JP6924688B2 - 水底地盤改良用注入材 - Google Patents

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Description

本発明は、水底地盤改良用注入材に関する。
河川や海洋の水底にある地盤改良工事のために、セメント、スラグ等の水硬性粉体(以下、「固化材」という。)等を、水に分散させてスラリー状とした注入材(以下、「注入材」という。)を調合し、これを、注入管を用いて地盤中に圧入し固化させる地盤改良工法が実用化されている。この工法は各種の態様で実施されているが、代表的な手法として、ジェットグラウト工法がある。
これらの工法は、注入材の注入にともなって水底地盤上に土砂、水硬性粉体、水の混ざった排出物(以下、「スライム」という。)が、注入量の1〜1.6倍量も湧出してくるという問題がある。さらに、船舶のスクリューの回転等の影響でスライムが水中に懸濁し水質汚濁の原因にもなる。
そこで、スライムの水中への分散による水質汚濁を低減するために、水溶性高分子を配合する方法が検討されている(特許文献1)。しかしながら、セルロース系増粘剤に代表される水溶性高分子を、水硬性粉体を含むスラリーに添加すると、水硬性粉体の水和反応を阻害し、凝結遅延を引き起こすため、施工後の注入材の硬化が遅れる場合がある。その場合、隣接した箇所に同様な施工をすると、先に施工した箇所の硬化遅延を起こした注入材部分への新規の注入材の流入や、先に施工した箇所から再びスライムの排出が起こる。これを避ける為に、水溶性高分子を配合した注入材を用いる場合は硬化までの時間の確保が必要になり、施工に時間がかかり、工期に支障を来たしてしまう問題がある。
ジェットグラウト工法に用いられる注入材は、一般に直径が1.2mm〜3.2mmのノズルにより噴射されるため(図解グラウト便覧)、コンクリートに使用されるような直径5mm以上の骨材を含有せず、また、「ジェットグラウト工法用混和剤(流動化促進剤)の認定について」(日本ジェットグラウト協会)の配合基準に示されるように、水/水硬性粉体比が約1(コンクリートでは水/水硬性粉体比が約0.6)で用いられる。従って、コンクリートより大きな水/水硬性粉体比であって、硬化遅延がなく、湧出するスライムが水中に分散・懸濁しない注入材が望まれる。
一方で、セメントスラリー中に特定のアニオン界面活性剤と特定のカチオン界面活性剤を一定比率で添加することで、紐状ミセルと呼ばれる擬似的な高分子が形成され、高い粘弾性を得られることが知られている(特許文献2)。この擬似的な高分子はアルキル鎖部分での疎水結合や、親水部での特異な相互作用など共有結合以外の分子間相互作用によって構築されているため、一定のせん断力を受けると擬似高分子構造が崩壊し粘弾性が低下するといった特徴を有している(高いチキソトロピー性)。そのため、せん断力のかかる輸送中は擬似高分子構造が崩壊して低粘度化し、せん断力が除かれた打設現場では擬似高分子構造が再生され粘弾性が戻るといった、これまでの有機高分子系増粘剤にはない性能(ポンプ圧送性と粘弾性の両立)を示す。
特許文献2のアニオン界面活性剤とカチオン界面活性剤によって形成される紐状ミセルは、水中において、親水基を外側(水相側)、疎水部を内側(油相側)に向けて配列していると考えられている。紐状ミセルの示す粘弾性は疎水部の炭素数に相関があり、界面活性剤のクラフト点以上の温度では、炭素数が多い程、一定温度・添加量において高い粘弾性を示す。粘弾性は擬似高分子である紐状ミセル同士の絡み合いによって発現するが、紐状ミセル同士が絡んだ際、一定の確率でミセル同士にすり抜けが起こる。この時、疎水部の炭素数が多いほど、疎水部の体積が増加し、紐状ミセル同士のすり抜けが困難となる。その結果、すり抜けの確率が減少し、絡み合いが強化され、系全体の粘弾性が向上するものと推察される。
