JP6795308B2 - 熱可塑性樹脂組成物 - Google Patents

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Description

本発明は、熱可塑性樹脂組成物に関する。
樹脂は技術の発展に伴って、車両用部品、家電部品、各種工業用材料など、近年益々その適用分野を拡大している。樹脂の接合に関する二次加工技術も、その拡大に寄与する技術の一つである。
樹脂の接合としては、例えばネジやボルトなどによる機械的接合、ホットメルトなど接着剤による接合、熱板溶着に代表される、熱を与えて溶融させることによる熱接合、接合部を振動させることにより発生する摩擦熱を利用した振動溶着、接合部にレーザー光を照射しその部位の吸収発熱を利用したレーザー溶着などが挙げられる。加工工程の削減や軽量化、環境負荷の低減などの観点から、最近では熱板溶着、振動溶着、レーザー溶着が、その有用性を高めている。
レーザー溶着では、通常、レーザー光を透過する「透過材」と、レーザー光を吸収する「吸収材」との2つの材料を接合する。透過材側から材料接触界面に非接触で照射されたレーザー光は、そのまま透過材を透過して吸収材表面に到達する。吸収材表面で吸収された光エネルギーは熱に変換され、照射部位を溶融する。また、その溶融熱は透過材にも熱伝達し、透過材も溶融される。その後、溶融部位が冷却とともに固化、融着される。このような工程を経てレーザー溶着された樹脂接合体は、強度や気密性、外観(バリ発生が無いなど)に優れるほか、作業環境、内蔵部品へのダメージなどの観点からも非常に良好であるという特長を有している。
しかし、レーザー光の照射が強すぎると樹脂の発熱量が増大するため、発泡や焦げ、変色などの外観不良を引き起こす原因となる。一方、レーザー光の照射が弱すぎると接合強度が低下、場合によっては十分に溶着しないといった不具合が起こりうる。このため、レーザー溶着を行う上で樹脂の発熱量を適切な範囲に制御することは非常に重要である。
発熱量の制御という観点で、レーザー光に対する材料の光学特性を調整する手法が考えられる。そのような技術として、例えば特許文献1〜3には、特定波長あるいは特定範囲の波長に対して、所定の透過率を示す樹脂組成物が開示されている。
しかしながら特許文献1〜3に記載の樹脂組成物は、いずれも透過率をある数値以上に規定することで、十分なエネルギー量のレーザー光を溶着部まで到達させる、つまり「透過材」として用いられるものであり、「吸収材」として利用するには適した技術ではない。
材料に入射された光は、透過光と反射光と吸収光に分けられる。つまり入射光の割合を100%とした場合、各光成分の割合として、透過率+反射率+吸収率=100%が成立する。「透過材」の場合は、レーザー光を溶着部まで到達させるという観点から、透過率に着目する。一方「吸収材」の場合は、発熱量を適切な範囲に制御するという観点から、着目するべき光学特性は、透過率ではなく吸収率である。その理由は、吸収材がレーザー光のエネルギーによって熱溶融される際、その吸収される量が過剰であると発泡や焦げ、変色などの外観不良を、過少であると溶着が不十分になるなどの不具合を引き起こすためである。このように、レーザー溶着性に優れた成形品を得るために、「吸収材」の吸収率を制御することは非常に重要である。
ところで、熱可塑性樹脂より得られる成形品は、通常、染・顔料によって着色された状態(着色成形品)で利用されることが多く、製品意匠性の観点からその色調は非常に重要視される。このような色調は、原理的には材料が反射した可視光領域の様々な波長の光を人間の目で観測した結果である。材料が反射する光の波長によって色調は様々に変化するが、黒やダークグレーなど濃色系の色調は、可視光領域の光の反射率が総じて低いことを表している。つまり色調制御という観点から、着目するべき光学特性は可視光領域の反射率であり、特に濃色系の色調においては、可視光領域の反射率を特定の低い範囲で制御することが重要である。
レーザー溶着における光の波長は、発振効率に優れるという点で、近赤外領域の波長の光が好適に用いられる。一方色調における光の波長は、前記したように可視光領域の波長の光に対応する。つまり、近赤外領域の吸収率および、可視光領域の反射率を好適に制御することで、レーザー溶着性および色調に優れた材料を提供することが可能となる。さらに本発明の特徴としては、近赤外領域の吸収率と可視光領域の反射率の比率を好適に制御することで、レーザー溶着性と色調とのバランスに非常に優れた材料を提供することが可能となる。
特許第4017994号公報 特開2007−8974号公報 特開2007−269890号公報
本発明は、色調とレーザー溶着後の外観に優れ、かつ樹脂部材として十分な耐衝撃性と耐候性を有する成形品を得ることができる熱可塑性樹脂組成物を提供することを目的とする。また、色調とレーザー溶着後の外観に優れ、かつ樹脂部材として十分な耐衝撃性と耐候性を有する熱可塑性樹脂組成物からなる成形品を提供することを目的とする。
本発明者らは鋭意検討した結果、ポリオルガノシロキサンとアルキル(メタ)アクリレート系重合体とが複合した複合ゴム状重合体を用いたグラフト共重合体を含む熱可塑性樹脂組成物の、可視光領域の反射率および、近赤外領域の吸収率を好適に制御することによって上記課題を解消できることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は以下の態様を包含する。
[1] ポリオルガノシロキサン(A)とアルキル(メタ)アクリレート系重合体(B)とが複合した複合ゴム状重合体(C)にビニル系重合体(D)がグラフトされたグラフト共重合体(E)を含む熱可塑性樹脂組成物であって、
光線反射率(%R)、および下記式(1)で表される光線吸収率(%A)を、可視光領域から近赤外光領域において、波長間隔1nmで測定したとき、
380nm〜780nmの光線反射率の平均値(可視%R)が5%〜10%、
780nm〜1180nmの光線吸収率の平均値(近赤外%A)が25%〜93%、であることを満たす熱可塑性樹脂組成物。
光線吸収率(%A)=100−光線透過率(%T)−光線反射率(%R)・・・(1)
[2] 近赤外領域の光線吸収率の平均値と、可視光領域の光線反射率の平均値との比(近赤外%A/可視%R)が16.5〜4.5であることを特徴とする、[1]に記載の熱可塑性樹脂組成物。
[3] [1]または[2]に記載の熱可塑性樹脂組成物を成形した、成形品。
本発明の熱可塑性樹脂組成物によれば、色調とレーザー溶着後の外観に優れ、かつ樹脂部材として十分な耐衝撃性と耐候性を有する成形品を得ることができる。
本発明の成形品は、色調とレーザー溶着後の外観に優れ、かつ樹脂部材として十分な耐衝撃性と耐候性を有する。
以下、本発明を詳細に説明する。
なお、以下の説明において、「成形品」とは、本発明の熱可塑性樹脂組成物を成形してなるものである。また、以下の説明において特に断りがない限り、「色調が優れる」とは、成形品が濃色系の色調(ダークグレーや黒など)を示すことを意味する。また、「溶着外観が優れる」とは、レーザー溶着後の接合部において焦げや変色が抑制されていることを意味する。
「熱可塑性樹脂組成物」
本発明の熱可塑性樹脂組成物は、グラフト共重合体(E)を含有する。
<グラフト共重合体(E)>
グラフト共重合体(E)はポリオルガノシロキサン(A)と、アルキル(メタ)アクリレート系重合体(B)とが複合した複合ゴム状重合体(C)に、ビニル系重合体(D)がグラフト重合した共重合体である。
