JP2004349584A - 酸化物半導体発光素子 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】サファイア基板101と量子井戸発光層105との間に、Li1−bNabGaO2バッファ層102を形成している。このLi1−bNabGaO2バッファ層102は、裏面と表面との間でNa組成比bが傾斜している。これにより、Li1−bNabGaO2バッファ層102上に、欠陥の少ないZnO系半導体をエピタキシャル成長出来る。
【選択図】 図1
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は例えば発光ダイオードや半導体レーザなどの半導体発光素子に関し、さらに詳しくは、半導体結晶中の歪を低減し発光特性と信頼性に優れた酸化物半導体発光素子に関する。
【0002】
【従来の技術】
酸化亜鉛(ZnO)は、約3.4eVのバンドギャップエネルギーを有する直接遷移型半導体で、励起子結合エネルギーが60meVと極めて高く、また原材料が安価、環境や人体に無害で成膜手法が簡便であるなどの特徴を有し、高効率・低消費電力で環境性に優れた発光デバイスを実現出来る可能性がある。
【0003】
以下、ZnOおよびこれを母体としたMgZnOまたはCdZnOなどで表される混晶を含めて「ZnO系半導体」と言う。
【0004】
ZnO系半導体は、青色〜紫外領域の発光素子として既に実用化されているIII族窒化物半導体と同じウルツ鉱の結晶構造を有し、熱膨張係数や格子定数がGaNに極めて近いことから、III族窒化物半導体デバイスで用いられているサファイアやSiなどの基板上にエピタキシャル成長させることが出来る。
【0005】
例えば、特開2001−44499号公報(特許文献1)には、Si基板上にシリコン窒化膜を形成し、そのシリコンチッ化膜上にZnO系半導体薄膜を結晶成長する技術が開示されている。また、特開2001−44500号公報(特許文献2)には、A面(11−20)を主面としたサファイア基板上にZnO系半導体薄膜を結晶成長する技術が開示されている。
【0006】
Siやサファイアはコストが低く、極めて高品質な基板結晶を形成出来るが、III族窒化物半導体やZnO系半導体とは格子定数差が十数%以上と極めて大きい。このため、Si基板やサファイア基板上にエピタキシャル成長させたZnO系半導体中には多くの結晶欠陥が発生する。
【0007】
このような基板とZnO系半導体との格子不整合による欠陥を低減するために、半導体デバイスにおいては、基板とZnO系半導体との間にバッファ層を介在させて、良質なZnO系半導体を得る技術が一般的に用いられている。
【0008】
上記Si基板やサファイア基板などの異種基板を主として用いたIII族窒化物半導体の成長においては、低温成長させたGaNやAlN、InGaN混晶をバッファ層に用いる技術が多く開示されている。そして、ZnO系半導体に関しても、国際公開第00/16411号パンフレット(特許文献3)において、MgZnOやAl2O3、低温成長させたZnOおよびAlGaNなどをバッファ層に用いる技術が開示されている。
【0009】
【特許文献1】
特開2001−44499号公報
【特許文献2】
特開2001−44500号公報
【特許文献3】
国際公開第00/16411号パンフレット
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
III族窒化物半導体の成長においては、上述したようなGaN系のバッファ層上にエピタキシャル層を形成することによって、エピタキシャル層は2次元の横方向成長が促成される。これにより、格子定数差の大きい異種基板上でも良質なエピタキシャル層が得られる。
【0011】
しかし、ZnO系半導体の場合は、上記GaN系やMgZnOなどのバッファ層を基板上に形成しても界面エネルギーの減少割合が小さく、格子定数差の大きい上記基板上では結晶性が顕著に改善されない。すなわち、上記バッファ層上に、ZnO系半導体を良好な結晶性でエピタキシャル成長させることができないという問題がある。
【0012】
特に、低温で堆積したバッファ層は平坦性に乏しいため、ZnO系半導体のエピタキシャル層には結晶粒界や多数の欠陥が発生し、実用に供する発光素子を作製出来ない。
【0013】
そこで、本発明の目的は、エピタキシャル層の欠陥を低減出来、高信頼性と高発光効率とを有する酸化物半導体発光素子を提供することにある。
【0014】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、格子定数差の大きい異種基板上にZnO系半導体をエピタキシャル成長する際のバッファ層材料およびその形成方法について鋭意検討した結果、ZnO系半導体との親和性に優れ、組成比によって異種基板からZnO系半導体までの格子定数を制御可能な酸化物薄膜をバッファ層に用いることで、上記目的が達せられることを見い出し本発明に至った。
【0015】
本発明の酸化物半導体発光素子は、基板上に、ZnO系半導体から成る発光層が形成された酸化物半導体発光素子において、上記基板と上記発光層との間に形成され、Li1−(x+y)NaxKyAl1−zGazO2(0≦x,y,z≦1かつ0≦(x+y)≦1)を含むバッファ層を備えたことを特徴としている。
【0016】
上記「発光層」は、発光を司る層という意味において「活性層」と同義であるので、以下においては特に区別しない。
【0017】
上記構成の酸化物半導体発光素子によれば、上記Li1−(x+y)NaxKyAl1−zGazO2から成る薄膜はZnO系半導体と類似の結晶構造を有するので、その薄膜上にZnO系半導体をエピタキシャル成長出来る。
【0018】
更に、上記Li1−(x+y)NaxKyAl1−zGazO2の組成比を制御することにより、ZnO系半導体の格子定数に極めて近い範囲でその薄膜の格子定数を制御出来る。
