JP4056868B2 - エアーグラウト材 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、土木、建築分野で使用されるエアーグラウト材に関する。
【0002】
【従来の技術および発明が解決しようとする課題】
従来、地下やシールドトンネルの裏込めや構造物のひび割れ等補修などの空隙の充填に、軽量で構造物への影響が少ない気泡を含有したエアーグラウト材が用いられる。このエアーグラウト材は、ミキサー等でセメント、水、起泡剤、および骨材等を混練して製造される。
【0003】
地下水等の水が存在する場所に施工する場合は、水によりエアーグラウト材が水相中に溶出し、充填が達成できない場合があった。そこで、水中分離抵抗性を付与するために、水溶性ポリマーやアルミン酸塩やアルミニウム塩を用いたエアモルタルが提案されている(特許文献1、2)。
【0004】
しかしながら、水溶性ポリマーの場合では溶解に長時間要し、カルボキシメチルセルロース系では水硬性が阻害される問題があった。また、アルミン酸塩やアルミニウム塩の場合は十分な水中不分離抵抗性を得るには時間を要するという課題があった。さらに、これらを用いたエアーグラウト材でもまだ水中分離抵抗性は十分ではなく、より優れた水中不分離抵抗性を有するエアーグラウト材が求められている。
【0005】
【特許文献1】
特開2001−146488号公報
【特許文献2】
特開2001−146489号公報
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明は、第1の水溶性低分子化合物〔以下、化合物(A)という〕と、化合物(A)とは異なる第2の水溶性低分子化合物〔以下、化合物(B)という〕と、起泡剤と、水硬性粉体と、水とを含有するエアーグラウト材であって、化合物(A)および化合物(B)の組合わせが、(1)両性界面活性剤から選ばれる化合物およびアニオン性界面活性剤から選ばれる化合物の組合わせ、(2)カチオン性界面活性剤から選ばれる化合物およびアニオン性芳香族化合物から選ばれる化合物の組合わせ、(3)カチオン性界面活性剤から選ばれる化合物および臭化化合物から選ばれる化合物の組合わせ、から選択される化合物を含有するエアーグラウト材に関する。
【0007】
また、本発明は、化合物(A)または化合物(B)の一方の化合物と、水硬性粉体と、水と、起泡剤とを含むエアーモルタルを調製し、次いで該エアーモルタルに前記化合物(A)または化合物(B)の他方の化合物を添加する、上記本発明のエアーグラウト材の製造方法に関する。
【0008】
【発明の実施の形態】
<化合物(A)および化合物(B)>
本発明では、特定の組み合わせからなる第1、第2の水溶性低分子化合物〔化合物(A)および化合物(B)〕が用いられる。
【0009】
化合物(A)および化合物(B)の組合わせは、(1)両性界面活性剤から選ばれる化合物およびアニオン性界面活性剤から選ばれる化合物の組合わせ、(2)カチオン性界面活性剤から選ばれる化合物およびアニオン性芳香族化合物から選ばれる化合物の組合わせ、(3)カチオン性界面活性剤から選ばれる化合物および臭化化合物から選ばれる化合物の組合わせ、から選択される。
【0010】
両性界面活性剤から選ばれるものとして、ベタイン型両性界面活性剤が好ましく、ドデカン酸アミドプロピルベタイン・オクタデカン酸アミドプロピルベタイン・ドデシルジメチルアミノ酢酸ベタイン等が挙げられ、粘度発現の観点からドデカン酸アミドプロピルベタインが好ましい。
【0011】
アニオン性界面活性剤から選ばれるものとして、エチレンオキサイド付加型アルキル硫酸エステル塩型界面活性剤が好ましく、POE(3)ドデシルエーテル硫酸エステル塩、POE(2)ドデシルエーテル硫酸エステル塩、POE(4)ドデシルエーテル硫酸エステル塩等が挙げられ、塩はナトリウム塩等の金属塩、トリエタノールアミン塩等のアルカノールアミン塩等が挙げられる。
【0012】
