチレン単位とN−フェニルマレイミド単位からなる共重合体が挙げられ、より好ましい具体例として、アクリロニトリル単位とスチレン単位とα−メチルスチレン単位とからなる共重合体が挙げられる。アクリロニトリル単位とスチレン単位とα−メチルスチレン単位とからなる共重合体は、糸引き防止性、耐衝撃性、ダイレクト蒸着性、流動性、耐熱性のバランスに優れる。
また、ビニル系重合体(B)として、シアン化ビニル単量体単位および芳香族ビニル単量体単位から構成されることも好ましい。
ビニル系重合体が、シアン化ビニル単量体単位および芳香族ビニル単量体単位からなる場合、ビニル系重合体(B)中のシアン化ビニル単量体単位の割合は、20〜40質量%であることが好ましく、20〜35質量%であることがさらに好ましい。シアン化ビニル単量体単位が20質量%以上(芳香族ビニル単量体単位が80質量%以下)であれば、糸引きがより防止される上に、耐衝撃性が高くなる傾向にある。また、シアン化ビニル単量体単位が40質量%以下(芳香族ビニル単量体単位が60質量%以上)であれば、ダイレクト蒸着性や成形性が優れる傾向にある。
ビニル系重合体(B)が他のビニル単量体単位を有する場合には、シアン化ビニル単量体と芳香族ビニル単量体の質量割合を上記割合で維持したまま、その含有量が0〜25質量%であることが好ましい。
ビニル系重合体(B)の質量平均分子量(Mw)は、耐衝撃性と流動性および糸引き防止性のバランスを考慮すると40,000〜200,000が好ましく、45,000〜100,000であることがより好ましい。質量平均分子量40,000以上であれば、耐衝撃性に優れ、質量平均分子量100,000以下であれば、糸引き防止性がより高くなり、しかも成形性が向上する傾向にある。
なお、本発明において、質量平均分子量(Mw)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)にてテトラヒドロフラン(THF)に溶解して測定したものをポリスチレン(PS)換算で示した値である。
ビニル系重合体(B)は、乳化重合、懸濁重合、塊状重合およびこれらを組み合わせた公知の重合方法により製造される。
ビニル系重合体(B)としては、必要に応じて組成や分子量、および製造方法の異なるものを適宜混合したものであってもよい。
ゴム強化スチレン系樹脂(C)は、上記グラフト重合体(A)10〜100質量%と上記ビニル系重合体(B)0〜90質量%とからなることが好ましい。グラフト重合体(A)10質量%以上100質量%未満とビニル系重合体(B)0質量%を超えて90質量%以下とからなることがより好ましく、グラフト重合体(A)15〜50質量%とビニル系重合体(B)50〜85質量%となることが特に好ましい。グラフト重合体(A)が10質量%以上であれば、耐衝撃性、且つ、糸引き防止性が良好となる。
(無機充填剤(D))
無機充填剤(D)の成分はゴム、プラスチック用充填剤として使用されるものであれば特に制限されず、例えば、タルク、ワラストナイト、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、硫酸カルシウム、亜硫酸カルシウム、硫酸マグネシウム、カオリン、酸化チタン、酸化亜鉛、アルミナ等を用いることができ、2種以上を混合しても使用してもよい。前記無機充填剤の中でも、タルク、炭酸カルシウムが好ましい。
無機充填剤(D)においては、成形品表面の平滑性やダイレクト蒸着性、その外観に応じて、粒子径と添加量を適宜選択することが好ましい。
具体的には、無機充填剤(D)の平均粒子径は0.01〜2.0μmであることが好ましく、0.03〜1.0μmであることがより好ましく、0.05〜0.2μmであることが特に好ましく、0.06〜0.1μmであることが最も好ましい。無機充填剤(D)の平均粒子径が0.01μm以上であれば、糸引き防止性がより向上し、2.0μm以下であれば、成形品表面の平滑性が高くなり、さらにダイレクト蒸着した際の外観が優れる傾向にある。
無機充填剤(D)の配合量は、ゴム強化スチレン系樹脂100質量部に対して好ましくは0.5〜10質量部、より好ましくは0.7〜4質量部、さらに好ましくは1〜2質量部である。無機充填剤(D)の配合量が0.5質量部以上であれば、糸引き防止性がより高くなり、10質量部以下であれば、成形品表面の平滑性がより向上する上に、ダイレクト蒸着した後の外観、耐衝撃性、流動性も向上する。
