JP4278083B2 - 新規なポリ酢酸ビニル鹸化物系感光性樹脂、感光性樹脂組成物及びそれを用いた含水ゲルの形成方法並びに化合物 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、光硬化性塗膜または光硬化性含水ゲルの形成、もしくは水性現像液を用いたパターン形成に用いる、新規なポリ酢酸ビニル鹸化物系感光性樹脂および感光性樹脂組成物並びに新規化合物に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、廃水処理や診断薬といった分野において、酵素や菌体を非加熱で固定する優れた方法として、光硬化性樹脂を用いた方法が認知されつつあり、PVA−SbQが一部に適用されている(例えば、特許文献1および2参照。)。
【0003】
このPVA−SbQ樹脂は、安定性、安全性に優れており、様々な用途に適用されているが、化合物の構造上カチオン性の部位を持っているため、酵素、菌体の固定において混合溶解可能な化合物の範囲が限定される欠点がある。
【0004】
さらに、PVA−SbQ樹脂は、乾燥不充分で水を多く含んだ状態では、感度が極端に低下する欠点を持っているため、乾燥工程を入れられない化合物を含水状態のまま固定したい場合には十分な硬化性が得られず、適用に問題があった。
【0005】
ここで、保存安定性に優れ、様々な化合物に対しての親和性、混合溶解性を持つ材料として、本発明者らが開発した特定の構造を有する光重合型のポリ酢酸ビニル鹸化物系感光性樹脂がある(特許文献3参照。)。
【0006】
【特許文献1】
特公平8−23545号公報(第2頁等)
【特許文献2】
特開平2−240555号公報(第2頁)
【特許文献3】
特開2000−181062号公報(第3頁等)
【特許文献4】
国際公開WO97/33202号パンフレット(第6,7頁)
【特許文献5】
特開2001−58972号公報 (段落[0007]〜[0008]等)
【特許文献6】
特開平11−327139号公報 (段落[0006]〜[0010]等)
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、特許文献3の感光性樹脂及び組成物は、水溶液を塗布、乾燥後、パターン露光及び現像を行なう、いわゆるフォトレジストとしては、非常に優れたものであるが、高含水のまま光硬化によりゲルを形成する感光性ゲル化剤としては、感度が十分とは言えず、より高感度な感光性樹脂および感光性樹脂組成物が望まれていた。
【0008】
なお、この特許文献3に類似するものとしてポリ酢酸ビニル鹸化物にビニル性不飽和結合フラグメントをペンダントさせた、いわゆる重合型感光性樹脂で、フォトレジストとしてパターン形成を目的とするものが幾つか公開されている(例えば、特許文献4参照)が、ゲルを形成する感光性ゲル化剤としては、感度が十分とは言えない点では同様である。
【0009】
また、これらの文献においてポリ酢酸ビニル鹸化物にペンダントさせた分子鎖と類似する分子構造を一部に含む(メタ)アクリル酸誘導体も報告されている(例えば、特許文献5、6参照)。しかしながら、これらの文献においても水溶性または水を含有する組成物に利用できるという記述は無く、記載例においても水溶性は認められないものである。
【0010】
本発明は、このような事情に鑑み、保存安定性に優れ、様々な化合物に対しての親和性、混合溶解性を持ち、かつ高感度で含水状態においても固化可能な材料であり、硬化物の感度が高く、可撓性に優れ、高含水率においても均一固化が可能な感光性樹脂および感光性樹脂組成物並びに新規化合物を提供することを課題とする。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、下記一般式(1)に示される構成単位を有するポリ酢酸ビニル鹸化物系感光性樹脂が、硬化物の感度が高く、可撓性に優れ、高含水率においても均一固化が可能であることを知見し、本発明を完成するに至った。
【0012】
本発明の第1の態様は、下記一般式(1)に示される構成単位を有するポリ酢酸ビニル鹸化物系感光性樹脂であって、鹸化度は60%以上で、一般式(1)に示される構成単位の含有率は0.01〜10mol%であることを特徴とするポリ酢酸ビニル鹸化物系感光性樹脂にある。
【0013】
【化5】
本発明の第2の態様は、第1の態様において、下記一般式(2)に示される化合物をポリ酢酸ビニル鹸化物にアセタール化させて得られるポリ酢酸ビニル鹸化物系感光性樹脂であって、ポリ酢酸ビニル鹸化物に対する一般式(2)の化合物の導入率が、酢酸ビニル単量体ユニットに対し0.02〜20mol%であることを特徴とするポリ酢酸ビニル鹸化物系感光性樹脂にある。
【化6】