これらの中でも、エアーグラウト材の水相中の化合物(A)と化合物(B)の合計の固形分(有効分)濃度が20重量%以下でも効果を発現するドデカン酸アミドプロピルベタインとPOE(3)ドデシルエーテル硫酸エステルトリエタノールアミンもしくはPOE(3)ドデシルエーテル硫酸エステルナトリウムの組合わせが好ましい。なお、POEはポリオキシエチレンの略であり、( )内はエチレンオキサイド平均付加モル数である(以下同様)。
【0013】
カチオン性界面活性剤から選ばれるものとして、4級塩型カチオン性界面活性剤が好ましく、4級塩型のカチオン性界面活性剤としては、構造中に、10から26個の炭素原子を含む飽和もしくは不飽和の直鎖または分岐鎖アルキル基、または10〜26個の炭素原子のうち、末端以外の1個の炭素原子を酸素原子に置き換えた飽和もしくは不飽和の直鎖もしくは分岐鎖の基を、少なくとも1つ有しているものが好ましい。例えば、アルキル(炭素数10〜26)トリメチルアンモニウム塩、アルキル(炭素数10〜26)ピリジニウム塩、アルキル(炭素数10〜26)イミダゾリニウム塩、アルキル(炭素数10〜26)ジメチルベンジルアンモニウム塩等が挙げられ、具体的には、ヘキサデシルトリメチルアンモニウムクロライド、ヘキサデシルトリメチルアンモニウムブロマイド、オクタデシルトリメチルアンモニウムクロライド、オクタデシルトリメチルアンモニウムブロマイド、タロートリメチルアンモニウムクロライド、タロートリメチルアンモニウムブロマイド、水素化タロートリメチルアンモニウムクロライド、水素化タロートリメチルアンモニウムブロマイド、ヘキサデシルエチルジメチルアンモニウムクロライド、オクタデシルエチルジメチルアンモニウムクロライド、ヘキサデシルプロピルジメチルアンモニウムクロライド、ヘキサデシルピリジニウムクロライド、1,1−ジメチル−2−ヘキサデシルイミダゾリニウムクロライド、ヘキサデシルジメチルベンジルアンモニウムクロライド、ドデシロキシプロピルトリメチルアンモニウムクロライド、テトラデシロキシプロピルトリメチルアンモニウムクロライド、ヘキサデシロキシプロピルトリメチルアンモニウムクロライド、オクタデシロキシプロピルトリメチルアンモニウムクロライド等が挙げられ、これらを2種以上併用してもよい。水溶性と増粘効果の観点から、具体的には、ヘキサデシルトリメチルアンモニウムクロライド(例えば花王(株)製コータミン60W)、オクタデシルトリメチルアンモニウムクロライド、ヘキサデシルピリジニウムクロライド等が好ましい。また、増粘効果の温度安定性の観点から、化合物(A)または化合物(B)の一方として、上記のアルキル基の炭素数の異なるカチオン性界面活性剤を2種類以上併用することが好ましい。
【0014】
特に、塩害による鉄筋の腐食やコンクリート劣化を防止する観点から、塩素等のハロゲンを含まない4級アンモニウム塩を用いることが好ましい。
【0015】
塩素等のハロゲンを含まない4級塩として、アンモニウム塩やイミダゾリニウム塩等が挙げられ、具体的にはヘキサデシルトリメチルアンモニウムメトサルフェート、ヘキサデシルジメチルエチルアンモニウムエトサルフェート、オクタデシルトリメチルアンモニウムメトサルフェート、オクタデシルジメチルエチルアンモニウムエトサルフェート、タロートリメチルアンモニウムメトサルフェート、タロージメチルエチルアンモニウムエトサルフェート、1,1−ジメチル−2−ヘキサデシルイミダゾリニウムメトサルフェート、ヘキサデシルジメチルヒドロキシエチルアンモニウムアセテート、オクタデシルジメチルヒドロキシエチルアンモニウムアセテート、ヘキサデシルジメチルヒドロキシエチルアンモニウムプロピオネート、オクタデシルジメチルヒドロキシエチルアンモニウムプロピオネート、タロージメチルヒドロキシエチルアンモニウムアセテート、タロージメチルヒドロキシエチルアンモニウムプロピオネート、等が挙げられる。水溶性と増粘効果の観点から、ヘキサデシルトリメチルアンモニウムメトサルフェート、オクタデシルトリメチルアンモニウムメトサルフェート、タロートリメチルアンモニウムメトサルフェート等が特に好ましい。塩素等のハロゲンを含まない4級アンモニウム塩は、例えば、ジメチル硫酸、ジエチル硫酸で3級アミンを4級化することで得ることができる。