<ポリオルガノシロキサン(A)>
複合ゴム状重合体(C)を構成するポリオルガノシロキサン(A)としては特に制限されないが、ビニル重合性官能基を含有するポリオルガノシロキサン(ビニル重合性官能基含有ポリオルガノシロキサン)が好ましく、ビニル重合性官能基含有シロキサン単位と、ジメチルシロキサン単位とを有するポリオルガノシロキサンがより好ましい。
ビニル重合性官能基含有シロキサン単位の割合は0.3〜3モル%が好ましい。ビニル重合性官能基含有シロキサン単位の割合が上記範囲内であれば、ポリオルガノシロキサン(A)とアルキル(メタ)アクリレート系重合体(B)とが十分に複合化し、成形品の表面においてポリオルガノシロキサン(A)がブリードアウトしにくくなる。よって、成形品の表面外観がより良好となり、成形品の耐衝撃性もより向上する。
ポリオルガノシロキサン(A)としては、成形品の表面外観がさらに良好となることから、3個以上のシロキサン結合を有するケイ素原子がポリオルガノシロキサン中の全ケイ素原子に対し0〜1モル%であることが好ましい。
ポリオルガノシロキサン(A)の好ましい態様としては、ビニル重合性官能基含有シロキサン単位0.3〜3モル%と、ジメチルシロキサン単位99.7〜97モル%(ただし、ビニル重合性官能基含有シロキサン単位とジメチルシロキサン単位の合計を100モル%とする。)とからなり、3個以上のシロキサン結合を有するケイ素原子がポリオルガノシロキサン中の全ケイ素原子に対し1モル%以下であるポリオルガノシロキサンが挙げられる。
ポリオルガノシロキサン(A)の平均粒子径は特に制限されないが、成形品の表面外観がさらに良好となることから、400nm以下が好ましく、150nm以下がより好ましい。下限値については、20nm以上が好ましい。
ここで、ポリオルガノシロキサン(A)の平均粒子径は、粒度分布測定器を用いて質量基準の粒子径分布を測定し、得られた粒子径分布より算出される値(質量平均粒子径)である。
(ポリオルガノシロキサン(A)の製造方法)
ポリオルガノシロキサン(A)は、例えばジメチルシロキサンと、ビニル重合性官能基含有シロキサンとを含むシロキサン混合物を重合することで得られる。重合の方法としては特に制限されないが、乳化重合が好ましい。
ジメチルシロキサンとしては、3員環以上のジメチルシロキサン系環状体が好ましく、3〜7員環のジメチルシロキサン系環状体がより好ましい。具体的には、ヘキサメチルシクロトリシロキサン、オクタメチルシクロテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、ドデカメチルシクロヘキサシロキサンなどが挙げられる。これらジメチルシロキサンは、1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
ビニル重合性官能基含有シロキサンとしては、ビニル重合性官能基を含有し、かつ、ジメチルシロキサンとシロキサン結合を介して結合し得るものであれば特に制限されないが、ジメチルシロキサンとの反応性を考慮すると、ビニル重合性官能基を含有する各種アルコキシシラン化合物が好適である。具体的には、β−メタクリロイルオキシエチルジメトキシメチルシラン、γ−メタクリロイルオキシプロピルジメトキシメチルシラン、γ−メタクリロイルオキシプロピルメトキシジメチルシラン、γ−メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メタクリロイルオキシプロピルエトキシジエチルシラン、γ−メタクリロイルオキシプロピルジエトキシメチルシラン、δ−メタクリロイルオキシブチルジエトキシメチルシラン等のメタクリロイルオキシシロキサン;テトラメチルテトラビニルシクロテトラシロキサン等のビニルシロキサン;p−ビニルフェニルジメトキシメチルシラン、γ−メルカプトプロピルジメトキシメチルシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン等のメルカプトシロキサンなどが挙げられる。これらビニル重合性官能基含有シロキサンは、1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
シロキサン混合物の重合は、通常、乳化剤と水と酸触媒とを用いて行われる。
乳化剤としてはアニオン系乳化剤が好ましい。具体的には、アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ラウリルスルホン酸ナトリウム、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル硫酸エステルナトリウムなどが挙げられる。これらの中でも、アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ラウリルスルホン酸ナトリウム等のスルホン酸系の乳化剤が好ましい。これら乳化剤は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
乳化剤の使用量は、シロキサン混合物100質量部に対して0.05〜5質量部が好ましい。乳化剤の使用量が0.05質量部以上であれば、分散状態が安定しやすく、微小な粒子径の乳化状態を保持しやすくなる。一方、乳化剤の使用量が5質量部以下であれば、乳化剤に起因する成形品の着色を抑制できる。
酸触媒としては、スルホン酸類(例えば脂肪族スルホン酸、脂肪族置換ベンゼンスルホン酸、脂肪族置換ナフタレンスルホン酸など)等の有機酸触媒;鉱酸類(例えば硫酸、塩酸、硝酸など)等の無機酸触媒などが挙げられる。これら酸触媒は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
これらの中でも、後述するシロキサンラテックス(a)のラテックスの安定化作用にも優れている点で脂肪族置換ベンゼンスルホン酸が好ましく、n−ドデシルベンゼンスルホン酸が特に好ましい。また、n−ドデシルベンゼンスルホン酸と硫酸等の鉱酸とを併用すると、ポリオルガノシロキサン(A)の製造に用いた乳化剤の色が成形品の色に与える影響を小さく抑えることができる。
酸触媒の添加量は適宜決めればよいが、通常、シロキサン混合物100質量部に対して0.1〜20質量部程度である。
酸触媒の混合は、シロキサン混合物と乳化剤と水とを混合するタイミングで行ってもよいし、シロキサン混合物に乳化剤と水とを添加して乳化させラテックス(シロキサンラテックス(a))とし、これを微粒子化した後でもよい。得られるポリオルガノシロキサン(A)の粒子径を制御しやすいことから、シロキサンラテックス(a)を微粒子化した後に、シロキサンラテックス(a)と酸触媒とを混合することが好ましい。特に、微粒子化したシロキサンラテックス(a)を酸触媒水溶液中に一定速度で滴下することが好ましい。
なお、酸触媒をシロキサン混合物と乳化剤と水とを混合するタイミングで混合する場合は、これらを混合した後に微粒子化することが好ましい。
シロキサンラテックス(a)は、例えば高速回転による剪断力で微粒子化するホモミキサーや、高圧発生機による噴出力で微粒子化するホモジナイザー等を使用することで微粒子化できる。
シロキサン混合物と乳化剤と水と酸触媒とを混合する方法や、微粒子化したシロキサンラテックス(a)と酸触媒とを混合する方法としては、例えば高速攪拌による混合、ホモジナイザー等の高圧乳化装置による混合などが挙げられる。中でも、ホモジナイザーを使用した方法は、ポリオルガノシロキサン(A)の粒子径の分布を小さくできるので好適である。