(帯電防止剤(E))
帯電防止剤(E)は、一般式(イ)で表される重合鎖を有する重合体(以下、「重合体(イ)」ということがある。)と、有機アニオン化合物(ロ)とを含有するものである。
Figure 2007191528
重合体(イ)の具体例としては、フェノールまたは置換基を有するフェノールとホルムアルデヒドとの脱水縮合物のアルキレンオキサイド付加物;該アルキレンオキサイド付加物におけるアルキレンオキサイド鎖の末端水素の全部または一部を炭化水素基で置換してエーテル化した化合物、該アルキレンオキサイド付加物におけるアルキレンオキサイド鎖の末端水素の全部または一部をRNHCO−またはRC(O)−(Rは炭化水素基)で置換した化合物;該アルキレンオキサイド鎖の末端水素の全部または一部をアニオン性親水基で置換した化合物が挙げられる。
この重合体(イ)について、更に詳しく説明する。
重合体(イ)におけるRはアルキレン基を表す。したがって、(R−O)の部分はアルキレンオキサイドを表し、具体的には、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイド、テトラヒドロフラン(1,4−ブチレンオキサイド)、長鎖α−オレフィンオキサイド、スチレンオキサイドなどが挙げられる。
重合度pは1以上の整数であり、好ましくは1〜300であり、より好ましくは1〜200であり、最も好ましくは5〜100である。
pが2以上である場合(ポリアルキレンオキシドである場合)には、Rは1種類であってもよいし、2種類以上であってもよい。Rが1種類の場合には、炭素数2〜4のアルキレン基が好ましく、エチレン基がより好ましい。また、Rが2種類以上である場合には、そのうちの1種がエチレン基であることが好ましい。さらに、Rが2種類以上である場合には、2種類以上のアルキレンオキサイドのランダム共重合体、ブロック共重合、ランダム/ブロック共重合等のいずれであってもよい。
Xは、水素原子、炭化水素基、RNHCO−、RC(O)−、アニオン性親水基のいずれかを表わす。
炭化水素基としては、アルキル基、アルケニル基、アリール基、シクロアルキル基、シクロアルケニル基等が挙げられる。
アルキル基としては、例えば、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、2級ブチル、ターシャリブチル、ペンチル、イソペンチル、2級ペンチル、ターシャリペンチル、ヘキシル、2級ヘキシル、ヘプチル、2級ヘプチル、オクチル、2−エチルヘキシル、2級オクチル、ノニル、2級ノニル、デシル、2級デシル、ウンデシル、2級ウンデシル、ドデシル、2級ドデシル、トリデシル、イソトリデシル、2級トリデシル、テトラデシル、2級テトラデシル、ヘキサデシル、2級ヘキサデシル、ステアリル、イコシル、ドコシル、テトラコシル、トリアコンシル、2−ブチルオクチル、2−ブチルデシル、2−ヘキシルオクチル、2−ヘキシルデシル、2−オクチルデシル、2−ヘキシルドデシル、2−オクチルドデシル、2−デシルテトラデシル、2−ドデシルヘキサデシル、2−ヘキサデシルオクタデシル、2−テトラデシルオクタデシル、モノメチル分枝−イソステアリル等が挙げられる。
アルケニル基としては、例えば、ビニル、アリル、プロペニル、ブテニル、イソブテニル、ペンテニル、イソペンテニル、ヘキセニル、ヘプテニル、オクテニル、ノネニル、デセニル、ウンデセニル、ドデセニル、テトラデセニル、オレイル等が挙げられる。
アリール基としては、例えば、フェニル、トルイル、キシリル、クメニル、メシチル、ベンジル、フェネチル、スチリル、シンナミル、ベンズヒドリル、トリチル、エチルフェニル、プロピルフェニル、ブチルフェニル、ペンチルフェニル、ヘキシルフェニル、ヘプチルフェニル、オクチルフェニル、ノニルフェニル、デシルフェニル、ウンデシルフェニル、ドデシルフェニル、フェニルフェニル、ベンジルフェニル、スチレン化フェニル、p−クミルフェニル、ジノニルフェニル、α−ナフチル、β−ナフチル基等が挙げられる。
