JP4278405B2 - 酸化物半導体発光素子およびその製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は発光ダイオード素子や半導体レーザ素子などの半導体発光素子に関し、さらに詳しくは、無効電流が小さく信頼性に優れた酸化物半導体発光素子に関する。
【0002】
【従来の技術】
最近、II族酸化物半導体である酸化亜鉛(ZnO)が青色領域ないし紫外領域の発光デバイス用の材料として有望視されている。
ZnOは、約3.4eVのバンドギャップエネルギーを有する直接遷移型半導体で、励起子結合エネルギーが60meVと極めて高く、また原材料が安価、環境や人体に無害で成膜手法が簡便であるなどの特徴を有し、高効率・低消費電力で環境性に優れた発光デバイスを実現できる可能性がある。
【0003】
以下、本明細書において、「ZnO系」半導体なる語を用いるときは、ZnOおよびこれを母体としたMgZnOまたはCdZnO等で表される混晶を含むものとする。また、本明細書において、組成を特定せずに化合物を示す場合には、例えば、「MgZnO」と単に元素記号のみで記載し、組成を特定する場合には、例えば、「Mg0.1Zn0.9O」と記載する。
【0004】
また、近年、化合物半導体を用いた発光素子の性能向上は目ざましいものがあり、同時に発光素子に求められる耐久性も厳しいものになっている。
例えば、高輝度な発光ダイオード素子は、消費電力および素子の発熱が大きい上に、屋外での大型ディスプレイ光源などに用いられることが多く、変動の大きい環境下における連続駆動が安定して行なわれなければならない。
【0005】
半導体レーザ素子は、その光出射端面が105〜106W/cm2という極めて高密度な光エネルギーに晒されるため、損傷の増殖などによる急速な劣化を抑止する手段を講じる必要がある。
すなわち、発光素子の劣化を防止し素子寿命を向上させる技術は、産業上極めて重要である。
【0006】
半導体発光素子において共通した素子劣化の主要因は、素子表面を流れる無効電流および、表面の酸化腐食による欠陥の増大であると考えられる(例えば、「アプライド・フィジックス・レターズ(Applied Physics Letters)」、第25巻、第12号、1974年、p.708;非特許文献1を参照せよ)。特に、これら2つの要因が結び付くと、発光素子は急激に劣化する。
このような劣化を防止するため、発光ダイオード素子においては、半導体チップを装着したリードフレームを樹脂で封止することにより、酸素などの吸着を防いで素子寿命を向上させている(例えば、特開昭58−213457号公報;特許文献1を参照せよ)。
【0007】
また、半導体レーザ素子においては、光反射率を制御するため出射端面に誘電体多層膜を形成するのが一般的であるが、多層膜形成前に硫化物による前処理を行い、酸化物を還元する技術が効果を上げている(例えば、特開平4−369885号公報;特許文献2、特開平3−149889号公報;特許文献3、特開平4−91484号公報;特許文献4、特開平9−121076号公報;特許文献5を参照せよ)。
【0008】
【特許文献1】
特開昭58−213457号公報
【0009】
【特許文献2】
特開平4−369885号公報
【0010】
【特許文献3】
特開平3−149889号公報
【0011】
【特許文献4】
特開平4−91484号公報
【0012】
【特許文献5】
特開平9−121076号公報
【0013】
【非特許文献1】
「アプライド・フィジックス・レターズ(Applied Physics Letters)」、第25巻、第12号、1974年、p.708
【0014】
【発明が解決しようとする課題】
ところが、本発明者らの検討によれば、ZnO系半導体発光素子にこれら従来技術を適用しても、従来の半導体発光素子に比べ改善効果が乏しいことが分った。
【0015】
さらに詳細な検討によると、酸化物半導体発光素子の経時劣化は、水分の吸着による還元が主な原因であり、導電性の還元物を通じて素子表面に無効電流が流れ、さらに高輝度発光に伴う素子温度の上昇や、高密度光エネルギーによる曝露によって還元性欠陥が増殖することが分った。したがって、酸化を防止する役割が大きい従来の保護技術では劣化を抑止できないと考えられる。
かくして、本発明の目的は、上記の課題に鑑み、無効電流を抑止して信頼性に優れた酸化物半導体発光素子を提供することにある。
【0016】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、素子の信頼性を向上させ、無効電流を低減するZnO系半導体発光素子の構造を鋭意検討した結果、ZnO系半導体発光素子の表面を絶縁膜で保護することにより目的が達せられることを見い出し本発明に至った。
【0017】
すなわち、本発明は、基板上に、少なくともn型ZnO系半導体クラッド層、ZnO系半導体活性層、p型ZnO系半導体クラッド層、p型ZnO系半導体コンタクト層および電極が形成された酸化物半導体素子であって、その主表面が絶縁性の保護膜で被覆され、ここに、該電極の少なくとも一部の領域が該絶縁性の保護膜から露出している酸化物半導体発光素子を提供する。
【0018】
絶縁性の保護膜を、ZnO系半導体発光素子の主表面に形成することにより、還元雰囲気から素子が保護されるため、経時劣化を生じにくい。同時に素子表面を流れる無効電流が抑止されるので、発光効率が向上する。このことにより、信頼性に優れ発光効率の高い酸化物半導体発光素子を作製できる。
【0019】
本明細書において、「主表面」とは、基板上または1の成長層上に形成された成長層の最表面および、該1の成長層が、例えば、メサ構造やリッジストライプ形状に加工された場合、加工により露出した成長層の側面から成長した成長層の最表面、ならびに、成長層の表面上に形成された電極等を含む面を意味する。
本明細書において、単に「電極」というときは、n型およびp型電極ならびにパッド電極を含むことを意図する。
【0020】
酸化物半導体発光素子の主表面を絶縁性の保護膜で被覆することによって本発明の目的を達成することができるが、素子側面における成長層の側面も被覆することが好ましく、基板の側面または裏面もさらに被覆することがより好ましい。
また、半導体発光素子の主表面または基板の裏面に形成された電極上の少なくとも一部には電気的接続のために絶縁性の保護膜を形成しない。
【0021】
なお、本明細書において、半導体発光素子中発光を司る層を「発光層」というが、半導体レーザ素子の場合には同様の意味で「活性層」なる語を用いることがある。しかしながら、両者の機能は実質的に同じであるため特に区別はしない。
【0022】
本発明の酸化物半導体発光素子において、該絶縁性の保護膜の厚みが3〜200nmである。
保護膜の厚みが3nm以上であれば還元雰囲気からの保護効果を有し、200nm以下であれば保護膜で吸収損失を生じて発光効率が低下することがない。これにより、信頼性に優れ発光効率の高い酸化物半導体発光素子を作製できる。
【0023】
第1の局面において、本発明は、該絶縁性の保護膜が2層以上の積層膜であって、該2層以上の積層膜の各々は、異なる材料より構成される酸化物半導体発光素子を提供する。
保護膜が多層構造であれば、層厚を薄く保って絶縁効果と保護効果を向上させることができ、また種々の特徴を有する保護膜材料を積層することによって多機能な酸化物半導体発光素子を作製することができる。
【0024】
第1の具体例として、本発明の酸化物半導体発光素子において、該絶縁性の保護膜が、Mg、Sc、Y、Ti、Zr、Hf、Ce、V、Nb、Ta、Mo、W、Re、Al、Ga、SiおよびGeよりなる群から選択された少なくとも1の元素の酸化物または窒化物を含む。
保護膜が前記所定の金属酸化物または窒化物を含むことにより、非晶質もしくは単結晶構造を取り易くなり、欠陥が増殖する要因となる結晶粒界を含まない。このことにより、信頼性に優れた酸化物半導体発光素子を作製できる。