【0016】
アニオン性芳香族化合物から選ばれるものとして、芳香環を有するカルボン酸およびその塩、ホスホン酸およびその塩、スルホン酸およびその塩が挙げられ、具体的には、サリチル酸、p−トルエンスルホン酸、スルホサリチル酸、安息香酸、m−スルホ安息香酸、p−スルホ安息香酸、4−スルホフタル酸、5−スルホイソフタル酸、p−フェノールスルホン酸、m−キシレン−4−スルホン酸、クメンスルホン酸、メチルサリチル酸、スチレンスルホン酸、クロロ安息香酸等であり、これらは塩を形成していていも良く、これらを2種以上併用してもよい。ただし、重合体である場合は、重量平均分子量(例えば、ゲルーパーミエーションクロマトグラフィー法/ポリエチレンオキシド換算)500未満であることが好ましい。
【0017】
臭化化合物から選ばれるものとして、無機塩が好ましく、臭化ナトリウム、臭化カリウム、臭化水素等が挙げられる。
【0018】
本発明においては、化合物(A)と化合物(B)とが会合体を形成し易いものが、それぞれ濃厚な水溶液でも粘性が低く、また、エアーグラウト材の水相中の有効分濃度が低くても優れたレオロジー改質効果を発現し、また、それぞれが濃厚な水溶液でも粘性が低く、添加時の作業性からも好ましい。本発明では、化合物(A)と化合物(B)の合計の有効分濃度が10重量%以下の極めて低い添加量でエアーグラウト材の増粘を達成することができ、さらに、イオン強度の高いエアーグラウト材系においても、同様の効果を発現することができ、エアーグラウト材系によっては、特に水相と接触した場合の材料分離抵抗性が非常に安定するという、従来の増粘剤の使用では得ることのできなかったレオロジー特性を発現する点で、化合物(A)が4級アンモニウム塩型カチオン性界面活性剤から選ばれるものであり、化合物(B)がアニオン性芳香族化合物または臭化化合物から選ばれるものである組合わせが特に好ましい。
【0019】
また、化合物(A)がアルキル(炭素数10〜26)トリメチルアンモニウム塩であり、化合物(B)が芳香環を有するスルホン酸塩である組み合わせが特に好ましく、エアーグラウト材の水相中の化合物(A)と化合物(B)の合計の有効分濃度が5重量%以下でも効果を発現する。特に、これらの中でも硬化遅延を起こさない観点から、化合物(B)としてはトルエンスルホン酸、キシレンスルホン酸、クメンスルホン酸、スチレンスルホン酸またはこれらの塩が好ましく、特に、p−トルエンスルホン酸またはその塩が好ましい。
【0020】
本発明に係る化合物(A)と化合物(B)とを併用することでエアーグラウト材の特徴的なレオロジー特性が得られるのは、以下の理由によると考えられる。
【0021】
化合物(A)と化合物(B)とを混合した時に、水相中に短時間で会合体を形成し、効率的に粘性を付与でき、さらに、この会合体形成は、空気を含有するエアーグラウト材中で均一に形成されることにより余剰水分を完全に捕捉するため、経時的なブリージング水を抑制することにより、単位水量の多いエアーグラウト材配合でも材料分離抵抗性に優れた性状が得られるものと考えられる。
【0022】
化合物(A)と化合物(B)は、低分子化合物であってもエアーグラウト材中で分子会合を起こす事で高分子状の大きな網目状会合体を形成するため、エアーグラウト材に高い粘性を付与することができると考えられる。
【0023】
さらに、化合物(A)および化合物(B)を含有するエアーグラウト材中の水硬性粉体粒子は粘弾性の高い網目状会合体に覆われているため、使用部位に水が存在する場合でも希釈されずに投入、充填でき水質汚染を防止できる。
【0024】
さらに、化合物(A)および化合物(B)を含有するエアーグラウト材は、粘弾性の高い網目状会合体によって、エアーグラウト材中に分散されている気泡をグラウト内に拘束し、水中でも泡抜けすることが無く、エアーグラウト材の体積減少を防止できる。
【0025】
