JP4185784B2 - 酸化物半導体発光素子およびその製造方法ならびに酸化物半導体発光素子を用いた半導体発光装置 - Google Patents

酸化物半導体発光素子およびその製造方法ならびに酸化物半導体発光素子を用いた半導体発光装置 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、発光ダイオードチップや半導体レーザチップなどの酸化物半導体発光素子およびその製造方法ならびに酸化物半導体発光素子を用いた半導体発光装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
本発明に関連する先行技術文献としては次のものがある。
【0003】
【特許文献1】
特開昭58−213457号公報
【非特許文献1】
「Applied Physics Letters」、Vol.25、1974年、p.708−710
【非特許文献2】
「Applied Physics Letters」、Vol.30、1977年、p.87−88
【0004】
フルカラーディスプレイ等の表示素子や種々の光源として広範囲に利用される高輝度な発光素子は、その産業利用の用途や範囲が年々拡大している。中でも、青色〜紫外域のみならず、赤色を含めた可視光全域で利用可能な発光素子として、ワイドギャップ半導体である窒化物半導体発光素子が多く利用されている。
【0005】
酸化亜鉛(ZnO)は、約3.4eVのバンドギャップエネルギーを有する直接遷移型半導体で、励起子結合エネルギーが60meVと極めて高く、また原材料が安価であり、環境や人体に無害、かつ成膜手法が簡便であるなどの特徴を有する。また、酸化亜鉛は、高効率・低消費電力で環境性に優れた発光デバイスを実現できる。
【0006】
なお、以下において、酸化亜鉛(ZnO)系半導体とは、ZnOおよびこれを母体としたMgZnOあるいはCdZnOなどで表される混晶を含めるものとする。
【0007】
近年、化合物半導体を用いた発光素子の性能向上は目ざましいものがあり、同時に発光素子に求められる耐久性も厳しいものになっている。例えば、高輝度な発光素子は、屋外での大型ディスプレイ光源などに用いられることが多く、変動の大きい環境下における連続駆動が安定して行なわれなければならない。また、半導体レーザ素子は、その光出射端面が10〜10W/cmという極めて高密度な光エネルギーに晒されるため、急速な劣化を抑止する必要がある。すなわち、発光素子の劣化を防止し、素子寿命を向上させる技術は、産業利用上極めて重要である。
【0008】
従来の半導体発光素子において共通した素子劣化の主要因は、素子表面を流れる無効電流と、素子表面の酸化腐食による素子表面の欠陥の増大であると考えられる(例えば、非特許文献1を参照)。特に、この2つの要因が結び付くと、発光素子は急激に劣化する。
【0009】
このような劣化を防止するため、チップ状の半導体発光素子をリードフレームなどに実装した半導体発光装置においては、チップおよびリードフレームを樹脂で封止することにより、酸素などの吸着を防いで素子寿命を向上させている(例えば、特許文献1を参照)。また、半導体レーザ素子においては、光反射率を制御するため出射端面に誘電体多層膜を形成するのが一般的である(例えば、非特許文献2を参照)。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、ZnO系半導体発光素子(酸化物半導体発光素子)を樹脂で封止したり、誘電体多層膜を形成しても従来の半導体発光素子に比べて改善効果が乏しいことがわかった。詳細な検討によると、酸化物半導体発光素子の経時劣化は、前記酸化腐食ではなく、水分の吸着による還元、すなわち、導電性の還元物を通じて素子表面に無効電流が流れることが主な原因である。さらに、発光素子における高輝度発光に伴う発光素子温度の上昇や、高密度光エネルギーの曝露によって欠陥が増殖する。従って、従来の酸化を防止するための保護技術では、還元による劣化を防止できないと考えられる。
【0011】
また、従来の半導体発光装置における封止樹脂は、酸化物半導体発光素子の発光波長に相当する高い光エネルギーに対する耐性はあまり考慮されておらず、長期に渡って酸化物半導体発光素子が紫外光に晒されると酸化物半導体発光素子が劣化して脆くなり、外気の遮断性が低下する。このため、酸化物半導体の還元腐食がさらに進行するという問題が生じる。
【0012】
そこで、本発明の目的は、前記従来の問題に鑑み、還元腐食を抑止して信頼性に優れた酸化物半導体発光素子およびその製造方法ならびに酸化物半導体発光素子を用いた半導体発光装置を提供することを課題とする。
【0013】
【課題を解決するための手段】
本発明は、水分などに起因する還元腐食や、モールド樹脂の紫外線による劣化を抑止できる半導体発光素子および発光装置の構造を鋭意検討した結果、酸化物半導体発光素子の表面を2層以上の異なる絶縁性有機化合物からなる積層膜(多層保護膜)で保護することにより、前記目的を達成するものである。
【0014】
本発明に係る酸化物半導体発光素子は、前記課題を解決するための手段として、
基板上に、少なくともn型クラッド層、活性層、p型クラッド層、p型コンタクト層および電極を備えたZnO系酸化物半導体発光素子において、
前記ZnO系酸化物半導体発光素子の少なくとも側面を含む主表面を、ポリカーボネートおよびポリイミドからなる多層保護膜で被覆したものである。