【0025】
好ましくは、該絶縁性の保護膜は、SiO2、Si3N4およびAl2O3よりなる群から選択された非晶質材料を含む。
前記所定の金属酸化物または窒化物は特に絶縁性が高く、また簡便に非晶質薄膜を作製することができる。よって、信頼性に優れた酸化物半導体発光素子を低コストで作製できる。
【0026】
第2の具体例として、本発明の酸化物半導体発光素子において、該絶縁性の保護膜が、該活性層より大きなバンドギャップエネルギーを有するZnO系半導体を含む。
ZnO系半導体で保護膜を作製すると、異種材料で保護膜を形成する場合に比べて親和性に優れるので、界面などの結晶欠陥が極めて少ない。このことにより、信頼性に優れた酸化物半導体発光素子を作製できる。
【0027】
第3の具体例として、本発明の酸化物半導体発光素子において、該絶縁性の保護膜がABO2なる組成を有し、Aが少なくともLi、NaまたはKのいずれかを含み、Bが少なくともAl、GaまたはInのいずれかを含む。
前記所定の組成を有する酸化物は、ZnO系半導体と類似の結晶構造を有し、ZnO系半導体上に高品質な単結晶薄膜をエピタキシャル成長できる。したがって、結晶性の極めて高い保護膜を形成でき、信頼性に優れた酸化物半導体発光素子を作製できる。
【0028】
好ましくは、該絶縁性の保護膜は、Li1−aNaaAlO2、Li1−bNabGaO2、LiAl1−cGacO2またはNaAl1−dGadO2(0≦a、b、c、d≦1)のいずれかである。
前記所定の組成を有する酸化物は、面内格子定数がZnOに極めて近く、組成の制御によって殆ど歪を内在しない保護膜を作製することができる。このことにより、信頼性に優れた酸化物半導体発光素子を作製できる。
【0029】
第4の具体例として、本発明の酸化物半導体発光素子において、該絶縁性の保護膜が、ABO3で表されるペロブスカイトおよび類似構造複酸化物を含む。
ペロブスカイト構造の(111)面は、ZnO系半導体などのウルツ鉱結晶構造の(0001)面と類似の表面構造を有するため親和性に優れ、ZnO系半導体上に欠陥の少ない保護膜を形成することができる。
【0030】
絶縁性の保護膜には、元素AとしてLi、NaおよびKよりなる群から選択された1種以上の元素を含有し、元素BとしてTaまたはNbを含有する複酸化物を用いることができる。
または、元素AとしてCd、Ca、Sr、BaおよびBiよりなる群から選択された1種以上の元素を含有し、元素BとしてTi、Zr、HfおよびSnよりなる群から選択された1種以上の元素を含有する複酸化物を用いることができる。
または、元素AとしてBi、希土類元素(Sc、Y、La、Ce、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Lu)およびアルカリ土類元素(Be、Mg、Ca、Sr、Ba、Ra)よりなる群から選択された1種以上の元素を含有し、元素BとしてIn、Al、GaおよびScよりなる群から選択された1種以上の元素を含有する材料を用いることができる。
【0031】
本発明の酸化物半導体発光素子において、絶縁性の保護膜に用いるのに特に好ましい複酸化物は、KNbO3、KTaO3、BaTiO3、CaSnO3、CaZrO3、CaHfO3、CdSnO3、SrHfO3、SrSnO3、SrTiO3またはYScO3のいずれかを含む。
これらの前記ペロブスカイトおよび類似構造複酸化物は、ZnO系半導体との格子不整合が極めて少なく、高品質な保護膜を形成できるからである。このことにより、信頼性に優れた酸化物半導体発光素子を作製できる。
【0032】
第5の具体例として、本発明の酸化物半導体発光素子において、該絶縁性の保護膜が、RABO4またはRAO3(BO)nなる構造を有し、かつ、該酸化物層中の元素RがScおよびInよりなる群から選択された少なくとも1種類の元素を含有し、かつ、元素AがAl、FeおよびGaよりなる群から選択された少なくとも1種類の元素を含有し、かつ、元素BがMg、Mn、Fe、Co、Cu、ZnおよびCdよりなる群から選択された少なくとも1種類の元素を含有する酸化物を含む。
前記所定の組成を有するホモロガス構造の酸化物は、ZnO系半導体と類似の結晶構造を有し、ZnO系半導体上に高品質な単結晶薄膜をエピタキシャル成長できる。したがって、結晶性の極めて高い保護膜を形成でき、信頼性に優れた酸化物半導体発光素子を作製できる。
【0033】
好ましくは、該絶縁性の保護膜は、ScAlMgO4、ScGaMgO4、ScAlMnO4、ScGaCoO4、ScAlCoO4、ScGaZnO4、ScAlZnO4、ScGaO3(ZnO)nまたはScAlO3(ZnO)nのいずれかを含む。
前記所定のホモロガス構造の酸化物は、ZnO系半導体との格子不整合が極めて少なく、高品質な保護膜を形成できる。このことにより、信頼性に優れた酸化物半導体発光素子を作製できる。
【0034】
第2の局面において、本発明は、該絶縁性の保護膜が、絶縁性の有機薄膜を最表面に含む酸化物半導体発光素子を提供する。
有機薄膜は、還元雰囲気からの保護効果が無機薄膜に比べて大きく、また保護膜形成が簡便であるという利点を有する。このことにより、信頼性と生産性に優れた酸化物半導体発光素子を作製できる。
【0035】
第3の局面において、本発明は、素子表面に形成された電極の一部が該絶縁性の保護膜で覆われている酸化物半導体発光素子を提供する。
ワイヤボンディングなど実装に必要な部分を除いて電極が保護されていることにより、密着性に優れ、また電極の経時劣化が生じにくい。例えば、パッド電極の密着性を向上させる目的のために、パッド電極の周辺領域を保護膜で覆い、ワイヤボンディングのために中心領域には保護膜を形成しないことが有効である。
このことにより、信頼性に優れた酸化物半導体発光素子を作製できる。
【0036】
また、本発明は、成膜装置内で、レーザアブレーション法によって基板上に発光素子を成長させ、次いで、該発光素子を該成膜装置から取り出すことなく、連続して該発光素子の全面に絶縁性の保護膜を堆積させることを含む酸化物半導体発光素子の製造方法を提供する。
結晶成長から保護膜形成までを成膜装置内で連続して行うことにより、特に水分の付着を防ぐことができる。よって、信頼性に優れた酸化物半導体発光素子を作製できる。
【0037】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の酸化物半導体発光素子を発光ダイオード素子および半導体レーザ素子に適用した実施形態を図面に基づいて、具体的に説明する。
【0038】
第1の実施形態
本発明による第1の実施形態の酸化物半導体発光素子は、基板上に、少なくともn型ZnO系半導体クラッド層、ZnO系半導体活性層、p型ZnO系半導体クラッド層、p型ZnO系半導体コンタクト層および電極が形成された酸化物半導体素子であって、その主表面が絶縁性の保護膜で被覆され、ここに、該電極の少なくとも一部の領域が該絶縁性の保護膜から露出している発光ダイオード素子である。
本発明によれば、酸化物半導体発光素子の主表面を絶縁性の保護膜で被覆するので、素子側面などを流れる無効電流が抑止され、還元による素子の経時劣化も抑止され、これにより、信頼性に優れた発光ダイオード素子を得ることができる。
【0039】
図1は、発光ダイオード素子1の断面図を示す。発光ダイオード素子1は、亜鉛面を主面とするn型ZnO単結晶基板101上に、n型MgZnOクラッド層102、ノンドープ量子井戸発光層103、p型MgZnOクラッド層104、およびp型ZnOコンタクト層105を積層することによって構成されている。
【0040】
量子井戸発光層103は、1または複数のZnO障壁層と、1または複数のCdZnO井戸層とが交互に積層された多重井戸構造である。