【0019】
したがって、格子定数の異なる異種基板上にZnO系半導体を成長する場合でも、本発明のバッファ層を形成することにより、殆ど歪を内在しないZnO系半導体エピタキシャル層を得ることが出来、信頼性に優れた酸化物半導体発光素子を作製出来る。
【0020】
一実施形態の酸化物半導体発光素子は、上記バッファ層と上記発光層との間に形成され、ZnO系半導体から成る第1導電型クラッド層と、上記発光層上に形成され、ZnO系半導体から成る第2導電型クラッド層とを備えている。
【0021】
本明細書において、第1導電型とは、p型またはn型を意味する。また、第2導電型とは、第1導電型がp型の場合はn型、n型の場合はp型を意味する。
【0022】
上記実施形態の酸化物半導体発光素子によれば、上記第1導電型クラッド層と第2導電型クラッド層とで発光層を挟んでいるので、発光効率を高めることが出来る。
【0023】
一実施形態の酸化物半導体発光素子は、上記バッファ層が、Li1−aNaaAlO2、Li1−bNabGaO2、LiAl1−cGacO2およびNaAl1−dGadO2(0<a,b,c,d<1)のうちのいずれか1つを含む。
【0024】
上記実施形態の酸化物半導体発光素子によれば、上記Li1−aNaaAlO2、Li1−bNabGaO2、LiAl1−cGacO2およびNaAl1−dGadO2の酸化物は、Li1−(x+y)NaxKyAl1−zGazO2の中で、ZnO系半導体との格子定数差が特に小さく、組成比の制御が容易である。したがって、上記酸化物をバッファ層に用いることにより、より信頼性に優れた酸化物半導体発光素子を作製出来る。
【0025】
一実施形態の酸化物半導体発光素子は、上記Li1−(x+y)NaxKyAl1−zGazO2は成長方向において組成傾斜している。
【0026】
上記実施形態の酸化物半導体発光素子によれば、上記Li1−(x+y)NaxKyAl1−zGazO2が成長方向において組成傾斜しているので、バッファ層が成長方向の組成傾斜を有する。これにより、上記バッファ層の面内格子定数が成長方向において傾斜する。つまり、上記バッファ層の面内格子定数が成長方向において変化する。その結果、上記バッファ層と異種基板との間の格子不整合を緩和出来ると共に、バッファ層とZnO系半導体との間の格子不整合も緩和出来る。したがって、上記ZnO系半導体とは異なる格子定数の異種基板上に、ZnO系半導体を成長する場合でも、殆ど歪を内在しないZnO系半導体エピタキシャル層を得ることが出来る。
【0027】
一実施形態の酸化物半導体発光素子は、上記バッファ層が超格子構造を有する。
【0028】
上記実施形態の酸化物半導体発光素子によれば、上記ZnO系半導体に対して格子不整合の大きな異種基板上では、バッファ層が超格子構造を有することにより、バッファ層上にエピタキシャル成長したZnO系半導体において結晶欠陥や格子歪を更に低減出来る。また、上記バッファ層に超格子構造を持たせても、バッファ層自体の結晶性を損ねない。したがって、極めて信頼性に優れた酸化物半導体発光素子を作製出来る。
【0029】
一実施形態の酸化物半導体発光素子は、上記バッファ層において上記基板とは反対側の表面は、Li1−aNaaAlO2の組成を有し、上記Li1−aNaaAlO2のNa組成比aが0.4〜0.6の範囲内である。
【0030】
上記実施形態の酸化物半導体発光素子によれば、上記バッファ層において基板とは反対側の表面は、Na組成比aが0.4〜0.6のLi1−aNaaAlO2の組成を有するので、ZnOとほぼ完全に格子整合する。したがって、極めて高い結晶性のZnO系エピタキシャル膜が得られ、酸化物半導体発光素子の信頼性を格段に向上させることが出来る。
【0031】
一実施形態の酸化物半導体発光素子は、上記バッファ層において上記基板とは反対側の表面は、Li1−bNabGaO2の組成を有し、上記Li1−bNabGaO2のNa組成比bが0.15〜0.35の範囲内である。
【0032】
上記実施形態の酸化物半導体発光素子によれば、上記バッファ層において基板とは反対側の表面は、Na組成比bが0.15〜0.35のLi1−bNabGaO2の組成を有するので、ZnOとほぼ完全に格子整合する。したがって、極めて高い結晶性のZnO系エピタキシャル膜が得られ、酸化物半導体発光素子の信頼性を格段に向上させることが出来る。
【0033】
一実施形態の酸化物半導体発光素子は、上記バッファ層の成長方向の主面が(001)であり、上記バッファ層上にエピタキシャル成長されたZnO系半導体の成長主面が(0001)である。
【0034】
上記実施形態の酸化物半導体発光素子によれば、上記バッファ層の成長方向の主面を(001)とし、バッファ層上にエピタキシャル成長するZnO系半導体の成長主面を(0001)とするので、ZnO系半導体の成長面方位を制御出来、特に上記所定の成長主面を持つZnO系半導体はドーピング特性に優れ、動作電圧が低減する。このことにより、省電力性と信頼性に優れた酸化物半導体発光素子を作製出来る。
【0035】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の酸化物半導体発光素子を図示の実施の形態により詳細に説明する。
【0036】
(実施形態1)
本実施形態1では、ZnO系半導体で構成した青色発光ダイオード素子に本発明を適用した一例について説明する。
【0037】
図1に、本実施形態1の発光ダイオード素子の模式断面図を示す。なお、図1の右側のグラフでは、上記発光ダイオードのバッファ層のNa組成比を実線で示し、そのバッファ層の面内格子定数を点線で示している。
【0038】