シクロアルキル基、シクロアルケニル基としては、例えば、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、メチルシクロペンチル、メチルシクロヘキシル、メチルシクロヘプチル、シクロペンテニル、シクロヘキセニル、シクロヘプテニル、メチルシクロペンテニル、メチルシクロヘキセニル、メチルシクロヘプテニル基等が挙げられる。
この中でも炭素数1〜6のアルキル基が好ましい。
NHCO−(Rは炭化水素基)としては、例えば、メチルイソシアネート、エチルイソシアネート、プロピルイソシアネート、ブチルイソシアネート、ヘキシルイソシアネート、オクチルイソシアネート、ラウリルイソシアネート、オクタデシルイソシアネート、シクロヘキシルイソシアネート、フェニルイソシアネート、トリレンイソシアネート、オレイルイソシアネート等をアルキレンオキシドに付加した際に形成される置換基が挙げられる。
C(O)−(Rは炭化水素基)としては、例えば、アセチル、プロピオニル、ブチリル、イソブチリル、バレリル、イソバレリル、ピバリル、ラウロイル、ミリストイル、パルミトイル、ステアロイル、ベヘニル、アクロイル、プロピオロイル、メタクロイル、クロトノイル、オレイロイル、ベンゾイル、フタロイル、スクシニル等が挙げられる。
Xにおけるアニオン性親水基は、−(CHSOM(式中nは2〜4の整数)で表わされるアルキルスルホン酸基、−SOMで表わされるサルフェート基、−POで表わされるホスフェート基、−CHCOOMで表わされるメチルカルボキシレート基等が挙げられる。
上記アニオン性親水基の一般式におけるMは、水素原子、金属原子、アンモニウムのいずれかを表わす。金属原子としては、例えば、リチウム、ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属原子、マグネシウム、カルシウム等のアルカリ土類金属原子(但し、アルカリ土類金属原子は通常2価であるから、1/2)等が挙げられる。Mとしては、ナトリウムまたはカリウムが好ましい。
アンモニウムとしては、例えば、アンモニア、メチルアミン、ジメチルアミン、エチルアミン、ジエチルアミン、(イソ)プロピルアミン、ジ(イソ)プロピルアミン、モノエタノールアミン、N−メチルモノエタノールアミン、N−エチルエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、モルホリン、モノプロパノールアミン、ジプロパノールアミン、トリプロパノールアミン、2−アミノ−2−メチル−1,3−プロパンジオール、アミノエチルエタノールアミン、N,N,N’,N’−テトラキス(2−ヒドロキシプロピル)エチレンジアミン等のアンモニウムが挙げられる。
重合体(イ)がアニオン性親水基を有する場合には、糸引き防止性がより高くなる。
は水素原子、ハロゲン原子、炭化水素基のいずれかを表わす。炭化水素基としては、アルキル基、アルケニル基、アリール基、シクロアルキル基、シクロアルケニル基等が挙げられる。アルキル基、アルケニル基、アリール基、シクロアルキル基、シクロアルケニル基としては、前述のXとして例示した基が挙げられる。
これらの中でも、ゴム強化スチレン系樹脂(C)との混和性や相溶性の面から、Rとしては、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜36の炭化水素基のいずれかが好ましく、水素原子、塩素原子、臭素原子、炭素数1〜24のアルキル基またはアリール基のいずれかがより好ましい。
重合体(イ)におけるqは2以上であり、3〜30であることが好ましい。
重合体(イ)は、例えば、以下の製造方法により製造される。
本製造例では、まず、既知の方法でフェノール類をホルムアルデヒドで縮合させて重合した後、アルキレンオキサイド等をフェノールの酸素に付加する。次いで、アルキレンオキサイド末端の水素原子を、炭化水素基、RNHCO−、RC(O)−(Rは炭化水素基)を有する炭化水素基、アニオン性親水基のいずれかに置換する。
上記重合体(イ)の製造方法では、フェノール類とホルムアルデヒドとを縮合させる際には、フェノール類と縮合可能なその他の化合物を添加し、フェノール類の一部と他の化合物とを縮合させてもよい。フェノール類と共縮合可能なその他の化合物としては、例えば、キシレン、レゾルシン、カテコール、ハイドロキノン、アニソール等が挙げられる。
