JP4270885B2 - 酸化物半導体発光素子 - Google Patents
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Description
【発明の属する分野】
本発明は発光ダイオード素子や半導体レーザ素子等の半導体発光素子に関し、より詳しくは、可視領域の発光特性に優れた酸化物半導体発光素子に関する。
【0002】
【従来の技術】
現在、半導体発光素子の分野では、400nmより長波長領域の光、すなわち、可視光を発光する青色発光素子の開発が最も盛んであり、その産業上の有用性は非常に高い。
最近、II族酸化物半導体である酸化亜鉛(ZnO)が青色領域ないし紫外領域の発光デバイス用の材料として有望視されている。
ZnOは、約3.4eVのバンドギャップエネルギーを有する直接遷移型半導体である。また、ZnOは約60meVと極めて高い励起子結合エネルギーを有するため、低消費電力で環境性に優れた高効率な発光デバイスを実現できる可能性があり、さらに、原材料が安価、環境や人体に無害で成膜手法が簡便である等の特徴を有している。
【0003】
以下、本明細書において、「ZnO系」半導体なる語を用いるときは、ZnOおよびこれを母体としたMgZnOあるいはCdZnO等で表される混晶を含むものとする。また、本明細書において、組成を特定せずに混晶を示す場合には、例えば、「MgZnO」と単に元素記号のみで記載し、組成を特定する場合には、例えば、「Mg0.1Zn0.9O」と記載する。
【0004】
ZnOのバンド間遷移エネルギーは、約370nmの紫外領域の発光に相当するので、ZnO半導体発光素子が発光する光の波長は、産業上の有用性が高い可視領域よりも短い。
本発明者らは、CdZnO混晶を用いてZnO系酸化物半導体のバンドギャップエネルギーを狭くする(以下、「ナローギャップ化」という。)方法をすでに開発し、第58回応用物理学会学術講演会講演予稿集、第1巻、p.281(非特許文献1)において開示した。この方法を用いれば、400nmよりも長波長領域における発光を実現することができる。
また、特開2002−16285号公報(特許文献1)および特開2002−118330号公報(特許文献2)には、ZnおよびO、ならびにO以外のVI族元素(例えば、S、Se、Te等)を含む化合物半導体を用いて、400nmより長波長領域の光を発光する酸化物半導体発光素子を作製する方法が開示されている。これらの方法によれば、ZnS、ZnSe、ZnTe等のII−VI族化合物半導体とZnOとを混晶化する際に生じるバンドギャップボウイング現象を利用して、ナローギャップ化を達成する。
【0005】
ZnOは強いイオン性に起因する自己補償効果のために従来p型の導電型制御が困難であったが、アクセプタ不純物として窒素(N)を用いることでp型化が実現し(例えば、「ジャパニーズ・ジャーナル・オブ・アプライド・フィジックス(Japanese Journal of Applied Physics)」、第36巻、1997年、p.L1453−1455;非特許文献2を参照せよ)、ZnO系半導体を用いて高効率な発光素子を作製すべく、多くの研究がなされるようになった(例えば、「ジャパニーズ・ジャーナル・オブ・アプライド・フィジックス(Japanese Journal of Applied Physics)」、第40巻、2001年、p.L177−180;非特許文献3を参照せよ)。
【0006】
しかし、ZnO中のアクセプタ準位は非常に深く、p型化を実現し得るNアクセプタでさえ200〜300meVのイオン化エネルギーを必要とするため、低抵抗層を得ることが難しい。
【0007】
特開2001−48698号公報(特許文献3)および特開2001−68707号公報(特許文献4)には、高密度記録や大量情報の伝達に必要な紫外光半導体レーザダイオードをZnOで作製するために、p型ドーパントとn型ドーパントとを同時にZnOにドーピングして、低抵抗なp型ZnO単結晶薄膜を作製する、いわゆる「同時ドーピング技術」を開示する。この「同時ドーピング技術」においては、p型ドーパント濃度がn型ドーパント濃度より大きくなるようにドーピングすることを特徴とする。この技術により得られた低抵抗なp型ZnOとGa等の不純物ドーピングにより得られるn型ZnOとを組合わせることによって、同一半導体化合物であるZnOにおいてpn接合が実現できる。
【0008】
【特許文献1】
特開2002−16285号公報
【0009】
【特許文献2】
特開2002−118330号公報
【0010】
【特許文献3】
特開2001−48698号公報
【0011】
【特許文献4】
特開2001−68707号公報
【0012】
【非特許文献1】
第58回応用物理学会学術講演会講演予稿集、第1巻、p.281
【0013】
【非特許文献2】
「ジャパニーズ・ジャーナル・オブ・アプライド・フィジックス(Japanese Journal of Applied Physics)」、第36巻、1997年、p.L1453−1455
【0014】
【非特許文献3】
「ジャパニーズ・ジャーナル・オブ・アプライド・フィジックス(Japanese Journal of Applied Physics)」、第40巻、2001年、p.L177−180