上記発光ダイオード素子は、サファイアC面(0001)を主面とするサファイア基板101上に、厚さ30nmのLi1−bNabGaO2バッファ層102、Ga(ガリウム)が3×1018cm−3の濃度でドープされた厚さ0.1μmのn型ZnOコンタクト層103、Gaが1×1018cm−3の濃度でドープされた厚さ1μmのn型Mg0.1Zn0.9Oクラッド層104、ノンドープ量子井戸発光層105、N(窒素)が5×1019cm−3の濃度でドープされた厚さ1μmのp型Mg0.1Zn0.9Oクラッド層106、Nが1×1020cm−3の濃度でドープされた厚さ0.3μmのp型ZnOコンタクト層107がこの順で積層されている。但し、上記Li1−bNabGaO2バッファ層102のNa組成比bは0<b<1の範囲内となっている。
【0039】
本実施形態1では、上記サファイア基板101が基板の一例に、Li1−bNabGaO2バッファ層102がバッファ層の一例に、n型Mg0.1Zn0.9Oクラッド層104が第1導電型クラッド層の一例に、量子井戸発光層105が発光層の一例に、p型Mg0.1Zn0.9Oクラッド層106が第2導電型クラッド層の一例にそれぞれ相当する。
【0040】
上記Li1−bNabGaO2バッファ層102は、Li1−bNabGaO2で構成され、図1の右側のグラフで示すようなNa組成比bを有している。
【0041】
より詳しく説明すると、上記Li1−bNabGaO2バッファ層102は、サファイア基板101と接する裏面がNaGaO2(Li1−bNabGaO2でのNa組成比b=1)から成り、n型ZnOコンタクト層103と接する表面がLi0.75Na0.25GaO2(Li1−bNabGaO2でのNa組成比b=0.25)から成っている。そして、上記Li1−bNabGaO2バッファ層102は、裏面と表面との間でNa組成比bが傾斜を有している。つまり、上記Li1−bNabGaO2バッファ層102は、裏面から表面に向ってNa組成比bが小さくなるように組成傾斜している。
【0042】
上記量子井戸発光層103は、厚さ5nmのZnO障壁層と、厚さ4nmのCd0.2Zn0.8O井戸層とが交互に積層されて成っている。上記ZnO障壁層は8層ある一方、Cd0.2Zn0.8O井戸層は7層ある。
【0043】
上記n型Mg0.1Zn0.9Oクラッド層104から図中上側(サファイ基板101とは反対側)に向ってp型ZnOコンタクト層107までの層を形成するためのエピタキシャル層の一部をエッチングすることで露出したn型ZnOコンタクト層103の表面上に、Al(アルミニウム)から成る厚さ100nmのn型オーミック電極110を形成している。
【0044】
上記p型ZnOコンタクト層107の主表面全面には、厚さ15nmのNi(ニッケル)を積層した透光性p型オーミック電極108が積層されている。また、上記p型オーミック電極108上には、Au(金)から成る厚さ100nmのボンディング用p型パッド電極109をオーミック電極108より小さい面積で形成している。
【0045】
本発明の酸化物半導体発光素子は、固体または気体原料を用いたMBE(分子線エピタキシ)法、レーザMBE法、MOCVD(有機金属気相成長)法などの結晶成長手法で作製することが出来るが、本実施形態の発光ダイオード素子は、図2に示すレーザMBE装置200で形成した。
【0046】
上記レーザMBE装置200は超高真空に排気可能な成長室201を備えている。この成長室201の一方の側壁には、パルスレーザ光208が通過するビューポート207を設けている。そして、上記成長室201の他方の側壁には、活性化された原子状ビームを基板203に向けて照射可能なラジカルセル209と、成長室201内に複数のガスを導入できるよう複数のガス導入管210および211とを設けている。また、上記成長室201の上部には、基板203を固定する基板ホルダ202が配置されている。この基板ホルダ202の上方にはヒータ204を配置し、基板ホルダ202の下方には所定の距離をおいてターゲットテーブル205を配置している。このターゲットテーブル205は、複数の原料ターゲット206を上面(基板ホルダ202側の表面)上に配置できる。また、図示しないが、上記ターゲットテーブル205は回転機構を有している。
【0047】
上記ヒータ204は、基板ホルダー202の上面(原料ターゲット206とは反対側の表面)を加熱する。そうすると、上記基板ホルダー202の上面の熱が熱伝導により基板203に伝わって、基板203が加熱される。その後、上記ビューポート207を通じてパルスレーザ光208を原料ターゲット206の表面に照射し、原料ターゲット206の表面をアブレーションする。これにより、瞬時に蒸発した原料ターゲット206が基板203の下面に付着し、基板203下に薄膜が成長する。そして、上記パルスレーザ光208の照射シーケンスに同期してターゲットテーブル205の回転を制御することにより、異なる原料ターゲット206の表面にパルスレーザ光208を照射して、その異なる原料ターゲット206を上記薄膜に付着させることが可能となる。つまり、上記薄膜とは異なる薄膜を基板203下に成長させることが可能となる。また、上記ラジカルセル209によって活性化された原子状ビームを基板203に照射することも可能である。
【0048】
上記レーザMBE法は、原料ターゲットと、この原料ターゲットの表面をアブレーションすることで成長させた薄膜との間において組成ずれが小さく、またZnGa2O4などの意図しない副生成物の生成を抑えることができるので好ましい。
【0049】
以下、上記発光ダイオード素子の製造方法を順に説明する。
【0050】
まず、洗浄処理したサファイア基板101をレーザMBE装置200に導入し、温度600℃で30分間加熱し清浄化する。
【0051】
次に、基板温度を500℃に降温し、LiGaO2単結晶およびNaGaO2単結晶を原料ターゲット206とし、回転機構によるターゲットテーブル205の駆動周期とKrFエキシマレーザのパルス照射周期とを外部制御装置(図示しない)によって同期させる。そして、上記LiGaO2単結晶とNaGaO2単結晶とを交互にKrFエキシマレーザでアブレーションして、Li1−bNabGaO2バッファ層102を成長する。
