JP4197102B2 - スラリー - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、粘弾性を有するスラリーに関するものであり、更に詳しくは、土木・建築材料、二次製品材料及び補修材料として使用される粉体を含有してなる水−粉体スラリーに、材料分離抵抗性及び施工性に優れた性状を与え、更にはスラリーの水中での散逸を防ぎ水質汚濁を防止出来ることのできるレオロジー改質剤と粉体を含有するスラリーに関する。
【0002】
【従来の技術】
一般に、水と粉体からなるスラリーにおいて粘性や弾性等のレオロジー物性を制御するには、水と粉体の比率を調節したり、pH調整剤などにより粒子の分散状態を変えたり、あるいは、吸水性ポリマーを添加して余剰水量を制御したりする等の技術が使われてきた。
【0003】
特に、水溶性高分子化合物をスラリー系に添加して高分子の絡み合いによる増粘作用を利用する技術は、安価に大きな増粘効果を得られるため、土木・建築分野を中心として幅広い用途で実用化されている。例えば、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース[特公平5−39901号]等のセルロース誘導体やポリ(エチレンオキサイド)[特開平11−189452号]の様な水溶性高分子化合物が、材料の分離抵抗性を高めるために、ペースト、モルタルや水中コンクリート及び高流動コンクリートなどに使用されている。
【0004】
しかしながら、水溶性高分子化合物を使用して効率的な増粘効果を得るためには、ある程度以上の分子量を設計する必要があり、実際に使用されている化合物は分子量が数十万以上のものがほとんどである。これら分子量の大きい水溶性高分子化合物は、水、粉体と一緒に添加し、時間をかけて混練しないと十分な粘性が発現しにくく、迅速に効果を得たい場合に課題がある。また、予め水溶液として使用すると、水溶液粘度が増大し添加操作や作業性が問題となり、現実的でない。また、水硬性粉体に水溶性高分子化合物を用いると、硬化遅延が起こる問題がある。さらには、これら水溶性高分子は共有結合によりポリマー化されているために、水溶液系において繰返しのせん断力により結合が劣化し、最終的には切断してしまう問題を抱えている。特に粉体を含有したスラリー中では、攪拌や圧送時において、粉体による強力な摩擦によって強いせん断力が水溶性高分子にかかるため、水溶液系よりも劣化による低分子量化が起り易く、目標の性能を発揮できなくなるといった課題もある。
【0005】
一般に、水溶性高分子がペースト、モルタル及びコンクリートに使用される場合は、粉体の比率が小さい配合(水粉体比30%以上)が多く、水粉体比が大きい配合になるほど経時的な粘性の安定性が低下し、ブリージング水が出て、材料分離が起る。
【0006】
更に、水系のスラリー系を水相と共存させたい場合、従来の技術ではスラリー系が水相に溶出し、初期のスラリー組成を維持できない場合があった。建築土木分野では、例えば、湖や海の中での打設を目的とするいわゆる水中コンクリートにおいて、水溶性高分子化合物の添加だけでは十分な水中での分離抵抗性が得られないので、特公平3−38224号のようにアルカリ金属硫酸塩が併用される。しかしながら、アルカリ金属塩はその添加量によってコンクリートの圧縮強度低下や著しい流動性低下を引き起こし、安定した品質の水中での分離抵抗性の高いコンクリートを製造することが困難となる。さらには、土木建築分野で最も多く使用されるセメント粉体は、水と接触するとpH11以上の強アルカリ性となると同時に、W/C=100%スラリーであってもイオン電導度10mS/cm以上の強電解質スラリーとなるために、水中でスラリーが逸散すると自然環境に与える影響も大きく、水質汚濁を引き起こす要因となっていた。また、地盤改良のために水粉体比の高いセメントペースト(いわゆるセメントミルク)を地中に注入するグラウト工法の場合、地下水が湧出した場合に、セメントミルクの組成が不安定になると同時に、上述した様に地中や周囲の河川等自然環境への負荷といった課題がある。更に、高分子化合物として共重合体を用いた場合には、スラリーの分散状態に影響を与え易いという問題もある。
【0007】
流動性を改善するために界面活性剤を用いる技術として、特開平7−166150号の建材用シックナー組合せ物がある。これは高分子化合物である非イオンセルロースエーテルの併用系であり、粘度自体は大きくできるがブリージング水や水中分離抵抗性を改善するには至っていない。
【0008】
また、水溶性高分子を添加し、高い材料分離抵抗性を付与したスラリーやコンクリートをポンプ圧送する場合に、水溶性高分子による粘性のためにポンプ圧送が出来なくなったり、所定の圧送速度が得られなくなるケースもあった。
【0009】
一方、単純な水溶液系の粘性に関する研究が報告〔表面 Vol.29, No.5(1991)61頁〕されている。これには、セチルトリメチルアンモニウムブロマイド水溶液にサリチル酸ナトリウム(又はサリチル酸)を添加した系の紐状ミセルの粘度挙動が記載されている。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、スラリーの水中への散逸を抑制する事で水質汚濁を防止でき、静的な材料分離抵抗性に優れると同時に良好なポンプ圧送や注入作業を可能にし、さらにはせん断力にも強い改質剤と粉体とを含有するスラリーを提供する事を課題とする。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、特定の性質を満たす異なる2種類の水溶性低分子化合物と粉体とを含有するスラリーを使用することで上記の課題を解決することを見出した。
【0012】
本発明の第1の態様は、第1の水溶性低分子化合物〔以下、化合物(A)という〕と、化合物(A)とは異なる第2の水溶性低分子化合物〔以下、化合物(B)という〕とを含有するスラリーレオロジー改質剤と、粉体と、水とを含有するスラリーであって、スラリーレオロジー改質剤が以下の特性1を満たすスラリーに関する。
<特性1>
化合物(A)の水溶液SA(20℃での粘度が100mPa・s以下のもの)と化合物(B)の水溶液SB(20℃での粘度が100mPa・s以下のもの)とを50/50の重量比で混合した水溶液の20℃における粘度が、混合前のいずれの水溶液の粘度よりも少なくとも2倍高くすることができる。
【0013】
ここで、水溶性低分子化合物とは、室温において、水中に、単分子又は会合体・ミセル・液晶等の構造体を形成した状態又はそれらの混在した状態で、水と相分離を生じない化合物である。相とは、マクロな大きさを持ち、温度、圧力等統計的な物理量が明確に定められる領域をいう(コロイド化学、第1巻、第1版、89〜90頁、1995年10月12日発行、東京化学同人)。
【0014】
また、化合物(A)の水溶液、化合物(B)の水溶液とは、これら化合物が溶解したもののほか、粘度100mPa・s以下を満たす限り、化合物(A)又は化合物(B)が会合体・ミセル・液晶等の構造体を形成した状態又はそれらの混在した状態で存在するものも含む。すなわち、20℃の粘度が100mPa・s以下となるように化合物(A)又は化合物(B)を含有する水性組成物である。
【0015】
本発明の第2の態様は、上記化合物(A)と化合物(B)とを含有するスラリーレオロジー改質剤と、粉体と、水とを含有するスラリーであって、化合物(A)と化合物(B)が網目状会合体を形成しているスラリーに関する。
【0016】
本発明の第3の態様は、上記化合物(A)と化合物(B)とを含有するスラリーレオロジー改質剤と、粉体と、水とを含有するスラリーであって、20℃の該スラリー30mLを、500mLビーカー中の500mlの20℃の水に水面から3cmの位置から15秒±5秒で投入し、10秒間静置した後、攪拌羽根の下端面からビーカーの内部底面までの距離を1.5cmに固定したメカニカルミキサー(攪拌羽根タイプ:アンカー型、幅×高さ=68mm×68mm)で、60r.p.m.で10秒間攪拌し、10秒間静置した後、水面から深さ4.5cmの位置で採取した水中のSS(浮遊粒子)濃度が1000mg/L以下であるスラリーに関する。
【0017】
本発明の第4の態様は、上記化合物(A)と化合物(B)とを含有するスラリーレオロジー改質剤と、粉体と、水とを含有するスラリーであって、以下の特性2を満足するスラリーに関する。
<特性2>
20℃のスラリーについて、コーンプレート(直径50mm、角度0.0398rad、GAP0.0508mm)の角速度ωが1〜10rad/sの範囲で測定して得られた、貯蔵弾性率の最小値G’minと最大値G’maxの比率G’min/G’maxが0.4〜1である。
【0018】
特に、本発明のスラリーにおける化合物(A)及び化合物(B)の組合わせが、(1)両性界面活性剤から選ばれる化合物(A)及びアニオン性界面活性剤から選ばれる化合物(B)の組合わせ、(2)カチオン性界面活性剤から選ばれる化合物(A)及びアニオン性芳香族化合物から選ばれる化合物(B)の組合わせ、(3)カチオン性界面活性剤から選ばれる化合物(A)及び臭化化合物から選ばれる化合物(B)の組合わせ、から選択される場合には、化合物(A)と化合物(B)との有効分のモル比が好ましくは化合物(A)/化合物(B)=1/20〜20/1になるように、また、化合物(A)と化合物(B)との有効分の合計がスラリーの水相中の有効分濃度で好ましくは0.01〜20重量%になるように、スラリーに添加するスラリーの製造方法が提供される。
