JP6710195B2 - レオロジー改質剤 - Google Patents

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Description

本発明は、レオロジー改質剤、スラリー組成物、及びレオロジー改質剤の保存方法に関する。
近年、極度に長い円筒状ミセルを形成する界面活性剤は、水の循環システム、特に加熱または冷却の分配を目的とする熱交換システムにおいて配管摩擦抵抗低減剤として注目されている。このように注目されている重要な理由としては、圧送エネルギー低減の観点から導管が層流に維持されることを所望する一方で、同時に熱交換器内を乱流にして、その場所での1単位面積当たりの熱伝導率を高くしようとすることが挙げられる。円筒状型ミセルの形態は濃度や流体速度(ミセルにかかるせん断力)に大きく依存し、導管および熱交換器内の条件を適切に選択することで導管内を層流に、かつ熱交換器内を乱流にすることができる。一方で、共有結合を有する一般的な高分子にも同様の効果が確認されているが、一般高分子は圧送ポンプによる高せん断力によって共有結合が切断され、分子量が低下し、効果が減少する問題があるが、円筒状ミセルは構造が破壊されても、せん断力が除かれればミセルが再生されるため、効果の劣化が少ない。したがって、導管および交換器の大きさをいずれも低レベルに保つことができ、またはこれに代えて、導管の大きさを同じにしたままでポンプステーションの数を低減可能といった利益が得ることができる。
また建設工事では、建物基礎や地下構造物の施工において、土の掘削、コンクリートの打設が行われている。この掘削工事は地層の崩壊防止、地盤の安定化をはかる目的で、掘削面に安定液が使われる。この安定液には、(1)掘削面を安定にするための十分な密度があること、(2)地盤からの地下水流入と地盤への安定液の流出を防ぐ保護膜を掘削面につくれること、(3)土の空隙中でゲル化し、掘削面の土粒子を支持できること、(4)長時間にわたって掘削面を保持できること等の機能が要求される。
この機能を満足させるものとして、石膏やセメントなどの強アルカリ性を示す泥水に対しても安定性を有し、耐塩性に優れ、耐加圧濾水性及び耐凝集沈降性にも優れた性能を有する掘削泥水用添加剤が提案されている(特許文献1)。
また従来の建築技術として、港湾・橋梁・海底トンネルなど、施工環境に水が存在する現場では、セメントスラリー(ペースト、モルタル、またはコンクリート)の水への拡散を抑制するため、添加剤として増粘剤が一般に用いられる。増粘剤はその高い粘弾性により、無機粒子をスラリー内部に保持することで、水への拡散を著しく抑制する。その結果、水中にセメントスラリーを直接打設可能となるなど高い効果を示す。
一般に、増粘剤には高分子量のポリオキシエチレン、多糖、改質セルロースなどの有機系高分子が用いられる。しかし、これらの有機系高分子によって得られる粘弾性は、せん断力が加わった際の粘弾性低下(チキソトロピー性)が少ないため、例えば配管を通してセメントスラリーを輸送する際、通常よりも著しく高い圧力が必要であるといった課題がある。さらに、多糖、改質セルロースなどの有機系高分子は一般にセメント粒子に吸着する性質を有するため、セメントの水和反応を遅延させるといった課題がある。
一方で、セメントスラリー中に特定のアニオン界面活性剤と特定のカチオン界面活性剤を一定比率で添加することで、紐状ミセルと呼ばれる擬似的な高分子が形成され、高い粘弾性を得られることが知られている(特許文献2)。この擬似的な高分子はアルキル鎖部分での疎水結合や、親水部での特異な相互作用など共有結合以外の分子間相互作用によって構築されているため、一定のせん断力を受けると擬似高分子構造が崩壊し粘弾性が低下するといった特徴を有している(高いチキソトロピー性)。そのため、せん断力のかかる輸送中は擬似高分子構造が崩壊して低粘度化し、せん断力が除かれた打設現場では擬似高分子構造が再生され粘弾性が戻るといった、これまでの有機高分子系増粘剤にはない性能(ポンプ圧送性と粘弾性の両立)を示す。
特許文献2のアニオン界面活性剤とカチオン界面活性剤によって形成される紐状ミセルは、水中において、親水基を外側(水相側)、疎水部を内側(油相側)に向けて配列していると考えられている。紐状ミセルの示す粘弾性は疎水部の炭素数に相関があり、界面活性剤のクラフト点以上の温度では、炭素数が多い程、一定温度・添加量において高い粘弾性を示す。粘弾性は擬似高分子である紐状ミセル同士の絡み合いによって発現するが、紐状ミセル同士が絡んだ際、一定の確率でミセル同士にすり抜けが起こる。この時、疎水部の炭素数が多いほど、疎水部の体積が増加し、紐状ミセル同士のすり抜けが困難となる。その結果、すり抜けの確率が減少し、絡み合いが強化され、系全体の粘弾性が向上するものと推察される。
一方、スラリーなどのレオロジー改質剤を、液状で1剤の形態にして取り扱い性を向上させることが提案されている。特許文献3には、(1)カチオン性界面活性剤から選ばれる化合物(A)及びアニオン性芳香族化合物から選ばれる化合物(B)の組み合わせ、(2)カチオン性界面活性剤から選ばれる化合物(A)及び臭化化合物から選ばれる化合物(B)の組み合わせ、からなる群より選択される化合物(A)、化合物(B)と、所定の溶解度パラメータを有する水溶性有機化合物(C)とを含有する1液型液状レオロジー改質剤が開示されている。
特開2010−270169号公報 特開2003−313536号公報 特開2009−161607号公報
本発明は、高温、例えば60℃の高温で保存した後も、水溶液やスラリーに対して粘弾性を付与することができる、レオロジー改質剤を提供する。
本発明は、(A)炭化水素基の炭素数が12以上22以下であり、アルキレンオキサイドの平均付加モル数が0以上25以下である、硫酸エステル又はその塩(以下、(A)成分という)、(B)脂肪酸部分の炭素数が10以上22以下である、脂肪酸アルカノールアミド(以下、(B)成分という)、並びに(C)炭素数8以上の直鎖脂肪酸を除くオキソ酸、及び塩酸から選ばれる1種以上の酸(以下、(C)成分という)を含むレオロジー改質剤に関する。
また本発明は、上記本発明のレオロジー改質剤、水、及び粉体を含有する、スラリー組成物に関する。
また本発明は、(A)成分と(B)成分を含むレオロジー改質剤に、(C)成分を加える、レオロジー改質剤の保存方法に関する。
本発明によれば、高温、例えば60℃の高温で保存した後も、水溶液やスラリーに対して粘弾性を付与することができる、レオロジー改質剤が提供される。
本発明の液状レオロジー改質剤は、水に対して粘弾性を付与できるため、水溶液や水を含むスラリーのレオロジー改質に効果がある。本発明のスラリー組成物は、高い粘性を有し、水中分離抵抗性に優れるため、ポンプ圧送性と材料分離抵抗性を必要とする用途において効果がある。
本発明者らは、種々検討を行った結果、(A)成分の特定の硫酸エステル又はその塩と(B)成分の特定の脂肪酸アルカノールアミドとの組み合わせが、低濃度で高い粘弾性を示す紐状ミセルを形成することを見いだした。水中での界面活性剤のミセル構造に影響する因子の一つに、その界面活性剤の充てんパラメータがある。本発明の(A)成分と(B)成分は、それぞれの充てんパラメータが相違し、これらを混合した系中では、暫定的に(A)成分と(B)成分の混合物を考えるとその混合物の平均(分子数での平均)充てんパラメータが、紐状ミセルを形成するのに適した値となっているものと推察される。
そして、本発明では、(C)成分の特定の化合物を用いることで、高温、例えば60℃の高温で保存した後も、水溶液やスラリーに対して粘弾性を付与することができる。これは、(C)成分を添加することによって、(A)成分および(B)成分の加水分解を抑制し、最適な平均充填パラメータを維持することができるためと推察される。
<レオロジー改質剤>
本発明のレオロジー改質剤は、(A)成分、(B)成分及び(C)成分を含有する。
本発明のレオロジー改質剤は、液状物であることが好ましく、水を含有する液状物であることがより好ましい。本発明のレオロジー改質剤の一例として、(A)成分、(B)成分、(C)成分及び水を含有するレオロジー改質剤が挙げられる。本発明のレオロジー改質剤の他の例として、(A)成分、(B)成分、(C)成分及び水を含有し、(A)成分と(B)成分から形成された紐状ミセルを含有するレオロジー改質剤が挙げられる。紐状ミセルが形成されている場合、本発明のレオロジー改質剤は、動的粘弾性がMaxwell型に類似した挙動を示す。
〔(A)成分〕
本発明のレオロジー改質剤は、(A)成分として、炭化水素基の炭素数が12以上22以下であり、アルキレンオキサイドの平均付加モル数が0以上25以下である、硫酸エステル又はその塩を含有する。
炭化水素基は、好ましくは直鎖若しくは分岐鎖のアルキル基又は直鎖若しくは分岐鎖のアルケニル基であり、より好ましくは直鎖若しくは分岐鎖のアルケニル基であり、更に好ましくは直鎖のアルケニル基である。
炭化水素基の炭素数は、高い粘弾性を得る観点から、12以上、好ましくは14以上、より好ましくは16以上、更に好ましくは18以上、そして、22以下、好ましくは20以下である。