p型ZnOコンタクト層105上には、発光層から発光された光に対して透光性であるp型オーミック電極106が積層されている。さらに、この透光性p型オーミック電極106上には、透光性p型オーミック電極106より小さい面積でボンディング用パッド電極107が形成されている。
また、ZnO基板101の裏面には、n型オーミック電極108が積層されている。
さらに、図1において、ZnO基板101、パッド電極107およびn型オーミック電極108を除く発光ダイオード素子1の表面全面には、保護膜109が形成されているが、電気的接続のためにパッド電極107およびn型オーミック電極108の少なくとも一部の領域を除き、発光ダイオード素子1の表面全面に保護膜109を形成することができる。
【0041】
以下、本発明の効果を最大限に得るための他の構成について記すが、その他の実施形態において任意に組み合わせて用いてもよい。
【0042】
本発明の酸化物半導体発光素子において、基板101の材料としては、ZnO単結晶以外にも、サファイア、スピネル、LiGaO2等の絶縁性基板、またはSiC、GaN等の導電性基板を用いることができる。
図3(A)および(B)は、絶縁体であるサファイアを基板101に用いた発光ダイオード素子1’の斜視図を示す。
絶縁性基板を用いる場合は、図3(A)のように、成長層の一部をエッチングしてn型MgZnO層102を露出させ、その上にn型オーミック電極108を形成すればよい。また、図3(B)のように、結晶性の良好な成長層を得るために、基板上に先ずn型ZnOバッファ層112を形成し、さらにn型オーミック電極108の接触抵抗を低減させるためにn型ZnOコンタクト層113を形成してもよい。
この図においては、簡便のため、保護膜109を図示していないが、発光ダイオード素子1と同様に、電気的接続のためにパッド電極107およびn型オーミック電極108の少なくとも一部の領域を除き、発光ダイオード素子1’の表面全面を覆うように保護膜109を形成することができる。
【0043】
しかしながら、本発明の効果である高い発光効率を最大限に得るためには、(1)ZnOとの面内格子定数差が3%以内の格子整合基板であって、成長層の結晶性に優れ、非発光中心となる欠陥を低減でき、(2)発光波長に対応する吸収係数が低く、また、(3)導電性であって、裏面に電極を形成できる基板を用いることが好ましい。ZnO単結晶よりなる基板は、前記の条件を全て満足させるので最も好ましい。ZnO基板はその上にエピタキシャル成長されるZnO系半導体発光素子と完全に格子整合し、異種基板を用いるより親和性に優れる。これによって結晶性が良好で非発光中心の極めて少ない発光素子を作製することができる。
【0044】
また、主面として亜鉛面を用いることにより、p型層のキャリア活性化率が向上し、抵抗の低いp型層が得られやすくなるので好ましい。
また、基板を研磨やエッチング等の公知の手法で基板裏面に凹凸を形成して入射した発光光を乱反射させれば、光取り出し効率が向上するので好ましい。
【0045】
n型MgZnOクラッド層102にドーピングするドナー不純物としては、ZnO系半導体中での活性化率が高いので、III族元素のB、Al、Ga、In等を用いることが好ましく、GaまたはAlが特に好ましい。
【0046】
p型MgZnO層104およびp型ZnOコンタクト層105にドーピングするアクセプタ不純物としては、IまたはV族元素であるLi、Na、Cu、Ag、N、P、As等を用いることができる。N、LiおよびAgは活性化しやすいので特に好ましい。Nは、N2をプラズマ化し結晶成長中に照射する手法によって結晶性を良好に保ちつつ、高濃度ドーピングが行えるので特に好ましい。
【0047】
p型コンタクト層105には、結晶性に優れキャリア濃度を高くできるZnOを用いることが好ましい。p型ZnOコンタクト層105に過剰にアクセプタ不純物をドーピングすると結晶性劣化が顕著となり、本発明の効果が減少するので、5×1016〜5×1019cm−3のキャリア濃度範囲となるようドーピングされることが好ましい。
【0048】
絶縁性基板を用いた場合、n型バッファ層112およびn型コンタクト層113にドーピングするドナー不純物としては、n型MgZnOクラッド層102の場合と同様に、ZnO系半導体中での活性化率が高いので、III族元素のB、Al、Ga、In等を用いることが好ましく、GaまたはAlが特に好ましい。
【0049】
n型コンタクト層113には、p型コンタクト層105の場合と同様にZnOが適しており、ドナー不純物のドーピング濃度は1×1018〜1×1021cm−3の範囲が好ましく、さらには5×1019〜5×1020cm−3の範囲で調整されることが好ましい。また、膜厚は、0.001〜1μm、好ましくは0.005〜0.5μm、さらに好ましくは0.01〜0.1μmの範囲に調整されることが好ましい。
【0050】
p型オーミック電極106には、Ni、Pt、Pd、Au等の金属材料を用いることができる。前記の金属材料は、p型ZnO系半導体層に対して低抵抗なオーミック接触を形成すると共にZnO系半導体との密着性に優れる。よって、信頼性に優れ動作電圧の低い発光素子を実現できる。なかでも低抵抗で密着性の良いNiが好ましい。前記金属材料の複数を合金化して、電極を形成してもよい。
【0051】
p型オーミック電極106はp型MgZnOクラッド層104上に直接形成することができるが、MgZnO混晶はZnOに比べて不純物の活性化率が低いことから、p型ZnOコンタクト層105を形成して、その上に形成することが好ましい。これにより、低抵抗化し電流広がりが均一化し、発光ダイオード素子の発光効率が向上する。
【0052】
また、高い発光効率と低い動作電圧を最大限の効果で得るためには、p型オーミック電極106が発光層から発光された光に対して透光性を有するように形成して光取り出し効率を向上させることが好ましい。
透明導電膜が主表面全面に形成されていることにより、電流広がりが均一化し外部光取り出し効率が向上する。よって、発光効率に優れた発光素子を実現できる。
良好なオーミック特性と高い透光性を両立する厚みとしては5〜200nmの範囲が好ましく、30〜100nmの範囲がさらに好ましい。
【0053】
p型オーミック電極106の形成後にアニール処理を行うと、密着性が向上すると共に接触抵抗が低減するので好ましい。ZnO結晶に欠陥を生じさせずにアニール効果を得るには、温度は300〜400℃が好ましい。また、アニール処理における雰囲気はO2または大気雰囲気中が好ましく、N2では逆に抵抗が増大する。
【0054】
パッド電極107は、透光性p型オーミック電極106上の一部に、p型オーミック電極106より小さな面積で形成すれば、透光性電極の効果を損なわずにリードフレームへの実装プロセスが容易になるので好ましい。パッド電極107の材料としてはボンディングが容易でZnO系半導体中へ拡散してもドナー不純物とならない金属材料が好ましく、特に、Auが好ましい。
p型オーミック電極106とパッド電極107との間に密着性や光反射性を向上させる目的で他の金属層を形成してもよい。
【0055】
n型オーミック電極108には、Ti、Cr、Al等の金属材料を用いることができる。なかでも低抵抗でコストの低いAlまたは密着性の良いTiが好ましい。前記金属材料の複数を合金化して、電極を形成してもよい。
Alは青〜紫外光の反射率が高いため、Alを用いてn型オーミック電極108を裏面全面に形成しても光取り出し効率は高いので好ましい。
また、n型オーミック電極108を任意の形状にパターニングし、露出した基板裏面をAgペースト等の導電性樹脂でリードフレームに接着することができる。AlよりもAgの方が青〜紫外光の反射率が高いため、n型オーミック電極108をパターニングすることも好ましい。
また、n型オーミック電極108をパターニングする場合は、素子抵抗の増大を防ぐため、n型オーミック電極108とは異なる金属材料を用いて補助電極を形成してもよく、AgやPt等青〜紫外光の反射率が高い金属を補助電極に用いればさらに好ましい。
