JP4136401B2 - 面発光半導体レーザ素子及び光伝送システム - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、面発光半導体レーザ素子及び光伝送システムに関する。
【0002】
【従来の技術】
面発光半導体レーザ素子は、活性層近傍に電流と光を閉じ込める必要があるため、また、高速変調のために寄生容量を低減するため、多くの場合、レーザ構造としては半導体柱構造をとる。
【0003】
さらに、このような面発光半導体レーザ素子では、素子への水分を遮断し素子が劣化するのを防ぐため、また、素子表面の平坦化により配線パターニングを容易にするため、また、放熱のため、また、高速変調を可能にするため、レーザ構造部である半導体柱の周辺は、一般に、耐熱性があり、機械的強度が高く、水分遮断性が高く、低誘電率であり、膜形成が容易であるポリイミド保護膜で覆われる。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、近年、急速に着目され始めた長波長帯(例えば、1.1μm以上の波長帯)のGaInNAs系材料を活性層に用いたレーザは、発振波長が長波長帯なので、石英系ファイバとの整合性が高い。さらに、GaAs基板上に形成できるので、スペーサ層等の活性層周りの層にワイドバンドギャップ材料を選択できて、これにより、キャリアの閉じ込めが良好になり温度特性が良好である。このため、InP基板上に形成するGaInAsPを活性層とする従来の長波長帯レーザの場合と異なり冷却装置を必要としない。
【0005】
さらに、GaInNAs系材料を活性層に用いた面発光半導体レーザ素子は、GaAs基板上に形成できるので、GaAs基板上に形成できる屈折率差の大きいAl(Ga)As/GaAs、より広義には、AlxGa(1-x)As/AlyGa(1-y)As(0≦y<x≦1)を半導体DBRとして用いるのが好適である。よって、少ない層数の半導体DBRをもつ面発光レーザが得られる。
【0006】
このように、GaInNAs系面発光半導体レーザ素子は優れた特性をもつので、光通信システムや、コンピューター間,チップ間,チップ内の光インターコネクションや、光コンピューティングにおいて、キーデバイスになると考えられている。
【0007】
しかし、長波長帯(例えば、1.1μm以上の波長帯)のGaInNAs系面発光半導体レーザ素子では、従来の0.85μm帯,0.98μm帯の面発光半導体レーザ素子と比べて、上部多層膜反射鏡の半導体柱の高さが大きくなって、ポリイミド保護膜の厚さが従来と比較して1.3〜1.8倍になる。これにより、ポリイミド保護膜中、及び、レーザ構造部中に発生する、両材料の熱膨張係数の差に起因した熱応力がより大きくなり、ポリイミドの硬化反応後、ポリイミド保護膜中にクラック及び界面でのはく離が発生しやすくなる。また、長波長帯のGaInNAs系面発光半導体レーザ素子の活性層は高歪をもつので、さらに熱応力が加わることによる面発光半導体レーザ素子,すなわちVCSEL(Vertical Cavity Surface Emitting Laser)素子の寿命の低下が懸念され、また、活性層に歪が加わり発振波長がシフトするという問題があった。
【0008】
また、前述のように、GaInNAs系材料を活性層に用いたレーザは、発振波長が長波長帯なので、石英系ファイバとの整合性が高く、高速に変調できれば高速大容量伝送が可能になる。そのためには、レーザ構造部とともに配線部や保護膜部等のレーザ構造周辺部においても寄生容量を低減して高速変調が可能な構造にする必要がある。
【0009】
本発明は、面発光半導体レーザ素子が長波長帯(例えば、1.1μm以上の波長帯)のGaInNAs系のものであっても、ポリイミド保護膜のクラック発生やはく離を生じさせず、また、素子の信頼性を低下させず、素子を安定に動作させることの可能な面発光半導体レーザ素子を提供することを目的としている。
【0010】
さらに、本発明は、寄生容量を低減して高速変調が可能な面発光半導体レーザ素子を提供することを目的としている。
【0011】
さらに、本発明は、信頼性が高く、安定に動作し、高速伝送が可能な、簡便な構成の光伝送システムを提供することを目的としている。
【0012】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、請求項1記載の発明は、半導体基板上に、NとAsを含むIII−V族混晶半導体から成る活性層を含む共振器と、共振器の上下に設けられた多層膜反射鏡のうちの少なくとも上部の多層膜反射鏡とが、柱状のレーザ構造部として形成されている1.1μm以上の波長を有する面発光半導体レーザ素子において、前記レーザ構造部の周囲に熱線膨張係数が50×10― 6℃― 1以下のポリイミド保護膜が設けられていることを特徴としている。
【0013】
また、請求項2記載の発明は、半導体基板上に、NとAsを含むIII−V族混晶半導体から成る活性層を含む共振器と、共振器の上下に設けられた多層膜反射鏡のうちの少なくとも上部の多層膜反射鏡とが、柱状のレーザ構造部として形成されている1.1μm以上の波長を有する面発光半導体レーザ素子において、前記レーザ構造部の周囲に熱線膨張係数が20×10―6℃―1以下のポリイミド保護膜が設けられていることを特徴としている。
【0014】
また、請求項3記載の発明は、請求項1または請求項2記載の面発光半導体レーザ素子において、前記ポリイミド保護膜は感光性のポリイミドで形成されていることを特徴としている。
【0015】
また、請求項4記載の発明は、請求項1乃至請求項3のいずれか一項に記載の面発光半導体レーザ素子において、前記レーザ構造部の表面と前記ポリイミド保護膜との間に、SiNまたはSiON膜からなるパッシベーション層が設けられていることを特徴としている。
【0016】
また、請求項5記載の発明は、請求項4記載の面発光半導体レーザ素子において、前記レーザ構造部の表面と前記パッシベーション層との間に、SiO2膜からなる応力緩和層が設けられていることを特徴としている。
【0017】
また、請求項6記載の発明は、請求項1乃至請求項5のいずれか一項に記載の面発光半導体レーザ素子において、前記ポリイミド保護膜は、厚さが3μm以上であることを特徴としている。
【0018】
また、請求項7記載の発明は、請求項6記載の面発光半導体レーザ装置において、前記ポリイミド保護膜上には、上部電極に接続された配線電極およびボンディングパッドが形成されていることを特徴としている。
【0019】
また、請求項8記載の発明は、請求項7記載の面発光半導体レーザ素子において、前記ポリイミド保護膜の表面が酸素プラズマ処理されており、かつ、酸素プラズマ処理されたポリイミド保護膜の表面と接するボンディングパッドの部分および/または配線電極の部分が、TiまたはCrを含む材料で形成されていることを特徴としている。
【0021】
また、請求項9記載の発明は、請求項1乃至請求項8のいずれか一項に記載の面発光半導体レーザ素子において、該面発光半導体レーザ素子は、活性層がNとAsを含むIII−V族混晶半導体で構成されている層を含んでいることを特徴としている。
【0022】
また、請求項10記載の発明は、請求項9記載の面発光半導体レーザ素子において、半導体基板がGaAsで構成されており、上部半導体多層膜反射鏡および下部半導体多層膜反射鏡がAlGaAs系材料で構成されていることを特徴としている。
【0023】
また、請求項11記載の発明は、請求項9または請求項10に記載の面発光半導体レーザ素子が発光素子として用いられる光伝送システムである。
【0024】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0025】
第1の実施形態
