JP6367276B2 - 液体急結剤、吹付け材料及びそれを用いた吹付け工法 - Google Patents

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Description

本発明は、道路、鉄道、及び導水路等のトンネルにおいて、露出した地山面へ急結性セメントコンクリートを吹付ける際に使用する液体急結剤、吹付け材料、及びそれを用いた吹付け工法に関する。
従来、トンネル掘削等露出した地山の崩落を防止するために液体急結剤をコンクリートに混合した急結性コンクリートの吹付け工法が用いられている(特許文献1、2、3)。
この工法は、通常、掘削工事現場に設置した計量プラントで、セメント、骨材、及び水を計量混合してで吹付け用のコンクリートを調製し、それをアジテータ車で運搬し、コンクリートポンプで圧送し、途中に設けた合流管で、他方から圧送した急結剤と混合し、急結性吹付けコンクリートとして地山面に所定の厚みになるまで吹付ける工法である。
急結剤としては、カルシウムアルミネートにアルカリ金属アルミン酸塩やアルカリ金属炭酸塩等混合した粉体急結剤が使用される場合が多いが、近年、吹付け時の粉塵量が少なく、アルカリ薬傷がないという点から、アルミニウム塩を主成分とする賛成の液体急結剤の使用が望まれている。(特許文献4〜8)。
液体急結剤に用いられるアルミニウム塩は硫酸塩である場合が多く、濃度が高いほど、急結性が高くなり、吹付け時の添加率を減らすこともできる。
しかし、高濃度の液体急結剤は、長期間保存すると、液中に析出物が生成したり、液がゲル化したり、懸濁粒子が沈降したりする場合があった。硫酸アルミニウムの水に対する溶解度は20℃で27%であり、共存する溶質や液温によって変動するが、溶解度以上の硫酸アルミニウムを含有する液体急結剤は、貯蔵安定性が悪く、製造直後の性状を保持することが難しい。液中に析出物が生成したり、液がゲル化したり懸濁粒子が沈降したりした状態の液体急結剤を使用すると、ポンプが閉塞したり、コンクリートの混合性が悪くなり、優れた性状が得られなかったりする場合があった。また、溶解度は液温によって変動する為、この貯蔵性の問題は、貯蔵する温度に依存し、高温または低温で貯蔵すると、より顕著に現れる場合があった。
また、液体急結剤を使用する吹付けコンクリートは、初期強度は向上するが長期強度は急結剤を添加しないベースコンクリートよりも低下する傾向にあり、収縮も大きく乾燥の影響を受けやすい箇所ではひび割れの発生がし易いものであった。
特許第3600155号公報 特許第3960590号公報 特許第4037160号公報 特開平10−87358号公報 特開2003−246659号公報 特開2005−89276号公報 特開2006−193388号公報 特開2008−30999号公報
本発明は、液体急結剤の貯蔵性を改善し、さらに、吹付けるセメントコンクリートの流動性、強度性状やひび割れ抵抗性が向上する、液体急結剤、吹付け材料及びそれを用いた吹付け工法を提供する。
即ち、本発明は、(1)硫酸アルミニウム30〜50質量%、カチオン性界面活性剤0.01〜2.5質量%、及び水を含有してなる液体急結剤、(2)カチオン性界面活性剤がアルキルアンモニウム塩である(1)の液体急結剤、(3)アルキルアンモニウム塩が、アルキルトリメチルアンモニウム塩である(2)の液体急結剤、(4)さらに、促進剤を含有してなる(1)〜(3)のうちいずれかの液体急結剤、(5)促進剤が、フッ素化合物またはアルコールアミン類である(4)の液体急結剤、(6)セメントとアニオン性芳香族化合物を含有してなるセメントコンクリートと、(1)〜(5)のいずれかの液体急結剤とを含有してなる吹付け材料、(7)アニオン性芳香族化合物が、アルキルアリルスルホン酸及びその塩である()の吹付け材料、(8)アニオン性芳香族化合物が、セメント100質量部に対して0.01〜2.5質量部である(6)又は(7)の吹付け材料、(9)セメントコンクリートと(1)〜(5)のいずれかの液体急結剤とを混合してなる吹付け工法、(10)セメントとアルキルアリルスルホン酸及びその塩を含有してなるセメントコンクリートと、(1)〜(5)のうちの液体急結剤とを混合してなる吹付け工法、(11)アルキルアリルスルホン酸及びその塩が、セメント100質量部に対して0.01〜2.5質量部である(10)の吹付け工法、(12)セメントコンクリートと液体急結剤を吹付け直前で混合して吹付ける(9)〜(11)のいずれかの吹付け工法、である。