なかでも、4級アンモニウム塩型カチオン性界面活性剤と、アニオン性芳香族化合物または臭化化合物から選ばれる化合物との組み合わせに係る本発明の化合物(A)および化合物(B)を使用すると、エアーグラウト材の水相中に細かく分岐した会合体を形成すると考えられる。
【0026】
また、一般の水溶性高分子が共有結合で繋がっているため、繰返しせん断力を受けると結合が劣化し、最終的には結合が切れて低分子化してしまうのに対して、かかる会合体は、水相が強い応力を受けると、会合体構造が破壊されるので、過度の応力が抑制され、応力が減少すると、再び会合体が形成されると考えられる。これによりエアーグラウト材に適度な粘性を付与するという特徴を有する。
【0027】
かかる特徴を生かせば、粉体粒子や砂、砂利等が存在するエアーグラウト材では特に有効であり、エアーグラウト材の撹拌、注入、圧送で受ける強いせん断に対しても、せん断から解き放たれると会合体が再形成を起こすため、高いせん断抵抗性をエアーグラウト材に付与出来る。
例えば、過度の内部摩擦が発生することを抑制しつつエアーグラウト材の製造や輸送を行い、製造あるいは輸送後のエアーグラウト材に適度な粘性を付与することができる。
【0028】
さらに、化合物(A)および化合物(B)を含有するエアーグラウト材中の水硬性粉体粒子は粘弾性の高い網目状会合体に覆われているため、使用部位に水が存在する場合でも希釈されずに投入、充填でき水質汚染を防止できる。
【0029】
化合物(A)として両性界面活性剤から選ばれるものを、化合物(B)としてアニオン性界面活性剤から選ばれるものを使用する場合や、化合物(A)としてカチオン性界面活性剤から選ばれるものを、化合物(B)としてアニオン性芳香族化合物から選ばれるものまたは臭化化合物から選ばれるものを使用する場合は、各化合物単独の濃厚な水溶液でも粘性が低いので、起泡剤と水硬性粉体と水とを含有するエアーグラウト材への添加前の水溶液の有効分濃度を好ましくは10重量%以上、より好ましくは20重量%以上、さらに好ましくは30重量%以上、最も好ましくは40重量%以上にしておくことにより、貯蔵タンクを小型化できる等の生産性を向上することができる。
【0030】
本発明において、会合体形成の観点から、化合物(A)と化合物(B)のモル比は、(A)/(B)=1/20〜20/1、さらに1/20〜4/1、特に1/1〜2/3の範囲が好ましい。
【0031】
また、化合物(A)と化合物(B)は、合計でエアーグラウト材中の水100重量部に対して1〜50重量部、さらに3〜40重量部、特に3〜20重量部の比率で用いられることが好ましい。
【0032】
<起泡剤>
本発明で使用する起泡剤は特に限定されるものではないが、例えば、界面活性剤系やタンパク質系などの市販の起泡剤を用いることができる。界面活性剤系として、エーテルサルフェート系、ベタイン系が挙げられる。化合物(A)と化合物(B)の増粘性と気泡安定性の面の観点から動物性蛋白質系、ベタイン系が好ましく、特にベタイン系が好ましい。
【0033】
通常、起泡剤は発泡機では水溶液で用いられる。その起泡剤水溶液の濃度は使用する起泡剤によって異なり特に限定されるものではないが、通常、1〜15重量%の水溶液として用いることが好ましい。
【0034】
起泡剤の使用量は特に限定されるものではなく、気泡の安定の観点から、好ましくは、水硬性粉体100重量部に対して、有効分で0.1重量部以上であり、効果の顕著性の点から0.1〜1重量部がより好ましい。
【0035】
<水硬性粉体>
本発明に用いられる水硬性粉体としては、セメントおよび/または石膏が挙げられ、セメントとして、普通ポルトランドセメント、早強ポルトランドセメント、超早強ポルトランドセメント等が挙げられる。また、フィラーも用いることができ、例えば炭酸カルシウム、フライアッシュ、高炉スラグ、シリカフューム、ベントナイト、クレー(含水珪酸アルミニウムを主成分とする天然鉱物:カオリナイト、ハロサイト等)が挙げられる。これらの粉体は単独でも、混合されたものでもよい。
【0036】
さらに、本発明における化合物(A)および/または化合物(B)と水硬性粉体とを予備混合し、エアーグラウト材用の水硬性粉体組成物を調製することができる。
