JP2018188545A - 熱可塑性樹脂組成物およびその成形品 - Google Patents
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Abstract
Description
すなわち、本発明は、下記の態様を有する。
<2>前記酸化鉄(III)(C)の平均粒子径が、1μm以下である、前記<1>の熱可塑性樹脂組成物。
<3>前記<1>または<2>の熱可塑性樹脂組成物からなる成形品。
本発明の成形品は、色調、耐衝撃性、成形外観(蒸着外観)およびレーザー溶着外観に優れる。
「成形品」とは、熱可塑性樹脂組成物を成形してなるものである。
「色調が優れる」とは、成形品の黒味が深い(濃い)ことを意味する。
「レーザー溶着外観が優れる」とは、成形品をレーザー溶着した後、溶着部に外観不良がないことを意味する。
「外観不良」とは、溶着部における発泡、焦げ、変色、溶着不足等を意味する。
「アルキル(メタ)アクリレート」とは、アルキルアクリレートおよびアルキルメタクリレートの総称である。
本発明の熱可塑性樹脂組成物は、熱可塑性樹脂(A)と、カーボンブラック(B)と、酸化鉄(III)(C)とを含む。
本発明の熱可塑性樹脂組成物は、本発明の効果を損なわない範囲内において、必要に応じて熱可塑性樹脂(A)、カーボンブラック(B)および酸化鉄(III)(C)以外の他の添加剤を含んでいてもよい。
本発明の熱可塑性樹脂組成物は、熱可塑性樹脂(A)としてグラフト共重合体(A1)を含む。
本発明の熱可塑性樹脂組成物は、熱可塑性樹脂(A)としてグラフト共重合体(A1)のみを含んでいてもよく;グラフト共重合体(A1)と、グラフト共重合体(A1)以外の他の熱可塑性樹脂(A2)とを含んでいてもよい。本発明の熱可塑性樹脂組成物は、成形品の耐衝撃性と組成物の流動性とのバランスの点から、熱可塑性樹脂(A)として他の熱可塑性樹脂(A2)をさらに含むことが好ましい。
グラフト共重合体(A1)は、ゴム状重合体の存在下にビニル系単量体を重合して得られたものである。
なお、グラフト共重合体(A1)においては、ゴム状重合体の存在下にビニル系単量体がどのように重合しているか、特定することは困難である。例えば、ビニル系単量体が重合したビニル系重合体としては、ゴム状重合体に結合したものと、ゴム状重合体に結合していないものとが存在する。また、ゴム状重合体に結合したビニル系重合体の分子量、構成単位の割合等を特定することも困難である。すなわち、グラフト共重合体(A1)をその構造または特性により直接特定することが不可能であるか、またはおよそ実際的でないという事情(不可能・非実際的事情)が存在する。したがって、本発明においては、グラフト共重合体(A1)は「ゴム状重合体の存在下にビニル系単量体を重合して得られたもの」と規定することがより適切とされる。
秤量したゴム状重合体を、適当な溶剤に室温(23℃)で20時間かけて溶解させ、遠心分離した後、上澄みをデカンテーションによって除去して、残存した不溶分を60℃で24時間乾燥し、秤量する。最初に秤量したゴム状重合体に対する不溶分の割合(質量%)を求め、該割合をゴム状重合体のゲル含有量とする。ゴム状重合体の溶解に用いる溶剤としては、例えば、トルエン、アセトンが挙げられる。
芳香族ビニル化合物としては、例えば、スチレン、α−メチルスチレン、p−メチルスチレン等が挙げられる。アルキル(メタ)アクリレートとしては、例えば、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸t−ブチル等が挙げられる。シアン化ビニル化合物としては、例えば、アクリロニトリル、メタクリロニトリル等が挙げられる。ビニル系単量体は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。ビニル系単量体としては、成形品の耐衝撃性がより向上する点から、スチレンとアクリロニトリルとの併用が好ましい。すなわち、ビニル系重合体は、スチレン単位と、アクリロニトリル単位とを有することが好ましい。