本発明の液体急結剤は、従来の液体急結剤に比べ、硫酸アルミニウム濃度が高いにもかかわらず、貯蔵安定性に優れる。さらに、吹付けるセメントコンクリートの流動性、強度性状やひび割れ抵抗性が向上するという効果を奏する。
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明でいう部や%は特に規定のない限り質量基準である。本発明でいうセメントコンクリートとは、セメントペースト、モルタル、コンクリートを総称するものである。
本発明で使用する硫酸アルミニウムは、セメントコンクリートと混合することでスランプを低下し、吹付け直後におけるセメントコンクリートのダレやずり落ちを防止するものであり、アニオン性芳香族化合物やカチオン性界面活性剤を併用することで、これらをそれぞれ単独で用いた場合より吹付け直後におけるセメントコンクリートのダレやずり落ちを防止する効果を大きくするものである。
硫酸アルミニウムは、粉末状として無水物と含水物があり、また、水に溶解して水溶液としたものがあり、いずれも使用可能であるが、このうち、セメントコンクリートとの混合性が良好な面から水溶液として使用するのが好ましい。硫酸アルミニウムの濃度は、固形分換算(無水物)で30〜50%が好ましい。30%未満ではセメントコンクリートの付着が小さい場合があり、50%を越えると貯蔵安定性が悪くなり、セメントコンクリートの凝結・硬化が促進され過ぎ、リバウンド率が高くなる場合がある。
本発明で使用するカチオン性界面活性剤は、液体急結剤の懸濁粒子の沈降を抑制する。また、アニオン性芳香族化合物との相互作用によりセメントコンクリートに粘性を与え、吹付け直後におけるセメントコンクリートを緻密化し、硬化後のひび割れを低減するものである。
カチオン性界面活性剤としては、4級塩型カチオン性界面活性剤が好ましい。4級塩型カチオン性界面活性剤としては、分子構造中に、10から26個の炭素原子含む飽和又は不飽和の直鎖又は分岐鎖アルキル基を、少なくとも1つ有しているものが好ましい。
例えば、アルキル(炭素数10〜26)トリメチルアンモニウム塩、アルキル(炭素数10〜26)ピリジニウム塩、アルキル(炭素数10〜26)イミダゾリニウム塩、アルキル(炭素数10〜26)ジメチルベンジルアンモニウム塩等が挙げられる。
具体的には、ヘキサデシルトリメチルアンモニウムクロライド、ヘキサデシルトリメチルアンモニウムブロマイド、オクタデシルトリメチルアンモニウムクロライド、オクタデシルトリメチルアンモニウムブロマイド、タロートリメチルアンモニウムクロライド、タロートリメチルアンモニウムブロマイド、水素化タロートリメチルアンモニウムクロライド、水素化タロートリメチルアンモニウムブロマイド、ヘキサデシルエチルジメチルアンモニウムクロライド、オクタデシルエチルジメチルアンモニウムクロライド、ヘキサデシルプロピルジメチルアンモニウムクロライド、ヘキサデシルピリジニウムクロライド、1.1−ジメチル−2−ヘキサデシルイミダゾリニウムクロライド、ヘキサデシルジメチルベンジルアンモニウムクロライド等が挙げられる。これらの中から2種以上併用してもよい。 水溶性と増粘効果の観点から、具体的には、ヘキサデシルトリメチルアンモニウムクロライド、オクタデシルトリメチルアンモニウムクロライド、ヘキサデシルピリジニウムクロライド等が好ましい。また、増粘効果の温度安定性の観点から、上記のアルキル基の炭素数の異なるカチオン性界面活性剤を2種以上併用することが好ましい。