【0052】
上記KrFエキシマレーザは、波長が248nm、パルス数が10Hz、出力が1J/cm2のものである。なお、上記Li1−bNabGaO2バッファ層102の成長中には、ガス導入管210によりO2ガスを成長室201内に導入する。
【0053】
また、上記LiGaO2単結晶とNaGaO2単結晶とのアブレーション比率は、図1の右側のグラフに示したNa組成比傾斜となるように調整する。
【0054】
次に、ノンドープZnO単結晶と、Ga2O3を添加したZnO燒結体とを原料ターゲット206として用い、所望のGaドーピング濃度が得られる比率で交互にアブレーションして、n型ZnOコンタクト層103を成長する。
【0055】
次に、ノンドープZnO単結晶と、Ga2O3を添加したMgZnO燒結体とを原料ターゲット206として用い、これらを所望のMg組成およびGaドーピング濃度が得られる比率で交互にアブレーションして、n型Mg0.1Zn0.9Oクラッド層104を形成するためのエピタキシャル層を成長する。
【0056】
次に、ノンドープZnO単結晶、CdZnO燒結体を原料ターゲット206として用い、これらを所望のCd組成比が得られる比率で交互にアブレーションする。これにより、ZnO障壁層とCd0.2Zn0.8O井戸層とより成る量子井戸活性層105を形成するためのエピタキシャル層を成長する。
【0057】
次に、ガス導入管211より導入したN2ガスをラジカルセル209でプラズマ化して照射しながら、原料ターゲット206としてのノンドープZnO単結晶およびノンドープMgZnO燒結体を交互アブレーションして、p型Mg0.1Zn0.9Oクラッド層106を形成するための成長する。
【0058】
次に、上記ガス導入管211より導入したN2ガスをラジカルセル209でプラズマ化して照射しながら、原料ターゲット206としてのノンドープZnO単結晶をアブレーションして、p型ZnOコンタクト層107を形成するためのエピタキシャル層を成長する。
【0059】
次に、上記基板101をレーザMBE装置200から取り出し、基板101の一部を覆うレジストマスクを形成し、1重量%の硝酸水溶液を用いて、n型ZnOコンタクト層103上の各エピタキシャル層を部分的にエッチング除去する。これにより、上記n型Mg0.1Zn0.9Oクラッド層104、量子井戸活性層105、p型Mg0.1Zn0.9Oクラッド層106およびp型ZnOコンタクト層107が得られる。
【0060】
次に、露出したn型ZnOコンタクト層103上にn型オーミック電極110としてAlを真空蒸着した後、レジストマスクを洗浄除去し、p型ZnOコンタクト層107の上面全面に、p型オーミック電極108としてNi薄膜を真空蒸着する。このNi薄膜は高い透光性を有し、青色発光波長において80%を透過する。
【0061】
最後に、上記p型オーミック電極108上にパッド電極109として厚さ100nmのAuを真空蒸着する。
【0062】
なお、本実施形態1では、所望のMg組成およびGaドーピング濃度を、ZnO単結晶とGaドープMgZnO燒結体の2つの原料ターゲット206を交互アブレーションして制御したが、ZnO単結晶、ノンドープMgZnO燒結体およびGaドープZnO燒結体の3つの原料ターゲット206を打ち分けるなどの方法で制御してもよい。
【0063】
また、MgZnO燒結体を用いず、ZnO単結晶とMgO単結晶とを交互アブレーションして所望組成のMgZnO混晶を得てもよい。
【0064】
更に、Ga2O3添加燒結体を用いず、蒸発セルを用いて金属Gaをドーピングしてもよい。
【0065】
本実施形態1の発光ダイオード素子をチップ状に分離してリードフレームに取り付け、n型オーミック電極110とp型パッド電極109に配線を行った後、樹脂モールドし発光させたところ、発光ピーク波長430nmの青色発光が得られた。
【0066】
比較例1として、Li1−bNabGaO2バッファ層102を形成せずに、サファイア基板101上に直接ZnO系半導体層をエピタキシャル成長して発光ダイオード素子を作製したところ、20mAの動作電流における発光強度は本実施形態1に比べて70%減少し、素子寿命(動作電流20mAで発光強度が初期値より50%に減少した時間で定義する)は本実施形態1に比べて1/3になった。
【0067】
比較例2として、Li1−bNabGaO2のNa組成比がb=1で一定となって組成傾斜を有さないバッファ層をバッファ層102の代わりに用いて発光ダイオード素子を作製したところ、20mAの動作電流における発光強度は本実施形態1に比べて40%減少し、素子寿命は本実施形態1に比べて30%短くなった。
【0068】
比較例3として、Li1−bNabGaO2のNa組成比がb=0.25で一定となって組成傾斜を有さないバッファ層をバッファ層102の代わりに用いて発光ダイオード素子を作製したところ、20mAの動作電流における発光強度は本実施形態1に比べて5%減少し、素子寿命は本実施形態1に比べて2%短くなった。
【0069】
以上に示したように、格子定数の異なる異種基板上にZnO系半導体を成長する場合、Li1−(x+y)NaxKyAl1−zGazO2を含むバッファ層を形成することにより、発振閾値電流が低く信頼性に優れた酸化物半導体発光素子を作製出来る。
【0070】
図3に、本実施形態1のバッファ層102に用いた絶縁体酸化物Li1−bNabGaO2の結晶構造をZnOと比較して示す。
【0071】
αβO2(α,βは単数または複数の原子を表わす)なる構成の斜方晶酸化物は、ZnO系半導体のウルツ鉱構造に類似の結晶構造を有している。特に、上記αの元素がLi(リチウム)、Na(ナトリウム)およびK(カリウム)の少なくとも2つを含み、且つ、上記βの元素がAlおよびGaの少なくとも1つを含む場合、上記酸化物の面内格子定数はZnOに極めて近く、構成元素の組成比を適切に選択することにより、基板の格子定数に近づけたり、ZnO系半導体に格子整合させることが出来る。