【0014】
本発明の第3の態様は、第1または2の態様のポリ酢酸ビニル鹸化物系感光性樹脂と光重合開始剤と水を含有することを特徴とする感光性樹脂組成物にある。
【0017】
本発明の第4の態様は、第3の態様の感光性樹脂組成物を用い、光重合反応することにより含水ゲルを得ることを特徴とする含水ゲルの形成方法にある。
【0018】
本発明の第5の態様は、下記一般式(2)に示されることを特徴とする化合物にある。
【0019】
【化8】
【0022】
本発明の一般式(1)で示される構成単位を有する感光性樹脂は、一般式(2)に示される化合物をポリ酢酸ビニル鹸化物にアセタール化させることで得ることが出来る。
【0023】
なお、一般式(1)で示される構成単位を有する感光性樹脂は、アルデヒド基を持つカルボン酸化合物またはそれらのアセタール化物をポリ酢酸ビニル鹸化物にアセタール化し、そのカルボン酸基にヒドロキシアルキルアクリレートグリシジルエーテルを付加させることでも合成可能である。
【0024】
本発明に用いることができるポリ酢酸ビニル鹸化物は、特に制限はないが、重合度は200〜5000の範囲が好ましい。重合度が200より小さい場合、十分な塗膜強度が得られず、5000より大きい場合、溶液粘度が高くなり過ぎ取扱いが難しくなる。
【0025】
鹸化度は60%以上、より好ましくは70%以上のものが好適である。鹸化度が60%未満では十分な水溶性が得られない。
【0026】
上記ポリ酢酸ビニル鹸化物には、現像性調節、レジスト物性向上の目的で他のビニルモノマーを共重合したもの、親水性基変性、親油性基変性、末端変性、カチオン変性、アニオン変性等、変性ポリ酢酸ビニル鹸化物も適用可能である。
【0027】
一般式(2)の化合物は、ヒドロキシアルキルアクリレートグリシジルエーテルとアルデヒド基を持つカルボン酸化合物の付加反応によって得ることが出来る。その反応は、特開昭60−222442号公報等に記載された公知の反応と同様である。
【0029】
このヒドロキシアルキルアクリレートグリシジルエーテルを用いる方法の反応は、通常、反応基質に熱、または触媒もしくはその併用により進行させることが出来る。必要に応じて反応系に溶媒を加えてもよく、副反応抑制の目的で重合禁止剤を加えても良い。
【0030】
反応に使用する溶媒は特に制限はないが、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、ノナン、デカン等の脂肪族炭化水素、ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン等の芳香族炭化水素、ジエチルエーテル、ジプロピルエーテル、ジブチルエーテル、ジオキサン、テトラヒドロフラン等のエーテル類、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸アミル等のエステル類、塩化メチレン、クロロホルム、四塩化炭素、トリクレン、テトラクレン等のハロゲン系溶剤、メタノール、エタノール、IPA、n−ブタノール、sec−ブタノール、イソブタノール、tert−ブタノール等のアルコール類、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール等のエチレングリコール類、エチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル等のグリコールエーテル類、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート等のグリコールエーテルアセテート類、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール等のプロピレングリコール類、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールジメチルエーテル、ジプロピレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールジエチルエーテル、ジプロピレングリコールジエチルエーテル等のプロピレングリコールエーテル類、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート等のプロピレングリコールエーテルアセテート類、ジメチルスルホキシド、スルホラン等の硫黄系溶剤、N−メチルピロリドン、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド等のアミド類、およびそれらの混合物が挙げられる。
【0031】