【0015】
前記発明によれば、ポリカーボネートおよびポリイミド(絶縁性有機化合物)は、水分からZnO系酸化物半導体発光素子を保護する保護効果が無機化合物に比べて大きいので、絶縁性有機化合物をZnO系酸化物半導体発光素子のチップ表面に被覆または堆積させることにより、還元による酸化物半導体の経時劣化を防止し、保護することができる。このとき、ポリカーボネートおよびポリイミド(絶縁性有機化合物)、すなわち機能の異なる有機化合物を積層して多層保護膜を形成し、ZnO系酸化物半導体発光素子を保護することにより前記保護効果が向上するとともに、還元雰囲気以外の外因による素子劣化も防止することができる。このことにより、信頼性に優れたZnO系酸化物半導体発光素子を提供できる。
【0016】
前記多層保護膜の膜厚は、10nm以上100μm以下であることが好ましい。ポリカーボネートおよびポリイミドからなる前記多層保護膜の膜厚が、10nm以上100μm以下の範囲内であれば、還元雰囲気からの保護効果に優れると共に、加工性および透光性にも優れる。
【0017】
前記主表面と前記多層保護膜との間に、SiO からなる無機保護膜を形成することにより、ZnO系酸化物半導体発光素子と有機化合物からなる多層保護膜との密着性が向上する。
【0018】
前記無機保護膜が酸化物であることにより、無機保護膜が酸化物半導体との親和性に優れ、前記多層保護膜をより酸化物半導体発光素子に密着させることができる。
【0019】
前記無機保護膜は、非晶質薄膜であることが好ましい。無機保護膜が非晶質を有すると、結晶粒界を生じないので絶縁特性に優れる。
【0020】
前記多層保護膜は、前記電極の側面部と上面部の少なくとも一部を覆うことが好ましい。これにより、酸化・還元によって劣化し易い、例えば、金属からなる電極の保護領域が増大するので、発光素子の信頼性が向上する。
【0022】
本発明に係る酸化物半導体発光素子の製造方法は、前記課題を解決するための手段として、
基板上に、少なくともn型クラッド層、活性層、p型クラッド層、p型コンタクト層を積層し、
ポリカーボネートおよびポリイミドを真空中で蒸発あるいは飛散させてZnO系酸化物半導体発光素子の少なくとも側面を含む主表面に堆積させ被覆するものである。
【0023】
前記発明によれば、ポリカーボネートおよびポリイミド(絶縁性有機化合物)を真空堆積法で堆積することにより、微小なZnO系酸化物半導体発光素子の主表面に高品質で膜厚が均一な多層保護膜を容易に形成することができる。
【0024】
前記n型クラッド層、活性層、p型クラッド層、p型コンタクト層を成長装置内の第1成長室内において前記基板上に積層し、
前記第1成長室内の前記基板を、大気に晒すことなく前記成長装置内の第2成長室内へ移動し、
前記ポリカーボネートおよびポリイミドを前記第2成長室内において真空中で蒸発または飛散させてZnO系酸化物半導体発光素子の少なくとも側面を含む主表面に堆積させ被覆することが好ましい。このように、真空状態の結晶成長装置内で連続して有機保護膜を堆積することにより、半導体発光素子表面を大気に晒すことがないので、水分などの付着による還元劣化の抑止効果が向上する。また、無機物である半導体結晶の第1成長室と、有機保護膜の第2成長室とを分離することにより、高い結晶性が求められる半導体層の第1成長室が清浄に維持される。
【0025】
前記堆積方法は、真空蒸着法、スパッタリング法、レーザアブレーション法のいずれかであることが好ましい。これらの真空堆積法は、量産性に優れ、多層保護膜の形成を容易に行うことができる。
【0026】
本発明に係る半導体発光装置は、前記課題を解決するための手段として、
基板上に、少なくともn型クラッド層、活性層、p型クラッド層、p型コンタクト層および電極を備えたZnO系酸化物半導体発光素子をリードフレーム上に接続し、前記ZnO系酸化物半導体発光素子は封止樹脂で封止された半導体発光装置において、
前記ZnO系酸化物半導体発光素子の少なくとも側面を含む主表面を、ポリカーボネートおよびポリイミドからなる多層保護膜で被覆したものである。
【0027】
前記発明によれば、ポリカーボネートおよびポリイミド(絶縁性有機化合物)は、水分からZnO系酸化物半導体発光素子を保護する保護効果が無機化合物に比べて大きいので、絶縁性有機化合物をZnO系酸化物半導体発光素子のチップ表面に被覆または堆積させることにより、酸化物半導体の還元による経時劣化を防止できる。このとき、ポリカーボネートおよびポリイミド(絶縁性有機化合物)、すなわち機能の異なる有機化合物を積層して多層保護膜を形成し、ZnO系酸化物半導体発光素子を保護することにより前記保護効果が向上するとともに、還元雰囲気以外の外因による素子劣化も防止することができる。このことにより、信頼性に優れたZnO系半導体発光装置を提供できる。
【0029】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を添付図面に従って説明する。
【0030】
(第1実施形態)