なお、図3における絶縁体酸化物Li1―bNabGaO2の酸素―酸素間距離(S=3.14ÅおよびL=3.19Å)は、Na組成比bが0のときの格子定数である。
【0072】
特に、本実施形態1のLi1−bNabGaO2のほかに、Li1−aNaaAlO2、LiAl1−cGacO2およびNaAl1−dGadO2(0<a,c,d<1)など、α,βのいずれか一方が2種の元素から成る上記酸化物は、組成比の制御が簡便であるので好ましい。
【0073】
図4(a),(b)に、上記4つの酸化物に対して平均格子定数を求めた結果を示す。ここで「平均格子定数」とは、同一面内の6つの酸素原子で構成される六角形と同じ面積の正六角形を仮定し、この正六角形の一辺を成す酸素−酸素原子間距離と定義する。
【0074】
図4(a),(b)から判るように、上記4つの酸化物の格子定数は、ZnOに対して全組成範囲で94%(3.12Å)〜106%(3.44Å)の範囲内の格子定数に制御出来る。特に、下記(1),(2)の条件を満たす場合は、上記4つの酸化物とZnOとの格子定数差が極めて小さいため好ましい。
(1) Li1−aNaaAlO2において、Na組成比aを0.4〜0.6の範囲内とする。
(2) Li1−bNabGaO2において、Na組成比bを0.15〜0.35の範囲内とする。
【0075】
また、図4(a),(b)から、Li0.5Na0.5AlO2またはLi0.75Na0.25GaO2は、ZnOとほぼ完全に格子整合し、歪を有せず結晶性に優れたZnO系半導体層をエピタキシャル成長出来ることがわかる。
【0076】
本発明のLi1−(x+y)NaxKyAl1−zGazO2バッファ層は、単一組成で用いても効果を有することは比較例1〜3から明らかであるが、本実施形態1で示したように、バッファ層において基板側およびZnO系半導体側で各々格子不整合が小さくなるよう組成傾斜を設けると、ZnO系半導体で結晶欠陥や格子歪が大幅に緩和され、極めて特性に優れた酸化物半導体発光素子を作製出来る。
なお、組成傾斜は、本実施形態のように連続的な傾斜のみならず、階段状の傾斜を有していてもよい。
【0077】
本発明のLi1−(x+y)NaxKyAl1−zGazO2バッファ層は、成長主面が(001)となるよう形成されると、そのバッファ層上にエピタキシャル成長するZnO系半導体層が亜鉛面(0001)となる。亜鉛面が成長主面であればp型層のキャリア活性化率が向上し、抵抗の低いp型層が得られやすくなるので好ましい。
【0078】
以下、本実施形態1において本発明の効果を最大限に得るための他の構成について記すが、その他の実施形態において任意に組み合わせて用いてもよい。
【0079】
p型ZnO系半導体層にドーピングするアクセプタ不純物としては、I族元素のLi、Cu(銅)およびAg(銀)や、V族元素のN、As(砒素)およびP(リン)などを用いることが出来るが、本発明の効果を最大限に得るためには、活性化率が高いN、LiおよびAgが特に好ましく、更にNはN2をプラズマ化し結晶成長中に照射する手法によって、結晶性を良好に保って高濃度ドーピングが行えるので好ましい。
【0080】
n型ZnO系半導体層にドーピングするドナー不純物にはIII族元素のB(ホウ素)、Al、GaおよびIn(インジウム)などを用いることが出来るが、ZnO系半導体中での活性化率が高いGaまたはAlが好ましい。
【0081】
酸化物半導体発光素子の効率を向上させるには、p型MgZnOクラッド層106上に直接p型オーミック電極108を形成せず、p型コンタクト層107を設けて低抵抗化することが好ましい。コンタクト層材料には、結晶性に優れキャリア濃度を高く出来るZnOを用いることが好ましい。p型ZnOコンタクト層107に過剰にアクセプタ不純物をドーピングすると結晶性劣化が顕著となり、本発明の効果が減少するので、5×1016cm−3〜5×1019cm−3のキャリア濃度範囲となるようドーピングされることが好ましい。
【0082】
n型コンタクト層103にはp型コンタクト層107の場合と同様にZnOが適しており、ドナー不純物のドーピング濃度は1×1018cm−3〜1×1021cm−3の範囲が好ましく、更には5×1019cm−3〜5×1020cm−3の範囲で調整されることが好ましい。また、膜厚は、0.001μm〜1μm、好ましくは0.005μm〜0.5μm、更に好ましくは0.01μm〜0.1μmの範囲に調整されることが好ましい。
【0083】
本実施形態1においては、成長主面としてサファイアC面(0001)を用いたが、A面(11−20)を用いてもよい。
【0084】
また、基板に入射した発光を乱反射させるために、研磨やエッチングなどの公知の手法で基板裏面に凹凸を形成すれば、光取り出し効率が向上するので好ましい。
【0085】
p型オーミック電極108の材料には、Ni、Pt(白金)、Pd(パラジウム)およびAuなどを用いることが出来るが、中でも低抵抗で密着性の良いNiが好ましい。また、上記複数の金属材料を合金化して形成してもよい。
【0086】
p型オーミック電極形成後にアニール処理を行うと、p型オーミック電極の密着性が向上すると共に、p型オーミック電極の接触抵抗が低減するので好ましい。このようなアニール効果を、ZnO結晶に欠陥を生じずに得るには、アニール処理の温度は300℃〜400℃の範囲内が好ましい。また、上記アニール処理における雰囲気はO2または大気雰囲気中が好ましく、N2では逆に抵抗が増大するので好ましくない。
【0087】
リードフレームへの配線を簡便に行うためには、p型オーミック電極108上にワイヤボンディング用のパッド電極109を設けることが有効である。パッド電極109の材料としてはボンディングが容易でZnO中へ拡散してもドナー不純物とならないAuが好ましい。p型オーミック電極108とパッド電極109との間に、密着性を向上させる目的で他の金属層を設けてもよい。