図1は本発明に係る面発光半導体レーザ素子の構成例を示す図である。なお、図1において、符号1は半導体基板、符号2は下部多層膜反射鏡、符号3,5はスペーサ層、符号4は活性層、符号6は電流狭窄層、符号8は上部多層膜反射鏡、符号9はコンタクト層、符号10は上部電極、符号11は下部電極、符号12はポリイミド保護膜である。図1を参照すると、この面発光半導体レーザ素子は、半導体基板1上に、NとAsを含むIII−V族混晶半導体から成る活性層4を含む共振器と、共振器の上下に設けられた多層膜反射鏡2,8とが、レーザ構造部として形成されており、前記レーザ構造部の表面に熱線膨張係数が50×10― 5℃― 1以下のポリイミド保護膜12が設けられていることを特徴としている。
【0026】
ここで、共振器は、スペーサ層3,5,活性層4,電流狭窄層6を有している。
【0027】
また、レーザ構造部は、下部多層膜反射鏡2,共振器(スペーサ層3,5,活性層4,電流狭窄層6),上部多層膜反射鏡8,コンタクト層9により構成されている。
【0028】
また、半導体基板1には、n−GaAs基板が用いられ、また、コンタクト層9には、p−GaAsコンタクト層が用いられる。
【0029】
また、電流狭窄層6としては、AlAs膜の酸化による絶縁性のAlxOy膜による構造の他に、プロトンインプランテーションや酸素イオンインプランテーションにより活性層近傍に絶縁領域を設ける構造を用いることができる。
【0030】
また、長波長帯のGaInNAs系面発光半導体レーザ素子では、活性層4には、GaAsN,GaInNAs,GaNAsSb,GaInNAsSb等が用いられる。なお、本発明では、長波長帯の面発光半導体レーザ素子とは、発光波長が1.10μm以上の波長範囲の面発光半導体レーザとする。
【0031】
また、ポリイミド保護膜12としては、熱線膨張係数が、GaAs系材料の熱線膨張係数(6×10― 6℃― 1)に近いポリイミドが使用されるのが良い。すなわち、従来の0.85μm帯,0.98μm帯の面発光半導体レーザ素子で使用されているポリイミド保護膜の熱線膨張係数は特に検討されておらず、熱線膨張係数が例えば60×10― 6℃― 1程度のものが用いられていた。しかし、本発明のように長波長帯のGaInNAs系面発光半導体レーザ素子を意図する場合には、前述のように、レーザ構造部(半導体柱)の高さhが大きくなり、ポリイミド保護膜12の厚さが従来と比較して1.3〜1.8倍になるため、熱応力がより大きくなり、ポリイミドの硬化反応後にポリイミド保護膜12中にクラック及び界面でのはく離が発生しやすくなったり、また、活性層4に歪が加わるため発振波長がシフトする場合があった。
【0032】
このような問題を回避するため、本発明の第1の実施形態では、ポリイミド保護膜12として、熱線膨張係数が50×10― 6℃― 1以下のポリイミド材を用いるようにしている。このようなポリイミド保護膜12を用いると、硬化処理後の硬化温度から室温までの降温速度が10℃/分以下であればクラック及び界面でのはく離や熱応力による発振波長のシフトが発生しなくなる。
【0033】
ポリイミドは主鎖にイミド基をもつポリマーである。一般には、芳香族テトラカルボン酸二無水物と芳香族ジアミンの縮合反応によって得られ、イミド環で芳香族基を連結したポリマーである。熱線膨張係数が小さいポリイミドの芳香族基の例としては、ピロメリット酸二無水物、ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、パラフェニレンジアミン、o−トリジン、ジアミノターフェニル、及びそれらの誘導体などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0034】
ポリイミド膜は、ポリイミドワニスやポリイミド前駆体などと呼ばれる前記縮合反応の中間反応物を塗布した後、加熱硬化させて形成される。この中間反応物はポリアミド酸溶液である場合が多い。
【0035】
また、熱線膨張係数は以下のようにして計測した値である。すなわち、試験するポリイミド前駆体をガラス基板等の表面に塗布し加温硬化させ、次に、フッ酸水溶液等によりガラス基板を溶解し、ポリイミドの試験膜を作製する。このときのポリイミドの膜厚は、3〜50μmとする。次に、TMA微小線膨張計に上記試験膜をセットし昇温速度10℃/分にて試料温度を20℃〜200℃に変化させ、次式により熱線膨張係数α1を計測することができる。
【0036】
【数1】
熱線膨張係数(α1)=〔(L2−L1)/(T2−T1)〕・(1/L)
【0037】
ここで、Lは常温時の試料の長さ、L1は温度T1での試料の長さ、L2は温度T2での試料の長さである。
【0038】
このように、本発明の第1の実施形態では、半導体基板1上に、NとAsを含むIII−V族混晶半導体から成る活性層4を含む共振器と、共振器の上下に設けられた多層膜反射鏡2,8とが、レーザ構造部として形成されている面発光半導体レーザ素子において、前記レーザ構造部の表面に熱線膨張係数が50×10― 6℃― 1以下のポリイミド保護膜12を設けることにより、レーザ構造部とポリイミド保護膜12との間の熱膨張係数の差が小さいので、半導体柱の高さhが高い長波長帯面発光半導体レーザにおいても発生する熱応力が小さくなり、ポリイミドのクラック及びはく離が発生しにくく、また、素子の寿命が低下しにくく、また
、発振波長をシフトしにくくすることができる。
【0039】
第2の実施形態
また、本発明の第2の実施形態では、図1の構成例において、ポリイミド保護膜12として、熱線膨張係数が20×10― 6℃― 1以下のポリイミド材を用いるようにしている。このようなポリイミド保護膜12を用いると、硬化処理後の硬化温度から室温までの降温速度が20℃/分以下であればクラック及び界面でのはく離や熱応力による発振波長のシフトが発生しなくなる。
【0040】
このように、半導体基板1上に、NとAsを含むIII−V族混晶半導体から成る活性層4を含む共振器と、共振器の上下に設けられた多層膜反射鏡2,8とが、レーザ構造部として形成されている面発光半導体レーザ素子において、前記レーザ構造部の表面に熱線膨張係数が20×10― 6℃― 1以下のポリイミド保護膜12を設けるときには、レーザ構造部とポリイミド保護膜12との間の熱膨張係数の差がより一層小さくなるので、半導体柱の高さhが高い長波長帯GaInNAs系面発光半導体レーザにおいても発生する熱応力がより小さくなり、硬化工程後、より大きい速度で降温できて、プロセス時間を短縮でき、また、ポリイミドのクラック及びはく離がより発生しにくくなり、素子の寿命の低下をより一層防止でき、発振波長のシフトをより一層しにくくすることができる。
【0041】
また、上述した第1または第2の実施形態の面発光半導体レーザ素子において、ポリイミド保護膜12は、非感光性のポリイミドで形成されても良いが、より好ましくは、感光性のポリイミドで形成されるのが良い。
【0042】
図2には、ポリイミド保護膜12を感光性のポリイミドで形成する場合の面発光半導体レーザ素子の作製工程例が示されている。また、図3には、ポリイミド保護膜12を非感光性のポリイミドで形成する場合の面発光半導体レーザ素子の作製工程例が示されている。
【0043】
先ず、ポリイミド保護膜12を非感光性ポリイミドで形成する図3の作製工程例について説明する。図3を参照すると、先ず、図3(a)のように、n−GaAs基板1上に、下部多層膜反射鏡2,スペーサ層3,活性層4,スペーサ層5,AlAs選択酸化層6,上部多層膜反射鏡8,p−GaAsコンタクト層9を順次に積層してレーザ構造積層膜を作製する。次いで、図3(b)のように、レーザ構造積層膜をエッチングして半導体柱を形成し、次いで、選択酸化によってAlAs選択酸化層6をAlxOy電流狭窄層6に変化させ、次いで、半導体柱の周囲にポリイミド12を塗布し、プレベーク工程を施す。
【0044】
