JP2007191528A - 熱可塑性樹脂組成物およびこれを用いた自動車用ランプハウジング、自動車用ランプ - Google Patents
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Abstract
Description
ランプハウジングが樹脂製である場合、ランプハウジングとランプレンズとを、ホットメルト接着剤により接合し、一体化していたが、近年では、生産性を高めるため、ランプハウジングとランプレンズとを熱板溶着法により接合する方法が採用されている。熱板溶着法は、ランプハウジングとランプレンズの、互いに接合しようとする部分に、加熱した熱板を数秒間押し当てて加熱溶融し、速やかに熱板を取り去って両者を接合する方法である。
そこで、糸引き防止性を高めることを目的として、例えば、特許文献1には、自動車用ランプハウジングを構成するゴム強化スチレン系樹脂に帯電防止剤を添加する方法が提案されている。
また、近年、自動車用ランプの製造では、生産性を向上させるために、ランプハウジングへのアンダーコートを省略して金属を蒸着するダイレクト蒸着法が適用されている。ダイレクト蒸着法を適用するためには、ランプハウジング表面の平滑性が高いことが求められる。
本発明は、成形品表面の平滑性が高く、成形直後に熱板溶着しても糸引きが起こりにくい熱可塑性樹脂組成物を提供することを目的とする。また、表面の平滑性が高く、ダイレクト蒸着性に優れる上に、成形直後であっても熱板溶着の際の糸引きが起こりにくい自動車用ランプハウジングを提供することを目的とする。また、高い生産性で得られる上に、優れた外観を有する自動車用ランプを提供することを目的とする。
無機充填剤(D)と、
下記一般式(イ)で表される重合鎖を有する重合体、および、有機アニオン化合物(ロ)が含まれる帯電防止剤(E)とを含有する。
本発明の自動車用ランプハウジングは、上述した熱可塑性樹脂組成物を成形してなる。
本発明の自動車用ランプは、上述した自動車用ランプハウジングと、ランプレンズとを有し、これらが熱板溶着法によって一体化されたものである。
本発明の自動車用ランプハウジングは、表面の平滑性が高く、ダイレクト蒸着性に優れる上に、成形直後であっても熱板溶着の際の糸引きが起こりにくい。
本発明の自動車用ランプは、高い生産性で得られる上に、優れた外観を有する。
本発明の熱可塑性樹脂組成物は、ゴム強化スチレン系樹脂(C)と無機充填剤(D)と帯電防止剤(E)とを含有するものである。
本発明の各成分について詳細に説明する。
ゴム強化スチレン系樹脂(C)は、複合ゴム質重合体(L)にグラフト成分がグラフト共重合されたグラフト重合体(A)を必須成分として含み、ビニル系重合体(B)を任意成分として含むものである。
本発明におけるグラフト重合体(A)は、複合ゴム質重合体(L)に、シアン化ビニル単量体、芳香族ビニル単量体、これらと共重合可能な他のビニル単量体(以下、「他のビニル単量体」ともいう)からなる群から選ばれる少なくとも1種がグラフト成分としてグラフト共重合された共重合体である。
本発明における複合ゴム質重合体(L)は、ポリオルガノシロキサンとアルキルアクリレートゴムとからなっている。
ポリオルガノシロキサンは、ビニル重合性官能基シロキサン単位を含有するポリオルガノシロキサンであり、好ましくは、ビニル重合性官能基含有シロキサン単位0.3〜3モル%およびジオルガノシロキサン単位97〜99.7モル%からなり、3個以上のシロキサン結合を有するケイ素原子がポリオルガノシロキサン中の全ケイ素原子に対し1モル%以下であるポリオルガノシロキサンである。
ポリオルガノシロキサン中のビニル重合性官能基含有シロキサン単位が0.3モル%以上であれば、アルキルアクリレートゴムと充分に複合化でき、該熱可塑性樹脂組成物から得た成形体の表面外観がより良好になる。また、ポリオルガノシロキサン中のビニル重合性官能基含有シロキサン単位が3モル%以下、または3個以上のシロキサン結合を有するケイ素原子がポリオルガノシロキサン中の全ケイ素原子に対し1モル%以下であれば、熱可塑性樹脂組成物の耐衝撃性が高くなる傾向にある。熱可塑性樹脂組成物の耐衝撃性と成形外観の両方を考慮すると、ポリオルガノシロキサン中のビニル重合性官能基含有シロキサン単位は、好ましくは0.5〜2モル%、さらに好ましくは0.5〜1モル%である。