【0088】
上記n型オーミック電極110の材料には、Ti(チタン)、Cr(クロム)およびAlなどを用いることが出来る。Ti、CrおよびAlなどの中でも、低抵抗でコストの低いAlまたは密着性の良いTiが好ましい。上記Ti、CrおよびAlなどの複数の金属材料を合金化してn型オーミック電極を形成してもよい。
【0089】
その他の構成は任意であり、本実施形態によって限定されるものではない。
【0090】
(実施形態2)
図5に、本実施形態2の発光ダイオード素子の模式断面図を示す。また、図5の右側のグラフでは、上記発光ダイオード素子のバッファ層のNa組成比を実線で示し、そのバッファ層の面内格子定数を点線で示している。
【0091】
本実施形態2の発光ダイオード素子は、Li1−bNabGaO2バッファ層102の代わりにバッファ層302を用いた他は上記実施形態1と同様に作製したものである。
【0092】
上記バッファ層302は、1nmのZnO層と2nmのLi1−bNabGaO2層(0<b<1)とを交互に積層して構成した超格子構造を有している。そして、上記バッファ層302は、図5の右側のグラフに示すように、Li1−bNabGaO2層のNa組成比bを1〜0.25まで段階的に増加させている。より詳しく説明すると、上記バッファ層302は、サファイア基板101と接する裏面がNaGaO2(Li1−bNabGaO2でのNa組成比b=1)から成り、n型ZnOコンタクト層103と接する表面がLi0.75Na0.25GaO2(Li1−bNabGaO2でのNa組成比b=0.25)から成り、その裏面と表面との間でNa組成比bが傾斜を有している。要するに、上記Li1−bNabGaO2バッファ層102では、裏面から表面に向ってNa組成比bが段階的に小さくなっている。
【0093】
なお、図5において、図1で示した構成部と同一構成部は、図1における構成部と同一参照番号を付して説明を省略する。
【0094】
本実施形態2の発光ダイオード素子をチップ状に分離してリードフレームに取り付け、n型オーミック電極110とp型パッド電極109とに配線を行った後、樹脂モールドし発光させたところ、発光ピーク波長430nmの青色発光が得られた。
【0095】
このように、本実施形態2の発光ダイオード素子は、20mAの動作電流における発光強度が上記実施形態1に比べて30%増大し、素子寿命が上記実施形態1に比べて1.4倍に長くなった。
【0096】
本実施形態2にて示したように、バッファ層を超格子構造とすることにより、バッファ層上に形成するZnO系半導体の結晶欠陥や格子歪を更に低減出来、またバッファ層自体の結晶性を損ねないので、酸化物半導体発光素子の特性を更に向上させることが出来る。
【0097】
(実施形態3)
図6に、本実施形態3の発光ダイオード素子の模式断面図を示す。また、図6の右側のグラフでは、上記発光ダイオード素子のバッファ層のNa組成比を実線で示し、そのバッファ層の面内格子定数を点線で示している。
【0098】
上記発光ダイオード素子は、(0001)面を主面とする6H−SiC基板401上に、Li1−aNaaAlO2バッファ層402、Gaが3×1018cm−3の濃度でドープされたn型ZnOコンタクト層403、Gaが1×1018cm−3の濃度でドープされたn型Mg0.1Zn0.9Oクラッド層404、ノンドープ量子井戸発光層405、Nが5×1019cm−3の濃度でドープされたp型Mg0.1Zn0.9Oクラッド層406、Nが1×1020cm−3の濃度でドープされたp型ZnOコンタクト層407がこの順で積層されている。但し、上記Li1−aNaaAlO2バッファ層402のNa組成比aは0<a<1の範囲内となっている。
【0099】
本実施形態3では、上記6H−SiC基板401が基板の一例に、Li1−aNaaAlO2バッファ層402がバッファ層の一例に、n型Mg0.1Zn0.9Oクラッド層404が第1導電型クラッド層の一例に、量子井戸発光層405が発光層の一例に、p型Mg0.1Zn0.9Oクラッド層406が第2導電型クラッド層の一例にそれぞれ相当する。
【0100】
上記Li1−aNaaAlO2バッファ層402は、6H−SiC基板401の表面の中央部上のみに形成され、n型ZnOコンタクト層403で覆われている。そして、上記Li1−aNaaAlO2バッファ層402は、6H−SiC基板401との界面およびn型ZnOコンタクト層403との界面で各々格子整合している。また、上記Li1−aNaaAlO2バッファ層402は、Li1−aNaaAlO2で構成され、図6の右側のグラフに示すようなNa組成比aを有している。
【0101】
より詳しく説明すると、上記Li1−aNaaAlO2バッファ層402は、6H−SiC基板401と接する裏面がLiAlO2(Li1−aNaaAlO2でのNa組成比a=0)から成り、量子井戸発光層405側においてn型ZnOコンタクト層403と接する表面がLi0.5Na0.5Al2O2(Li1−aNaaAlO2でのNa組成比a=0.5)から成っている。そして、上記Li1−aNaaAlO2バッファ層402は、裏面と表面との間でNa組成比aが傾斜を有している。つまり、上記Li1−aNaaAlO2バッファ層402は、裏面から表面に向ってNa組成比aが小さくなるように組成傾斜している。
【0102】
上記6H−SiC基板401は、ZnO系半導体と同じくウルツ鉱型の結晶構造を有する高品質な基板である。また、上記6H−SiC基板401はバンドギャップエネルギーが約3eVで、量子井戸発光層403の発光を吸収せず、加えて導電性を有するため基板に電極を直接形成することが出来るという利点がある。
【0103】
上記量子井戸発光層403は、厚さ5nmのZnO障壁層と、厚さ4nmのCd0.2Zn0.8O井戸層とを交互に積層するで構成されている。上記ZnO障壁層は8層ある一方、Cd0.2Zn0.8O井戸層は7層ある。