しかる後、ポリイミド12に非感光性ポリイミドを用いる場合には、図3(c)のように、レジスト20を塗布し、フォトマスクを介してレジスト20を露光,現像し、上部電極のための開口部のレジスト20を除去し、次いで、ヒドラジンなどのエッチング剤に浸漬したりO2ガスによるドライエッチングによりポリイミド12の開口部を形成する。次いで、レジスト20を除去し、ポリイミド12を加熱硬化させた後、図3(d)に示すように、レジスト塗布,露光,現像,上部電極10の蒸着,リフトオフ,下部電極11の蒸着の工程を行なって、面発光半導体レーザ素子を作製する。
【0045】
これに対し、ポリイミド保護膜12を感光性ポリイミドで形成する図2の作製工程例では、図3(a),(b)の作製と全く同様の工程により、図2(a),(b)の作製を行なう。
【0046】
しかる後、ポリイミド12に感光性ポリイミドを用いる場合には、図2(c)のように、フォトマスク21を介しポリイミド12を露光,現像し、直接、上部電極のための開口部を形成する。次いで、加熱硬化工程を行なった後、図2(d)に示すように、レジスト塗布,露光,現像,上部電極10の蒸着,リフトオフ,下部電極11の蒸着の工程を行なって、面発光半導体レーザ素子を作製する。
【0047】
図2の作製工程例を図3の作製工程例と比べればわかるように、感光性のポリイミドを使用すれば、面発光半導体レーザ素子の作製プロセスを簡略化することができる。
【0048】
なお、このような感光性のポリイミドの例としては、感光基をエステル結合で導入したエステル結合型感光性ポリイミド、及び感光基を有するアミノ化合物とポリアミック酸のカルボキシル基とで塩結合で感光基を導入した塩結合型感光性ポリイミドなどが挙げられるが、これらに限定されるものではない。また、感光性ポリイミドには、ポジ型とネガ型があるが、いずれの型のものをも用いることができる。
【0049】
また、図1の面発光半導体レーザ素子において、レーザ構造部の表面とポリイミド保護膜12との間に、SiNまたはSiON膜からなるパッシベーション層30を設けることもできる。
【0050】
図4には、図1の面発光半導体レーザ素子において、レーザ構造部の表面とポリイミド保護膜12との間に、SiNまたはSiON膜からなるパッシベーション層30が設けられている面発光半導体レーザ素子が示されている。
【0051】
ここで、SiNまたはSiON膜からなるパッシベーション層30は、プラズマCVDなどで作製することができる。
【0052】
このように、図1の面発光半導体レーザ素子において、レーザ構造部の表面とポリイミド保護膜12との間に、SiNまたはSiON膜からなるパッシベーション層30を設けることで、レーザ構造部への水分遮蔽効果をより高めることができ、面発光半導体レーザ素子の信頼性をより高めることができる。
【0053】
さらに、図4の面発光半導体レーザ素子において、レーザ構造部の表面とパッシベーション層30との間に、SiO2膜からなる応力緩和層31を設けることもできる。
【0054】
図5には、図4の面発光半導体レーザ素子において、レーザ構造部の表面とパッシベーション層30との間に、SiO2膜からなる応力緩和層31が設けられている面発光半導体レーザ素子が示されている。
【0055】
ここで、SiO2膜からなる応力緩和層31は、プラズマCVD,TEOS−CVD,塗布法などで作製することができる。なお、応力緩和層31としては、PSG(リンシリケートガラス)のようにSiO2の他に他の成分を含む場合もある。
【0056】
SiNまたはSiON膜からなるパッシベーション層30は内部応力が大きいが、レーザ構造部の表面とパッシベーション層30との間に、柔らかいSiO2膜からなる応力緩和層31を設けることで、レーザ構造部への応力の影響を緩和することができる。
【0057】
第3の実施形態
図6は本発明に係る面発光半導体レーザ素子の基本的な構成例を示す図(断面図)である。図6を参照すると、この面発光半導体レーザ素子は、半導体基板51上に、下部半導体多層膜反射鏡52と、発振波長が1.1μmよりも長波長の活性層4を含む共振器構造70と、上部半導体多層膜反射鏡56とが順次に積層されて半導体積層構造として形成されており、該半導体積層構造の表面から少なくとも活性層54の下端まで(図6の例では、下部半導体多層膜反射鏡52の表面まで)がエッチング除去により柱状構造として形成されており、該柱状構造の周辺には厚さhが3μm以上のポリイミド膜57が設けられている。
【0058】
なお、図6において、符号53,55はスペーサ層、符号58は上部電極、符号59は下部電極、符号60は光取り出し窓である。
【0059】
一般に、面発光半導体レーザ素子において、電流注入領域以外の活性層部分は、寄生容量の増大をもたらす。そこで、面発光半導体レーザ素子では、高速変調するために、電流注入領域以外の活性層部分をエッチングで除去して柱状構造を形成し、柱状構造周辺を低誘電率材料で埋め込むことにより寄生容量を低減している。
【0060】
通常、エッチングは下部多層膜反射鏡に達する深さまで行われるため、エッチング深さは上部多層膜反射鏡及び共振器構造の厚さにほぼ相当する。従来の0.85μm帯面発光レーザにおいては、例えばAlGaAsとAlAsを20周期積層した多層膜反射鏡の全層厚は2.7μmであり、λ共振器構造の層厚は0.25μmとなっている。従って、エッチング深さは、約3μm程度となっていた。この3μm程度の深さを平坦に埋め込む低誘電率材料としては、一般にポリイミドが用いられている。
【0061】
一方、本発明においては、エッチング深さを深くして、3μm以上の層厚でポリイミド保護膜57を埋め込んでいる。ポリイミド保護膜57の層厚を3μm以上と厚くすることで、電流注入領域以外の電極58,59間の寄生容量を低減することができる。これにより、発振波長が1.1μmより長波長の面発光半導体レーザの変調周波数を増加させることができる。
【0062】
例えば、発振波長1.3μmの場合に、GaAsとAlAsを20周期積層した半導体多層膜反射鏡の層厚は4.1μmとなる。また、λ共振器の層厚は0.38μmとなる。よって、4.5μmの深さでエッチングして柱状構造を形成することにより、少なくとも活性層の下端までエッチングすることが可能となる。
【0063】
そして、ポリイミド保護膜57を4.5μmの厚さに形成することにより、ポリイミド保護膜57の寄生容量を従来の67%に低減できる。また、ポリイミド保護膜57の厚さhを6μmに設定した場合には、更に寄生容量を低減することができ、従来の半分の寄生容量に低減できる。
【0064】
次表(表1)には、ポリイミド保護膜57の厚さhが3μm,4.5μm,6μmであるときの寄生容量(100μm×100μm面積当たりの寄生容量)が示されている。
【0065】
【表1】
【0066】
表1から、ポリイミド保護膜57の厚さhが3μm,4.5μm,6μmと大きくなるに従い、寄生容量を小さくできることがわかる。
【0067】
なお、ポリイミド保護膜57の厚さhは、エッチング深さを平坦に埋める必要上、エッチング深さに近い厚さとなる。また、前述のように、ポリイミド保護膜57とエッチングした半導体層表面との間にパッシベーション層や応力緩和層からなる絶縁膜を設ける場合には、ポリイミド保護膜57の厚さhはエッチング深さから絶縁膜の厚さを引いた値となる。
【0068】
また、埋め込んだポリイミド保護膜57の厚さhが均一でない場合には、ポリイミド保護膜57の厚さhが薄くなっている部分では寄生容量が増加してしまう。従って、本発明において、最も薄い部分のポリイミド保護膜57の厚さhが3μm以上であるのが望ましい。
【0069】
図7(a),(b)は本発明の第3の実施形態の面発光半導体レーザ素子の構成例を示す図である。なお、図7(a)は平面図、図7(b)は断面図である。
【0070】
図7(a),(b)の例では、ポリイミド保護膜57とエッチングした半導体層表面との間に絶縁膜61が設けられている。また、上部電極58には配線電極62,ボンディングパッド63が接続されている。
【0071】