【0037】
<水>
本発明のエアーグラウト材は、水を水硬性粉体100重量部に対して10〜600重量部、さらに20〜300重量部、特に30〜150重量部含有することができる。すなわち、水/水硬性粉体比は10〜600重量%、さらに20〜300重量%、特に30〜150重量%とすることができる。
【0038】
<骨材>
本発明のエアーグラウト材は、公知の骨材を含有することができる。骨材としては、グラウト用途に適したものが選定され、山砂、陸砂、川砂、砕砂等の細骨材が好ましい。なお、骨材の用語は、「コンクリート総覧」(1998年6月10日、技術書院発行)による。骨材は、水硬性粉体100重量部に対して、50〜700重量部、さらに70〜600重量部、特に100〜500重量部の比率で用いられるのが好ましい。
【0039】
<エアーグラウト材>
本発明のエアーグラウト材は、以下の特性1を満たすことが好ましい。
<特性1>
幅37cm、奥行き20cmの角型水槽に入れた液深17.8cmの温度20℃、pH7〜7.5の水に、フローコーン(内径5cm、高さ5cm)にて板の上にフローさせた該エアーグラウト材を、フロー後1分以内に、フローさせた板と共に水槽の底部まで沈め10分間静置した後、水面から深さ5cmの位置で測定したpHが8以下、好ましくは7.9以下、より好ましくは7.8以下である。
【0040】
上記特性1の操作において、フローさせた板を水槽の底部まで沈めるときに、フローさせたエアーグラウト材が水流の影響で拡散しない速度で沈めることが好ましい。
【0041】
本発明のエアーグラウト材は、上記成分を混合することで得られるが、化合物(A)または化合物(B)の一方の化合物と、水硬性粉体と、水と、起泡剤とを含むエアーモルタルを調製し、次いで該エアーモルタルに前記化合物(A)または化合物(B)の他方の化合物を添加する方法により製造するのが好ましい。
【0042】
エアーグラウト材の製造方法は、起泡剤水溶液を発泡機等で発泡させ、泡沫としてエアーグラウト材の原料に配合する方法が、均一な気泡が連行することから好ましいが、起泡剤または起泡剤水溶液をエアーグラウト材の原料に直接添加してもよい。起泡剤または起泡剤水溶液をエアーグラウト材の原料に添加する方法については限定するものではなく、また起泡剤水溶液を泡沫化する方法についても限定するものではない。
【0043】
また、エアーグラウト材の重量と用いた材料の比重と配合量から、後述の実施例に示した方法で計算した本発明のエアーグラウト材中の空気量は、エアーグラウト材調製直後で、軽量化の観点から20重量%以上が好ましく、25重量%以上が得に好ましく、硬化後の強度の観点から、80重量%以下が好ましく、70重量%以下が特に好ましい。従って、軽量化と強度の観点から、20〜80重量%が好ましく、25〜70重量%が特に好ましい。
【0044】
本発明のエアーグラウト材には、本発明の効果を損なわない限り、さらに公知の添加剤を配合することもでき、例えば、AE剤、AE減水剤、高性能減水剤、遅延剤、早強剤、促進剤、増粘剤、防水剤、防泡剤、可塑剤等が挙げられ、可塑剤として、例えば硫酸アルミニウム、塩化第二鉄、ポリ塩化アルミニウム、ポリ硫酸第二鉄、石灰、水ガラス等が挙げられる。。
【0045】
【発明の効果】
本発明によれば、水中分離抵抗性に優れたエアーグラウト材が得られる。
【0046】
【実施例】
実施例1
1.1材料調製
(1)使用材料
セメント;普通ポルトランドセメント(太平洋セメント製、密度3.16g/cm3
水;水道水
砂;三重川砂(密度2.6g/cm3、FM 2.59)
起泡剤;タンパク質系(ヤマトニューマイティフォーム;ヤマトプロテック製)
起泡剤;界面活性剤系(アルキルプロピルベタイン系起泡剤;花王(株)製)
化合物(A);p−トルエンスルホン酸ナトリウム(20重量%水溶液)
化合物(B);アルキル(C16/C18=0.6/0.4重量比)アンモニウムクロライド(29重量%水溶液)
【0047】
(2)起泡剤希釈濃度
・タンパク質系の場合