特開平11−50444号公報 特開2003−313536号公報
本発明は、硬化遅延がなく、湧出するスライムが水中に分散、懸濁しない水底地盤改良用注入材を提供する。
本発明は、(A)炭化水素基の炭素数が12以上22以下であり、アルキレンオキサイドの平均付加モル数が0以上25以下である、硫酸エステル又はその塩(以下、(A)成分という)、(B)脂肪酸部分の炭素数が10以上22以下である、脂肪酸アルカノールアミド(以下、(B)成分という)、(C)分散剤(以下、(C)成分という)、水硬性粉体、及び水を含有する水底地盤改良用注入材に関する。
以下、アルキル基又はアルケニル基の炭素数が12以上22以下であり、アルキレンオキサイドの平均付加モル数が0以上25以下である、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩又はポリオキシエチレンアルケニルエーテル硫酸塩を(A)成分、脂肪酸部分の炭素数が10以上22以下である、脂肪酸アルカノールアミドを(B)成分、分散剤を(C)成分という。
本発明によれば、硬化遅延がなく、湧出するスライムが水中に分散、懸濁しない水底地盤改良用注入材が提供される。
〔水底地盤改良用注入材〕
本発明者らは、種々検討を行った結果、(A)成分の特定の硫酸エステル又はその塩と(B)成分の特定の脂肪酸アルカノールアミドとの組み合わせが、低濃度で高い粘弾性を示す紐状ミセルを形成することを見いだした。水中での界面活性剤のミセル構造に影響する因子の一つに、その界面活性剤の充てんパラメータがある。本発明の(A)成分と(B)成分は、それぞれの充てんパラメータが相違し、これらを混合した系中では、暫定的に(A)成分と(B)成分の混合物を考えるとその混合物の平均(分子数での平均)充てんパラメータが、紐状ミセルを形成するのに適した値となっているものと推察される。
本発明に(A)成分と(B)成分とを併用することで、優れたスライム水質汚濁抑制効果が得られると同時に凝結遅延性が小さいのは、以下の理由によると考えられる。すなわち、本発明の(A)成分と(B)成分との組み合わせでは、両者を混合した時に、水相中に紐状ミセルを形成し、この紐状ミセルの形成により、高い粘弾性が注入材に付与されるため、優れた水質汚濁抑制効果を発揮するものと考えられる。さらに、注入材表面はこのミセル会合体により保護(コーティング)されるため水との直接的な接触でも水硬性粉体や土粒子が水中で飛散するのを防止する効果を有するものと考えられる。また、一般のセルロース誘導体は極性の高い水酸基を多数有しているため水硬性粉体の水和に必要なカルシウムイオンと結合し、水硬性粉体の水和反応を抑制する。これに対し、本発明の(A)成分と(B)成分との組み合わせによって形成される紐状ミセルは、電荷的にはわずかに陰性であり、そのため、カルシウムイオンの捕捉が少なく,固化材粒子の水和反応を抑制せず、また水硬性粉体表面に吸着しないことにより凝結遅延性が殆ど無いと考えられる。
<(A)成分>
本発明の水底地盤改良用注入材は、(A)成分として、炭化水素基の炭素数が12以上22以下であり、アルキレンオキサイドの平均付加モル数が0以上25以下である、硫酸エステル又はその塩を含有する。
炭化水素基は、好ましくは直鎖若しくは分岐鎖のアルキル基又は直鎖若しくは分岐鎖のアルケニル基であり、より好ましくは直鎖若しくは分岐鎖のアルケニル基であり、更に好ましくは直鎖のアルケニル基である。
炭化水素基の炭素数は、高い粘弾性を得る観点から、12以上、好ましくは14以上、より好ましくは16以上、更に好ましくは18以上、そして、22以下、好ましくは20以下である。
