JP4241983B2 - 車両修理費見積システム - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、事故等により損傷した車両の、修理費を見積りするシステムに関する。
【0002】
【従来の技術】
一般的に事故や悪戯等により損傷した車両を修理する場合、サービス工場等のフロントマン等が修理を行う位置や範囲を特定し、修理に伴う部品を選定するとともに、修理を行うメカニック等の工賃を算出し、作業指示書または見積書を作成している。
【0003】
ところで、修理に必要な部品の特定や、この部品の価格等の算出までの時間を短縮するために、CD−ROM等の記憶媒体から供給される部品データベース等を利用したコンピュータ処理による修理見積作成システムが用いられるようになっている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
このような修理見積作成システムを用いることによって、確かに見積書や作業指示書の作成時間の短縮を図ることができるが、各作業項目の選択や交換部品の特定等は、フロントマン等の判断によるところが多いために、見積もり作業者の実務経験によって作成までに要する時間が大きく異なることも少なくない。
【0005】
ここで、見積書や作業指示書の作成過程を考察すると、マニュアル作成する場合もコンピュータ見積もりシステムを利用して作成する場合も、車両の損傷位置、損傷面積、損傷程度等を特定する作業から開始している。しかし、これらの作業は、熟練した見積もり作業者の経験に基づく勘により行われていることが多い。
【0006】
すなわち、損傷部分をアッシー交換する場合は比較的容易に見積書等を作成することができる場合もある。しかし、例えば、ハンマーを利用した叩き出しによる外装の板金作業を伴う場合等については、その損傷位置や損傷面積または損傷の程度によって作業の難易度や作業時間が異なる。このため、熟練作業者でなければ正確な見積書等を作成することは困難である。
【0007】
そして、未熟な見積もり作業者では、目視のみに基づく大雑把な特定作業となる場合があり、正確な損傷の特定をするには、時間と手間をかけても困難であった。
【0008】
また、熟練した見積もり作業者であっても、例えば塗装費用の算出では、通常、損傷位置や損傷程度によって異なる複雑に規則化された指数に基づいた計算を行うため、定量的な形での見積もりを短時間に行うことは困難であった。
【0009】
そして、本出願人は、車両の修理費見積りを行うにあたって、以下の条件に照らして見積もりを行うと、経済性を満足する適正な料金を算出できることを見出した。すなわち、第1に合理性(例えば、修理を合理的な方法、手順にて行えるか、あるいは、同等の修理結果となるのに簡単な修理方法を選択しているか)、第2に整合性(例えば、ある損傷箇所と他の損傷箇所の修理に整合性をもたせてあるか)である。この2つの条件を充足すれば、修理作業を行う際の経済性が最も良好となり、的確な見積り結果を得ることが可能となる。
【0010】
本発明は前記事項に鑑みなされたものであり、損傷の位置や程度等の態様に合わせた正確な見積りを容易に行えるシステムを提供することを技術的課題とする。
また、合理性、整合性の条件を充足して、経済性の良好な、修理作業を行うための見積りを、容易に算出できるシステムを提供することを技術的課題とする。
【0011】
さらに、専門知識を有しない者(例えば見積書等を受け取るユーザー)が、容易に見積もり内容の評価を行えるシステムを提供することを技術的課題とする。
【課題を解決するための手段】
本発明は、前述した課題を解決するために、以下の手段を採用した。
【0012】
すなわち、本願の第1の発明は、修理対象車両の修理費を見積りするシステムにおいて、前記修理対象車両の修理車両データを入力する入力装置と、車両の部位毎に設定される、部位を所定条件に基づき各区域に区分するとともに各区域に対応する修理条件を設定する区分データ、各部位にいずれの他の部位が隣接するかを設定する隣接部位データ、各部位の画像データを含む車両諸元データ、を有する車両属性データを記憶する記憶装置と、各データを表示する表示装置と、車両の損傷位置を指定する指定手段、指定された損傷位置が各部位に設定された如何なる区域に該当するかを判定する判定手段、判定手段により判定された当該区域の修理条件データに基づき修理費を計算する見積手段、を有し、前記入力装置により入力された修理車両データに対応する車両属性データを前記記憶装置から検索し、指定手段により指定された損傷位置が属する部位の画像データを前記表示装置に表示し、判定手段により判定された当該区域の修理条件データが隣接部位の作業データを含む場合、前記部位の画像データと共に当該隣接部位の画像データを前記表示装置に表示する計算装置と、を備えることを特徴とする(請求項1に対応)。
【0013】
本願の第2の発明は、第1の発明において、前記記憶装置は、修理車両の過去の修理内容を履歴データとして記憶し、前記計算装置は、前記履歴データを前記修理条件データの一部として、車両修理費を計算することを特徴とする(請求項2に対応)。
【0014】
本願の第3の発明は、第1の発明において、前記記憶装置は、修理車両と同一車種の過去の修理内容を履歴データとして記憶し、前記計算装置は、前記履歴データを前記修理条件データの一部として、車両修理費を計算することを特徴とする(請求項3に対応)。
【0015】
なお、修理対象車両の修理費を見積りするシステムにおいて、前記修理対象車両の修理車両データを入力する入力装置と、車両属性データを格納する記憶装置と、各データを表示する表示装置と、前記記憶装置から、入力された修理車両データに対応する車両属性データを検索して、前記表示装置に表示する計算装置と、を有し、前記記憶装置は、前記車両属性データとして、車両の部位毎に設定される、部位を所定条件に基づき各区域に区分するとともに各区域に対応する修理条件を設定する区分データを格納し、前記計算装置は、車両の損傷位置を指定する指定手段と、指定された損傷位置が、各部位に設定された如何なる区域に該当するかを判定する判定手段と、判定手段により判定された当該区域の修理条件データに基づき修理費を計算する見積手段と、を備えるようにしてもよい。
【0016】
そして、前記指定手段は、車両の損傷位置に加えて、損傷形状を指定することができる。
また、前記記憶手段は、損傷の種類に対応した複数の標識データを格納し、前記指定手段は、前記表示装置に表示した車両属性データ上あるいは修理車両データ上にて指定される前記標識データに基いて、損傷内容を特定することもできる。
【0017】
前記区分データは、部位の外周端部から所定距離内方までの外方区域と、部位の外周端部から所定距離内方以上の内方区域とに各部位を区分し、外方区域に損傷位置が含まれる場合、当該損傷位置から直近の端部に至る範囲を塗装作業範囲として設定することができる。
【0018】