図1は、本発明の第1実施形態に係る酸化物半導体発光素子1の断面図である。この酸化物半導体発光素子1は、亜鉛面(0001)を主面とするn型ZnO単結晶基板2上に、Gaを3×1018cm−3の濃度でドーピングした厚さ1μmのn型Mg0.1Zn0.9Oクラッド層3、ノンドープ量子井戸発光層4(活性層)、Nを5×1019cm−3の濃度でドーピングした厚さ1μmのp型Mg0.1Zn0.9Oクラッド層5、Nを1×1020cm−3の濃度でドーピングした厚さ0.5μmのp型ZnOコンタクト層6が積層されている。量子井戸発光層4は、8層の厚さ5nmのZnO障壁層と、7層の厚さ4nmのCd0.1Zn0.9O井戸層とからなり、互いに交互に積層されている。
【0031】
また、p型ZnOコンタクト層6上には、厚さ15nmのNiを積層した透光性を有するp型オーミック電極7が積層され、その上には厚さ100nmのボンディング用Auパッド電極8が積層されている。このAuパッド電極8の垂直方向から見た面積は、前記p型オーミック電極7の面積より小さい。また、ZnO基板2の裏面には、厚さ100nmのAlよりなるn型オーミック電極9が積層されている。
【0032】
前記酸化物半導体発光素子1の主表面1aには、厚さ1μmのポリカーボネート保護膜10および厚さ1μmのポリイミド保護膜11が積層されている。前記酸化物半導体発光素子1の主表面1aは、ZnO単結晶基板2上面と、側面1bと、p型オーミック電極7上面とを含む。
【0033】
次に、前記酸化物半導体発光素子1を製造する製造方法について説明する。
【0034】
本実施形態の酸化物半導体発光素子1は、図2に示すレーザ分子線エピタキシー(以下レーザMBEと称する)装置20で製造される。このレーザMBE装置20は、超高真空に排気可能な第1成長室21aの上部に、前記基板2を下面位置で保持する基板ホルダー22aが配置されている。この基板ホルダー22aは、基板ホルダー22a裏面が基板ホルダー22a上部に配置されたヒーター23aにより加熱されるようになっており、これにより、前記基板2が基板ホルダー22aからの熱伝導により加熱される。前記基板2下方には、扇状のターゲットテーブル24aが配置されており、このターゲットテーブル24a上面外縁部には複数のターゲット25が配置されている。ターゲット25の表面は、第1成長室21aの側壁に設けられたビューポート26aを介して照射されるパルスレーザ光27によりアブレーションされ、ターゲット25表面の原料が瞬時に蒸発するようになっている。この蒸発したターゲット25の原料が基板2下面に堆積することにより基板2に薄膜が形成される(レーザアブレーション法)。また、ターゲットテーブル24aは、図示しない回転機構によりパルスレーザ光27の照射シーケンスに同期して回転制御され、異なるターゲット25の原料を基板2に積層できるようになっている。また、第1成長室21aにはガス導入管28a,bが設けられており、ガスを第1成長室21a内に導入できるようになっている。また、ガス導入管28bに設けられたラジカルセル29によって活性化された原子状ビームを基板2に照射することも可能である。
【0035】
また、基板2と原料ターゲット25との間には、基板2の所定領域をマスクするための遮蔽マスク30が配置されている。この遮蔽マスク30には、図3に示すように、250μm角の開口部30aが300μm間隔で形成されている。この遮蔽マスク30は、後述するように基板2上に前記半導体層3〜7を成長させる際に、成長層を250μm角に選択形成するのに用いられる。また、遮蔽マスク30は、移動機構31によって基板2下方から水平方向に移動可能となっている。
【0036】
また、前記レーザMBE装置20には、第2成長室21bが設けられている。この第2成長室21bは、前記第1成長室21aとゲートバルブ32を介して接続されている。このゲートバルブ32を介して、前記第1成長室21a内の基板2を第2成長室21b内に第1成長室21a内を大気解放することなく搬送することができる。このとき、基板2は図示しない基板搬送機構によって搬送される。また、第2成長室21bは、第1成長室21aと同様に超高真空に排気可能となっており、第2成長室21bの上部には、基板2を下面位置で保持する基板ホルダー22bが配置されている。この基板ホルダー22bは、ヒーター23bにより加熱され、保持する基板2が基板ホルダー22bからの熱伝導により加熱されるようになっている。また、前記基板2下方には、扇状のターゲットテーブル24bが配置されており、このターゲットテーブル24b上面外縁部には複数のターゲット25が配置されている。ターゲット25の表面は、第2成長室21bの側壁に設けられたビューポート26bを介して照射されるパルスレーザ光27によりアブレーションされる。このターゲット25の表面に照射されるパルスレーザ光27は、回転駆動されるミラー33によって光路を変更され、ビューポート26bを介して第2成長室21b内へ導入されるようになっている。また、ターゲットテーブル24bは、図示しない回転機構によりパルスレーザ光27の照射シーケンスに同期して回転制御され、異なるターゲット25の原料を基板2に積層できるようになっている。また、第2成長室21bにはガス導入管34が設けられており、ガスを第2成長室21b内に導入できるようになっている。
【0037】
前記レーザMBE装置20を用いたレーザMBE法では、まず、洗浄処理したZnO基板2をレーザMBE装置20内の基板ホルダー22a下面に取り付け固定する。次に、温度600℃で30分間、加熱してZnO基板2を清浄化し、その後で基板温度を550℃に降温する。
【0038】