炭化水素基は、例えば、ラウリル基、ミリスチル基、パルミチル基、オレイル基、ステアリル基及びドコシル基から選ばれる1種以上が挙げられ、好ましくはミリスチル基、パルミチル基、オレイル基及びステアリル基から選ばれる1以上であり、より好ましくはパルミチル基、オレイル基及びステアリル基から選ばれる1種以上であり、更に好ましくはオレイル基、ステアリル基、より更に好ましくはオレイル基である。
アルキレンオキサイドの平均付加モル数は0以上25以下である。
アルキレンオキサイドは、炭素数2以上4以下のアルキレンオキサイドが挙げられる。アルキレンオキサイドはエチレンオキサイドが好ましい。(A)成分は、アルキレンオキサイドとしてエチレンオキサイドを含むことが好ましい。
炭化水素基の炭素数が12以上16以下の場合、環境への負荷が低い観点から、アルキレンオキサイドの平均付加モル数は0であることが好ましい。
炭化水素基の炭素数が12以上16以下の場合、アルキレンオキサイドの平均付加モル数は、水への溶解性の観点から、好ましくは1以上、より好ましくは2以上、そして、紐状ミセル内における活性剤の配列密度を高める観点から、好ましくは20以下、より好ましくは16以下、更に好ましくは14以下、より更に好ましくは12以下、より更に好ましくは10以下、より更に好ましくは8以下、より更に好ましくは6以下である。
炭化水素基の炭素数が17以上22以下の場合、アルキレンオキサイドの平均付加モル数は、水への溶解性の観点から、好ましくは2以上、より好ましくは4以上、更に好ましくは5以上、そして、紐状ミセル内における活性剤の配列密度を高める観点から、好ましくは20以下、より好ましくは18以下、更に好ましくは16以下、より更に好ましくは14以下、より更に好ましくは12以下である。
(A)成分の硫酸エステルの塩として、ナトリウム塩、アンモニウム塩、カリウム塩、カルシウム塩、マグネシウム塩等から選ばれる無機塩、モノエタノールアンモニウム塩、ジエタノールアンモニウム塩、トリエタノールアンモニウム塩、モルホリニウム塩等から選ばれる有機アンモニウム塩が好適である。
(A)成分としては、具体的には、アルキルサルフェート、アルケニルサルフェート、ポリオキシアルキレンアルキルエーテルサルフェート、ポリオキシアルキレンアルケニルエーテルサルフェート、アルキルフェニルサルフェート、アルケニルフェニルサルフェート、ポリオキシアルキレンアルキルフェニルエーテルサルフェート、ポリオキシアルキレンアルケニルフェニルエーテルサルフェートが挙げられ、高い粘弾性を得る観点から、アルケニルサルフェート、ポリオキシアルキレンアルキルエーテルサルフェート、及びポリオキシアルキレンアルケニルエーテルサルフェートから選ばれる1種以上が好ましく、ポリオキシアルキレンアルキルエーテルサルフェート、及びポリオキシアルキレンアルケニルエーテルサルフェートから選ばれる1種以上がより好ましい。
(A)成分としては、高い粘弾性を得る観点から、下記一般式(a1)で表される化合物が好適である。
1a−O−(R2aO)−SO (a1)
〔式中、R1aは、炭素数12以上22以下の炭化水素基であり、R2aは、炭素数2以上4以下のアルキレン基、好ましくはエチレン基であり、nは平均付加モル数であり0以上25以下の数である。Mは水素原子又は陽イオン、好ましくは無機又は有機の陽イオンである。〕
一般式(a1)中、R1aは、好ましくは直鎖若しくは分岐鎖のアルキル基又は直鎖若しくは分岐鎖のアルケニル基であり、より好ましくは直鎖若しくは分岐鎖のアルケニル基であり、更に好ましくは直鎖のアルケニル基である。
1aの炭素数は、高い粘弾性を得る観点から、12以上、好ましくは14以上、より好ましくは16以上、更に好ましくは18以上、そして、22以下、好ましくは20以下である。