また、前記区分データは、部位に隣接する他の部位から所定距離までの隣接区域と、隣接する他の部位から所定距離以上の非隣接区域とに各部位を区分し、隣接区域に損傷位置が含まれる場合、当該損傷位置に隣接する部位の所定範囲を塗装作業範囲として設定することができる。
【0019】
さらに、修理対象車両の修理費を見積りするシステムにおいて、前記修理対象車両の修理車両データを入力する入力装置と、車両属性データを格納する記憶装置と、各データを表示する表示装置と、前記記憶装置から、入力された修理車両データに対応する車両属性データを検索して、前記表示装置に表示する計算装置と、を有し、前記計算装置は、車両の損傷位置及び損傷形状を指定する指定手段と、指定された損傷形状の外周から所定距離外方までの近方区域、及び、損傷位置の外周から所定距離外方以上の遠方区域、に各部位を区分する区分手段と、近方区域を塗装作業範囲として修理費を計算する見積手段と、を備えるようにすることもできる。
【0020】
また、前記記憶手段は、損傷の種類に対応した複数の標識データを格納し、前記計算装置の指定手段は、前記表示装置に表示した車両属性データ上あるいは修理車両データ上にて指定される前記標識データに基いて、損傷内容を特定することもできる。
【0021】
そして、前記計算装置は、前記特定された損傷の種類及び車両属性データに基いて、修理対象車両の修理内容を指示することができる。
また、前記計算装置は、前記表示装置に表示された車両属性データ上、あるいは前記修理車両データ上に表示される形状(大きさ)変更可能な標識データに基いて、前記損傷位置の損傷面積を解析することができる。
【0022】
また、前記計算装置は、前記標識データにより特定された損傷を修復するための複数の作業内容を比較対象として前記表示装置に表示することができる。
そして、前記計算装置は、前記複数の作業内容のうち、所定の作業内容を複数同時に前記表示装置に表示することもできる。
【0023】
また、前記計算装置が表示する複数の作業内容には、修正作業あるいは交換作業を含むことができる。
また、前記計算装置が表示する複数の作業内容には、塗装作業を含むことができる。
【0024】
また、前記計算装置が表示する複数の作業内容には、同一作業を複数ランクに表したランク別作業を含むことができる。
また、前記計算装置が表示する作業内容には、各作業内容に対する修理費データを含むことができる。
【0025】
前記計算装置は、表示装置に表示された複数の作業内容のうち選択された作業内容について、さらに詳細な見積もりを行うようにしてもよい。
また、前記計算装置は、表示装置に表示された複数の作業内容のうち選択された作業内容について、さらに詳細な修理内容の指示を行うこともできる。
【0026】
なお、前記損傷の種類(内容)として、損傷位置、損傷面積を例示できるが、さらに具体的な損傷の形状、損傷の程度、損傷の態様、損傷の深さ等を特定できるようにしてもよい。
【0027】
また、損傷位置の特定としては、車両の各部位を特定することとしてもよいし、あるいは各部位のさらに部分的な位置を特定することとしてもよい。
この損傷位置の特定にあたっては、損傷箇所が所定の損傷位置であった場合、修理費を見積もる際に標準修理費よりも高低をつけて見積もりを行うようにすることもできる。これは、損傷部位によっては、修理作業に困難性を伴うこともあるし、あるいは、同一部位内においても、部位の中央部と端部とでは、鈑金作業や塗装作業における難易度が異なる場合があるためである。例えば、外板パネルの端部では、隣接するパネルの塗装色と同調させるために、時間や材料費が標準修理費よりも増加することがある。
【0028】
なお、部位という用語は、車両の一の部品に対して関連するある程度のまとまりをもつ部品のグループを表すものである。ある程度のまとまりとは、一の部品に近接する部品のグループであってもよいし、あるいは、一の部品を修理する際に関係する部品のグループ(例えば、一の部品を修理する際に脱着が必要となる部品を含むグループ)であってもよい。なお、一の部品をして一の部位としてもよい。
【0029】
本発明によれば、入力装置により入力された修理対象車両の修理車両データに基づいて、修理車両データに対応する、予め記憶装置に記憶した車両属性データを検索して、これら修理車両データ、車両属性データを表示装置に表示する。なお、前記表示装置には、損傷位置が属する部位の画像データが表示される。
【0030】
そして、記憶装置に格納した修理車両の損傷の種類に対応させた標識データを、表示装置で表示している車両属性データ上で指定することによって修理車両の損傷の種類を特定する。
【0031】
この損傷の種類の特定の際、前記標識データを、表示装置で表示している車両属性データ上で表示させて損傷の位置を指定手段により特定する。そして、標識データの大きさを自由に変更することにより、損傷位置の特定とともに損傷の面積を特定することができる。
【0032】
そして、計算装置は、特定された損傷箇所が区分データにより区分されたどの区域に属するかを判定手段により判定し、当該区域の修理条件に照らして、損傷箇所の修理費見積りを見積手段により行う。計算装置が修理条件を認識するにあたり、判定手段により判定された当該区域の修理条件データが、隣接部位の作業データを含む場合、部位の画像データと共に当該隣接部位の画像データを表示装置に表示する。
【0033】
この見積の際、塗装作業を行うにあたっての、塗装範囲を特定するとともに、損傷位置の塗装色を特定し、塗装方法を特定して、これら作業の工賃や部品・材料費等を積算した詳細な修理費見積もりを行う。
【0034】
なお、損傷の位置や面積を特定すると、次にその損傷の程度に応じて、損傷による衝撃によって影響を受ける部位(範囲や部品)、損傷部位の板金面積や損傷部位内における板金位置、さらに、塗装範囲や塗装色、塗装方法を特定して修理費見積もりを行うこともできる。
【0035】
また、この計算装置は、各車種毎に対応する車両諸元データ、部品データ、塗装色データ、塗装方法データ、板金修理に要する工賃データ、部品の交換または修理に要する工賃データのうち少なくとも1つを車両属性データとして用いることができる。
【0036】
さらに、この計算装置は、車両属性データを基準として標識データを用い修理費見積もりを行うとともに、修正または交換にかかる各作業をランク別に表示し、修正や交換等の各作業に対応する修理費を、それぞれ独立して表示するようにしてもよい。
【0037】
また、ランク別の修正作業またはランク別の交換作業若しくはランク別の修理費等を複数同時に表示するようにしてもよい。
【0038】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の車両修理費見積システムの一実施の形態を図1〜図25に基づいて具体的に説明する。
【0039】