その場合、重合体(イ)におけるフェノール類とホルムアルデヒドとが縮合したユニット(一般式(イ)における括弧内)の割合は、重合体(イ)中に10質量%以上であることが好ましく、30質量%以上であることがより好ましい。該ユニットが10質量%以上であれば、熱可塑性樹脂組成物中の帯電防止剤(E)添加量を少なくできるため、糸引き防止性を向上させつつ、帯電防止剤(E)添加による耐衝撃性の低下を抑えることができる。
有機アニオン化合物(ロ)としては、酸性基を有する有機化合物または該有機化合物と塩基性化合物との中和物が挙げられる。この酸性基を有する有機化合物としては、例えば、脂肪酸、アルケニルコハク酸、(アルキル置換されていてもよい)安息香酸、(アルキル置換されていてもよい)サリチル酸、ポリアクリル酸、N−アシルメチルアミノ酢酸塩、アシル化アミノ酸、ポリオキシアルキレンアルキルエーテルカルボン酸等の有機カルボン酸;アルキルスルホン酸、(アルキル置換されていてもよい)ベンゼンスルホン酸、(アルキル置換されていてもよい)フェニルエーテルジスルホン酸、ナフタリンスルホン酸、ナフタリンスルホン酸のホルムアルデヒド縮合物、イセチオン酸、イセチオン酸脂肪酸エステル、イセチオン酸アルキルエーテル、α−オレフィンスルホン酸、α−スルホ脂肪酸メチルエステル、スルホコハク酸ジエステル等の有機スルホン酸;アルキル硫酸エステル、アルケニル硫酸エステル、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル硫酸エステル、ポリオキシアルキレンアルキルフェニルエーテル硫酸エステル、ポリオキシアルキレン脂肪酸アルカノールアマイド硫酸エステル、スルホ脂肪酸エステル等の有機硫酸エステル;酸性アルキルリン酸エステル、酸性アルキル亜リン酸エステル、酸性ポリオキシアルキレンアルキルリン酸エステル、アルキルホスホン酸等の有機リン酸等が挙げられる。これらの中でも特に有機スルホン酸が好ましい。
酸性基を有する有機化合物は、分子量が大きい場合には、得られる帯電防止剤(E)の効果が速やかに発揮されないことがある。そのため、酸性基を有する有機化合物の平均分子量は100〜500であることが好ましい。
塩基性化合物としては、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、酸化マグネシウム、酸化カルシウム等の金属水酸化物または金属酸化物;アンモニア、メチルアミン、ジメチルアミン、エチルアミン、ジエチルアミン、(イソ)プロピルアミン、ジ(イソ)プロピルアミン、モノエタノールアミン、N−メチルモノエタノールアミン、N−エチルエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、モルホリン、モノプロパノールアミン、ジプロパノールアミン、トリプロパノールアミン、2−アミノ−2−メチル−1,3−プロパンジオール、アミノエチルエタノールアミン、N,N,N’,N’−テトラキス(2−ヒドロキシプロピル)エチレンジアミン等のアンモニウム;テトラフェニルホスホニウム、テトラブチルホスホニウム等の有機ホスホニウム等が挙げられる。中でも、アルカリ金属類またはアルカリ土類金属類の金属水酸化物または金属酸化物が好ましく、特に水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属類の水酸化物または酸化物がより好ましい。
酸性基を有する化合物と塩基性化合物との中和物としては、特に有機スルホン酸の中和物が好ましく、例えば、デシルスルホン酸ナトリウム、C〜C13アルキルスルホン酸ナトリウム(なお、「C〜C18」とは「炭素数9〜18」を意味する。以下同様である。)、オクタデシルスルホン酸ナトリウム、p−トルエンスルホン酸ナトリウム、ドデシルベンゼンスルホン酸リチウム、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ドデシルベンゼンスルホン酸カリウム、ナフタリンスルホン酸ナトリウム、ノニルナフタリンスルホン酸ナトリウム、イセチオン酸ナトリウム、イセチオン酸ラウリルエステルナトリウム、イセチオン酸ラウリルエーテルナトリウム、硫化C12〜C14オレフィンナトリウム、硫化C16〜C18オレフィンナトリウム、α−スルホステアリン酸メチルエステルナトリウム、スルホコハク酸ジブチルエステルナトリウム、スルホコハク酸ジ−2−エチルヘキシルエステルナトリウム等が挙げられる。