一般式(a1)中、高い粘弾性を得る観点から、R1aは、例えば、ラウリル基、ミリスチル基、パルミチル基、オレイル基、リノール基、ステアリル基及びドコシル基から選ばれる1種以上が挙げられ、好ましくはミリスチル基、パルミチル基、リノール基、オレイル基及びステアリル基から選ばれる1以上であり、より好ましくはリノール基、パルミチル基、オレイル基及びステアリル基から選ばれる1種以上であり、更に好ましくはリノール基、オレイル基、及びステアリル基から選ばれる1種以上である。
一般式(a1)中、R1aの炭素数が12以上16以下の場合、nは、環境への負荷が低い観点から、0であることが好ましい。
一般式(a1)中、R1aの炭素数が12以上16以下の場合、nは、水への溶解性の観点から、好ましくは1以上、より好ましくは2以上、そして、紐状ミセル内における活性剤の配列密度を高める観点から、好ましくは20以下、より好ましくは16以下、更に好ましくは14以下、より更に好ましくは12以下、より更に好ましくは10以下、より更に好ましくは8以下、より更に好ましくは6以下である。
一般式(a1)中、R1aの炭素数が17以上22以下の場合、nは、水への溶解性の観点から、好ましくは2以上、より好ましくは4以上、更に好ましくは5以上、そして、紐状ミセル内における活性剤の配列密度を高める観点から、好ましくは20以下、より好ましくは18以下、更に好ましくは16以下、より更に好ましくは14以下、より更に好ましくは12以下である。
一般式(a1)中、Mは水素原子、あるいはナトリウムイオン、アンモニウムイオン、カリウムイオン、カルシウムイオン、マグネシウムイオン等の無機陽イオン、モノエタノールアンモニウムイオン、ジエタノールアンモニウムイオン、トリエタノールアンモニウムイオン、モルホリニウムイオン等の有機陽イオンが挙げられ、好ましくはナトリウムイオン、カリウムイオン、アンモニウムイオン、カルシウムイオン、マグネシウムイオンの無機陽イオンであり、より好ましくはナトリウムイオン、アンモニウムイオンである。
(A)成分の平均充てんパラメータは、高い粘弾性を得る観点から、1/3以上1以下が好ましい。本発明において、平均充てんパラメータは以下の式で表される。
平均充てんパラメータ= v/ (a0×lc)
v: 炭化水素基の体積
a0 : 界面活性剤の水界面の最適頭部面積
lc: 炭化水素鎖の臨界鎖長
(A)成分のデイビス法で導出されるHLBは、高い粘弾性を得る観点から、10以上40以下が好ましい。
<(B)成分>
本発明の水底地盤改良用注入材は、(B)成分として、脂肪酸部分の炭素数が10以上22以下である、脂肪酸アルカノールアミドを含有する。
脂肪酸部分の炭化水素基は、脂肪酸アルカノールアミドの原料脂肪酸においてカルボキシル基の炭素原子を含む炭化水素基であり、好ましくは直鎖若しくは分岐鎖のアルキル基又は直鎖若しくは分岐鎖のアルケニル基であり、より好ましくは直鎖若しくは分岐鎖のアルケニル基であり、更に好ましくは直鎖のアルケニル基である。
脂肪酸部分の炭素数は、脂肪酸アルカノールアミドの原料脂肪酸においてカルボキシル基の炭素原子を含む炭素数であり、高い粘弾性を得る観点から、10以上、好ましくは12以上、より好ましくは14以上、更に好ましくは16以上、そして、22以下、好ましくは20以下であり、更に好ましくは18以下、より更に好ましくは18である。
脂肪酸アルカノールアミドとしては、脂肪酸モノエタノールアミド、脂肪酸メチルモノエタノールアミド、脂肪酸エチルモノエタノールアミド、脂肪酸プロピルモノエタノールアミド、脂肪酸メタノールエタノールアミド、脂肪酸ジエタノールアミド等が挙げられ、高い粘弾性を得る観点から、脂肪酸ジエタノールアミドが好ましい。