ビニル重合性官能基含有シロキサンとしては、具体的には、β−メタクリロイルオキシエチルジメトキシメチルシラン、γ−メタクリロイルオキシプロピルジメトキシメチルシラン、γ−メタクリロイルオキシプロピルメトキシジメチルシラン、γ−メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メタクリロイルオキシプロピルエトキシジエチルシラン、γ−メタクリロイルオキシプロピルジエトキシメチルシラン、δ−メタクリロイルオキシブチルジエトキシメチルシラン等のメタクリロイルオキシシロキサン;テトラメチルテトラビニルシクロテトラシロキサン等のビニルシロキサン;p−ビニルフェニルジメトキシメチルシラン;γ−メルカプトプロピルジメトキシメチルシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン等のメルカプトシロキサンが挙げられる。これらビニル重合性官能基含有シロキサンは、単独で、または二種以上の混合物として用いることができる。
ビニル重合性官能基含有シロキサンとしては、ジメチルシロキサンとの反応性を考慮すると、メタクリロイルオキシシロキサン等のアルコキシシラン化合物が好ましい。
乳化剤は、シロキサン混合物100質量部に対して0.05〜5質量部程度の範囲で使用することが好ましい。乳化剤量が0.05質量部以上であると、分散状態が安定になり微小な粒子径の乳化状態が保たれる。また、5質量部以下であると、乳化剤に起因する熱可塑性樹脂組成物および成形体の着色が減少する。
酸触媒の添加方法としては、シロキサン混合物、乳化剤および水に添加する方法、シロキサン混合物の微粒子を含むラテックスを、高温の酸触媒水溶液中に一定速度で滴下する方法等が挙げられる。中でも、ポリオルガノシロキサンの粒子径を制御しやすいことから、シロキサン混合物の微粒子を含むラテックスを高温の酸触媒水溶液中に一定速度で滴下する方法が好ましい。
重合時間としては、酸触媒をシロキサン混合物、乳化剤および水とともに添加し、微粒子化させて重合する方法では、2時間以上であることが好ましく、5時間以上であることがより好ましい。酸触媒の水溶液中にシロキサン混合物が微粒子化したラテックスを滴下する方法では、ラテックスの滴下終了後1時間程度保持することが好ましい。
重合を停止する際に添加するアルカリ性物質としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウムなどが挙げられる。
単官能アルキルアクリレートとしては、例えば、メチルアクリレート、エチルアクリレート、n−プロピルアクリレート、n−ブチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート等が挙げられる。これらは、単独で用いてもよいし、二種以上を併用してもよい。これらの内、n−ブチルアクリレートを使用することが、生産性(コスト)が優れる点で好ましい。単官能アルキルアクリレート単位の複合ゴム質重合体(L)中の量は、40〜98.9質量%であることが好ましく、75〜93.8質量%であることがより好ましく、79〜89.8質量%であることが特に好ましい。単官能アルキルアクリレート単位の量が40質量%以上であれば、該熱可塑性樹脂組成物の成形体の成形外観が良好になり、98.9質量%以下であれば、得られる熱可塑性樹脂組成物の耐衝撃性が高くなる。
多官能性アルキル(メタ)アクリレートとしては、例えば、アリルメタクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、プロピレングリコールジメタクリレート、1,3−ブチレングリコールジメタクリレート、1,4−ブチレングリコールジメタクリレート、トリアリルシアヌレート、トリアリルイソシアヌレート等が挙げられる。これらは、単独で用いてもよいし、二種以上を併用してもよい。多官能性アルキル(メタ)アクリレートの併用例としては、ゴム架橋度とグラフト量のバランスに優れる点で、アリルメタクリレートと1,3−ブチレングリコールジメタクリレートとの併用が好ましい。