反応に使用する触媒にも制限はないが、一例として、酸触媒としては、硫酸、リン酸、過塩素酸等の無機酸、BF3等のルイス酸、メタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、ドデシルベンゼンスルホン酸等の有機スルホン酸が挙げられる。塩基性触媒としては、トリエチルアミン、テトラメチルエチレンジアミン、トリブチルアミン、トリ−n−オクチルアミン、ジメチルベンジルアミン、ピリジン、N,N−ジメチル−4−アミノピリジン等の3級アミン、テトラメチルアンモニウムクロライド、テトラメチルアンモニウムブロミド、テトラエチルアンモニウムブロミド、テトラブチルアンモニウムブロミド等の4級アンモニウム塩、トリフェニルホスフィン、トリブチルホスフィン等のリン化合物が挙げられる。なお、ピリジン、トリエチルアミン等の液状触媒を溶剤として使用することも出来る。
【0032】
適用可能な重合禁止剤にも特に制限はないが、一例として、フェノール、アルキルフェノール、カテコール、アルキルカテコール、ハイドロキノン、ハイドロキノンモノメチルエーテル、N−アルキル−N−ニトロソアニリン、N−ニトロソ−フェニルヒドロキシルアミン塩、フェノチアジン、2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−1−オキシル、2,2,6,6−テトラメチル−4−ヒドロキシピペリジン−1−オキシル、p−メトキシフェノール等が挙げられる。なかでも、ポリ酢酸ビニル鹸化物にアセタール化させる際、水溶性が求められるため、2,2,6,6−テトラメチル−4−ヒドロキシピペリジン−1−オキシルが最も好ましい。
【0033】
反応後、溶媒、触媒および重合禁止剤は、必要に応じて除去しても良いが、除去せずにそのままポリ酢酸ビニル鹸化物にアセタール化させる反応に用いてもかまわない。
【0034】
なお、これらの合成法において、下記一般式(4)に相当する化合物が、副反応生成物として少量生成する場合がある。これらは、分離精製してもよいが、一般的に実用上の問題を生じることはなく、そのまま使用してかまわない。
【0035】
【化7】
【0036】
(式中の記号は上記式(2)と同様である。)
【0039】
また、一般式(2)に示されるアルデヒドは、これ自体新規であり、他の用途への利用も考えられる。
【0040】
一般式(2)で示される化合物をポリ酢酸ビニル鹸化物にアセタール化して一般式(1)で示される構成単位を有する感光性樹脂を得る反応は、通常、溶液中で熱、または酸触媒もしくはその併用で行われる。なお、その際に副反応抑制の目的で重合禁止剤を加えても良い。溶液を構成する溶媒は特に制限はないが、ポリ酢酸ビニル鹸化物が溶解する組成が好ましい。一例として、水、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール等のエチレングリコール類、エチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル等のグリコールエーテル類、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート等のグリコールエーテルアセテート類、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール等のプロピレングリコール類、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールジメチルエーテル、ジプロピレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールジエチルエーテル、ジプロピレングリコールジエチルエーテル等のプロピレングリコールエーテル類、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート等のプロピレングリコールエーテルアセテート類、ジメチルスルホキシド、N−メチルピロリドン、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、およびそれらの混合物、2−プロパノール等が挙げられる。なかでも水が安全で好ましいが、作業上、高沸点溶剤が必要な場合、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、N−メチルピロリドンを水と混合、もしくは単独で使用することが好ましい。
【0041】
反応に使用する酸触媒に制限はないが、一例として、硫酸、リン酸、硝酸、過塩素酸等の無機酸、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、シュウ酸、マロン酸、こはく酸、マレイン酸、フマル酸、フタル酸等の有機カルボン酸、メタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、ドデシルベンゼンスルホン酸等の有機スルホン酸が挙げられる。