これらの有機スルホン酸の中和物の中でも、デシルスルホン酸ナトリウム、C〜C13アルキルスルホン酸ナトリウム、オクタデシルスルホン酸ナトリウム、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムが特に好ましい。
有機アニオン化合物(ロ)が中和物であれば、帯電防止の効果をより発揮する。
帯電防止剤(E)を構成する重合体(イ)および有機アニオン化合物(ロ)は、各々1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
帯電防止剤(E)における重合体(イ)と有機アニオン化合物(ロ)との割合は、質量比(イ)/(ロ)で10/90〜99.5/0.5であることが好ましく、15/85〜99/1であることがより好ましい。
帯電防止剤(E)の配合量は、前記ゴム強化スチレン系樹脂100質量部に対して0.05〜5質量部であることが好ましく、0.5〜3質量部であることがより好ましい。帯電防止剤(E)の配合量が0.05質量部以上であれば、糸引き防止性がより高くなり、5質量部以下であれば、耐衝撃性と耐熱性が向上する。
(他の成分)
本発明の熱可塑性樹脂組成物には、必要に応じて、酸化防止剤、紫外線吸収剤、滑剤、可塑剤、離型剤、前記帯電防止剤(E)以外の帯電防止剤、着色剤(顔料、染料など)、フィラー、難燃剤、アンチモン化合物などの難燃助剤、抗菌剤、防カビ剤、シリコーンオイル、カップリング剤などの各種の添加剤が配合されていてもよい。また、カーボン繊維やステンレス繊維の導電性物質が配合されていてもよい。
本発明の熱可塑性樹脂組成物の製造方法としては、例えば、グラフト重合体(A)とビニル系重合体(B)と無機充填剤(D)と帯電防止剤(E)とを所定量配合し、溶融混合する方法が挙げられる。その場合、予備混合した原料を押出し機、バンバリーミキサーを用いた溶融混練法が好ましい。また、グラフト重合体(A)とビニル系重合体(B)とは予め溶融混合してゴム強化スチレン系樹脂(C)としておき、該ゴム強化スチレン系樹脂(C)に無機充填剤(D)および帯電防止剤(E)を配合してもよい。
以上説明した熱可塑性樹脂組成物は、特定のゴム強化スチレン系樹脂(C)と無機充填剤(D)と特定の帯電防止剤(E)とを含有するため、成形直後に熱板溶着しても糸引きが起こりにくい。したがって、自動車用ランプ製造のハイサイクル化に充分に対応できる。また、この熱可塑性樹脂組成物から得られる成形品は、表面の平滑性が高く、ダイレクト蒸着性に優れる。
「自動車用ランプハウジング」
本発明の自動車用ランプハウジングは、上述した熱可塑性樹脂組成物を成形して得たものである。ここで、成形法としては、例えば、射出成形、シート押出成形、真空成形、圧空成形、異型押出し成形、発泡成形、ブロー成形などが挙げられる。
本発明の自動車用ランプハウジングは、上述した熱可塑性樹脂組成物を成形して得たものであるから、表面の平滑性が高く、ダイレクト蒸着性に優れる上に、成形直後であっても熱板溶着の際の糸引きが起こりにくい。
「自動車用ランプ」
本発明の自動車用ランプは、上記自動車用ランプハウジングと、ランプレンズとを有し、これらが熱板溶着法によって一体化されたものである。
本発明で使用されるランプレンズは、透明または半透明であり、レンズとして使用できるものであればよいが、ポリメチルメタクリレート製またはポリカーボネート製のレンズが好ましい。ポリメチルメタクリレート製またはポリカーボネート製のランプレンズは熱板溶着性に優れ、また、成形直後において糸引きが生じにくく、しかも、良好な成形品表面外観が得られるためダイレクト蒸着性も優れる。
ランプレンズには、傷付きや劣化防止のためコーティング処理などが施されていてもよい。
熱板溶着法では、自動車用ランプハウジングおよびランプレンズの、互いに溶着される部分を熱板に当てて溶融し、溶融した部分同士を密着する。
熱板溶着の際の熱板温度としては、250〜400℃であることが好ましく、溶着時間としては、10〜30秒であることが好ましい。
本発明の自動車用ランプは、上述した自動車用ランプハウジングとレンズランプとを一体化したものであるから、高い生産性で得られる上に、優れた外観を有する。