【0015】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、本発明者らが非特許文献1において開示した方法では、高い結晶性が得られるCdZnOの混晶領域が狭く、ナローギャップ化しても、バンドギャップを2.9eVにまで狭くするのが限界である。すなわち、約430nm程度の発光波長領域までしか長波長化させることができなかった。また、この方法で用いるCdは毒性の強い元素であり、環境に対する安全性が懸念される。
また、特許文献1および2に開示された方法においては、上記したZnS等のII−VI族化合物半導体を高い濃度でZnOに固溶させることは非常に困難であり、組成の不均一や相分離を生じ易い。また、混晶比の増大に伴なって、結晶中に大きな歪エネルギーが発生し、非発光中心となる結晶欠陥が増大し、その結果、発光効率が急激に低下する。
かくして、本発明の目的は、上記の課題に鑑み、可視領域の発光特性に優れた酸化物半導体発光素子を提供することにある。
【0016】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、ZnO系半導体の有する高い発光効率を用いて、可視領域の発光素子を作製する技術について鋭意検討した結果、アクセプタ不純物がドーピングされたp型発光層を形成し、深いアクセプタ準位が関与した発光を得ることにより、目的が達せられることを見い出し本発明にいたった。
【0017】
すなわち、本発明は、基板上に、少なくともn型ZnO系半導体層、p型ZnO系半導体発光層およびp型ZnO系半導体層が形成され、該p型ZnO系半導体発光層は該n型ZnO系半導体層およびp型ZnO系半導体層に挾持されている酸化物半導体発光素子を提供する。
【0018】
なお、本明細書において、半導体発光素子中発光を司る層を「発光層」というが、半導体レーザ素子の場合には同様の意味で「活性層」なる語を用いることがある。しかしながら、両者の機能は実質的に同じであるため特に区別はしない。
【0019】
ZnO中でのアクセプタ準位は非常に深く、これを介した発光再結合は400nmより長い可視発光となる。
このことにより、安全性に懸念のあるCdZnO混晶や、良好な薄膜結晶を得られにくいZnO−ZnSe混晶系を使わずとも、発光特性に優れた可視発光素子を実現できる。
【0020】
本発明の酸化物半導体発光素子の第1の局面において、該p型ZnO系半導体発光層に、Npcm−3の濃度にてアクセプタ不純物とNncm−3の濃度にてドナー不純物とが共ドーピングされ、ここに、アクセプタ不純物のドーピング濃度Npとドナー不純物のドーピング濃度Nnとの間に103≦Np/Nn≦105の関係がある。
発光層へアクセプタ不純物とドナー不純物とを共ドーピングすることにより、ドナー準位から深いアクセプタ準位へ遷移するドナー/アクセプター対(以下、「D/A対」という。)発光が生じ、400nmより長い可視発光となる。
【0021】
また、ドナー不純物のドーピング濃度Nnとアクセプタ不純物のドーピング濃度Npを前記所定の範囲で制御し、なおかつ発光層の導電型をp型とすることにより、十分高い発光強度が得られる。
このことにより、簡便な方法で発光特性に優れた可視発光素子を実現できる。
【0022】
なお、本発明におけるドナー不純物とアクセプタ不純物の共ドーピングは、D/A対発光を生ぜしめるためのものであり、低抵抗なp型ZnO層を得る技術として特許文献3および4に開示されている「同時ドーピング法」とは異なる。「同時ドーピング法」で得られるp型ZnOはアクセプタ準位が極めて浅くなるため、これを介した発光は長波長化しないからである。
【0023】
本発明の酸化物半導体発光素子において、該アクセプタ不純物が、N、As、P、CuおよびAgよりなる群から選択される少なくとも1のI族またはV族元素である。
前記IおよびV族元素は、空孔や格子間原子等の欠陥を生じにくく、ZnあるいはOと置換してアクセプタ不純物となりやすい。
このことにより、信頼性に優れた酸化物半導体発光素子を作製することができる。
【0024】
本発明の酸化物半導体発光素子において、該ドナー不純物が、B、Al、GaおよびInよりなる群から選択される少なくとも1のIII族元素である。
前記III族元素は、空孔や格子間原子等の欠陥を生じにくく、ZnあるいはOと置換してドナー不純物となりやすい。
このことにより、信頼性に優れた酸化物半導体発光素子を作製することができる。
【0025】
また、本発明の酸化物半導体発光素子において、該p型ZnO系半導体発光層のキャリア濃度を1×1016〜1×1018cm−3の範囲にあるようにする。
該p型ZnO系半導体発光層のキャリア濃度を上記範囲にあるようにすることにより、アクセプタ準位が関与した発光が高い強度で得られ、またキャリア吸収による強度低下を生じない。
【0026】
本発明の酸化物半導体発光素子において、該アクセプタ不純物として、イオン化エネルギーが100meV〜300meVである元素を用いる。
アクセプタ不純物のイオン化エネルギーが前記所定の範囲であれば、可視発光を得られると共に不純物のイオン化率を高く保つことができ、発光素子の動作電圧を低くできる。
【0027】
また、本発明の酸化物半導体発光素子の第2の局面において、該p型ZnO系半導体発光層がCdxZn1−xOを含み、Cd組成xが0≦x≦0.2の範囲である。
発光層がZnOよりもバンドギャップが小さいCdZnO混晶を含むことにより、p型不純物のイオン化エネルギーが小さくても可視発光を得られる。また、前記所定のCd組成範囲であれば、Cd含有量が少なく結晶性と安全性に優れる。
このことにより、信頼性が高く動作電圧が低い可視発光の酸化物半導体発光素子を作製することができる。