次に、回転機構によるターゲットテーブル24aの回転駆動周期をパルスレーザ光27のパルス照射周期と同期させ、ノンドープZnO単結晶、およびGaを添加したMgZnO燒結体を原料とするターゲット25を交互にアブレーションし、図4(a)に示すように、基板2上に、所望のMg組成とGaドーピング濃度(3×1018cm−3)を有するn型Mg0.1Zn0.9Oクラッド層3を厚さ1μmまで成長させる。このとき、アブレーションを行うパルスレーザ光27には、KrFエキシマレーザ(波長:248nm、パルス数:10Hz、出力1J/cm)を用いる。また、n型クラッド層3を形成する間、ガス導入管28aよりOガスを第1成長室21a内に導入する。
【0039】
また、ノンドープZnO単結晶、およびノンドープCdO単結晶を原料とするターゲット25を交互にアブレーションし、厚さ5nmのZnO障壁層と、厚さ4nmのCd0.1Zn0.9O井戸層とからなる量子井戸発光層4を積層する。
【0040】
また、ガス導入管28bより導入したNガスをラジカルセル29でプラズマ化して照射しながら、ノンドープZnO単結晶およびノンドープMgZnO燒結体を原料とするターゲット25を交互にアブレーションし、p型Mg0.1Zn0.9Oクラッド層5を厚さ1μmまで成長させる。
【0041】
また、ガス導入管28bより導入したNガスをラジカルセル29でプラズマ化して照射しながら、ノンドープZnO単結晶を原料とするターゲット25をアブレーションし、p型ZnOコンタクト層6を厚さ0.5μmまで成長させる。
【0042】
なお、本実施形態では、所望のMg組成およびGaドーピング濃度を、ZnO単結晶とノンドープMgZnO燒結体の2つの原料ターゲットを交互にアブレーションして得たが、ZnO単結晶、ノンドープMgZnO燒結体およびGaド ープZnO燒結体の3つの原料ターゲットを用いて得るようにしてもよい。
【0043】
また、ノンドープMgZnO燒結体を用いず、ZnO単結晶とMgO単結晶を交互にアブレーションして所望の組成を有するMgZnO混晶を得てもよい。量子井戸発光層4に用いたCdZnO混晶についても同様である。また、Ga添加燒結体を用いず、蒸発セルを用いて金属Gaをドーピングしてもよい。
【0044】
そして、OガスおよびNガスの流入を停止し、第1成長室21a内の圧力を1×10−4Paに調整し、Niを原料とするターゲット25をアブレーションする。これにより、p型オーミック電極7を厚さ15nmまで形成する。
【0045】
次に、ZnO基板2を室温まで冷却した後、レーザMBE装置20の第1成長室21aから取り出す。そして、図示しないダイシング装置を用いてn型Mg0.1Zn0.9Oクラッド層3からp型オーミック電極7までの分離溝40を形成して、250μm角のメサ型に分離する(図4(b))。なお、分離溝40の形成には、ダイシング装置を用いたが、ウエットエッチングやドライエッチングなどの手法を用いて形成してもよい。また、分離溝40は、n型Mg0.1Zn0.9Oクラッド層3から上方に位置する成長層に形成されていることが望ましく、より好ましくは、基板2表面より深い位置まで形成されていればよい。
【0046】
次に、主表面1a(側面1b、ZnO単結晶基板2上面およびp型オーミック電極7上面)に、スピンコーティング法によってポリカーボネート保護膜10およびポリイミド保護膜11をコーティングする(図4(c))。このコーティングされた保護膜10,11の膜厚は、溶媒での希釈率とコーティング時のスピン速度を制御し、いずれも平均1μmとなっている。ポリイミド保護膜11をコーティングした後、250℃において15分間、キュアを行い、半硬化させた。
【0047】
次に、ポリイミド保護膜11の上面にレジストマスク41を形成し、ポリカーボネート保護膜10およびポリイミド保護膜11をエッチングする。これにより、ポリカーボネート保護膜10およびポリイミド保護膜11に直径100μmの開口部42を設けて、p型オーミック電極7を露出させる(図5(a))。ポリイミド保護膜11は、半硬化の状態であればレジストマスク41の現像液に溶解しやすいので容易にパターン加工することができる。また、ポリカーボネート保護膜10は、有機溶媒に溶解するので、パターン加工したポリイミド保護膜11をマスクとしてエッチング除去することができ、開口部42を形成しやすい。
【0048】
次に、ポリカーボネート保護膜10およびポリイミド保護膜11に設けられた開口部42を介して露出したp型オーミック電極7上に、真空蒸着法によってAuパッド電極8を形成する。そして、リフトオフ法によってレジストマスク41および開口部42以外に堆積したAuを除去する(図5(b))。その後、400℃において1時間、キュアを行い、ポリイミド保護膜11を完全硬化させる。
【0049】
そして、ZnO基板2裏面に、真空蒸着法によってAlを蒸着し、n型オーミック電極9を形成する(図5(c))。なお、n型オーミック電極9は、p型オーミック電極7と同様にレーザMBE装置20を用いて形成してもよい。
【0050】
最後に、酸化物半導体発光素子1を分離溝40に沿って切断して、300μm角のチップ状に分離する。
【0051】
前述したレーザMBE法は、ターゲット25の原料と形成される薄膜の組成ずれが小さく、また、ZnGaなどの意図しない副生成物の生成を抑えることができるので好ましい。また、本発明の酸化物半導体発光素子1は、前記レーザMBE法に限らず、固体あるいは気体原料を用いた分子線エピタキシー(MBE)法、有機金属気相成長(MOCVD)法などの結晶成長手法で製造してもよい。