(B)成分は、例えば、オレイン酸ジエタノールアミド、ステアリン酸ジエタノールアミド、パーム核脂肪酸ジエタノールアミドのうち脂肪酸部の炭素数が10以上18以下の化合物、ヤシ脂肪酸ジエタノールアミド、ミリスチン酸ジエタノールアミド、及びラウリン酸ジエタノールアミド等が挙げられ、これらを2種以上併用してもよい。(B)成分は、水への溶解性を維持し、かつ、高い粘弾性を得る観点から、好ましくはオレイン酸ジエタノールアミド、パーム核脂肪酸ジエタノールアミド、及びヤシ脂肪酸ジエタノールアミドから選ばれる1種以上であり、より好ましくはオレイン酸ジエタノールアミド、パーム核脂肪酸ジエタノールアミドから選ばれる1種以上であり、更に好ましくはオレイン酸ジエタノールアミドである。
(B)成分は、高級脂肪酸とアルカノールアミンを反応させることにより得られるが、脂肪酸アルカノールアミド以外の副産物が同時に生成される。副産物としては、脂肪酸アルカノールアミドと脂肪酸が脱水縮合した脂肪酸アルカノールアミド脂肪酸モノエステル、脂肪酸アルカノールアミド脂肪酸ジエステル、並びにアルカノールアミンと脂肪酸が脱水縮合した脂肪酸アルカノールアミンモノエステル、脂肪酸アルカノールアミンジエステル等が挙げられる。本発明の(B)成分には、本発明の効果を損なわない限り、前記の副産物を微量に含んでも良い。(B)成分中の前記副産物の含有量は、高い粘弾性を得る観点から、(B)成分100質量部中、好ましくは10質量部以下、より好ましくは7質量部以下、更に好ましくは5質量部以下である。
<(C)成分>
本発明の水底地盤改良用注入材は、(C)成分として、分散剤を含有する。
本発明の水底地盤改良用注入材において、分散剤は、ポリカルボン酸系重合体、メラミン系重合体、フェノール系重合体、リグニン系重合体が挙げられ、水硬性組成物の必要な強度に達するまでの時間を短縮する観点から、好ましくは、ポリカルボン酸系重合体、メラミン系重合体、フェノール系重合体から選ばれる分散剤であり、より好ましくはポリカルボン酸系重合体、フェノール系重合体から選ばれる分散剤であり、更に好ましくはポリカルボン酸系重合体である。
メラミン系重合体としてはメラミンスルホン酸塩ホルムアルデヒド縮合物(例えば花王株式会社製マイテイ150−V2)、フェノール系重合体としては、フェノールスルホン酸ホルムアルデヒド縮合物(特開昭49−104919号公報に記載の化合物等)、リグニン系重合体としてはリグニンスルホン酸塩(ボレガード社製ウルトラジンNA、日本製紙ケミカル株式会社製サンエキス、バニレックス、パールレックス等)等を用いることができる。
ポリカルボン酸系重合体としては、ポリアルキレングリコールと(メタ)アクリル酸とのモノエステルと(メタ)アクリル酸等のカルボン酸との共重合体(例えば特開平8−12397号公報に記載の化合物等)、ポリアルキレングリコールを有する不飽和アルコールと(メタ)アクリル酸等のカルボン酸との共重合体、ポリアルキレングリコールを有する不飽和アルコールとマレイン酸等のジカルボン酸との共重合体等を用いることができる。ここで、(メタ)アクリル酸は、アクリル酸及びメタクリル酸から選ばれるカルボン酸の意味である。
<水硬性粉体>
本発明の水底地盤改良用注入材に使用される水硬性粉体とは、水と混合することで硬化する粉体であり、例えば、普通ポルトランドセメント、早強ポルトランドセメント、超早強ポルトランドセメント、耐硫酸塩ポルトランドセメント、低熱ポルトランドセメント、白色ポルトランドセメント、エコセメント(例えばJIS R5214等)が挙げられる。これらの中でも、水硬性組成物の必要な強度に達するまでの時間を短縮する観点から、早強ポルトランドセメント、普通ポルトランドセメント、耐硫酸性ポルトランドセメント及び白色ポルトランドセメントから選ばれるセメントが好ましく、早強ポルトランドセメント、及び普通ポルトランドセメントから選ばれるセメントがより好ましい。