タンパク質系起泡剤/希釈水=4.85/95.15(重量比)
・界面活性剤系の場合
界面活性剤系起泡剤/希釈水=10.26/89.74(重量比)
【0048】
【表1】
Figure 0004056868
【0049】
<泡の調製>
あらかじめ所定の濃度に希釈調製した起泡剤を発泡機で発泡させた。発泡機は泡密度=0.05g/cm3となるように起泡剤と空気の流量を調節した。
【0050】
<エアーグラウト材調製方法>
モルタルミキサー(5DM−03−r、ダルトン社製)に、表1の量で砂、セメント、水の順に投入し、低速で2分混合しモルタルを得た。その後、該モルタルに対して約23gの泡を添加し、スパチラを用いて1分手練りにて混入しエアーモルタルを調製した。さらに、表2に示す量の化合物(A)を添加し30秒手練り後、表2に示す量の化合物(B)を添加し1分手練りし、本発明品のエアーグラウト材を調製した。また、比較品のエアーグラウト材は、上記の通り調製したエアーモルタルにあらかじめ28.24gの水に硫酸アルミニウム28.52gを溶解させた水溶液を添加後、モルタルミキサーの低速で30秒撹拌して調製した。
【0051】
1.2試験方法
物性測定は、エアーグラウト材調製後、空気量を測定し、気泡に対する負荷としてフロー測定を行った。その後、粘度測定に続いて水中分離抵抗性試験を行った。各試験方法を以下に示す。結果を表2に示す。
【0052】
<空気量測定>
エアーグラウト材を容量400mlの金属製カップに充填し、その重量を測定した。エアーグラウト材の重量と用いた材料の比重と配合量から、次の式で空気量を計算した。なお、化合物(A)および化合物(B)の水溶液は比重を1.00として計算した。
【0053】
【数1】
Figure 0004056868
【0054】
<フロー>
φ80mm×80mmのフローコーンにエアーグラウト材を充填し垂直に引き上げて、エアーグラウト材の広がりの大きさを測定した。広がりの測定は、エアーグラウト材の広がった両端を物差しで計り、それに対して垂直方向について両端を物差しで計りそれらの平均を広がりの大きさとした。
【0055】
<粘度>
500mlディスポカップに500mlのエアーグラウト材を取り、VISCOTESTER VT-04E(RION)ロータ1号、62.5回転/分を用いて測定した。
【0056】
<水中分離抵抗性(濁度)>
直径13cm、高さ20cmの2Lビーカーにエアーモルタル500gを入れる。1500gの水をスパチラの平端部をビーカー内壁面にあて平単面に当てるように上方からゆっくりと入れる。10mlスポイト(ガラス製)の2mlラインを水面に合わせて約20mlサンプリングする。図1の羽根の軸が水面の中心に上端が水面にくるように固定して2分間、50r/minで撹拌する。撹拌後、10mlスポイトの2mlラインを水面に合わせて約20mlサンプリングする。サンプリングした水溶液は島津製作所製紫外分光光度計UV−160Aにより波長600nmの光源用いて吸光度を測定する。次に、数種類の濃度で調整したセメント懸濁液で、「セメント濃度(mg/kg)対吸光度」で検量線を作成した。最後に、測定したサンプルの吸光度を、検量線を使って濁度(mg/kg)に変換する。
【0057】
【表2】
Figure 0004056868
【0058】
比較品エアーグラウト材に比べて、本発明品を使用すると濁度が低くなり、水硬性粉体の拡散が抑えられることを示した。これにより本発明品は高い水中分離抵抗性を示すことがわかる。
【0059】
実施例2
2.1材料調製
実施例1と同様の材料、配合で、エアーグラウト材を調製した。このエアーグラウト材について、実施例1と同様に空気量、フローを測定し、以下の方法で経時的なpHの変化を測定した。結果を表3に示す。
【0060】
<pHの経時変化>
幅37cm、奥行き20cmの角型水槽に入れた液深17.8cmの温度20℃、pH7〜7.5の水に、フローコーン(内径5cm、高さ5cm)にて、20cm×18cm×0.1cmのプラスチック板上にフローさせた該エアーグラウト材を、フロー後1分以内に、フローさせた板と共に手で150〜180cm/minの速度で水槽の底部まで沈め、水面の中心部、水面から深さ5cmの位置にpH電極の底部がくるように固定し、該エアーグラウト材を沈めた時点を起点に経時でpH測定した。