【0042】
反応後、これらの酸は、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、アンモニア、有機アミン等のアルカリ化合物もしくはその溶液で中和するか、あるいは塩基性イオン交換樹脂を用いて取り除くことが好ましい。
【0043】
反応温度はペンダントする化合物の種類、および酸触媒の種類、濃度に大きく依存するが、通常、室温から100℃の範囲が好適に用いられる。
【0044】
一般式(2)で示される化合物をポリ酢酸ビニル鹸化物にアセタール化する反応に際して、例えばホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド、ブチルアルデヒド、ベンズアルデヒド、ヒドロキシベンズアルデヒド、o−ベンズアルデヒドスルホン酸又はその塩、ベンズアルデヒド−2,4−ジスルホン酸又はその塩などのアルデヒド類もしくはこれらのアセタール化物を同時に反応させることも出来る。
【0045】
ポリ酢酸ビニル鹸化物に対する一般式(2)で示される化合物の化合物導入率は、化合物の種類で異なるが、酢酸ビニル単量体ユニットに対し0.02〜20mol%の範囲が好ましい。より好ましくは0.1〜5mol%である。導入率が多すぎれば現像性の低下をもたらし、低すぎれば十分な感度が得られず、塗膜強度も低下し、また、含水ゲルを形成することも困難になる。
【0046】
本発明の上記一般式(1)に示される構成単位を有する感光性樹脂は、感光性樹脂組成物に用いることができる。本発明の感光性樹脂を用いて本発明の感光性樹脂組成物を構成する場合、光架橋反応を促進させる目的で、光重合開始剤、光増感剤を混合することが望ましい。これらの化合物は溶剤に溶解、もしくは分散した状態で感光性樹脂に混合するか、感光性樹脂に対し化学的に結合させてもかまわない。適用される光重合開始剤、光増感剤に特に制限はないが、一例として、ベンゾフェノン、ヒドロキシベンゾフェノン、ビス−N,N−ジメチルアミノベンゾフェノン、ビス−N,N−ジエチルアミノベンゾフェノン、4−メトキシ−4′−ジメチルアミノベンゾフェノン等のベンゾフェノン類、チオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、イソプロピルチオキサントン、クロロチオキサントン、イソプロポキシクロロチオキサントン等のチオキサントン類、エチルアントラキノン、ベンズアントラキノン、アミノアントラキノン、クロロアントラキノン等のアントラキノン類、アセトフェノン類、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインフェニルエーテル等のベンゾインエーテル類、2,4,6−トリハロメチルトリアジン類、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−(o−クロロフェニル)−4,5−ジフェニルイミダゾール二量体、2−(o−クロロフェニル)−4,5−ジ(m−メトキシフェニル)イミダゾール二量体、2−(o−フルオロフェニル)−4,5−ジフェニルイミダゾール二量体、2−(o−メトキシフェニル)−4,5−ジフェニルイミダゾール二量体、2−(p−メトキシフェニル)−4,5−ジフェニルイミダゾール二量体、2,4−ジ(p−メトキシフェニル)−5−フェニルイミダゾール二量体、2−(2,4−ジメトキシフェニル)−4,5−ジフェニルイミダゾール二量体等、2,4,5−トリアリールイミダゾール二量体類、ベンジルジメチルケタール、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルホリノフェニル)−ブタン−1−オン、2−メチル−1−〔4−(メチルチオ)フェニル〕−2−モルホリノ−1−プロパノン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オン、1−〔4−(2−ヒドロキシエトキシ)−フェニル〕−2−ヒドロキシ−2−メチル−1−プロパン−1−オン、フェナントレンキノン、9,10−フェナンスレンキノン、メチルベンゾイン、エチルベンゾイン等のベンゾイン類、9−フェニルアクリジン、1,7−ビス(9,9′−アクリジニル)ヘプタン等、アクリジン誘導体、ビスアシルフォスフィンオキサイド、およびこれらの混合物等が挙げられる。
【0047】
これらの開始剤に加え、促進剤等を添加することも出来る。これらの例として、p−ジメチルアミノ安息香酸エチル、p−ジメチルアミノ安息香酸イソアミル、エタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン等が挙げられる。