ここで、ポリオルガノシロキサンのラテックスとアクリレート成分とを混合する方法としては、ポリオルガノシロキサンのラテックスとアクリレート成分とを一括で混合する方法、ポリオルガノシロキサンのラテックス中にアクリレート成分を一定速度で滴下する方法などが挙げられる。これらの中でも、熱可塑性樹脂組成物の耐衝撃性が高くなることから、ポリオルガノシロキサンのラテックスとアクリレート成分とを一括で混合する方法が好ましい。
グラフト重合体(A)のグラフト成分におけるシアン化ビニル単量体としては、例えば、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、cis−2−ペンテンニトリル、フマロニトリルなどが挙げられる。これらは単独で使用してもよいし、併用してもよい。これらの中でも、アクリロニトリルが好ましい。
芳香族ビニル単量体としては、例えば、スチレン、α−メチルスチレン、o−メチルスチレン、1,3−ジメチルスチレン、p−メチルスチレン、p−t−ブチルスチレン、p−エチルスチレン、α−ハロゲン化スチレン、o−ハロゲン化スチレン、m−ハロゲン化スチレン、p−ハロゲン化スチレン等が挙げられる。これらは単独で使用してもよいし、併用してもよい。これらの中でも、スチレンが好ましい。
他のビニル単量体としては、例えば、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル等のメタクリル酸エステル、N−フェニルマレイミドなどのマレイミド単量体等が挙げられるが、特にこれらに限定されるものではない。
シアン化ビニル単量体、芳香族ビニル単量体、他のビニル単量体のうち、熱可塑性樹脂組成物の耐衝撃性や熱安定性を考慮すると、シアン化ビニル単量体、芳香族ビニル単量体、他のビニル単量体の2種以上を含むことが好ましい。
単量体成分における各単量体の割合は、シアン化ビニル単量体15〜35質量%、芳香族ビニル単量体65〜85質量%、他のビニル単量体0〜15質量%であることが好ましい。また、シアン化ビニル単量体20〜30質量%、芳香族ビニル単量体70〜80質量%、他のビニル単量体0〜5質量%であることがさらに好ましい。これらの割合から外れると、熱可塑性樹脂組成物の耐衝撃性や熱安定性、さらに顔料着色性を損なうおそれがある。
また、グラフト共重合の際には、重合ラテックスを安定化させるために、新たに乳化剤を添加することができる。乳化剤としては、カチオン系乳化剤、アニオン系乳化剤、ノニオン系乳化剤が挙げられ、好ましくは、スルホン酸塩乳化剤あるいは硫酸塩乳化剤とカルボン酸塩乳化剤との併用である。
ビニル系重合体(B)は、シアン化ビニル単量体単位、芳香族ビニル単量体単位、他のビニル単量体単位から選ばれた少なくとも1種からなる重合体である。これら各単量体については、上述のグラフト重合体(A)で例示した単量体が挙げられる。
ビニル系重合体(B)は、好ましくは、シアン化ビニル単量体単位、芳香族ビニル単量体単位、他のビニル単量体単位から選ばれた少なくとも2種以上の単量体からなる重合体であり、好ましい具体例として、アクリロニトリル単位とスチレン単位とα−メチルスチレン単位とN−フェニルマレイミド単位からなる共重合体が挙げられ、より好ましい具体例として、アクリロニトリル単位とスチレン単位とα−メチルスチレン単位とからなる共重合体が挙げられる。アクリロニトリル単位とスチレン単位とα−メチルスチレン単位とからなる共重合体は、糸引き防止性、耐衝撃性、ダイレクト蒸着性、流動性、耐熱性のバランスに優れる。
ビニル系重合体が、シアン化ビニル単量体単位および芳香族ビニル単量体単位からなる場合、ビニル系重合体(B)中のシアン化ビニル単量体単位の割合は、20〜40質量%であることが好ましく、20〜35質量%であることがさらに好ましい。シアン化ビニル単量体単位が20質量%以上(芳香族ビニル単量体単位が80質量%以下)であれば、糸引きがより防止される上に、耐衝撃性が高くなる傾向にある。また、シアン化ビニル単量体単位が40質量%以下(芳香族ビニル単量体単位が60質量%以上)であれば、ダイレクト蒸着性や成形性が優れる傾向にある。