重合温度は、50℃以上が好ましく、80℃以上が好ましい。
なお、微粒子化したシロキサンラテックス(a)を酸触媒水溶液中に滴下する場合、酸触媒水溶液の温度は50℃以上が好ましく、80℃以上が好ましい。
重合時間は、シロキサン混合物と乳化剤と水とを混合するタイミングで酸触媒を混合する場合は、2時間以上が好ましく、5時間以上がさらに好ましい。一方、微粒子化したシロキサンラテックス(a)と酸触媒とを混合する場合は、微粒子化したシロキサンラテックス(a)を酸触媒水溶液中に滴下した後、1時間程度保持することが好ましい。
重合の停止は、反応液を冷却した後、反応液の25℃におけるpHが6〜8程度になるように水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウムなどのアルカリ性物質で反応液を中和することによって行うことができる。
ポリオルガノシロキサン(A)の平均粒子径は、シロキサン混合物の組成、酸触媒の使用量(酸触媒水溶液中の酸触媒の含有量)、重合温度などを調整することで制御できる。例えば、酸触媒の使用量が少なくなるほど平均粒子径は大きくなる傾向にあり、重合温度が高くなるほど平均粒子径は小さくなる傾向にある。
<アルキル(メタ)アクリレート系重合体(B)>
複合ゴム状重合体(C)を構成するアルキル(メタ)アクリレート系重合体(B)は、アルキル(メタ)アクリレート単量体を1種以上含む単量体成分を重合して得られるものである。この単量体成分には、アルキル(メタ)アクリレート単量体以外の単量体(他の単量体)が含まれていてもよい。
アルキル(メタ)アクリレート単量体としては、例えばアクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n−プロピル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸2−エチルヘキシル等のアクリル酸アルキルエステル;メタクリル酸ヘキシル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸n−ラウリル等のメタクリル酸アルキルエステルなどが挙げられる。これらアルキル(メタ)アクリレート単量体は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。中でも、成形品の耐衝撃性がより向上する点で、アクリル酸n−ブチルが好ましい。
単量体成分100質量%中のアルキル(メタ)アクリレート単量体の割合は、80〜100質量%が好ましく、90〜100質量%がより好ましい。単量体成分100質量%中のアルキル(メタ)アクリレート単量体の割合が上記範囲であれば、成形品の耐衝撃性がより向上する。
他の単量体としては、アルキル(メタ)アクリレート単量体と共重合可能であれば特に制限されないが、芳香族ビニル化合物(例えば、スチレン、α−メチルスチレン、p−メチルスチレン等)、シアン化ビニル化合物(例えば、アクリロニトリル、メタクリロニトリル等)などが挙げられる。これら他の単量体は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
アルキル(メタ)アクリレート系重合体(B)の製造方法は特に制限されず、公知の方法に従って行うことができる。
<複合ゴム状重合体(C)>
複合ゴム状重合体(C)は、ポリオルガノシロキサン(A)とアルキル(メタ)アクリレート系重合体(B)とが複合した複合ゴムである。
複合ゴム状重合体(C)の平均粒子径は特に制限されないが、0.1〜1μmが好ましく、0.2〜0.5μmがより好ましい。平均粒子径が上記範囲内であれば、成形品の耐衝撃性がより向上する。
複合ゴム状重合体(C)の平均粒子径は、粒度分布測定器を用いて体積基準の粒子径分布を測定し、得られた粒子径分布より算出することができる。
(複合ゴム状重合体(C)の製造方法)
複合ゴム状重合体(C)の製造方法は特に制限されないが、ポリオルガノシロキサン(A)とアルキル(メタ)アクリレート系重合体(B)を各々含む複数のラテックスをヘテロ凝集もしくは共肥大化する方法;ポリオルガノシロキサン(A)およびアルキル(メタ)アクリレート系重合体(B)のいずれか一方を含むラテックス存在下で、他の一方の重合体を形成する単量体成分を重合させて複合化させる方法などが挙げられる。
特に複合ゴム状重合体(C)の体積平均粒子径を上述した範囲内となるように容易に調整できることから、ラテックス状のポリオルガノシロキサン(A)の存在下で、アルキル(メタ)アクリレート単量体を1種以上含む単量体成分をラジカル重合させて共重合体ラテックスを得た後(ラジカル重合工程)、該共重合体ラテックスと酸基含有共重合体ラテックスとを混合することにより、共重合体ラテックスを肥大化させる(肥大化工程)方法が好ましい。さらに、共重合体ラテックスと酸基含有共重合体ラテックスとを混合する前に、共重合体ラテックスに縮合酸塩を添加することが好ましい。
ラジカル重合工程:
ラジカル重合工程は、ラテックス状のポリオルガノシロキサン(A)の存在下で、アルキル(メタ)アクリレート単量体を1種以上含む単量体成分をラジカル重合する工程である。
アルキル(メタ)アクリレート単量体を1種以上含む単量体成分は、ラテックス状のポリオルガノシロキサン(A)に一括して添加してもよいし、連続的に、あるいは断続的に添加してもよい。
アルキル(メタ)アクリレート単量体を1種以上含む単量体成分をラジカル重合させる際には、必要に応じてグラフト交叉剤や架橋剤を用いてもよい。
グラフト交叉剤、架橋剤としては、例えば、メタクリル酸アリル、シアヌル酸トリアリル、イソシアヌル酸トリアリル、ジビニルベンゼン、ジメタクリル酸エチレングリコールジエステル、ジメタクリル酸プロピレングリコールジエステル、ジメタクリル酸1,3−ブチレングリコールジエステル、ジメタクリル酸1,4−ブチレングリコールジエステルなどが挙げられる。これらは、1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
ラジカル重合には、通常、ラジカル重合開始剤および乳化剤を用いる。
ラジカル重合開始剤としては、過酸化物、アゾ系開始剤、酸化剤と還元剤とを組み合わせたレドックス系開始剤などが挙げられる。これらの中では、レドックス系開始剤が好ましく、特に硫酸第一鉄とエチレンジアミン四酢酸二ナトリウム塩とナトリウムホルムアルデヒドスルホキシレートとハイドロパーオキサイドとを組み合わせたスルホキシレート系開始剤が好ましい。
乳化剤としては特に制限されないが、ラジカル重合時のラテックスの安定性に優れ、重合率を高められることから、サルコシン酸ナトリウム、脂肪酸カリウム、脂肪酸ナトリウム、アルケニルコハク酸ジカリウム、ロジン酸石鹸等の各種カルボン酸塩が好ましい。これらの中では、得られるグラフト共重合体(E)およびこれを含む熱可塑性樹脂組成物を高温成形した際にガス発生を抑制できることから、アルケニルコハク酸ジカリウムが好ましい。
複合ゴム状重合体(C)におけるポリオルガノシロキサン(A)とアルキル(メタ)アクリレート系重合体(B)との比率は特に制限されないが、成形品の耐衝撃性と表面外観がより優れたものとなることから、ポリオルガノシロキサン(A)とアルキル(メタ)アクリレート系重合体(B)との合計を100質量%としたときに、ポリオルガノシロキサン(A)の割合が2〜14質量%であることが好ましい。