以下、製造例、実施例および比較例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り、以下の実施例により何ら限定されるものではない。
なお、以下の例において、「部」は「質量部」、拡散反射率以外の「%」は「質量%」を意味する。また、ラテックス中のポリオルガノシロキサンの質量平均粒子径およびグラフト重合体の質量平均粒子径は大塚電子(株)製DLS−700型を用いた動的光散乱法にて求めた。さらにビニル系重合体の質量平均分子量(Mw)は、東ソー(株)製:GPC(ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー、溶媒:THF)を用いた標準ポリスチレン換算法にて算出した。
〔参考例−1〕
複合ゴム質重合体(L)の製造
オクタメチルシクロテトラシロキサン98部、γ−メタクリオイルオキシプロピルジメトキシメチルシラン2部を混合してシロキサン系混合物100部を得た。これにドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム0.67部を溶解した蒸留水300部を添加し、ホモミキサーにて10000回転/分で2分間攪拌した後、ホモジナイザーに30MPaの圧力で1回通し、安定な予備混合オルガノシロキサンラテックスを得た。
また、試薬注入器、冷却菅、ジャケット加熱機および攪拌装置を備えた反応器内に、ドデシルベンゼンスルホン酸10部と蒸留水90部とを注入し、10%のドデシルベンゼンスルホン酸水溶液を調製した。このドデシルベンゼンスルホン酸水溶液を85℃に加熱した状態で、予備オルガノシロキサンラテックスを4時間に亘って滴下し、滴下終了後1時間温度を維持し、重合させた。その後、冷却し、水酸化ナトリウム水溶液を添加し、中和して重合を停止させることにより、ポリオルガノシロキサンラテックスを得た。
このポリオルガノシロキサンラテックスを170℃で30分間乾燥して固形分を求めたところ、17.7%であった。また、ラテックス中のポリオルガノシロキサンの質量平均粒子径は0.05μmであった。
試薬注入器、冷却菅、ジャケット加熱機および攪拌装置を備えた反応器内に、上記ポリオルガノシロキサンラテックス15部、エマールNC−35(ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテルサルフェート:花王製)0.2部を仕込み、蒸留水148.5部を添加混合した後、ブチルアクリレート85部、アリルメタクリレート0.3部、1,3−ブチレングリコールジメタクリレート0.1部およびキュメンヒドロパーオキサイド0.18部の混合物を添加した。
この反応器に窒素気流を通じることによって、窒素置換しながら、60℃まで昇温し、液温が安定した後に、硫酸第一鉄0.0001部、エチレンジアミン四酢酸二ナトリウム塩0.0003部およびロンガリット0.24部を蒸留水10部に溶解させた水溶液を添加し、ラジカル重合させて、ポリオルガノシロキサンとブチルアクリレートゴムとの複合ゴム質重合体のラテックスを得た。この複合ゴム質重合体のラテックスの質量平均粒子径は0.12μmであった。
製造例−1 グラフト重合体(A−1)の製造
参考例1で製造したラテックス状の複合ゴム質重合体50部(固形分換算)に、ロンガリット0.4部を蒸留水10部に溶解した水溶液を添加した。次いで、アクリロニトリル7.5部、スチレン22.5部およびキュメンヒドロパーオキサイド0.14部の混合液を2時間滴下し重合した。滴下終了後、温度60℃の状態を1時間保持した後に、硫酸第一鉄0.0002部、エチレンジアミン四酢酸二ナトリウム塩0.0006部およびロンガリット0.23部およびエマールNC−35 0.2部を蒸留水10部に溶解させた水溶液を添加した。次いで、アクリロニトリル5.0部、スチレン15.0部およびキュメンヒドロパーオキサイド0.10部の混合液を2時間滴下し重合した。滴下終了後、温度60℃の状態を1時間保持した後に、ラテムルASK(アルケニルコハク酸ジカリウム塩:花王製)を0.3部添加し、ポリオルガノシロキサンとブチルアクリレートゴムとからなる複合ゴムにアクリロニトリル、スチレンをグラフト重合させたグラフト重合体ラテックスを得た。このグラフト重合体ラテックスを塩析凝固した後に、洗浄、脱水、乾燥を順次行なってグラフト重合体(A−1)を得た。