ビニル系重合体(B)が他のビニル単量体単位を有する場合には、シアン化ビニル単量体と芳香族ビニル単量体の質量割合を上記割合で維持したまま、その含有量が0〜25質量%であることが好ましい。
なお、本発明において、質量平均分子量(Mw)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)にてテトラヒドロフラン(THF)に溶解して測定したものをポリスチレン(PS)換算で示した値である。
ビニル系重合体(B)としては、必要に応じて組成や分子量、および製造方法の異なるものを適宜混合したものであってもよい。
無機充填剤(D)の成分はゴム、プラスチック用充填剤として使用されるものであれば特に制限されず、例えば、タルク、ワラストナイト、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、硫酸カルシウム、亜硫酸カルシウム、硫酸マグネシウム、カオリン、酸化チタン、酸化亜鉛、アルミナ等を用いることができ、2種以上を混合しても使用してもよい。前記無機充填剤の中でも、タルク、炭酸カルシウムが好ましい。
具体的には、無機充填剤(D)の平均粒子径は0.01〜2.0μmであることが好ましく、0.03〜1.0μmであることがより好ましく、0.05〜0.2μmであることが特に好ましく、0.06〜0.1μmであることが最も好ましい。無機充填剤(D)の平均粒子径が0.01μm以上であれば、糸引き防止性がより向上し、2.0μm以下であれば、成形品表面の平滑性が高くなり、さらにダイレクト蒸着した際の外観が優れる傾向にある。
無機充填剤(D)の配合量は、ゴム強化スチレン系樹脂100質量部に対して好ましくは0.5〜10質量部、より好ましくは0.7〜4質量部、さらに好ましくは1〜2質量部である。無機充填剤(D)の配合量が0.5質量部以上であれば、糸引き防止性がより高くなり、10質量部以下であれば、成形品表面の平滑性がより向上する上に、ダイレクト蒸着した後の外観、耐衝撃性、流動性も向上する。
帯電防止剤(E)は、一般式(イ)で表される重合鎖を有する重合体(以下、「重合体(イ)」ということがある。)と、有機アニオン化合物(ロ)とを含有するものである。
重合体(イ)におけるRaはアルキレン基を表す。したがって、(Ra−O)の部分はアルキレンオキサイドを表し、具体的には、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイド、テトラヒドロフラン(1,4−ブチレンオキサイド)、長鎖α−オレフィンオキサイド、スチレンオキサイドなどが挙げられる。
pが2以上である場合(ポリアルキレンオキシドである場合)には、Raは1種類であってもよいし、2種類以上であってもよい。Raが1種類の場合には、炭素数2〜4のアルキレン基が好ましく、エチレン基がより好ましい。また、Raが2種類以上である場合には、そのうちの1種がエチレン基であることが好ましい。さらに、Raが2種類以上である場合には、2種類以上のアルキレンオキサイドのランダム共重合体、ブロック共重合、ランダム/ブロック共重合等のいずれであってもよい。
炭化水素基としては、アルキル基、アルケニル基、アリール基、シクロアルキル基、シクロアルケニル基等が挙げられる。
アルキル基としては、例えば、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、2級ブチル、ターシャリブチル、ペンチル、イソペンチル、2級ペンチル、ターシャリペンチル、ヘキシル、2級ヘキシル、ヘプチル、2級ヘプチル、オクチル、2−エチルヘキシル、2級オクチル、ノニル、2級ノニル、デシル、2級デシル、ウンデシル、2級ウンデシル、ドデシル、2級ドデシル、トリデシル、イソトリデシル、2級トリデシル、テトラデシル、2級テトラデシル、ヘキサデシル、2級ヘキサデシル、ステアリル、イコシル、ドコシル、テトラコシル、トリアコンシル、2−ブチルオクチル、2−ブチルデシル、2−ヘキシルオクチル、2−ヘキシルデシル、2−オクチルデシル、2−ヘキシルドデシル、2−オクチルドデシル、2−デシルテトラデシル、2−ドデシルヘキサデシル、2−ヘキサデシルオクタデシル、2−テトラデシルオクタデシル、モノメチル分枝−イソステアリル等が挙げられる。