ところで、図7(a),(b)の例では、ボンディングパッド63は、絶縁膜61を介して半導体層64上に形成されている。図7(a),(b)のように、ボンディングパッド63を半導体層64上に形成した場合でも、ポリイミド保護膜57上に形成した配線電極62の部分の面積に相当する寄生容量は低減できる。しかしながら、寄生容量をより一層低減するには、ボンディングパッド63をポリイミド保護膜57上に形成するのが良い。
【0072】
図8(a),(b)は図7(a),(b)の面発光半導体レーザ素子の変形例を示す図である。図8(a),(b)を参照すると、この面発光半導体レーザ素子は、ポリイミド保護膜57上に、配線電極62及びボンディングパッド63が形成されている。
【0073】
すなわち、図8(a),(b)の例では、半導体層とオーミック接触を形成する上部電極58を除いて、上部電極58,配線電極62,ボンディングパッド63と下部電極59との間に低誘電率のポリイミド保護膜57を厚さ3μm以上埋め込んでいる。従って、電極58,62,63と電極59との間の寄生容量をより一層低減して、変調周波数を増加させることができる。
【0074】
図9には、配線電極62とボンディングパッド63をポリイミド保護膜57上に形成した場合(図8の例の場合)の周波数伝達関数の周波数依存性が符号(a)で示されている。また、図9には、比較のため、ボンディングパッド63を半導体層64上に形成した場合(図7の例の場合)の周波数伝達関数の周波数依存性が符号(b)で示されている。図9から、配線電極62とボンディングパッド63をポリイミド保護膜57上に形成した場合には、ボンディングパッド63を半導体層64上に形成した場合に比べて、周波数伝達関数は周波数が高くなっても差程低下せず、従って、変調周波数を増加させることができることがわかる。
【0075】
図10は図8の面発光半導体レーザ素子の変形例を示す図である。図10の面発光半導体レーザ素子では、例えば図8の面発光半導体レーザ素子において、ポリイミド保護膜57の表面が酸素プラズマ処理されており、かつ、酸素プラズマ処理されたポリイミド保護膜57の表面(酸素プラズマ処理された領域)72と接するボンディングパッド63の部分および/または配線電極62の部分が、TiまたはCrを含む材料で形成されている。
【0076】
具体的には、上部電極58は例えばAuZn/Auで形成され、配線電極62,ボンディングパッド63は例えばTi/AuまたはCr/Auで形成されている。
【0077】
このように、ポリイミド保護膜57の表面近傍を酸素プラズマ処理することによって、酸素原子がポリイミド保護膜57中に取り込まれる。そして、その上に、例えば1層目にTiまたはCrを含む配線電極62および/またはボンディングパッド63を形成すると、ポリイミド保護膜57と配線電極62および/またはボンディングパッド63との界面にTiOxまたはCrOyが形成されて、ポリイミド保護膜57と配線電極62および/またはボンディングパッド63との接合力が強固になる。従って、ポリイミド保護膜57上に形成したボンディングパッド63にワイヤボンディングを行う場合に、ボンディングパッド63や配線電極62の膜はがれを防止することができる。
【0078】
図11(a),(b)は図8(a),(b)の面発光半導体レーザ素子の他の変形例を示す図である。図11(a),(b)の面発光半導体レーザ素子では、例えば図8の面発光半導体レーザ素子において、ポリイミド保護膜57上に形成された配線電極62およびボンディングパッド63の一部が半導体積層構造64上に形成されている。
【0079】
ここで、上部電極58,配線電極62,ボンディングパッド63は、例えばAuZn/Auで形成されている。
【0080】
このように、図11(a),(b)の面発光半導体レーザ素子では、配線電極62及びボンディングパッド63の周辺部が半導体積層構造64上に形成されている。例えば、配線電極62及びボンディングパッド63の周辺部の5〜10μm幅が半導体積層構造64にはみ出している。
【0081】
このような構成では、上部電極58のアニール処理時に、配線電極62及びボンディングパッド63のAu系電極が半導体積層構造64の半導体層と合金化する。これにより、配線電極62及びボンディングパッド63の密着性が向上し、ワイヤボンディング時に、配線電極62及びボンディングパッド63の膜はがれを防止することができる。
【0082】
一方、配線電極62及びボンディングパッド63の大部分の面積は、厚さ3μm以上のポリイミド膜57上に形成されているため、寄生容量の増加を抑制することができる。
【0083】
なお、図11(a),(b)の例では、配線電極62及びボンディングパッド63が形成された半導体積層構造64の表面には、プロトンイオンが注入されて半絶縁性になっている。図11(b)において、符号65はプロトン注入領域である。このように、素子以外のメサ頂上表面近傍にプロトンイオンが注入されて半絶縁化されていることにより、素子以外のメサ頂上部に電流が注入されることを防止できる。
【0084】
また、図12(a),(b)は図11(a),(b)の面発光半導体レーザ素子の変形例を示す図である。図12(a),(b)の面発光半導体レーザ素子では、配線電極62及びボンディングパッド63の周辺部が、絶縁膜61をはさんで半導体積層構造64上に形成されている。例えば、配線電極62及びボンディングパッド63の周辺部の5〜10μm幅が半導体積層構造64にはみ出している。
【0085】
ここで、上部電極58は例えばAuZn/Auで形成され、配線電極62,ボンディングパッド63は例えばTi/AuまたはCr/Auで形成され、また、絶縁膜61は例えばSiO2層で形成されている。
【0086】
このような構成では、1層目にTiまたはCrを含む配線電極62,ボンディングパッド63をSiO2絶縁膜61上に形成すると、SiO2絶縁膜61と配線電極62,ボンディングパッド63との界面にTiOxまたはCrOyが形成されて、接合力が強固になる。従って、ボンディングパッド63にワイヤボンディングを行う場合に、ボンディングパッド63や配線電極62の膜はがれを防止することができる。
【0087】
一方、配線電極62およびボンディングパッド63の大部分の面積は、厚さ3μm以上のポリイミド保護膜57上に形成されているため、寄生容量の増加を抑制することができる。
【0088】
上述した第3の実施形態の各例の面発光半導体レーザ素子において、活性層54はNとAsを含むIII−V族混晶半導体で構成されており、具体的には、GaAsN,GaInNAs,GaAsNSb,GaInNAsSbなどで構成されている。
【0089】
このような材料は、GaAs基板51上に、波長1.1μmよりも長波長で発光する活性層54を形成できる。
【0090】
また、このような材料は、GaAsまたはAlGaAsとヘテロ接合を形成したときに、伝導帯バンド不連続を200meV以上と大きく取ることができるので、活性層54に電子を有効に閉じ込めることができる。よって、温度特性の良好なレーザを形成できる。
【0091】
また、半導体基板51としてGaAs単結晶基板を用いた場合、上部多層膜反射鏡56および下部多層膜反射鏡52を、GaAs基板51と格子整合し屈折率差を大きくとれるAlxGa(1-x)As/AlyGa(1-y)As(0≦y<x≦1)の半導体DBRで構成するのが好適である。これは、少ない層数で高い反射率の半導体DBRが得られ、これにより、半導体DBR部の熱抵抗を低くでき、放熱性に優れるためである。従って、1.1μmよりも長波長帯において、より温度特性の良好な面発光半導体レーザを提供できる。
【0092】
図13は本発明の第3の実施形態の面発光半導体レーザ素子の具体例を示す図である。図13の例では、面発光半導体レーザ素子は、n型GaAs基板51上に、n型GaAs/AlAs DBR52、GaAsスペーサ層53、GaInNAs/GaAs多重量子井戸活性層54、GaAsスペーサ層55、AlAs層81、p型GaAs/AlAs DBR56が順次に積層され、p型GaAs/AlAs DBR56からn型GaAs/AlAs DBR52の表面までがエッチング除去されて半導体柱状構造として形成され、AlAs層81が選択酸化されてAlxOy絶縁層(電流狭さく層)82が形成されている。