炭化水素基は、例えば、ラウリル基、ミリスチル基、パルミチル基、オレイル基、ステアリル基及びドコシル基から選ばれる1種以上が挙げられ、好ましくはミリスチル基、パルミチル基、オレイル基及びステアリル基から選ばれる1以上であり、より好ましくはパルミチル基、オレイル基及びステアリル基から選ばれる1種以上であり、更に好ましくはオレイル基、ステアリル基、より更に好ましくはオレイル基である。
アルキレンオキサイドの平均付加モル数は0以上25以下である。
アルキレンオキサイドは、炭素数2以上4以下のアルキレンオキサイドが挙げられる。アルキレンオキサイドはエチレンオキサイドが好ましい。(A)成分は、アルキレンオキサイドとしてエチレンオキサイドを含むことが好ましい。
(A)成分の炭化水素基の炭素数が12以上16以下の場合、アルキレンオキサイドの平均付加モル数は、水への溶解性の観点から、好ましくは1以上、より好ましくは2以上、そして、紐状ミセル内における活性剤の配列密度を高める観点から、好ましくは20以下、より好ましくは16以下、更に好ましくは14以下、より更に好ましくは12以下、より更に好ましくは10以下、より更に好ましくは8以下、より更に好ましくは6以下である。
(A)成分の炭化水素基の炭素数が17以上22以下の場合、アルキレンオキサイドの平均付加モル数は、水への溶解性の観点から、好ましくは2以上、より好ましくは4以上、更に好ましくは5以上、そして、紐状ミセル内における活性剤の配列密度を高める観点から、好ましくは20以下、より好ましくは18以下、更に好ましくは16以下、より更に好ましくは14以下、より更に好ましくは12以下である。
(A)成分の硫酸エステルの塩として、ナトリウム塩、アンモニウム塩、カリウム塩、カルシウム塩、マグネシウム塩等から選ばれる無機塩、モノエタノールアンモニウム塩、ジエタノールアンモニウム塩、トリエタノールアンモニウム塩、モルホリニウム塩等から選ばれる有機アンモニウム塩が好適である。
(A)成分としては、具体的には、アルキルサルフェート、アルケニルサルフェート、ポリオキシアルキレンアルキルエーテルサルフェート、ポリオキシアルキレンアルケニルエーテルサルフェート、アルキルフェニルサルフェート、アルケニルフェニルサルフェート、ポリオキシアルキレンアルキルフェニルエーテルサルフェート、ポリオキシアルキレンアルケニルフェニルエーテルサルフェートが挙げられ、高い粘弾性を得る観点から、アルケニルサルフェート、ポリオキシアルキレンアルキルエーテルサルフェート、及びポリオキシアルキレンアルケニルエーテルサルフェートから選ばれる1種以上が好ましく、ポリオキシアルキレンアルキルエーテルサルフェート、及びポリオキシアルキレンアルケニルエーテルサルフェートから選ばれる1種以上がより好ましい。
(A)成分としては、高い粘弾性を得る観点から、下記一般式(a1)で表される化合物が好適である。
1a−O−(R2aO)n−SO (a1)
〔式中、R1aは、炭素数12以上22以下の炭化水素基であり、R2aは、炭素数2以上4以下のアルキレン基、好ましくはエチレン基であり、nは平均付加モル数であり0以上25以下の数である。Mは水素原子又は陽イオン、好ましくは無機又は有機の陽イオンである。〕
一般式(a1)中、R1aは、好ましくは直鎖若しくは分岐鎖のアルキル基又は直鎖若しくは分岐鎖のアルケニル基であり、より好ましくは直鎖若しくは分岐鎖のアルケニル基であり、更に好ましくは直鎖のアルケニル基である。
1aの炭素数は、高い粘弾性を得る観点から、12以上、好ましくは14以上、より
好ましくは16以上、更に好ましくは18以上、そして、22以下、好ましくは20以下である。
一般式(a1)中、高い粘弾性を得る観点から、R1aは、例えば、ラウリル基、ミリスチル基、パルミチル基、オレイル基、リノール基、ステアリル基及びドコシル基から選ばれる1種以上が挙げられ、好ましくはミリスチル基、パルミチル基、リノール基、オレイル基及びステアリル基から選ばれる1以上であり、より好ましくはリノール基、パルミチル基、オレイル基及びステアリル基から選ばれる1種以上であり、更に好ましくはリノール基、オレイル基、ステアリル基である。また、R1aは、レオロジー改質剤を添加する水溶液やスラリーの温度が常温近傍、例えば、約15℃〜約30℃である場合は、オレイル基がより更に好ましい。また、R1aは、レオロジー改質剤を添加する水溶液やスラリーの温度が比較的高温、例えば、約30℃〜約50℃である場合はステアリル基がより更に好ましい。
一般式(a1)中、R1aの炭素数が12以上16以下の場合、nは、水への溶解性の観点から、好ましくは1以上、より好ましくは2以上、そして、紐状ミセル内における活性剤の配列密度を高める観点から、好ましくは20以下、より好ましくは16以下、更に好ましくは14以下、より更に好ましくは12以下、より更に好ましくは10以下、より更に好ましくは8以下、より更に好ましくは6以下である。
一般式(a1)中、R1aの炭素数が17以上22以下の場合、nは、水への溶解性の観点から、好ましくは2以上、より好ましくは4以上、更に好ましくは5以上、そして、紐状ミセル内における活性剤の配列密度を高める観点から、好ましくは20以下、より好ましくは18以下、更に好ましくは16以下、より更に好ましくは14以下、より更に好ましくは12以下である。
一般式(a1)中、Mは水素原子、あるいはナトリウムイオン、アンモニウムイオン、カリウムイオン、カルシウムイオン、マグネシウムイオン等の無機陽イオン、モノエタノールアンモニウムイオン、ジエタノールアンモニウムイオン、トリエタノールアンモニウムイオン、モルホリニウムイオン等の有機陽イオンが挙げられ、好ましくはナトリウムイオン、カリウムイオン、アンモニウムイオン、カルシウムイオン、マグネシウムイオンの無機陽イオンであり、より好ましくはナトリウムイオン、アンモニウムイオンである。
(A)成分の平均充てんパラメータは、高い粘弾性を得る観点から、1/3以上1以下が好ましい。本発明において、平均充てんパラメータは以下の式で表される。
平均充てんパラメータ= v/ (a0×lc)
v: 炭化水素基の体積
a0 : 界面活性剤の水界面の最適頭部面積
lc: 炭化水素鎖の臨界鎖長
〔(B)成分〕
本発明のレオロジー改質剤は、(B)成分として、脂肪酸部分の炭素数が10以上22以下である、脂肪酸アルカノールアミドを含有する。
脂肪酸部分の炭化水素基は、脂肪酸アルカノールアミドの原料脂肪酸においてカルボキシル基の炭素原子を含む炭化水素基であり、好ましくは直鎖若しくは分岐鎖のアルキル基又は直鎖若しくは分岐鎖のアルケニル基であり、より好ましくは直鎖若しくは分岐鎖のアルケニル基であり、更に好ましくは直鎖のアルケニル基である。
脂肪酸部分の炭素数は、脂肪酸アルカノールアミドの原料脂肪酸においてカルボキシル基の炭素原子を含む炭素数であり、高い粘弾性を得る観点から、10以上、好ましくは12以上、より好ましくは14以上、更に好ましくは16以上、そして、22以下、好ましくは20以下であり、更に好ましくは18以下、より更に好ましくは18である。
脂肪酸アルカノールアミドとしては、脂肪酸モノエタノールアミド、脂肪酸メチルモノエタノールアミド、脂肪酸エチルモノエタノールアミド、脂肪酸プロピルモノエタノールアミド、脂肪酸メタノールエタノールアミド、脂肪酸ジエタノールアミド等が挙げられ、高い粘弾性を得る観点から、脂肪酸ジエタノールアミドが好ましい。
(B)成分は、例えば、オレイン酸ジエタノールアミド、ステアリン酸ジエタノールアミド、パーム核脂肪酸ジエタノールアミド、ヤシ脂肪酸ジエタノールアミド、ミリスチン酸ジエタノールアミド、ラウリン酸ジエタノールアミド等が挙げられ、これらを2種以上併用してもよい。(B)成分は、水への溶解性を維持し、かつ、高い粘弾性を得る観点から、好ましくはオレイン酸ジエタノールアミド、パーム核脂肪酸ジエタノールアミド、ヤシ脂肪酸ジエタノールアミドから選ばれる1種以上であり、より好ましくはオレイン酸ジエタノールアミド、パーム核脂肪酸ジエタノールアミドから選ばれる1種以上であり、更に好ましくはオレイン酸ジエタノールアミドである。
(B)成分は、高級脂肪酸とアルカノールアミンを反応させることにより得られるが、脂肪酸アルカノールアミド以外の副産物が同時に生成される。副産物としては、脂肪酸アルカノールアミドと脂肪酸が脱水縮合した脂肪酸アルカノールアミド脂肪酸モノエステル、脂肪酸アルカノールアミド脂肪酸ジエステル、並びにアルカノールアミンと脂肪酸が脱水縮合した脂肪酸アルカノールアミンモノエステル、脂肪酸アルカノールアミンジエステル等が挙げられる。本発明の(B)成分には、本発明の効果を損なわない限り、前記の副産物を微量に含んでも良い。(B)成分中の前記副産物の含有量は、高い粘弾性を得る観点から、(B)成分100質量部中、好ましくは10質量部以下、より好ましくは7質量部以下、更に好ましくは5質量部以下である。
(B)成分の平均充てんパラメータは、高い粘弾性を得る観点から、1/2以上2以下が好ましい。
〔(C)成分〕
本発明のレオロジー改質剤は、(C)成分として、炭素数8以上の直鎖脂肪酸を除くオキソ酸、及び塩酸から選ばれる1種以上の酸を含有する。ここで、オキソ酸とは、IUPACに記載の定義<URL:http://goldbook.iupac.org/html/O/O04374.html>又は理化学辞典に記載の定義(岩波 理化学辞典 第4版第5刷、(株)岩波書店発行、176頁)を含む物である。なお、本発明の(C)成分であるオキソ酸からは、炭素数8以上の直鎖脂肪酸は除かれる。