アルケニル基としては、例えば、ビニル、アリル、プロペニル、ブテニル、イソブテニル、ペンテニル、イソペンテニル、ヘキセニル、ヘプテニル、オクテニル、ノネニル、デセニル、ウンデセニル、ドデセニル、テトラデセニル、オレイル等が挙げられる。
アリール基としては、例えば、フェニル、トルイル、キシリル、クメニル、メシチル、ベンジル、フェネチル、スチリル、シンナミル、ベンズヒドリル、トリチル、エチルフェニル、プロピルフェニル、ブチルフェニル、ペンチルフェニル、ヘキシルフェニル、ヘプチルフェニル、オクチルフェニル、ノニルフェニル、デシルフェニル、ウンデシルフェニル、ドデシルフェニル、フェニルフェニル、ベンジルフェニル、スチレン化フェニル、p−クミルフェニル、ジノニルフェニル、α−ナフチル、β−ナフチル基等が挙げられる。
シクロアルキル基、シクロアルケニル基としては、例えば、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、メチルシクロペンチル、メチルシクロヘキシル、メチルシクロヘプチル、シクロペンテニル、シクロヘキセニル、シクロヘプテニル、メチルシクロペンテニル、メチルシクロヘキセニル、メチルシクロヘプテニル基等が挙げられる。
この中でも炭素数1〜6のアルキル基が好ましい。
RcNHCO−(Rcは炭化水素基)としては、例えば、メチルイソシアネート、エチルイソシアネート、プロピルイソシアネート、ブチルイソシアネート、ヘキシルイソシアネート、オクチルイソシアネート、ラウリルイソシアネート、オクタデシルイソシアネート、シクロヘキシルイソシアネート、フェニルイソシアネート、トリレンイソシアネート、オレイルイソシアネート等をアルキレンオキシドに付加した際に形成される置換基が挙げられる。
RcC(O)−(Rcは炭化水素基)としては、例えば、アセチル、プロピオニル、ブチリル、イソブチリル、バレリル、イソバレリル、ピバリル、ラウロイル、ミリストイル、パルミトイル、ステアロイル、ベヘニル、アクロイル、プロピオロイル、メタクロイル、クロトノイル、オレイロイル、ベンゾイル、フタロイル、スクシニル等が挙げられる。
アンモニウムとしては、例えば、アンモニア、メチルアミン、ジメチルアミン、エチルアミン、ジエチルアミン、(イソ)プロピルアミン、ジ(イソ)プロピルアミン、モノエタノールアミン、N−メチルモノエタノールアミン、N−エチルエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、モルホリン、モノプロパノールアミン、ジプロパノールアミン、トリプロパノールアミン、2−アミノ−2−メチル−1,3−プロパンジオール、アミノエチルエタノールアミン、N,N,N’,N’−テトラキス(2−ヒドロキシプロピル)エチレンジアミン等のアンモニウムが挙げられる。
重合体(イ)がアニオン性親水基を有する場合には、糸引き防止性がより高くなる。
本製造例では、まず、既知の方法でフェノール類をホルムアルデヒドで縮合させて重合した後、アルキレンオキサイド等をフェノールの酸素に付加する。次いで、アルキレンオキサイド末端の水素原子を、炭化水素基、RcNHCO−、RcC(O)−(Rcは炭化水素基)を有する炭化水素基、アニオン性親水基のいずれかに置換する。
その場合、重合体(イ)におけるフェノール類とホルムアルデヒドとが縮合したユニット(一般式(イ)における括弧内)の割合は、重合体(イ)中に10質量%以上であることが好ましく、30質量%以上であることがより好ましい。該ユニットが10質量%以上であれば、熱可塑性樹脂組成物中の帯電防止剤(E)添加量を少なくできるため、糸引き防止性を向上させつつ、帯電防止剤(E)添加による耐衝撃性の低下を抑えることができる。