【0104】
上記p型ZnOコンタクト層407の主表面全面には、Niから成る透光性p型オーミック電極408を形成している。また、上記p型オーミック電極408上には、Auから成るp型パッド電極409をオーミック電極408より小さい面積で形成している。
【0105】
更に、上記6H−SiC基板401の導電性を生かしてn型オーミック電極410を6H−SiC基板401の裏面下に形成している。
【0106】
本実施形態3の発光ダイオード素子をチップ状に分離し、n型オーミック電極410を銀ペーストでリードフレームに取り付け、p型パッド電極109に配線を行った後、樹脂モールドし発光させたところ、発光ピーク波長430nmの青色発光が得られた。
【0107】
本実施形態3の発光ダイオード素子では、20mAの動作電流における発光強度が上記実施形態1に比べて20%増大し、素子寿命が上記実施形態1に比べて1.2倍になった。また、20mAの動作電流における動作電圧は上記実施形態1に比べて0.2V低減した。
【0108】
以上のように、導電性の異種基板を用いた場合であっても、本発明のバッファ層は、動作電流を低減出来ると共に、信頼性を向上させることが出来る。
【0109】
上記Li1−aNaaAlO2バッファ層402を素子と同じ面積で形成しても、つまり、Li1−aNaaAlO2バッファ層402を6H−SiC基板401の表面全面上に形成しても、Li1−aNaaAlO2バッファ層402の層厚を50nm以下程度に薄くすればトンネル効果によって電流が流れるので、本発明の効果を有する発光ダイオード素子を簡便な工程で作製することが出来る。好ましくは、本実施形態3にて示したように、発光への寄与が高いp型パッド電極409直下のみにバッファ層を形成し、このバッファ層の周囲にコンタクト層を設けてコンタクト層と基板との導通を確保する。この場合は、動作電圧が低減する効果が得られる。
【0110】
また、本実施形態3とは逆に、素子周辺部にバッファ層を設け、素子中央部で導通をとるようにしてもよい。つまり、本発明のバッファ層を基板の周辺部上のみに形成し、基板の中央部上にコンタクト層を形成して、基板とコンタクト層との導通を確保するようにしてもよい。この場合は、素子の周辺部で発光強度が向上し、光取り出し効率が向上するのでより好ましい。
【0111】
(実施形態4)
本実施形態では、ZnO系半導体レーザ素子に本発明を適用した一例について説明する。
【0112】
図7に、本実施形態4のZnO系半導体レーザ素子の模式斜視図を示す。
【0113】
上記半導体レーザ素子は、C面(0001)を主面としたサファイア基板501上に、ノンドープで厚さ10nmのZnO第1バッファ層502、厚さ30nmのLi1−bNabGaO2第2バッファ層503、Gaドーピング濃度が1×1019cm−3で厚さ0.3μmのn型ZnOコンタクト層504、Gaドーピング濃度が3×1018cm−3で厚さ1μmのn型Mg0.1Zn0.9Oクラッド層505、Gaドーピング濃度が5×1017cm−3で厚さ30nmのn型ZnO光ガイド層506、ノンドープ量子井戸活性層507、Nドーピング濃度が5×1018cm−3で厚さ30nmのp型ZnO光ガイド層508、Nドーピング濃度が5×1019cm−3で厚さ1.2μmのp型Mg0.1Zn0.9Oクラッド層509、Nドーピング濃度が1×1020cm−3で厚さ0.5μmのp型ZnOコンタクト層510がこの順で積層されている。但し、上記Li1−bNabGaO2第2バッファ層503のNa組成比bは0<b<1の範囲内となっている。
【0114】
本実施形態1では、上記サファイア基板501が基板の一例に、n型Mg0.1Zn0.9Oクラッド層505が第1導電型クラッド層の一例に、量子井戸活性層507が発光層の一例に、p型Mg0.1Zn0.9Oクラッド層509が第2導電型クラッド層の一例にそれぞれ相当する。また、上記ZnO第1バッファ層502とLi1−bNabGaO2第2バッファ層503によって、本発明のバッファ層の一例が構成されている。
【0115】
上記量子井戸活性層507は、厚さ5nmのZnO障壁層と、厚さ6nmのCd0.1Zn0.9O井戸層とが交互に積層されて成っている。上記ZnO障壁層は2層ある一方、Cd0.1Zn0.9O井戸層は3層ある。
【0116】
上記p型ZnOコンタクト層510と、p型Mg0.1Zn0.9Oクラッド層509の上部とはリッジストライプ状にエッチング加工されている。このようにリッジストライプ状にエッチング加工されたリッジストライプ部の側面は、Gaが3×1018cm−3の濃度でドーピングされたn型Mg0.2Zn0.8O電流ブロック層511によって埋め込まれている。つまり、上記リッジストライプ部の両側には、n型Mg0.2Zn0.8O電流ブロック層511を形成している。
【0117】
上記n型Mg0.1Zn0.9Oクラッド層505から図中上側(サファイア基板501とは反対側)に向ってn型Mg0.2Zn0.8O電流ブロック層511までの層を形成するためのエピタキシャル層の一部をエッチングすることで露出したn型ZnOコンタクト層504の表面上にn型オーミック電極512を形成している。
【0118】
上記n型Mg0.2Zn0.8O電流ブロック層511およびp型ZnOコンタクト層510の上にはp型オーミック電極513が形成されている。
【0119】
上記ZnO第1バッファ層502は、サファイア基板501とLi1−bNabGaO2第2バッファ層503との親和性を向上させるために設けたものであり、Li1−bNabGaO2第2バッファ層503上に形成する層の結晶性が格段に向上する。
【0120】
上記Li1−bNabGaO2第2バッファ層503は、上記実施形態1の記Li1−bNabGaO2バッファ層102と同様のNa組成比bを有している。つまり、上記Li1−bNabGaO2第2バッファ層503は、NaGaO2(Li1−bNabGaO2でのNa組成比b=1)からLi0.75Na0.25GaO2(Li1−bNabGaO2でのNa組成比b=0.25)までの組成傾斜を有し、n型ZnOコンタクト層504との界面で格子整合している。