補助電極がリードフレームとの接触面積を増大させるため、n型電極をパターニングしても動作電圧が上昇しない。よって、動作電圧の低い紫外発光素子を実現できる。
【0056】
保護膜109に用いる材料は、半導体層が短絡しないよう絶縁性材料であることが好ましい。特に金属酸化物および窒化物が好ましく、金属イオンの電子軌道が異方性を持たない材料であれば、単結晶あるは非晶質構造を取り易く、結晶粒界を多く含む多結晶薄膜に比べ絶縁性が高いので好ましい。
【0057】
このような材料には、例えば、SiO2、Si3N4、Al2O3のごとき、Mg、Sc、Y、Ti、Zr、Hf、Ce、V、Nb、Ta、Mo、W、Re、Al、Ga、Si、Geなどの金属の酸化物または窒化物を用いることができる。
【0058】
また、MgZnO混晶やBeZnO混晶のごとき、ZnO系半導体成長層と同じ材料で形成された高品質な単結晶薄膜を保護膜に用いることができる。
MgZnO混晶やBeZnO混晶は、絶縁体ではなく半導体であるが、ZnO系半導体成長層よりもワイドギャップであれば絶縁効果を有する。特に、バンドギャップエネルギーが活性層より大きければ、発光を吸収しないので好ましく、全てZnO系半導体成長層よりバンドギャップエネルギーが大きければ、絶縁効果が向上するのでより好ましい。
【0059】
保護膜109の材料として、ABO2なる組成を有し、Aが少なくともLi、NaおよびKのいずれかを含み、Bが少なくともAl、GaおよびInのいずれかを含む絶縁体酸化物を用いることもできる。前記絶縁体酸化物は、ZnO系半導体と類似の結晶構造を有し、ZnO系半導体上に高品質な単結晶薄膜をエピタキシャル成長でき、高い保護効果を得ることができる。
特に、Li1−aNaaAlO2、Li1−bNabGaO2、LiAl1−cGacO2、NaAl1−dGadO2など、元素AおよびBのいずれか1方のみが2種の元素からなる酸化物は、組成の制御が簡便であるので好ましい。
【0060】
前記4つの酸化物に対して、平均酸素−酸素間距離で表される実効格子定数を求めた結果を図9に示す。ここで「実効格子定数」とは、同一面内の6つの酸素原子で構成される六角形と同じ面積の正六角形を仮定し、この正六角形の一辺を成す酸素−酸素原子間距離と定義する。
【0061】
図9から、ZnO(格子定数=3.25Å)に対しては、全組成範囲で−4%(LiAlO2を用いた場合;実効格子定数=3.12Å)〜+6%(NaGaO2を用いた場合;実効格子定数=3.44Å)の格子定数差を制御できることがわかる。
特に、Li1−aNaaAlO2において、Na組成xが0.4〜0.6である場合;またはLi1−bNabGaO2において、Na組成xが0.15〜0.35である場合には、ZnOとの格子定数差が±0.75%と極めて小さいため好ましく、さらにLi0.5Na0.5AlO2またはLi0.75Na0.25GaO2であれば、実効格子定数が3.25Åとなり、ZnOとほぼ完全に格子整合し、歪を有せず結晶性に優れたZnO系半導体層をエピタキシャル成長できることがわかる。
【0062】
あるいは、保護膜109の材料として、ABO3なる組成を有するペロブスカイトおよびその類似構造複酸化物を用いることができる。
図10に、ABO3なる組成を有するペロブスカイト酸化物の表面構造をZnOと比較して示す。ペロブスカイト構造の(111)面は、ZnO系半導体などのウルツ鉱結晶構造の(0001)面と類似の表面構造を有するため親和性に優れ、ZnO系半導体上に欠陥の少ない保護膜を形成することができる。
【0063】
このようなABO3なる組成を有する複酸化物として、
(1)元素AがLi、NaおよびKよりなる群から選択された1種以上の元素を含有し、元素BがTaまたはNbを含有するもの;
(2)元素AがCd、Ca、Sr、BaおよびBiよりなる群から選択された1種以上の元素を含有し、元素BがTi、Zr、HfおよびSnよりなる群から選択された1種以上の元素を含有するもの;または
(3)元素AがBi、希土類元素(Sc、Y、La、Ce、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Lu)およびアルカリ土類元素(Be、Mg、Ca、Sr、Ba、Ra)よりなる群から選択された1種以上の元素を含有し、元素BがIn、Al、GaおよびScよりなる群から選択された1種以上の元素を含有するものが好ましい。
特に、KNbO3、KTaO3、BaTiO3、CaSnO3、CaZrO3、CaHfO3、CdSnO3、SrHfO3、SrSnO3、SrTiO3またはYScO3のいずれかであれば、六角形の格子形状がZnO(0001)面と整合し易くなり、結晶欠陥や格子歪の極めて少ない高品質な保護膜を形成できるので好ましい。
【0064】
さらに、保護膜に用いる材料として、ScAlMgO4のような、RABO4またはRAO3(BO)nなる構造を有する酸化物を用いることができる。
RABO4またはRAO3(BO)nなる構造を有する酸化物は、ZnO系半導体と同じウルツ鉱構造を含み、元素RがScおよびInよりなる群から選択され、かつ、元素AがAl、Fe、Gaよりなる群から選択され、かつ、元素BがMg、Mn、Fe、Co、Cu、Zn、Cdよりなる群から選択された酸化物は、ZnO系半導体に近い面内格子定数を有する。
図11に、絶縁体酸化物ScAlMgO4の結晶構造を示す。この構造の格子定数は3.246Åであり、ZnOの格子定数3.243Åに対する格子ミスマッチは0.09%である。
【0065】
特に、ScAlMgO4、ScGaMgO4、ScAlMnO4、ScGaCoO4、ScAlCoO4、ScGaZnO4、ScAlZnO4、ScGaO3(ZnO)n、ScAlO3(ZnO)nのいずれかであれば、ZnOとの格子定数差が極めて小さくなり、結晶欠陥や格子歪の極めて少ない高品質な保護膜を形成できる。
【0066】
その他の構成は任意であり、本明細書に記載された構成のみに限定されるものではない。
【0067】
本発明の酸化物半導体発光素子は、固体または気体原料を用いた分子線エピタキシー(MBE)法、レーザ分子線エピタキシー(レーザMBE)法、有機金属気相成長(MOCVD)法などの結晶成長手法で作製することができる。
レーザMBE法は、原料ターゲットと薄膜の組成ずれが小さく、またZnGa2O4などの意図しない副生成物の生成を抑えることができるので好ましい。
図7Aに示すレーザ分子線エピタキシー(以下レーザMBEと称する)装置7を用いて、本発明の酸化物半導体発光素子を作製することができる。
【0068】
レーザMBE装置7において、超高真空に排気可能な成長室701の上部に基板ホルダー702が配置され、基板ホルダー702に基板703が固定されている。基板ホルダー702上部に配置されたヒーター704により基板ホルダー702の裏面が加熱され、その熱伝導により基板703が加熱される。
基板ホルダー702直下には適当な距離を置いてターゲットテーブル705が配置され、ターゲットテーブル705上には、原料ターゲット706が複数配置できる。
ターゲット706の表面は成長室701の側面に設けられたビューポート707を通じ照射されるパルスレーザ光708によりアブレーションされ、瞬時に蒸発したターゲット706の原料が基板上に堆積することにより薄膜が成長する。
ターゲットテーブル705は回転機構を有し、パルスレーザ光708の照射シーケンスに同期して回転を制御することにより、異なるターゲット原料を薄膜上に積層することが可能となる。また、成長室には複数のガスを導入できるようガス導入管710が複数設けられており、ラジカルセル709によって活性化された原子状ビームを基板に照射することも可能である。
さらに、基板703と原料ターゲット706の間には移動可能な遮蔽マスク711が設置され、基板の所定領域を可動マスクによって覆うことができる。
【0069】
第2の実施形態