肥大化工程:
肥大化工程は、ラジカル重合工程にて得られる共重合体ラテックスと、酸基含有共重合体ラテックスとを混合することにより、共重合体ラテックスを肥大化させる工程である。
肥大化に用いる酸基含有共重合体ラテックスは、水中にて、酸基含有単量体、アルキル(メタ)アクリレート単量体、および必要に応じてこれらと共重合可能な他の単量体を含む単量体成分を重合して得られる酸基含有共重合体のラテックスである。
酸基含有単量体としては、カルボキシ基を有する不飽和化合物が好ましく、該化合物としては、(メタ)アクリル酸、イタコン酸、クロトン酸等が挙げられ、(メタ)アクリル酸が特に好ましい。酸基含有単量体は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
アルキル(メタ)アクリレート単量体としては、アクリル酸および/またはメタクリル酸と、炭素数1〜12の直鎖または分岐のアルキル基を有するアルコールとのエステルが挙げられ、例えば、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸t−ブチル、アクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸t−ブチル、メタクリル酸2−エチルヘキシルなどが挙げられ、炭素数1〜8のアルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレートが特に好ましい。アルキル(メタ)アクリレート単量体は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
他の単量体は、酸基含有単量体およびアルキル(メタ)アクリレート単量体と共重合可能な単量体であり、かつ酸基含有単量体およびアルキル(メタ)アクリレート単量体以外の単量体である。他の単量体としては、芳香族ビニル化合物(例えば、スチレン、α−メチルスチレン、p−メチルスチレン等)、シアン化ビニル化合物(例えば、アクリロニトリル、メタクリロニトリル等)、2つ以上の重合性官能基を有する化合物(例えば、メタクリル酸アリル、ジメタクリル酸ポリエチレングリコールエステル、シアヌル酸トリアリル、イソシアヌル酸トリアリル、トリメリット酸トリアリル等)などが挙げられる。他の単量体は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
これら単量体の使用量としては、酸基含有共重合体ラテックスの固形分100質量%中の割合として、酸基含有単量体単位が5〜40質量%となる量、アルキル(メタ)アクリレート単量体単位が60〜95質量%となる量、他の単量体単位が0〜48質量%となる量が好ましく、酸基含有単量体単位が8〜30質量%となる量、アルキル(メタ)アクリレート単量体単位が70〜92質量%となる量、他の単量体単位が0〜30質量%となる量がより好ましい。酸基含有単量体単位の割合が5質量%以上、アルキル(メタ)アクリレート単量体単位の割合が95質量%以下であれば、十分な肥大化能力が得られる。また、酸基含有単量体単位の割合が40質量%以下、アルキル(メタ)アクリレート単量体単位の割合が60質量%以上であれば、酸基含有共重合体ラテックス製造の際に多量の凝塊物が生成するのを抑制できる。また、他の単量体単位が48質量%以下であれば、得られる酸基含有共重合体ラテックスが十分な肥大化能力を有することができる。
酸基含有共重合体ラテックスは一般的な乳化重合法により製造することができる。
乳化重合で使用される乳化剤としては、オレイン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ロジン酸のアルカリ金属塩、アルケニルコハク酸のアルカリ金属塩等で例示されるカルボン酸系の乳化剤;アルキル硫酸エステル、アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム、アルキルスルホコハク酸ナトリウム、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル硫酸エステルナトリウム等の中から選ばれたアニオン系乳化剤など、公知の乳化剤が挙げられる。これら乳化剤は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
乳化剤の使用方法としては、重合初期に全量を一括して添加してもよいし、連続的に、あるいは断続的に添加してもよい。乳化剤量やその使用方法によっては、酸基含有共重合体ラテックスの粒子径を、ひいては粒径肥大化された複合ゴム状重合体(C)ラテックスの粒子径に影響を及ぼす場合があるため、適正な量および使用方法を選択することが好ましい。
乳化重合に用いる重合開始剤としては、熱分解型開始剤やレドックス型開始剤等が使用できる。熱分解型開始剤としては、過硫酸カリウム、過硫酸ナトリウム、過硫酸アンモニウム等が挙げられ、レドックス型開始剤としては、クメンハイドロパーオキシドに代表される有機過酸化物−ナトリウムホルムアルデヒドスルホキシレート−鉄塩等の組み合わせが例示される。これら重合開始剤は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
乳化重合の際には、分子量を調整するためにメルカプタン類(例えばt−ドデシルメルカプタン、n−オクチルメルカプタン等)、テルピノレン、α−メチルスチレンダイマー等の連鎖移動剤を使用したり、pHを調節するためにアルカリや酸、減粘剤として電解質を添加したりすることもできる。
肥大化工程における酸基含有共重合体ラテックスの添加量(固形分換算量)は、複合ゴム状重合体(C)の体積平均粒子径が上述した範囲内となるように調整すればよいが、通常は、ラジカル重合工程にて得られる共重合体ラテックスの固形分100質量部に対し、0.1〜5質量部が好ましく、0.3〜3質量部がより好ましい。酸基含有共重合体ラテックスの添加量が0.1質量部以上であれば、肥大化が十分に進行する。また、凝塊物が多量に発生するのを抑制できる。一方、酸基含有共重合体ラテックスの添加量が5質量部以下であれば、肥大化ラテックスのpHが低下するのを抑制でき、ラテックスが不安定になりにくい。
酸基含有共重合体ラテックスは、共重合体ラテックスに一括して添加してもよいし、滴下により連続的または断続的に添加してもよい。
なお、肥大化工程に先立ち、共重合体ラテックスに縮合酸塩を添加することがさらに好ましい。酸基含有共重合体ラテックスを添加する前に共重合体ラテックスに縮合酸塩を添加しておけば、肥大化が進行し易くなることで酸基含有共重合体ラテックスの添加量を減らすことが可能となり、複合ゴム状重合体(C)の体積平均粒子径および粒子径分布を上述した範囲内に調整することが容易になる。
縮合酸塩としては、例えばリン酸、ケイ酸等の縮合酸と、アルカリ金属および/またはアルカリ土類金属との塩が用いられる。これらの中でも、リン酸の縮合酸であるピロリン酸とアルカリ金属の塩が好ましく、ピロリン酸ナトリウムまたはピロリン酸カリウムが特に好ましい。