これらの有機スルホン酸の中和物の中でも、デシルスルホン酸ナトリウム、C9〜C13アルキルスルホン酸ナトリウム、オクタデシルスルホン酸ナトリウム、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムが特に好ましい。
有機アニオン化合物(ロ)が中和物であれば、帯電防止の効果をより発揮する。
本発明の熱可塑性樹脂組成物には、必要に応じて、酸化防止剤、紫外線吸収剤、滑剤、可塑剤、離型剤、前記帯電防止剤(E)以外の帯電防止剤、着色剤(顔料、染料など)、フィラー、難燃剤、アンチモン化合物などの難燃助剤、抗菌剤、防カビ剤、シリコーンオイル、カップリング剤などの各種の添加剤が配合されていてもよい。また、カーボン繊維やステンレス繊維の導電性物質が配合されていてもよい。
本発明の自動車用ランプハウジングは、上述した熱可塑性樹脂組成物を成形して得たものである。ここで、成形法としては、例えば、射出成形、シート押出成形、真空成形、圧空成形、異型押出し成形、発泡成形、ブロー成形などが挙げられる。
本発明の自動車用ランプは、上記自動車用ランプハウジングと、ランプレンズとを有し、これらが熱板溶着法によって一体化されたものである。
本発明で使用されるランプレンズは、透明または半透明であり、レンズとして使用できるものであればよいが、ポリメチルメタクリレート製またはポリカーボネート製のレンズが好ましい。ポリメチルメタクリレート製またはポリカーボネート製のランプレンズは熱板溶着性に優れ、また、成形直後において糸引きが生じにくく、しかも、良好な成形品表面外観が得られるためダイレクト蒸着性も優れる。
ランプレンズには、傷付きや劣化防止のためコーティング処理などが施されていてもよい。
熱板溶着の際の熱板温度としては、250〜400℃であることが好ましく、溶着時間としては、10〜30秒であることが好ましい。
なお、以下の例において、「部」は「質量部」、拡散反射率以外の「%」は「質量%」を意味する。また、ラテックス中のポリオルガノシロキサンの質量平均粒子径およびグラフト重合体の質量平均粒子径は大塚電子(株)製DLS−700型を用いた動的光散乱法にて求めた。さらにビニル系重合体の質量平均分子量(Mw)は、東ソー(株)製:GPC(ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー、溶媒:THF)を用いた標準ポリスチレン換算法にて算出した。
複合ゴム質重合体(L)の製造
オクタメチルシクロテトラシロキサン98部、γ−メタクリオイルオキシプロピルジメトキシメチルシラン2部を混合してシロキサン系混合物100部を得た。これにドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム0.67部を溶解した蒸留水300部を添加し、ホモミキサーにて10000回転/分で2分間攪拌した後、ホモジナイザーに30MPaの圧力で1回通し、安定な予備混合オルガノシロキサンラテックスを得た。
また、試薬注入器、冷却菅、ジャケット加熱機および攪拌装置を備えた反応器内に、ドデシルベンゼンスルホン酸10部と蒸留水90部とを注入し、10%のドデシルベンゼンスルホン酸水溶液を調製した。このドデシルベンゼンスルホン酸水溶液を85℃に加熱した状態で、予備オルガノシロキサンラテックスを4時間に亘って滴下し、滴下終了後1時間温度を維持し、重合させた。その後、冷却し、水酸化ナトリウム水溶液を添加し、中和して重合を停止させることにより、ポリオルガノシロキサンラテックスを得た。
このポリオルガノシロキサンラテックスを170℃で30分間乾燥して固形分を求めたところ、17.7%であった。また、ラテックス中のポリオルガノシロキサンの質量平均粒子径は0.05μmであった。
試薬注入器、冷却菅、ジャケット加熱機および攪拌装置を備えた反応器内に、上記ポリオルガノシロキサンラテックス15部、エマールNC−35(ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテルサルフェート:花王製)0.2部を仕込み、蒸留水148.5部を添加混合した後、ブチルアクリレート85部、アリルメタクリレート0.3部、1,3−ブチレングリコールジメタクリレート0.1部およびキュメンヒドロパーオキサイド0.18部の混合物を添加した。