本発明による第2の実施形態の半導体発光素子は、第1の実施形態の半導体発光素子と同様に構成されるが、絶縁性の保護膜が異なる材料の積層構造で構成されていること特徴とする発光ダイオード素子である(図示せず)。
本発明によれば、素子主面に形成された保護膜が積層構造であるので、素子を還元雰囲気から保護する効果が増大する。
【0070】
この積層構造の保護膜は、第1の実施形態の酸化物半導体素子において保護膜に用いることができる材料により構成された非晶質または単結晶で保護膜であれば、酸化物および窒化物のいずれも還元雰囲気から半導体発光素子を保護する効果を示す。
【0071】
第3の実施形態
本発明による第3の実施形態の酸化物半導体発光素子は、第1の実施形態の酸化物半導体発光素子と同様に構成されるが、絶縁性の保護膜がさらに有機薄膜で被覆されていることを特徴とする発光ダイオード素子である。
有機薄膜は、還元雰囲気からの保護効果が無機薄膜に比べて大きく、また保護膜形成が簡便であるという利点を有するので、信頼性と生産性に優れた酸化物半導体発光素子を作製できる。
【0072】
図4は、発光ダイオード素子3の断面図を示す。発光ダイオード素子3は、MgO保護膜109の外側に、ポリイミド等の有機薄膜111を被覆することによって構成される。
なお、図中において、発光ダイオード素子1と同様の構成要素については図1と同じ符号を用いている。
【0073】
有機薄膜材料としては、ポリイミド以外にもエポキシ樹脂、メラミン樹脂、フェノール樹脂などを用いることができるが、発光素子からの発熱によって劣化しないよう熱硬化性樹脂であることが好ましい。
また、有機薄膜は、スピンコーティング法、スプレー法、ディップ法などによって形成することができる。
なお、膜厚が厚いと光取り出し効率が低下するため、保護膜全体の厚みが3〜200nmの範囲で調整されることが好ましい。
【0074】
第4の実施形態
本発明による第4の実施形態の酸化物半導体発光素子は、第1の実施形態の酸化物半導体発光素子と同様に構成されるが、絶縁性の保護膜がパッド電極の表面上にも形成されていることを特徴とする発光ダイオード素子である。
本発明によれば、絶縁性の保護膜がパッド電極上にも形成されているので、電極の密着性が向上し、電極の経時劣化が生じにくくなる。かくして、素子の信頼性をさらに向上させることができる。
【0075】
図5は、発光ダイオード素子4の断面図を示す。発光ダイオード素子4は、保護膜109をパッド電極107形成後に堆積させ、ワイヤボンディングに必要な領域を除いて、パッド電極107を覆うように形成する。
ワイヤボンディングに必要な領域を形成する位置は限定されないが、パッド電極107の密着性を向上させる目的のために、パッド電極107の周辺領域を保護膜109で覆い、ワイヤボンディングのために中心領域には保護膜を形成しないことが有効である。
なお、図中において、発光ダイオード素子1と同様の構成要素については図1と同じ符号を用いている。
【0076】
第5の実施形態
本発明による第5の実施形態の酸化物半導体発光素子は、基板上に、少なくともn型ZnO系半導体クラッド層、ZnO系半導体活性層、p型ZnO系半導体クラッド層、p型ZnO系半導体コンタクト層および電極が形成された酸化物半導体素子であって、その主表面が絶縁性の保護膜で被覆され、ここに、該電極の少なくとも一部の領域が該絶縁性の保護膜から露出している半導体レーザ素子である。
本発明によれば、酸化物半導体発光素子の主表面を絶縁性の保護膜で被覆するので、素子側面などを流れる無効電流が抑止され、還元による素子の経時劣化が抑止され、これにより、信頼性に優れた半導体レーザ素子を得ることができる。
【0077】
図6は、半導体レーザ素子5の斜視図を示す。半導体レーザ素子5は、亜鉛面を主面としたn型ZnO単結晶基板501上に、n型ZnOバッファ層502、n型MgZnOクラッド層503、n型ZnO光ガイド層504、ノンドープ量子井戸活性層505、Np型ZnO光ガイド層506、p型MgZnOクラッド層507、およびp型ZnOコンタクト層508を積層することによって構成されている。
【0078】
量子井戸活性層505は、1または複数のZnO障壁層と、1または複数のCdZnO井戸層とが交互に積層された多重井戸構造である。
p型ZnOコンタクト層508およびp型MgZnOクラッド層507はリッジストライプ状にエッチング加工され、リッジストライプ側面はn型MgZnO電流ブロック層509によって埋め込まれている。
【0079】
ZnO基板501の下にはn型オーミック電極510が形成され、p型ZnOコンタクト層508の上にはp型オーミック電極511が形成されている。
半導体レーザ素子5全体は保護膜512で覆われ、n型オーミック電極510およびp型オーミック電極511上の保護膜512の一部に、それぞれ、ワイヤボンディングのための開口部513および514を有している(n型オーミック電極510の開口部513は図示されていない)。
【0080】
本発明による第5の実施形態の酸化物半導体発光素子において、配線のために電極に一部を除く素子全体を保護膜で被覆すれば、素子側面などを流れる無効電流も抑止され、還元による経時劣化が抑制されるので、素子寿命を向上させることができる。
また、半導体レーザ素子の共振器端面は、反射率制御のために屈折率の異なる誘電体層を積層することが一般に行われるが、その場合も本発明に用いることができる保護膜材料によって端面反射膜を形成することが好ましい。
【0081】
【実施例】
実施例1
この実施例は、本発明を発光ダイオード素子に適用した第1の実施形態の酸化物半導体発光素子を説明する。
図1は、発光ダイオード素子1の断面図を示す。この実施例において、亜鉛面を主面とするn型ZnO単結晶基板101上に、Gaを3×1018cm−3の濃度でドーピングした厚さ1μmのn型Mg0.1Zn0.9Oクラッド層102、ノンドープ量子井戸発光層103、Nを5×1019cm−3の濃度でドーピングした厚さ1μmのp型Mg0.1Zn0.9Oクラッド層104、およびNを1×1020cm−3の濃度でドーピングした厚さ0.5μmのp型ZnOコンタクト層105を積層して、発光ダイオード素子1aを作製した。
【0082】
量子井戸発光層103は、厚さ5nmのZnO障壁層8層と、厚さ4nmのCd0.2Zn0.8O井戸層7層とを交互に積層することによって形成されている。
p型ZnOコンタクト層105上には、透光性p型オーミック電極106として、厚さ15nmのNiが積層され、その上に、透光性p型オーミック電極106より小さい面積で厚さ100nmのボンディング用Auパッド電極107が形成されている。
また、ZnO基板101の裏面には、n型オーミック電極108として厚さ100nmのAlが積層されている。
【0083】
さらに、ZnO基板101、パッド電極107およびn型オーミック電極108を除く発光ダイオード素子1aの表面全面には、厚さ10nmのMgO保護膜109を形成した。
【0084】
以下に製造方法を、図2に基づいて順に説明する。なお、図2は製造工程を断面から示したものである。
まず、洗浄処理したZnO基板101を図7Aに図示するレーザMBE装置7に導入し、温度600℃で30分間加熱し清浄化した。
次に、図7Bに示すように、300μm角の開口部を50μm間隔で有する遮蔽マスク711を、ZnO基板101(図7Aにおいては、基板703として示されている。)と原料ターゲット706との間に配置した。遮蔽マスク711により、成長層は300μm角に選択形成される。
【0085】
次に基板温度を500℃に降温し、ノンドープZnO単結晶およびGa2O3を添加したMgZnO焼結体を原料ターゲットとし、回転機構によるターゲットテーブルの駆動周期とKrFエキシマレーザのパルス照射周期を外部制御装置(図示しない)によって同期させて、所望のMg組成とGaドーピング濃度が得られる比率で2つの原料ターゲットを交互にアブレーションし、n型Mg0.1Zn0.9Oクラッド層102を成長させた。