【0052】
以上のようにして、製造された酸化物半導体発光素子1のAuパッド電極8をリードフレームにワイヤボンディングした後、酸化物半導体発光素子1を樹脂でモールドし、発光させたところ、発光ピーク波長410nmの青色発光が得られた。また、20mAの動作電流で10,000時間の間、連続駆動させたところ、発光強度が20%低下した。
【0053】
(比較例1)
ポリカーボネート保護膜10およびポリイミド保護膜11の両方の保護膜を備えない酸化物半導体発光素子をリードフレームに実装し、この酸化物半導体発光素子を樹脂でモールドし、発光させた。このとき、20mAの動作電流で1,000時間の間、連続駆動させたところ、発光強度が20%低下した。2500時間経過すると、この酸化物半導体発光素子は発光しなくなった。
【0054】
(比較例2)
また、ポリイミド保護膜11を備えない酸化物半導体発光素子をリードフレームに実装し、この酸化物半導体発光素子を樹脂でモールドし、発光させた。このとき、20mAの動作電流で8,000時間の間、連続駆動させたところ、発光強度が20%低下した。10,000時間経過すると、この酸化物半導体発光素子は発光しなくなった。
【0055】
前記比較例1および比較例2の酸化物半導体発光素子が前記実施形態に比べて劣化したのは、素子表面に吸着された水分がZnO系半導体を還元して無効電流が増大するとともに、酸化物半導体発光素子の発光に伴う発熱などにより前記還元性欠陥が増殖し、素子が劣化したものと考えられる。一方、本実施形態の酸化物半導体発光素子1は、2層の絶縁性有機保護膜(ポリカーボネート保護膜10およびポリイミド保護膜11)が主表面1aに形成されているので、吸着された水分によりZnO系半導体が還元されて還元性欠陥が増殖することを防止し、素子寿命が向上したと考えられる。
【0056】
このような還元雰囲気から酸化物半導体発光素子1を保護するには、従来の還元され易い無機保護膜よりも、本実施形態の保護膜11を構成するポリイミド樹脂のような有機化合物が適している。このポリイミド樹脂以外に、弗素樹脂、ポリアミド樹脂、ポリサルホン樹脂、ポリカーボネート樹脂、塩化ビニリデン樹脂、アクリル樹脂、フェノール樹脂、メラニン樹脂、シリコン樹脂、エポキシ樹脂などが適しており、また、少なくともこれら2種類以上の組み合わせでもよい。
【0057】
図6に、ポリイミド保護膜11の膜厚(μm)と、素子寿命(時間)の関係を示す。素子寿命は、20mAの動作電流で連続駆動させ、酸化物半導体発光素子1の発光強度が20%低下するまでの時間で定義した。図6から明らかなように、ポリイミド保護膜11の膜厚が10nm以上から素子寿命が延び、保護効果が顕著に現れる。なお、有機保護膜の膜厚があまり厚くなると、p型オーミック電極7を露出させる際の加工性が低下し、またポリイミドなどのように透光性が悪い樹脂の場合は光取り出し効率が低下する。したがって、ポリイミド保護膜11の膜厚は、10nm以上100μm以下とすることが好ましい。
【0058】
また、ポリカーボネート保護膜10の1層のみでは素子劣化に対する抑止効果が十分ではなく、絶縁性と耐候性に優れたポリイミド保護膜11を合わせた2層を設けることによって素子劣化に対する高い抑止効果が得られることがわかる。
【0059】
前記実施形態の変形例として、図4(a)に示すように、前記ZnO単結晶基板2上に、成長層(前記n型クラッド層3、量子井戸発光層4、p型クラッド層5、p型コンタクト層6およびp型オーミック電極7)を積層する際、前記遮蔽マスク30を、ZnO基板2と原料ターゲット25の間に配置した。これにより、前記成長層は、図4(b)に示すように、ZnO基板2上に250μm角に選択形成される。
【0060】
そして、第1成長室21a内の酸化物半導体発光素子1を、基板搬送機構によりゲートバルブ32を介して第2成長室21bへ移動する。このとき、レーザMBE装置20の第1成長室21aを大気解放することなく酸化物半導体発光素子1を移動できるので、半導体結晶を成長する第1成長室21a内を清浄な状態で維持することができる。これにより、極めて高い結晶品質の半導体結晶成長を実現できる。
【0061】
第2成長室21bでは、塊状のポリカーボネート樹脂およびポリイミド樹脂を原料とするターゲット25を用いてレーザアブレーションすることにより、基板2上にポリカーボネート保護膜10およびポリイミド保護膜11を形成した。このように、汚染の要因となる有機物の堆積、すなわちポリカーボネート保護膜10およびポリイミド保護膜11の形成を第2成長室21bで行うことにより、第1成長室21a内が有機物により汚染されることを回避できる。
【0062】
続いて、前記実施形態と同様にAuパッド電極8およびn型オーミック電極9を形成した後、酸化物半導体発光素子1を選択成長されていない領域に沿って切断して、300μm角のチップ状に分離する。
【0063】
以上のようにして、製造された酸化物半導体発光素子1のAuパッド電極8をリードフレームにワイヤボンディングした後、酸化物半導体発光素子1を樹脂でモールドし、発光させたところ、発光ピーク波長410nmの青色発光が得られた。また、20mAの動作電流で20,000時間の間、連続駆動させたところ、発光強度が20%低下した。