【0028】
さらに、本発明の酸化物半導体発光素子の第3の局面において、該p型ZnO系半導体発光層にドーピングされたアクセプタ不純物の濃度が、該p型ZnO系半導体発光層と該n型および該p型ZnO系半導体層との2つの界面より内側領域において、該2つの界面における濃度以下である。
【0029】
特に、該p型ZnO系半導体発光層にドーピングされたアクセプタ不純物の濃度を一定ではなく、該n型およびp型クラッド層と該発光層と2つの界面で濃度が最も高く、発光再結合を生じるのに十分な高さのアクセプタ不純物ドーピング濃度とし、該発光層の内部領域におけるドーピング濃度を、界面におけるドーピング濃度より低くすることによって、発光層全体へのドーピング濃度を抑えて、結晶性悪化を抑止して高効率な可視発光を実現できる。
【0030】
本発明の酸化物半導体発光素子において、該p型ZnO系半導体発光層を量子井戸構造とする。
発光層が量子井戸構造であれば、キャリア閉じ込め効果が大きくまた発光強度が向上し、さらに可視領域の発光特性に優れた酸化物半導体発光素子を作製することができる。
【0031】
また、本発明の酸化物半導体発光素子は、ZnO単結晶基板上に形成されている。
ZnO単結晶は、ZnO系半導体をエピタキシャル成長する基板材料として最も優れており、結晶欠陥の生成が極めて低い。また、可視発光に対する透光性が極めて高い。このことにより、信頼性と発光効率に優れた酸化物半導体発光素子を作製することができる。
【0032】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の酸化物半導体発光素子を発光ダイオード素子に適用した実施形態を図面に基づいて、具体的に説明する。
【0033】
第1の実施形態
本発明による第1の実施形態の酸化物半導体発光素子は、基板上に、n型ZnO層、p型ZnO発光層およびp型ZnO層を有する発光ダイオード素子である。この発光ダイオード素子は、アクセプタ不純物のドーピングにより、半導体発光層がp型であることを特徴とする。
【0034】
図1は発光ダイオード素子1の斜視図(A)および断面図(B)を示す。発光ダイオード素子1は、亜鉛面を主面とするZnO基板101上に、n型ZnO層102、p型ZnO発光層103、およびp型ZnO層104を積層することによって構成されている。
【0035】
p型ZnO層104の主表面全面には、発光層から発光された光に対して透光性であるp型オーミック電極106が積層されている。さらに、この透光性p型オーミック電極106上には、透光性p型オーミック電極106よりも小さい面積でボンディング用パッド電極107が形成されている。
ZnO基板101の裏面には、n型オーミック電極108が積層されている。
【0036】
本発明の酸化物半導体発光素子において、基板101の材料としては、ZnO単結晶以外にも、サファイア、スピネル、LiGaO2等の絶縁性基板、またはSiC、GaN等の導電性基板を用いることができる。
図2(A)および(B)は、代表例として、絶縁体であるサファイアを基板101に用いた発光ダイオード素子1’の斜視図を示す。
絶縁性基板を用いる場合は、図2(A)のように、成長層の一部をエッチングしてn型ZnO層102を露出させ、その上にn型オーミック電極108を形成すればよい。また、図2(B)のように、結晶性の良好な成長層を得るために、基板上に先ずn型ZnOバッファ層109を形成し、さらにn型オーミック電極108の接触抵抗を低減するためにn型ZnOコンタクト層110を形成してもよい。
【0037】
しかしながら、可視領域において高い発光効率を最大限に得るためには、(1)ZnOとの面内格子定数差が3%以内の格子整合基板であって、成長層の結晶性に優れ、非発光中心となる欠陥を低減でき、(2)発光波長に対応する吸収係数が低く、また、(3)導電性であって、裏面に電極を形成できる基板を用いることが好ましい。ZnO単結晶よりなる基板は、前記の条件を全て満足させるので最も好ましい。ZnO基板はその上にエピタキシャル成長されるZnO系半導体発光素子と完全に格子整合し、異種基板を用いるより親和性に優れる。これによって結晶性が良好で非発光中心の極めて少ない発光素子を作製することができる。
【0038】
また、主面として亜鉛面を用いることにより、p型層のキャリア活性化率が向上し、抵抗の低いp型層が得られやすくなるので好ましい。
また、基板を研磨やエッチング等の公知の手法で基板裏面に凹凸を形成して入射した発光光を乱反射させれば、光取り出し効率が向上するので好ましい。
【0039】
n型ZnO層102にドーピングするドナー不純物には、ZnO系半導体中での活性化率が高いので、III族元素のB、Al、Ga、In等を用いることが好ましく、GaまたはAlが特に好ましい。
【0040】
発光層103は、アクセプタ不純物、例えば、Li、Na、Cu、Ag、N、P、As等のIまたはV族元素をドーピングすることによって、p型にする。NおよびAgは活性化しやすいので好ましい。Nは、N2をプラズマ化し結晶成長中に照射する手法によって結晶性を良好に保ちつつ、高濃度ドーピングが行えるので特に好ましい。
発光層103には、上記アクセプタ不純物と共に、ドナー不純物、例えば、B、Al、Ga、In等のIII族元素を共ドーピングして、p型にすることができる。また、PおよびCuも発光強度を悪化させることなく発光波長を長波長化できるので好ましい。これにより、発光波長および発光強度を制御することができる。