【0019】
また、本発明は、化合物(A)と、化合物(B)と、水硬性粉体と、水とを含有するスラリーに関する。
【0020】
本発明に係るスラリーは、化合物(A)又は化合物(B)それぞれ単独の水溶液又はスラリーでは、水中に、単分子又は会合体・ミセル・液晶等の構造体を形成した状態及びそれらの混在した状態で水溶液の粘性が低く、化合物(A)の水溶液又はスラリーと化合物(B)の水溶液又はスラリーを混合することで、混合液の粘度が大きく増大できる点、網目状会合体を形成する点、スラリーを水中に投入した時のSS濃度が特定の範囲内である点又は特定の貯蔵弾性率比を持つ点に特徴がある。従って、本発明に係るスラリーは、化合物(A)及び化合物(B)を組合わせたときに特定の粘性発現、網目状会合体の形成、スラリーを水中に投入した時の特定のSS濃度又は特定の貯蔵弾性率比を有することが要件であり、化合物(A)又は化合物(B)は各々単独では特定することができず、「化合物(A)及び化合物(B)とを混合することによって上記の特性を発現する」ことでのみ特定できる。化合物(A)及び化合物(B)の組合わせを特定した場合、どちらを化合物(A)としてもよい。以下では、どちらかを化合物(A)とした場合、他方を化合物(B)として便宜上区別する。
【0021】
本発明に係るスラリーの必須成分である化合物(A)及び化合物(B)のそれぞれの水溶液は、両者を混合した水溶液又はスラリーよりも粘性が低く、これら化合物を含有するスラリーレオロジー改質剤を使用することで、スラリー系への添加操作性は極めて良好なものになる。
【0022】
この化合物(A)と化合物(B)の組み合わせに係るスラリーを添加すると、スラリーの水相中にいわゆる低分子化合物の高次構造体である紐状ミセルを形成し、さらにこの紐状ミセルが会合体を形成し、スラリー全体の粘性が増大すると考えられる。また、この紐状ミセルのレオロジー特性は高い粘弾性を有していることが挙げられ、スラリー中における水相で紐状ミセル会合体同士が絡み合い3次元の網目状会合体を形成していると考えられる。この特徴により、本発明のスラリー中の粉体粒子はこの粘弾性の高い紐状ミセルによる網目状の会合体に覆われているため、使用部位に水が存在する場合でも希釈されずに投入、充填できるため、例えば従来のセメントミルクやモルタルと比べ、水中でスラリーが拡散する量は遙かに少なく、施工箇所周辺、地下水、河川下流における水質汚染および排水設備の負担を減少することができる。
また、スラリー中で分子会合により網目状会合体を形成するため、スラリーに高い粘性を付与することができる。一般の水溶性高分子が共有結合で繋がっているため、撹拌等のせん断力を受けると結合が劣化し、最終的には結合が切れて低分子化してしまうのに対して、網目状会合体は分子間力による分子会合で大きな構造体を形成しているため、せん断力を受けて会合体が切断されても容易に再結合、再融合し、もとの形状の会合体を再構築すると考えられる。この特長は、粉体粒子や砂、砂利等が存在するスラリー系には特に有効である。例えば、粉体粒子や砂、砂利等の均一混合、内部摩擦が発生する充填、注入およびポンプ圧送時には会合体が壊れて粘性が顕著に低下するため、上述の作業を容易にすると共に、これら作業が終了し応力が解かれると再び会合体が形成されるので適度な粘性を取り戻し、材料分離抵抗性をスラリーに付与することができる。
【0023】
【発明の実施の形態】
本発明の第1の態様のスラリーに用いられる化合物(A)と化合物(B)は、化合物(A)の粘度100mPa・s以下の水溶液SAと、化合物(B)の粘度100mPa・s以下の水溶液SBとを混合すると、その粘度が混合前のいずれの水溶液の粘度よりも少なくとも2倍高くすることができる性質を有することが必要で、好ましくは少なくとも5倍、より好ましくは少なくとも10倍、更に好ましくは少なくとも100倍、特に好ましくは少なくとも500倍高くすることができることである。
【0024】
また、スラリーのレオロジーを改質させる観点から、水溶液SAと水溶液SBの少なくとも何れか一方の水溶液に粉体を含有させたスラリーを調製し、該スラリーに、他方の水溶液又は該水溶液に粉体を含有させたスラリーを混合した場合に、混合により得られるスラリー(以下、標準スラリーという)の粘度が、混合前のいずれの水溶液及びスラリーの粘度よりも少なくとも2倍高くすることができる性質を有することが好ましく、好ましくは少なくとも5倍、より好ましくは少なくとも10倍、更に好ましくは少なくとも100倍、特に好ましくは少なくとも500倍高くすることができることである。なお、標準スラリーが本発明のスラリーであってもよい。
【0025】
ここで、水溶液の粘度は、前記特性1の評価においては20℃の条件でB型粘度計(Cローター[No.表記の場合はNo.3ローター]、1.5r.p.mから12r.p.m)で測定されたものをいう。この場合、前記の粘度挙動は、1.5r.p.m.から12r.p.m.の回転数の何れかで発現されればよい。ただし、標準スラリーを調製する場合の水溶液やスラリーや標準スラリーについては、20℃の条件でビスコテスター(ローター回転数62.5rpm、試料の粘度に応じて30〜300mPa・sは3号ローター、300〜15000mPa・sは1号ローター及び15000〜400000mP・sは2号ローターを使用)で測定されたものをいう。ビスコテスターで測定した粘度が30mPa・s未満の場合は、B型粘度計(TOKIMEC Inc.、VISCOMETER MODEL BM、30r.p.m.、No.2ロータ)で粘度を測定する。以下、特記しない限り、粘度はこの条件で測定されたものをいう。また、特性1の評価においては混合はそれぞれの水溶液同士を、50/50の重量比で混合する。標準スラリーの場合も、水溶液又はスラリーを、50/50の重量比で混合する。更に、本発明の化合物(A)及び化合物(B)をスラリーに添加するときの操作性の観点から、混合前の化合物(A)及び化合物(B)の水溶液の20℃における粘度が、それぞれ好ましくは50mPa・s以下、更に好ましくは10mPa・s以下で、両液を混合したときに同様の増粘効果を発現することが望ましい。
【0026】
化合物(A)及び化合物(B)の水溶液の20℃における粘度と両者を混合したときの粘度、更に標準スラリーの粘度が、上記要件を満たしている範囲で、化合物(A)及び化合物(B)の濃度を決めることができ、化合物(A)及び化合物(B)を特定した場合に好ましい範囲を決めることができるが、スラリーに添加する場合の濃度範囲を広く選択できることを考慮して、それぞれが、0.01〜50重量%の範囲で濃度を決めることができる化合物(A)及び化合物(B)を選ぶことが好ましい。
【0027】
本発明の化合物(A)と化合物(B)は、イオン強度の高いスラリーでも良好なレオロジー特性を付与させるため、水溶液SAと水溶液SBとを混合した水溶液又は標準スラリー又は本発明のスラリーが、20℃における電導度が、0.1〜80mS/cm、好ましくは0.1〜60mS/cm、特に好ましくは1〜40mS/cmである場合にも、上記の粘度挙動を示すことが望まれる。
【0028】
本発明の化合物(A)と化合物(B)は、イオン強度の高いスラリーでも良好なレオロジー特性を付与させるため、水溶液SAと水溶液SBを混合した水溶液又は標準スラリー又は本発明のスラリーが、化合物(A)、化合物(B)とは異なる少なくとも1種の化合物を含有し、且つ20℃における電導度が、0.1〜80mS/cm、好ましくは0.1〜60mS/cm、特に好ましくは1〜40mS/cmである場合にも、上記の粘度挙動を示すことが望まれる。このような化合物としては電解質が挙げられ、電離するイオンとしてカチオンでは例えばカリウムイオン、ナトリウムイオン、鉄イオン、アルミニウムイオン等が、アニオンでは例えばヒドロキシイオン、硫酸イオン、クロルイオン等が挙げられる。
【0029】
本発明の第2の態様は、化合物(A)と化合物(B)と粉体と水とを含有するスラリー中で、化合物(A)と化合物(B)とが網目状会合体を形成する事が必要である。ここでいう網目状会合体には、三次元的な網目構造、ネット又はネットワーク構造、スポンジ(海綿)状構造、ファイバー(繊維)状構造、、分岐構造等が含まれる。この網目状会合体は、走査型電子顕微鏡下で決定され、図1に見られるような紐状の会合体が絡まって網目を形成しているものである。網目を形成する紐状会合体の交点間の長さは0.01〜100μmが好ましく、特に0.05〜10μmが好ましい、また網目状会合体を形成している紐状の会合体の直径は0.01〜2μm、特に0.05〜0.5μmが好ましい。走査型電子顕微鏡での観察は、化合物(A)と化合物(B)と粉体とを含有するスラリーを瞬間凍結したものを観察する。
【0030】
第2の態様では、スラリーの水相〔水と化合物(A)と化合物(B)の合計、水の量は仕込み量とする〕中、化合物(A)と化合物(B)の有効分の合計が0.001〜30重量%であることが好ましく、更に0.01〜15重量%、特に0.1〜10重量%であることが好ましい。この合計中、化合物(A)と化合物(B)の有効分の重量比は、(A)/(B)=5/95〜95/5であることが好ましく、20/80〜80/20がより好ましい。本発明の第2の態様において、化合物(A)及び化合物(B)は、前記第1の態様の化合物(A)及び化合物(B)を用いることができる。また、粉体の含有量はスラリー中に0.01〜80重量%であることが好ましく、特に25〜70重量%であることが好ましい。