縮合酸塩の添加量は、複合ゴム状重合体(C)の体積平均粒子径および粒子径分布が上述した範囲内となるように調整すればよいが、通常は、ラジカル重合工程にて得られる共重合体ラテックスの固形分100質量部に対し、0.1〜5質量部とすることが好ましく、0.3〜3質量部がより好ましい。縮合酸塩の添加量が0.1質量部以上であれば肥大化が十分に進行し、5質量部以下であれば肥大化が十分に進行する、あるいはゴムラテックスが安定化しやすく、多量の凝塊物が発生するのを抑制できる。
縮合酸塩は、共重合体ラテックスに一括して添加することが好ましい。
共重合体ラテックスと縮合酸塩との混合物の25℃におけるpHは7以上10以下であることが好ましい。pHが7以上10以下であれば肥大化が十分に進行しやすくなる。pHを7以上とするために、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどの一般的なアルカリ化合物を使用することができる。
肥大化時の攪拌は適度に制御することが好ましい。攪拌が不十分な場合には、局部的に肥大化が進行することにより未肥大のゴム状重合体が残留することがある。一方、過度に攪拌を行うと、肥大化ラテックスが不安定になり、凝塊物が多量に発生することがある。
肥大化を行う際の温度は特に制限されないが、20〜90℃が好ましく、30〜80℃がより好ましい。温度がこの範囲外であると、肥大化が十分に進行しない場合がある。
なお、複合ゴム状重合体(C)は、上記のように酸基含有共重合体ラテックスを用いて肥大化した後、アルキル(メタ)アクリレート単量体を1種以上含む単量体成分をさらに添加して重合させることにより製造してもよい。
グラフト共重合体(E)は、種々のビニル系単量体を重合することによって得られるビニル系重合体(D)が、上記複合ゴム状重合体(C)にグラフトされた形態を有している。
ビニル系単量体としては特に制限されないが、例えば芳香族ビニル化合物、(メタ)アクリル酸アルキルエステル、シアン化ビニル化合物などが挙げられる。
芳香族ビニル化合物としては、例えばスチレン、α−メチルスチレン、p−メチルスチレンなどが挙げられる。
(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、例えばメタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸t−ブチルなどが挙げられる。
シアン化ビニル化合物としては、例えばアクリロニトリル、メタクリロニトリルなどが挙げられる。
これらのビニル系単量体は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
上述したビニル系単量体の中でも、成形品の耐衝撃性がより向上することから、スチレンとアクリロニトリルとを併用することが好ましい。
グラフト共重合体(E)は、複合ゴム状重合体(C)にビニル系重合体(D)をグラフト重合して得られる。
グラフト重合を行う方法としては特に制限されないが、反応が安定して進行するように制御可能であることから乳化重合が好ましい。具体的には、複合ゴム状重合体(C)にビニル系単量体を一括して仕込んだ後に重合する方法;複合ゴム状重合体(C)にビニル系単量体の一部を先に仕込み、随時重合させながら残りを重合系に滴下する方法;複合ゴム状重合体(C)にビニル系単量体の全量を滴下しながら随時重合する方法などが挙げられ、これらを1段ないしは2段以上に分けて行うことができる。また、各段におけるビニル系単量体の種類や組成比を変えて行うことも可能である。
複合ゴム状重合体(C)とビニル系重合体(D)の質量比は特に制限されないが、複合ゴム状重合体(C)を10〜80質量%、ビニル系重合体(D)を20〜90質量%とすることが好ましく、複合ゴム状重合体(C)を30〜70質量%、ビニル系重合体(D)を30〜70質量%とすることがより好ましい(ただし、複合ゴム状重合体(C)とビニル系重合体(D)の合計を100質量%とする。)。かかる質量比でグラフト重合すると、成形品の耐衝撃性がより優れたものとなる傾向にある。
グラフト重合には、通常、ラジカル重合開始剤及び乳化剤を用いる。
ラジカル重合開始剤としては、過酸化物、アゾ系開始剤、酸化剤と還元剤とを組み合わせたレドックス系開始剤などが挙げられる。これらの中では、レドックス系開始剤が好ましく、特に硫酸第一鉄と、エチレンジアミン四酢酸二ナトリウム塩と、ナトリウムホルムアルデヒドスルホキシレートと、ハイドロパーオキサイドとを組み合わせたスルホキシレート系開始剤が好ましい。
また、ラジカル重合を行う際には、得られるグラフト共重合体(E)の分子量やグラフト率を制御するため、各種公知の連鎖移動剤を添加してもよい。
乳化剤としては特に制限されないが、ラジカル重合時のラテックスの安定性に優れ、重合率を高められることから、サルコシン酸ナトリウム、脂肪酸カリウム、脂肪酸ナトリウム、アルケニルコハク酸ジカリウム、ロジン酸石鹸等の各種カルボン酸塩が挙げられる。これらの中では、得られるグラフト共重合体(E)及びこれを含む熱可塑性樹脂組成物を高温成形した際にガスの発生を抑制できることから、アルケニルコハク酸ジカリウムが好ましい。
グラフト共重合体(E)は、通常、ラテックスの状態で得られる。グラフト共重合体(E)のラテックスからグラフト共重合体(E)を回収する方法としては、例えばグラフト共重合体(E)のラテックスを、凝固剤を溶解させた熱水中に投入することによってスラリー状に凝析する湿式法;加熱雰囲気中にグラフト共重合体(E)のラテックスを噴霧することによって半直接的にグラフト共重合体(E)を回収するスプレードライ法などが挙げられる。
湿式法に用いる凝固剤としては、硫酸、塩酸、リン酸、硝酸等の無機酸;塩化カルシウム、酢酸カルシウム、硫酸アルミニウム等の金属塩などが挙げられ、重合で用いた乳化剤に応じて選定される。例えば、乳化剤として脂肪酸石鹸やロジン酸石鹸等のカルボン酸石鹸のみが使用されている場合には、上述した凝固剤の1種以上を用いることができる。また、乳化剤としてアルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム等の酸性領域でも安定な乳化力を示す乳化剤を使用した場合には、凝固剤としては金属塩が好適である。
湿式法を用いると、スラリー状のグラフト共重合体(E)が得られる。このスラリー状のグラフト共重合体(E)から乾燥状態のグラフト共重合体(E)を得る方法としては、まず残存する乳化剤残渣を水中に溶出させて洗浄し、次いで、このスラリーを遠心またはプレス脱水機等で脱水した後に気流乾燥機等で乾燥する方法;圧搾脱水機や押出機等で脱水と乾燥とを同時に実施する方法などが挙げられる。かかる方法によって、粉体または粒子状の乾燥グラフト共重合体(E)が得られる。
洗浄条件としては特に制限されないが、乾燥後のグラフト共重合体(E)100質量%中に含まれる乳化剤残渣量が0.5〜2質量%の範囲となる条件で洗浄することが好ましい。グラフト共重合体(E)中の乳化剤残渣が0.5質量%以上であれば、得られるグラフト共重合体(E)及びこれを含む熱可塑性樹脂組成物の流動性がより向上する傾向にある。一方、グラフト共重合体(E)中の乳化剤残渣が2質量%以下であれば、熱可塑性樹脂組成物を高温成形した際にガスの発生を抑制できる。
なお、圧搾脱水機や押出機から排出されたグラフト共重合体(E)を回収せず、直接、熱可塑性樹脂組成物を製造する押出機や成形機に送って成形品としてもよい。
(他の樹脂)
熱可塑性樹脂組成物は、上述したグラフト共重合体(E)のみを含むものでもよいが、得られる熱可塑性樹脂組成物の成形性や、成形品の成形外観の観点から、グラフト共重合体(E)以外の熱可塑性樹脂(他の熱可塑性樹脂(F))をさらに含むことが好ましい。