【0048】
また、本発明の感光性樹脂組成物には、感度、コントラストの増加、硬化物物性向上の目的で、重合性モノマーを添加することも可能である。一例として、ポリエチレングリコールジアクリレート(エチレン基の数が2〜14のもの)、ポリエチレングリコールジメタクリレート(エチレン基の数が2〜14のもの)、トリメチロールプロパンジアクリレート、トリメチロールプロパンジメタクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、トリメチロールプロパンエトキシトリアクリレート、トリメチロールプロパンエトキシトリメタクリレート、トリメチロールプロパンプロポキシトリアクリレート、トリメチロールプロパンプロポキシトリメタクリレート、テトラメチロールメタントリアクリレート、テトラメチロールメタントリメタクリレート、テトラメチロールメタンテトラアクリレート、テトラメチロールメタンテトラメタクリレート、ポリプロピレングリコールジアクリレート(プロピレン基の数が2〜14のもの)、ポリプロピレングリコールジメタクリレート(プロピレン基の数が2〜14のもの)、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタメタクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサメタクリレート、ビスフェノールAポリオキシエチレンジアクリレート、ビスフェノールAポリオキシエチレンジメタクリレート、ビスフェノールAジオキシエチレンジアクリレート、ビスフェノールAジオキシエチレンジメタクリレート、ビスフェノールAトリオキシエチレンジアクリレート、ビスフェノールAトリオキシエチレンジメタクリレート、ビスフェノールAデカオキシエチレンジアクリレート、ビスフェノールAデカオキシエチレンジメタクリレート、多価カルボン酸(無水フタル酸等)と水酸基及びエチレン性不飽和基を有する化合物(β−ヒドロキシエチルアクリレート、β−ヒドロキシエチルメタクリレート等)とのエステル化物、アクリル酸若しくはメタクリル酸のアルキルエステル(アクリル酸メチルエステル、メタクリル酸メチルエステル、アクリル酸エチルエステル、メタクリル酸エチルエステル、アクリル酸ブチルエステル、メタクリル酸ブチルエステル、アクリル酸2−エチルヘキシルエステル、メタクリル酸2−エチルヘキシルエステル等)などが挙げられる。
【0049】
本発明の感光性樹脂組成物には、他の成分として、重合禁止剤、可塑剤、顔料、染料、消泡剤、カップリング剤等、従来公知のものを必要に応じて配合できる。
【0050】
なお、本発明の感光性樹脂組成物は溶媒として水を含有することが好ましい。水以外の溶剤を用いて合成された感光性樹脂から、本発明の感光性樹脂組成物を構成する場合、単に水で希釈するのみでも良いが、溜去による溶剤置換、または乾燥固化後に水溶解、あるいは、脂肪族炭化水素、芳香族炭化水素、酢酸エチル、酢酸ブチルといった非極性溶剤に投入し固形分を析出分離後、水に再溶解させてもかまわない。
【0051】
上記本発明の感光性樹脂組成物は、低濃度状態でも高感度であるため、例えば、固形分濃度2%以下の低濃度水溶液としても光重合反応することにより、含水ゲルを形成することができる。
【0052】
また、本発明の感光性樹脂組成物は、機能を形成する各種の薬効成分、酵素、菌体等を混合することができる。この場合は、各種の薬効成分、酵素、菌体等を含有する感光性樹脂組成物を光硬化させることにより、各種の薬効成分、酵素、菌体等を包含した含水ゲルを形成することができる。勿論、本発明の感光性樹脂組成物から含水ゲルを形成した後に、各種の薬効成分、酵素、菌体等を含浸させてもよい。
【0053】
なお、本発明の感光性樹脂組成物は、通常のレジスト組成物と同様にパターニングすることができるため、機能を形成する各種の薬効成分、酵素、菌体等をフォトリソグラフィーによりパターニングすることも可能である。勿論、通常のフォトレジストとして使用することもできる。
【0054】
本発明の感光性樹脂組成物をフォトパターニングに用いる場合、現像方法は、スプレー式、パドル式、浸漬式等、いずれも可能であるが、残渣の少ないスプレー式が好ましい。必要に応じて、超音波等を照射することもできる。
【0055】
なお、現像液は中性の水が好ましいが、弱酸性、弱アルカリ性であってもかまわない。現像性補助の目的で有機溶剤、界面活性剤、消泡剤等を添加することも可能である。
【0056】
【発明の実施の形態】
以下に、本発明を実施例に基づいて説明するが、この感光性樹脂を用いて構成される感光性樹脂組成物の種類、使用目的によって異なるため、あくまで例示であり、本発明の範囲を制限するものではない。