アブレーションを行うパルスレーザにはKrFエキシマレーザ(波長:248nm、パルス数:10Hz、出力1J/cm2)を用いた。成長中にはガス導入管710aより、O2ガスを導入した。
次に、ノンドープZnO単結晶、CdZnO焼結体を原料ターゲットとして交互にアブレーションし、ZnO障壁層とCd0.2Zn0.8O井戸層よりなる量子井戸活性層103を成長させた。
【0086】
次に、ガス導入管710bより導入したN2ガスをラジカルセル709でプラズマ化して照射しながら、ノンドープZnO単結晶およびノンドープMgZnO焼結体を原料ターゲットとして交互アブレーションを行い、p型Mg0.1Zn0.9Oクラッド層104を成長させた。
次に、ガス導入管710bより導入したN2ガスをラジカルセル709でプラズマ化して照射しながら、ノンドープZnO単結晶を原料ターゲットとしてアブレーションを行い、p型ZnOコンタクト層105を成長させた。
次に、O2ガスおよびN2ガスの導入を停止し、成長室701内の圧力を1×10−4Paに調整し、Niタブレットを原料ターゲットとしてアブレーションを行い、p型オーミック電極106を形成した(以上、図2A)。
【0087】
次に、遮蔽マスク711をZnO基板703直下から移動し、基板温度を室温まで降温させた後、MgO単結晶を原料ターゲットとして、ZnO基板101全面にMgO保護膜109を堆積させた(図2B)。堆積したMgO保護膜109は非晶質であった。
【0088】
次に、ZnO基板101をレーザMBE装置7から取り出し、選択成長したZnO系半導体層上のMgO保護膜109にレジストマスク110を形成し、公知のエッチング技術によりMgO保護膜109に直径100μmの開口部を設けて、p型オーミック電極106を露出させた(図2C)。
【0089】
次に、MgO保護膜109に設けた開口部から露出したp型オーミック電極106上に、真空蒸着法によってAuパッド電極107を形成した後、レジストマスク110を除去した(図2D)。
最後に、ZnO基板101の裏面に、真空蒸着法によってAlを蒸着し、n型オーミック電極108を形成した(図2E)。
【0090】
なお、この実施例においては、ZnO単結晶およびGaドープMgZnO焼結体の2つの原料ターゲットを交互アブレーションすることによって、Mg組成およびGaドーピング濃度を制御したが、ZnO単結晶、ノンドープMgZnO焼結体およびGaドープZnO焼結体の3つの原料ターゲットを打ち分ける等の方法を用いて、ドーピング濃度の制御性を向上させることができる。
MgZnO焼結体を用いず、ZnO単結晶とMgO単結晶とを交互アブレーションして所望組成のMgZnO混晶を得てもよい。
また、Ga2O3添加焼結体を用いず、蒸発セルを用いて金属Gaをドーピングしてもよい。
さらに、パッド電極107の原料であるAuおよびn型オーミック電極108の原料であるAlを、p型オーミック電極106と同様にレーザMBE装置で形成してもよい。
【0091】
発光ダイオード素子1aを成長層が形成されていない部分で切断してチップ状に分離し、リードフレームに取り付け、パッド電極107に配線を行った後、樹脂封止し発光させたところ、発光ピーク波長420nmの青色発光が得られた。
また、20mAの動作電流で連続駆動させたところ、発光強度が20%低下するまでに要した駆動時間は10,000時間であった。
【0092】
比較のため、MgO保護膜109を形成しない以外は、発光ダイオード素子1aと同様にして、発光ダイオード素子1bを作製し、発光させたところ、発光強度は発光ダイオード素子1aと比較して10%低下した。
また、20mAの動作電流で連続駆動させたところ、1,000時間を経過したところで発光強度が20%低下し、2,500時間経過したところで発光しなくなった。
【0093】
発光ダイオード素子1bが、樹脂封止しているにもかかわらず素子が劣化したのは、樹脂封止するまでの製造プロセスにおいて素子表面に吸着した水分がZnO系半導体を還元し、無効電流が増大すると共に、発光に伴う発熱などにより還元性欠陥が増殖し、素子が劣化したためと考えられる。
一方、発光ダイオード素子1aは、絶縁性の保護膜を主表面に形成しているので、還元性欠陥の増殖から素子が保護され、寿命が向上したと考えられる。
【0094】
さらに比較のため、p型オーミック電極106まで形成した後にZnO基板101をレーザMBE装置から取り出し、真空蒸着装置にてMgO保護膜109を形成する以外は、発光ダイオード素子1aと同様にして発光ダイオード素子1cを作製したところ、発光強度は発光ダイオード素子1aと比較して10%低下した。
また、20mAの動作電流で連続駆動させたところ、5,000時間を経過したところで発光強度が20%低下した。
【0095】
発光ダイオード素子1cの素子寿命は、発光ダイオード素子1bに比べると向上したが、MgO保護膜が形成されているにもかかわらず、発光ダイオード素子1aより短かかった。これは、MgO保護膜109の形成前にレーザMBE装置から基板101を取り出したため、素子表面に水分が吸着し、還元性欠陥が増殖して素子が劣化したためと考えられる。
したがって、発光ダイオード素子の作製においては、ZnO系半導体層から絶縁性の保護膜までを同一装置内で連続して形成することがより好ましいことが分った。
【0096】
実施例2
図8に、MgO保護膜109の層厚と、素子寿命および発光強度との関係を示す。ここで、素子寿命は、素子を20mAの動作電流で連続駆動させ、動作開始から発光強度が20%低下するまでの時間として定義する。
図8から分るように、膜厚が3nm以上から、保護効果が顕著に現れるが、200nmを超えると光取り出し効率が悪化して発光効率が低下する。よって、保護層厚は3nm以上200nm以下の範囲で調整されることが好ましい。
【0097】
実施例3
この実施例は、本発明を発光ダイオード素子に適用した第2の実施形態の半導体発光素子を説明する。この実施例において、保護膜109を、厚さ15nmのMgO層および厚さ15nmのSiO2層の積層構造で構成する以外は、発光ダイオード素子1aと同様にして、発光ダイオード素子2aを作製した(図示せず)。保護膜109中、MgOおよびSiO2はいずれも非晶質であった。
【0098】
発光ダイオード素子2aをチップ状に分離してリードフレームに取り付け、パッド電極107に配線を行った後、樹脂封止し発光させたところ、発光ピーク波長420nmの青色発光が得られた。また、20mAの動作電流で連続駆動させたところ、発光強度が20%低下するまでに要した駆動時間は300,000時間であり、発光ダイオード素子1aと比較して素子寿命が長くなった。
【0099】
また、SiO2層の代りに非晶質のSi3N4層を用いる以外は、発光ダイオード素子2aと同様にして発光ダイオード素子2bを作製し、上記と同様にして発光させたところ、発光ダイオード素子2aと同様の結果が得られ、発光ダイオード素子1よりも信頼性が向上した。
【0100】
実施例4
保護膜109を厚さ15nmのMg0.3Zn0.7O層および厚さ15nmのCeO層の積層構造で構成する以外は、発光ダイオード素子1aと同様にして、発光ダイオード素子2cを作製した。Mg0.3Zn0.7O層は、ZnO系半導体層にエピタキシャル成長した単結晶であり、CeO層は非晶質であった。
【0101】
発光ダイオード素子2cをチップ状に分離してリードフレームに取り付け、パッド電極107に配線を行った後、樹脂封止し発光させたところ、発光ピーク波長420nmの青色発光が得られた。
また、20mAの動作電流で連続駆動させたところ、発光強度が20%低下するまでに要した駆動時間は20,000時間であり、発光ダイオード素子1aと比較して素子寿命が向上した。
【0102】