特に、塩害による鉄筋の腐食やコンクリート劣化を防止する観点から、塩素等のハロゲンを含まない4級アンモニウム塩を用いることが好ましい。
塩素等のハロゲンを含まない4級塩として、アンモニウム塩やイミダゾリニウム塩等が挙げられ、具体的にはヘキサデシルトリメチルアンモニウムメトサルフェート、ヘキサデシルジメチルエチルアンモニウムエトサルフェート、オクタデシルトリメチルアンモニウムメトサルフェート、オクタデシルジメチルエチルアンモニウムエトサルフェート、タロートリメチルアンモニウムメトサルフェート、タロージメチルエチルアンモニウムエトサルフェート、1.1−ジメチル−2−ヘキサデシルイミダゾリニウムメトサルフェート、ヘキサデシルジメチルヒドロキシエチルアンモニウムアセテート、オクタデシルジメチルヒドロキシエチルアンモニウムアセテート、ヘキサデシルジメチルヒドロキシエチルアンモニウムプロピオネート、オクタデシルジメチルヒドロキシエチルアンモニウムプロピオネート、タロージメチルヒドロキシエチルアンモニウムアセテート、タロージメチルヒドロキシエチルアンモニウムプロピオネート、等が挙げられる。
水溶性と増粘効果の観点から、ヘキサデシルトリメチルアンモニウムメトサルフェート、ヘキサデシルジメチルエチルアンモニウムエトサルフェート、オクタデシルトリメチルアンモニウムメトサルフェート及びオクタデシルジメチルエチルアンモニウムエトサルフェート等が好ましい。
塩素等のハロゲンを含まない4級アンモニウム塩は、例えば、ジメチル硫酸、ジエチル硫酸、炭酸ジメチルで3級アミンを4級化することで得ることができる。
カチオン性界面活性剤の使用量は、セメント100部に対して0.01〜2.5部が好ましい。0.01部未満だと粘性の効果が少なく、貯蔵安定性が得られない可能性があり、2.5部を超えると粘性が大きくなり過ぎ、液体の圧送性に支障が生じる場合がある。
本発明で使用するアニオン性芳香族化合物から選ばれるものとして、芳香環を有するカルボン酸及びその塩、ホスホン酸及びその塩、スルホン酸及びその塩が挙げられ、具体的には、サリチル酸、p−トルエンスルホン酸、スルホサリチル酸、安息香酸、m−スルホ安息香酸、p−スルホ安息香酸、4−スルホフタル酸、5−スルホイソフタル酸、p−フェノールスルホン酸、m−キシレン−4−スルホン酸、クメンスルホン酸、メチルサルチル酸、スチレンスルホン酸、クロロ安息香酸等であり、これらは塩を形成していても良く、これらを2種以上併用しても良い。ただし、重合体である場合は、重量平均分子量(例えば、ゲルーパーミエーションクロマトグラフィー法/ポリエチレンオキサイド換算)500未満であることが好ましい。増粘効果の観点から、p−トルエンスルホン酸、m−キシレン−4−スルホン酸、スチレンスルホン酸及びそれらの塩が好ましい。
アニオン性芳香族化合物の使用量は、セメント100部に対して0.01〜2.5部添加するのが好ましい。0.01部未満だとカチオン性界面活性剤と併用しても粘性の効果が少なく、吹付けたときにダレが生じ、吹付けたセメントコンクリート緻密性が確保できず、ひび割れが生じる可能性があり、2.5部を超えるとセメントコンクリートの粘性が大きくなり、圧送性に支障が生じる場合がある。
本発明で使用するセメントは、特に限定されるものではなく、普通、早強、超早強、中庸熱、及び低熱等の各種ポルトランドセメントや、これらポルトランドセメントに高炉スラグ、フライアッシュ、石灰石微粉末、又はシリカを混合した各種混合セメント、さらには、アルミナセメントや膨張セメントやコロイドセメントやエコセメントなどのいずれも使用可能である。
本発明では、前記各材料や、砂や砂利などの骨材の他に、減水剤、AE剤、繊維、凝結促進剤、及び微粉等を本発明の目的を実質的に阻害しない範囲で併用することが可能である。
減水剤としては、ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物、メラミンスルホン酸ホルマリン縮合物、及びポリカルボン酸系高分子化合物等が使用可能である。