【0057】
(実施例1)
4−ヒドロキシブチルアクリレートグリシジルエーテル(日本化成株式会社製品 4HBAGE)45gとテレフタルアルデヒド酸60g、重合禁止剤としてp−メトキシフェノール0.2g、および触媒としてN,N−ジメチル−4−アミノピリジン1.4gを反応容器に入れ、85℃の湯浴中で9時間攪拌し赤褐色粘稠性溶液を得た。4−ヒドロキシブチルアクリレートグリシジルエーテルの反応率は92%であった。
【0058】
この溶液100gに5wt%炭酸ナトリウム水溶液100gを加え、1時間攪拌した後、抽出溶媒としてトルエン250gを加え抽出した。このトルエン層をエバポレーターにより濃縮し、赤褐色粘稠性液体(A)を得た。
【0059】
得られた、赤褐色粘稠性液体(A)を、高速液体クロマトグラフィー、1H−NMR、IRによって分析した。高速液体クロマトグラフィーの測定条件は、カラム:SUPERIOREX ODS(資生堂製)sizeφ4.6mm×250mm、溶離液:CH3CN:0.1wt%リン酸水(40:60vol%)、流量:1.0ml/min、カラム温度:35.0℃、検出器:MD−910(日本分光製)、検出波長:203nmである。1H−NMRはJNM−AL400(日本電子製)を用い、試料をTMS含有CDCl3に溶解し測定した。IRはFT/IR−410(日本分光製)を用い、KBr錠剤法により測定した。
【0060】
この粘稠性液体の高速液体クロマトグラフィーによる分析結果を図1に、1H−NMRの測定結果を図2に、IRの測定結果を図3に示す。これらの結果より、この溶液は一般式(2)で示される化合物に相当する下記化合物(B)の他、一般式(4)で示される化合物に相当する下記化合物(C)と推定される異性体を含んでおり、その比は化合物(B)/化合物(C)=80/20と判断される。
【0061】
【化9】
【0062】
【化10】
【0063】
(実施例2)
重合度1700、鹸化率88%のポリ酢酸ビニル鹸化物(日本合成工業製品 EG−30)50gを精製水430gに分散させた後、90℃まで昇温して溶解させた。この溶液を60℃まで冷却した後、触媒としてリン酸3.0g、実施例1で得られた赤褐色粘稠性液体(A)4.2g、溶媒として2−プロパノール59gおよび重合禁止剤として2,2,6,6−テトラメチル−4−ヒドロキシピペリジン−1−オキシル(旭電化工業株式会社製品 アデカスタブLA−7RD)13.6mgを加え、60℃で7時間攪拌した。得られた粘稠性溶液を45℃まで冷却した後、塩基性イオン交換樹脂(三菱化学製品 ダイヤイオンWA20)44gを加え2時間攪拌した。pHが中性であることを確認した後、室温に冷却し、400メッシュの紗を用いてイオン交換樹脂を濾別、粘稠性樹脂溶液を得た。
【0064】
この溶液に光重合開始剤として、1−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−フェニル]−2−ヒドロキシ−2−メチル−1−プロパン−1−オン(チバ・スペシャルティケミカルズ社製品 Irgacure2959)を溶液中の樹脂分に対し3重量%添加し感光性樹脂組成物を得た。
【0065】
この感光性樹脂組成物水溶液を水にて表1の濃度に希釈し、それぞれを試験管に入れ、密栓した状態で、照度380mW/cm2のメタルハライドランプUV照射機にて、2.8秒間UV照射を行った後、試験管を直立させて栓を空け、重さ5.5gの鉄球を液面に置いて、鉄球の沈降・保持により硬化性を比較評価した。結果を表1に示す。
【0066】
【表1】
【0067】
(実施例3)
重合度3000、鹸化率88%のポリ酢酸ビニル鹸化物(日本合成工業製品 OKS−9101)37gを精製水464gに分散させた後、90℃まで昇温して溶解させた。この溶液を60℃まで冷却した後、触媒としてリン酸3.5g、実施例1で得られた赤褐色粘稠性液体(A)2.9g、溶媒として2−プロパノール116gおよび重合禁止剤として2,2,6,6−テトラメチル−4−ヒドロキシピペリジン−1−オキシル(旭電化工業株式会社製品 アデカスタブLA−7RD)15.6mgを加え、60℃で7時間攪拌した。得られた粘稠性溶液を45℃まで冷却した後塩基性イオン交換樹脂(三菱化学製品 ダイヤイオンWA20)50gを加え2時間攪拌した。pHが中性であることを確認した後、室温に冷却し、400メッシュの紗を用いてイオン交換樹脂を濾別、粘稠性樹脂溶液を得た。
【0068】
この溶液に光重合開始剤として、1−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−フェニル]−2−ヒドロキシ−2−メチル−1−プロパン−1−オン(チバ・スペシャルティケミカルズ社製品 Irgacure2959)を溶液中の樹脂分に対し3重量%添加し感光性樹脂組成物を得た。