本実施の形態に係る車両修理費見積システムは、図1に示すようにパーソナルコンピュータ1(以下、PCという。)と、このPC1に入出力インタフェース2を通じて接続した補助記憶装置3、キーボードまたはマウス若しくはライトペン等から構成する入力装置4、デジタルスチルカメラ5と、さらに、PC1に入出力インタフェース2を通じて接続した表示装置6、印字装置7、通信装置8等の出力装置とから構成されている。
【0040】
ここで、PC1に入出力インタフェース2を通じて接続した補助記憶装置3は、フロッピーディスクや光磁気ディスク、ハードディスクまたは光ディスク等を用いることができる。
【0041】
そして、入力装置4としては、キーボード等の他にOCR、OMR、バーコードリーダ、ディジタイザ、イメージスキャナ、音声認識装置等を接続することもできる。なお、出力装置としては、表示装置6等の他に作図装置、マルチメディア処理装置を接続することもでき、さらに、通信装置8は、通信回線を通じて端末装置に接続することもできる。
【0042】
修理車両の画像データを取り込む装置としては、デジタルスチルカメラ5の他に投光部と受光光学部、光電変換部を有する光センサ等を用いることもできる。ここで、これら光センサの投光部には、連続光用ではタングステンランプやハロゲンランプ、蛍光灯等を、間欠光用ではキセノンランプを用いる。そして、受光光学系としては、ビジコンやシリコンビジコン、カルニコン等を用いたITVカメラや半導体センサまたはMOS形、CCD形の固定カメラを使用し、光電変換部には撮像管や個体撮像管素子、光電変換素子等で形成する。
【0043】
一方、損傷部分に照射する光源としてレーザ光を用いることもできる。ここで、レーザ光を使用する場合は、図示はしていないがHe−Neレーザ光等を集光レンズにより、損傷位置で必要なスポット径になるように収束し、電磁振動鏡により損傷位置の幅方向に光を走査し、反射鏡によって損傷位置の表面に照射する。このときの損傷位置からの反射回析光をオプティカルファイバ等にて作成した集光系で集光し、光電子倍増管で電気信号に変換するものである。
【0044】
また、PC1は、主記憶装置1b(ハードディスク、ROM、RAM〔以下、メモリという〕)及び中央処理装置1a(以下、CPUという)で構成する。そして、修理車両の修理指示を行うPC1は、OSによる制御の下にメモリ1bまたは補助記憶装置3にキャッシュされているプログラムを起動し、所定のタスク(プロセス)を実行する。このPC1は、複数のタスクを仮想的にかつ同時に並列して実行するマルチタスクを行うこともできる。
【0045】
なお、PC1の機能の一部には、メモリ管理装置の機能が備えられている。すなわち、このメモリ管理装置は、読み出しまたは書き込みを行うためにプロセスが指定するメモリ1b上の論理アドレスを、実際にメモリ1bに読み書きする物理ページの番地を示す物理アドレスに変換する機能をも有している。
【0046】
次に、PC1本体を構成するCPUは、与えられたデータに対して数値演算(四則演算)、論理演算等を行う演算装置1a2 と、実行される命令部1b1 のアドレスをもとにメモリ1bからCPUに命令を取り込み、命令の内容を解読し必要な動作指示を他の装置に対して出す制御装置1a1 とを有する。
【0047】
この制御装置1a1 は、図1に示すように入力装置4等に対して入力制御指令を出し、メモリ1bに対しては、メモリ1b制御指令を出し、出力装置等に対しては、出力制御指令を出す。
【0048】
そして、入力装置4等より入力されたコマンドは最初にメモリ1bへと転送されて、メモリ1bでは、与えられたコマンドからデータ及び命令を選択するとともに、選択されたデータ及び命令をCPUの制御装置1a1 に転送する。
【0049】
デジタルスチルカメラ5により取り込まれ、入出力インタフェース2を通じてメモリ1bへと転送された画像データ、またはキーボード等の入力装置4より入力された修理車両データは、メモリ1bのデータ部1b2 に記憶される。
【0050】
なお、PC1が、計算装置に相当し、指定手段、判定手段、見積手段、区分手段はPC1に含まれる。
ところで、このデータ部1b2 には、損傷の種類に対応させた標識データ6cを記憶している。標識データ6cは、たとえば、図5に示すように、直線は、ほぼ直線の引っかき傷等を表し、四角形は、ほぼ角張った凹みや歪みを表し、円形は、丸みを帯びた凹みや歪みを表し、三角形は、飛び石や鋭利な物で刺した刺し傷等を表し、さらに、撓んだ線形は、外装表面の波打ちや歪みを表し、任意形状は、その他の表現が不可能な損傷を表す。
【0051】
そして、データ部1b2 には、各車種毎に対応するとともに、これら各車種のグレードに対応した車両諸元データ及び部品データ並びに塗装色データ、塗装方法データを格納している。
【0052】
また、データ部1b2 は、車両の部品価格及び部品交換または修理に要する工賃のデータ群を格納するとともに、修理に伴う車両の損傷部位と損傷に伴って交換または修理が必要となる部品との対応データを車両属性データとして格納している。さらに、データ部1b2 は、作業毎に対応する板金修理に要する工賃データをも格納している。
【0053】
また、データ部1b2 に格納したこれらのデータには、それぞれランク付けすることができる。たとえば、交換する部品においても新品の純正部品を最高位のランクにし、新品の優良部品(純正部品に代替可能な部品)等を中上位のランクにし、中古の純正部品を中下位のランクにし、中古の優良部品を最下位のランクとして格納することができる。
【0054】
これにより、見積時において交換部品に選択肢を持たせ、ユーザーに情報を開示して選択させることができる。そして、中古部品ネットワーク等の利用密度を高めたり、リサイクル促進提案も可能となる。
【0055】
なお、データ部1b2 に格納されたデータには、修理車両の履歴データが含まれている。すなわち、修理車両の履歴データとしては、修理車両の過去の損傷データと、修理車両の過去の修理(整備)データとがある。損傷データは、損傷箇所(損傷部位)及び当該損傷にあたっての修理方法(部品の取り替えか、あるいは部品の修正か)、使用した部品データ、修理を行った時期(年月日)、修理価格、損傷箇所の画像データ等のデータを含む。また、整備データとしては、取り替えた部品データ、部品の劣化データ(例えば、ある部品について、車両が10000km走行後に取り替えが必要とのデータ)等のデータを含む。
【0056】
そして、これらの履歴データは、車両属性データとしてデータ部1b2 に格納されており、車両番号や顧客名等の個別番号を基にして、履歴データを検索できるようになっている。また、前記履歴データは、同一車種の修理費見積もりを行う場合の補助データとして、修理対象車両と同一車種の履歴データを検索・参照できるようにしてもよい。
【0057】
制御装置1a1 では、メモリ1bから転送された修理車の修理車両データ及び画像データ並びに命令を解読して、必要な動作指示を演算装置1a2 に与える。そして、演算装置1a2 では、与えられた修理車両データ及び画像データ並びに命令に対して論理演算等の演算を行う。