また、水硬性粉体には、高炉スラグ、フライアッシュ、シリカヒューム、無水石膏等が含まれてよく、また、非水硬性の石灰石微粉末等が含まれていてもよい。水硬性粉体として、セメントと高炉スラグ、フライアッシュ、シリカヒューム等とが混合された高炉セメントやフライアッシュセメント、シリカヒュームセメントを用いてもよい。
また、水硬性粉体は、セメント又はセメントとベントナイトとの混合粉末が挙げられる。
<水>
本発明で使用する水は、いわゆる調合水であり、例えば真水、水道水、海水、工業用水、等、本注入材の性能を妨げないものであれば特に制限は無い。
<骨材>
本発明の水底地盤改良用注入材は、骨材を含有することできる。骨材は、細骨材や粗骨材等が挙げられ、細骨材は山砂、陸砂、川砂、砕砂が好ましく、粗骨材は山砂利、陸砂利、川砂利、砕石が好ましい。用途によっては、軽量骨材を使用してもよい。なお、骨材の用語は、「コンクリート総覧」(1998年6月10日、技術書院発行)による。
<その他成分>
本発明の水底地盤改良用注入材は、本発明の効果に影響ない範囲で、更に前記成分以外のその他の成分を含有することもできる。例えば、AE剤、遅延剤、起泡剤、増粘剤、発泡剤、防水剤、流動化剤、消泡剤、ひび割れ低減剤、膨張剤等が挙げられる。
<組成等>
本発明の水底地盤改良用注入材は、(A)成分と(B)成分の合計含有量が、水100質量部に対して、水質汚濁抑制効果の観点から、好ましくは0.05質量部以上、より好ましくは0.1質量部以上、更に好ましくは0.2質量部以上、そして、凝結遅延性の観点から、好ましくは40質量部以下、より好ましくは20質量部以下、更に好ましくは10質量部以下、より更に好ましくは5質量部以下である。
また本発明の水底地盤改良用注入材は、(A)成分の含有量が、水100質量部に対して、水質汚濁抑制効果の観点から、好ましくは0.025質量部以上、より好ましくは0.05質量部以上、更に好ましくは0.1質量部以上、そして、凝結遅延性の観点から、好ましくは20質量部以下、より好ましくは10質量部以下、更に好ましくは5質量部以下、より更に好ましくは2.5質量部以下である。
また本発明の水底地盤改良用注入材は、(B)成分の含有量が、水100質量部に対して、水質汚濁抑制効果の観点から、好ましくは0.025質量部以上、より好ましくは0.05質量部以上、更に好ましくは0.1質量部以上、そして、凝結遅延性の観点から、好ましくは20質量部以下、より好ましくは10質量部以下、更に好ましくは5質量部以下、より更に好ましくは2.5質量部以下である。
本発明の水底地盤改良用注入材は、(A)成分と(B)成分の合計含有量が所定の範囲内であり、かつ(A)成分と(B)成分の各含有量が所定の範囲内であることが好ましい。
ここでの水は、水底地盤改良用注入材の水相部分の水である。
本発明の水底地盤改良用注入材において、(A)成分と(B)成分の質量比(A)/(B)は、水質汚濁抑制効果の観点から、好ましくは3/97以上、より好ましくは10/90以上、更に好ましくは15/85以上、より更に好ましくは25/75以上、より更に好ましくは35/65以上、そして、好ましくは95/5以下、より好ましくは90/10以下、更に好ましくは85/15以下、より更に好ましくは75/25以下、より更に好ましくは65/35以下である。
本発明の水底地盤改良用注入材は、(C)成分の含有量が、水硬性粉体100質量部に対して、ポンプ圧送性の観点から、好ましくは0.01質量部以上、より好ましくは0.05質量部以上、更に好ましくは0.1質量部以上、そして、材料分離抵抗性の観点から、好ましくは10質量部以下、より好ましくは8質量部以下、更に好ましくは6質量部以下、より更に好ましくは3質量部以下である。