また、発光層103の井戸層のみまたは障壁層のみに上記アクセプタ不純物または上記アクセプタ不純物およびドナー不純物をドーピングすることができる。
【0041】
p型ZnO層104にドーピングするアクセプタ不純物としては、IあるいはV族元素であるLi、Na、Cu、Ag、N、P、As等を用いることができる。N、LiおよびAgは活性化しやすいので好ましい。Nは、N2をプラズマ化し結晶成長中に照射する手法によって結晶性を良好に保ちつつ、高濃度ドーピングが行えるので特に好ましい。
【0042】
p型ZnO層104は、特許文献3および4に開示された「同時ドーピング技術」を用いて、低抵抗化してもよいが、p型発光層103は、アクセプタ不純物のイオン化エネルギーが小さくなり過ぎると発光が長波長化しないので好ましくない。よって、p型発光層103へのアクセプタ不純物のドーピングは常法を用いればよい。
【0043】
p型オーミック電極106には、Ni、Pt、Pd、Au等の金属材料を用いることができる。なかでも低抵抗で密着性の良いNiが好ましい。前記金属材料の複数を合金化して、電極を形成してもよい。
また、高い発光効率と低い動作電圧を最大限の効果で得るためには、p型オーミック電極106が発光層から発光された光に対して透光性を有するように形成して光取り出し効率を向上させることが好ましい。
良好なオーミック特性と高い透光性を両立する厚みとしては5〜200nmの範囲が好ましく、300〜100nmの範囲がさらに好ましい。
p型オーミック電極106の形成後にアニール処理を行うと、密着性が向上すると共に接触抵抗が低減するので好ましい。ZnO結晶に欠陥を生じさせずにアニール効果を得るには、温度は300〜400℃が好ましい。また、アニール処理における雰囲気はO2あるいは大気雰囲気中が好ましく、N2では逆に抵抗が増大する。
【0044】
パッド電極107は、透光性p型オーミック電極106上の一部に、p型オーミック電極106より小さな面積で形成すれば、透光性電極の効果を損なわずにリードフレームへの実装プロセスが容易になるので好ましい。パッド電極107の材料としてはボンディングが容易でZnO系半導体中へ拡散してもドナー不純物とならない金属材料が好ましく、特に、Auが好ましい。
p型オーミック電極106とパッド電極107との間に密着性や光反射性を向上させる目的で他の金属層を形成してもよい。
【0045】
n型オーミック電極108には、Ti、Cr、Al等の金属材料を用いることができる。なかでも低抵抗でコストの低いAlまたは密着性の良いTiが好ましい。前記金属材料の複数を合金化して、電極を形成してもよい。
Alは青〜紫外光の反射率が高いため、Alを用いてn型オーミック電極108を裏面全面に形成しても光取り出し効率は高いので好ましい。また、n型オーミック電極108を任意の形状にパターニングし、露出した基板裏面をAgペースト等の導電性樹脂でリードフレームに接着することができる。AlよりもAgの方が青〜紫外光の反射率が高いため、n型オーミック電極108をパターニングすることも好ましい。
また、n型オーミック電極108をパターニングする場合は、素子抵抗の増大を防ぐため補助電極を形成してもよく、AgやPt等青〜紫外光の反射率が高い金属を補助電極に用いればさらに好ましい。
【0046】
その他の構成は任意であり、本明細書に記載された構成のみに限定されるものではない。
【0047】
本発明の酸化物半導体発光素子は、固体あるいは気体原料を用いた分子線エピタキシー(MBE)法、レーザ分子線エピタキシー(レーザMBE)法、有機金属気相成長(MOCVD)法等の結晶成長手法で作製することができる。
レーザMBE法は、原料ターゲットと薄膜の組成ずれが小さく、また、例えば、ZnOにGaをドーピングさせる場合に、ZnGa2O4等の意図しない副生成物の生成を抑えることができるので好ましい。
本発明を発光ダイオード素子に適用する場合、図4に示すMBE装置6を用いて、発光ダイオード素子を作製することができる。
MBE装置6において、超高真空に排気可能な成長室601の上部に基板ホルダー602が配置され、基板ホルダー602に基板603が固定されている。基板ホルダー602上部に配置されたヒーター604により基板ホルダー602の裏面が加熱され、その熱伝導により基板603が加熱される。
基板ホルダー602直下には適当な距離を置いて半導体原料やドーピング不純物元素を充填した複数の蒸発源セル605が配置されている。各々の蒸発源セル605は側面に設けられた加熱ヒータ606によって加熱され、蒸発した分子状の原料が基板603に堆積することにより薄膜が成長する。
各々の蒸発源セル605はシャッター607を有し、これら複数のシャッター607の開閉を組み合せて制御することによって、異なる組成の薄膜を積層することが可能となる。また、成長室にはプラズマ状のガス原料を導入できるように、複数のラジカルセル608が設けられている。
【0048】
第2の実施形態
本発明による第2の実施形態の酸化物半導体発光素子は、第1の実施形態の半導体発光素子と同様に構成されるが、n型ZnO系半導体層およびp型ZnO系半導体層を、ZnO発光層よりもバンドギャップエネルギーが大きいMgZnOで構成されるクラッド層としたことを特徴とする発光ダイオード素子である。
【0049】
図3は発光ダイオード素子2の斜視図(A)および断面図(B)を示す。この図では、発光ダイオード素子1と同様の構成要素については図1と同じ符号を用いている。