【0121】
上述したような構造を作製した後、リッジストライプに垂直なミラー端面に保護膜を真空蒸着した後、素子を300μmに分離した。
【0122】
本実施形態4の半導体レーザ素子に電流を流したところ、端面から波長400nmの青色発振光が得られ、発振閾値電流は35mA、光出力5mWでの動作電圧は4V、素子寿命(60℃、光出力5mWで連続発振させ、動作電流が初期値より20%増大した時間で定義する)は5000時間であった。
【0123】
比較例として、Li1−bNabGaO2第2バッファ層503を形成しない他は本実施形態4と同様にしてZnO系半導体レーザ素子を作製したところ、発振閾値電流は50mAに増大し、素子寿命は約800時間に下がった。
【0124】
以上より、本発明のLi1−(x+y)NaxKyAl1−zGazO2バッファ層は、半導体レーザ素子に適用しても、発振閾値電流の低減および信頼性の向上に効果を有することがわかる。
【0125】
上記実施形態1〜4では、基板上に、バッファ層、n型クラッド層、発光層およびp型クラッド層をこの順で形成していたが、バッファ層、p型クラッド層、発光層およびn型クラッド層をこの順で形成してもよい。つまり、上記実施形態1〜4において、各層の導電型を逆にして素子を形成してもよい。
【0126】
また、本発明は、ダブルへテロ構造の酸化物半導体発光素子に適用してもよいし、シングルへテロ構造の酸化物半導体発光素子に適用してもよい。
【0127】
【発明の効果】
以上より明らかなように、本発明の酸化物半導体発光素子は、基板と発光層との間に、Li1−(x+y)NaxKyAl1−zGazO2(0≦x,y,z≦1)を含むバッファ層が形成されているので、殆ど歪を内在しないZnO系半導体エピタキシャル層を得ることが出来、極めて信頼性に優れた酸化物半導体発光素子を作製出来る。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は、本発明の実施形態1の発光ダイオード素子の模式断面図と、この発光ダイオードのバッファ層におけるNa組成比,面内格子定数のグラフとを示す図である。
【図2】図2は上記実施形態1の発光ダイオード素子の製造に使用するレーザMBE装置の概略構成図である。
【図3】図3はZnOおよび絶縁体酸化物Li1−bNabGaO2の結晶構造を示す図である。
【図4】図4(a)はLiAlGaO2およびLiAlGaO2の酸化物に対して平均格子定数を求めた結果を示す図であり、図4(b)はLiNaAlO2およびLiNaGaO2の酸化物に対して平均格子定数を求めた結果を示す図である。
【図5】図5は、本発明の実施形態2の発光ダイオード素子の模式断面図と、この発光ダイオードのバッファ層におけるNa組成比,面内格子定数のグラフとを示す図である。
【図6】図6は、本発明の実施形態3の発光ダイオード素子の模式断面図と、この発光ダイオードのバッファ層におけるNa組成比,面内格子定数のグラフとを示す図である。
【図7】図7は本発明の実施形態4のZnO系半導体レーザ素子の模式斜視図である。
【符号の説明】
101,501 サファイア基板
102 Li1−bNabGaO2バッファ層
105,405 量子井戸発光層
302 バッファ層
401 6H−SiC基板
402 Li1−aNaaAlO2バッファ層
507 量子井戸活性層
503 Li1−bNabGaO2第2バッファ層
Claims (8)
- 基板上に、ZnO系半導体から成る発光層が形成された酸化物半導体発光素子において、
上記基板と上記発光層との間に形成され、Li1−(x+y)NaxKyAl1−zGazO2(0≦x,y,z≦1かつ0≦(x+y)≦1)を含むバッファ層を備えたことを特徴とする酸化物半導体発光素子。 - 請求項1に記載の酸化物半導体発光素子において、
上記バッファ層と上記発光層との間に形成され、ZnO系半導体から成る第1導電型クラッド層と、
上記発光層上に形成され、ZnO系半導体から成る第2導電型クラッド層とを備えたことを特徴とする酸化物半導体発光素子。 - 請求項1に記載の酸化物半導体発光素子において、
上記バッファ層が、Li1−aNaaAlO2、Li1−bNabGaO2、LiAl1−cGacO2およびNaAl1−dGadO2(0<a,b,c,d<1)のうちのいずれか1つを含むことを特徴とする酸化物半導体発光素子。 - 請求項1に記載の酸化物半導体発光素子において、
上記Li1−(x+y)NaxKyAl1−zGazO2は成長方向において組成傾斜していることを特徴とする酸化物半導体発光素子。 - 請求項1に記載の酸化物半導体発光素子において、
上記バッファ層が超格子構造を有することを特徴とする酸化物半導体発光素子。 - 請求項3に記載の酸化物半導体発光素子において、
上記バッファ層において上記基板とは反対側の表面は、Li1−aNaaAlO2の組成を有し、
上記Li1−aNaaAlO2のNa組成比aが0.4〜0.6の範囲内であることを特徴とする酸化物半導体発光素子。 - 請求項3に記載の酸化物半導体発光素子において、
上記バッファ層において上記基板とは反対側の表面は、Li1−bNabGaO2の組成を有し、
上記Li1−bNabGaO2のNa組成比bが0.15〜0.35の範囲内であることを特徴とする酸化物半導体発光素子。 - 請求項1に記載の酸化物半導体発光素子において、
上記バッファ層の成長方向の主面が(001)であり、
上記発光層バッファ層上にエピタキシャル成長されたZnO系半導体の成長主面が(0001)であることを特徴とする酸化物半導体発光素子。
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