【0093】
そして、半導体柱状構造の周囲には、SiNパッシベーション層85を介してポリイミド保護膜57が設けられている。そして、p型GaAs/AlAs DBR56上およびポリイミド保護膜57上にはp側電極(58,62,63)が設けられ、また、n型GaAs基板51の裏面にはn側電極59が形成されている。
【0094】
この面発光半導体レーザ素子の活性層54は、発振波長が例えば1.3μmであり、ポリイミド保護膜57の厚さhは5μm、SiN膜85の膜厚は0.1μmである。
【0095】
この面発光半導体レーザ素子では、ポリイミド膜57の厚さhが5μmとなっていることにより、p側電極58,62,63とn側電極59との間の寄生容量を低減することができ、1.3μmの面発光半導体レーザの変調周波数を増加させることができる。
【0096】
第4の実施形態
上述した本発明(第1または第2または第3の実施形態)の長波長帯GaInNAs系面発光半導体レーザ素子を用いて光伝送システムを構成することができる。
【0097】
図14は、上述した本発明の面発光半導体レーザ素子を用いた並列伝送方式光伝送システムの一例を示す図である。図14の並列伝送方式光伝送システムでは、面発光半導体レーザ素子からの信号を複数のファイバを用い同時に伝送するように構成されている。
【0098】
また、図15は、上述した本発明の面発光半導体レーザ素子を用いた多波長伝送方式光伝送システムの一例を示す図である。図15の多波長伝送方式光伝送システムでは、発振波長がそれぞれ異なる複数の発光素子からの光信号が、それぞれ光ファイバを介して光合波器に導入され、この波長の異なる複数の光信号は合波されて、1本の光ファイバ中に導入され伝送され、伝送された光信号は伝送先の機器に接続される光分波器を通って元の波長の異なる複数の光信号に分離され、それぞれファイバを介して複数の受光素子に達するように構成されている。
【0099】
【実施例】
次に、本発明の実施例について説明する。
【0100】
実施例1
実施例1では、図1の面発光半導体レーザ素子の具体的な構成例および作製工程例を示す。なお、実施例1では、ポリイミドとして、熱線膨張係数が40×10-6℃-1の非感光性のものを用いている。
【0101】
実施例1では、先ず、MOCVD法により、n−GaAs(100)基板1上に、n−AlAs/n−GaAsの28ペアからなる下部多層膜反射鏡2、第1のGaAsスペーサ層3、3層のGaInNAsと2層のGaAsからなる多重量子井戸活性層4、第2のGaAsスペーサ層5、AlAs選択酸化層6、p−AlGaAs/p−GaAsの20ペアからなる上部多層膜反射鏡8、p−GaAsコンタクト層9を、レーザ構造積層膜として形成する。
【0102】
次に、このレーザ構造積層膜の30μm×30μmの領域のポスト形状のレーザ発振部の半導体柱が残るように、AlAs選択酸化層6に達する深さ以上までCl2ガスでECRエッチングする。このとき、半導体柱の高さは、4.5μmである。
【0103】
次に、半導体柱のAlAs選択酸化層6の端面から水蒸気を導入し、約25μm2の断面の電流経路を残して、絶縁性のAlxOy電流狭窄層6に変化させる。
【0104】
次に、非感光性ポリイミドワニス[宇部興産(株)製 U−ワニス−A、熱線膨張係数40×10-6℃-1]をスピンコートにより塗布し、エッチングした底面からの高さが5.5μmになるように、350℃で硬化させる。次に、温度を制御しながら試料温度を下げる。降温速度が10℃/分以下の場合、クラック及び界面でのはく離は起こらない。降温速度が10℃/分より大きい場合、ポリイミド中でクラックが発生したり、界面ではく離が起こる場合がある。
【0105】
次に、図3(c),(d)に示した工程により、レジストを塗布し、リソグラフィー、O2ガスを用いたRIEエッチングにより、半導体柱の上面の25μm×25μmの領域のポリイミドを除去する。次に、このポリイミドを除去した半導体柱の上面の光出射部を除いた領域とポリイミド表面にAu/Au−Zn/Crの上部電極10及び配線部及びボンディングパッドを蒸着とリフトオフ法で形成する。また、n−GaAs基板1の裏面にAu/Ni/Au−Ge下部電極11を蒸着する。このようにして、1.3μm帯面発光半導体レーザ素子を作製することができる。
【0106】
実施例1によれば、ポリイミドのクラック及びはく離が発生しにくく、また、素子の寿命が低下しにくく、また、発振波長がシフトしにくいポリイミド保護膜12をもつ、1.3μm帯面発光半導体レーザ素子を提供できる。
【0107】
また、実施例1によれば、ポリイミド保護膜の厚さが5.5μmなので、高速変調が可能な1.3μm帯面発光半導体レーザ素子を提供できる。
【0108】
実施例2
実施例2では、図5の面発光半導体レーザ素子の具体的な構成例および作製工程例を示す。なお、実施例2では、ポリイミドとして、熱線膨張係数が50×10-6℃-1の感光性のものを用いている。実施例2では、先ず、実施例1と同様の半導体柱をもつレーザ構造積層膜を形成する。
【0109】
次に、レーザ構造積層膜の表面にSiH4ガスとN2Oガスを用いたプラズマCVDにより、厚さ0.5μmのSiO2膜の応力緩和層31を形成する。次に、この応力緩和層31の上にSiH4ガスとNH3ガスを用いたプラズマCVDにより厚さ0.2μmのSiN膜のパッシベーション層30を形成する。
【0110】
次に、ネガ型感光性ポリイミド前駆体[旭化成(株)製G−7621熱線膨張係数50×10-6℃-1]をスピンコートにより塗布し、リソグラフィーにより、半導体柱の上面の25μm×25μmの領域のポリイミドを除去し、次いで、350℃で硬化させる。次に、温度を制御しながら試料温度を下げる。降温速度が10℃/分以下の場合、クラック及び界面でのはく離は起こらない。降温速度が10℃/分より大きい場合、ポリイミド中でクラックが発生したり、界面ではく離が起こる場合がある。なお、エッチングした底面からのポリイミド保護膜12の高さは5.5μmである。
【0111】
次に、ポリイミドをマスクとして、CF4+H2ガスを用いたRIEエッチング法により半導体柱の上面のSiN膜とSiO2膜を除去しp−GaAsコンタクト層9を露出させる。次に、この露出部で光出射部を除いた領域とポリイミド表面にAu/Au−Zn/Crの上部電極10及び配線部及びボンディングパッドを蒸着とリフトオフ法で形成する。n−GaAs基板1の裏面にAu/Ni/Au−Ge下部電極11を蒸着する。このようにして、1.3μm帯面発光半導体レーザ素子を作製することができる。
【0112】
実施例2によれば、ポリイミドのクラック及びはく離が発生しにくく、また、発振波長がシフトしにくいポリイミド保護膜12をもつ1.3μm帯面発光半導体レーザ素子を提供できる。また、感光性のポリイミドを用いるので、実施例1の場合よりも、ポリイミド保護膜12の作製プロセスがより簡便なものとなる。また、SiNパッシベーション層30を設けているので、実施例1の場合よりも、水分の遮蔽効果がより大きくなり、素子の寿命の低下をより一層防止できる。また、SiO2膜の応力緩和層31を設けているので、SiNパッシベーション層30の欠陥の発生が抑制される。このようにして、より信頼性の高い1.3μm帯面発光半導体レーザを提供できる。
【0113】
また、実施例2によれば、ポリイミド保護膜の厚さが5.5μmなので、高速変調が可能な1.3μm帯面発光半導体レーザ素子を提供できる。
【0114】
実施例3
実施例3では、図5の面発光半導体レーザ素子の他の具体的な構成例および作製工程例を示す。なお、実施例3では、ポリイミドとして、熱線膨張係数が16×10-6℃-1の感光性のものを用いている。実施例3では、先ず、実施例1と同様の半導体柱をもつレーザ構造積層膜を形成する。次に、レーザ構造積層膜の表面にSiH4ガスとN2Oガスを用いたプラズマCVDにより、厚さ0.5μmのSiO2膜の応力緩和層31を形成する。次に、この応力緩和層31の上にSiH4ガスとNH3ガスを用いたプラズマCVDにより厚さ0.2μmのSiN膜のパッシベーション層30を形成する。