また、Mg0.3Zn0.7O層をBe0.1Zn0.9O層とする以外は、発光ダイオード素子2cと同様にして、発光ダイオード素子2dを作製し、発光させたところ、発光ダイオード素子2cと同様の結果が得られた。
【0103】
実施例5
保護膜109をLiGaO2層で構成する以外は、発光ダイオード素子1aと同様にして、発光ダイオード素子1dを作製した。LiGaO2層は、ZnO系半導体層にエピタキシャル成長した単結晶であった。
【0104】
発光ダイオード素子1dをチップ状に分離してリードフレームに取り付け、パッド電極107に配線を行った後、樹脂封止し発光させたところ、発光ピーク波長420nmの青色発光が得られた。
また、20mAの動作電流で連続駆動させたところ、発光強度が20%低下するまでに要した駆動時間は10,000時間であり、発光ダイオード素子1aと同等の信頼性改善効果が得られた。
【0105】
また、保護膜109をLi0.5Na0.5AlO2層で構成する以外、発光ダイオード素子1aと同様にして、発光ダイオード素子1eを作製し、発光させたところ、発光強度が20%低下するまでに要した駆動時間は18,000時間であり、発光ダイオード素子1aと比較して素子寿命が向上した。
【0106】
実施例6
保護膜109をCaHfO3層で構成する以外は、発光ダイオード素子1aと同様にして、発光ダイオード素子1fを作製した。CaHfO3層は、ZnO系半導体層にエピタキシャル成長した単結晶であった。
【0107】
発光ダイオード素子1fをチップ状に分離してリードフレームに取り付け、パッド電極107に配線を行った後、樹脂封止し発光させたところ、発光ピーク波長420nmの青色発光が得られた。
また、20mAの動作電流で連続駆動させたところ、発光強度が20%低下するまでに要した駆動時間は10,000時間であり、発光ダイオード素子1aと同等の信頼性改善効果が得られた。
【0108】
実施例7
また、保護膜109をCaZrO3層とLiGaO2層の積層構造で構成する以外は、発光ダイオード素子1aと同様にして発光ダイオード素子2eを作製し、発光させたところ、発光強度が20%低下するまでに要した駆動時間は25,000時間であり、発光ダイオード素子1aと比較して素子寿命が向上した。
【0109】
実施例8
保護膜109をScAlMgO4層で構成する以外は、発光ダイオード素子1aと同様にして、発光ダイオード素子1gを作製した。ScAlMgO4層は、ZnO系半導体層にエピタキシャル成長した単結晶であった。
【0110】
発光ダイオード素子1gをチップ状に分離してリードフレームに取り付け、パッド電極107に配線を行った後、樹脂封止し発光させたところ、発光ピーク波長420nmの青色発光が得られた。
また、20mAの動作電流で連続駆動させたところ、発光強度が20%低下するまでに要した駆動時間は20,000時間であり、発光ダイオード素子1a以上の信頼性改善効果が得られた。
【0111】
発光ダイオード素子2が発光ダイオード素子1よりも信頼性が向上したのは、保護膜109を異なる材料の積層構造で構成したことにより、還元雰囲気からの保護効果が増大したためと考えられる。また、本実施形態より、非晶質あるいは単結晶で構成された保護膜であれば、酸化物および窒化物いずれも効果を有する。
【0112】
実施例9
この実施例は、本発明を発光ダイオード素子に適用した第3の酸化物半導体発光素子を説明する。
図4は発光ダイオード素子3の断面図を示す。この実施例において、MgO保護膜109の外側に、厚さ50nmのポリイミドからなる有機薄膜111をスピンコーティングにより形成する以外は、発光ダイオード素子1aと同様にして、発光ダイオード素子3aを作製した。
なお、図中において、発光ダイオード素子1と同様の構成要素については図1と同じ符号を用いている。
【0113】
発光ダイオード素子3aをチップ状に分離してリードフレームに取り付け、パッド電極107に配線を行った後、樹脂封止し発光させたところ、発光ピーク波長420nmの青色発光が得られた。
また、20mAの動作電流で連続駆動させたところ、発光強度が20%低下するまでに要した駆動時間は50,000時間であり、発光ダイオード素子1a以上の信頼性改善効果が得られた。
【0114】
有機薄膜は、還元雰囲気からの保護効果が無機薄膜に比べて大きく、また保護膜形成が簡便であるという利点を有するので、信頼性と生産性に優れた酸化物半導体発光素子を作製できることが分った。
【0115】
実施例10
この実施例は、本発明を発光ダイオード素子に適用した第4の酸化物半導体発光素子を説明する。
図5は発光ダイオード素子4の断面図を示す。この実施例において、MgO保護膜109をAuパッド電極107形成後に堆積させ、ワイヤボンディングに必要な面積を除いて、Auパッド電極107を覆うように形成した。MgO保護膜109は、成長層形成後に一旦ZnO基板をレーザMBE装置から取り出し、パッド電極107を形成加工した後に積層した。それ以外は、発光ダイオード素子1aと同様にして、発光ダイオード素子4aを作製した。
なお、図中において、発光ダイオード素子1と同様の構成要素については図1と同じ符号を用いている。
【0116】
発光ダイオード素子4aをチップ状に分離してリードフレームに取り付け、パッド電極107に配線を行った後、樹脂封止し発光させたところ、発光ピーク波長420nmの青色発光が得られた。
【0117】
発光ダイオード素子4aにおいて、MgO保護膜109を連続形成していないので、その素子寿命は5,000時間を経過したところで発光強度が20%低下し、発光ダイオード素子1aと比較して短かかったが、パッド電極107上に保護膜109を形成していない発光ダイオード素子1cと比較して信頼性の向上が見られた。
【0118】
実施例11
次に、p型電極106とパッド電極107との密着性を調べた。具体的には、300個の発光ダイオード素子をリードフレームにワイヤボンディングし、電極剥れが生じる素子個数を計数した。
その結果、発光ダイオード素子1cは10個が電極剥れを生じたのに対し、発光ダイオード素子4aは電極剥れを全く生じないことが分った。
発光ダイオード素子4aは、保護膜がパッド電極を覆っているため、電極の密着性が向上し、また、電極の経時劣化が生じにくくなったので、パッド電極107上に保護膜109を形成していない発光ダイオード素子1cと比較して信頼性の向上が見られたと考えられる。
【0119】
実施例12
この実施例は、本発明を半導体レーザ素子に適用した第5の酸化物半導体発光素子を説明する。
図6は、半導体レーザ素子5の斜視図を示す。この実施例において、亜鉛面を主面としたn型ZnO単結晶基板501上に、Gaを1×1018cm−3の濃度でドーピングした厚さ0.1μmのn型ZnOバッファ層502、Gaを3×1018cm−3の濃度でドーピングした厚さ1μmのn型Mg0.1Zn0.9Oクラッド層503、Gaを5×1017cm−3の濃度でドーピングした厚さ30nmのn型ZnO光ガイド層504、ノンドープ量子井戸活性層505、Nを1×1018cm−3の濃度でドーピングした厚さ30nmのp型ZnO光ガイド層506、Nを5×1019cm−3の濃度でドーピングした厚さ1.2μmのp型Mg0.1Zn0.9Oクラッド層507、およびNを1×1020cm−3の濃度でドーピングした厚さ0.5μmのp型ZnOコンタクト層508を積層して、半導体レーザ素子5aを作製した。
量子井戸活性層505は、厚さ5nmのZnO障壁層2層と、厚さ6nmのCd0.1Zn0.9O井戸層3層とが交互に積層することによって形成されている。
【0120】
p型ZnOコンタクト層508およびp型Mg0.1Zn0.9Oクラッド層507はリッジストライプ状にエッチング加工され、リッジストライプ側面はGaを3×1018cm−3の濃度でドーピングしたn型Mg0.2Zn0.8O電流ブロック層509によって埋め込まれている。
【0121】
