JP6033664B2 - 液体急結剤およびその製造方法、それを用いたセメント組成物および吹付け工法 - Google Patents
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Description
この工法は、通常、掘削工事現場に設置した計量混合プラントで、セメント、骨材、及び水を計量混合して吹付け用のコンクリートを調製し、アジテータ車で運搬し、コンクリートポンプで圧送し、途中に設けた合流管で他方から圧送された急結剤と混合して急結性吹付けコンクリートとし、地山面に所定の厚さになるまで吹付ける工法である。
しかし、高濃度の液体急結剤は、長期間貯蔵すると、液中に析出物が生成したり、液がゲル化したり、懸濁粒子が沈降したりする場合がある。硫酸アルミニウムの水に対する溶解度は、20℃で27%であり、共存する溶質や液温によって変動するが、溶解度以上の硫酸アルミニウムを含有する液体急結剤は、貯蔵安定性が悪く、製造直後の性状を保持するのは難しい。液中に析出物が生成したり、液がゲル化したり、懸濁粒子が沈降したりするので、このような状態の液体急結剤を使用すると、ポンプが閉塞したり、コンクリートとの混合性が悪くなり、優れた性状が得られなかったりする場合があった。また、溶解度は液温によって変動するため、この貯蔵性の問題は、貯蔵する温度に依存し、高温または低温で貯蔵するとより顕著に現れる。
急結剤をセメント組成物に添加すると、流動性が急速に低下するため、急結剤とセメント組成物が十分に混合しない場合があるが、分散剤を併用することで、流動性が高まり、急結剤とセメント組成物の混合性が良好になる(特許文献7)。
また、硫酸アルミニウム、亜硫酸塩類、ポリカルボン酸系分散剤を含有してなるセメント混和材は知られている(特許文献8)。しかしながら、硫酸アルミニウムは粉状あるいは水溶液状であるため、懸濁液のような高濃度の硫酸アルミニウムの液体に関する検討はなされていない。
本発明でいうコンクリートとは、セメントペースト、モルタル、およびセメントコンクリートの総称である。
なお、本発明で言う部や%は、特に規定のない限り質量基準である。
液体急結剤の硫酸アルミニウムの濃度は、30〜50%が好ましく、33〜40%がより好ましい。30%未満ではコンクリートと混合した際に、優れた急結性が得られない場合があり、50%を超えると液の貯蔵安定性が損なわれる場合がある。
液体急結剤のポリカルボン酸系分散剤の濃度は、0.01〜5%が好ましく、0.1〜3%がより好ましい。0.01%未満では液の貯蔵安定性が損なわれる場合があり、5%以上ではコンクリートと混合した際に、強度発現性を阻害する場合がある。
本発明の液体急結剤の貯蔵安定性を、分離度で評価すると、10%以下が好ましく、5%以下がより好ましい。なお、ここで言う分離度とは、懸濁粒子が沈降して生じる上澄み液の、液全体に対する体積割合のことであり、分離度が極めて少ないことを、液が均一であると言う。
本発明の液体急結剤は、−10〜40℃において体積割合で液の90%以上が懸濁しているものであり、この温度範囲で分離度が極めて少なく液が均一である。−10℃未満では液が凝固する場合があり、40℃を超えると分離度が大きくなる場合がある。
本発明では、液体急結剤の粘度が20,000 mPa・sを超えないように、液体急結剤の製造時に原料の投入順序を以下の2通りのいずれかにする。
順序1:ポリカルボン酸系分散剤が粉末の場合は、硫酸アルミニウムを添加する前に水に溶解させて混合する。硫酸アルミニウムは、粉末、あるいは、粉末と水溶液を併用できる。
順序2:硫酸アルミニウム水溶液、ポリカルボン酸系分散剤水溶液、粉末硫酸アルミニウム(粉末、あるいは、粉末と水溶液を併用)を、この順序で投入し、混合する。
なお、水溶液とは、製造時の温度において、濃度が溶解度未満の均一な液を指し、溶解とは、固体が水に溶けて、均一な水溶液になることを言う。また、液体急結剤を希釈する目的で水を加えることは可能であり、その順序は問わない。
フッ素化合物としては、フッ化水素、フッ化リチウム、フッ化ナトリウム、フッ化マグネシウム、フッ化カリウム、フッ化アルミニウム、フッ化亜鉛、フッ化アンモニウム、フッ化水素カリウム、三フッ化ホウ素、六フッ化アルミニウムナトリウム、六フッ化アルミニウムカリウム、ケイフッ化水素、ケイフッ化ナトリウム、ケイフッ化マグネシウム、ケイフッ化カリウム、ケイフッ化亜鉛、ケイフッ化アンモニウム等が挙げられ、これらのうち1種または2種以上が使用可能である。この中では、凝結性状が優れるという点で、六フッ化アルミニウムナトリウムが好ましい。
液体急結剤のフッ素化合物の濃度は、0.1〜10%が好ましく、0.3〜8%がより好ましい。0.1%未満では凝結性状や初期強度発現性の向上が小さい場合があり、10%を超えると貯蔵安定性が低下したり、長期強度発現性を阻害したりする場合がある。