重合法としては、反応が安定して進行するように制御可能である点から、乳化重合法が好ましい。具体的には、ゴム状重合体のラテックスにビニル系単量体を一括して仕込んだ後に重合する方法;ゴム状重合体のラテックスにビニル系単量体の一部を先に仕込み、随時重合させながら残りを重合系に滴下する方法;ゴム状重合体のラテックスにビニル系単量体の全量を滴下しながら随時重合する方法等が挙げられる。ビニル系単量体の重合は、1段で行ってもよく、2段以上に分けて行ってもよい。2段以上に分けて行う場合、各段におけるビニル系単量体の種類や組成比を変えて行うことも可能である。
ラジカル重合を行う際には、得られるグラフト共重合体(A1)の分子量やグラフト率を制御するため、各種公知の連鎖移動剤を添加してもよい。
ラジカル重合の条件としては、例えば、50〜100℃で1〜10時間の重合条件が挙げられる。
グラフト共重合体(A1)のラテックスからグラフト共重合体(A1)を回収する方法としては、例えば、グラフト共重合体(A1)のラテックスを、凝固剤を溶解させた熱水中に投入することによってスラリー状に凝析する湿式法;加熱雰囲気中にグラフト共重合体(A1)のラテックスを噴霧することによって半直接的にグラフト共重合体(A1)を回収するスプレードライ法等が挙げられる。
なお、圧搾脱水機や押出機から排出されたグラフト共重合体(A1)を回収せず、直接、押出機や成形機に送って成形品とすることも可能である。
他の熱可塑性樹脂(A2)としては、例えば、アクリロニトリル−スチレン共重合体(AS樹脂)、アクリロニトリル−α−メチルスチレン共重合体(αSAN樹脂)、スチレン−無水マレイン酸共重合体、アクリロニトリル−スチレン−N−置換マレイミド三元共重合体、スチレン−無水マレイン酸−N−置換マレイミド三元共重合体、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体(ABS樹脂)、アクリロニトリル−スチレン−アルキル(メタ)アクリレート共重合体(ASA樹脂)、アクリロニトリル−エチレン−プロピレン−ジエン−スチレン共重合体(AES樹脂)、ポリメタクリル酸メチル、ポリカーボネート樹脂、ポリブチレンテレフタレート(PBT樹脂)、ポリエチレンテレフタレート(PET樹脂)、ポリ塩化ビニル、ポリオレフィン(ポリエチレン、ポリプロピレン等)、スチレン系エラストマー(スチレン−ブタジエン−スチレン(SBS)、スチレン−ブタジエン(SBR)、水素添加SBS、スチレン−イソプレン−スチレン(SIS)等)、各種のオレフィン系エラストマー、各種のポリエステル系エラストマー、ポリスチレン、メチルメタクリレート−スチレン共重合体(MS樹脂)、アクリロニトリル−スチレン−メタクリル酸メチル共重合体、ポリアセタール樹脂、変性ポリフェニレンエーテル(変性PPE樹脂)、エチレン−酢酸ビニル共重合体、ポリフェニレンサルファイド(PPS樹脂)、ポリエーテルサルフォン(PES樹脂)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK樹脂)、ポリアリレート、液晶ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂(各種ナイロン等)等が挙げられる。他の熱可塑性樹脂(A2)は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
カーボンブラック(B)としては、例えば、チャネルブラック系、ファーネスブラック系、ランプブラック系、サーマルブラック系、ケッチェンブラック系、ナフタレンブラック系等が挙げられる。カーボンブラック(B)は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