【0115】
次に、ネガ型感光性ポリイミド前駆体[日立化成デュポンマイクロシステムズ(株)製PI−2731、熱線膨張係数16×10-6℃-1]をスピンコートにより塗布し、リソグラフィーにより、半導体柱の上面の25μm×25μmの領域のポリイミドを除去し、次いで、350℃で硬化させる。次に、温度を制御しながら試料温度を下げる。このとき、降温速度が50℃/分の場合でも、クラック及び界面でのはく離が起こらない。なお、エッチングした底面からのポリイミド保護膜の高さは5.5μmである。
【0116】
次に、ポリイミドをマスクとして、CF4+H2ガスを用いたRIEエッチング法により半導体柱の上面のSiN膜とSiO2膜を除去しp−GaAsコンタクト層9を露出させる。次に、この露出部で光出射部を除いた領域とポリイミド表面にAu/Au−Zn/Crの上部電極10及び配線部及びボンディングパッドを蒸着とリフトオフ法で形成する。また、n−GaAs基板1の裏面にAu/Ni/Au−Ge下部電極11を蒸着する。このようにして、1.3μm帯面発光半導体レーザ素子を作製することができる。
【0117】
実施例3によれば、ポリイミドに熱線膨張係数が16×10-6℃-1のものを用いているので、実施例1,実施例2の場合よりも、ポリイミドのクラック及びはく離が発生しにくく、また、実施例1,実施例2の場合よりも、発振波長がシフトしにくいポリイミド保護膜12をもつ1.3μm帯面発光半導体レーザ素子を提供できる。また、実施例3では、感光性のポリイミドを用いているので、実施例1の場合よりも、ポリイミド保護膜12の作製プロセスがより簡便なものとなる。また、SiNパッシベーション層30を設けているので、実施例1の場合よりも、水分の遮蔽効果がより大きくなり、素子の寿命の低下をより一層防止できる。また、SiO2膜の応力緩和層31を設けているので、SiNパッシベーション層30の欠陥の発生が抑制される。このようにして、より信頼性の高い1.3μm帯面発光半導体レーザを提供できる。
【0118】
また、実施例3によれば、ポリイミド保護膜の厚さが5.5μmなので、高速変調が可能な1.3μm帯面発光半導体レーザ素子を提供できる。
【0119】
実施例4
実施例4では、図16の面発光半導体レーザ素子の具体的な構成例および作製工程例を示す。なお、実施例4では、ポリイミドとして、熱線膨張係数が35〜55×10-6℃の感光性のものを用いている。また、図16は図13と同様の構成をしているが、図13のn型GaAs/AlAs DBR52のかわりに、図16ではn型AlGaAs/GaAs DBR92が用いられている。
【0120】
実施例4では、先ず、MOCVD法により、n−GaAs(100)基板51上に、n−AlGaAs/n−GaAsの28ペアからなる下部多層膜反射鏡92、第1のGaAsスペーサ層53、3層のGaInNAsと2層のGaAsからなる多重量子井戸活性層54、第2のGaAsスペーサ層55、AlAs選択酸化層81、p−AlGaAs/p−GaAsの20ペアからなる上部多層膜反射鏡56(最上層はp−GaAsコンタクト層として機能)を、レーザ構造積層膜として形成する。
【0121】
次に、このレーザ構造積層膜の30μm×30μmの領域のポスト形状のレーザ発振部の半導体柱が残るように、AlAs選択酸化層81に達する深さ以上までCl2ガスでECRエッチングする。このとき、半導体柱の高さは、7μmである。
【0122】
次に、半導体柱のAlAs選択酸化層81の端面から水蒸気を導入し、約25μm2の断面の電流経路を残して、絶縁性のAlxOy電流狭窄層82に変化させる。
【0123】
次に、非感光性ポリイミドワニス[宇部興産(株)製U−ワニス−A]をスピンコートにより塗布する。このとき硬化後の膜厚が3.0μm、5.0μm、8.0μmになるように、スピンコート回転数を調整する。
【0124】
次に、350℃で硬化させる。これらの試料の場合、硬化時間が長くなると熱線膨張係数が小さくなる。続いて、10℃/分の速度で試料温度を室温まで下げる。
【0125】
表2に示すように、熱線膨張係数が50×10-6℃以下の試料では、いずれの膜厚の試料でもクラック及び界面でのはく離は起こらない。熱線膨張係数が51×10-6℃以上の試料では、クラックか界面でのはく離が発生する場合がある。
【0126】
【表2】
【0127】
次に、クラックやはく離がない試料を用い、レジストを塗布し、リソグラフィー、O2ガスを用いたRIEエッチングにより、半導体柱の上面の25μm×25μmの領域のポリイミドを除去する。次に、このポリイミドを除去した半導体柱の上面の光出射部を除いた領域とポリイミド膜57の表面に、Au/Au−Zn/Crの上部電極58及び配線部62及びボンディングパッド63を蒸着とリフトオフ法で形成する。また、n−GaAs基板51の裏面にAu/Ni/Au−Ge下部電極59を蒸着する。このようにして、1.3μm帯面発光半導体レーザ素子を作製することができる。
【0128】
実施例4によれば、熱線膨張係数が50×10-6℃以下のポリイミド保護膜のであれば、クラック及びはく離を発生させずに、素子の寿命が低下しにくく、また、発振波長がシフトしにくいポリイミド保護膜57をもつ1.3μm帯面発光半導体レーザ素子を提供できる。
【0129】
また、実施例4によれば、ポリイミド保護膜57の厚さが3μm以上なので、高速変調が可能な1.3μm帯面発光半導体レーザ素子を提供できる。
【0130】
実施例5
実施例5では、図17の面発光半導体レーザ素子の具体的な構成例および作製工程例を示す。なお、実施例5では、ポリイミドとして、熱線膨張係数が40〜60×10-6℃の感光性のものを用いている。
【0131】
実施例5では、先ず、実施例4と同様の半導体柱をもつレーザ構造積層膜を形成する。次に、レーザ構造積層膜の表面にSiH4ガスとN2Oガスを用いたプラズマCVDにより、厚さ0.5μmのSiO2膜の応力緩和層を形成する。次に、この応力緩和層の上にSiH4ガスとNH3ガスを用いたプラズマCVDにより厚さ0.2μmのSiN膜のパッシベーション層を形成する。図17において、符号85がSiO2膜の応力緩和層/SiN膜のパッシベーション層である。
【0132】
次に、ネガ型感光性ポリイミド前駆体[旭化成(株)製PIMEL I―8124C]をスピンコートにより塗布する。このとき硬化後の膜厚が3.0μm、5.0μm、8.0μmになるように、スピンコート回転数を調整する。
【0133】
次に、フォトリソグラフィーにより半導体柱の上面の25μm×25μmの領域のポリイミドを除去したのち、350℃で硬化させる。これらの試料の場合も、硬化時間により熱線膨張係数が変化し、40〜60×10-6℃の範囲で変化する。
【0134】
続いて、10℃/分の速度で試料温度を室温まで下げる。
【0135】
表3に示すように、熱線膨張係数が50×10-6℃以下の試料では、いずれの膜厚の試料でもクラック及び界面でのはく離は起こらない。熱線膨張係数が51×10-6℃以上の試料では、クラックか界面でのはく離が発生する場合がある。
【0136】
【表3】
【0137】
次に、クラックやはく離がない試料を用い、ポリイミドをマスクとして、CF4+H2ガスを用いたRIEエッチング法により半導体柱の上面のSiN膜/SiO2膜(85)を除去し、DBR56(その最上層はp−GaAsコンタクト層)を露出させる。次に、この露出部で光出射部を除いた領域とポリイミド表面にAu/Au−Zn/Crの上部電極58及び配線部62及びボンディングパッド63を蒸着とリフトオフ法で形成する。また、n−GaAs基板51の裏面にAu/Ni/Au−Ge下部電極59を蒸着する。このようにして、1.3μm帯面発光半導体レーザ素子を作製することができる。