【0031】
走査型電子顕微鏡での観察では、0.01〜100μmの物体が確認できる拡大倍率から選択することが好ましく、具体的には100〜10000倍が好適である。交点間の長さ、直径は観察画像の写真撮影(又は画像のハードコピー)を行い、写真上の網目状会合体を形成する紐状に見える部分の交点間の長さを、標準スケールを用いて測定する。直径は、該紐状に見える部分の長手方向に直交する方向(幅)の長さを、標準スケールを用いて測定したものとする。
【0032】
本発明の第3の態様では、化合物(A)と化合物(B)と粉体と水とを含有するスラリーを水中に投入した時にスラリーが水中に希散しない事が必要である。希散の度合いの測定方法は次の様にして行う。
【0033】
20℃のスラリー30mLを、スラリー調製後1分以内に、500mLビーカー(直径85mm、高さ120mm)中の500mlの20℃の水に水面から3cmの位置から15秒±5秒で投入し、10秒間静置した後、攪拌羽根の下端面からビーカーの内部底面までの距離を1.5cmに固定したメカニカルミキサー(新東科学株式会社製HEIDON BL600、攪拌羽根タイプ:アンカー型、幅×高さ=68mm×68mm)で、60r.p.m.で10秒間攪拌し、10秒間静置した後、水面から深さ4.5cmの位置で採取した水中のSS(浮遊粒子)濃度を測定する。SS濃度は1000mg/L以下であり、500mg/L以下が好ましく、350mg/L以下が特に好ましい。なお、スラリーの調製は2分以内に行う。また、採取した水中のSS濃度の具体的な測定方法は、後述の実施例に示した。また、ビーカーに収容された撹拌羽根の概略図を図2に示した。図2中、1は撹拌羽根、2は500mlビーカーであり、撹拌羽根の下端面1’とビーカーの内部底面2’までの距離が15mmである。
【0034】
第3の態様では、スラリーの水相〔水と化合物(A)と化合物(B)の合計、水の量は仕込み量とする〕中、化合物(A)と化合物(B)の有効分の合計の比率が0.001〜30重量%であることが好ましく、更に0.01〜15重量%、特に0.1〜10重量%であることが好ましい。この合計中、化合物(A)と化合物(B)の有効分の重量比は、(A)/(B)=5/95〜95/5であることが好ましく、20/80〜80/20がより好ましい。本発明の第3の態様において、化合物(A)及び化合物(B)は、前記第1の態様の化合物(A)及び化合物(B)を用いることができる。また、粉体の含有量はスラリー中で0.01〜80重量%であることが好ましく、特に25〜70重量%が好ましい。
【0035】
また、第3の態様では、上記により採取した水は、上記SS濃度を満たした上で、更に濁度が30%以下、更に6%以下であることが好ましい。濁度は、採取した水を採取後1分以内に濁度計〔測色色差計(Model ND-1001DP、日本電色工業株式会社製、吸光セル長10mm、12V50Wハロゲンランプ)〕で測定することで得られる。濁度は、SS濃度と共に希散の指標にすることができる。
【0036】
本発明の第4の態様は、化合物(A)と化合物(B)と粉体と水とを含有するスラリーが以下のレオロジー特性を有することが必要である。このレオロジー特性は、20℃のスラリーについて、ARES粘弾性測定装置(レオメトリック・サイエンティフィック製)でコーンプレート(直径50mm、角度0.0398rad、GAP0.0508mm)を用い、角速度ωが1〜10rad/sの範囲で貯蔵弾性率G’を測定し、そのωの範囲で得られるG’の最小値G'minと最大値G'maxの比G'min/G'maxが0.4〜1の範囲である事である。G'min/G'max=0.6〜1がより好ましく、0.65〜1が特に好ましい。また、G’minは4〜10万、更に40〜5万、特に400〜1万の範囲にあることが好ましく、G’maxは10〜10万、更に100〜5万、特に1000〜1万の範囲にあることが好ましい。
【0037】
第4の態様では、スラリーの水相〔水と化合物(A)と化合物(B)の合計、水の量は仕込み量とする〕中、化合物(A)と化合物(B)の有効分の合計が0.001〜30重量%であることが好ましく、更に0.01〜15重量%、特に0.1〜10重量%であることが好ましい。この合計中、化合物(A)と化合物(B)の有効分の重量比は、(A)/(B)=5/95〜95/5であることが好ましく、20/80〜80/20がより好ましい。本発明の第4の態様において、化合物(A)及び化合物(B)は、前記第1の態様の化合物(A)及び化合物(B)を用いることができる。また、粉体の含有量はスラリー中で0.01〜80重量%であることが好ましく、特に25〜70重量%が好ましい。
【0038】
本発明の第1〜4の態様の化合物(A)及び化合物(B)は、本発明で規定する挙動を満たすものであれば、どのようなものを組み合わせてもよいが、作業性及びスラリー系の分散性の安定性の観点から、化合物(A)及び化合物(B)は、それぞれ分子量(無機化合物の場合は式量)が1000以下、好ましくは700以下、更に好ましくは500以下、また重合体の場合は重量平均分子量(例えば、ゲルーパーミエーションクロマトグラフィー法/ポリエチレンオキシド換算)が500未満、好ましくは400以下、更に好ましくは300以下であることが望まれる。また、化合物(A)の水溶液又はスラリーと化合物(B)の水溶液又はスラリーとのスラリーも室温において、水中に、単分子又は会合体・ミセル・液晶等の構造体を形成した状態及びそれらの混在した状態で、水と相分離しないことが好ましい。
【0039】
本発明の第1〜4の態様のスラリーに含有される粉体は、無機粉体又は有機粉体が使用でき、有機粉体の場合は分子量が1000以下、好ましくは700以下、更に好ましくは500以下、また重合体の場合は重量平均分子量(例えば、ゲルーパーミエーションクロマトグラフィー法/ポリエチレンオキシド換算)が500未満、好ましくは400以下、更に好ましくは300以下であることが望まれる。また、これらのうち、無機粉体であることが好ましい。
【0040】
本発明のスラリーは、第1の態様の要件を満たすものであって、更に第2〜4の態様で規定する要件から選ばれる1種以上の要件を満たすものが好ましく、更に2種以上、特に3種の要件を満たすものが好ましい。
【0041】
本発明に係るスラリーは、化合物(A)と化合物(B)の水溶液又はスラリーが前記した第1〜4の態様の挙動を示すものであれば、どのようなものを組み合わせてもよいが、好ましい例として、化合物(A)及び化合物(B)の組合わせが、(1)両性界面活性剤から選ばれる化合物(A)及びアニオン性界面活性剤から選ばれる化合物(B)の組合わせ、(2)カチオン性界面活性剤から選ばれる化合物(A)及びアニオン性芳香族化合物から選ばれる化合物(B)の組合わせ、(3)カチオン性界面活性剤から選ばれる化合物(A)及び臭化化合物から選ばれる化合物(B)の組合わせ、から選ばれるものが挙げられる。
【0042】
両性界面活性剤から選ばれるものとして、ベタイン型両性界面活性剤が好ましく、ドデカン酸アミドプロピルベタイン・オクタデカン酸アミドプロピルベタイン・ドデシルジメチルアミノ酢酸ベタイン等が挙げられ、粘度発現の観点からドデカン酸アミドプロピルベタインが好ましい。
【0043】
アニオン性界面活性剤から選ばれるものとして、エチレンオキサイド付加型アルキル硫酸エステル塩型界面活性剤が好ましく、POE(3)ドデシルエーテル硫酸エステル塩、POE(2)ドデシルエーテル硫酸エステル塩、POE(4)ドデシルエーテル硫酸エステル塩等が挙げられ、塩はナトリウム塩等の金属塩、トリエタノールアミン塩等のアルカノールアミン塩等が挙げられる。
【0044】
これらの中でも、スラリーの水相中の固形分(有効分)濃度が20重量%以下でも効果を発現するドデカン酸アミドプロピルベタインとPOE(3)ドデシルエーテル硫酸エステルトリエタノールアミンもしくはPOE(3)ドデシルエーテル硫酸エステルナトリウムの組合わせが好ましい。なお、POEはポリオキシエチレンの略であり、( )内はエチレンオキサイド平均付加モル数である(以下同様)。
【0045】
カチオン性界面活性剤から選ばれるものとして、4級塩型カチオン性界面活性剤が好ましく、4級塩型のカチオン性界面活性剤としては、構造中に、10から26個の炭素原子を含む飽和又は不飽和の直鎖又は分岐鎖アルキル基を、少なくとも1つ有しているものが好ましい。例えば、アルキル(炭素数10〜26)トリメチルアンモニウム塩、アルキル(炭素数10〜26)ピリジニウム塩、アルキル(炭素数10〜26)イミダゾリニウム塩、アルキル(炭素数10〜26)ジメチルベンジルアンモニウム塩等が挙げられ、具体的には、ヘキサデシルトリメチルアンモニウムクロライド、ヘキサデシルトリメチルアンモニウムブロマイド、オクタデシルトリメチルアンモニウムクロライド、オクタデシルトリメチルアンモニウムブロマイド、タロートリメチルアンモニウムクロライド、タロートリメチルアンモニウムブロマイド、水素化タロートリメチルアンモニウムクロライド、水素化タロートリメチルアンモニウムブロマイド、ヘキサデシルエチルジメチルアンモニウムクロライド、オクタデシルエチルジメチルアンモニウムクロライド、ヘキサデシルプロピルジメチルアンモニウムクロライド、ヘキサデシルピリジニウムクロライド、1,1−ジメチル−2−ヘキサデシルイミダゾリニウムクロライド、ヘキサデシルジメチルベンジルアンモニウムクロライド等が挙げられ、これらを2種以上併用してもよい。水溶性と増粘効果の観点から、具体的には、ヘキサデシルトリメチルアンモニウムクロライド(例えば花王(株)製コータミン60W)、オクタデシルトリメチルアンモニウムクロライド、ヘキサデシルピリジニウムクロライド等が好ましい。また、増粘効果の温度安定性の観点から、化合物(A)又は化合物(B)の一方として、上記のアルキル基の炭素数の異なるカチオン性界面活性剤を2種類以上併用することが好ましい。