酸化鉄(III)(C)は、酸化鉄(III)を主成分とする。ここで主成分とするとは、酸化鉄(III)(Fe2O3)の純度が80質量%以上であることをいう。したがって、酸化鉄(III)(C)には、酸化鉄(III)鉄(II)(Fe3O4)、いわゆる四酸化三鉄は包含されない。
酸化鉄(III)(C)としては、例えば、酸化鉄(III)を主成分とする顔料(赤色顔料等)等が挙げられる。
酸化鉄(III)(C)の平均粒子径は、透過型電子顕微鏡(TEM)観察画像から無作為に10個の粒子を選び出し、それぞれの粒子径を測定し、これらの粒子径を平均することによって算出される。
他の添加剤としては、例えば、各種安定剤(酸化防止剤、光安定剤等)、滑剤、可塑剤、離型剤、染料、顔料、帯電防止剤、難燃剤、無機充填剤、金属粉末等が挙げられる。
熱可塑性樹脂(A)は、グラフト共重合体(A1)の20〜100質量%と、他の熱可塑性樹脂(A2)の0〜80質量%とからなることが好ましく、グラフト共重合体(A1)の20〜60質量%と、他の熱可塑性樹脂(A2)の40〜80質量%とからなることがより好ましい(ただし、グラフト共重合体(A1)と他の熱可塑性樹脂(A2)との合計を100質量%とする。)。熱可塑性樹脂(A)におけるグラフト共重合体(A1)の含有量が20質量%以上であれば、成形品の耐衝撃性、レーザー溶着外観がより優れる。
本発明の熱可塑性樹脂組成物は、例えば、熱可塑性樹脂(A)とカーボンブラック(B)と酸化鉄(III)(C)と、必要に応じて他の添加剤とを、V型ブレンダ、ヘンシェルミキサー等によって混合し、混合物をスクリュー式押出機、バンバリーミキサ、加圧ニーダ、ミキシングロール等の溶融混練機等を用いて溶融混練することによって製造される。また、必要に応じてペレタイザー等を用いて溶融混練物をペレット化してもよい。
以上説明した本発明の熱可塑性樹脂組成物にあっては、特定のグラフト共重合体(A1)を含む熱可塑性樹脂(A)とカーボンブラック(B)と酸化鉄(III)(C)とを特定の割合で含むため、成形品としたときに、樹脂部材として十分な耐衝撃性を有するとともに、優れた色調(特に黒味)および成形外観(蒸着外観)を発現できる。また、本発明の熱可塑性樹脂組成物は、成形品としたときに、レーザー溶着外観に優れ、十分な接合強度を発現できる。
本発明の成形品は、本発明の熱可塑性樹脂組成物からなるものである。
本発明の成形品は、本発明の熱可塑性樹脂組成物を成形することによって製造できる。
成形方法としては、公知の成形方法を利用でき、例えば、射出成形法、プレス成形法、押出成形法、真空成形法、ブロー成形法等が挙げられる。
以上説明した本発明の成形品にあっては、特定のグラフト共重合体(A1)を含む熱可塑性樹脂(A)とカーボンブラック(B)と酸化鉄(III)(C)とを特定の割合で含む本発明の熱可塑性樹脂組成物の成形品であるため、樹脂部材として十分な耐衝撃性を有するとともに、優れた色調(特に黒味)および成形外観(蒸着外観)を発現できる。また、レーザー溶着外観に優れ、十分な接合強度を発現できる。
実施例および比較例における各種測定および評価方法は、以下の通りである。
動的光散乱式粒子径分布測定装置(日機装株式会社製、Nanotrac UPA−EX150)を用い、動的光散乱法によってラテックスにおける重合体の体積平均粒子径を求めた。
秤量したゴム状重合体を、トルエンに室温(23℃)で20時間かけて溶解させ、遠心分離した後、上澄みをデカンテーションにより除去して、残存した不溶分を60℃で24時間乾燥し、秤量した。最初に秤量したゴム状重合体に対する不溶分の割合(%)を求め、該割合をゴム状重合体のゲル含有量とした。