発光ダイオード素子2は、n型ZnO層102およびp型ZnO層104をMgZnOで構成されるクラッド層に変更し、p型MgZnOクラッド層104とp型オーミック電極106との間に、p型ZnOコンタクト層105を形成する以外は、発光ダイオード素子1と同様にして作製される。
【0050】
p型オーミック電極106はp型MgZnOクラッド層104上に直接形成することができるが、MgZnO混晶はZnOに比べて不純物の活性化率が低いことから、p型ZnOコンタクト層105を形成して、その上に形成することが好ましい。
【0051】
p型コンタクト層105の材料には、結晶性に優れキャリア濃度を高くできるZnOを用いることが好ましい。キャリア濃度を高くするために、p型ZnOコンタクト層105に過剰にアクセプタ不純物をドーピングすると、吸収損失の増大と結晶性劣化が顕著となり、光取り出し効率が低下するので、5×1016〜5×1019cm−3のキャリア濃度範囲となるようドーピング濃度を調整することが好ましい。
【0052】
p型ZnOコンタクト層105にドーピングするアクセプタ不純物としては、IあるいはV族元素であるLi、Na、Cu、Ag、N、P、As等を用いることができる。N、LiおよびAgは活性化しやすいので好ましい。Nは、N2をプラズマ化し結晶成長中に照射する手法によって結晶性を良好に保ちつつ、高濃度ドーピングが行えるので特に好ましい。
【0053】
第3の実施形態
本発明による第3の実施形態の酸化物半導体発光素子は、第2の実施形態の酸化物半導体発光素子と同様に構成されるが、発光層103が単一構造ではなく、1または複数のMgZnO障壁層と1または複数のZnO井戸層とを交互に積層して形成された多重量子井戸構造であることを特徴とする発光ダイオード素子である(図示せず)。
本発明によれば、発光層を多重量子井戸構造とすることによって、光学利得が向上し、キャリア閉込め効率および発光効率が増大し、発光強度を高めることができる。
【0054】
上記多重量子井戸構造全体に、アクセプタ不純物、例えば、Li、Na、Cu、Ag、N、P、As等のIまたはV族元素をドーピングすることによって、p型にする。
また、上記多重量子井戸構造全体には、上記IまたはV族元素と共に、ドナー不純物、例えば、B、Al、Ga、In等のIII族元素を共ドーピングして、p型にすることができる。これにより、発光波長および発光強度を制御することができる。
上記アクセプター不純物または、上記アクセプター不純物およびドナー不純物は、障壁層のみまたは井戸層のみにドーピングすることもできる。
【0055】
【実施例】
実施例1
この実施例は、本発明を発光ダイオード素子に適用した第1の実施形態の酸化物半導体発光素子を説明する。
図1は、発光ダイオード素子1の斜視図(A)および断面図(B)を示す。この実施例において、亜鉛面を主面とするZnO基板101上に、Gaを3×1018cm−3の濃度でドーピングした厚さ0.5μmのn型ZnO層102、Nを1×1020cm−3の濃度でドーピングした厚さ0.1μmのp型ZnO発光層103、およびNを1×1021cm−3の濃度でドーピングした厚さ0.5μmのp型ZnO層104を積層して、発光ダイオード素子1aを作製した。また、p型ZnO層104の主表面全面には、透光性p型オーミック電極106として、厚さ15nmのNiを積層し、その上に、透光性p型オーミック電極106より小さい面積で厚さ100nmのボンディング用Auパッド電極107を形成した。
さらに、ZnO基板101の裏面には、n型オーミック電極108として厚さ100nmのAlを積層した。
【0056】
以下に製造方法を順に説明する。
まず、洗浄処理したZnO基板101を図4に示すMBE装置6に導入し、温度600℃で30分間加熱し清浄化した。
次に、基板温度を450℃に降温し、酸素ラジカルセル、ZnセルおよびGaセルのシャッターを開けて、Gaドープn型ZnO層102を成長させた。
次に、酸素ラジカルセル、窒素ラジカルセルおよびZnセルのシャッターを開けて、Nドープp型ZnO発光層103を成長させた。
次に、酸素ラジカルセル、窒素ラジカルセルおよびZnセルのシャッターを開けて、Nドープp型ZnO層104を成長させた。
GaまたはNのドーピング濃度は、基板上での分子線強度によって制御した。
【0057】
次に、基板101をMBE装置6から取り出し、p型オーミック電極106としてNi薄膜を15nmの厚さに真空蒸着した。このp型オーミック電極106は入射した発光の70%以上を透過する。
最後に、Ni透光性p型オーミック電極106上にパッド電極107としてAuを真空蒸着し、ZnO基板101の裏面にn型オーミック電極108としてAlを真空蒸着した。
【0058】
発光ダイオード素子1aをチップ状に分離し、Agペーストでリードフレームに取り付け、モールドして発光させたところ、ZnOのバンドギャップエネルギーに相当する発光ピーク波長(370nm)よりも小さいエネルギーに相当する発光ピーク波長420nmの青色発光を確認した。
動作電流20mAにおける動作電圧は3.5V、発光強度(光出力)は50mWで、このときの発光効率(外部量子効果)は20%であった。
【0059】
次に、別の実験により求められた、p型ZnO発光層103へのNドーピング濃度とキャリア濃度との関係を図5に示す。
Nドーピング濃度は2次イオン質量分析(SIMS)で決定し、キャリア濃度は室温におけるホール測定で決定した。