【0046】
特に、本発明のスラリーをコンクリート等に適用する場合、塩害による鉄筋の腐食やコンクリート劣化を防止する観点から、塩素等のハロゲンを含まない4級アンモニウム塩を用いることが好ましい。
【0047】
塩素等のハロゲンを含まない4級塩として、アンモニウム塩やイミダゾリニウム塩等が挙げられ、具体的にはヘキサデシルトリメチルアンモニウムメトサルフェート、ヘキサデシルジメチルエチルアンモニウムエトサルフェート、オクタデシルトリメチルアンモニウムメトサルフェート、オクタデシルジメチルエチルアンモニウムエトサルフェート、タロートリメチルアンモニウムメトサルフェート、タロージメチルエチルアンモニウムエトサルフェート、1,1−ジメチル−2−ヘキサデシルイミダゾリニウムメトサルフェート、ヘキサデシルジメチルヒドロキシエチルアンモニウムアセテート、オクタデシルジメチルヒドロキシエチルアンモニウムアセテート、ヘキサデシルジメチルヒドロキシエチルアンモニウムプロピオネート、オクタデシルジメチルヒドロキシエチルアンモニウムプロピオネート、タロージメチルヒドロキシエチルアンモニウムアセテート、タロージメチルヒドロキシエチルアンモニウムプロピオネート、等が挙げられる。塩素等のハロゲンを含まない4級アンモニウム塩は、例えば、ジメチル硫酸、ジエチル硫酸で3級アミンを4級化することで得ることができる。
【0048】
アニオン性芳香族化合物から選ばれるものとして、芳香環を有するカルボン酸及びその塩、ホスホン酸及びその塩、スルホン酸及びその塩が挙げられ、具体的には、サリチル酸、p−トルエンスルホン酸、スルホサリチル酸、安息香酸、m−スルホ安息香酸、p−スルホ安息香酸、4−スルホフタル酸、5−スルホイソフタル酸、p−フェノールスルホン酸、m−キシレン−4−スルホン酸、クメンスルホン酸、メチルサリチル酸、スチレンスルホン酸、クロロ安息香酸等であり、これらは塩を形成していていも良く、これらを2種以上併用してもよい。ただし、重合体である場合は、重量平均分子量(例えば、ゲルーパーミエーションクロマトグラフィー法/ポリエチレンオキシド換算)500未満であることが好ましい。
【0049】
臭化化合物から選ばれるものとして、無機塩が好ましく、NaBr、KBr、HBr等が挙げられる。
【0050】
本発明においては、化合物(A)と化合物(B)とが会合体を形成し易いものが、それぞれ濃厚な水溶液でも粘性が低く、また、スラリーの水相中の化合物(A)と化合物(B)の有効分濃度が低くても優れた効果を発現し、また、それぞれが濃厚な水溶液でも粘性が低く、添加時の作業性からも好ましい。本発明では、化合物(A)と化合物(B)の有効分濃度が10重量%以下の極めて低い添加量でスラリーの増粘を達成することができ、更に、イオン強度の高いスラリー系においても、同様の効果を発現することができ、スラリー系によっては、特に水相と接触した場合の材料分離抵抗性が非常に安定するという、従来の増粘剤の使用では得ることのできなかったレオロジー特性を発現する点で、化合物(A)が4級アンモニウム塩型カチオン性界面活性剤から選ばれるものであり、化合物(B)がアニオン性芳香族化合物又は臭化化合物から選ばれるものである組合わせが特に好ましい。これは特に、水硬性粉体を含有するスラリーで有用である。
【0051】
また、化合物(A)がアルキル(炭素数10〜26)トリメチルアンモニウム塩であり、化合物(B)が芳香環を有するスルホン酸塩である組み合わせが特に好ましく、スラリーの水相中の有効分濃度が5重量%以下でも効果を発現する。特に、水硬性粉体のスラリーに用いる場合は、これらの中でも硬化遅延を起こさない観点から、化合物(B)としてはトルエンスルホン酸、キシレンスルホン酸、クメンスルホン酸、スチレンスルホン酸又はこれらの塩が好ましく、特に、p−トルエンスルホン酸又はその塩が好ましい。
【0052】
本発明に係るスラリーとして、化合物(A)と化合物(B)と粉体とを併用することで特徴的なスラリーレオロジー特性が得られるのは、以下の理由によると考えられる。
【0053】
化合物(A)と化合物(B)とを混合した時に、水相中に短時間で会合体を形成し、効率的に粘性を付与でき、更に、この会合体形成は、スラリー中で均一に形成されることにより余剰水分を完全に補足するため、経時的なブリージング水を抑制することにより、単位水量の多いスラリー配合でも材料分離抵抗性に優れた性状が得られるものと考えられる。
【0054】
化合物(A)と化合物(B)は、低分子化合物であってもスラリー中で分子会合を起こす事で高分子状の大きな網目状会合体を形成するため、スラリーに高い粘性と分離抵抗性を付与することができると考えられる。
【0055】
なかでも、4級アンモニウム塩型カチオン性界面活性剤と、アニオン性芳香族化合物又は臭化化合物から選ばれる化合物との組み合わせに係る本発明のスラリーレオロジー改質剤を使用すると、スラリーの水相中に細かく分岐した会合体を形成すると考えられる。
【0056】
また、一般の水溶性高分子が共有結合で繋がっているため、繰返しせん断力を受けると結合が劣化し、最終的には結合が切れて低分子化してしまうのに対して、かかる会合体は、水相が強い応力を受けると、会合体構造が破壊されるので、過度の応力が抑制され、応力が減少すると、再び会合体が形成されると考えられる。これにより、スラリーに適度な粘性を付与するという特徴を有する。
【0057】
かかる特徴を生かせば、粉体粒子や砂、砂利等が存在するスラリー系の場合には特に有効であり、スラリーの撹拌、注入、圧送で受ける強いせん断に対しても、せん断から解き放たれると会合体が再形成を起こすため、高いせん断抵抗性をスラリーに付与出来る。例えば、過度の内部摩擦が発生することを抑制しつつスラリーの製造や輸送を行い、製造あるいは輸送後のスラリーに適度な粘性を付与することができる。
【0058】
さらに、化合物(A)及び化合物(B)を含有するスラリー中の粉体粒子は粘弾性の高い網目状会合体に覆われているため、使用部位に水が存在する場合でも希釈されずに投入、充填でき水質汚染を防止できる。
【0059】
化合物(A)として両性界面活性剤から選ばれるものを、化合物(B)としてアニオン性界面活性剤から選ばれるものを使用する場合や、化合物(A)としてカチオン性界面活性剤から選ばれるものを、化合物(B)としてアニオン性芳香族化合物から選ばれるもの又は臭化化合物から選ばれるものを使用する場合は、各化合物単独の濃厚な水溶液でも粘性が低いので、スラリー系への添加前の水溶液の有効分濃度を好ましくは10重量%以上、より好ましくは20重量%以上、更に好ましくは30重量%以上、最も好ましくは40重量%以上にしておくことにより、貯蔵タンクを小型化できる等の生産性を向上することができる。
【0060】
化合物(A)と化合物(B)とをスラリーに添加すればレオロジーが改質されたスラリーが得られるので、本発明に係るスラリーの調製方法は特に限定されないが、以下に、本発明のスラリーの好ましい調製方法を説明する。
【0061】
本発明に係る化合物(A)及び化合物(B)がそれぞれ極めて低粘度の水溶液の状態のものでも、混合すると大きな粘性を発現するので、操作性の観点から、スラリー系に添加するときに、それぞれが、使用する温度において100mPa・s以下、好ましくは50mPa・s以下、より好ましくは10mPa・s以下の粘度の水溶液の状態で使用することが好ましい。
【0062】
本発明では、20℃での粘度が100mPa・s以下の水溶液を50/50の重量比で混合した水溶液の20℃における粘度が、混合前のいずれの水溶液の粘度よりも少なくとも2倍高くすることができる2種の化合物、網目状会合体を形成する2種の化合物、スラリーを水中に投入した時のSS濃度が特定の範囲内である2種の化合物又はスラリーが特定の貯蔵弾性率比を持つ2種の化合物を、スラリーのレオロジー改質剤として使用する。かかる2種の化合物を化合物(A)、化合物(B)とすると、本発明では、化合物(A)と化合物(B)とをスラリーに添加するスラリーのレオロジー改質方法が提供される。その場合、化合物(A)と化合物(B)のいずれか一方の化合物をスラリーに添加し、該スラリーに他方の化合物を添加することができる。
【0063】
また、化合物(A)又は化合物(B)はスラリー中に任意の順番で混合できるので、一方の化合物をスラリー中に適当な段階で添加し、粘性が必要となる段階で該スラリーに他方を添加するのが作業性の観点から好ましい。また、添加するときの化合物(A)又は化合物(B)の状態は、液状でも粉末状でもよい。
【0064】
本発明のスラリーを、カチオン性界面活性剤から選ばれるものとアニオン性芳香族化合物又は臭化化合物から選ばれるものの組合わせで、セメントなどの水硬性粉体を使用したスラリー系に使用する場合には、セメント粒子の水和反応を制御でき、スラリー攪拌時の巻込み気泡を抑制する観点から、アニオン性芳香族化合物又は臭化化合物をスラリー中に先に添加し、後からカチオン性界面活性剤を添加するのが好適である。