他の熱可塑性樹脂(F)としては特に制限されないが、例えばアクリロニトリル−スチレン共重合体(AS樹脂)、アクリロニトリル−α−メチルスチレン共重合体(αSAN樹脂)、スチレン−無水マレイン酸共重合体、アクリロニトリル−スチレン−N−置換マレイミド三元共重合体、スチレン−無水マレイン酸−N−置換マレイミド三元共重合体、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体(ABS樹脂)、アクリロニトリル−スチレン−アルキル(メタ)アクリレート共重合体(ASA樹脂)、アクリロニトリル−エチレン−プロピレン−ジエン−スチレン共重合体(AES樹脂)、ポリメタクリル酸メチル、ポリカーボネート樹脂、ポリブチレンテレフタレート(PBT樹脂)、ポリエチレンテレフタレート(PET樹脂)、ポリ塩化ビニル、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン、スチレン−ブタジエン−スチレン(SBS)、スチレン−ブタジエン(SBR)、水素添加SBS、スチレン−イソプレン−スチレン(SIS)等のスチレン系エラストマー、各種オレフィン系エラストマー、各種ポリエステル系エラストマー、ポリスチレン、メチルメタクリレート−スチレン共重合体(MS樹脂)、アクリロニトリル−スチレン−メタクリル酸メチル共重合体、ポリアセタール樹脂、変性ポリフェニレンエーテル(変性PPE樹脂)、エチレン−酢酸ビニル共重合体、PPS樹脂、PES樹脂、PEEK樹脂、ポリアリレート、液晶ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂(ナイロン)などが挙げられる。
これら他の熱可塑性樹脂(F)は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
熱可塑性樹脂組成物中のグラフト共重合体(E)の含有量は20〜60質量%であることが好ましく、他の熱可塑性樹脂(F)の含有量は40〜80質量%(ただし、グラフト共重合体(E)と他の熱可塑性樹脂(F)の合計を100質量%とする。)であることが好ましい。グラフト共重合体(E)の含有量が20質量%以上(他の熱可塑性樹脂(F)の含有量が80質量%以下)であれば、成形品の耐衝撃性がより高まる。一方、グラフト共重合体(E)の含有量が60質量%以下(他の熱可塑性樹脂(F)の含有量が40質量%以上)であれば、熱可塑性樹脂組成物が十分な成形性を有する。
<任意成分>
本発明の熱可塑性樹脂組成物は、上述したグラフト共重合体(E)、他の熱可塑性樹脂(F)の他にも、光の吸収性や反射性を阻害しない範囲で、必要に応じて任意成分を含有してもよい。
任意成分としては、例えば酸化防止剤や光安定剤等の各種安定剤、滑剤、可塑剤、離型剤、染料、顔料、帯電防止剤、難燃剤、金属粉末、無機充填剤など添加剤が挙げられる。
<製造方法>
熱可塑性樹脂組成物は、グラフト共重合体(E)と、必要に応じて他の熱可塑性樹脂(F)と、任意成分とをV型ブレンダやヘンシェルミキサー等により混合分散させ、これにより得られた混合物をスクリュー式押出機、バンバリーミキサ、加圧ニーダ、ミキシングロール等の溶融混練機等を用いて溶融混練することにより製造される。また、必要に応じてペレタイザー等を用いて溶融混練物をペレット化してもよい。
<380nm〜780nmの光線反射率の平均値(可視%R)>
本発明の熱可塑性樹脂組成物は、波長380nm〜780nmの範囲の光線反射率の平均値(可視%R)が5%〜10%であることが必要である。ここで光線反射率とは、熱可塑性樹脂組成物を2mmの厚さに成形して得られる試験片についての測定値である。光線反射率が10%以下では、可視光領域の光の反射量が少なく、成形品の色調が好ましい。
<780nm〜1180nmの光線吸収率の平均値(近赤外%A)>
本発明の熱可塑性樹脂組成物は、波長780nm〜1180nmの範囲の光線吸収率の平均値(近赤外%A)が25%〜93%であることが必要である。ここで光線吸収率(%A)とは、光線反射率(%R)と光線透過率(%T)の測定値を用い、次式(1)により算出される。光線反射率は、熱可塑性樹脂組成物を2mmの厚さに成形して得られる試験片についての測定値である。光線透過率は、熱可塑性樹脂組成物を0.1mmの厚さに成形して得られる試験片についての測定値である。光線吸収率が93%以下であれば、近赤外領域の光の吸収量が過剰にならず、成形品を吸収材として用い、前記吸収材と透過材とをレーザー溶着した際に焦げや変色が発生せず、溶着外観が低下することを防ぐことができる。光線吸収率が25%以上であると、近赤外領域の光の吸収量が多くなるため、レーザー溶着後に十分な接合強度が得られる。
光線吸収率(%A)=100−光線透過率(%T)−光線反射率(%R)・・・(1)
<光学特性の比率>
本発明の熱可塑性樹脂組成物は、近赤外領域の光線吸収率の平均値と、可視光領域の光線反射率の平均値との比(近赤外%A/可視%R)が16.5〜4.5であることが好ましく、10.0〜5.0であることが更に好ましい。16.5以下であれば、近赤外領域の光の吸収が制御され、レーザー溶着後の外観の焦げや変色がより抑制される傾向にある。一方、4.5以上であれば、レーザー溶着後に十分な接合強度が得られやすくなり、成形品の色調もより優れる傾向にある。
<作用効果>
以上説明した本発明の熱可塑性樹脂組成物は、グラフト共重合体(E)を含有し、試験片の可視光領域の光線反射率および近赤外光領域の光線吸収率が特定の数値を有するので、色調とレーザー溶着後の外観に優れ、かつ樹脂部材として十分な耐衝撃性と耐候性を有した成形品を得ることができる。
本発明の熱可塑性樹脂組成物は、成形品とした際に、色調に優れ、レーザー溶着後の外観の焦げや変色が抑制され、十分な接合強度を発現することが可能であり、しかも樹脂部材として十分な耐衝撃性と耐候性を有している。よって、本発明の熱可塑性樹脂組成物は、灯具・内装・外装などの車両用部品、OA機器や家電部品、医療用器具、各種工業用材料として好適な成形品を得ることができる。
「成形品」
本発明の成形品は、上述した本発明の熱可塑性樹脂組成物を公知の成形方法によって成形してなるものである。
成形方法としては、例えば射出成形法、プレス成形法、押出成形法、真空成形法、ブロー成形法等が挙げられる。
本発明の成形品は、色調に優れ、かつレーザー溶着後の外観に焦げや変色が抑制され、十分な接合強度を発現することが可能であり、しかも樹脂部材として十分な耐衝撃性と耐候性を有する。
成形品の用途としては、灯具・内装・外装等の車両用部品、OA機器や家電部品、医療用器具、各種工業用材料などが挙げられ、車両用灯具が好適である。
本発明の成形品は、レーザー溶着により他の成形品と溶着し、樹脂接合体とすることができる。レーザー溶着する際、本発明の成形品をレーザー光を吸収する「吸収材」として用い、他の成形品をレーザー光を透過する「透過材」として用いる。
透過材の材料としては、レーザー光を透過できるものであれば特に制限されないが、例えばアクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂などが挙げられる。
本発明により得られる樹脂接合体は、接合部において焦げや変色が抑制され、外観に優れる。しかも、十分な接合強度を発現できる。