ZnO基板501の下にはn型オーミック電極510が形成され、p型ZnOコンタクト層508の上にはp型オーミック電極511が形成されている。
半導体レーザ素子5a全体は厚さ10nmのAl2O3保護膜512で覆われ、n型オーミック電極510およびp型オーミック電極511上の保護膜512の一部に、それぞれ、ワイヤボンディングのための開口部513および514を有している(n型オーミック電極510の開口部513は図示されていない)。
【0122】
半導体レーザ素子5aに電流を流したところ、端面から波長405nmの青色発振光が得られた。発振閾値電流は40mAで、素子寿命(60℃、光出力5mWで連続発振させ、動作電流が初期値より20%増大するまでの時間で定義する)は50,000時間であった。
【0123】
比較のため、Al2O3保護膜512を形成しない以外は、半導体レーザ素子5aと同様にして、半導体レーザ素子5bを作製し、発光させたところ、半導体レーザ素子5aと比較して発振閾値電流が7mA増大し、素子寿命は800時間であった。
【0124】
さらに比較のため、共振器端面にのみAl2O3保護膜512を形成する以外は、半導体レーザ素子5aと同様にして、半導体レーザ素子5cを作製し、発光させたたところ、半導体レーザ素子5aと比較して発振閾値電流が4mA増大し、素子寿命は5,000時間であった。
【0125】
半導体レーザ素子5aは、素子全体がAl2O3膜で保護されているので、素子側面などを流れる無効電流も抑止され、還元による経時劣化が抑制されて素子寿命が向上したためと考えられる。
半導体レーザ素子の共振器端面は、反射率制御のために屈折率の異なる誘電体層を積層することが一般に行われるが、その場合も本発明に用いることができる保護膜材料によって端面反射膜を形成することが好ましいことが分った。
【0126】
【発明の効果】
本発明の酸化物半導体発光素子は、基板上に、少なくともn型ZnO系半導体クラッド層、ZnO系半導体活性層、p型ZnO系半導体クラッド層、p型ZnO系半導体コンタクト層および電極が形成され、その主表面が絶縁性の保護膜で被覆され、ここに、該電極の少なくとも一部の領域が該絶縁性の保護膜から露出しているので、素子表面を流れる漏れ電流が抑止されると共に還元雰囲気から素子が保護され、信頼性に優れ発光効率の高い酸化物半導体発光素子を作製できる。
また、本発明の酸化物半導体発光素子の製造方法によると、レーザアブレーション法によって、基板上に発光素子を成長した後、成膜装置内で連続して絶縁性の保護膜を全面に堆積する工程を含むので、結晶成長から保護膜形成までを連続して行うことにより水分の付着を防ぐことができ、信頼性に優れた酸化物半導体発光素子を作製できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明による第1の実施形態の酸化物半導体発光素子(発光ダイオード素子)を示す断面図。
【図2】 本発明による第1の実施形態の酸化物半導体発光素子の製造工程を説明する概略図。
【図3】 絶縁性基板を用いた第1の実施形態の酸化物半導体発光素子(発光ダイオード)を示す断面図。
【図4】 本発明による第3の実施形態の酸化物半導体発光素子(発光ダイオード素子)を示す断面図。
【図5】 本発明による第4の実施形態の酸化物半導体発光素子(発光ダイオード素子)を示す断面図。
【図6】 本発明による第5の実施形態の酸化物半導体発光素子(半導体レーザ素子)を示す断面図。
【図7】 レーザ分子線エピタキシー装置の概略図。
【図8】 MgO保護膜の層厚と発光ダイオード素子の寿命および発光強度との関係を説明するグラフ。
【図9】 本発明の4つの酸化物に対して、組成と平均酸素−酸素間距離で表される実効格子定数との関係を説明するグラフ。
【図10】 ZnOおよびABO3なる組成を有するペロブスカイト酸化物の表面構造を説明する概略図。
【図11】 絶縁体酸化物ScAlMgO4の結晶構造を説明する概略図。
【符号の説明】
1・・・発光ダイオード素子、
101・・・ZnO基板、
102・・・n型MgZnOクラッド層、
103・・・CdZnO発光層、
104・・・p型MgZnOクラッド層、
105・・・p型ZnO系半導体コンタクト層、
106・・・p型オーミック電極、
107・・・パッド電極、
108・・・n型オーミック電極、
109・・・MgO保護膜、
110・・・レジストマスク、
111・・・ポリイミド保護膜、
112・・・n型ZnOバッファ層、
113・・・n型ZnOコンタクト層、
5・・・半導体レーザ素子、
501・・・ZnO基板、
502・・・n型ZnOバッファ層、
503・・・n型MgZnOクラッド層、
504・・・n型ZnO光ガイド層、
505・・・量子井戸活性層、
506・・・p型ZnO光ガイド層、
507・・・p型MgZnOクラッド層、
508・・・p型ZnOコンタクト層、
509・・・n型MgZnO電流ブロック層、
510・・・n型オーミック電極、
511・・・p型オーミック電極、
512・・・Al2O3保護膜、
513・・・開口部、
514・・・開口部、
7・・・レーザMBE装置、
701・・・成長室、
702・・・基板ホルダー、
703・・・基板、
704・・・ヒーター、
705・・・ターゲットテーブル、
706・・・原料ターゲット、
707・・・ビューポート、
708・・・パルスレーザ光(エキシマレーザ)、
709・・・ラジカルセル、
710・・・ガス導入管、
711・・・遮蔽マスク。
Claims (9)
- 基板上に、少なくともn型ZnO系半導体クラッド層、ZnO系半導体活性層、p型ZnO系半導体クラッド層、p型ZnO系半導体コンタクト層および電極が形成された酸化物半導体素子であって、その主表面が絶縁性の保護膜で被覆され、
ここに、該電極の少なくとも一部の領域が該絶縁性の保護膜から露出し、
該絶縁性の保護膜が非晶質であり、かつ
該絶縁性の保護膜が、
ABO 2 なる組成を有し、Aが少なくともLi、NaまたはKのいずれかを含み、Bが少なくともAl、GaまたはInのいずれかを含むか、または
RABO4またはRAO3(BO)nなる構造を有し、かつ、該酸化物層中の元素RがScおよびInよりなる群から選択された少なくとも1種類の元素を含有し、かつ、元素AがAl、FeおよびGaよりなる群から選択された少なくとも1種類の元素を含有し、かつ、元素BがMg、Mn、Fe、Co、Cu、ZnおよびCdよりなる群から選択された少なくとも1種類の元素を含有する酸化物を含むことを特徴とする酸化物半導体発光素子。 - 該絶縁性の保護膜の厚みが3〜200nmである請求項1記載の酸化物半導体発光素子。
- 該絶縁性の保護膜が2層以上の積層膜であって、該2層以上の積層膜の各々は、異なる材料より構成される請求項1記載の酸化物半導体発光素子。
- 該絶縁性の保護膜が、SiO2、Si3N4およびAl2O3よりなる群から選択された非晶質材料を含む請求項1記載の酸化物半導体発光素子。
- 該絶縁性の保護膜が、該活性層より大きなバンドギャップエネルギーを有するZnO系半導体を含む請求項1記載の酸化物半導体発光素子。
- 該絶縁性の保護膜が、Li1−aNaaAlO2、Li1−bNabGaO2、LiAl1−cGacO2またはNaAl1−dGadO2(0≦a、b、c、d≦1)のいずれかである請求項1記載の酸化物半導体素子。
- 該絶縁性の保護膜が、ScAlMgO4、ScGaMgO4、ScAlMnO4、ScGaCoO4、ScAlCoO4、ScGaZnO4、ScAlZnO4、ScGaO3(ZnO)nまたはScAlO3(ZnO)nのいずれかを含む請求項1記載の酸化物半導体発光素子。
- 該絶縁性の保護膜が、絶縁性の有機薄膜を最表面に含む請求項1記載の酸化物半導体発光素子。
- 素子表面に形成された電極の一部が該絶縁性の保護膜で覆われている請求項1記載の酸化物半導体発光素子。
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