【0065】
本発明のスラリーは、化合物(A)の水溶液と化合物(B)の水溶液を50/50の重量比で混合したときの特定の粘性発現、網目状会合体の形成、スラリーを水中に投入した時のSS濃度又は特定の貯蔵弾性率比により特定できるが、さらに化合物(A)及び化合物(B)のそれぞれが、天然物由来(例えば牛脂由来の化合物)等の混合物ではなく、単一の化合物である場合は、化合物(A)と化合物(B)との会合体を効率良く形成させる観点から、モル比を規定して混合することが好ましい。
【0066】
本発明のスラリーにおいては、化合物(A)と化合物(B)のモル比(有効分モル比)は、化合物(A)と化合物(B)の組み合わせによって増粘効果の高い領域が異なり、目的とする増粘の程度に応じて適宜決めればよいが、特に化合物(A)及び化合物(B)の組合わせが、(1)両性界面活性剤から選ばれる化合物(A)及びアニオン性界面活性剤から選ばれる化合物(B)の組合わせ、(2)カチオン性界面活性剤から選ばれる化合物(A)及びアニオン性芳香族化合物から選ばれる化合物(B)の組合わせ、(3)カチオン性界面活性剤から選ばれる化合物(A)及び臭化化合物から選ばれる化合物(B)の組合わせ、から選ばれる場合は、得られる粘度と会合体の形状の観点から、化合物(A)/化合物(B)=1/20〜20/1、好ましくは1/20〜4/1、より好ましくは1/3〜2/1、特に好ましくは1/1〜2/3が適している。
【0067】
更に、本発明のスラリーは、イオン強度の高いスラリー系でも良好なレオロジー特性を維持できることから、水相の電導度が、0.01〜80mS/cmの範囲、好ましくは0.1〜60mS/cm、特に好ましくは1〜40mS/cmであるスラリーであることが好ましい。特に、粉体としてセメント等の水硬性粉体を用いた水相の電導度の高いスラリーであることが好ましい。
【0068】
本発明における化合物(A)及び化合物(B)は、水溶液又は粉末のどちらの状態でも使用してよく、特に、本発明のスラリーではどちらの形態を用いても良好なスラリーレオロジー特性を付与することができる。化合物(A)及び化合物(B)とを予め粉末状にして使用すれば、プレミクス用途等における作業性が良好となる。ただし、スラリーを所望の粘性に調整できるようにすることを考慮すると、化合物(A)と化合物(B)とをスラリーの構成粉体であるフィラー等に予め表面処理しない使用方法が好ましい。
【0069】
本発明のスラリーは、水粉体比30〜300%のスラリーに好ましく適用できる。このスラリーに含有される粉体としては、水和反応により硬化する物性を有する水硬性粉体を用いることができる。例えば普通ポルトランドセメント、中庸熱セメント、早強セメント、超早強セメント、高ビーライト含有セメント、高炉セメント、フライアッシュセメント、アルミナセメント、シリカフュームセメントなどの水硬性粉体セメントや石膏が挙げられる。また、フィラーも用いることができ、例えば炭酸カルシウム、フライアッシュ、高炉スラグ、シリカフューム、ベントナイト、クレー(含水珪酸アルミニウムを主成分とする天然鉱物:カオリナイト、ハロサイト等)が挙げられる。これらの粉体は単独でも、混合されたものでもよい。更に、必要に応じてこれらの粉体に骨材として砂や砂利、及びこれらの混合物が添加されてもよい。また、酸化チタン等の上記以外の無機酸化物系粉体のスラリーや土に適用することもできる。
【0070】
更に、本発明における化合物(A)及び/又は化合物(B)と水硬性粉体とをプレミクスし、本発明のスラリーを調製する為の水硬性粉体組成物を調製することができる。
【0071】
また、本発明のスラリーにおいては、化合物(A)と化合物(B)と粉体のスラリー中の有効分濃度は、目的とする増粘の程度に応じて適宜決めればよいが、化合物(A)と化合物(B)を、予め調製されたスラリーに添加する、スラリー製造時に添加する、等の方法により、本発明のスラリーが得られる。特に、化合物(A)又は化合物(B)の一方の化合物と粉体、例えばセメント等の水硬性粉体と水とを含むスラリーを調製し、次いで該スラリーに前記化合物(A)又は化合物(B)の他方の化合物を添加する方法は、作業性から好ましい。また、化合物(A)及び化合物(B)の組合わせが、(1)両性界面活性剤から選ばれる化合物(A)及びアニオン性界面活性剤から選ばれる化合物(B)の組合わせ、(2)カチオン性界面活性剤から選ばれる化合物(A)及びアニオン性芳香族化合物から選ばれる化合物(B)の組合わせ、(3)カチオン性界面活性剤から選ばれる化合物(A)及び臭化化合物から選ばれる化合物(B)の組合わせ、から選択される場合には、化合物(A)と化合物(B)との有効分の合計がスラリーの水相中の有効分濃度で0.01〜20重量%、更に0.1〜15重量%、より更に0.1〜10重量%、特に0.3〜10重量%になるように用いることが好ましい。
【0072】
本発明のスラリーは分散剤を含有しても良い。分散剤は、減水剤としてリグニンスルホン酸塩及びその誘導体、オキシカルボン酸塩、ポリオール誘導体、高性能減水剤及び高性能AE減水剤として、ナフタレン系(花王(株)製:マイテイ150)、メラミン系(花王(株)製:マイテイ150V−2)、ポリカルボン酸系(花王(株)製:マイテイ3000、NMB社製:レオビルドSP、日本触媒社製:アクアロックFC600、アクアロックFC900)、アニオン活性剤として、ポリカルボン酸型界面活性剤(花王(株)製:ポイズシリーズ)等が挙げられる。その中でも、ポリカルボン酸系高性能減水剤及びポリカルボン酸型界面活性剤がスラリーの流動性と粘性を両立出来るという意味で、好適である。
【0073】
本発明のスラリーにおける分散剤の含有量は、一般に水硬性粉体に対して有効成分で0.01〜5重量%、更に0.05〜3重量%が好ましい。
【0074】
本発明のスラリーに含有される化合物(A)と化合物(B)の他に、他の既存の増粘剤とを併用して用いることができる。他の既存の増粘剤としては、例えばセルロース誘導体、ポリアクリル系ポリマー、ポリエチレンオキシド、ポリビニールアルコール、ガム系多糖類、微生物発酵多糖類等が挙げられる。
【0075】
本発明のスラリーは、本剤の性能に支障がなければ他の成分、例えば、AE剤、遅延剤、早強剤、促進剤、気泡剤、発泡剤、消泡剤、防錆剤、着色剤、防黴剤、ひび割れ低減剤、膨張剤、染料、顔料等を含有していてよい。
【0076】
本発明の水硬性粉体を用いたスラリーを硬化してなる硬化組成物は、初期硬化物性に優れる。更に、本発明のスラリーに骨材を混合して水硬性組成物を調製することができる。この水硬性組成物が硬化されてなる硬化組成物は初期硬化物性に優れ、特に構造物等に好適に使用される。これらの硬化組成物(硬化体/硬化物)について例を挙げると、壁、バルコニー、柱、はり、スラブ等のSRC造やRC造部材、アンカレイジ躯体、主塔や主塔基礎、橋脚、床等の橋梁構造物、ケーソン、立杭、トンネル、二次製品の場合には、パイル、ボックスカルバート、ベンチフリューム、擁壁、ブロック、マンホール、セグメント、遮蔽板等が挙げられる。成形品としては石膏ボード、押出成形板等が挙げられる。
【0077】
本発明のスラリーには骨材を混合することができ、骨材には細骨材や粗骨材が使用でき、特に限定されるものではないが、吸水率が低くて骨材強度が高いものが好ましい。粗骨材としては、川、陸、山、海、石灰砂利、これらの砕石、高炉スラグ粗骨材、フェロニッケルスラグ粗骨材、軽量粗骨材(人工及び天然)及び再生粗骨材等が挙げられる。細骨材としては、川、陸、山、海、石灰砂、珪砂及びこれらの砕砂、高炉スラグ細骨材、フェロニッケルスラグ細骨材、軽量細骨材(人工及び天然)及び再生細骨材等が挙げられる。
【0078】
【実施例】
実施例1−1
(1)表1の化合物(A)及び化合物(B)を用い、20℃における粘度が表2に示す値となるように固形分濃度を調整した水溶液を作成し、それぞれ水溶液A、水溶液Bとした。なお、以下の実施例、比較例でもこれら表1の化合物を使用した。表1の化合物から表1の濃度で評価用水溶液を調製し、その水溶液密度を測定した。結果を表1に併せて示すが、水溶液濃度と水溶液密度の関係から、本実施例で調製した水溶液(表2)の密度は、いずれも1.0(g/cm3)とした。
【0079】
(2)(1)で調製した水溶液A及びBを、表2の組み合わせで、それぞれ100ml(100g)混合して10秒間攪拌翼付攪拌機で攪拌したものを混合液(A+B)とし、その20℃における粘度を測定した。結果を表2に示す。
なお、粘度は、B型粘度計(東京計器、DVM−B、Cローター、1.5r.p.mから12r.p.m)を用いて測定した。また、電導度は、HORIBA製CONDUCTIVITY METER DS−15を用いて測定した。
【0080】
(3)比較例1−1−1〜1−1−3では、等量の水(水溶液Bの代替)で希釈したときに表2の実施例の混合液(A+B)の粘度と同程度になるように、比較品1−1−1〜1−1−3の固形分濃度を調整した水溶液を作成し、水溶液Aとした。
【0081】
【表1】
【0082】
【表2】
【0083】
(注)
混合液(A+B)の20℃における電導度は、実施例1−1−5、1−1−6が26〜40mS/cm、それ以外の実施例が2〜8mS/cmであった。
【0084】
実施例1−2