以下、実施例及び比較例により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。なお、以下の例中の「%」及び「部」は明記しない限りは質量基準である。
以下の実施例及び比較例における各種測定及び評価方法は、以下の通りである。
「測定・評価」
<光線反射率(%R)の測定>
4オンス射出成形機(株式会社日本製鋼所製)を用い、シリンダー設定温度260℃、金型温度60℃、射出率20g/秒の条件で、ペレット状の熱可塑性樹脂組成物から、長さ100mm、幅100mm、厚み2mmの板状の試験片(成形品)を作製した。次いで標準白板(BaSO4)の全反射率を100%として、波長380nm〜1180nmの光の全反射率を、分光光度計(株式会社日本分光製、「V−770」)を用いて、波長間隔1nmで測定した。
<光線透過率(%T)の測定>
設定温度250℃で、ペレット状の熱可塑性樹脂組成物から、厚み0.1mmのフィルム状の試験片を作製した。次いで波長380nm〜1180nmの光の透過率を、分光光度計(株式会社日本分光製、「V−770」)を用いて、波長間隔1nmで測定した。
<光線吸収率(%A)の算出>
測定した光線反射率(%R)および光線透過率(%T)を用い、式(1)に従って、波長380nm〜1180nmの光の吸収率を、波長間隔1nmで算出した。
<耐衝撃性の評価>
ISO 3167に準拠して、射出成形機(東芝機械株式会社製、「IS55FP−1.5A」)を用い、ペレット状の熱可塑性樹脂組成物から、試験片(成形品)を作製した。得られた試験片のシャルピー衝撃強度をISO 179に準拠して、23℃雰囲気下で測定した。
<レーザー溶着外観の評価>
4オンス射出成形機(株式会社日本製鋼所製)を用い、シリンダー設定温度260℃、金型温度60℃、射出率20g/秒の条件で、ペレット状のアクリル樹脂から、長さ100mm、幅100mm、厚み2mmの板状の試験片(成形品)を作製し、これを透過材として用いた。
一方、吸収材としては、ペレット状の本発明の熱可塑性樹脂組成物を用い、前記アクリル樹脂と同等の条件で作製した試験片を用いた。
吸収材と透過材を重ね合わせ、レーザー樹脂溶着装置(株式会社ファインディバイス社製)を用い、下記条件でレーザー光を透過材側から照射して吸収材と溶着させ、樹脂接合体を得た。得られた樹脂接合体の接合部における溶着外観を目視で評価した。
(溶着条件)
・出力:6W
・焦点径:3mm
・走査速度:5mm/秒
・溶着長:20mm
・圧力:0.5MPa
<色調の評価>
光線反射率の測定に使用したものと同じ試験片を用い、測色計により明度(L値)を測定した。L値が低いほど濃色となり、色調に優れる。
<耐候性の評価>
光線反射率の測定に使用したものと同じ試験片を用い、スガ試験機株式会社製の「サンシャインスーパーロングライフウェザーメーターWEL−SUN−DCH型」にて、63℃、サイクル条件;60分(降雨:12分)の環境下に1000時間暴露した。1000時間の暴露前後の成形品の変色の度合い(ΔE)を、測色計を用いて測定した。
「ポリオルガノシロキサンの製造」
<製造例1:ポリオルガノシロキサン(A)の製造>
オクタメチルシクロテトラシロキサン98部、γ−メタクリロイルオキシプロピルジメトキシメチルシラン2部を混合してシロキサン混合物100部を得た。これに、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム0.67部、イオン交換水300部からなる水溶液を添加し、ホモミキサーにて10000回転/分で2分間撹拌した後、ホモジナイザーに300kg/cmの圧力で2回通し、安定な予備混合オルガノシロキサンラテックスを得た。
別途、試薬注入容器、冷却管、ジャケット加熱機および攪拌装置を備えた反応器内に、ドデシルベンゼンスルホン酸10部と、イオン交換水90部とを投入し、10%のドデシルベンゼンスルホン酸水溶液(酸触媒水溶液)を調製した。
この酸触媒水溶液を85℃に加熱した状態で、予備混合オルガノシロキサンラテックスを2時間にわたって滴下し、滴下終了後3時間その温度を維持した後、40℃以下に冷却した。次いで、この反応物を10%水酸化ナトリウム水溶液でpH7.0に中和して、ポリオルガノシロキサン(A)のラテックスを得た。
得られたポリオルガノシロキサン(A)のラテックスを180℃で30分乾燥して固形分を求めたところ18.2%であった。また、質量基準の平均粒子径は30nmであった。
「酸基含有共重合体ラテックスの製造」
<製造例2:酸基含有共重合体ラテックス(K)の製造>
試薬注入容器、冷却管、ジャケット加熱機および撹拌装置を備えた反応器内に、イオン交換水200部、オレイン酸カリウム2部、ジオクチルスルホコハク酸ナトリウム4部、硫酸第一鉄七水塩0.003部、エチレンジアミン四酢酸二ナトリウム塩0.009部、ナトリウムホルムアルデヒドスルホキシレート0.3部を窒素気流下で仕込み、60℃に昇温した。60℃になった時点から、アクリル酸n−ブチル85部、メタクリル酸15部、クメンヒドロパーオキサイド0.5部からなる混合物を120分かけて連続的に滴下した。滴下終了後、さらに2時間、60℃を維持した状態で熟成を行い、固形分が33%、重合転化率が96%、酸基含有共重合体の体積平均粒子径が120nmである酸基含有共重合体ラテックス(K)を得た。
「グラフト共重合体(E)の製造」
<製造例3:グラフト共重合体(E−1)の製造>
試薬注入容器、冷却管、ジャケット加熱機及び攪拌装置を備えた反応器内に、ポリオルガノシロキサン(A)のラテックスを固形分換算で2.0部と、アルケニルコハク酸ジカリウム0.8部と、イオン交換水190部とを仕込んで混合した。次いで、アクリル酸n−ブチル48.0部、メタクリル酸アリル0.6部、ジメタクリル酸1,3−ブチレングリコールジエステル0.1部、t−ブチルハイドロパーオキサイド0.1部からなる混合物を添加した。この反応器に窒素気流を通じることによって雰囲気の窒素置換を行い、内温を60℃まで昇温した。内温が60℃に達した時点で、硫酸第一鉄七水塩0.000075部、エチレンジアミン四酢酸二ナトリウム塩0.00023部、ナトリウムホルムアルデヒドスルホキシレート0.2部、イオン交換水10部からなる水溶液を添加し、ラジカル重合を開始させた。重合発熱が確認された後、ジャケット温度を75℃とし、重合発熱が確認されなくなるまで重合を継続し、さらに1時間この状態を維持し、ポリオルガノシロキサンとポリブチルアクリレートゴムとが複合した複合ゴムを得た(ラジカル重合工程)。得られた複合ゴムの体積平均粒子径は90nmであった。
反応器内部の液温が70℃に低下した後、5%ピロリン酸ナトリウム水溶液を固形分として0.60部添加した。内温70℃で制御した後、酸基含有共重合体ラテックス(K)を固形分として0.60部添加し、30分撹拌、肥大化を行い、複合ゴム状重合体(C)のラテックスを得た(肥大化工程)。
得られたラテックス状の複合ゴム状重合体(C)の体積平均粒子径は0.2μmであった。
得られた複合ゴム状重合体のラテックスに、硫酸第一鉄七水塩0.001部、エチレンジアミン四酢酸二ナトリウム塩0.003部、ロンガリット0.3部、イオン交換水10部からなる水溶液を添加した。次いで、アクリロニトリル10部、スチレン30部、t−ブチルハイドロパーオキサイド0.18部からなる混合液を80分間にわたって滴下し、重合した。滴下終了後、温度75℃の状態を30分保持した後、アクリロニトリル2.5部、スチレン7.5部、t−ブチルハイドロパーオキサイド0.05部、n―オクチルメルカプタン0.02部からなる混合物を20分にわたって滴下し、重合した。滴下終了後、温度75℃の状態を30分保持した後、クメンヒドロパーオキシド0.05部を添加し、さらに温度75℃の状態を30分保持した後、冷却し、複合ゴム状重合体(C)に、アクリロニトリルとスチレンをグラフト重合させたシリコーン/アクリル複合ゴム系のグラフト共重合体(E−1)のラテックスを得た。