(C)成分は、保存安定性の観点から、25℃における酸解離定数(pKa)(以下、「pKa(25℃)」ともいう)が、好ましくは−4以上、より好ましくは0以上、更に好ましくは1以上、より更に好ましくは2以上、より更に好ましくは3以上、そして、(C)成分の添加量を低減させる観点から、好ましくは8.5以下、より好ましくは7以下、更に好ましくは4以下の酸が好適である。
本発明の(C)成分のpKa(25℃)は、水を溶媒とした時に、(C)成分の化合物の0.1mol/Lの濃度におけるpKa(25℃)を示す。
酸解離定数(pKa)は、「日本化学会編 化学便覧 基礎編 改訂5版」(平成16年2月20日、丸善株式会社発行、II−334〜II−343頁)に記載されている25℃におけるpKaを用いることができる。
なお、pKa(25℃)を複数持つ酸である場合、当該酸のpKa(25℃)値のいずれか1つが前記範囲にあればよい。
(C)成分は、保存安定性の観点から、炭素数0以上、そして、10以下、好ましくは6以下、より好ましくは4以下であり、且つ1価以上4価以下のオキソ酸が好適である。
(C)成分は、具体的には、乳酸(pKa(25℃)3.86)、リン酸(pKa1(25℃)2.15、pKa2(25℃)7.20、pKa3(25℃)11.8)、エチレンジアミン4酢酸(pKa1(25℃)1.99、pKa2(25℃)2.67、pKa3(25℃)6.16、pKa4(25℃)10.26)、グルコン酸(pKa(25℃)3.86)、リンゴ酸(pKa1(25℃)3.46、pKa2(25℃)5.05)、マレイン酸(pKa1(25℃)1.94、pKa2(25℃)6.23)、クエン酸(pKa1(25℃)3.13、pKa2(25℃)4.76、pKa3(25℃)6.40)、スルファミン酸(pKa(25℃)0.99)、塩酸、(pKa(25℃)−3.70)、及び酢酸(pKa(25℃)4.76)から選ばれる1種以上が挙げられ、pH緩衝能を所定のpH範囲に持たせる観点から、乳酸、リン酸、エチレンジアミン4酢酸、グルコン酸、リンゴ酸、マレイン酸及びクエン酸から選ばれる1種以上が好ましく、更にセメントの水和反応に影響を与えない化合物を用いる観点から、乳酸及びリン酸から選ばれる1種以上がより好ましい。なお化合物のカッコ書きのpKa1は第1酸解離定数、pKa2は第2酸解離定数、pKa3は第3酸解離定数、pKa4は第4酸解離定数を示す。
〔レオロジー改質剤の組成等〕
本発明のレオロジー改質剤は、(A)成分を、高い粘弾性を得る観点から、好ましくは0.25質量%以上、より好ましくは0.5質量%以上、更に好ましくは1質量%以上、より更に好ましくは5質量%以上、より更に好ましくは10質量%以上、そして、組成物の流動性を確保する観点から、好ましくは25質量%以下、より好ましくは20質量%以下、更に好ましくは15質量%以下含有する。
本発明のレオロジー改質剤は、(B)成分を、高い粘弾性を得る観点から、好ましくは0.25質量%以上、より好ましくは0.5質量%以上、更に好ましくは質量1%以上、より更に好ましくは5質量%以上、より更に好ましくは10質量%以上、そして、組成物の流動性を確保する観点から、好ましくは25質量%以下、より好ましくは20質量%以下、更に好ましくは15質量%以下含有する。
本発明のレオロジー改質剤は、水を含有する場合、(A)成分と(B)成分の合計含有量が、高い粘弾性を得る観点から、好ましくは0.5質量%以上、より好ましくは1質量%以上、更に好ましくは2質量%以上、より更に好ましくは10質量%以上、より更に好ましくは20質量%以上、そして、好ましくは99質量%以下、より好ましくは50質量%以下、更に好ましくは40質量%以下、より更に好ましくは30質量%以下である。
本発明のレオロジー改質剤は、(A)成分と(B)成分の合計含有量が所定の範囲内であり、かつ(A)成分と(B)成分の各含有量が所定の範囲内であることが好ましい。
本発明のレオロジー改質剤において、(A)成分と(B)成分の質量比(A)/(B)は、高い粘弾性を得る観点から、好ましくは3/97以上95/5以下である。更に、(A)成分と(B)成分の質量比(A)/(B)は、(A)成分と(B)成分の組み合わせにより、以下の通りとすることが高い粘弾性を得る観点から好適である。
(A)成分の炭化水素基の炭素数が12以上16以下であり、(B)成分の脂肪酸部分の炭素数が10以上16以下の場合、(A)成分と(B)成分の質量比(A)/(B)は、高い粘弾性を得る観点から、好ましくは5/95以上、そして、好ましくは25/75以下、より好ましくは15/85以下、更に好ましくは7/93以下である。
(A)成分の炭化水素基の炭素数が17以上22以下であり、(B)成分の脂肪酸部分の炭素数が10以上16以下の場合、(A)成分と(B)成分の質量比(A)/(B)は、高い粘弾性を得る観点から、好ましくは5/95以上、より好ましくは15/85以上、そして、好ましく45/55以下、より好ましくは35/65以下である。
(A)成分の炭化水素基の炭素数が17以上22以下であり、(B)成分の脂肪酸部分の炭素数が17以上22以下の場合、(A)成分と(B)成分の質量比(A)/(B)は、高い粘弾性を得る観点から、好ましくは5/95以上、より好ましくは15/85以上、更に好ましくは40/60以上、そして、好ましくは55/45以下である。
(A)成分の炭化水素基の炭素数が12以上16以下であり、(B)成分の脂肪酸部分の炭素数が17以上22以下の場合、(A)成分と(B)成分の質量比(A)/(B)は、高い粘弾性を得る観点から、好ましくは5/95以上、より好ましくは15/85以上、更に好ましくは25/75以上、そして、好ましくは55/45以下、より好ましくは35/65以下である。
本発明のレオロジー改質剤は、(C)成分を、保存安定性の観点から好ましくは0.01質量%以上、より好ましくは0.1質量%以上、更に好ましくは0.5質量%以上、そして、同様の観点から好ましくは10質量%以下、より好ましくは8質量%以下、更に好ましくは5質量%以下、より更に好ましくは3質量%未満、より更に好ましくは2.5質量以下、より更に好ましくは2.3質量%以下、より更に好ましくは2質量%以下含有する。
本発明のレオロジー改質剤は、作業性(計量しやすい、水にすぐ溶けるなど)の観点から、液状物であることが好ましい。
また本発明のレオロジー改質剤は、非危険物(もしくは引火点が検出されない)にする観点から、水を含有する液状物であることが好ましい。
本発明のレオロジー改質剤は、水を、好ましくは15質量%以上、より好ましくは20質量%以上、更に好ましくは22質量%以上、そして、好ましくは50質量%以下、より好ましくは40質量%以下、更に好ましくは35質量%以下含有する。水は、本発明のレオロジー改質剤の残部となる量で用いられるのが好ましい。
本発明のレオロジー改質剤は、(D)重量平均分子量500以上のポリエチレングリコール、重量平均分子量500以上のポリプロピレングリコール、重量平均分子量500以上のエチレンオキシドとプロピレンオキシドの共重合体、及び炭化水素基とポリオキシアルキレン基とを有するエーテル化合物から選ばれる1種以上の化合物〔以下、(D)成分という〕を含有することが好ましい。(D)成分は、本発明のレオロジー改質剤を適用する対象物、例えば水硬性スラリーが、ベントナイトを含む場合でも、良好なレオロジー改質効果を発現させる観点で好ましい成分である。
(D)成分のポリエチレングリコールの重量平均分子量は、レオロジー改質剤の粘度の観点から、好ましくは1,000以上、より好ましくは2,000以上、更に好ましくは5,000以上、そして、好ましくは20,0000以下、好ましくは150,000以下、より好ましくは120,000以下、更に好ましくは90,000以下、より更に好ましくは50,000以下、より更に好ましくは20,000以下である。
(D)成分のポリプロピレングリコールの重量平均分子量は、好ましくは500以上、より好ましくは700以上、そして、好ましくは5,000以下、より好ましくは3,000以下である。
(D)成分のエチレンオキシドとプロピレンオキシドの共重合体の重量平均分子量は、好ましくは1,000以上、より好ましくは2,000以上、そして、好ましくは25,000以下、より好ましくは20,000以下である。
(D)成分の重量平均分子量は、ポリスチレンを標準としたゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)法により測定した値であり、(D)成分がポリエチレングリコールの場合、溶媒として水/エタノールを用いることができる。
(D)成分のうち、炭化水素基とポリオキシアルキレン基とを有するエーテル化合物から選ばれる1種以上の化合物は、炭化水素基の炭素数が、好ましくは10以上22以下である。ポリオキシアルキレン基は、ポリオキシエチレン基及びポリオキシプロピレン基から選ばれる基が好ましく、ポリオキシエチレン基がより好ましい。ポリオキシアルキレン基の平均付加モル数は、好ましくは9以上5,000以下である。