(1)表1の化合物(A)及び化合物(B)を用い、20℃におけるスラリー又は水溶液粘度が表3に示す値となるように有効分濃度を調整したスラリー又は水溶液を作成し、それぞれA、Bとした。A又はBのスラリーは、水、粉体(普通ポルトランドセメント、比重3.16)と化合物(A)又は化合物(B)を攪拌翼付攪拌機(ナショナルハンドミキサーMK−H3、松下電器産業株式会社製)で30秒間攪拌し調製した。スラリー中の有効分濃度は、スラリー中の水相に対する濃度である。なお、表1の化合物の水溶液濃度と水溶液密度の関係から、本実施例で調製したA又はBの水溶液(表3)の密度は、いずれも1.0(g/cm3)とした。
【0085】
(2)(1)で調製したA及びBを、表3の組み合わせで、それぞれ250gづつを合わせて混合し60秒間攪拌翼付攪拌機(上述と同様)で攪拌したものをスラリー(A+B)とし、その20℃における粘度を測定した。なお、粘度は、ビスコテスター(ローター回転数62.5rpm、試料の粘度に応じて30〜300mPa・sは3号ローター、300〜15000mPa・sは1号ローター及び15000〜400000mP・sは2号ローターを使用)で測定し、結果を表3に示す。
また、電導度は、HORIBA製CONDUCTIVITY METER DS−15を用いて測定した。
【0086】
【表3】
【0087】
注)表3における実施例のスラリー(A+B)の20℃における電導度は、9〜14mS/cmであった。また、比較例1−2−4及び1−2−5は、A、B、(A+B)の粘度が何れも低く、前記ビスコテスターの測定対象外であったので、B型粘度計(TOKIMEC Inc.、VISCOMETER MODELBM、30r.p.m.、No.2ロータ)で粘度を測定したところ、A、B、(A+B)全て140mPa・sであった。
【0088】
実施例2−1
<スラリーの調製>
表4に示した化合物(A)、化合物(B)を用いて、スラリーを調製した。実施例2−1−7のスラリーの調製例を以下に示すが、他の実施例及び比較例も同様にスラリーを調製した。
ヘキサデシルトリメチルアンモニウムクロライド〔化合物(A)〕1.6重量部とp−トルエンスルホン酸ナトリウム〔化合物(B)〕0.97重量部と水97.43重量部と高炉スラグ77.0重量部(エスメント100P、ブレーン値10000cm2/g、新日鉄化学製)を均一に混合しスラリーを調製した。このスラリー1滴を銅版上で圧着して急速凍結しサンプルを得た。
【0089】
<観察条件>
クライオユニットを装着した電界放射形走査電子顕微鏡(略称:FE−SEM)S−4000(日立製)を用いて、走査条件7.5kVとし、上記サンプルの観察を行った。その電子顕微鏡写真を図1に示す。図1中、白い球状物体は粉体であり、その周囲に紐状会合体からなる網目状会合体が形成されているのがわかる。
【0090】
上記と同様な方法で、表4に示した化合物(A)と化合物(B)とからスラリーを調製し、該スラリーにおける網目状会合体の形成について観察を行った。結果を表4に示した。その際、何れのスラリーも、粉体(前記高炉スラグ)を77重量部用い、化合物(A)と化合物(B)の濃度及び比率が表4の通りとなるようにした。水の量は、化合物(A)と化合物(B)と合わせて100重量部となるようにした。網目を形成する紐状会合体の交点間の長さと直径は以下の基準で判断した。
(長さ)
○:0.01〜100μm
×:0.01μm未満又は100μm超
(直径)
◎:0.05μm以上2.0μm未満
○:0.01μm以上0.05μm未満
×:0.01μm未満
【0091】
【表4】
【0092】
実施例2−2
表5に示す組み合わせで化合物(A)と化合物(B)とを含有するスラリー〔配合:水100g、普通ポルトランドセメント100g(太平洋セメント製)〕を用いて下記の方法でSSを測定した。また、同時に濁度も測定した。該スラリーは、水と普通ポルトランドセメントと化合物(B)をハンドミキサー(MK−H3、松下電器産業株式会社製)で30秒間練り混ぜた後、化合物(A)を添加し、更に60秒間撹拌して調製されたものである。化合物(A)と化合物(B)のモル比は表5の通りである。結果を表5に示す。
【0093】
上記スラリー調製から1分以内に500mLの20℃のイオン交換水の入った500mLビーカー(JIS R 3503準拠、硼珪酸ガラス製、直径85mm、高さ120mm)に、スラリー30mLを15秒±5秒で水面から3cmの高さから投入した。スラリー投入後、10秒間静置した後、メカニカルミキサー(新東科学株式会社製HEIDON BL600、羽根タイプ:アンカー型、幅×高さ=68mm×68mm)を用いてビーカーの底から1.5cmの高さの所に攪拌羽根を固定し、60r.p.m.で10秒間攪拌した。10秒静置後、水面から深さ4.5cmの位置で水を5mL採取し、SS及び濁度測定用の試料とした。
【0094】
1.SS(Suspended Solid:浮遊物質)濃度測定法
上述に記載した試料5mLをアルミホイルの試料皿に入れ、105℃で2時間水分を揮発させた後、試料皿に残ったSSの質量を測定し、濃度を算出する。
以下に評価基準を示す。
【0095】
2.濁度;
上記試料について、測色色差計(Model ND-1001DP、日本電色工業株式会社製、吸光セル長10mm、12V50Wハロゲンランプ)により、試料採取後1分以内に以下の式により濁度を測定し、以下の基準で評価した。
濁度(%)=拡散率(%)×100/全透過光率(%)
○:6.0%以下
△:6.0%超30%以下
×:30%超
【0096】
【表5】
【0097】
実施例2−3
表6に示す組み合わせで化合物(A)と化合物(B)とを含有するスラリー(配合:水100g、炭酸カルシウム100g)を用いて貯蔵弾性率G’を測定した。貯蔵弾性率G’は、ARES粘弾性測定装置(レオメトリック・サイエンティフィック製)で、コーンプレート(直径:50mm、角度:0.0398rad、GAP:0.0508mm)を用い、ひずみ1.0%、測定範囲0.0628〜62.8rad/s、20℃の条件で測定した。その結果から角速度ωが1〜10rad/sにおけるG’min/G’maxを求め下記のように評価した。また、その際のG’maxを下記の基準で評価した。実施例2−3−9の測定結果を図3に示した。図3に示されるように、この例では、角速度ωが1〜10rad/sでほぼ一定のG’の値をとり、G’minは4550Pa(ω=1.1rad/s)、G’maxは6160Pa(ω=10rad/s)、G’min/G’maxは0.74であった。
【0098】
(G’min/G’maxの評価)
◎:G’min/G’maxが0.65以上1.0未満
○:G’min/G’maxが0.4以上0.65未満
×:G’min/G’maxが0.4未満
(G’maxの評価)
◎;G’maxが1000〜10000Pa
○:G’maxが100〜50000Pa(ただし、◎の範囲のものを除く)
△:G’maxが10〜100000Pa(ただし、◎及び○の範囲のものを除く)
×:G’maxが10Pa未満又は100000Pa超
【0099】
【表6】
【0100】
実施例3〜13及び比較例3〜5、10、13
(1)スラリー配合
表7に示す組成のスラリーを調製した。配合Iは実施例3、比較例3(表8)に用いた。同様に配合II〜XIは実施例4、比較例4(表9)から実施例13、比較例13(表18)に用いた。
【0101】
【表7】
【0102】
(2)スラリーの調製
実施例と比較例3−5、3−6、4−8、4−9、5−5、5−6、10−5、10−6、13−5、13−6は、微粉体と水と化合物(B)を30秒間予め練り混ぜた後、化合物(A)を添加し流動性が変わらなくなるまで混練した。
【0103】
その他の比較例は、微粉体と水とを30秒間予め練り混ぜた後、比較品の化合物を添加し流動性が変わらなくなるまで混練した。以下は、実施例と同様の操作を行った。
【0104】
混練は、配合Iはホモミキサーを使用し、その他の配合はモルタルミキサーを使用した。スラリーの調製は、20℃で行った。
スラリー調製後、下記に示す練り上がり時間、スラリーフロー値、スラリー粘度、水中分離抵抗性、ブリージング水量の5種の評価項目を測定した。尚、配合II、III、XI(表9、10、18)については、水和速度も測定した。
【0105】
(3)評価
(3−1)スラリーフロー値
調製したスラリーを、高さ45mm、内径45mmの円柱コーンに詰めた後、静かに垂直に引き上げた。広がりきった時点でのスラリーの直径(mm)を測定した。
【0106】
(3−2)練上がり時間
セメント等の微粉体と水のみのスラリーが、化合物(A)もしくは比較増粘剤の添加で流動性を失い、その後の攪拌でも流動性が変わらなくなった時点を目視(肉眼)で判断した。評価基準は、下記に示す。
◎ 5秒以内
○ 5秒超10秒以内
△ 10秒超30秒以内
× 30秒超2分以内
【0107】
(3−3)スラリー粘度(Pa・s)
配合IからXIにおける粘度については、調製したスラリーを外筒(直径27mm)、内筒(直径14mm)、試料高さ65mmの条件で試料容器に充填し、内円筒回転型レオメーター(メトラー社製Mettler RM260 Rheomater)を使用し(外筒直径27mm、内筒直径25mm、試料高さ65mm)、内筒をせん断速度30sec-1まで30秒で指数的に上昇させ、せん断速0.5〜3.0sec-1でビンガム近似を行い20℃での粘度を測定した。