AE剤はセメントコンクリートの凍害を防止するものである。繊維は特にアンカー部のひび割れ防止に有効なものである。また、微粉は空隙を埋めて緻密構造を形成し、高強度化を図るものであり、シリカフューム等が使用可能である。
本発明の液体急結剤は、促進剤としてフッ素化合物を含有しても良い。フッ素化合物は、凝結性状や初期強度発現性を向上する目的で使用する。フッ素化合物は、水または酸性水溶液に溶解するものであれば、特に限定されるものではない。また、液に添加して均一な状態になるようであれば、製造時に投入する順序も問われない。
フッ素化合物としては、フッ化水素、フッ化リチウム、フッ化ナトリウム、フッ化マグネシウム、フッ化カリウム、フッ化アルミニウム、フッ化亜鉛、フッ化アンモニウム、フッ化水素カリウム、三フッ化ホウ素、六フッ化アルミニウムナトリウム、六フッ化アルミニウムカリウム、ケイフッ化水素、ケイフッ化ナトリウム、ケイフッ化マグネシウム、ケイフッ化カリウム、ケイフッ化亜鉛、ケイフッ化アンモニウム等が挙げられ、これらのうち1種又は2種以上が使用可能である。この中では、凝結性状が優れるという点で、六フッ化アルミニウムナトリウムが好ましい。
液体急結剤のフッ素化合物の濃度は、0.1〜10%が好ましく、1〜8%がより好ましい。0.1%未満では凝結性状や初期強度発現性の向上が小さい場合があり、10%を超えると、貯蔵安定性が低下したり、長期強度発現性を阻害したりする場合がある。
本発明の液体急結剤は、アルコールアミン類を含有してもよい。アルコールアミン類は、凝結性状や初期強度発現性を向上する目的で使用する。アルコールアミン類は、水または酸性水溶液に溶解するものであれば、特に限定されるものではない。また、液に添加して均一な状態になるようであれば、製造時に投入する順序も問われない。
アルコールアミン類とは、アミノ基とヒドロキシル基の両方を有する有機化合物の総称である。アルコールアミン類としては、エタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、N−メチルエタノールアミン等が挙げられ、これらのうち1種または2種以上使用可能である。この中では、凝結性状が優れるという点で、ジエタノールアミンが好ましい。
液体急結剤のアルコールアミン類の濃度は、0.1〜5%が好ましく、0.5〜3%がより好ましい。0.1%未満では凝結性状や初期強度発現性がの向上が小さい場合があり、5%を超えると貯蔵安定性が損なわれたり、長期強度発現性を阻害したりする場合がある。
本発明において、液体急結剤の使用量は、セメント100部に対して、3〜20部が好ましく、5〜15部がより好ましく、7〜10部が最も好ましい。3部未満では、急結性吹付けコンクリートの急結性を促進しにくい場合があり、20部を超えると長期強度発現性が損なわれる場合がある。
本発明において、セメント、骨材、及び水等を混合する装置としては、既存の撹拌装置が使用でき、例えば、傾胴ミキサ、オムニミキサ、V型ミキサ、ヘンシェルミキサ、及びナウタミキサ等が使用可能である。
本発明で使用するセメントコンクリート中のセメントの使用量は、330〜500Kg/mが好ましく、水セメント比は40〜65%が好ましい。
本発明の吹付け工法としては、乾式吹付け工法や湿式吹付け工法が可能である。乾式吹付け工法は、例えば、セメント、骨材を混合して空気圧送し、水と液状急結剤を合流混合して吹付ける工法である。湿式吹付け工法は、例えば、予め、セメント、骨材、及び水を混合してセメントコンクリートとし、これをポンプ圧送、又は空気搬送して液体急結剤を合流混合して吹付ける工法である。このうち、乾式吹付け工法では粉塵量が多くなる場合があるため、湿式吹付け工法を用いることが好ましい。
本発明の吹付け工法においては、従来の吹付け設備等が使用可能である。吹付け設備は吹付けが充分に行われれば特に限定されるものではなく、例えば、セメントコンクリートの圧送にはシンテック社製のコンクリートポンプ等が使用可能であり、液体急結剤の圧送にはオカサン機工社製のスクイズポンプ等が使用可能である。