本発明の水底地盤改良用注入材は、水/水硬性粉体比(W/P)が、作業性(注入材の粘性)の観点から、好ましくは30質量%以上、より好ましくは40質量%以上、更に好ましくは50質量%以上、そして、注入材の強度の観点から、好ましくは500質量%以下、より好ましくは400質量%以下、更に好ましくは300質量%以下、より更に好ましくは150質量%以下である。
ここで、水/水硬性粉体比(W/P)は、水底地盤改良用注入材の水と水硬性粉体の質量百分率(質量%)であり、水/水硬性粉体×100で算出される。水/水硬性粉体比は、水和反応により硬化する物性を有する粉体の量に基づいて算出される。またW/Pは、水硬性粉体がセメントである場合は、W/Cで表記される場合がある。
なお、水硬性粉体が、セメントなどの水和反応により硬化する物性を有する粉体の他、ポゾラン作用を有する粉体、潜在水硬性を有する粉体、及び石粉(炭酸カルシウム粉末)から選ばれる粉体を含む場合、本発明では、それらの量も水硬性粉体の量に算入する。また、水和反応により硬化する物性を有する粉体が、高強度混和材を含有する場合、高強度混和材の量も水硬性粉体の量に算入する。これは、水硬性粉体の質量が関係する他の質量部などにおいても同様である。
本発明の水底地盤改良用注入材を用いた地盤改良工法は、従来の各種の態様の地盤改良方法が使用できるが、特にジェットグラウト工法に好適である。
〔水底地盤改良用注入材の製造方法〕
本発明の水底地盤改良用注入材の製造方法は、(A)成分、(B)成分、(C)成分、水硬性粉体及び水を混合する、水底地盤改良用注入材の製造方法である。
本発明の水底地盤改良用注入材の製造方法には、本発明の水底地盤改良用注入材で述べた事項を適宜適用することができる。
本発明の水底地盤改良用注入材の製造方法は、水と(A)成分と(B)成分と(C)成分とを混合したものを、水硬性粉体に添加し、混合して水底地盤改良用注入材を製造することが好ましい。
本発明の水底地盤改良用注入材の製造方法において、各成分の混合は、既存の装置を全て使用可能であり、例えば、傾胴ミキサー、パン型ミキサー、二軸強制ミキサー、オムニミキサー、ヘンシェルミキサー、V型ミキサー、及びナウターミキサーなどが挙げられる。
表2に示した(A)成分、(B)成分、(C)成分、及び比較成分は、以下のものを用いた。
(A)成分
(A−1):ポリオキシエチレンアルケニル硫酸エステル塩(一般式(a1)中、R1a:炭素数18のアルケニル基(オレイル基)、R2a:エチレン基、n:9、M:アンモニウムイオン)
(A−2):ポリオキシエチレンアルキル硫酸エステル塩(一般式(a1)中、R1a:炭素数12のアルキル基、R2a:エチレン基、n:2、M:アンモニウムイオン)
(A−3):ポリオキシエチレンアルキル硫酸エステル塩(一般式(a1)中、R1a:炭素数22のアルキル基、R2a:エチレン基、n:9、M:アンモニウムイオン)
(A−4):ポリオキシエチレンアルキル硫酸エステル塩(一般式(a1)中、R1a:炭素数18のアルキル基、R2a:エチレン基、n:11、M:アンモニウムイオン)
(A)成分は、ポリオキシエチレンアルキル又はアルケニルエーテルを硫酸化することにより製造した。(A)成分は、例えば「スルファミン酸による高級アルコールの硫酸化について」(油脂化学協会誌 第一巻 第2号(1952) p73−76)に記載の方法で製造することができる。
(B)成分
(B−1):脂肪酸ジエタノールアミド:脂肪酸部分が炭素数18のアルケニル基(オレイル基)である化合物
(B−2):脂肪酸ジエタノールアミド:脂肪酸部分が炭素数12のアルキル基である化合物
(B−3):脂肪酸ジエタノールアミド:脂肪酸部分が炭素数14〜16のアルキル基である化合物