図5は、Nドーピング濃度よりもキャリア濃度が低いことを示し、ZnO中でのNの活性化率が低いことを意味している。これは、ZnO系半導体はp型の導電型制御が難しく、p型不純物の準位も深いためである。
この結果から、発光ダイオード素子1aにおいて、Nを1×1020cm−3の濃度でドーピングした厚さ0.1μmのZnO発光層103のキャリア濃度は、2×1017cm−3と見積もられた。
【0060】
実施例2
次に、p型ZnO発光層103のキャリア濃度と発光強度との関係を図6に示す。
p型ZnO発光層103へのNドーピング濃度を変化させる以外は、発光ダイオード素子1aと同様にして、種々の発光ダイオード素子を作製した。キャリア濃度は、図5から見積もった。
キャリア濃度が1×1016cm−3未満では発光強度は低く、キャリア濃度の増加とともに発光強度は増大したが、1×1018cm−3を超えると発光強度は急激に低下し、2×1019cm−3を超えると発光しなかった。高キャリア濃度領域での急激な発光強度の低下は、高濃度ドーピングによる不純物の光吸収および結晶性劣化のためと考えられる。
以上の結果より、高い発光強度を得るためには、p型発光層103のキャリア濃度は1×1016cm−3以上1×1018cm−3以下の範囲にあることが好ましい。
【0061】
実施例3
図7および表1に、発光層103にドーピングするアクセプタ不純物が発光波長および発光強度に与える影響を調べた結果を示す。
発光層103にドーピングするアクセプタ不純物をイオン化エネルギーの異なる種々の元素に変更する以外は、発光ダイオード素子1aと同様にして、種々の発光ダイオード素子を作製した。用いたアクセプター不純物ならびに各アクセプター不純物に対応する発光ピーク波長およびイオン化エネルギーを表1に示す。
【0062】
【表1】
【0063】
イオン化エネルギーが100meV以上のアクセプタ不純物(すなわち、P、Cu、As、Ag、N、およびNa)をドーピングした場合、発光波長が400nmより長くなった。また、イオン化エネルギーが350meVのNaをドーピングした場合、発光強度が低下した。
以上の結果から、400nm以上の波長領域の光を十分な発光強度で発光させために、発光層にドーピングするアクセプタ不純物としてI族およびV族元素が好ましく、イオン化エネルギーが100meV〜300meVのものが好ましい。特に、N、P、CuおよびAgが好ましいことがわかった。
【0064】
実施例4
この実施例は、本発明を発光ダイオード素子に適用した第2の実施形態の酸化物半導体発光素子を説明する。
図3は発光ダイオード素子2の斜視図(A)および断面図(B)を示す。この実施例において、n型ZnO層102およびp型ZnO層104をMg0.1Zn0.9Oで構成されるクラッド層に変更し、p型Mg0.1Zn0.9Oクラッド層104とp型オーミック電極106との間に、Nを1×1021cm−3の濃度でドーピングした厚さ0.3μmのp型ZnOコンタクト層105を形成する以外は、発光ダイオード素子1aと同様にして発光ダイオード素子2aを作製した。
【0065】
MgZnO混晶はZnOに比べて不純物の活性化率が低いことがすでに確認されているので、p型オーミック電極106はp型MgZnOクラッド層104上に直接形成せず、p型ZnOコンタクト層105を形成して、その上に形成することが好ましい。
【0066】
発光ダイオード素子2aをチップ状に分離し、Agペーストでリードフレームに取り付けてモールドし発光させたところ、発光ダイオード素子1aと同じく発光ピーク波長420nmの青色発光を確認した。
また、発光ダイオード素子2aは、発光ダイオード素子1aと比較して、発光強度が2倍に増大した。これは、ZnO発光層103をZnOよりもバンドギャップの広いMgZnO混晶で挾持したのでキャリア閉じ込め率が向上したためと考えられる。
【0067】
実施例5
p型ZnO発光層103に、Nと共にGaを3×1016cm−3の濃度でドーピングする以外は、発光ダイオード素子2aと同様にして、発光ダイオード素子2bを作製した。
なお、発光ダイオード素子2bにおいて、発光層103にGaおよびNを共ドーピングした目的は、D/A対発光を生じさせることにあり、低抵抗なp型ZnO単結晶薄膜を作製する技術として特許文献3および4等に開示されている、いわゆる「同時ドーピング技術」とは全く異なる。
【0068】
発光ダイオード素子2bをチップ状に分離し、Agペーストでリードフレームに取り付けてモールドし発光させたところ、発光ピーク波長450nmの青色発光が確認され、発光ダイオード素子2aと比較して、動作電圧は0.2V増加したが、発光強度は50%増大した。
【0069】
発光ダイオード素子2の発光波長が長波長化すると共に発光強度が増大したのは、発光層103に不純物をドーピングしたことによって、自由励起子発光と不純物発光が重畳され、ピーク波長が長波長側へシフトすると共にスペクトル幅が広がったためと考えられる。
また、動作電圧が増加したのは、ドナー不純物であるGaとアクセプタ不純物であるNとを共ドーピングしたことによって、発光層103の抵抗率が高くなったためと考えられる。
このように、発光層に不純物をドーピングすることにより、発光波長を制御することができ、また発光強度を増大させることができる。
【0070】
実施例6
次に、図8に、発光層103へのNドーピング濃度とGaドーピング濃度との比Np/Nnおよび発光強度の関係を示す。
発光層103へのNドーピング濃度とGaドーピング濃度とを変化させる以外は、発光ダイオード素子2aと同様にして、種々の発光ダイオード素子を作製した。