【0058】
すなわち、メモリ1bから読み込まれ制御装置1a1 で解読された命令は、入力された修理車両データ等をデータ部1b2 に格納し、最初に、この修理車両データ等から修理車両データに対応する車両属性データを検索する。そして、図2に示すように車両属性データの中からグラフィックス6a画面を表示装置6に表示させる。
【0059】
ここで、表示装置6に表示させるグラフィックス6aは、2次元の平面的なグラフィックス6aでも良いし、3次元の立体的な3Dグラフィックス6aでも良い。さらに、デジタルスチルカメラ5等で取り込んだ修理車両の画像データを表示装置6に同時に表示させることもできる。
【0060】
グラフィックス6a画面を表示装置6に表示させると、次の命令がメモリ1bから制御装置1a1 に読み込まれて、制御装置1a1 からこの命令が演算装置1a2 に与えられる。そして、例えば修理車両のボンネット6bをマウスを用いてクリックすると、損傷部分がボンネット6bであると特定され、さらに、他の部分と区別するために色付けをして表示装置に表示させる(図3)。また、修理車両の左フェンダー6eをマウスを用いてクリックすると損傷部分がボンネット6eであると特定され、色付けして表示装置に表示させる(図4)。そして、これらのデータをデータ部1b2 にフィードバックして格納させる。
【0061】
このように損傷部分を決定すると、制御装置1a1 にメモリ1bから次の命令が読み込まれ、まず、図5に示すようにボンネット6bを表示装置6に表示させるように演算装置1a2 に指示をする。さらに、あらかじめ格納した標識データ6cとともに、これら標識データ6cの操作ガイドを同時に表示装置6に表示させる(図6)。
【0062】
ここで、この操作ガイドは、所定のキーを押すことで表示装置から消すことができる。また、この操作ガイドを適時表示、非表示させる手段も搭載されている。
次に、標識データ6cの内から損傷の種類に応じた標識6dを選択させるが、ここでは、ボンネット6bが明らかに交換すべき程に損傷しているものなので、「交換」の標識6dを選択するものとする。
【0063】
すると、ボンネット6bの交換に要する作業及び部品が表示装置6上に表示される(図7)。
ボンネット6bについての処理が終了すると、次に、左フロントフェンダー6eに関する処理に移行する。
【0064】
すなわち、表示装置6にはフロントフェンダー6eが表示されるので(図10)、損傷の内容(ここでは、「へこみ」)を指定するとともに、標識データ6cの内から損傷の種類に応じた標識6dを選択させ(図11)、表示したフロントフェンダー6eのグラフィック画面上にこの標識6dをドラッグアンドドロップにて表示させる(図12)。
【0065】
次に、損傷の面積に応じてこの標識6dの大きさを変更させる(図13)。ここで、標識6dの大きさの変更は、たとえば、損傷がほぼ直線の引っかき傷であり、標識データ6cの中から直線の標識6dを選択した場合、損傷の位置にドラッグアンドドロップにて表示させ、さらに、マウスの左ボタンをクリックしながらドラッギングして右方向に引き、損傷の大きさまで引き伸ばしクリックを解くと、その長さで引っかき傷の大きさが特定される。
【0066】
また、損傷がほぼ角張った凹みや歪み等であり、標識データ6cの中から四角形の標識6dを選択した場合、グラフィックス6a上の損傷の位置にドラッグアンドドロップにて表示させ、さらに、マウスの左ボタンをクリックしながらドラッギングして右斜め下方に引き、損傷の大きさまで引き伸ばしクリックを解くと、その範囲で角張った凹みや歪みの大きさが特定される。
【0067】
このようにすることで、演算装置1a2 では、損傷の種類(形状)及び損傷の位置並びに損傷の範囲を特定して、これらのデータを修理車両データとしてデータ部1b2 に格納する。
【0068】
ここで、損傷の面積の解析は、指定されグラフィック画面上に表示された標識6dの面積を計算することで求める。たとえば、表示された標識6dが四角形である場合の面積は、縦長×横長で求められるし、円形である場合の面積は、円周率×半径の二乗、(πr2 )で求めることができる。さらに、三角形では、(底辺×高さ)/2で求めることができ、任意形状の面積は楕円として、円周率(π)×長軸×短軸で求めることができる。
【0069】
この場合、あらかじめ修理車両のフロントフェンダー等の縮尺率に対応した面積を格納しておき、このフロントフェンダー6eに表示させた標識6dがフロントフェンダーの全面積に対して何%であるかを割り出すことにより算出することができる。
【0070】
また、このような計算方式とは別に、グラフィック画面のドット数を計算することで面積を算出することもできる。たとえば、標識6dが円形である場合、この円形内のドット数を計算して、得られたドット数に1ドットあたりの実際の面積を乗じて面積を算出することができる。また、あらかじめフロントフェンダー6eのドット数とフロントフェンダー6eの実際の面積をメモリに記憶しておき、指定した円形のドット数がフロントフェンダー6eのドット数の何%であるかを割り出して、フロントフェンダー6eの面積にこの割合を乗ずることで、損傷面積を得るようにしても良い。
【0071】
ところで、メモリ1bに格納され制御装置1a1 に読み込まれ、さらに演算装置1a2 に与えられる命令には、前記したように、損傷位置の交換または修正を、指定された標識6dに基づいて選択させることや、損傷位置の損傷が影響する範囲または部品を特定させることが含まれる。
【0072】
さらに、損傷位置の損傷の種類や損傷範囲に基づいて、板金位置及び板金面積を特定することが含まれる。
なお、損傷位置の交換または修正を選択すると、交換に伴って塗装作業を行うか否かの選択をさせることもできる。
【0073】
そして、塗装作業を行う場合に損傷位置の塗装色、塗装範囲、塗装方法を自動的に認識、特定させることもできる。
ここで、図19〜図24に基づき、各外板パネル(各部位)を所定条件に従って各区域に区分する概念と、各区域の修理条件につき、塗装作業を例にして説明する。
【0074】
第1の区分処理としては、図19に示すように、仮に車両の外板パネル30を想定すると、この外板パネル30の端部から所定距離(例えば10cm)内方に、区分ライン(仮想ライン)35を設定する。そして、区分ライン35にて区分された外側の区域を外方区域30aとし、内側の区域を内方区域30bとする。この場合、外方区域30a内に損傷箇所50が位置したときには、当該損傷箇所50から外板パネル30の直近の端部までを塗装作業範囲(50,50a)として設定する(図20)。
【0075】
第2の区分処理としては、図21に示すように、仮に車両の外板パネル30の周囲に、外板パネルA,B,C,D,Eがそれぞれ隣接しているものと想定する。そして、外板パネル30に、パネルA及びパネルDに対応する、図中横線の区分ライン36と、パネルB及びパネルEに対応する、図中縦線の区分ライン37を設定する。また、外板パネル30に、パネルCに対応する、区分ライン38を設定する。