この反応器に窒素気流を通じることによって、窒素置換しながら、60℃まで昇温し、液温が安定した後に、硫酸第一鉄0.0001部、エチレンジアミン四酢酸二ナトリウム塩0.0003部およびロンガリット0.24部を蒸留水10部に溶解させた水溶液を添加し、ラジカル重合させて、ポリオルガノシロキサンとブチルアクリレートゴムとの複合ゴム質重合体のラテックスを得た。この複合ゴム質重合体のラテックスの質量平均粒子径は0.12μmであった。
参考例1で製造したラテックス状の複合ゴム質重合体50部(固形分換算)に、ロンガリット0.4部を蒸留水10部に溶解した水溶液を添加した。次いで、アクリロニトリル7.5部、スチレン22.5部およびキュメンヒドロパーオキサイド0.14部の混合液を2時間滴下し重合した。滴下終了後、温度60℃の状態を1時間保持した後に、硫酸第一鉄0.0002部、エチレンジアミン四酢酸二ナトリウム塩0.0006部およびロンガリット0.23部およびエマールNC−35 0.2部を蒸留水10部に溶解させた水溶液を添加した。次いで、アクリロニトリル5.0部、スチレン15.0部およびキュメンヒドロパーオキサイド0.10部の混合液を2時間滴下し重合した。滴下終了後、温度60℃の状態を1時間保持した後に、ラテムルASK(アルケニルコハク酸ジカリウム塩:花王製)を0.3部添加し、ポリオルガノシロキサンとブチルアクリレートゴムとからなる複合ゴムにアクリロニトリル、スチレンをグラフト重合させたグラフト重合体ラテックスを得た。このグラフト重合体ラテックスを塩析凝固した後に、洗浄、脱水、乾燥を順次行なってグラフト重合体(A−1)を得た。
複合ゴム質重合体の代わりに乳化重合で製造されたポリブタジエン(平均粒子径0.2μm、固形分40%)を用いたこと以外は製造例−1と同様にして、グラフト重合体(A−2)を得た。
窒素置換した反応器に、イオン交換水120部、ドデシルベンゼンスルホン酸ソーダ0.003部、水酸化アパタイト0.5部、アゾイソブチロニトリル0.15部、t−ドデシルメルカプタン0.6部、および、アクリロニトリル27部、スチレン73部を含む単量体混合物を添加した。そして、反応器内の温度を60℃にして5時間加熱した後、120℃に昇温し、4時間反応させて重合を完結させてビニル系重合体(B−1)を得た。最終転化率は96%であり、ビニル系重合体(B−1)の質量平均分子量は82,000 、アクリロニトリル含有量は26.7%であった。
アクリロニトリルの量を20部、スチレンの量を80部にしたこと以外は製造例−3と同様に重合してビニル系重合体(B−2)を得た。最終転化率は97%であり、得られたビニル系重合体(B−2)の質量平均分子量は37,000、アクリロニトリル含有量は19.2%であった。
t−ドデシルメルカプタン0.7部、アクリロニトリル35部、スチレン30部からなる単量体混合物を添加し、スチレンの35部を逐次添加しながら開始温度を60℃として5時間加熱後、120℃に昇温し、4時間重合してビニル系重合体(B−3)を得た。最終転化率は98%であり、得られたビニル系重合体(B−3)の質量平均分子量は54,000、アクリロニトリル含有量は35.2%であった。
単量体混合物のt−ドデシルメルカプタンを1.2部、アクリロニトリルを43部、スチレンを13部にし、逐次添加するスチレンを44部としたこと以外は製造例−5と同様に重合してビニル系重合体(B−4)を得た。最終転化率は96%であり、得られたビニル系重合体(B−4)の質量平均分子量は55,000、アクリロニトリル含有量は43.1%であった。