【0064】
このように、レーザMBE装置20内でZnO系半導体の結晶成長から有機化合物の保護膜形成を連続して行ったので、酸化物半導体表面が水分を含んだ大気に晒されることなく保護膜10、11を形成できる。これにより、酸化物半導体発光素子1の素子寿命が改善された。また、絶縁性有機化合物の薄膜形成は、前記レーザアブレーションによる形成方法の他に、電子ビーム蒸着法、イオン化蒸着法、スパッタリング法などの量産性に優れた真空堆積形成方法を用いてもよい。
【0065】
また、前記実施形態の他の変形例として、図7に示すように、ポリカーボネート保護膜10とp型オーミック電極7との間に、厚さ15nmのSiO保護膜12(無機保護膜)を下地層として形成してもよい。この酸化物半導体発光素子1のAuパッド電極8をリードフレームにワイヤボンディングした後、酸化物半導体発光素子1を樹脂でモールドし、発光させたところ、発光ピーク波長410nmの青色発光が得られた。また、20mAの動作電流で300,000時間の間、連続駆動させたところ、発光強度が20%低下した。
【0066】
このように、絶縁性無機化合物からなるSiO保護膜12を形成したことにより、有機化合物からなる保護膜10,11のみの場合に比べて還元雰囲気からの保護効果が増大し、また有機化合物からなる保護膜10,11の密着性が向上し、酸化物半導体発光素子1の信頼性が向上した。また、無機化合物からなる保護膜12を構成する材料としては、酸化物半導体との親和性に優れた酸化物が好ましい。また、保護膜12は、非晶質薄膜であれば、結晶粒界を生じないので絶縁耐性が高く好ましい。
【0067】
また、前記実施形態の他の変形例として、図8に示すように、基板2上に成長層を形成し、一旦基板2をレーザMBE装置20から取り出し、Auパッド電極8を形成加工した後で、ポリカーボネート保護膜10およびポリイミド保護膜11をワイヤボンディングに必要な面積S(電気的接続に必要な最小限の開口部)を除いてAuパッド電極8を覆うように積層してもよい。
【0068】
この酸化物半導体発光素子1のAuパッド電極8をリードフレームにワイヤボンディングした後、酸化物半導体発光素子1を樹脂でモールドし、発光させたところ、発光ピーク波長410nmの青色発光が得られた。また、20mAの動作電流で15,000時間の間、連続駆動させたところ、発光強度が10%低下した。また、300個の酸化物半導体発光素子1をリードフレームにワイヤボンディングしたところ、前記実施形態の酸化物半導体発光素子1では10個が電極剥れを生じたのに対し、本実施形態の酸化物半導体発光素子1では電極剥れが全く生じなかった。これは、保護膜10,11がAuパッド電極8の周囲を覆っているため、電極の密着性が向上し、また、電極の経時劣化が生じにくくなったためである。これにより、酸化物半導体発光素子1の信頼性と歩留まりの向上が図られる。
【0069】
以下、本実施形態における本発明の他の構成について記す。
【0070】
p型ZnO系半導体層にドーピングするアクセプタ不純物としては、I族元素のLi,Cu,AgやV族元素のN,As,Pなどを用いることが好ましく、本発明の効果を最大限に得るためには、活性化率が高いNとAgが特に好ましい。さらに、Nをドーピングする場合、Nをプラズマ化して結晶成長中に照射する手法によって、結晶性を良好に保って高濃度ドーピングが行えるのでより好ましい。
【0071】
また、n型ZnO系半導体層にドーピングするドナー不純物としては、III族元素のB,Al,Ga,Inなどを用いることが好ましく、特に、ZnO系半導体中での活性化率が高いGaまたはAlが好ましい。
【0072】
また、酸化物半導体発光素子1の発光効率を向上させるには、p型Mg0.1Zn0.9Oクラッド層5上に直接p型オーミック電極7を形成せずに、本実施形態において示したように、p型ZnOコンタクト層6を介してオーミック電極8を形成することが好ましい。これにより、低抵抗化し、電流広がりを均一化できる。また、コンタクト層6の材料には、結晶性に優れキャリア濃度を高くできるZnOを用いることが好ましい。p型ZnOコンタクト層6に過剰にアクセプタ不純物をドーピングすると結晶性劣化が顕著となり、発光効率が低下するので、5×1016〜5×1019cm−3のキャリア濃度範囲となるようにドーピング濃度を調整することが好ましい。
【0073】
基板材料としては、本実施形態で用いたZnO基板2以外にも、サファイアやスピネルあるいはLiGaOなどの絶縁性基板、またはSiCやGaNなどの導電性基板を用いてもよい。絶縁性基板を用いる場合、基板2とn型Mg0.1Zn0.9Oクラッド層3との間にn型コンタクト層を形成し、成長層の一部をエッチングして前記n型コンタクト層の一部を露出させ、その上面にn型オーミック電極9を形成すればよい。n型コンタクト層の材料には、p型ZnOコンタクト層6の場合と同様にZnOが適しており、ドナー不純物のドーピング濃度は1×1018〜1×1021cm−3の範囲が好ましく、より好ましくは5×1019〜5×1020cm−3の範囲で調整されることが好ましい。また、n型コンタクト層の膜厚は、0.001〜1μm、好ましくは0.005〜0.5μm、より好ましくは0.01〜0.1μmの範囲内に調整されることが好ましい。また、結晶性の良好な成長層を得るためにバッファ層を形成してもよい。