【0076】
そして、区分ライン36と区分ライン37により4分割された外板パネル30は、図中右上の区域(AB区域)を基準にすると、(AB)区域は、パネルA及びパネルBの隣接区域となり、右下の区域(BD区域)を基準にすると、(BD)区域はパネルB及びパネルDの隣接区域となる。また、図中左下の区域(DE区域)を基準にすると、(DE)区域はパネルD及びパネルEの隣接区域となり、左上の区域(AE区域)を基準にすると、(AE)区域はパネルA及びパネルEの隣接区域となる。
【0077】
さらに、外板パネル30の右下角部の、区分ライン38にて区分された区域(BCD区域)は、パネルB、パネルC、パネルDの隣接区域となる。
そして、損傷箇所が各隣接区域のいずれかに位置したときには、当該区域を隣接区域とするパネルの所定範囲(例えば、隣接区域から10cm)までを、塗装作業範囲として設定する。例えば、図22に示すように、AB区域の中央寄りに損傷箇所50が位置した場合には、AB区域全域と、パネルA及びパネルBのAB区域に接する所定範囲が塗装作業範囲となる。
【0078】
第3の区分処理としては、図23に示すように、仮に外板パネル30に損傷50を指定したとすると、この損傷50の周囲から所定範囲(例えば、損傷の端部から10cm外方)に区分ライン39を設定する。そして、この区分ライン39にて囲繞される区域を近方区域30fとして認識し、この近方区域30fを塗装作業範囲として設定する。なお、近方区域30f外の外板パネル30は、遠方区域30gに設定される。
【0079】
このように、PC1が、区分データに基づき、各区域の所定条件に照らして塗装作業範囲を決定する。
なお、損傷箇所が複数の区域に跨る場合は、該当する各区域のそれぞれの条件に重複させて塗装作業範囲を決定すればよい。また、前記第1〜第3の区分処理を重複して塗装作業範囲を決定することもできる。また、前述したように、各部位における各区域は、予めデータ部1b2 に設定しておいてもよいし(第1の区分処理及び第2の区分処理に適する)、演算の結果、各区域を決定するようにしてもよい(第3の区分処理に適する)。なお、これらの塗装作業範囲の設定は、例えば損傷箇所の周囲を、どの範囲まで「ぼかし塗装」をすることが最も合理的な修理作業となるかを想定して決定されており、結果として経済的な修理作業を得られるようになっている。例えば、外板パネルの端部近くに損傷箇所があった場合、その損傷箇所のみを塗装するよりも、損傷箇所を含めて外板パネルの端部まで一緒に塗装してしまう方が、より作業が簡易に行えるのである。
【0080】
図9には、左フロントフェンダー6eに設定した区分ラインを具体的に表示した例を示している。なお、区分ライン40は、左フロントフェンダー6eを左右に2分割するラインであり、例えば、左フロントフェンダー6eの右側に損傷箇所が位置した場合は、区分ライン40にて仕切られる右半分全域を塗装範囲とする条件が区分データとして設定されることとなる。また、左フロントフェンダー6eの左側に損傷箇所が位置した場合は、区分ライン40にて仕切られる左半分全域を塗装範囲とする条件が区分データとして設定される。
【0081】
左フロントフェンダー6eの損傷箇所50は、左フロントフェンダー6eに設定した区分ライン35に接している(損傷箇所が外方区域に亘っている)ため、左フロントフェンダー6eに隣接する部位への修理作業の影響の可能性がある。
【0082】
したがって、図25に示すように、損傷箇所50の位置が確定した時点で、隣接する外板パネルである左ドアパネル6fが、左フロントフェンダー6eと共に画面上に表示される。
【0083】
そして、損傷箇所50の修理に伴う塗装範囲として、塗装作業範囲(50,50a)が特定されることとなる。なお、前記隣接する外板パネル(左ドアパネル6f)は、図25に示すように、当該損傷パネル(左フロントフェンダー6e)とともに車両を展開した状態に、平面的に画面上に表示することができる。あるいは、当該損傷パネル(左フロントフェンダー6e)とともに、隣接する外板パネル(左ドアパネル6f)を立体的に画面上に表示するようにしてもよい。
【0084】
次に、損傷箇所を部品(部位)の交換により修理する態様につき、さらに説明する。
まず、画面上の交換(アイコン)を選択し、交換に要する工賃や部品の価格を決定して図7に示すように、交換に係る費用を表示装置6に表示させる。ここで、交換のみならず修理をした際の費用をも同時に表示させることができる。また、交換の部品に対して新品の純正部品を使用するか、または中古の純正部品を使用するか等の特定をすることもできる。
【0085】
なお、部品の交換か修正かを選択するに際して、修理車両の履歴データを参照して決定することもできる。すなわち、損傷部位の過去の損傷データあるいは整備データを呼び出して、経年劣化により間もなく交換が必要な部品であることが判明した場合は、例え修正による方が低額にて修理を行えるとしても、交換を選択するというものである。
【0086】
この履歴データは、修理条件データの一部として使用してもよく、例えば損傷箇所が属する部位(部品)が、1年以内あるいは10000km走行以内にて交換が必要である場合には、「交換」の選択が適しているとのコメントを画面上に表示するとよい。この場合、直接の損傷部位(図25においては左フロントフェンダー6e)だけでなく、損傷の影響が推定される隣接部位(図25においては左ドアパネル6f)に対しても履歴データが修理条件として反映される。例えば、損傷の影響が推定される左ドアパネル6f(隣接部位)の構成部品の一つであるドアチェックの劣化が進行していることが履歴データ内に登録されているならば、ドアチェックの交換を促す指示が表示装置6上に表示される。
【0087】
なお、直接の損傷部位から隣接部位への「損傷の影響」とは、直接の損傷部位の修理作業に伴う、隣接部位において必要になるぼかし塗装等の作業や、直接の損傷部位から隣接部位への衝撃伝達による波及損傷によって必要になる修理作業等を想定したものである。
【0088】
また、部品の交換か修正かを選択するに際して、修理車両と同一車種の履歴データを参照して決定することもできる。すなわち、修理車両の損傷箇所と同一の損傷箇所があった複数の同一車種のデータの平均値(実際の修理結果による、当該部位と隣接部位の修理作業の平均)にて決定される推奨作業(交換か修正か)を表示装置6上に表示することができる。
【0089】