図8では、代表例として、NおよびGaの共ドーピングによる総キャリア濃度が1×1015cm−3、1×1016cm−3、1×1018cm−3および1×1019cm−3である場合を示す。
ドーピング濃度比Np/Nnは、103〜105の範囲が最も発光強度が強く、D/A対による発光が高効率に生じていると考えられる。特に発光層の導電型がn型となる領域では、発光強度が著しく小さいことがわかった。
また、発光層3のキャリア濃度としては、実施例2で示した場合と同様に、共ドーピングした場合であっても1×1016〜1×1018cm−3の範囲が好ましい。
【0071】
実施例7
p型発光層103を、NおよびGaで共ドーピングしたCd0.1Zn0.9O混晶とする以外は、発光ダイオード素子2aと同様にして、発光ダイオード素子2dを作製した。
【0072】
発光ダイオード素子2dをチップ状に分離し、Agペーストでリードフレームに取り付けてモールドし発光させたところ、CdZnO混晶によってバンドギャップが小さくなったため、発光ピーク波長460nmの青色発光が確認された。また、アクセプタ不純物としてNに代えて、イオン化エネルギーの低いLiを用いても430nmの青色発光が確認された。
【0073】
Cd組成を変化させる以外は、上記と同様にして発光を調べたところ、Cd組成が0.2を超えると発光強度が減少した。これは、Cd組成が大きくなると、CdZnO混晶の結晶性が劣化し、さらにCd組成が0.2を超えると層分離によりCdが局在化し、均一な組成の発光層が得られなくなったためと考えられる。
したがって、Cd組成xは、0≦x≦0.2の範囲にあることが好ましい。
【0074】
上記の適切なCd組成範囲において、CdZnO混晶でナローギャップ化したのみでは青色発光は得られなかったが、アクセプタ不純物のドーピングによりアクセプタ準位を制御すれば、発光ピーク波長を長波長化することができ、産業上の利用価値のある430nm以長の可視発光を得ることができることがわかった。
また、発光層にZnOよりバンドギャップが小さいCdZnO混晶を用いれば、アクセプタ不純物のイオン化エネルギーが低くても可視発光を達成できることがわかった。
【0075】
実施例8
p型ZnO発光層103とnおよびp型MgZnOクラッド層102および104との2つの界面間で、Nドーピング濃度が一定ではなく、濃度傾斜を有するようにNをドーピングする以外は、発光ダイオード素子2aと同様にして、発光ダイオード素子2fを作製した。発光ダイオード素子2fにおいて、Nドーピング濃度が、nおよびp型MgZnOクラッド層102および104との2つの界面で1×1020cm−3、ZnO発光層103の層厚方向中心部で1×1018cm−3とし、その間の濃度が連続的に変化するようにNをドーピングした。p型ZnO発光層103の層厚方向のNドーピング濃度プロファイルを図9に示す。
【0076】
発光ダイオード素子2fをチップ状に分離し、Agペーストでリードフレームに取り付けてモールドし発光させたところ、発光波長420nmの青色発光が得られ、発光ダイオード素子2aと比較して、発光強度が10%増大し、素子寿命が20%向上した。
【0077】
発光ダイオード素子2fにおいて、発光層103のNドーピング濃度は、nおよびp型クラッド層102および104との2つの界面では、発光再結合を生じるのに十分に高く、界面から離れるに従って低くなっている。すなわち、発光ダイオード素子2aに比べて、発光層全体の総ドーピング量が少ない。これにより、結晶性悪化や不純物による吸収が抑止され、高効率な発光が実現されたと共に、発光ダイオード素子の信頼性が向上したものと考えられる。
【0078】
また、ドーピング濃度変化は、発光ダイオード素子2fのように連続的ではなく、段階的であっても本発明の効果を奏した。
すなわち、上記界面において、アクセプタ不純物ドーピング濃度が発光再結合を生じるのに十分な高さであり、該発光層の内部領域におけるドーピング濃度を界面におけるドーピング濃度より低くして、発光層全体へのドーピング濃度を抑えれば、結晶性悪化を抑止して高効率な可視発光を実現できることが確認された。
【0079】
さらに、ZnO発光層103にドナーおよびアクセプタ不純物の両方を共ドーピングした場合にも、ドーピング濃度を傾斜させると上記と同様の効果を奏した。この場合、ドナーまたはアクセプタ不純物のいずれか1のドーピング濃度を変化させればよいが、両方を同時に変化させると最も効果がある。
【0080】
実施例9
この実施例は、本発明を発光ダイオード素子に適用した第3の実施形態の酸化物半導体発光素子を説明する。
p型発光層103を、厚さ5nmのMg0.05Zn0.95O障壁層11層と、厚さ4nmのZnO井戸層10層とを交互に積層した多重量子井戸構造とし、多重量子井戸構造全体にNおよびGaを共ドーピングする以外は、発光ダイオード素子2bと同様にして、発光ダイオード素子3aを作製した(図示せず)。
【0081】
発光ダイオード素子3aをチップ状に分離し、Agペーストでリードフレームに取り付けてモールドし発光させたところ、量子準位の形成によって遷移エネルギー大きくなったため、発光ピーク波長は発光ダイオード素子2bより10nm短波長化して440nmの青色発光となったが、キャリア閉じ込め効率と発光効率が増大し、発光ダイオード素子2bに比べて発光層が薄いにもかかわらず発光強度は2倍となった。
このように、発光層を多重量子井戸構造とすることにより、発光効率が飛躍的に向上することが確認された。