アルコールアミン類とは、アミノ基とヒドロキシル基の両方を有する有機化合物の総称である。アルコールアミン類としては、エタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、N−メチルエタノールアミン等が挙げられ、これらのうち1種または2種以上が使用可能である。この中では、凝結性状が優れるという点で、ジエタノールアミンが好ましい。
液体急結剤のアルコールアミン類の濃度は0.1〜5%が好ましく、0.5〜3%がより好ましい。0.1%未満では凝結性状や初期強度発現性の向上が小さい場合があり、5%を超えると貯蔵安定性が損なわれたり、長期強度発現性を阻害したりする場合がある。
細骨材としては、川砂、山砂、石灰砂、及び珪砂などが使用可能であり、粗骨材としては、川砂利、山砂利、及び石灰砂利などが使用可能である。
硫酸アルミニウムとポリカルボン酸系分散剤を、表1に示す濃度になるように、水、ポリカルボン酸系分散剤(液体)、硫酸アルミニウム(粉末)の順に添加し、1時間攪拌することで、種々の液体急結剤を調製した。また、攪拌後、液を静置し、液の分離度を評価した。結果を表1に併記する。なお、比較例として、ポリカルボン酸系分散剤を添加しない硫酸アルミニウム25%水溶液と30%懸濁液も評価した。
硫酸アルミニウム:硫酸アルミニウム14水和物、粉末、市販品
ポリカルボン酸系分散剤A:サンノプコ社製、商品名「ノプコスパース44−C」、液体
ポリカルボン酸系分散剤B:花王社製、商品名「ポイズ530」、液体
試験環境温度:20℃に設定
分離度:液全体に対する懸濁相の体積割合を評価。分離度とは、懸濁粒子が沈降して生じる上澄み液の、液全体に対する体積割合
実験例1と同様に、液体急結剤の硫酸アルミニウム濃度が35%、ポリカルボン酸系分散剤濃度が1%となるように調製し、さらに、表2に示す濃度になるように促進剤を、水、ポリカルボン酸系分散剤A(液体)、促進剤、硫酸アルミニウム(粉末)の順に添加し、液体急結剤を調製した。また、実験例1と同様に分離度を評価した。結果を表2に併記する。
促進剤ア:六フッ化アルミニウムナトリウム(ア)、市販品
促進剤イ:ジエタノールアミン(イ)、市販品
表3に示すように、実験例1、実験例2で示した配合の液体急結剤を調製した。また、調製後の液を、−10、20、40℃の温度で、実験例1と同様の手順で、3か月後の分離度を評価した。結果を表3に併記する。
液体急結剤の濃度が、表4に示す値になるように硫酸アルミニウム、ポリカルボン酸系分散剤Aを実験例1と同様の順序で水に添加し、液体急結剤を調製した。また、細骨材/セメント比=3、水/セメント比=52%のモルタルを調整し、そのセメント100部に対して、液体急結剤を7部添加し、急結性モルタルとし、その凝結時間、さらに圧縮強度を測定した。液体急結剤は、製造1週間後のものを使用した。結果を表4に併記する。
セメント:普通ポルトランドセメント、市販品、ブレーン比表面積4,200cm2/g、比重3.16
細骨材:新潟県糸魚川市姫川産川砂、表乾状態、比重2.62、5mm下品
凝結試験:急結性モルタルを土木学会基準「吹付けコンクリート用急結剤品質規格(JSCED−102)」に準じて測定
圧縮強度:急結性モルタルをJIS R 5201に準じて測定
試験環境温度:20℃に設定
実験例1と同様に、液体急結剤の濃度が、硫酸アルミニウム35%、ポリカルボン酸系分散剤1%の液体急結剤を調製した。また、実験例4と同様のモルタルを調製し、そのセメント100部に対して、液体急結剤を表5に示す量添加し、急結性モルタルとし、その凝結時間を、さらに、圧縮強度を測定した。液体急結剤は、製造1週間後のものを使用した。結果を表5に併記する。
実験例1と同様に、液体急結剤の硫酸アルミニウムの濃度が35%、ポリカルボン酸系分散剤の濃度が1%となるように調製し、さらに、実験例2と同様に、表6に示す種類および濃度の促進剤を含有する液体急結剤を調製した。また、実験例4と同様のモルタルを調製し、そのセメント100部に対して、急結剤を7部添加し、急結性モルタルとし、その凝結時間、さらに圧縮強度を測定した。液体急結剤は、製造1週間後のものを使用した。結果を表6に併記する。
Claims (5)
- 硫酸アルミニウム、ポリカルボン酸系分散剤、及び六フッ化アルミニウムナトリウムであるフッ素化合物からなり、−10〜40℃において撹拌後3ヶ月静置しても体積割合で液の90%以上が懸濁してなり、硫酸アルミニウム濃度が30〜50質量%、ポリカルボン酸系分散剤濃度が0.01〜5質量%であり、さらに、六フッ化アルミニウムナトリウムであるフッ素化合物濃度が0.1〜10質量%であることを特徴とする液体急結剤。
- さらに、アルコールアミン類を含有することを特徴とする請求項1記載の液体急結剤。
- ポリカルボン酸系分散剤が粉末の場合、硫酸アルミニウムを添加する前に水に溶解させて混合することを特徴とする請求項1または2記載の液体急結剤の製造方法。
- 請求項1または2記載の液体急結剤をセメント100質量部に対し3〜20質量部含有することを特徴とするセメント組成物。
- 請求項4記載のセメント組成物を用いた吹付け工法。
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