ステンレス容器に純水200部、過硫酸カリウム0.3部およびドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム2部を仕込み、攪拌しながら65℃に昇温した。次いで、α−メチルスチレン74部、アクリロニトリル26部、t−ドデシルメルカプタン0.5部からなる単量体混合物を5時間にわたって連続的に添加した後、容器内の温度を70℃に昇温し、この温度を1時間維持して重合を完結させた。その後、塩化カルシウムを用いて塩析、脱水、乾燥して、ビニル系重合体(B−5)を得た。得られたビニル系重合体(B−5)の質量平均分子量は55,000、アクリロニトリル含有量は25.2%であった。
1−メチル−1−フェニルエチル基を有するフェノールをホルムアルデヒドで縮合させた後、エチレンオキサイド(EO)を付加させることにより、下記構造式(イ−1)で表される重合鎖を有する重合体(イ−1)を得た。
無機充填剤(D−1):白石工業製 「白艶華CC」(平均粒子径;0.08μm)
無機充填剤(D−2):白石工業製 「白艶華O」 (平均粒子径;0.03μm)
無機充填剤(D−3):白石工業製 「Vigot」(平均粒子径;0.17μm)
帯電防止剤(E−2):松本油脂製薬社製 「TB−160」 (陰イオン界面活性剤)
各成分を表1,2に示す割合で配合し、さらに滑剤、酸化防止剤を添加して混合した後、220〜240℃で2軸押出機(日本製鋼所製 「TEX−30α」)にて溶融混合し、ペレット化した。得られたペレットを75ton射出成形機(日本製鋼所製)にて試験片(100mm×100mm×3mm厚)を成形し、糸引き防止性とダイレクト蒸着性を評価した。また、シャルピー衝撃強度、メルトボリュームレート、荷重たわみ温度を測定した。それらの結果を表1,2に示す。
上記の試験片を成形直後または成形後8時間恒温室にて放置させた後に100mm×20mm×3mm厚の大きさに切り出し、温度340℃に加熱した熱板に押し付け、20秒後に引き離し、糸引きの状態を目視で観察した。そして、以下のようなランクで評価した。
○:糸引き発生せず
△:小さな糸が発生している
×:はっきりとした長い糸が発生している
××:著しく糸引きが発生している
上記の試験片を前処理なしに直接アルミニウム蒸着処理した後に、拡散反射率測定装置(東京電飾製)にて拡散反射率(%)を測定した。
ISO 179に基づいてシャルピー衝撃強度(kJ/m2)を測定した。
[メルトボリュームレート(cm3/10分)]
ISO 1133に基づいてメルトボリュームレート(cm3/10分)を測定した。
[荷重たわみ温度(℃)]
ISO 75に基づいて荷重たわみ温度(℃)を測定した。
これに対し、特定の帯電防止剤(E)を含まず、陰イオン界面活性剤を含む比較例1、無機充填剤(D)および特定の帯電防止剤(E)を含まない比較例2、特定の帯電防止剤(E)を含まない比較例3、無機充填剤(D)を含まない比較例4、特定のゴム強化スチレン系樹脂(A)を含まず、ポリブタジエンを幹ポリマーとしたグラフト重合体を含む比較例5の熱可塑性樹脂組成物は、糸引き防止性が低く、特に、成形直後で劣っていた。
Claims (4)
- ビニル重合性官能基含有シロキサン単位を含むポリオルガノシロキサンおよびアルキルアクリレートゴムからなる複合ゴム質重合体(L)に、シアン化ビニル単量体、芳香族ビニル単量体、これらと共重合可能な他のビニル単量体から選ばれた少なくとも1種がグラフト共重合されたグラフト重合体(A)が含まれるゴム強化スチレン系樹脂(C)と、
無機充填剤(D)と、
下記一般式(イ)で表される重合鎖を有する重合体、および、有機アニオン化合物(ロ)が含まれる帯電防止剤(E)とを含有する熱可塑性樹脂組成物。
- ゴム強化スチレン系樹脂(C)には、シアン化ビニル単量体単位、芳香族ビニル単量体単位、これらと共重合可能な他のビニル単量体単位から選ばれた少なくとも1種からなるビニル系重合体(B)が、該ゴム強化スチレン系樹脂中に0〜90質量%含まれる請求項1に記載の熱可塑性樹脂組成物。
- 請求項1または2に記載の熱可塑性樹脂組成物を成形してなる自動車用ランプハウジング。
- 請求項3に記載の自動車用ランプハウジングと、ランプレンズとを有し、これらが熱板溶着法によって一体化された自動車用ランプ。
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