セメントコンクリートの圧送速度は4〜20m/hが好ましく、セメントコンクリートのポンプ圧送圧力は2〜6MPaが好ましい。
液体急結剤を圧送してセメントコンクリートに添加混合する圧縮空気量は、セメントコンクリートが急結剤の圧送管内に侵入し、圧送管内が閉塞するのを防ぐ点で、4〜10m3/minが好ましい。
液体急結剤とセメントコンクリートとの合流点は、混合性を良くするために、管の形状や内壁をらせん状や乱流状態になりやすい構造とすることが可能である。
本発明の吹付け材料は、アニオン性芳香族化合物をあらかじめセメントコンクリートと混合しておき、カチオン性界面活性剤を吹付けノズル手前の混合管でセメントコンクリートと混合することが好ましい。カチオン性界面活性剤をセメントコンクリートに混合すると粘性が上がり、圧送性が低下するため、前記以外の箇所で添加した場合には、閉塞や脈動を生じる場合がある。カチオン性界面活性剤をセメントコンクリートと混合する際、カチオン性界面活性剤をあらかじめ急結剤に混合し、セメントコンクリートと混合することも可能である。
以下、実験例に基づき本発明を詳細に説明する。
「実験例1」
硫酸アルミニウムとカチオン性界面活性剤としてアルキルアンモニウム塩を表1に示すような濃度になるように水に添加し、1時間撹拌して種々の液体急結剤を調製した。また、撹拌後、3時間液を静置し、粘度計で粘度を測定した。さらに、1か月間液を静置し、分離度を評価した。結果を表1に併記する。
<使用材料>
硫酸アルミニウム:硫酸アルミニウム14水和物、市販品
カチオン性界面活性剤:アルキルアンモニウム塩、ヘキサデシルトリメチルアンモニウムメトサルフェート、花王社製、商品名ビスコトップ100B
<測定条件>
粘度:B型粘度計(東機産業社製TVB−10型)を使用。試験環境温度:20℃に設定。
分離度:液全体に対する透明の上澄み液の体積割合を1000mlのビーカーで評価。温度20℃。○:0〜5%、△:5〜10%、×:10%以上、※:懸濁層なし(溶解)
Figure 0006367276
表1より、硫酸アルミニウム濃度30〜35%、アルキルアンモニウム塩濃度0.1〜2.5%であることが液体急結剤の粘度として望ましく、また、分離度が低く、分散性に優れることが分かる。
「実験例2」
各材料の単位量をセメント400kg/m、細骨材1058kg/m、粗骨材710kg/m、高性能減水剤4kg/m、水200kg/m、及びアルキルアリルスルホン酸塩を表2に示すセメント100部に対する使用量となるようにして吹付けコンクリートを調製し、この吹付けコンクリートを吹付け圧力0.4MPa、吹付け速度10m/hの条件下で、コンクリート圧送機「MKW−25SMT」によりポンプ圧送した。急結剤を合流するY字管から3m後方の位置で圧縮空気を導入してコンクリートを空気搬送した。また、Y字管の一方より、硫酸アルミニウム濃度が35%で、アルキルアンモニウム塩を液体急結剤中0.1%含有した液体急結剤をセメント100部に対して10部、圧縮空気と共に空気搬送し、セメントコンクリートに合流混合させた。
このセメントコンクリートについて、圧縮強度、長さ変化率を測定した。結果を表2に併記する。
<使用材料>
セメント:普通ポルトランドセメント、市販品
細骨材:新潟県糸魚川市姫川産川砂、表乾状態、密度2.62g/cm、最大骨材寸法5mm
祖骨材:新潟県糸魚川市姫川産川砂利、表乾状態、密度2.67g/cm、最大骨材寸法15mm
高性能減水剤:ポリカルボン酸系、GCPケミカルズ社製、商品名FTN−30
水:水道水
硫酸アルミニウム:粉末硫酸アルミニウム18水塩、市販品
アニオン性芳香族化合物:アルキルアリルスルホン酸塩、p−トルエンスルホン酸、花王社製、商品名ビスコトップ100A
カチオン性界面活性剤:アルキルアンモニウム塩、ヘキサデシルトリメチルアンモニウムメトサルフェート、花王製、商品名ビスコトップ100B
<測定方法>