幅広い重量平均分子量の化合物が使用可能な観点から、(D)成分は、重量平均分子量500以上のポリエチレングリコール、及び重量平均分子量500以上のエチレンオキシドとプロピレンオキシドの共重合体から選ばれる1種以上のポリマーが好ましく、重量平均分子量500以上のポリエチレングリコールから選ばれる1種以上のポリマーがより好ましい。
本発明の液状レオロジー改質剤が(D)成分を含有する場合、(D)成分を、好ましくは5質量%以上、より好ましくは6質量%以上、更に好ましくは7.5質量%以上、そして、好ましくは20質量%以下、より好ましくは15質量%以下、更に好ましくは13質量%以下含有する。
本発明のレオロジー改質剤は、本発明のレオロジー改質剤が液状物、すなわち水を含有する場合、本発明のレオロジー改質剤を取り扱い性の良い粘度を有する一液型の形態とする観点から、(E)成分として、オクタノール/水分配係数が−1.6以上1.2以下である、ヒドロキシ基を有する化合物を含有することが好ましい。但し、(E)成分からは、(C)成分に該当するものは除かれる。
本発明において、(E)成分のオクタノール/水分配係数は、logP値で表される、有機化合物の水と1−オクタノールに対する親和性を示す係数である。1−オクタノール/水分配係数Pは、1−オクタノールと水の2液相の溶媒に微量の化合物が溶質として溶け込んだときの分配平衡で、それぞれの溶媒中における化合物の平衡濃度の比であり、底10に対するそれらの対数logPの形で示すのが一般的である。多くの化合物のlogP値が報告されており、Daylight Chemical Information Systems, Inc. (Daylight CIS)などから入手しうるデータベースには多くの値が掲載されているので参照できる。実測のlogP値がない場合には、Daylight CISから入手できるプログラム“CLOGP"等で計算することができる。このプログラムは、実測のlogP値がある場合にはそれと共に、Hansch, Leoのフラグメントアプローチにより算出される“計算logP(ClogP)”の値を出力する。
フラグメントアプローチは化合物の化学構造に基づいており、原子の数及び化学結合のタイプを考慮している(cf. A. Leo, Comprehensive Medicinal Chemistry, Vol.4, C. Hansch,P.G. Sammens, J.B. Taylor and C.A. Ramsden, Eds., p.295, Pergamon Press, 1990)。このClogP値を、化合物の選択に際して実測のlogP値の代わりに用いることができる。本発明では、logPの実測値があればそれを、無い場合はプログラムCLOGP v4.01により計算したClogP値を用いる。以下、オクタノール/水分配係数を、Log Powと表記する場合もある。
(E)成分は、炭素数1以上10以下の化合物が好ましい。
(E)成分は、ヒドロキシ基を、1つ以上3つ以下有する化合物が好ましい。(E)成分は、ヒドロキシ基を1つ有する化合物及びヒドロキシ基を2つ有する化合物から選ばれる1種以上の化合物が好ましい。
(E)成分は、分子量が50以上、200以下の化合物が好ましい。
(E)成分は、好ましくはヒドロキシ基を有する有機化合物であり、より好ましくはヒドロキシ基を有する脂肪族化合物であり、更に好ましくはヒドロキシ基を1つ又は2つ有し、炭素−炭素の結合が飽和結合である脂肪族化合物であり、より更に好ましくは、ヒドロキシ基を2つ有し、炭素−炭素の結合が飽和結合である、炭素数が5以下の脂肪族化合物である。
(E)成分は、高い粘弾性を得る観点から、溶解パラメータ(Fedors法)が9以上、更に10以上、そして、20以下、更に18以下の化合物が好ましい。以下、溶解パラメータ(Fedors法)を、SP値と表記する場合もある。
(E)成分は、好ましくはヒドロキシ基を有する有機化合物である。ヒドロキシ基を有する有機化合物としては、下記の(E1)及び(E2)から選ばれる1種以上の化合物が挙げられる。
(E1)ヒドロキシ基を有する芳香族化合物
具体的には、ベンジルアルコール(Log Pow 1.10/SP値 9.3)などが挙げられる。
(E2)ヒドロキシ基を有する脂肪族化合物
具体的には、ジエチレングリコールモノブチルエーテル(Log Pow 0.56/SP値10.5)、2−ブトキシエタノール(Log Pow 0.83/SP値 10.8)、エチレングリコールモノイソプロピルエーテル(Log Pow 0.05/SP値 11.1)、1−ブタノール(LogPow 0.90/SP値 11.3)、2−メトキシエタノール(Log Pow -0.77/SP値12.0)、トリエチレングリコールモノブチルエーテル(Log Pow 0.02/SP値 10.3)、プロピレングリコールモノブチルエーテル(Log Pow 1.15/SP値10.4)プロピルプロピレングリコール(Log Pow 0.62/SP値 10.5)、2−ジメチルアミノエタノール(Log Pow -0.58/SP値11.3)、ジエタノールアミン(Log Pow -1.43/SP値 15.4)、2−メチルペンタン−2,4−ジオール(Log Pow 0.58/SP値 13.1)、ジプロピレングリコール(Log Pow -0.70/SP値13.3)、1,3−ブタンジオール(Log Pow -0.85/SP値 14.8)、1,4−ブタンジオール(Log Pow -1.00/SP値15.0)、ジエチレングリコール(Log Pow -1.30/SP値 15.0)、ネオペンチルグリコール(Log Pow 0.23/SP値 13.8)、プロピレングリコール(Log Pow -0.92/SP値15.9)、エチレングリコール(Log Pow -1.36/SP値 17.8)などが挙げられる。
(E)成分は、好ましくは(E2)ヒドロキシ基を有する脂肪族化合物であり、より好ましくはヒドロキシ基を1つ又は2つ有し、炭素−炭素の結合が飽和結合である脂肪族化合物であり、更に好ましくはヒドロキシ基を2つ有し、炭素−炭素の結合が飽和結合である、炭素数が5以下の脂肪族化合物である。
(E)成分は、好ましくは、ジエタノールアミン(Log Pow -1.43/SP値15.4)、2−メチルペンタン−2,4−ジオール(Log Pow 0.58/SP値 13.1)、ジプロピレングリコール(Log Pow -0.70/SP値13.3)、1,3−ブタンジオール(Log Pow -0.85/SP値 14.8)、1,4−ブタンジオール(Log Pow -1.00/SP値15.0)、ジエチレングリコール(Log Pow -1.30/SP値 15.0)、ネオペンチルグリコール(Log Pow 0.23/SP値 13.8)、プロピレングリコール(Log Pow -0.92/SP値15.9)、及び、エチレングリコール(Log Pow -1.36/SP値 17.8)から選ばれる1種以上の化合物である。
(E)成分は、より好ましくは、1,3−ブタンジオール(Log Pow -0.85/SP値14.8)、1,4−ブタンジオール(Log Pow -1.00/SP値 15.0)、ジエチレングリコール(Log Pow -1.30/SP値15.0)、ネオペンチルグリコール(Log Pow 0.23/SP値 13.8)、プロピレングリコール(Log Pow -0.92/SP値 15.9)、及びエチレングリコール(Log Pow -1.36/SP値17.8)から選ばれる1種以上の化合物である。
(E)成分は、臭気と入手性の観点から、ネオペンチルグリコール(Log Pow 0.23/SP値13.8)、及びプロピレングリコール(Log Pow -0.92/SP値 15.9)から選ばれる1種以上の化合物が好ましい。
(E)成分の少ない添加量で低い粘度の液状レオロジー改質剤を得る観点から、(E)成分のオクタノール/水分配係数は、0.03以上が好ましく、0.7以上がより好ましく、そして、1.15以下が好ましく、0.85以下がより好ましい。この範囲のオクタノール/水分配係数を持つ化合物として、ベンジルアルコール、1−ブタノール、2−ブトキシエタノール、2−メチルペンタン−2,4−ジオール、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ネオペンチルグリコール、エチレングリコールモノイソプロピルエーテルが好ましく、2−ブトキシエタノールがより好ましい。
(E)成分の少ない添加量で低い粘度の液状レオロジー改質剤を得る観点から、(E)成分のSP値は、9以上が好ましく、10.7以上がより好ましく、そして、11.5以下が好ましく、11.2以下がより好ましく、11以下が更に好ましい。この範囲のSP値を持つものとして、ベンジルアルコール、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、2−ブトキシエタノール、エチレングリコールモノイソプロピルエーテル、1−ブタノールが好ましく、ベンジルアルコール、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、2−ブトキシエタノール、エチレングリコールモノイソプロピルエーテルがより好ましく、ベンジルアルコール、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、2−ブトキシエタノールが更に好ましく、2−ブトキシエタノールがより更に好ましい。