さらに、この同一車種の履歴データも、修理条件データの一部として使用することができる。つまり、予め設定されている区分データの修理条件(前記第1〜第3の区分処理に基づく修理条件等)を、同一車種のデータの平均値を用いて補正するものである。例えば、直接の損傷部位(左フロントフェンダー6e)の修理に伴い、隣接部位(左ドアパネル6f)の端部のぼかし塗装が10cmの幅にて必要であるとの演算結果がでた場合、履歴データの平均値が20cm幅のぼかし塗装であったなら、次のように補正する。すなわち、例えば前記演算結果を70%、前記履歴データの平均値を30%の割合にて合計(10cm×0.7+20cm×0.3=13cm)し、最終演算結果として隣接部位(左ドアパネル6f)のぼかし塗装を13cm幅に決定するというものである。
【0090】
これは、車種によっては、著しくボディーのデザインが他の車種と異なるものもあるため、その車種独特のデザインにより、隣接部位のぼかし塗装が広めに必要となる場合もあるからである。
【0091】
なお、履歴データを修理条件データの一部とする場合、履歴データのデータ数の増加に伴い(データの信頼性向上に伴い)、所定の修理条件データによる演算結果に対する補正割合を増加させるようにすることができる。
【0092】
また、ユーザーの希望を取り入れて修理専門家の立場から想定した修正、交換のコースをあらかじめ複数登録しておき、これを適時選択することで、コース内容に応じた費用算出を行うことができる。
【0093】
たとえば、車両価格が安いためあまり金額をかけた修正等をして欲しくないという希望を取り入れた見積をするエコノミーコース、新車同様の修正、交換等をして欲しいという希望や、または高級車であるから万全を期したいという希望を取り入れたスーパーコース等を任意に設定することができ、コースに応じた見積を行うことができる。
【0094】
なお、上記各例では、修正、交換の内容に応じたコース設定としているが、費用に応じたコース設定をすることもできる。たとえば、総額20万円までの範囲内で修理をして欲しいとか、費用はいくらかかっても良い等の費用毎のコース設定や、修正、交換作業中の代行貸出車両の有無や、修正、交換作業とともに所定の車両の整備、点検をも行うことにする等のオプション別のコース設定等を行うことができる。このように、本実施の形態に係る車両修理指示システムを用いる側(修理工場側)が、車両ユーザーに提供できる各種のサービス体系に応じたコース設定として、よりきめ細やかなニーズに答えるシステムとして活用することができる。
【0095】
そして、これらの特定等が終了すると、交換に係る費用をすべて積算して表示装置6に表示させる。たとえば、フードの交換では、単位時間あたりの作業工賃であるレバーレートを7,000円に設定すると、これに作業の難易度に対応した指数0.70を乗じて技術料金が4,900円、交換する部品の価格がフード41,900円であり、これらの合計が46,800円となる。
【0096】
次に、塗装ではレバーレートを7,000円に設定すると、これに指数4.90を乗じて技術料金が34,300円となり、塗料の費用が4,190円であり、これらの合計が38,490円となる。したがって、交換に伴う総合計費用は、46,800円に38,490円を加算して、85,290円となる。
【0097】
また、仮に修理をボンネット6bのみに限定したとすると、図8に示すようにボンネット6bの修理にかかる合計金額が表示されるとともに、修理コース及び作業時間並びに預かり日数が表示される。
【0098】
本実施の形態では、ボンネット6bの修理にかかる費用はレバーレートを7,000円に設定し、これに指数3.15を乗じて技術料金が22,050円となり、ボンネット6bの費用が41,900円であり、技術料金及び部品料金の合計金額が68,140円になる。
【0099】
一方、部品の修正を選択したフロントフェンダー6eに関しては、ボンネットと同様にして修理費の計算がなされ、図14に示すように修正に係る費用が表示される。なお、フロントフェンダー6eを交換して修理した場合の費用も、図15に示すように詳細に表示することもできる。
【0100】
次に、本実施の形態に係る車両修理指示システムに用いる計算装置の動作原理をフローチャート図16〜図18に基づいて説明する。
まず、修理車の車種を特定する車両ナンバー等の修理車両データを入力装置4により入力し、入出力インタフェース2を通じてPC1に転送する(ステップ100)。
【0101】
次に、PC1の制御装置1a1 は、記憶装置に格納された修理車両データ及び車両属性データを読み込む命令を演算装置1a2 に与え(ステップ101)、さらに、演算装置1a2 ではこの命令に基づいて修理車両データからこの修理車両データに対応する車両属性データを検索してレジスタへと読み込む(ステップ102)。
【0102】
次に、検索した車両属性データ、修理車両データの双方またはいずれかを表示装置6に表示する(ステップ103)。本実施の形態では、表示装置6に表示させる画像をセダンまたはハードトップ等のイラストグラフィックス6aとして表示させる。
【0103】
また、特定の車種の全体像をイラストグラフィックス6a画像で表示するようにしても良い。ここで、表示装置6に表示された車両の全体像から、損傷している部位を選択し、選択された各部位のそれぞれが拡大されて画面上に表示される。また、この表示画面には、損傷の種類に対応した標識6dデータが同時に表示される。
【0104】
次に、損傷の種類に合わせて標識6dデータを選択すると(ステップ104)制御装置1a1 は、選択された標識6dデータがどの損傷を表しているかを特定する命令を演算装置1a2 に与え、演算装置1a2 では、この命令に基づいて修理車両の損傷の種類(形状)を特定する(ステップ105)。
【0105】
次いで、グラフィックス6a画像上でマウスを用いて標識6dデータをドラッグし損傷部分にドロップして表示するとともに、損傷の大きさに合わせてこの標識6dの大きさを変更する(ステップ106)。
【0106】
これにより制御装置1a1 は、ドロップさせた位置を損傷位置として特定するとともに、ドロップされた標識6dの大きさにより損傷部分の面積を計算する命令を演算装置1a2 に与え、演算装置1a2 は、この命令に基づいて損傷の位置を特定し(ステップ107)、損傷の面積を特定する(ステップ108)。なお、これら特定した損傷の種類、損傷の位置、損傷の面積は、演算装置1a2 よりメモリ1bにフィードバックされ格納される。
【0107】
同時に、演算装置1a2 は、損傷位置の修正または交換にかかる費用をそれぞれ算出し、制御装置1a1 は演算装置1a2 にこの損傷位置の修正または交換にかかる費用を表示装置6に表示させる。
【0108】
次に、演算装置1a2 は、損傷位置の修正または交換を操作者に選択させる(ステップ109)。
さらに、演算装置1a2 は、修正を選択すると次に損傷による衝撃で影響を受ける範囲や部品を特定する(ステップ110)。この影響を受ける範囲及び部品の特定は、あらかじめ記憶装置に格納された修理作業データ及び対応する部品データに基づいて行われる。
【0109】
なお、修理車両と同一車種の履歴データを用いて、同様の損傷にて影響を受けた範囲や部品を検索し、この検索結果に基づいて前記特定を行うようにしても良い。