【0108】
(3−4)水中分離抵抗性
調製したスラリーを10g計り取り、水道水400mlが入った500mlビーカに静かに沈降させる。スラリーが水中に舞い上がった状態を目視(肉眼)により評価を行った。評価基準を下記に示す。
◎ 水相が透明であり、沈降したスラリーの全体が確認できる。
○ 底に沈降したスラリーの全体が確認できる。
△ 水相が濁るが、ビーカーの底で沈降したスラリーの一部が見える。
× 水相が濁り、ビーカーの底が見えない。
【0109】
(3−5)ブリージング水量
調製したスラリー200gを500mlビーカに入れ、30分間静置した後、表面に出てきたブリージング水をスポイトで吸い上げ、計量した。評価基準を下記に示す。
◎ ブリージング水量 0g(なし)
○ ブリージング水量 0g超1g以下
△ ブリージング水量 1g超5g以下
× ブリージング水量 5g超
以上の結果を、表8〜18に示す。尚、表8〜18中の添加量は、表7の配合のスラリーの水相中の化合物(A)と化合物(B)の合計の有効分濃度(重量%)である。
【0110】
(3−6)水和速度
調製したスラリー20gをカロリーメーター(TOKYO RIKO Co製、TWIN CONDUCTION MICRO CALORIMETER Model TCC−2−6)にセットし、第二水和発熱ピーク時間を測定した。評価基準を下記に示す。結果を表9、10、18に併記した。
◎ 5時間超15時間以下
○ 15時間超25時間以下
△ 25時間超35時間以下
× 35時間超
【0111】
【表8】
【0112】
(注)
表8は、スラリー配合Iを用いた結果である。
【0113】
比較例3−1、3−5、3−6は、増粘性を呈さないので、スラリーに分離抵抗性がなく、スラリーフロー値が大きくなる。
【0114】
また、各化合物を添加したスラリーの20℃における電導度は、全ての実施例、比較例で2〜10mS/cmであった。
【0115】
【表9】
【0116】
(注)
表9は、スラリー配合IIを用いた結果である。
【0117】
比較例4−1、4−8、4−9は、増粘性を呈さないので、スラリーに分離抵抗性がなく、スラリーフロー値が大きくなる。
【0118】
また、各化合物を添加したスラリーの20℃における電導度は、全ての実施例、比較例で25〜33mS/cmであった。
【0119】
【表10】
【0120】
(注)
表10は、スラリー配合IIIを用いた結果である。
【0121】
比較例5−1、5−5、5−6は、増粘性を呈さないので、スラリーに分離抵抗性がなく、スラリーフロー値が大きくなる。
【0122】
また、各化合物を添加したスラリーの20℃における電導度は、全ての実施例、比較例で35〜40mS/cmであった。
【0123】
【表11】
【0124】
(注)
表11は、スラリー配合IVを用いた結果である。
【0125】
各化合物を添加したスラリーの20℃における電導度は、全ての実施例で2.5〜3.5mS/cmであった。
【0126】
【表12】
【0127】
(注)
表12は、スラリー配合Vを用いた結果である。
【0128】
各化合物を添加したスラリーの20℃における電導度は、全ての実施例で3.8〜4.5mS/cmであった。
【0129】
【表13】
【0130】
(注)
表13は、スラリー配合VIを用いた結果である。
【0131】
各化合物を添加したスラリーの20℃における電導度は、全ての実施例で0.1〜0.2mS/cmであった。
【0132】
【表14】
【0133】
(注)
表14は、スラリー配合VIIを用いた結果である。
【0134】
各化合物を添加したスラリーの20℃における電導度は、全ての実施例で4.5〜5mS/cmであった。
【0135】
【表15】
【0136】
(注)
表15は、スラリー配合VIIIを用いた結果である。
【0137】
比較例10−1、10−5、10−6は、増粘性を呈さないので、スラリーに分離抵抗性がなく、スラリーフロー値が大きくなる。
【0138】
また、各化合物を添加したスラリーの20℃における電導度は、全ての実施例、比較例で1〜2mS/cmであった。
【0139】
【表16】
【0140】
(注)
表16は、スラリー配合IXを用いた結果である。
【0141】
各化合物を添加したスラリーの20℃における電導度は、全ての実施例で0.5〜2mS/cmであった。
【0142】
【表17】
【0143】
(注)
表17は、スラリー配合Xを用いた結果である。
【0144】
各化合物を添加したスラリーの20℃における電導度は、全ての実施例で0.5〜2mS/cmであった。
【0145】
【表18】
【0146】
(注)
表18は、スラリー配合XIを用いた結果である。
【0147】
比較例13−1、13−5、13−6は、増粘性を呈さないので、スラリーに分離抵抗性がなく、スラリーフロー値が大きくなる。
【0148】
また、各化合物を添加したスラリーの20℃における電導度は、全ての実施例、比較例で6〜8mS/cmであった。
【0149】
実施例1−1から、本発明の化合物(A)及び化合物(B)では、混合前のそれぞれの水溶液の粘度に比べ、混合後の水溶液の粘度が10倍から100倍以上に増大することがわかる。特に、化合物(A)が4級アンモニウム塩型カチオン性界面活性剤から選ばれるものであり、化合物(B)がアニオン性芳香族化合物又は臭化化合物から選ばれるものである場合は、混合前の水溶液の粘度が10mPa・s以下の低粘性かつ10重量%以下の低濃度であっても、混合後の粘度が500倍以上に増大している。
【0150】
一方、従来の増粘剤に係る比較例1−1−1〜1−1−3では混合後の実施例1の粘度と同程度にするには、混合前の粘度を極めて大きく設定しなければならず、本発明品が混合時の操作性に優れ、かつ増粘性に極めて優れることがわかる。
【0151】
実施例1−2から、本発明の化合物(A)及び化合物(B)では、混合前のそれぞれの水溶液又はスラリーの粘度に比べ、混合後のスラリーの粘度が3倍から1000倍以上に増大することがわかる。
【0152】
一方、従来の増粘剤に係る比較例1−2−1〜1−2−3では混合後のスラリー粘度は混合前のAあるいはBの粘度の間の値をとり、AあるいはBの粘度の高いものよりも低い粘度となる。
【0153】
実施例2−1では、本発明の化合物(A)及び化合物(B)では、スラリーの観察により網目状会合体が観察され、比較例では該会合体は観察されなかった。
実施例2−2では、本発明の化合物(A)と化合物(B)と粉体と水とを含有するスラリーはSS濃度が500mg/L以下、濁度6%以下であるのに対して比較例ではSS濃度が1000mg/L超、濁度が30%超になっている。
実施例2−3では、本発明の化合物(A)と化合物(B)と粉体と水とを含有するスラリーは、実施例ではG'maxが1000〜10000Paの範囲にあり、G'変動幅(G'min/G'max)は0.4以上1.0未満の範囲にあるのに対して、比較例はG'maxが10〜100000Paの範囲にあり、G'変動幅(G'min/G'max)は0.4未満である。
【0154】
また、実施例3から、本発明に係るレオロジー改質剤をスラリー系に使用すると、従来の増粘剤に係る比較例3に比べ、練上がり時間、スラリー粘度、水中分離抵抗性及びブリージング量に優れることがわかる。
【0155】
更に、実施例4〜13から、本発明に係るレオロジー改質剤を塩濃度の高いセメントスラリー系や無機酸化物系、土等に使用しても、練上がり時間が非常に早く、水中分離抵抗性、ブリージング水量共に優れていることが分かる。これに対して、従来の増粘剤に係る比較例4、5、10、13では、添加量を調節することで若干練り上がり時間を早くできるものの、粘性が関与する水中分離抵抗性やブリージング水量で満足な結果が得られていない。逆に、水中分離抵抗性やブリージング水量を良くしようとすると、添加量を増やさねばならず、短い時間で良好な性状を持つスラリーが得られていない。また、実施例4、5及び13から、水硬性粉体として普通セメントを使用した系では、化合物(B)が芳香環を有するスルホン酸塩である組み合わせでは、練り上がり時間、水中分離抵抗性、ブリージング水量に優れると共に水和速度も優れていることが分かる。従来の増粘剤に係る比較例4、5、6では、添加量を調節して、水中分離抵抗性やブリージング量を良くしようとすると水和速度が遅れてしまい、良好な性状を持つスラリーが得られていない。
【0156】
実施例14
表7中のスラリー配合IIに対して、化合物(A)、化合物(B)に分散剤を併用した場合の効果を測定した。すなわち、20℃で、微粉体と水と表19の分散剤と化合物(B)を30秒間予め練り混ぜた後、化合物(A)を添加し流動性が変わらなくなるまで、モルタルミキサーで混練した。ここで、分散剤の添加量は、対セメント1.0重量%とした。スラリー調製後、前記同様に、練り上がり時間、スラリーフロー値、スラリー粘度、水中分離抵抗性、ブリージング水量、及び水和速度を測定した。結果を表20に示す。
【0157】
【表19】
【0158】
【表20】
【0159】
表20中の添加量は、スラリーの水相中の化合物(A)と化合物(B)の合計の有効分濃度(重量%)である。
【0160】
実施例15