【0074】
また、可視領域における発光効率を最大限に得るためには、
1.ZnOとの面内格子定数差が3%以内であり、非発光中心となる欠陥を低減できる。
2.発光波長に対応する吸収係数が低い。
3.導電性基板であり、裏面に電極を形成できる。
ことが好ましい。
【0075】
本実施形態で、基板2として用いたZnO単結晶は、前記条件を全て満ており、最も好ましい。また、亜鉛面を用いることにより、p型半導体層のキャリア活性化率が向上し、抵抗の低いp型半導体層が得られやすくなるので好ましい。
【0076】
また、研磨やエッチングなどの公知の方法で基板2裏面に凹凸を形成し、基板2に入射した発光を乱反射させ、光取り出し効率を向上させてもよい。
【0077】
p型オーミック電極7には、Ni、Pt、Pd、Auなどが適しており、中でも低抵抗で密着性の良いNiが好ましい。また、前記複数の金属材料Ni、Pt、Pd、Auを合金化してp型オーミック電極7を形成してもよい。
【0078】
また、高い発光効率または光取り出し効率を得るために、本実施形態で示したように、厚さ15nmの透光性を有するp型オーミック電極7を設けることが好ましい。良好なオーミック特性と透光性を両立するp型オーミック電極7の層厚としては、5〜200nmの範囲内が好ましく、より好ましくは30〜100nmの範囲内が好ましい。
【0079】
また、p型電極を形成した後にアニール処理を行うと、p型電極の密着性が向上するとともに接触抵抗が低減するので好ましい。ZnO結晶に欠陥を生じずにアニール効果を得るには、アニール処理時の処理温度は300〜400℃が好ましい。また、アニール処理における雰囲気は、Oあるいは大気雰囲気が好ましく、Nでは逆に接触抵抗が増大する。
【0080】
Auパッド電極8の面積は、透光性を有するp型オーミック電極7上の一部、すなわちp型オーミック電極7より小さい面積となるように形成すればよい。これにより、p型オーミック電極7の透光性の効果を損なわずにリードフレームへ酸化物半導体発光素子1を実装することができる。Auパッド電極8の材料としてはボンディングが容易でZnO中へ拡散してもドナー不純物とならないAuが好ましい。また、p型オーミック電極7とAuパッド電極8の間に他の金属層を設け、密着性や光反射性を向上させてもよい。
【0081】
また、n型オーミック電極9にはTi,Cr,Alなどを用いることが好ましい。特に、Alは、低抵抗かつ低コストであり好ましく、青〜紫外光の反射率が高いので基板2裏面全面に形成すると光取り出し効率が向上する。また、密着性の良いTiであってもよい。あるいは、前記金属材料Ti,Cr,Alを合金化してn型オーミック電極9を形成してもよい。さらに、n型オーミック電極9を任意の形状にパターニングし、露出した基板2裏面をAgペーストを用いてリードフレームに接着してもよい。このAgは、青〜紫外光の反射率がAlより高いため光取り出し効率が向上する。その他の構成は任意であり、本実施形態によって限定されるものではない。
【0082】
(第2実施形態)
図9は、本発明の第2実施形態に係る半導体発光装置50の断面図である。この半導体発光装置50は、リードフレーム51上に前記第1実施形態の酸化物半導体発光素子1が実装されている。この酸化物半導体発光素子1はエポキシ樹脂からなる封止樹脂52内に埋め込まれている。また、酸化物半導体発光素子1のAuパッド電極8は、リードフレーム51にボンディングワイヤ53を介してボンディングされている。なお、前記第1実施形態と同一かつ同様の作用を有する部分には、同一符号を付して詳細な説明は省略する。
【0083】
この半導体発光装置50を20mAの動作電流で100,000時間の間、連続駆動させたところ、発光強度が20%低下した。
【0084】
(比較例3)
また、ポリカーボネート保護膜10を形成せずにポリイミド保護膜11のみ備えた酸化物半導体発光素子をリードフレーム51に実装した半導体発光装置を発光させたところ、20mAの動作電流で30,000時間の間、連続駆動させたところ、発光強度が20%低下した。
【0085】
ポリカーボネート保護膜10を構成するポリカーボネート樹脂は、短波長域の発光の遮断性に優れ、特に、200〜380nmの紫外光を殆ど透過しない性質を有している。本実施形態の半導体発光装置は、前記還元腐食を回避するだけでなく、ポリカーボネート保護膜10の紫外線遮断効果によってエポキシ樹脂からなる封止樹脂52の劣化が抑止されたため、高い信頼性を実現できたと考えられる。この半導体発光装置50を、産業上の利用価値が極めて高い高密度光記録用の光源や殺菌システムなどの紫外線光源に用いる場合、380nm以下の短波長域の光はカットしても差し支えなく、エポキシ樹脂からなる封止樹脂52が長期の紫外光被曝によって劣化することを防止するためにカットした方がむしろ好ましい。
【0086】
以上、本発明の実施形態を説明したが、本発明は発光素子のみならず、酸化物半導体を用いたレーザ素子に適用しても同様の効果を奏することは言うまでもない。
【0087】
【発明の効果】
以上の説明から明らかなように、本発明に係る酸化物半導体発光素子は、基板上に、少なくともn型クラッド層、活性層、p型クラッド層、p型コンタクト層および電極を備えた酸化物半導体発光素子において、ZnO系酸化物半導体発光素子の少なくとも側面を含む主表面を、ポリカーボネートおよびポリイミドからなる多層保護膜で被覆したことにより、還元による酸化物半導体の経時劣化を防止し、保護することができ、信頼性に優れたZnO系酸化物半導体発光素子を提供できる。