【0110】
そして、影響を受ける範囲や部品が存在し、これらを特定すると、制御装置1a1 は、これらの範囲や部品の修理の必要があるか否かの判断を行う命令を演算装置1a2 に与え、演算装置1a2 は、操作者からの入力を待って修理の有無を判断する(ステップ111)。ここで、操作者がこれらの範囲や部品の修理が必要と認め、この指令を入力装置4から入力すると、制御装置1a1 は、演算装置1a2 にこれらの修理にかかる費用を初期設定されたファーストコースに基づいて算出させ(ステップ112)、さらに、操作者から他の作業ランクが入力されると(ステップ113)、演算装置1a2 は、この費用及び作業ランクをメモリ1bにフィードバックして格納する。
【0111】
なお、作業ランクは、あらかじめメモリ1bに格納された車両属性データに基づいて設定されるが、この作業ランクは、その都度入力装置4から入力することによって変更ができる。
【0112】
次に、これら修理を行う範囲や部品のすべてを特定し終えるか、または影響を受ける範囲や部品がない場合、制御装置1a1 は演算装置1a2 に対して板金位置と板金面積を特定させる(ステップ114)。ここで、板金の必要がないときは、これら板金位置と板金面積の特定は行わない。
【0113】
そして、板金の必要があり板金位置と板金面積を特定すると、演算装置1a2 は、塗装色を特定するとともに(ステップ115)、塗装方法を特定する(ステップ116)。これらの特定は、あらかじめ記憶装置に格納された車両属性データに基づいて行われる。
【0114】
そして、前記ステップ116における塗装方法の特定では、図18に示す制御フローも行われる。すなわち、制御装置1a1 は、損傷箇所の当該部位(パネル)における区域を特定し(ステップ201)、特定された区域の塗装条件をデータ部1b2 から読み出し(ステップ202)、読み出した条件に従って演算装置1a2 にて塗装範囲を特定する(ステップ203)。このステップ203においては、損傷部位と、当該損傷部位の修理に伴い作業が必要となる、損傷部位に隣接する他の部位とが画面上に同時に表示されることとなる。
【0115】
なお、これらを特定すると演算装置1a2 は、特定の結果をメモリ1bへとフィードバックして格納する。
次に、制御装置1a1 は、演算装置1a2 にこれらの修理にかかる費用を初期設定されたファーストコースに基づいて計算させ(ステップ117)、さらに、操作者から他の作業ランクが入力されると(ステップ118)、演算装置1a2 は、この費用及び作業ランクをメモリ1bにフィードバックして格納する。
【0116】
そして、修理を行う位置等を表した作業指示を表示させるとともに(ステップ119)、見積書、作業指示書を作成させる(ステップ120)。さらに、これらの書類を印字装置等から印刷して出力する(ステップ121)。
【0117】
また、ステップ109において、修理位置の交換を選択した場合は、制御装置1a1 は、演算装置1a2 に交換部品を特定させる命令を与え、この命令に基づいて演算装置1a2 は、交換部品を特定する(ステップ122)。これら交換部品の特定もあらかじめ記憶装置に格納された車両属性データに基づいて行われる。
【0118】
次に、交換部品の特定が終了すると演算装置1a2 は、交換にかかる費用を計算し(ステップ123)、操作者から作業ランクが入力されると(ステップ124)、演算装置1a2 は、この費用及び作業ランクをメモリ1bにフィードバックして格納する。
【0119】
そして、修理を行う位置等を表した作業指示を表示させるとともに(ステップ125)、見積書、作業指示書を作成させる(ステップ126)。
次に、これら交換部品の塗装が必要か否かの判断を操作者に求める(ステップ137)。ここで、塗装の必要がないと判断するとその時点で操作は終了するが、塗装の必要があるものと判断した場合、ステップ115からステップ121までの処理を行う。
【0120】
なお、交換部品の塗装に関しては、ステップ201における区域は、交換部品が有する全区域を対象に特定してもよいし、あるいは、交換部品塗装用の塗装条件をデータ部1b2 に別途格納しておき、この交換部品用の塗装条件に基いて塗装範囲等を特定してもよい。交換部品用の塗装条件とは、例えば、交換部品の周端部付近と、交換部品に隣接する部品の隣接付近を塗装範囲と設定するものである。
【0121】
ところで、表示装置6に表示される作業時間や難易度は、例えば、以下に示す指数表によって算出される。
【0122】
【表1】
難易度▲1▼〜▲3▼について、損傷毎にYES・NOを判断し、指数値を検索する。ここで、軽度な損傷とは、1損傷あたりの面積が3dm2 以下で、著しい折れ、潰れ、延び等が認められない損傷をいう。なお、同一パネルに複数の損傷がある場合は、1損傷毎にランクを判定し、高いランクのテーブルを使用する。ただし、面積は、合計の面積で指数値を検索する。
【0123】
パネル裏面からハンマ等で作業ができる損傷は、付属品を脱着すれば裏面から作業できる損傷を含むものである。
そして、同一パネルに損傷が複数ある場合は、以下の運用にする。なお、パネル裏面の損傷も表面の損傷と同様に扱う。
【0124】
【表2】
次に、メモリ1bからこれらの基準を読み出した演算装置1a2 では、損傷の種類及び損傷の位置並びに損傷の範囲を特定してこれらのデータを修理車両データとしてデータ部1b2 に格納する。
【0125】
さらに、修正に要する工賃や部品の価格を決定して修正に係る費用を表示装置6に表示させる。ここで、修正のみならず交換をした際の費用をも同時に算出し、対比的に表示させる。
【0126】
ここで、修正の部品に対して新品の純正部品を使用するかまたは中古の純正部品を使用するかの特定をすることもできるし、初期設定されたファーストコースの他に、修理のコースをスーパーコースやエコノミーコースにすることもできる。
【0127】
このようにすることで、修理位置に個別に対応させ、ユーザーに判断材料を明確に表示できる。したがって、ユーザーからの変更希望に容易に応じることができる。
【0128】
なお、図示はしていないが交換や修正にかかる費用の計算のみならず、これらの作業を行う作業員等に対する作業指示を行うこともできる。
また、スーパーコースやエコノミーコース等の各コースは、一のコースが選択されて見積りが行われているとしても、PC1では、その他のコースに基づく見積りも同時並行して行いながら、表示装置4には選択されたコースの見積り処理のみを表示するものとしてもよい。この場合、操作者の指示により、見積処理の途中や終了後に、最初に選択されたコースとは別のコースによる見積りを直ちに表示装置4に表示することができる。
【0129】
【発明の効果】
本発明によれば、損傷の位置や程度等の態様に合わせた正確な見積りを容易に行えるシステムを提供することができる。
【0130】