圧縮強度:温度20℃、材齢24時間の圧縮強度は、幅25cm×長さ25cmのプルアウト型枠に設置したピンを、プルアウト型枠表面から急結性セメントコンクリートで被覆し、型枠の裏面よりピンを引き抜き、その時の引き抜き強度を求め、(圧縮強度)=(引き抜き強度)×4/(供試体接触面積)の式から圧縮強度を算出した。材齢28日の圧縮強度は、幅50cm×長さ50cm×厚さ20cmの型枠に急結性セメントコンクリートを吹付け、採取した直径5.5cm×長さ110cmの供試体を20トン耐圧機で測定し、圧縮強度を求めた。
長さ変化率:専用型枠(10×10×36cm)に吹付けて供試体を作製した。材齢1日後脱型し基長を行い、温度20℃、湿度60%の室内で28日間養生後、収縮量を測定した。測定はJISR 1129−3(ダイヤルゲージ法)に準拠した。
Figure 0006367276
表2より、アニオン性芳香族化合物の濃度が0.01〜2.5%で、硫酸アルミニウムとカチオン性界面活性剤を含有した液体急結剤と混合し吹付けることにより、吹付けたセメントコンクリートの収縮量が低減し、ひび割れ抵抗性が向上することが分かる。
「実験例3」
硫酸アルミニウム濃度が35%、アルキルアンモニウム塩濃度が0.1%、促進剤(フッ化物、またはアルコールアミン)濃度が表3に示す値になるように水に添加し、実験例1と同様に種々の液体急結剤を調製し、粘度を測定し、分離度を評価した。
<使用材料>
硫酸アルミニウム:実験例1と同様
カチオン性界面活性剤:実験例1と同様
促進剤(ア):六フッ化アルミニウムナトリウム、試薬、市販品
促進剤(イ):ジエタノールアミン、試薬、市販品
Figure 0006367276
表3より、硫酸アルミニウム35%、カチオン性界面活性剤0.1%、一定濃度の促進剤(フッ化化合物10%以下、アルコールアミン類5%以下)の配合であることが、液体急結剤の粘度として望ましく、また、分離度が低く、分散性に優れることが分かる。
本発明の液体急結剤、吹付け材料およびそれを用いた吹付け工法により、従来の液体急結剤に比べ、貯蔵安定性に優れ、また、吹付けセメントコンクリートの流動性が向上し、さらに、吹付けた急結性セメントコンクリートの初期強度が高く、ひび割れ抵抗性も向上させることができるため、土木、建築の分野等で広範囲に使用することが可能である。

Claims (12)

  1. 硫酸アルミニウム30〜50質量%、カチオン性界面活性剤0.01〜2.5質量%、及び水を含有してなる液体急結剤。
  2. カチオン性界面活性剤が、アルキルアンモニウム塩である請求項1記載の液体急結剤。
  3. アルキルアンモニウム塩が、アルキルトリメチルアンモニウム塩である請求項2記載の液体急結剤。
  4. さらに、促進剤を含有してなる請求項1〜3のうちいずれか1項記載の液体急結剤。
  5. 促進剤が、フッ素化合物またはアルコールアミン類である請求項4記載の液体急結剤。
  6. セメントとアニオン性芳香族化合物を含有してなるセメントコンクリートと、請求項1〜5のうちのいずれか1項記載の液体急結剤とを含有してなる吹付け材料。
  7. アニオン性芳香族化合物が、アルキルアリルスルホン酸及びその塩である請求項記載の吹付け材料。
  8. アニオン性芳香族化合物が、セメント100質量部に対して0.01〜2.5質量部である請求項6又は7記載の吹付け材料。
  9. セメントコンクリートと請求項1〜5のうちのいずれか1項記載の液体急結剤とを混合してなる吹付け工法。
  10. セメントとアルキルアリルスルホン酸及びその塩を含有してなるセメントコンクリートと、請求項1〜5のうち1項記載の液体急結剤とを混合してなる吹付け工法。
  11. アルキルアリルスルホン酸及びその塩が、セメント100質量部に対して0.01〜2.5質量部である請求項10記載の吹付け工法。
  12. セメントコンクリートと液体急結剤を吹付け直前で混合して吹付ける請求項9〜11のうちのいずれか1項記載の吹付け工法。
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