【0088】
また、本発明に係る酸化物半導体発光素子の製造方法は、基板上に、少なくともn型クラッド層、活性層、p型クラッド層、p型コンタクト層を積層し、ポリカーボネートおよびポリイミドを真空中で蒸発あるいは飛散させてZnO系酸化物半導体発光素子の少なくとも側面を含む主表面に堆積させ被覆するので、微小なZnO系酸化物半導体発光素子の主表面に高品質で膜厚が均一な多層保護膜を容易に形成することができる。
【0089】
また、本発明に係る半導体発光装置は、基板上に、少なくともn型クラッド層、活性層、p型クラッド層、p型コンタクト層および電極を備えたZnO系酸化物半導体発光素子をリードフレーム上に接続し、ZnO系酸化物半導体発光素子は封止樹脂で封止された半導体発光装置において、ZnO系酸化物半導体発光素子の少なくとも側面を含む主表面を、ポリカーボネートおよびポリイミドからなる多層保護膜で被覆したことにより、還元による酸化物半導体の経時劣化を防止し、保護することができ、信頼性に優れたZnO系酸化物半導体発光素子を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の第1実施形態に係る酸化物半導体発光素子の断面図である。
【図2】 図1の酸化物半導体発光素子の製造時に用いられるレーザMBE装置を示す概略図である。
【図3】 図2のレーザMBE装置の遮蔽マスクを示す平面図である。
【図4】 (a),(b),(c)は、基板上に成長層を形成する状態を示した断面図である。
【図5】 (a),(b),(c)は、基板上に成長層を形成する状態を示した断面図である。
【図6】 ポリイミド保護膜の膜厚(μm)と、素子寿命(時間)の関係を示す図である。
【図7】 図1の酸化物半導体発光素子の変形例を示す断面図である。
【図8】 図1の酸化物半導体発光素子の他の変形例を示す断面図である。
【図9】 本発明の第2実施形態に係る酸化物半導体発光素子の断面図である。
【符号の説明】
1…酸化物半導体発光素子
1b…側面
1a…主表面
2…基板
3…n型クラッド層
4…量子井戸発光層(活性層)
5…p型クラッド層
6…p型コンタクト層
7…p型オーミック電極
8…Auパッド電極
10…ポリカーボネート保護膜(多層保護膜)
11…ポリイミド保護膜(多層保護膜)

Claims (10)

  1. 基板上に、少なくともn型クラッド層、活性層、p型クラッド層、p型コンタクト層および電極を備えたZnO系酸化物半導体発光素子において、
    前記ZnO系酸化物半導体発光素子の少なくとも側面を含む主表面を、ポリカーボネートおよびポリイミドからなる多層保護膜で被覆したことを特徴とするZnO系酸化物半導体発光素子。
  2. 前記多層保護膜の膜厚は、10nm以上100μm以下であることを特徴とする請求項1に記載のZnO系酸化物半導体発光素子。
  3. 前記主表面と前記多層保護膜との間に、SiO からなる無機保護膜を形成したことを特徴とする請求項1または2に記載のZnO系酸化物半導体発光素子。
  4. 前記無機保護膜が酸化物であることを特徴とする請求項3に記載のZnO系酸化物半導体発光素子。
  5. 前記無機保護膜は、非晶質薄膜であることを特徴とする請求項3に記載のZnO系酸化物半導体発光素子。
  6. 前記多層保護膜は、前記電極の側面部と上面部の少なくとも一部を覆うことを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載のZnO系酸化物半導体発光素子。
  7. 基板上に、少なくともn型クラッド層、活性層、p型クラッド層、p型コンタクト層を積層し、
    ポリカーボネートおよびポリイミドを真空中で蒸発あるいは飛散させてZnO系酸化物半導体発光素子の少なくとも側面を含む主表面に堆積させ被覆するZnO系酸化物半導体発光素子の製造方法。
  8. 前記n型クラッド層、活性層、p型クラッド層、p型コンタクト層を成長装置内の第1成長室内において前記基板上に積層し、
    前記第1成長室内の前記基板を、大気に晒すことなく前記成長装置内の第2成長室内へ移動し、
    前記ポリカーボネートおよびポリイミドを前記第2成長室内において真空中で蒸発あるいは飛散させてZnO系酸化物半導体発光素子の少なくとも側面を含む主表面に堆積させ被覆することを特徴とする請求項に記載のZnO系酸化物半導体発光素子の製造方法。
  9. 前記堆積方法は、真空蒸着法、スパッタリング法、レーザアブレーション法のいずれかであることを特徴とする請求項7または8に記載のZnO系酸化物半導体発光素子の製造方法。
  10. 基板上に、少なくともn型クラッド層、活性層、p型クラッド層、p型コンタクト層および電極を備えたZnO系酸化物半導体発光素子をリードフレーム上に接続し、前記ZnO系酸化物半導体発光素子は封止樹脂で封止された半導体発光装置において、
    前記ZnO系酸化物半導体発光素子の少なくとも側面を含む主表面を、ポリカーボネートおよびポリイミドからなる多層保護膜で被覆したことを特徴とする半導体発光装置。
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