また、損傷した部位と、当該部位の修理に伴い作業の可能性がある部位とを画面上に同時に表示したうえで見積作業を行うので、オペレーター等にとってより容易に、分かり易く見積作業を進めることができる。
【0131】
また、合理性、整合性の条件を充足して経済性の良好な修理作業を行うための見積りを、容易に算出できるシステムを提供することができる。
また、損傷の内容(種類)を容易かつ正確に特定する車両修理費見積システムを提供することができる。
【0132】
また、特定した損傷データに基づき、容易に修理費の見積もり、あるいは修理内容の指示を行うシステムを提供することができる。
さらに、専門知識を有しない者(例えば見積書等を受け取るユーザー)が、容易に見積もり内容の評価を行えるシステムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一本実施形態における車両修理見積りシステムのブロック図
【図2】実施形態において、表示装置に表示された修理車両の入力方向を指定する図
【図3】実施形態において、表示装置に表示された修理車両の損傷位置を指定する図
【図4】実施形態において、表示装置に表示された修理車両の損傷位置を指定する図
【図5】実施形態において、表示装置に損傷した部位が表示された状態を示す図
【図6】実施形態において、表示装置に標識データが表示された状態を示す図
【図7】実施形態において、表示装置に表示された部位に対して交換修理を指定した状態を示す図
【図8】実施形態において、表示装置に表示された修理車両の交換費用の総額を表示する図
【図9】実施形態において、部位に対して設定される区分ラインを説明するための図
【図10】実施形態において、表示装置に損傷した部位が表示された状態を示す図
【図11】実施形態において、表示装置に表示された部位に対して、損傷内容を指定した状態を示す図
【図12】実施形態において、表示装置に表示された部位に標識データにて損傷位置を指定した状態を示す図
【図13】実施形態において、表示装置に表示された部位に標識データにて損傷形状を指定した状態を示す図
【図14】実施形態において、表示装置に表示された部位の修正費用を中心に表した状態を示す図
【図15】実施形態において、表示装置に表示された部位の交換費用を中心に表した状態を示す図
【図16】実施形態における車両修理費見積システムの動作原理を示すフローチャート図
【図17】実施形態における車両修理費見積システムの動作原理を示すフローチャート図
【図18】実施形態における車両修理費見積システムの動作原理を示すフローチャート図
【図19】実施形態における車両修理費見積システムの区分データについて説明するための図
【図20】実施形態における車両修理費見積システムの区分データについて説明するための図
【図21】実施形態における車両修理費見積システムの区分データについて説明するための図
【図22】実施形態における車両修理費見積システムの区分データについて説明するための図
【図23】実施形態における車両修理費見積システムの区分データについて説明するための図
【図24】実施形態における車両修理費見積システムの区分データについて説明するための図
【図25】実施形態において、表示装置に表示された部位に標識データにて損傷形状を指定した状態を示す図
【符号の説明】
1 ・・・パーソナルコンピュータ
1a ・・・中央処理装置
1a1 ・・・制御装置
1a2 ・・・演算装置
1b ・・・主記憶装置
1b1 ・・・命令部
1b2 ・・・データ部
2 ・・・入出力インタフェース
3 ・・・補助記憶装置
4 ・・・入力装置
5 ・・・デジタルスチルカメラ
6 ・・・表示装置
7 ・・・印字装置
Claims (5)
- 修理対象車両の修理費を見積りするシステムにおいて、
前記修理対象車両の修理車両データを入力する入力装置と、
車両の部位毎に設定され、部位に隣接する隣接部位から所定距離までの隣接区域と、該隣接部位から所定距離以上の非隣接区域とに各部位を区域するとともに各区域に対応する修理条件を設定する区分データ、前記隣接区域及び前記非隣接区域を生み出すこととなった隣接部位を設定する隣接部位データ、各部位の画像データ、を有する車両属性データを記憶する記憶装置と、
各データを表示する表示装置と、
車両の損傷位置を指定する指定手段、前記指定手段により指定された前記損傷位置が、該損傷位置が属する部位の前記隣接区域と前記非隣接区域の少なくともどちらの区域に該当するかを判定する判定手段、前記判定手段により判定された前記損傷位置に該当する区域に対応する修理条件に基づき修理費を計算する見積手段を有し、前記入力装置により入力された修理車両データに対応する車両属性データを前記記憶装置から検索し、前記指定手段により指定された損傷位置が属する部位の画像データを前記表示装置に表示し、前記判定手段により判定された前記損傷位置に該当する区域に前記隣接区域が含まれる場合、前記判定手段により判定された前記損傷位置に該当する区域と、前記損傷位置が属している前記隣接区域の一部を生み出すことになった前記隣接部位の所定範囲を塗装作業範囲として設定し、前記指定手段により指定された損傷位置が属する部位の画像データと共に前記隣接部位の画像データを前記表示装置に表示する計算装置と、を備え、
前記表示装置によって表示された画像データに基づき車両修理費を見積もる、車両修理費見積システム。 - 前記記憶手段は、損傷の種類に対応した形状変更可能な複数の標識データを記憶し、
前記計算装置の前記指定手段は、前記表示装置に表示された車両属性データ上あるいは修理車両データ上にて指定される前記標識データに基づいて、損傷内容を特定することが可能である、
請求項1に記載の車両修理費見積システム。 - 前記計算装置は、前記指定手段に特定された損傷内容に基づいて、修理対象車両の修理内容を指示し、前記表示装置に表示された車両属性データ上、あるいは前記修理車両データ上に表示される前記標識データに基づいて、前記損傷位置の損傷面積を解析することが可能である、
請求項2に記載の車両見積システム。 - 前記記憶装置は、修理車両の過去の修理内容を履歴データとして記憶し、
前記計算装置の前記見積手段は、前記記憶装置が記憶した前記履歴データに基づき経年劣化により間もなく交換が必要な部品であることが判明した場合は、部品を交換するように選択し、車両修理費を計算することを特徴とする請求項1から3の何れか一項に記載の車両修理費見積システム。 - 前記記憶装置は、修理車両と同一車種の過去の修理内容を履歴データとして記憶し、
前記計算装置の前記見積手段は、前記計算装置の前記見積手段は、前記記憶装置が記憶した前記履歴データに基づき経年劣化により間もなく交換が必要な部品であることが判明した場合は、部品を交換するように選択し、車両修理費を計算することを特徴とする請求項1から3の何れか一項に記載の車両修理費見積システム。
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