(A)成分の加水分解抑制の観点からは、(E)成分は、カルボキシ基を有していない化合物が好ましい。
また、オクタノール/水分配係数が(E)成分の範囲内であれば、(E)成分としては、ヒドロキシ基とアミノ基とを有する2−ジメチルアミノエタノール(Log Pow -0.58/SP値 11.3)、ジエタノールアミン(Log Pow -1.43/SP値15.4)のような化合物を使用することができる。取り扱い性の良い粘度を有する安定な液状レオロジー改質剤を得る観点からは、(E)成分はアミノ基を有していない化合物が好ましい。
本発明のレオロジー改質剤は、(E)成分として、ベンジルアルコール、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコール、2−ブトキシエタノール、エチレングリコールモノイソプロピルエーテル、1−ブタノール、2−メチルペンタン−2,4−ジオール、及びネオペンチルグリコールから選ばれる1種以上の化合物を含有することが好ましい。
(A)成分への影響が少なく、かつ対象物に高い粘弾性を付与し、更に低温における製品安定性を維持する観点から、本発明のレオロジー改質剤は、2種以上の(E)成分を含有することが好ましい。この観点から、本発明のレオロジー改質剤は、(E)成分として、ベンジルアルコール、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、2−ブトキシエタノール、エチレングリコールモノイソプロピルエーテル、1−ブタノール、2−メチルペンタン−2,4−ジオール、プロピレングリコール及びネオペンチルグリコールから選ばれる2種以上を含有することが好ましく、プロピレングリコール及びネオペンチルグリコールを含有することが好ましい。(E)成分として、プロピレングリコール及びネオペンチルグリコールを含有する場合、プロピレングリコール/ネオペンチルグリコールの質量比は、好ましくは20/80以上、より好ましくは30/70以上、更に好ましくは40/60以上、そして、好ましくは80/20以下、より好ましくは70/30以下、更に好ましくは60/40以下である。
なお、ヒドロキシ基を有していてもLog Powが本発明の範囲外である化合物、例えばグリセリン(Log Pow -1.76/SP値 16.5)や、Log Powが本発明の範囲内であってもヒドロキシ基を有していない化合物、例えば、メチルアミン(Log Pow -0.71/SP値8.85)、ジメチルアミン(Log Pow -0.20/SP値7.72)、テトラメチルエチレンジアミン(Log Pow 0.30/SP値7.74)では、一液化が困難で、取り扱い性の良い粘度を有する安定なレオロジー改質剤が得られないと考えられる。
(E)成分が、オクタノール/水分配係数が1以上1.2以下の化合物である場合は、当該(E)成分の含有量は、本発明のレオロジー改質剤中、好ましくは3質量%以上、より好ましくは4質量%以上、そして、好ましくは30質量%以下、より好ましく15質量%以下、更に好ましくは7質量%以下である。
また、(E)成分が、オクタノール/水分配係数が0.5以上1未満の化合物である場合は、レオロジー改質剤の粘度観点から、当該(E)成分の含有量は、本発明のレオロジー改質剤中、好ましくは3質量%以上、より好ましくは7.5質量%以上、更に好ましくは10質量%以上、より更に好ましくは15質量%以上、そして、好ましくは50質量%以下、より好ましくは40質量%以下である。
また、(E)成分が、オクタノール/水分配係数が0以上0.5未満の化合物である場合は、レオロジー改質剤の粘度観点から、当該(E)成分の含有量は、本発明のレオロジー改質剤中、好ましくは3質量%以上、より好ましくは7.5質量%以上、更に好ましくは10質量%以上、より更に好ましくは15質量%以上、そして、好ましくは50質量%以下、より好ましくは40質量%以下、更に好ましくは25質量%以下である。
また、(E)成分が、オクタノール/水分配係数が−0.8以上0未満の化合物である場合は、当該(E)成分の含有量は、本発明のレオロジー改質剤中、好ましくは3質量%以上、より好ましくは7質量%以上、更に好ましくは10質量%以上、より更に好ましくは15質量%以上、そして、好ましくは50質量%以下、より好ましくは40質量%以下である。
また、(E)成分が、オクタノール/水分配係数が−0.95以上−0.8未満の化合物である場合は、当該(E)成分の含有量は、本発明のレオロジー改質剤中、好ましくは15質量%以上、より好ましくは22質量%以上、更に好ましくは30質量%以上、より更に好ましくは35質量%以上、そして、好ましくは60質量%以下、より好ましくは50質量%以下である。
また、(E)成分が、オクタノール/水分配係数が−1.6以上−0.95未満の化合物である場合は、当該(E)成分の含有量は、本発明のレオロジー改質剤中、好ましくは25質量%以上、より好ましくは30質量%以上、更に好ましくは35質量%以上、そして、好ましくは70質量%以下、より好ましくは60質量%以下である。
本発明のレオロジー改質剤が(E)成分の化合物を複数含有する場合、少なくとも1つの化合物の含有量が、前記の範囲にあることが好ましい。例えば、本発明のレオロジー改質剤が(E)成分の化合物を2種含有する場合、少なくとも一方の化合物の含有量が、前記の範囲にあることが好ましい。
(E)成分が、SP値が9以上10未満の化合物である場合は、当該(E)成分の含有量は、本発明のレオロジー改質剤中、好ましくは3質量%以上、より好ましくは4質量%以上、そして、好ましくは30質量%以下、より好ましく15質量%以下、更に好ましくは7質量%以下である。
(E)成分が、SP値が10以上13未満の化合物である場合は、レオロジー改質剤の粘度の観点から、当該(E)成分の含有量は、本発明のレオロジー改質剤中、好ましくは3質量%以上、より好ましくは7質量%以上、更に好ましくは15質量%以上、そして、好ましくは60質量%以下、より好ましく50質量%以下、更に好ましくは30質量%以下である。
(E)成分が、SP値が13以上13.5未満の化合物である場合は、レオロジー改質剤の粘度の観点から、当該(E)成分の含有量は、本発明のレオロジー改質剤中、好ましくは3質量%以上、より好ましくは7質量%以上、更に好ましくは15質量%以上、より更に好ましくは25質量%以上、そして、好ましくは60質量%以下、より好ましく50質量%以下、更に好ましくは40質量%以下である。
(E)成分が、SP値が13.5以上14.5未満の化合物である場合は、レオロジー改質剤の粘度の観点から、当該(E)成分の含有量は、本発明のレオロジー改質剤中、好ましくは3質量%以上、より好ましくは7質量%以上、更に好ましくは15質量%以上、そして、好ましくは60質量%以下、より好ましく50質量%以下、更に好ましくは40質量%以下、より更に好ましくは25質量%以下である。
(E)成分が、SP値が14.5以上15.5未満の化合物である場合は、レオロジー改質剤の粘度の観点から、当該(E)成分の含有量は、本発明のレオロジー改質剤中、好ましくは3質量%以上、より好ましくは7質量%以上、更に好ましくは15質量%以上、より更に好ましくは25質量%以上、より更に好ましくは35質量%以上、そして、好ましくは70質量%以下、より好ましく60質量%以下、更に好ましくは45質量%以下である。
(E)成分が、SP値が15.5以上18未満の化合物である場合は、レオロジー改質剤の粘度の観点から、当該(E)成分の含有量は、本発明のレオロジー改質剤中、好ましくは3質量%以上、より好ましくは7質量%以上、更に好ましくは15質量%以上、より更に好ましくは25質量%以上、より更に好ましくは35質量%以上、より更に好ましくは45質量%以上、そして、好ましくは70質量%以下、より好ましく60質量%以下である。
(E)成分が、SP値が18以上20以下の化合物である場合は、レオロジー改質剤の粘度の観点から、当該(E)成分の含有量は、本発明のレオロジー改質剤中、好ましくは25質量%以上、より好ましくは35質量%以上、更に好ましくは45質量%以上、そして、好ましくは55質量%以下、より好ましく80質量%以下、更に好ましくは70質量%以下である。
本発明のレオロジー改質剤の20℃におけるpHは、製品安定性の観点から、好ましくは3以上、より好ましくは4.0以上、そして、好ましくは7.5以下、より好ましくは6.0以下である。
本発明のレオロジー改質剤の粘度は、作業性の観点から、20℃で、好ましくは1500mPa・s以下、より好ましくは1,000mPa・s以下、更に好ましくは800mPa・s以下、より更に好ましくは500mPa・s以下である。ここで、液状レオロジー改質剤の粘度は、測定対象の液状レオロジー改質剤をスクリュー管(マルエム製、No.7、35mm×78mm)に50g入れ、B型粘度計(東機産業株式会社製、VISCOMETER TVB−10、ローターM21)を用いて回転数12rpmで撹拌し、3分後に測定した値である。