(B)成分は、高級脂肪酸とジエタノールアミンを反応させることにより製造した。(B)成分は、例えば特開2003−183232号公報に記載の方法で製造することができる。
(C)成分
(C−1):ポリカルボン酸系重合体(マイテイ3000H01−C、花王(株)製)
(C−2):ポリカルボン酸系重合体(ポイズ530、花王(株)製)
(C−3):リグニン系重合体(マスターポゾリスNo70、BASF社製)
比較添加剤
・MC:メチルセルロース(アスカクリーン、信越化学工業(株)製)
(1)水底地盤改良用注入材の調製
表1に記載の配合条件で、セメントに表2に記載の(C)成分を含む水を加えて、ハンドミキサー(MK−H4 パナソニック(株)製)で30秒撹拌(撹拌速度:600rpm)した後、表2に記載の配合で、(A)成分、(B)成分及び比較成分を加えて、60秒撹拌を行うことで水底地盤改良用注入材を調製した。
水の添加量は、表1に記載の各水底地盤改良用注入材の配合の水量となるように調製した。なお水の配合量には、(C)成分の添加量を含む。
Figure 0006924688
表1中、杭工法用水硬性組成物の調製で用いた、各材料は以下の通りである。
水:水道水(配合量は、(C)成分を含む)
セメント:普通ポルトランドセメント、太平洋セメント製と住友大阪セメント製を質量比50/50で混合した物、比重3.16
(2)評価
(2−1)懸濁物質量の測定
5Lガラスビーカーに水道水3.5Lを入れ、メカニカルミキサー(新東科学株式会社製HEIDONBL600、羽根タイプ:アンカー型)を用いて攪拌(攪拌速度150rpm)する。ここへ調製した各注入材1kgを攪拌羽根に直接接触しないように静かに投入する。投入後、3分間そのまま攪拌した後、「土木学会、水中不分離性コンクリート設計施行指針(案)、水中不分離性コンクリートの水中分離度試験方法(案)」に準じて懸濁物質量を測定し、下記評価基準をもとに判定した。結果を表2に示す。
◎ 15mg/L以下
○ 15mg/Lを超え30mg/L以下
△ 30mg/Lを超え60mg/L以下
× 60mg/Lを超える
(2−2)水和反応速度の測定
調製した各注入材20gをカロリーメーター(TOKYO RIKO Co-LTD製、TWIN CONDUCTION MICRO CALORIMETER MODELTCC-2-6)にセットし、第二水和発熱ピーク時間を測定し、下記評価基準をもとに判定した。結果を表2に示す。
◎ 5時間超15時間以下
○ 15時間を超え25時間以下
△ 25時間を超え35時間以下
× 35時間を超える
Figure 0006924688
表2中、比較例4,5の比較添加剤の種類と水100質量部に対する比較添加剤の添加量は、便宜上、(A)成分の種類と、(A)と(B)の含有量の合計の欄にそれぞれ記載した。また表2中、各成分の添加量は有効分量である。

Claims (3)

  1. (A)炭化水素基の炭素数が12以上22以下であり、アルキレンオキサイドの平均付加モル数が0以上25以下である、硫酸エステル又はその塩(以下、(A)成分という)、(B)脂肪酸部分の炭素数が10以上22以下である、脂肪酸アルカノールアミド(以下、(B)成分という)、(C)分散剤、水硬性粉体、及び水を含有する水底地盤改良用注入材。
  2. (A)成分と(B)成分の質量比(A)/(B)が、3/97以上95/5以下である、請求項1に記載の水底地盤改良用注入材。
  3. (A)成分と(B)成分の含有量の合計が、水100質量部に対して0.05質量部以上40質量部以下である、請求項1又は2に記載の水底地盤改良用注入材。

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