【0138】
実施例5によれば、熱線膨張係数が50×10-6℃以下のポリイミド保護膜57であれば、クラック及びはく離を発生させずに、素子の寿命が低下しにくく、また、発振波長がシフトしにくいポリイミド保護膜57をもつ1.3μm帯面発光半導体レーザ素子を提供できる。
【0139】
また、実施例5では、感光性のポリイミドを用いるので、実施例4の場合よりも、ポリイミド保護膜57の作製プロセスがより簡便なものとなる。また、実施例5では、SiNパッシベーション層(85)を設けているので、実施例1,実施例4の場合よりも水分の遮蔽効果がより大きくなり、素子の寿命の低下をより一層防止できる。また、実施例5では、SiO2膜の応力緩和層(85)を設けているので、SiNパッシベーション層(85)の欠陥の発生が抑制される。このようにして、より信頼性の高い1.3μm帯面発光半導体レーザを提供できる。
【0140】
また、実施例5によれば、ポリイミド保護膜57の厚さが3μm以上なのでなので、高速変調が可能な1.3μm帯面発光半導体レーザ素子を提供できる。
【0141】
実施例6
実施例6では、図17の面発光半導体レーザ素子の他の具体的な構成例および作製工程例を示す。なお、実施例6では、ポリイミドとして、熱線膨張係数が14〜30×10-6℃の感光性のものを用いている。
【0142】
実施例6では、先ず、実施例4と同様の半導体柱をもつレーザ構造積層膜を形成する。次に、レーザ構造積層膜の表面にSiH4ガスとN2Oガスを用いたプラズマCVDにより、厚さ0.5μmのSiO2膜の応力緩和層を形成する。次に、この応力緩和層の上にSiH4ガスとNH3ガスを用いたプラズマCVDにより厚さ0.2μmのSiN膜のパッシベーション層を形成する。図17において、符号85がSiO2膜の応力緩和層/SiN膜のパッシベーション層である。
【0143】
次に、ネガ型感光性ポリイミド前駆体[日立化成デュポンマイクロシステムズ(株)製 PI−2731]をスピンコートにより塗布する。このとき硬化後の膜厚が3.0μm、5.0μm、8.0μmになるように、スピンコート回転数を調整する。
【0144】
次に、フォトリソグラフィーにより半導体柱の上面の25μm×25μmの領域のポリイミドを除去した後、350℃で硬化させる。これらの試料の場合も、硬化時間により熱線膨張係数が変化し、14〜30×10-6℃の範囲で変化する。
【0145】
続いて、試料温度を室温まで下げる。10℃/分の降温速度の場合は、表4に示すように、いずれの試料でもクラック及び界面でのはく離は起こらない。
20℃/分の降温速度の場合は、熱線膨張係数が14〜20×10-6℃以下の試料では、いずれの膜厚の試料でもクラック及び界面でのはく離は起こらない。熱線膨張係数が21〜30×10-6℃以上の試料では、クラックが発生するか、界面ではく離が発生する場合がある。
【0146】
【表4】
【0147】
次に、ポリイミドをマスクとして、CF4+H2ガスを用いたRIEエッチング法により半導体柱の上面のSiN膜/SiO2膜(85)を除去し、DBR56(その最上層はp−GaAsコンタクト層)を露出させる。次に、この露出部で光出射部を除いた領域とポリイミド表面にAu/Au−Zn/Crの上部電極58及び配線部62及びボンディングパッド63を蒸着とリフトオフ法で形成する。また、n−GaAs基板51の裏面にAu/Ni/Au−Ge下部電極59を蒸着する。このようにして、1.3μm帯面発光半導体レーザ素子を作製することができる。
【0148】
実施例6によれば、熱線膨張係数が50×10-6℃以下のポリイミド保護膜57であるので、クラック及びはく離を発生させずに、素子の寿命が低下しにくく、また、発振波長がシフトしにくいポリイミド保護膜57をもつ1.3μm帯面発光半導体レーザ素子を提供できる。
【0149】
さらに、熱線膨張係数が20×10-6℃以下のポリイミド保護膜57であれば、急速に降温してもクラック及びはく離を発生させずに、より素子の寿命が低下しにくく、また、より発振波長がシフトしにくいポリイミド保護膜57をもつ1.3μm帯面発光半導体レーザ素子を提供できる。
【0150】
また、実施例6では、感光性のポリイミドを用いているので、実施例1,実施例4の場合よりも、ポリイミド保護膜57の作製プロセスがより簡便なものとなる。また、実施例6では、SiNパッシベーション層(85)を設けているので、実施例1,実施例4の場合よりも、水分の遮蔽効果がより大きくなり、素子の寿命の低下をより一層防止できる。また、実施例6では、SiO2膜の応力緩和層(85)を設けているので、SiNパッシベーション層(85)の欠陥の発生が抑制される。このようにして、より信頼性の高い1.3μm帯面発光半導体レーザを提供できる。
【0151】
また、実施例6によれば、ポリイミド保護膜57の厚さが3μm以上なので、高速変調が可能な1.3μm帯面発光半導体レーザ素子を提供できる。
【0152】
【発明の効果】
以上に説明したように、請求項1に記載の発明によれば、半導体基板上に、NとAsを含むIII−V族混晶半導体から成る活性層を含む共振器と、共振器の上下に設けられた多層膜反射鏡のうちの少なくとも上部の多層膜反射鏡とが、柱状のレーザ構造部として形成されている1.1μm以上の波長を有する面発光半導体レーザ素子において、前記レーザ構造部の周囲に熱線膨張係数が50×10― 6℃― 1以下のポリイミド保護膜が設けられるようになっており、レーザ構造部とポリイミド保護膜との間の熱膨張係数の差が小さいので、半導体柱の高い長波長帯面発光半導体レーザにおいても発生する熱応力が小さくなり、ポリイミドのクラック及びはく離が発生しにくく、また、素子の寿命が低下しにくく、また、発振波長をシフトしにくくすることができる。
【0153】
また、請求項2に記載の発明によれば、半導体基板上に、NとAsを含むIII−V族混晶半導体から成る活性層を含む共振器と、共振器の上下に設けられた多層膜反射鏡のうちの少なくとも上部の多層膜反射鏡とが、柱状のレーザ構造部として形成されている1.1μm以上の波長を有する面発光半導体レーザ素子において、前記レーザ構造部の周囲に熱線膨張係数が20×10―6℃―1以下のポリイミド保護膜が設けられるようになっており、レーザ構造部とポリイミド保護膜との間の熱膨張係数の差がより一層小さいので、半導体柱の高い長波長帯GaInNAs系面発光半導体レーザにおいても発生する熱応力がより小さくなり、硬化工程後、より大きい速度で降温できて、プロセス時間を短縮でき、また、ポリイミドのクラック及びはく離がより発生しにくくなり、素子の寿命の低下をより一層防止でき、発振波長のシフトをより一層しにくくすることができる。
【0154】
特に、請求項3記載の発明によれば、請求項1または請求項2記載の面発光半導体レーザ素子において、前記ポリイミド保護膜は感光性のポリイミドであるので、面発光半導体レーザ素子の作製プロセスを簡略化することができる。
【0155】
また、請求項4記載の発明によれば、請求項1乃至請求項3のいずれか一項に記載の面発光半導体レーザ素子において、前記レーザ構造部の表面と前記ポリイミド保護膜との間に、SiNまたはSiON膜からなるパッシベーション層が設けられているので、レーザ構造部への水分遮蔽効果をより高めることができ、面発光半導体レーザ素子の信頼性をより高めることができる。
【0156】
また、請求項5記載の発明によれば、請求項4記載の面発光半導体レーザ素子において、前記レーザ構造部の表面と前記パッシベーション層との間に、SiO2膜からなる応力緩和層が設けられているので、SiNまたはSiON膜からなるパッシベーション層によるレーザ構造部への応力の影響を緩和することができる。
【0157】
また、請求項6乃至請求項9記載の発明によれば、請求項1乃至請求項5のいずれか一項に記載の面発光半導体レーザ素子において、前記ポリイミド保護膜は、厚さが3μm以上であるので、さらに、寄生容量が低減され高速変調が可能になる。
【0158】