ISO 3167に準拠して、実施例または比較例のペレット状の熱可塑性樹脂組成物から、射出成形機(東芝機械株式会社製、IS55FP−1.5A)によって試験片(成形品1)を作製した。この試験片のシャルピー衝撃強度をISO 179−1:2000に準拠して、ノッチ付、23℃雰囲気下で測定した。
実施例または比較例のペレット状の熱可塑性樹脂組成物から、4オンス射出成形機(株式会社日本製鋼所製)を用い、シリンダー設定温度260℃、金型温度60℃、射出率20g/秒の条件で、長さ100mm、幅100mm、厚さ2mmの板状の試験片(成形品2)を作製し、これを吸収材とした。
実施例または比較例の熱可塑性樹脂組成物を、ペレット状のアクリル樹脂に変更した以外は、吸収材と同様の手順で透過材を作製した。
吸収材と透過材とを重ね合わせ、レーザー溶着機(ライスター社製、NOVOLAS(登録商標)−C型)を用い、出力3W、焦点径2mm、走査速度20mm/秒、溶着長30mmの条件でレーザー光を透過材側から照射し、吸収材と透過材とを溶着させて接合品を得た。接合品の溶着部の外観を目視で観察し、以下の基準で評価した。
○:溶着部に発泡がない。
△:溶着部の一部に発泡がある。
×:溶着部全体に発泡がある、または焦げがある。
成形品2の表面に、真空蒸着装置(株式会社アルバック製、VPC−1100)を用い、真空度6.0×10−3Pa、成膜速度10Å/秒の条件でアルミニウムをダイレクト蒸着し、厚さ50nmのアルミニウム膜を成膜した。成形品2の成膜面について、反射率計(有限会社東京電色製、TR−1100AD)を用い、拡散反射率(%)を測定した。拡散反射率の値が低いほど、成形品の表面が光輝性に優れることを示す。
レーザー溶着外観の評価に用いたものと同じ試験片について、測色計を用い、色調(L*)を測定した。L*の値が小さいほど、成形品の黒味が深い(濃い)ことを示す。
(製造例1)
酸基含有共重合体ラテックス(K)の製造:
試薬注入容器、冷却管、ジャケット加熱機および撹拌装置を備えた反応器内に、イオン交換水200部、オレイン酸カリウム2部、ジオクチルスルホコハク酸ナトリウム4部、硫酸第一鉄七水塩0.003部、エチレンジアミン四酢酸二ナトリウム塩0.009部、ナトリウムホルムアルデヒドスルホキシレート0.3部を窒素気流下で仕込み、60℃に昇温した。60℃になった時点から、アクリル酸n−ブチル85部、メタクリル酸15部、クメンヒドロパーオキサイド0.5部からなる混合物を120分間かけて連続的に滴下した。滴下終了後、さらに2時間、60℃を維持した状態で熟成を行い、固形分が33%、重合転化率が96%、酸基含有共重合体の体積平均粒子径が120nmである酸基含有共重合体ラテックス(K)を得た。
グラフト共重合体(A1−1)の製造:
試薬注入容器、冷却管、ジャケット加熱機および撹拌装置を備えた反応器内に、イオン交換水150部、ポリブタジエンラテックス(体積平均粒子径0.2μm、ゲル含有量84%)を固形分換算で50部、不均化ロジン酸カリウム1部、水酸化カリウム0.03部を仕込み、60℃に加熱後、硫酸第一鉄七水塩0.007部、ピロリン酸ナトリウム0.1部、結晶ブドウ糖0.3部を添加した。次いで、アクリロニトリル15部、スチレン35部、クメンハイドロパーオキサイド0.4部、t−ドデシルメルカプタン0.5部からなる混合液を120分間にわたって滴下し、重合した。滴下終了後、温度70℃の状態を60分間保持した後、クメンハイドロパーオキサイド0.05部を添加し、さらに温度70℃の状態を30分間保持した後、冷却し、ポリブタジエンに、アクリロニトリルとスチレンをグラフト重合させたポリブタジエン系のグラフト共重合体(A1−1)のラテックスを得た。
ラテックスに酸化防止剤を添加した。1%硫酸水溶液150部を60℃に加熱し、この中へグラフト共重合体(A1−1)のラテックス100部を徐々に滴下して凝固させた。析出物を分離し、脱水、洗浄した後に乾燥して、グラフト共重合体(A1−1)を得た。