製造例−2 グラフト重合体(A−2)の製造
複合ゴム質重合体の代わりに乳化重合で製造されたポリブタジエン(平均粒子径0.2μm、固形分40%)を用いたこと以外は製造例−1と同様にして、グラフト重合体(A−2)を得た。
製造例−3 ビニル系重合体(B−1)の製造:
窒素置換した反応器に、イオン交換水120部、ドデシルベンゼンスルホン酸ソーダ0.003部、水酸化アパタイト0.5部、アゾイソブチロニトリル0.15部、t−ドデシルメルカプタン0.6部、および、アクリロニトリル27部、スチレン73部を含む単量体混合物を添加した。そして、反応器内の温度を60℃にして5時間加熱した後、120℃に昇温し、4時間反応させて重合を完結させてビニル系重合体(B−1)を得た。最終転化率は96%であり、ビニル系重合体(B−1)の質量平均分子量は82,000 、アクリロニトリル含有量は26.7%であった。
製造例−4 ビニル系重合体(B−2)の製造
アクリロニトリルの量を20部、スチレンの量を80部にしたこと以外は製造例−3と同様に重合してビニル系重合体(B−2)を得た。最終転化率は97%であり、得られたビニル系重合体(B−2)の質量平均分子量は37,000、アクリロニトリル含有量は19.2%であった。
製造例−5 ビニル系重合体(B−3)の製造
t−ドデシルメルカプタン0.7部、アクリロニトリル35部、スチレン30部からなる単量体混合物を添加し、スチレンの35部を逐次添加しながら開始温度を60℃として5時間加熱後、120℃に昇温し、4時間重合してビニル系重合体(B−3)を得た。最終転化率は98%であり、得られたビニル系重合体(B−3)の質量平均分子量は54,000、アクリロニトリル含有量は35.2%であった。
製造例−6 ビニル系重合体(B−4)の製造
単量体混合物のt−ドデシルメルカプタンを1.2部、アクリロニトリルを43部、スチレンを13部にし、逐次添加するスチレンを44部としたこと以外は製造例−5と同様に重合してビニル系重合体(B−4)を得た。最終転化率は96%であり、得られたビニル系重合体(B−4)の質量平均分子量は55,000、アクリロニトリル含有量は43.1%であった。
製造例−7 ビニル系重合体(B−5)の製造
ステンレス容器に純水200部、過硫酸カリウム0.3部およびドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム2部を仕込み、攪拌しながら65℃に昇温した。次いで、α−メチルスチレン74部、アクリロニトリル26部、t−ドデシルメルカプタン0.5部からなる単量体混合物を5時間にわたって連続的に添加した後、容器内の温度を70℃に昇温し、この温度を1時間維持して重合を完結させた。その後、塩化カルシウムを用いて塩析、脱水、乾燥して、ビニル系重合体(B−5)を得た。得られたビニル系重合体(B−5)の質量平均分子量は55,000、アクリロニトリル含有量は25.2%であった。
製造例−8:帯電防止剤(E−1)の製造
1−メチル−1−フェニルエチル基を有するフェノールをホルムアルデヒドで縮合させた後、エチレンオキサイド(EO)を付加させることにより、下記構造式(イ−1)で表される重合鎖を有する重合体(イ−1)を得た。
Figure 2007191528
次いで、重合体(イ−1)と有機アニオン化合物(ロ)であるドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム(ロ−1)とを、80:20の質量比で、シリカ粉に70質量%含浸させて帯電防止剤(E−1)を得た。
また、グラフト重合体(A−1〜2)、ビニル系重合体(B−1〜5)、帯電防止剤(E−1)以外の成分としては、以下のものを用いた。なお、無機充填剤の平均粒子径は遠心沈降法により測定した。
無機充填剤(D−1):白石工業製 「白艶華CC」(平均粒子径;0.08μm)
無機充填剤(D−2):白石工業製 「白艶華O」 (平均粒子径;0.03μm)
無機充填剤(D−3):白石工業製 「Vigot」(平均粒子径;0.17μm)
帯電防止剤(E−2):松本油脂製薬社製 「TB−160」 (陰イオン界面活性剤)
実施例1〜11、比較例1〜5