【0069】
この感光性樹脂組成物水溶液を水にて表2の濃度に希釈し、実施例2と同様の条件にて、鉄球の沈降・保持により硬化性を比較評価した。結果を表2に示す。
【0070】
【表2】
【0071】
(比較例1)
PVA−SbQ樹脂(東洋合成工業社製品 SPP−H−13 重合度1700)を水にて表3の濃度に希釈し、実施例2と同様の方法により、硬化性を評価した。結果を表3に示す。
【0072】
【表3】
【0073】
表1〜3に示すように、実施例2では固形分濃度が2%、実施例3では固形分濃度が1%と低濃度水溶液であっても強固で均一な含水ゲルであり、鉄球を保持することができた。一方、比較例1では固形分濃度8%と、実施例と比べて高濃度の水溶液としないと鉄球を保持することができなかった。
【0074】
(実施例4)
重合度1700、鹸化率88%のポリ酢酸ビニル鹸化物(日本合成工業製品 商品名EG−30)50gを精製水354gに分散させた後、90℃まで昇温して溶解させた。この溶液を60℃まで冷却した後、触媒としてリン酸3.2g、実施例1で得られた赤褐色粘稠性液体(A)を6.2g、溶媒として2−プロパノール152gおよび重合禁止剤として2,2,6,6−テトラメチル−4−ヒドロキシピペリジン−1−オキシル(旭電化工業株式会社製品 アデカスタブLA−7RD)14.1mgを加え、60℃で7時間攪拌した。得られた透明な粘稠性溶液を45℃まで冷却した後、塩基性イオン交換樹脂(三菱化学製品 ダイヤイオンWA20)47gを加え2時間攪拌した。pHが中性であることを確認した後、400メッシュの紗を用いてイオン交換樹脂を濾別、透明な粘稠性樹脂溶液を得た。
【0075】
この溶液に光重合開始剤として、1−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−フェニル]−2−ヒドロキシ−2−メチル−1−プロパン−1−オン(チバ・スペシャルティケミカルズ社製品 Irgacure2959)を溶液中の樹脂分に対し3重量%添加し感光性樹脂組成物を得た。
【0076】
この感光性樹脂組成物をブレードコーターで、ガラス基板上に全面塗布、80℃のクリーンオーブンで5分間乾燥した後、室温まで冷却、所定のパターンを備えたマスクを介し、照度4.0mW/cm2の超高圧水銀灯で500mJ/cm2の紫外線を照射した。続いてイオン交換水で30秒間スプレー現像し、目的のパターンを得た。パターンの膜厚は1.0μm、解像度は10μmであり、感度はウグラステップタブレットで5段であった。
【0077】
【発明の効果】
以上に説明したように、本発明によれば、保存安定性に優れ、様々な化合物に対しての親和性、混合溶解性を持ち、かつ高感度で含水状態においても固化可能な材料であり、硬化物の感度が高く、可撓性に優れ、高含水率においても均一固化が可能な感光性樹脂および感光性樹脂組成物並びに新規化合物を提供することができる。この本発明の感光性樹脂および感光性樹脂組成物は、例えば、水溶液の固化に適用した場合には、低濃度でも強固で均一なゲルを形成できるものとして、また、フォトパターニングに適用した場合には、高感度、高解像度な水溶性レジストとして、新規かつ有用なものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】 実施例1の高速液体クロマトグラフィーによる分析結果を示す図である。
【図2】 実施例1の1H−NMRの測定結果を示す図である。
【図3】 実施例1のIRの測定結果を示す図である。
Claims (5)
- 下記一般式(1)に示される構成単位を有するポリ酢酸ビニル鹸化物系感光性樹脂であって、鹸化度は60%以上で、一般式(1)に示される構成単位の含有率は0.01〜10mol%であることを特徴とするポリ酢酸ビニル鹸化物系感光性樹脂。
- 請求項1において、下記一般式(2)に示される化合物をポリ酢酸ビニル鹸化物にアセタール化させて得られるポリ酢酸ビニル鹸化物系感光性樹脂であって、ポリ酢酸ビニル鹸化物に対する一般式(2)の化合物の導入率が、酢酸ビニル単量体ユニットに対し0.02〜20mol%であることを特徴とするポリ酢酸ビニル鹸化物系感光性樹脂。
- 請求項1または2のポリ酢酸ビニル鹸化物系感光性樹脂と光重合開始剤と水を含有することを特徴とする感光性樹脂組成物。
- 請求項3の感光性樹脂組成物を用い、光重合反応することにより含水ゲルを得ることを特徴とする含水ゲルの形成方法。
- 下記一般式(2)に示されることを特徴とする化合物。
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