グラフト共重合体(A1−2)の製造:
試薬注入容器、冷却管、ジャケット加熱機および撹拌装置を備えた反応器内に、ポリブタジエンラテックス(体積平均粒子径200nm)を固形分換算で2.0部と、アルケニルコハク酸ジカリウム0.8部と、イオン交換水190部とを仕込んで混合した。次いで、アクリル酸n−ブチル48.0部、アリルメタクリレート0.6部、1,3−ブチレングリコールジメタクリレート0.1部、t−ブチルハイドロパーオキサイド0.1部からなる混合物を添加した。この反応器に窒素気流を通じることによって雰囲気の窒素置換を行い、内温を60℃まで昇温した。内温が60℃に達した時点で、硫酸第一鉄七水塩0.000075部、エチレンジアミン四酢酸二ナトリウム塩0.00023部、ナトリウムホルムアルデヒドスルホキシレート0.2部、イオン交換水10部からなる水溶液を添加し、ラジカル重合を開始させた。重合発熱が確認された後、ジャケット温度を75℃とし、重合発熱が確認されなくなるまで重合を継続し、さらに1時間この状態を維持し、ポリブタジエンとポリブチルアクリレートゴムとが複合した複合ゴムのラテックスを得た。複合ゴムの体積平均粒子径は280nmであった。
反応器内部の液温が70℃に低下した後、複合ゴムのラテックスに5%ピロリン酸ナトリウム水溶液を固形分として0.60部添加した。内温を70℃に制御した後、複合ゴムのラテックスに酸基含有共重合体ラテックス(K)を固形分として0.60部添加し、30分間撹拌して肥大化を行い、複合ゴム状重合体のラテックスを得た。複合ゴム状重合体の体積平均粒子径は300nmであり、ゲル含有量は83%であった。
1%酢酸カルシウム水溶液150部を60℃に加熱し、この中へグラフト共重合体(A1−2)のラテックス100部を徐々に滴下して凝固させた。析出物を分離し、脱水、洗浄した後に乾燥して、グラフト共重合体(A1−2)を得た。
グラフト共重合体(A1−3)の製造:
試薬注入容器、冷却管、ジャケット加熱機および撹拌装置を備えた反応器内に、イオン交換水190部、アルケニルコハク酸ジカリウム0.6部、アクリル酸n−ブチル50部、アリルメタクリレート0.6部、t−ブチルハイドロパーオキサイド0.1部からなる混合物を添加した。この反応器に窒素気流を通じることによって雰囲気の窒素置換を行い、内温を55℃まで昇温した。内温が55℃に達した時点で、硫酸第一鉄七水塩0.0001部、エチレンジアミン四酢酸二ナトリウム塩0.0003部、ナトリウムホルムアルデヒドスルホキシレート0.2部、イオン交換水10部からなる水溶液を添加し、ラジカル重合を開始させた。重合発熱が確認された後、ジャケット温度を75℃とし、重合発熱が確認されなくなるまで重合を継続し、さらに1時間この状態を維持し、ゴム状重合体のラテックスを得た。ゴム状重合体の体積平均粒子径は100nmであった。
反応器内部の液温が70℃に低下した後、ゴム状重合体のラテックスに5%ピロリン酸ナトリウム水溶液を固形分として0.6部添加した。内温を70℃に制御した後、ゴム状重合体のラテックスに酸基含有共重合体ラテックス(K)を固形分として1.2部添加し、30分間撹拌して肥大化を行い、ゴム状重合体のラテックスを得た。ゴム状重合体の体積平均粒子径は290nm、ゲル含有量は85%であった。
1.5%硫酸水溶液100部を80℃に加熱し、この中へグラフト共重合体(A1−3)のラテックス100部を徐々に滴下して凝固させた。析出物を分離し、脱水、洗浄した後に乾燥して、グラフト共重合体(A1−3)を得た。
(製造例5)
他の熱可塑性樹脂(A2−1)の製造:
アクリロニトリル27部およびスチレン73部を公知の懸濁重合法によって重合し、N,N−ジメチルホルムアミド溶液から25℃で測定した還元粘度が0.61dL/gであるアクリロニトリル−スチレン共重合体を得た。これを他の熱可塑性樹脂(A2−1)として用いた。
他の熱可塑性樹脂(A2−2)の製造:
アクリロニトリル19部、スチレン53部およびN−フェニルマレイミド28部を公知の連続溶液重合法によって重合し、N,Nジメチルホルムアミド溶液から25℃で測定した還元粘度が0.65dL/gであるアクリロニトリル−スチレン−N−フェニルマレイミド三元共重合体を得た。これを他の熱可塑性樹脂(A2−2)として用いた。
カーボンブラック(B−1):越谷化成工業株式会社製、RB−92995S。
酸化鉄(III)(C−1):戸田工業株式会社製、130ED、酸化鉄(III)を主成分とする赤色顔料、平均粒子径0.2μm。
酸化鉄(III)(C−2):チタン工業株式会社製、R−110−7、酸化鉄(III)を主成分とする赤色顔料、平均粒子径0.7μm。
酸化鉄(III)鉄(II)(C’−3):戸田工業株式会社製、KN−320、酸化鉄(III)鉄(II)を主成分とする黒色顔料、平均粒子径0.3μm。
酸化鉄(III)鉄(II)(C’−4):チタン工業株式会社製、ABL−205、酸化鉄(III)鉄(II)を主成分とする黒色顔料、平均粒子径0.3μm。
(実施例1〜9、比較例1〜7)
表1、表2に示す種類および量のグラフト共重合体(A1)、他の熱可塑性樹脂(A2)カーボンブラック(B)および酸化鉄(III)(C)、ならびにエチレンビスステアリルアミド1部、シリコーンオイル(東レ・ダウコーニング株式会社製、SH200)0.2部、フェノール系酸化防止剤(株式会社ADEKA製、アデカスタブAO−60)0.2部およびヒンダードアミン系光安定剤(株式会社ADEKA製、アデカスタブLA−57)0.4部をヘンシェルミキサーを用いて混合した。混合物を、スクリュー式押出機(株式会社日本製鋼所製、TEX−30α型二軸押出機)を用いて250℃にて溶融混練した後、ペレタイザーにてペレット化してペレット状の熱可塑性樹脂組成物を得た。
熱可塑性樹脂組成物について、前記の手順で耐衝撃性、レーザー溶着外観、成形外観(蒸着外観)および色調を評価した。これらの結果を表1、表2に示す。
一方、各比較例の場合、成形品の耐衝撃性、レーザー溶着外観、成形外観(蒸着外観)および色調のいずれか一つ以上の項目に劣る結果となった。
具体的には、比較例1の場合、カーボンブラック(B)の含有量が多いため、レーザー溶着外観が劣っていた。
比較例2の場合、カーボンブラック(B)の含有量が少ないため、レーザー溶着外観および色調が劣っていた。
比較例3の場合、酸化鉄(III)(C)の含有量が多いため、レーザー溶着外観、成形外観(蒸着外観)、および色調が劣っていた。
比較例4の場合、酸化鉄(III)(C)の含有量が少ないため、レーザー溶着外観が劣っていた。
比較例5、6の場合、顔料が酸化鉄(III)を主成分に含まないため、レーザー溶着外観が劣っていた。
比較例7の場合、グラフト共重合体(A1)を含まないため耐衝撃性が劣っていた。
Claims (3)
- 熱可塑性樹脂(A)と、カーボンブラック(B)と、酸化鉄(III)(C)とを含み、
前記熱可塑性樹脂(A)として、ゴム状重合体の存在下にビニル系単量体を重合して得られたグラフト共重合体(A1)を含み、
前記カーボンブラック(B)の含有量が、前記熱可塑性樹脂(A)の100質量部に対して0.1〜3.0質量部であり、
前記酸化鉄(III)(C)の含有量が、前記熱可塑性樹脂(A)の100質量部に対して0.1〜3.0質量部であり、
前記カーボンブラック(B)の含有量x(質量部)と前記酸化鉄(III)(C)の含有量y(質量部)とが、0.2≦y/x≦5の関係を満足する、熱可塑性樹脂組成物。 - 前記酸化鉄(III)(C)の平均粒子径が、1μm以下である、請求項1に記載の熱可塑性樹脂組成物。
- 請求項1または2に記載の熱可塑性樹脂組成物からなる成形品。
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