次いで、1%酢酸カルシウム水溶液150部を60℃に加熱し、この中へグラフト共重合体(E−1)のラテックス100部を徐々に滴下して凝固した。そして、析出物を分離し、脱水、洗浄した後に乾燥して、グラフト共重合体(E−1)を得た。
<製造例4:グラフト共重合体(E−2)の製造>
試薬注入容器、冷却管、ジャケット加熱機及び攪拌装置を備えた反応器内に、イオン交換水150部、ポリブタジエンラテックス(体積平均粒子径0.2μm)を固形分換算で50部、不均化ロジン酸カリウム1部、水酸化カリウム0.03部を仕込み、60℃に加熱後、硫酸第一鉄七水塩0.007部、ピロリン酸ナトリウム0.1部、結晶ブドウ糖0.3部を添加した。次いで、アクリロニトリル15部、スチレン35部、クメンハイドロパーオキサイド0.4部、t−ドデシルメルカプタン0.5部からなる混合液を120分間にわたって滴下し、重合した。滴下終了後、温度70℃の状態を60分保持した後、クメンハイドロパーオキサイド0.05部を添加し、さらに温度70℃の状態を30分保持した後、冷却し、ポリブタジエンに、アクリロニトリルとスチレンをグラフト重合させたポリブタジエン系のグラフト共重合体(E−2)のラテックスを得た。
次いで、ラテックスに酸化防止剤を添加し、1%硫酸水溶液150部を60℃に加熱し、この中へグラフト共重合体(E−2)のラテックス100部を徐々に滴下して凝固した。そして、析出物を分離し、脱水、洗浄した後に乾燥して、グラフト共重合体(E−2)を得た。
「他の熱可塑性樹脂(F)の製造」
<製造例5:他の熱可塑性樹脂(F−1)の製造>
アクリロニトリル27部及びスチレン73部を公知の懸濁重合により重合し、N,N−ジメチルホルムアミド溶液から25℃で測定した還元粘度が0.61dl/gであるアクリロニトリル−スチレン共重合体を得た。これを他の熱可塑性樹脂(F−1)として用いた。
<製造例6:他の熱可塑性樹脂(F−2)の製造>
アクリロニトリル19部、スチレン53部及びN−フェニルマレイミド28部を公知の連続溶液重合により重合し、N,N−ジメチルホルムアミド溶液から25℃で測定した還元粘度が0.65dl/gであるアクリロニトリル−スチレン−N−フェニルマレイミド三元共重合体を得た。これを他の熱可塑性樹脂(F−2)として用いた。
<任意成分>
顔料として、以下を用いた。
・カーボンブラック:三菱化学株式会社製「#960」
・酸化鉄:戸田工業株式会社製「KN−320」
・酸化チタン:テイカ株式会社製「JR−407」
染料として、以下を用いた。
・ペリノン系染料:ランクセス株式会社「MACROLEX Orange 3G」
・アンスラキノン系染料:ランクセス株式会社「MACROLEX Red Violet R」
・アンスラキノン系染料:ランクセス株式会社「MACROLEX Green 5B」
「実施例1〜4、比較例1〜6」
表1〜2に示す量のグラフト共重合体(E)、他の熱可塑性樹脂(F)、カーボンブラック、酸化チタン、酸化鉄、及び染料と、エチレンビスステアリルアミド1部と、シリコーンオイルSH200(東レ・ダウコーニング株式会社製)0.2部と、アデカスタブAO−60(株式会社ADEKA製)0.2部と、アデカスタブLA−57(株式会社ADEKA製)0.4部とをヘンシェルミキサーを用いて混合した。スクリュー式押出機(株式会社日本製鋼所製、「TEX−30α型二軸押出機」)を用いて、得られた混合物を250℃にて溶融混練した後、ペレタイザーにてペレット化した熱可塑性樹脂組成物を得た。
得られたペレット状の熱可塑性樹脂組成物を用いて試験片(成形品)を作製し、光線反射率および光線透過率を測定し、光線吸収率を算出し、耐衝撃性、レーザー溶着外観、色調および耐候性を評価した。これらの結果を表1〜2に示す。
Figure 0006795308
Figure 0006795308
表1〜2中の近赤外%A/可視%Rは、近赤外領域の光線吸収率の平均値を近赤外%A、可視光領域の光線反射率の平均値を可視%Rとした場合の、可視%Rに対する近赤外%Aの割合である。
表1〜2に示すように、各実施例で得られた熱可塑性樹脂組成物からは、耐衝撃性と耐候性に優れ、レーザー溶着外観に優れ、しかも色調にも優れた成形品が得られた。また、各実施例で得られた樹脂接合体は、透過材と吸収材とが十分に接合していた。
一方、各比較例の場合、成形品の耐衝撃性、耐候性、レーザー溶着外観、色調のいずれかの項目に劣る結果となった。
具体的には、比較例1の場合、可視%Rが10%以上であったため、色調に劣っていた。
比較例2の場合、近赤外%Aが93%以上であったため、レーザー溶着外観が劣っていた。
比較例3の場合、近赤外%Aが25%未満であったため、透過材と吸収材とが十分に接合していなかった。
比較例4、5の場合、グラフト共重合体に含有されるゴム状重合体が、ポリオルガノシロキサンとアルキル(メタ)アクリレート系重合体とが複合した複合ゴム状重合体でなかったため、耐候性に劣っていた。
比較例6の場合、グラフト共重合体を含有しなかったため、耐衝撃性に劣っていた。
本発明によれば、色調とレーザー溶着後の外観に優れ、かつ樹脂部材として十分な耐衝撃性と耐候性を有した成形品を得ることができる熱可塑性樹脂組成物を提供することができる。特に成形品の色調とレーザー溶着後の外観とのバランスは、従来知られている熱可塑性樹脂組成物では得られない非常に高いレベルであり、灯具・内装・外装などの車両用部品、OA機器や家電部品、医療用器具、各種工業用材料としての利用価値は極めて高い。

Claims (3)

  1. ポリオルガノシロキサン(A)とアルキル(メタ)アクリレート系重合体(B)とが複合した複合ゴム状重合体(C)にビニル系重合体(D)がグラフトされたグラフト共重合体(E)と、カーボンブラックを含む顔料と、を含む熱可塑性樹脂組成物の製造方法であって、
    光線反射率(%R)、および下記式(1)で表される光線吸収率(%A)、可視光領域から近赤外光領域において、波長間隔1nmで測定したとき、
    380nm〜780nmの光線反射率の平均値(可視%R)が5%〜10%、
    780nm〜1180nmの光線吸収率の平均値(近赤外%A)が25%〜93%、であることを満たすように、前記光線反射率(%R)および前記光線吸収率(%A)を前記カーボンブラックを含む顔料の配合量によって調節することを特徴とする、熱可塑性樹脂組成物の製造方法
    光線吸収率(%A)=100−光線透過率(%T)−光線反射率(%R)・・・(1)
  2. 近赤外領域の光線吸収率の平均値と、可視光領域の光線反射率の平均値との比(近赤外%A/可視%R)が16.5〜4.5であることを特徴とする、請求項1に記載の熱可塑性樹脂組成物の製造方法
  3. 請求項1または2のいずれか一項に記載の熱可塑性樹脂組成物の製造方法によって熱可塑性組成物を製造し、次いで成形する、成形品の製造方法
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