【0082】
また、NおよびGaをZnO井戸層のみに共ドーピングする以外は、発光ダイオード素子3aと同様にして、発光ダイオード素子3bを作製した。
発光ダイオード素子3bをチップ状に分離し、Agペーストでリードフレームに取り付けてモールドし発光させたところ、発光ダイオード素子3aに比べて発光強度が20%増大した。
これは、発光層へのドーピング総量が減ったため、キャリア吸収が低減したからと考えられる。
【0083】
以上、本発明を発光ダイオード素子に適用した例を示したが、本発明を半導体レーザ素子の活性層に適用して可視領域のレーザ光を得ることも可能である。すなわち、その他の構成は任意であり、上記した実施例によって限定されるものではない。
【0084】
【発明の効果】
本発明の酸化物半導体発光素子によれば、n型およびp型ZnO系半導体層で挾持されたZnO系半導体発光層にアクセプタ不純物をドーピングしてp型とすることによって、発光効率と信頼性に優れた可視発光素子を実現することができた。
かくして、本発明により作製された酸化物半導体発光素子は、青色発光領域における発光特性や、信頼性および省電力性が従来のものよりも向上し、高密度光記録や、光励起可視発光システム等に用いられる光源として、優れた特性を発揮する。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明による第1の実施形態の酸化物半導体発光素子(発光ダイオード素子)を示す斜視図(A)および断面図(B)。
【図2】 絶縁性基板を用いた第1の実施形態の酸化物半導体発光素子(発光ダイオード素子)を示す斜視図。
【図3】 本発明による第2の実施形態の酸化物半導体発光素子(発光ダイオード素子)を示す斜視図(A)および断面図(B)。
【図4】 分子線エピタキシー装置の概略図。
【図5】 本発明による第1の実施形態の半導体発光素子(発光ダイオード素子)における、p型ZnO発光層へのNドーピング濃度とキャリア濃度との関係を説明するグラフ。
【図6】 本発明による第1の実施形態の半導体発光素子(発光ダイオード素子)における、p型ZnO発光層のキャリア濃度と発光強度の関係を示すグラフ。
【図7】 本発明による第1の実施形態の半導体発光素子(発光ダイオード素子)における、p型ZnO発光層にドーピングするアクセプタ不純物の種類と発光波長および発光強度との関係を示すグラフ。
【図8】 本発明による第1の実施形態の半導体発光素子(発光ダイオード素子)における、p型ZnO発光層に共ドーピングしたアクセプタ不純物濃度とドナー不純物濃度との比および発光強度の関係を示すグラフ。
【図9】 本発明による第2の実施形態の半導体発光素子(発光ダイオード素子)における、発光層の層厚方向のNドーピング濃度プロファイルを示す概略図。
【符号の説明】
1・・・発光ダイオード素子、
101・・・ZnO基板、
102・・・n型ZnO系半導体層、
103・・・発光層、
104・・・p型ZnO系半導体層、
105・・・p型ZnO系半導体コンタクト層、
106・・・p型オーミック電極、
107・・・パッド電極、
108・・・n型オーミック電極、
109・・・n型ZnOバッファ層、
110・・・n型ZnOコンタクト層、
6・・・MBE装置、
601・・・成長室、
602・・・基板ホルダー、
603・・・基板、
604・・・ヒーター、
605・・・蒸発源セル、
606・・・ヒーター、
607・・・シャッター、
608・・・ラジカルセル。
Claims (9)
- 基板上に、少なくともn型ZnO系半導体層、p型ZnO系半導体発光層およびp型ZnO系半導体層が形成され、該p型ZnO系半導体発光層は該n型ZnO系半導体層およびp型ZnO系半導体層に挾持され、該p型ZnO系半導体発光層に、N p cm −3 の濃度にてアクセプタ不純物とN n cm −3 の濃度にてドナー不純物とが共ドーピングされ、ここに、アクセプタ不純物のドーピング濃度N p とドナー不純物のドーピング濃度N n との間に10 3 ≦N p /N n ≦10 5 の関係がある酸化物半導体発光素子。
- 該アクセプタ不純物が、N、As、P、CuおよびAgよりなる群から選択される少なくとも1のI族またはV族元素である請求項1記載の酸化物半導体発光素子。
- 該ドナー不純物が、B、Al、GaおよびInよりなる群から選択される少なくとも1のIII族元素である請求項1記載の酸化物半導体発光素子。
- 該p型ZnO系半導体発光層のキャリア濃度が1×1016〜1×1018cm−3である請求項1記載の酸化物半導体発光素子。
- 該アクセプタ不純物が、100meV〜300meVのイオン化エネルギーを有する元素である請求項1記載の酸化物半導体発光素子。
- 該ZnO系半導体発光層がCdxZn1−xOを含む層であり、ここに、Cd組成xが0≦x≦0.2の範囲にある請求項1記載の酸化物半導体発光素子。
- 該p型ZnO系半導体発光層にドーピングされたアクセプタ不純物の濃度が、該p型ZnO系半導体発光層と該n型および該p型ZnO系半導体層との2つの界面より内側領域において、該2つの界面における濃度以下である請求項1記載の酸化物半導体発光素子。
- 該p型ZnO系半導体発光層が量子井戸構造である請求項1記載の酸化物半導体発光素子。
- 該基板がZnO単結晶である請求項1記載の酸化物半導体発光素子。
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