本発明のレオロジー改質剤は、水を含有する場合、(A)成分と(B)成分から形成された紐状ミセルを含有する。そして、この紐状ミセルは、配管内を圧送される水に添加した際、乱流や水と配管との摩擦抵抗を抑え、圧送エネルギー損失を抑える効果があるが、従来の高分子と異なり、圧送ポンプの強いせん断力によって構造が破壊されても、ポンプを通過し、せん断力が低下すれば紐状ミセル構造が再生するため、水の圧送エネルギーを低減させる組成物として好適である。
こうした特性から、本発明のレオロジー改質剤は、増粘剤、チキソトロピー付与剤などとして適度な粘弾性が要求される用途にも好適に用いられる。例えば、増粘ゲル化剤、配管摩擦抵抗低減剤、インク用添加剤、農薬助剤、潤滑剤、ワックス、などとして有用である。
本発明のレオロジー改質剤は、水硬性スラリー用レオロジー改質剤としてより有用である。すなわち、水硬性粉体を含有するスラリー用のレオロジー改質剤としてより有用である。本発明のレオロジー改質剤は、水硬性スラリーに対して、材料分離抑制、水中分離抑制といった効果を付与できる。本発明のレオロジー改質剤は、例えば、水中不分離コンクリート、吹付用コンクリート用、トンネル補修用、水平でない壁への施工用、坑井掘削用の添加剤、シールド工法用として用いることができる。また、本発明のレオロジー改質剤は、工事領域を枠で囲って枠内の水を排水することなしに、護岸工事を行う用途などに用いることができる。
本発明のレオロジー改質剤において、(A)成分と(B)成分から紐状ミセルが形成していることは電子顕微鏡写真により確認できる。
また本発明のレオロジー改質剤において、(A)成分と(B)成分から紐状ミセルが形成している場合、組成物の動的粘弾性がMaxwell型に類似した挙動を示す。この挙動は「界面活性剤水溶液の粘弾性特性」(四方俊幸、表面 vol.29、No5(1991)、p399-499)の記載から、有限の分子量を有する高分子状構造の絡み合いを示唆するものであり、無限の分子量を有する完全な紐状ミセル形状ではないが、実用上有用な粘弾性を発現するために十分な長さの紐状ミセルが形成していると推察することが出来る。
本発明のレオロジー改質剤は、下記標準試験(I)において、撹拌停止時に液状物に気泡の巻き返しが観察されることが好ましい。気泡の巻き返しとは、下記標準試験(I)において、撹拌時に液状物に巻き込まれた気泡が撹拌停止時に回転方向とは逆向きに移動する現象のことを言う。
標準試験(I):200mlビーカーに、水硬性粉体と水との質量比が、水/水硬性粉体で、300質量%の水硬性組成物から採取した上澄み液90mgに、本発明のレオロジー改質剤を、(A)成分と(B)成分の合計含有量が上澄み液100質量部に対して3質量部以上10質量部以下となるように加え、直径6mmのガラス棒で4回転/秒で180秒間撹拌し、撹拌停止時に液状物に気泡の巻き返しがあるか観察する。
本発明のレオロジー改質剤は、配管摩擦抵抗低減剤としても用いることができる。
配管摩擦抵抗低減剤とは、密閉循環系を形成する配管中の水に添加することにより、水の乱流を抑え、さらに配管と水との摩擦抵抗を低減させて冷温水ポンプの搬送動力(圧送エネルギー)を軽減させる剤をいう。
配管摩擦抵抗低減剤には、本発明の液状レオロジー改質剤で述べた事項を適宜適用することができる。
冷温水ポンプの密閉循環系の水に、本発明の配管摩擦低減剤を添加すると、(A)成分と(B)成分が紐状ミセルを形成し、この紐状ミセルが循環水の乱れのエネルギー(乱流渦)を吸収し、循環水の流れを乱流から層流に変化させることができる。これにより、配管内の摩擦が低減されるため、冷温水ポンプの搬送動力を低減させることができる。
また配管摩擦低減剤には、カチオン性界面活性剤と芳香族アニオン活性剤を含むものが提案されており、例えば特開昭58−185692号公報が挙げられる。
本発明のレオロジー改質剤は、増粘ゲル化剤としても用いることができる。
増粘ゲル化剤には、本発明のレオロジー改質剤で述べた事項を適宜適用することができる。
本発明の増粘ゲル化剤は、(A)成分と(B)成分が紐状ミセルを形成することで、高い粘弾性を有するため、例えば、洗浄剤組成物に添加すれば、垂直又は傾斜した硬質等の汚れた表面に対して、より長い間付着させることができ、高い洗浄効果を上げることができる。
本発明のレオロジー改質剤は、水硬性スラリー組成物のレオロジー改質剤として使用する場合、カチオン界面活性剤を含有しない為、粘土を含む砂も使用可能であり、また粘土を含む場所での施工も可能である。また、ベントナイトは建築土木用のレオロジー改質剤として広く利用されているが、ベントナイトとも併用が可能である。
本発明は、(A)成分と(B)成分と(C)成分と水とを含む混合物の、レオロジー改質剤としての使用を提供する。
また本発明は、(A)成分と(B)成分と(C)成分と水とを含む混合物の、レオロジー改質剤としての用途を提供する。
また本発明は、(A)成分と(B)成分と(C)成分と水とを含み、(A)成分と(B)成分から形成された紐状ミセルを含む混合物の、レオロジー改質剤としての使用を提供する。
これらの使用又は用途には、上記で述べた事項、例えば(A)成分、(B)成分、(C)成分の好ましい態様を、適宜適用することができる。
<レオロジー改質剤の保存方法>
本発明は、(A)成分と、(B)成分を含むレオロジー改質剤に、(C)成分を加える、レオロジー改質剤の保存方法である。
本発明のレオロジー改質剤の保存方法は、本発明のレオロジー改質剤で述べた事項を適時適用することができる。
<スラリー組成物>
本発明のスラリー組成物は、本発明のレオロジー改質剤、水、及び粉体を含有する。すなわち、本発明のスラリー組成物は、(A)成分、(B)成分、(C)成分、水、及び粉体を含有する。
本発明のスラリー組成物の一例として、(A)成分、(B)成分、(C)成分、水、及び粉体を含有し、(A)成分と(B)成分から形成された紐状ミセルを含有するスラリー組成物が挙げられる。紐状ミセルが形成されている場合、本発明のスラリー組成物は、該スラリー組成物の(A)成分、(B)成分及び水の組成で調製した水溶液の動的粘弾性がMaxwell型に類似した挙動を示す。
本発明のスラリー組成物には、本発明のレオロジー改質剤で述べた事項を適宜適用することができる。
本発明の粉体としては、本発明の効果に影響のない範囲内で無機粉体を用いることができる。無機粉体としては、特に限定されないが、以下のものが挙げられる。無機粉体のうち、水硬性粉体を用いるものが、水硬性スラリー組成物である。
(1)セメント、石膏などの水硬性粉体
(2)フライアッシュ、シリカフューム、火山灰、けい酸白土などのポソラン作用を持つ粉体
(3)石炭灰、高炉スラグ、けい藻土などの潜在水硬性粉体
(4)カオリン、ケイ酸アルミニウム、クレー、タルク、マイカ、ケイ酸カルシウム、セリサイト、ベントナイトなどのケイ酸塩
(5)炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸バリウム、塩基性炭酸鉛などの炭酸塩
(6)硫酸カルシウム、硫酸バリウムなどの硫酸塩
(7)ストロンチウムクロメート、ピグメントイエローなどのクロム酸塩
(8)モリブデン酸亜鉛、モリブデン酸カルシウム亜鉛、モリブデン酸マグネシウムなどのモリブデン酸塩
(9)アルミナ、酸化アンチモン、酸化チタニウム、酸化コバルト、四酸化三鉄、三酸化ニ鉄、四酸化三鉛、一酸化鉛、酸化クロムグリーン、三酸化タングステン、酸化イットリウムなどの金属酸化物
(10)水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、水酸化鉄、メタチタン酸などの金属水酸化物
(11)炭化ケイ素、炭化タングステン、炭化ホウ素、炭化チタンなどの金属炭化物
(12)窒化アルミニウム、窒化ケイ素、窒化ホウ素、ジルコニア、チタン酸バリウム、サチンホワイト、カーボンブラック、グラファイト、クロムイエロー、硫化水銀、ウルトラマリン、パリスブルー、チタニウムイエロー、クロムバーミリオン、リトポン、アセト亜ヒ酸銅、ニッケル、銀、パラジウム、チタン酸ジルコン酸鉛などの、上記(1)〜(11)に分類されない他の無機粉体
粉体は、水硬性粉体又は水硬性粉体とベントナイトの混合粉体が挙げられる。また、粉体は、セメント又はセメントとベントナイトとの混合粉体が挙げられる。
本発明のスラリー組成物は、(A)成分と(B)成分の合計含有量が、水100質量部に対して、実用上十分な粘弾性を得る観点から、好ましくは0.1質量部以上、より好ましくは0.25質量部以上、更に好ましくは0.5質量部以上、より更に好ましくは1質量部以上、そして、好ましくは30質量部以下、より好ましくは10質量部以下、更に好ましくは8質量部以下、より更に好ましくは6質量部以下、より更に好ましくは5質量部以下である。ここでの水は、スラリー組成物の水相部分の水である。
また本発明のスラリー組成物は、(A)成分の含有量が、水100質量部に対して、実用上、十分な粘弾性を得る観点から、好ましくは0.05質量部以上、より好ましくは0.12質量部以上、更に好ましくは0.25質量部以上、より更に好ましくは0.5質量部以上、そして、スラリー組成物中における泡立ち抑制の観点から、好ましくは5質量部以下、より好ましくは4質量部以下、更に好ましくは2質量部以下である。ここでの水は、スラリー組成物の水相部分の水である。