各成分を表1,2に示す割合で配合し、さらに滑剤、酸化防止剤を添加して混合した後、220〜240℃で2軸押出機(日本製鋼所製 「TEX−30α」)にて溶融混合し、ペレット化した。得られたペレットを75ton射出成形機(日本製鋼所製)にて試験片(100mm×100mm×3mm厚)を成形し、糸引き防止性とダイレクト蒸着性を評価した。また、シャルピー衝撃強度、メルトボリュームレート、荷重たわみ温度を測定した。それらの結果を表1,2に示す。
Figure 2007191528
Figure 2007191528
[糸引き防止性]
上記の試験片を成形直後または成形後8時間恒温室にて放置させた後に100mm×20mm×3mm厚の大きさに切り出し、温度340℃に加熱した熱板に押し付け、20秒後に引き離し、糸引きの状態を目視で観察した。そして、以下のようなランクで評価した。
○:糸引き発生せず
△:小さな糸が発生している
×:はっきりとした長い糸が発生している
××:著しく糸引きが発生している
[ダイレクト蒸着性]
上記の試験片を前処理なしに直接アルミニウム蒸着処理した後に、拡散反射率測定装置(東京電飾製)にて拡散反射率(%)を測定した。
[シャルピー衝撃強度]
ISO 179に基づいてシャルピー衝撃強度(kJ/m)を測定した。
[メルトボリュームレート(cm/10分)]
ISO 1133に基づいてメルトボリュームレート(cm/10分)を測定した。
[荷重たわみ温度(℃)]
ISO 75に基づいて荷重たわみ温度(℃)を測定した。
表1、表2の結果から明らかなように、特定のゴム強化スチレン系樹脂(C)と無機充填剤(D)と特定の帯電防止剤(E)とを含有する実施例1〜11の熱可塑性樹脂組成物は糸引き防止性に優れているため、これら熱可塑性樹脂組成物からなるランプハウジングは、ポリメチルメタクリレートやポリカーボネートなどからなるランプレンズとを熱板溶着する際に、成形直後の製品においても糸引きが生じにくい。したがって、熱板溶着性に優れ、自動車用ランプのハイサイクル化に充分対応できる。また、ダイレクト蒸着性にも優れため、ランプハウジングとして特に好適である。さらに、これらの熱可塑性樹脂組成物は、流動性や耐衝撃性、耐熱性のバランスに優れることが分かる。
これに対し、特定の帯電防止剤(E)を含まず、陰イオン界面活性剤を含む比較例1、無機充填剤(D)および特定の帯電防止剤(E)を含まない比較例2、特定の帯電防止剤(E)を含まない比較例3、無機充填剤(D)を含まない比較例4、特定のゴム強化スチレン系樹脂(A)を含まず、ポリブタジエンを幹ポリマーとしたグラフト重合体を含む比較例5の熱可塑性樹脂組成物は、糸引き防止性が低く、特に、成形直後で劣っていた。

Claims (4)

  1. ビニル重合性官能基含有シロキサン単位を含むポリオルガノシロキサンおよびアルキルアクリレートゴムからなる複合ゴム質重合体(L)に、シアン化ビニル単量体、芳香族ビニル単量体、これらと共重合可能な他のビニル単量体から選ばれた少なくとも1種がグラフト共重合されたグラフト重合体(A)が含まれるゴム強化スチレン系樹脂(C)と、
    無機充填剤(D)と、
    下記一般式(イ)で表される重合鎖を有する重合体、および、有機アニオン化合物(ロ)が含まれる帯電防止剤(E)とを含有する熱可塑性樹脂組成物。
    Figure 2007191528
    (式中、Rはアルキレン基を表し、Rは水素原子、ハロゲン原子、炭化水素基のいずれかを表し、Xは水素原子、炭化水素基、RNHCO−、RC(O)−(Rは炭化水素基)、アニオン性親水基のいずれかを表す。また、pは1以上、qは2以上の整数を表す。)
  2. ゴム強化スチレン系樹脂(C)には、シアン化ビニル単量体単位、芳香族ビニル単量体単位、これらと共重合可能な他のビニル単量体単位から選ばれた少なくとも1種からなるビニル系重合体(B)が、該ゴム強化スチレン系樹脂中に0〜90質量%含まれる請求項1に記載の熱可塑性樹脂組成物。
  3. 請求項1または2に記載の熱可塑性樹脂組成物を成形してなる自動車用ランプハウジング。
  4. 請求項3に記載の自動車用ランプハウジングと、ランプレンズとを有し、これらが熱板溶着法によって一体化された自動車用ランプ。
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