【0061】
【表3】
Figure 0004056868
【0062】
本発明品は、水中沈下10分後でもpH8以下を推移しており、ブランクおよび比較品と比べてpHの上昇を著しく抑えている。なお、この実施例2で用いたセメントについて、pH7.4の水を用いて調製した濃度760mg/Lの懸濁液のpH(20℃)は11.6であり、より低濃度の濃度9.7mg/Lの懸濁液のpH(20℃)は9.03であった。表3の結果にあるように、本発明品では、経時的なpHが何れも低濃度レベルの前記懸濁液よりもさらに低くなっており、これは本発明品ではセメントの流失が極めて少ないことを意味するものである。これらのことより本発明品の水中分離抵抗性が高いことがわかる。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例で濁度の測定の際に用いた撹拌羽根の概略図である。

Claims (5)

  1. 第1の水溶性低分子化合物〔以下、化合物(A)という〕と、化合物(A)とは異なる第2の水溶性低分子化合物〔以下、化合物(B)という〕と、起泡剤と、水硬性粉体と、水とを含有するエアーグラウト材であって、
    化合物(A)および化合物(B)の組合わせが、(1)両性界面活性剤から選ばれる化合物およびアニオン性界面活性剤から選ばれる化合物の組合わせ、(2)カチオン性界面活性剤から選ばれる化合物およびアニオン性芳香族化合物から選ばれる化合物の組合わせ、(3)カチオン性界面活性剤から選ばれる化合物および臭化化合物から選ばれる化合物の組合わせ、から選択され、
    化合物(A)と化合物(B)のモル比が、(A)/(B)=1/20〜20/1の範囲であり、
    化合物(A)と化合物(B)を合計でエアーグラウト材中の水100重量部に対して1〜50重量部含有し、且つ
    以下の特性1を満たす、
    エアーグラウト材
    <特性1>
    幅37cm、奥行き20cmの角型水槽に入れた液深17.8cmの温度20℃、pH7〜7.5の水に、フローコーン(内径5cm、高さ5cm)にて板の上にフローさせた該エアーグラウト材を、フロー後1分以内に、フローさせた板と共に水槽の底部まで沈め10分間静置した後、水面から深さ5cmの位置で測定したpHが8以下である。
  2. 水硬性粉体が、セメントおよび/または石膏類を含有する請求項1記載のエアーグラウト材。
  3. 化合物(A)および化合物(B)の組合わせが、(1)ベタイン型両性界面活性剤から選ばれる化合物およびエチレンオキサイド付加型アルキル硫酸エステル型アニオン性界面活性剤から選ばれる化合物の組合わせ、(2)4級塩型カチオン性界面活性剤から選ばれる化合物並びに芳香環を有するカルボン酸およびその塩、芳香環を有するホスホン酸およびその塩、芳香環を有するスルホン酸およびその塩から選ばれるアニオン性芳香族化合物の組合わせ、(3)4級塩型カチオン性界面活性剤から選ばれる化合物並びに臭化ナトリウム、臭化カリウムおよび臭化水素から選ばれる臭化化合物の組合わせ、から選択される、請求項1または2記載のエアーグラウト材。
  4. 化合物(A)および化合物(B)の組合わせが、4級塩型カチオン性界面活性剤から選ばれる化合物及び芳香環を有するスルホン酸およびその塩から選ばれるアニオン性芳香族化合物の組合わせ、から選択される、請求項1〜3の何れか1項記載のエアーグラウト材。
  5. 化合物(A)または化合物(B)の一方の化合物と、水硬性粉体と、水と、起泡剤とを含むエアーモルタルを調製し、次いで該エアーモルタルに前記化合物(A)または化合物(B)の他方の化合物を添加する、請求項1〜4の何れか1項記載のエアーグラウト材の製造方法。
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