また本発明のスラリー組成物は、(B)成分の含有量が、水100質量部に対して、実用上、十分な粘弾性を得る観点から、好ましくは0.05質量部以上、より好ましくは0.12質量部以上、更に好ましくは0.25質量部以上、より更に好ましくは0.5質量部以上、そして、好ましくは5質量部以下、より好ましくは4質量部以下、更に好ましくは2質量部以下である。ここでの水は、スラリー組成物の水相部分の水である。
本発明のスラリー組成物は、(A)成分と(B)成分の合計含有量が所定の範囲内であり、かつ(A)成分と(B)成分の各含有量が所定の範囲内であることが好ましい。
また本発明のスラリー組成物は、(C)成分の含有量が、水100質量部に対して、組成物のpHを所定の範囲に収め、かつ実用上、十分な粘弾性を得る観点から、好ましくは0.01質量部以上、より好ましくは0.1質量部以上、更に好ましくは0.2質量部以上、より更に好ましくは0.5質量部以上、そして、組成物のpHを所定の範囲に収め、かつ実用上、十分な粘弾性を得る観点から、好ましくは10質量部以下、より好ましくは5質量部以下、更に好ましくは2質量部以下である。ここでの水は、スラリー組成物の水相部分の水である。
また本発明のスラリー組成物は、(D)成分を含有することができる。(D)成分を含有する場合、本発明のスラリー組成物中の(D)成分の含有量は、水100質量部に対して、スラリー組成物がベントナイトや粘土鉱物を含む場合のレオロジー効果発現の観点から、好ましくは0.1質量部以上、より好ましくは0.25質量部以上、更に好ましくは0.5質量部以上、より更に好ましくは1質量部以上、そして、スラリー組成物の増粘抑制の観点から、好ましくは30質量部以下、より好ましくは10質量部以下、更に好ましくは8質量部以下、より更に好ましくは6質量部以下、より更に好ましくは5質量部以下である。ここでの水は、スラリー組成物の水相部分の水である。
また本発明のスラリー組成物は、(E)成分を含有することができる。(E)成分を含有する場合、本発明のスラリー組成物中の(E)成分の含有量は、水100質量部に対して、レオロジー改質剤の作業性の観点から、好ましくは0.4質量部以上、より好ましくは1質量部以上、更に好ましくは2質量部以上、より更に好ましくは3質量部以上、そして、優れた粘弾性を付与する観点から、好ましくは50質量部以下、より好ましくは30質量部以下、更に好ましくは20質量部以下、より更に好ましくは10質量部以下である。ここでの水は、スラリー組成物の水相部分の水である。
本発明のスラリー組成物は、水/粉体比(W/P)が、スラリー組成物の流動性を確保する観点から、好ましくは12質量%以上、より好ましくは30質量%以上、更に好ましくは50質量%以上、より更に好ましくは100質量%以上、そして、スラリー組成物の乾燥による収縮を抑える観点から、好ましくは1000質量%以下、より好ましくは500質量%以下、更に好ましくは300質量%以下である。
ここで、水/粉体比(W/P)は、スラリー組成物中の水と粉体の質量百分率(質量%)であり、水/粉体×100で算出される。
本発明のスラリー組成物の粘度は、レオロジー改質効果の観点から、20℃で、好ましくは1,000mPa・s以上、より好ましくは3,500mPa・s以上、更に好ましくは4,000mPa・s以上、そして、流動性を確保する観点から30,000mPa・s以下である。ここで、スラリー組成物の粘度は、測定対象のスラリー組成物を、B型粘度計(RION株式会社製、VISCOTESTER VT−04E、ローターNo.1)を用いて回転数62.5rpmで撹拌し、1分後に測定した値である。
<スラリー組成物の製造方法>
本発明は、本発明のレオロジー改質剤、水、及び粉体を混合する、スラリー組成物の製造方法を提供する。
本発明のスラリー組成物の製造方法には、本発明のレオロジー改質剤及びスラリー組成物で述べた事項を適宜適用することができる。
本発明のスラリー組成物の製造方法は、予め水と粉体とを含むスラリーを調製し、本発明のレオロジー改質剤を該スラリーに添加し、混合してスラリー組成物を製造することが好ましい。
本発明のスラリー組成物及びスラリー組成物の製造方法は、材料分離抵抗性に優れ、下記の水硬性スラリー組成物及び水硬性スラリー組成物の製造方法として有用である。
本発明のスラリー組成物は粘性だけでなく、高い粘弾性も併せ持つため、材料分離抵抗性に優れていると考えられる。つまり、高い粘性だけではスラリーの粒子がゆっくりと沈降してしまうため、粘弾性も必要だと考えられる。
<水硬性スラリー組成物>
本発明は、本発明のレオロジー改質剤、水、及び水硬性粉体を含有する、水硬性スラリー組成物を提供する。すなわち、本発明の水硬性スラリー組成物は、(A)成分、(B)成分、(C)成分、水、及び水硬性粉体を含有する。
本発明の水硬性スラリー組成物の一例として、(A)成分、(B)成分、(C)成分、水、及び水硬性粉体を含有し、(A)成分と(B)成分から形成された紐状ミセルを含有する水硬性スラリー組成物が挙げられる。紐状ミセルが形成されている場合、本発明の水硬性スラリー組成物は、該スラリー組成物の(A)成分、(B)成分及び水の組成で調製した水溶液の動的粘弾性がMaxwell型に類似した挙動を示す。
本発明の水硬性スラリー組成物には、本発明のレオロジー改質剤、スラリー組成物及びスラリー組成物の製造方法で述べた事項を適宜適用することができる。
本発明の水硬性スラリー組成物に使用される水硬性粉体とは、水と混合することで硬化する粉体であり、例えば、普通ポルトランドセメント、早強ポルトランドセメント、超早強ポルトランドセメント、耐硫酸塩ポルトランドセメント、低熱ポルトランドセメント、白色ポルトランドセメント、エコセメント(例えばJIS R5214等)が挙げられる。これらの中でも、水硬性スラリー組成物の必要な強度に達するまでの時間を短縮する観点から、早強ポルトランドセメント、普通ポルトランドセメント、耐硫酸性ポルトランドセメント及び白色ポルトランドセメントから選ばれるセメントが好ましく、早強ポルトランドセメント、普通ポルトランドセメントがより好ましい。
また、水硬性粉体には、高炉スラグ、フライアッシュ、シリカヒューム、無水石膏等が含まれてよく、また、非水硬性の石灰石微粉末等が含まれていてもよい。水硬性粉体として、セメントと高炉スラグ、フライアッシュ、シリカヒューム等とが混合された高炉セメントやフライアッシュセメント、シリカヒュームセメントを用いてもよい。
また、水硬性粉体は、セメント又はセメントとベントナイトとの混合粉末が挙げられる。
本発明の水硬性スラリー組成物は、骨材を含有することが好ましい。骨材は、細骨材や粗骨材等が挙げられ、細骨材は山砂、陸砂、川砂、砕砂が好ましく、粗骨材は山砂利、陸砂利、川砂利、砕石が好ましい。用途によっては、軽量骨材を使用してもよい。なお、骨材の用語は、「コンクリート総覧」(1998年6月10日、技術書院発行)による。
本発明の水硬性スラリー組成物には、本発明の効果に影響ない範囲で、水硬性スラリー用として一般的に用いられる分散剤を用いることが出来る。
分散剤を加える時は、水と粉体と分散剤を混練後、本発明のレオロジー改質剤を加えて混合することが好ましい。
本発明の水硬性スラリー組成物において、分散剤は、ナフタレン系重合体、ポリカルボン酸系重合体、メラミン系重合体、フェノール系重合体、リグニン系重合体が挙げられ、水硬性スラリー組成物の必要な強度に達するまでの時間を短縮する観点から、好ましくはナフタレン系重合体、ポリカルボン酸系重合体、メラミン系重合体、フェノール系重合体から選ばれる分散剤であり、より好ましくはナフタレン系重合体、ポリカルボン酸系重合体、フェノール系重合体から選ばれる分散剤であり、更に好ましくはポリカルボン酸系重合体である。
ナフタレン系重合体としては、ナフタレンスルホン酸ホルムアルデヒド縮合物(花王株式会社製マイテイ150等)、メラミン系重合体としてはメラミンスルホン酸塩ホルムアルデヒド縮合物(例えば花王株式会社製マイテイ150−V2)、フェノール系重合体としては、フェノールスルホン酸ホルムアルデヒド縮合物(特開昭49−104919号公報に記載の化合物等)、リグニン系重合体としてはリグニンスルホン酸塩(ボレガード社製ウルトラジンNA、日本製紙ケミカル株式会社製サンエキス、バニレックス、パールレックス等)等を用いることができる。
ポリカルボン酸系共重合体としては、ポリアルキレングリコールと(メタ)アクリル酸とのモノエステルと(メタ)アクリル酸等のカルボン酸との共重合体(例えば特開平8−12397号公報に記載の化合物等)、ポリアルキレングリコールを有する不飽和アルコールと(メタ)アクリル酸等のカルボン酸との共重合体、ポリアルキレングリコールを有する不飽和アルコールとマレイン酸等のジカルボン酸との共重合体等を用いることができる。ここで、(メタ)アクリル酸は、アクリル酸及びメタクリル酸から選ばれるカルボン酸の意味である。
水硬性スラリー組成物は、本発明の効果に影響ない範囲で、更にその他の成分を含有することもできる。例えば、AE剤、遅延剤、起泡剤、増粘剤、発泡剤、防水剤、流動化剤、消泡剤等が挙げられる。
本発明の水硬性スラリー組成物は、(A)成分と(B)成分の合計含有量が、水100質量部に対して、実用上十分な粘弾性を得る観点から、好ましくは0.1質量部以上、より好ましくは0.25質量部以上、更に好ましくは0.5質量部以上、より更に好ましくは1質量部以上、そして、水硬性スラリー組成物の水和反応を阻害させない観点から、好ましくは30質量部以下、より好ましくは10質量部以下、更に好ましくは8質量部以下、より更に好ましくは6質量部以下、より更に好ましくは5質量部以下である。