特に、請求項7記載の発明によれば、請求項6記載の面発光半導体レーザ素子において、前記ポリイミド保護膜上には、上部電極に接続された配線電極およびボンディングパッドが形成されているので、寄生容量がより一層低減され、変調周波数を増加させることができる。
【0159】
また、請求項8記載の発明によれば、請求項7記載の面発光半導体レーザ素子において、前記ポリイミド保護膜の表面が酸素プラズマ処理されており、かつ、酸素プラズマ処理されたポリイミド膜の表面と接するボンディングパッドの部分および/または配線電極の部分が、TiまたはCrを含む材料で形成されているので、ポリイミド膜上に形成したボンディングパッドにワイヤボンディングを行う場合に、ボンディングパッドや配線電極の膜はがれを防止することができる。
【0161】
また、請求項9記載の発明によれば、請求項1乃至請求項8のいずれか一項に記載の面発光半導体レーザ素子において、活性層がNとAsを含むIII−V族混晶半導体で構成されている層を含んでいるので(活性層にGaInNAs系材料からなる層を含むので)、発振波長が光ファイバーと整合性のよい1.1μmよりも長波長帯のレーザを形成できる。さらに、活性層に電子を有効に閉じ込めることができるので、環境温度が変化してもレーザ特性が変化しにくい、つまり温度特性の良好な、ポリイミドのクラック及びはく離が発生しにくく、素子の寿命が低下しにくく、発振波長がシフトしにくい、高速変調が可能な長波長帯レーザを形成できる。
【0162】
また、請求項10記載の発明によれば、請求項9記載の面発光半導体レーザ素子において、半導体基板がGaAsで構成されており、上部半導体多層膜反射鏡および下部半導体多層膜反射鏡がAlGaAs系材料で構成されているので、少ない層数で高い反射率の半導体DBRが得られる。これにより、半導体DBR部の熱抵抗を低くでき放熱性に優れより温度特性のよい、ポリイミドのクラック及びはく離が発生しにくく、素子の寿命が低下しにくく、発振波長がシフトしにくい、高速変調が可能な長波長帯面発光半導体レーザ素子を形成できる。
【0163】
また、請求項11記載の発明によれば、請求項9または請求項10に記載の面発光半導体レーザ素子が発光素子として用いられる光伝送システムであるので、信頼性が高く、安定に動作し、高速伝送でき、光源部に冷却装置を必要としない簡便な構成をもつ光伝送システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る面発光半導体レーザ素子の構成例を示す図である。
【図2】本発明の面発光半導体レーザ素子の第1の作製工程例を示す図である。
【図3】本発明の面発光半導体レーザ素子の第2の作製工程例を示す図である。
【図4】図1の面発光半導体レーザ素子の変形例を示す図である。
【図5】図4の面発光半導体レーザ素子の変形例を示す図である。
【図6】本発明に係る面発光半導体レーザ素子の構成例を示す図である。
【図7】本発明の第3の実施形態の面発光半導体レーザ素子の構成例を示す図である。
【図8】図7の面発光半導体レーザ素子の変形例を示す図である。
【図9】配線電極とボンディングパッドをポリイミド保護膜上に形成した場合の周波数伝達関数の周波数依存性を示す図である。
【図10】図8の面発光半導体レーザ素子の変形例を示す図である。
【図11】図8の面発光半導体レーザ素子の他の変形例を示す図である。
【図12】図11の面発光半導体レーザ素子の変形例を示す図である。
【図13】本発明の第3の実施形態の面発光半導体レーザ素子の具体例を示す図である。
【図14】本発明の面発光半導体レーザ素子を用いた並列伝送方式光伝送システムの一例を示す図である。
【図15】本発明の面発光半導体レーザ素子を用いた多波長伝送方式光伝送システムの一例を示す図である。
【図16】面発光半導体レーザ素子の具体的な構成例を示す図である。
【図17】面発光半導体レーザ素子の具体的な構成例を示す図である。
【符号の説明】
1 半導体基板
2 下部多層膜反射鏡
3 スペーサ層
4 活性層
5 スペーサ層
6 電流狭窄層
8 上部多層膜反射鏡
9 コンタクト層
10 上部電極
11 下部電極
12 ポリイミド保護膜
30 パッシベーション層
31 応力緩和層
51 GaAs基板
52 n型GaAs/AlAs DBR
53 GaAsスペーサ層
54 GaInNAs/GaAs多重量子井戸活性層
55 GaAsスペーサ層
56 p型GaAs/AlAs DBR
57 ポリイミド保護膜
58 上部電極
59 下部電極
60 光取り出し窓
61 絶縁膜
62 配線電極
63 ボンディングパッド
64 半導体積層構造
72 酸素プラズマ処理された領域
81 AlAs層
82 AlxOy電流狭窄層
85 SiO2膜の応力緩和層/SiN膜のパッシベーション層
92 n型AlGaAs/GaAs DBR
Claims (11)
- 半導体基板上に、NとAsを含むIII−V族混晶半導体から成る活性層を含む共振器と、共振器の上下に設けられた多層膜反射鏡のうちの少なくとも上部の多層膜反射鏡とが、柱状のレーザ構造部として形成されている1.1μm以上の波長を有する面発光半導体レーザ素子において、前記レーザ構造部の周囲に熱線膨張係数が50×10― 6℃― 1以下のポリイミド保護膜が設けられていることを特徴とする面発光半導体レーザ素子。
- 半導体基板上に、NとAsを含むIII−V族混晶半導体から成る活性層を含む共振器と、共振器の上下に設けられた多層膜反射鏡のうちの少なくとも上部の多層膜反射鏡とが、柱状のレーザ構造部として形成されている1.1μm以上の波長を有する面発光半導体レーザ素子において、前記レーザ構造部の周囲に熱線膨張係数が20×10―6℃―1以下のポリイミド保護膜が設けられていることを特徴とする面発光半導体レーザ素子。
- 請求項1または請求項2記載の面発光半導体レーザ素子において、該ポリイミド保護膜は感光性のポリイミドで形成されていることを特徴とする面発光半導体レーザ素子。
- 請求項1乃至請求項3のいずれか一項に記載の面発光半導体レーザ素子において、該レーザ構造部の表面と該ポリイミド保護膜との間に、SiNまたはSiON膜からなるパッシベーション層が設けられていることを特徴とする面発光半導体レーザ素子。
- 請求項4記載の面発光半導体レーザ素子において、前記レーザ構造部の表面と前記パッシベーション層との間に、SiO2膜からなる応力緩和層が設けられていることを特徴とする面発光半導体レーザ素子。
- 請求項1乃至請求項5のいずれか一項に記載の面発光半導体レーザ素子において、前記ポリイミド保護膜は、厚さが3μm以上であることを特徴とする面発光半導体レーザ素子。
- 請求項6記載の面発光半導体レーザ素子において、前記ポリイミド保護膜上には、上部電極に接続された配線電極およびボンディングパッドが形成されていることを特徴とする面発光半導体レーザ素子。
- 請求項7記載の面発光半導体レーザ素子において、前記ポリイミド保護膜の表面が酸素プラズマ処理されており、かつ、酸素プラズマ処理されたポリイミド保護膜の表面と接するボンディングパッドの部分および/または配線電極の部分が、TiまたはCrを含む材料で形成されていることを特徴とする面発光半導体レーザ素子。
- 請求項1乃至請求項8のいずれか一項に記載の面発光半導体レーザ素子において、該面発光半導体レーザ素子は、活性層がNとAsを含むIII−V族混晶半導体で構成されている層を含んでいることを特徴とする面発光半導体レーザ素子。
- 請求項9記載の面発光半導体レーザ素子において、半導体基板がGaAsで構成されており、上部半導体多層膜反射鏡および下部半導体多層膜反射鏡がAlGaAs系材料で構成されていることを特徴とする面発光半導体レーザ素子。
- 請求項9または請求項10に記載の面発光半導体レーザ素子が発光素子として用いられることを特徴とする光伝送システム。
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