表21に示す配合条件で、パン型強制練りミキサ(55L)の重力式を用いて、セメント(C)、細骨材(S)、粗骨材(G)を投入し空練りを10秒行い、表16の分散剤、化合物(B)を含む練り水(W)を加え2分間攪拌した後、化合物(A)を添加し40Lのコンクリートを1分間混練りした。製造したコンクリートを練板に排出し、以下に示す試験法にしたがってスランプ、振動分離抵抗性試験、硬化時間及び3日強度について測定した。尚、分散剤の添加量は、下記方法によるスランプ値が18cmになるように調整した。
【0161】
1.スランプ:JIS A 1101によるスランプ値(cm)
2.振動分離抵抗性試験:直径15cm×高さ30cmの円柱型枠に、表1に示す配合条件で製造したコンクリートを投入した後、テーブルバイブレータ上に設置し固定する。振動条件60Hz(横1.5G、縦0.22G)で、30秒間振動をかけた後、型枠の上面に分離したペースト層(骨材が沈降して存在していない層)の厚みを測定した。評価基準は下記の通りである。
◎:1cm以下
○:1cm超2cm以下
△:2cm超3cm以下
×:3cm超
3.硬化時間:JIS A 6204のプロクター貫入抵抗試験による凝結時間の測定を行った。評価基準(始発時間)は下記の通りである。
○:7時間以下
△:7時間超9時間以下
×:9時間超
4.強度試験:JIS A 1108の圧縮強度試験による3日強度の測定を行った。評価基準は下記の通りである。
○:20N/mm2超
△:15N/mm2超20N/mm2以下
×:15N/mm2以下
【0162】
【表21】
【0163】
表21中の使用材料は以下の通りである。
水(W):水道水
セメント(C):普通ポルトランドセメント、市販品、密度3.16g/cm3
細骨材(S):川砂(絶乾密度2.55g/cm3、吸水率1.94%、粗粒率2.73)
粗骨材(G):砕石(絶乾密度2.63g/cm3、吸水率0.93%、粗粒率6.71、最大寸法20mm
【0164】
【表22】
【0165】
表22中の重量%は、セメント重量に対する有効分濃度である。
【0166】
【発明の効果】
本発明のスラリーは、優れたレオロージ特性、例えば粘性や材料分離抵抗性を有し、例えば、水硬性スラリーの場合、短時間の混練りで十分な粘性を示し、低く作業性に優れる。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例2−1−7において、スラリー中で網目状会合体が形成されている様子を示す画像写真である。
【図2】本発明の第3の態様で、SS(浮遊粒子)濃度の測定に用いられるビーカーとそれに収容された撹拌羽根を示す概略図である。
【図3】実施例2−3−9の粘弾性測定における角速度ωと貯蔵弾性率G’との関係を示すグラフである。
Claims (10)
- 第1の水溶性低分子化合物〔以下、化合物(A)という〕と、化合物(A)とは異なる第2の水溶性低分子化合物〔以下、化合物(B)という〕とを含有するスラリーレオロジー改質剤と、粉体と、水とを含有する水粉体比30〜300%のスラリーであって、化合物(A)及び化合物(B)の組合わせが、(1)両性界面活性剤から選ばれる化合物(A)及びアニオン性界面活性剤から選ばれる化合物(B)の組合わせ、(2)カチオン性界面活性剤から選ばれる化合物(A)及びアニオン性芳香族化合物から選ばれる化合物(B)の組合わせ、(3)カチオン性界面活性剤から選ばれる化合物(A)及び臭化化合物から選ばれる化合物(B)の組合わせ、から選択され、スラリーレオロジー改質剤が以下の特性1を満たすスラリー。
<特性1>
化合物(A)の水溶液SA(20℃での粘度が100mPa・s以下のもの)と化合物(B)の水溶液SB(20℃での粘度が100mPa・s以下のもの)とを50/50の重量比で混合した水溶液の20℃における粘度が、混合前のいずれの水溶液の粘度よりも少なくとも2倍高くすることができる。 - 第1の水溶性低分子化合物〔以下、化合物(A)という〕と、化合物(A)とは異なる第2の水溶性低分子化合物〔以下、化合物(B)という〕とを含有するスラリーレオロジー改質剤と、粉体と、水とを含有する水粉体比30〜300%のスラリーであって、化合物(A)及び化合物(B)の組合わせが、(1)両性界面活性剤から選ばれる化合物(A)及びアニオン性界面活性剤から選ばれる化合物(B)の組合わせ、(2)カチオン性界面活性剤から選ばれる化合物(A)及びアニオン性芳香族化合物から選ばれる化合物(B)の組合わせ、(3)カチオン性界面活性剤から選ばれる化合物(A)及び臭化化合物から選ばれる化合物(B)の組合わせ、から選択され、化合物(A)と化合物(B)が網目状会合体を形成しているスラリー。
- 第1の水溶性低分子化合物〔以下、化合物(A)という〕と、化合物(A)とは異なる第2の水溶性低分子化合物〔以下、化合物(B)という〕とを含有するスラリーレオロジー改質剤と、粉体と、水とを含有する水粉体比30〜300%のスラリーであって、化合物(A)及び化合物(B)の組合わせが、(1)両性界面活性剤から選ばれる化合物(A)及びアニオン性界面活性剤から選ばれる化合物(B)の組合わせ、(2)カチオン性界面活性剤から選ばれる化合物(A)及びアニオン性芳香族化合物から選ばれる化合物(B)の組合わせ、(3)カチオン性界面活性剤から選ばれる化合物(A)及び臭化化合物から選ばれる化合物(B)の組合わせ、から選択され、20℃の該スラリー30mLを、500mLビーカー中の500mlの20℃の水に水面から3cmの位置から15秒±5秒で投入し、10秒間静置した後、攪拌羽根の下端面からビーカーの内部底面までの距離を1.5cmに固定したメカニカルミキサー(攪拌羽根タイプ:アンカー型、幅×高さ=68mm×68mm)で、60r.p.m.で10秒間攪拌し、10秒間静置した後、水面から深さ4.5cmの位置で採取した水中のSS(浮遊粒子)濃度が1000mg/L以下であるスラリー。
- 第1の水溶性低分子化合物〔以下、化合物(A)という〕と、化合物(A)とは異なる第2の水溶性低分子化合物〔以下、化合物(B)という〕とを含有するスラリーレオロジー改質剤と、粉体と、水とを含有する水粉体比30〜300%のスラリーであって、化合物(A)及び化合物(B)の組合わせが、(1)両性界面活性剤から選ばれる化合物(A)及びアニオン性界面活性剤から選ばれる化合物(B)の組合わせ、(2)カチオン性界面活性剤から選ばれる化合物(A)及びアニオン性芳香族化合物から選ばれる化合物(B)の組合わせ、(3)カチオン性界面活性剤から選ばれる化合物(A)及び臭化化合物から選ばれる化合物(B)の組合わせ、から選択され、以下の特性2を満足するスラリー。
<特性2>
20℃のスラリーについて、コーンプレート(直径50mm、角度0.0398rad、GAP0.0508mm)の角速度ωが1〜10rad/sの範囲で測定して得られた、貯蔵弾性率の最小値G’minと最大値G’maxの比率G’min/G’maxが0.4〜1である。 - 第1の水溶性低分子化合物〔以下、化合物(A)という〕と、化合物(A)とは異なる第2の水溶性低分子化合物〔以下、化合物(B)という〕とを含有するスラリーレオロジー改質剤と、粉体と、水とを含有する水粉体比30〜300%のスラリーであって、化合物(A)及び化合物(B)の組合わせが、(1)両性界面活性剤から選ばれる化合物(A)及びアニオン性界面活性剤から選ばれる化合物(B)の組合わせ、(2)カチオン性界面活性剤から選ばれる化合物(A)及びアニオン性芳香族化合物から選ばれる化合物(B)の組合わせ、(3)カチオン性界面活性剤から選ばれる化合物(A)及び臭化化合物から選ばれる化合物(B)の組合わせ、から選択され、スラリーレオロジー改質剤が以下の特性1を満たし、且つ以下の特性2〜4から選ばれる1つ以上の特性を満たすスラリー。
<特性1>
化合物(A)の水溶液S A (20℃での粘度が100mPa・s以下のもの)と化合物(B)の水溶液S B (20℃での粘度が100mPa・s以下のもの)とを50/50の重量比で混合した水溶液の20℃における粘度が、混合前のいずれの水溶液の粘度よりも少なくとも2倍高くすることができる。
<特性2>
20℃のスラリーについて、コーンプレート(直径50mm、角度0.0398rad、GAP0.0508mm)の角速度ωが1〜10rad/sの範囲で測定して得られた、貯蔵弾性率の最小値G’ min と最大値G’ max の比率G’ min /G’ max が0.4〜1である。
<特性3>
スラリー中で化合物(A)と化合物(B)が網目状会合体を形成している。
<特性4>
20℃のスラリー30mLを、500mLビーカー中の500mlの20℃の水に水面から3cmの位置から15秒±5秒で投入し、10秒間静置した後、攪拌羽根の下端面からビーカーの内部底面までの距離を1.5cmに固定したメカニカルミキサー(攪拌羽根タイプ:アンカー型、幅×高さ=68mm×68mm)で、60r.p.m.で10秒間攪拌し、10秒間静置した後、水面から深さ4.5cmの位置で採取した水中のSS(浮遊粒子)濃度が1000mg/L以下である。 - 化合物(A)と化合物(B)との有効分のモル比が化合物(A)/化合物(B)=1/20〜20/1である請求項1〜5いずれか1項記載のスラリー。
- 粉体が水硬性粉体である請求項1〜6いずれか1項記載のスラリー。
- 更に、分散剤を含有する請求項1〜7いずれか1項記載のスラリー。
- 土木・建築材料用である、請求項1〜8の何れか1項記載のスラリー。
- 請求項7〜9の何れか1項記載のスラリーを硬化させてなる硬化組成物。
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