また本発明の水硬性スラリー組成物は、(A)成分の含有量が、水100質量部に対して、実用上、十分な粘弾性を得る観点から、好ましくは0.05質量部以上、より好ましくは0.12質量部以上、更に好ましくは0.25質量部以上、より更に好ましくは0.5質量部以上、そして、水硬性スラリー組成物中における泡立ち抑制の観点から、好ましくは5質量部以下、より好ましくは4質量部以下、更に好ましくは2質量部以下である。
また本発明の水硬性スラリー組成物は、(B)成分の含有量が、水100質量部に対して、実用上、十分な粘弾性を得る観点から、好ましくは0.05質量部以上、より好ましくは0.12質量部以上、更に好ましくは0.25質量部以上、より更に好ましくは0.5質量部以上、そして、水硬性スラリー組成物の水和反応を阻害させない観点から、好ましくは5質量部以下、より好ましくは4質量部以下、更に好ましくは2質量部以下である。
本発明の水硬性スラリー組成物は、(A)成分と(B)成分の合計含有量が所定の範囲内であり、かつ(A)成分と(B)成分の各含有量が所定の範囲内であることが好ましい。ここでの水は、水硬性スラリー組成物の水相部分の水である。
本発明の水硬性スラリー組成物において、(A)成分と(B)成分の質量比(A)/(B)は、高い粘弾性を得る観点から、好ましくは3/97以上、95/5以下である。更に、(A)成分と(B)成分の質量比(A)/(B)は、(A)成分と(B)成分の組み合わせにより、以下の通りとすることが高い粘弾性を得る観点から好適である。
(A)成分の炭化水素基の炭素数が12以上16以下であり、(B)成分の脂肪酸部分の炭素数が10以上16以下の場合、(A)成分と(B)成分の質量比(A)/(B)は、高い粘弾性を得る観点から、好ましくは5/95以上、そして、好ましくは25/75以下、より好ましくは15/85以下、更に好ましくは7/93以下である。
(A)成分の炭化水素基の炭素数が17以上22以下であり、(B)成分の脂肪酸部分の炭素数が10以上16以下の場合、(A)成分と(B)成分の質量比(A)/(B)は、高い粘弾性を得る観点から、好ましくは5/95以上、より好ましくは15/85以上、そして、好ましく45/55以下、より好ましくは35/65以下である。
(A)成分の炭化水素基の炭素数が17以上22以下であり、(B)成分の脂肪酸部分の炭素数が17以上22以下の場合、(A)成分と(B)成分の質量比(A)/(B)は、高い粘弾性を得る観点から、好ましくは5/95以上、より好ましくは15/85以上、更に好ましくは40/60以上、そして、好ましくは55/45以下である。
(A)成分の炭化水素基の炭素数が12以上16以下であり、(B)成分の脂肪酸部分の炭素数が17以上22以下の場合、(A)成分と(B)成分の質量比(A)/(B)は、高い粘弾性を得る観点から、好ましくは5/95以上、より好ましくは15/85以上、更に好ましくは25/75以上、そして、好ましくは55/45以下、より好ましくは35/65以下である。
また本発明の水硬性スラリー組成物は、(C)成分の含有量が、水100質量部に対して、保存安定性の観点から、好ましくは0.01質量部以上、より好ましくは0.1質量部以上、更に好ましくは0.2質量部以上、より更に好ましくは0.5質量部以上、そして、同様の観点から、好ましくは10質量部以下、より好ましくは5質量部以下、更に好ましくは2質量部以下である。ここでの水は、水硬性スラリー組成物の水相部分の水である。
また本発明の水硬性スラリー組成物は、(D)成分を含有することができる。本発明の水硬性スラリー組成物に用いる粉体が水硬性粉体及びベントナイト、更にセメント及びベントナイトを含む場合、本発明の水硬性スラリー組成物は、(D)成分を含有することが好ましい。(D)成分を含有する場合、本発明の水硬性スラリー組成物中の(D)成分の含有量は、水100質量部に対して、水硬性スラリー組成物がベントナイトや粘土鉱物を含む場合のレオロジー効果発現の観点から、好ましくは0.1質量部以上、より好ましくは0.25質量部以上、更に好ましくは0.5質量部以上、より更に好ましくは1質量部以上、そして、水硬性スラリー組成物の増粘抑制の観点から、好ましくは30質量部以下、より好ましくは10質量部以下、更に好ましくは8質量部以下、より更に好ましくは6質量部以下、より更に好ましくは5質量部以下である。ここでの水は、水硬性スラリー組成物の水相部分の水である。
また本発明の水硬性スラリー組成物は、(E)成分を含有することができる。(E)成分を含有する場合、本発明の水硬性スラリー組成物中の(E)成分の含有量は、水100質量部に対して、レオロジー改質剤の作業性の観点から、好ましくは0.4質量部以上、より好ましくは1質量部以上、更に好ましくは2質量部以上、より更に好ましくは3質量部以上、そして、優れた粘弾性を付与する観点から、好ましくは50質量部以下、より好ましくは30質量部以下、更に好ましくは20質量部以下、より更に好ましくは10質量部以下である。ここでの水は、水硬性スラリー組成物の水相部分の水である。
本発明の水硬性スラリー組成物は、分散剤の含有量が、水硬性粉体100質量部に対して、実用上十分な流動性を得る観点から、好ましくは0.0005質量部以上、より好ましくは0.001質量部以上、更に好ましくは0.005質量部以上、そして、水硬性スラリー組成物の水和反応を阻害しない観点から、好ましくは10質量部以下、より好ましくは5質量部以下、更に好ましくは3質量部以下である。
本発明の水硬性スラリー組成物は、水/水硬性粉体比(W/P)が、水硬性スラリー組成物の流動性を確保する観点から、好ましくは12質量%以上、より好ましくは30質量%以上、更に好ましくは50質量%以上、より更に好ましくは100質量%以上、そして、水硬性スラリー組成物の水硬性を確保する観点から、好ましくは1000質量%以下、より好ましくは500質量%以下、更に好ましくは300質量%以下である。
ここで、水/水硬性粉体比(W/P)は、水硬性スラリー組成物中の水と水硬性粉体の質量百分率(質量%)であり、水/水硬性粉体×100で算出される。水/水硬性粉体比は、水和反応により硬化する物性を有する粉体の量に基づいて算出される。
なお、水硬性粉体が、セメントなどの水和反応により硬化する物性を有する粉体の他、ポゾラン作用を有する粉体、潜在水硬性を有する粉体、及び石粉(炭酸カルシウム粉末)から選ばれる粉体を含む場合、本発明では、それらの量も水硬性粉体の量に算入する。また、水和反応により硬化する物性を有する粉体が、高強度混和材を含有する場合、高強度混和材の量も水硬性粉体の量に算入する。これは、水硬性粉体の質量が関係する他の質量部などにおいても同様である。
本発明の水硬性スラリー組成物の粘度は、レオロジー改質効果の観点から、20℃で、好ましくは1,000mPa・s以上、より好ましくは3,500mPa・s以上、更に好ましくは4,000mPa・s以上、そして、30,000mPa・s以下である。ここで、水硬性スラリー組成物の粘度は、測定対象の水硬性スラリー組成物を、B型粘度計(RION株式会社製、VISCOTESTER VT−04E、ローターNo.1、)を用いて回転数62.5rpmで撹拌し、1分後に測定した値である。
<水硬性スラリー組成物の製造方法、圧送方法>
本発明は、本発明の液状レオロジー改質剤、水、及び水硬性粉体を混合する、水硬性スラリー組成物の製造方法を提供する。
本発明の水硬性スラリー組成物の製造方法には、本発明のレオロジー改質剤、スラリー組成物、スラリー組成物の製造方法及び水硬性スラリー組成物で述べた事項を適宜適用することができる。
本発明の水硬性スラリー組成物の製造方法は、予め、水と水硬性粉体とを含むスラリーを調製し、本発明のレオロジー改質剤を該スラリーに添加し、混合して水硬性スラリー組成物を製造することが好ましい。
すなわち、本発明の水硬性スラリー組成物の製造方法として、水と水硬性粉体とを含むスラリーを調製し、本発明のレオロジー改質剤を該スラリーに添加し、混合する、水硬性スラリー組成物の製造方法が挙げられる。
本発明の水硬性スラリー組成物の製造方法において、各成分の混合は、既存の装置を全て使用可能であり、例えば、傾胴ミキサー、パン型ミキサー、二軸強制ミキサー、オムニミキサー、ヘンシェルミキサー、V型ミキサー、及びナウターミキサーなどが挙げられる。
本発明に係る水硬性スラリー組成物の打設の方法は、水硬性スラリー組成物をポンプで圧送する工程と、ポンプで圧送された水硬性スラリー組成物を打設する工程、を有する方法が挙げられる。
本発明により、前記本発明の水硬性スラリー組成物は、打設場所まで運搬しその後型枠に流し込み打設を行う。運搬方法は、一般的に用いる方法が挙げられ、特に限定されるものでは無いが、ポンプで圧送する方法、ミキサー車で運搬する方法、混合機からホッパーに流し込み移動させる方法等が挙げられる。せん断力により粘弾性が低減できる観点から、ミキサー車やホッパーで運搬できない場所に打設する場合などは、低い能力のポンプでも圧送出来る利点があり、特にポンプで圧送する運搬方法が好適である。
本発明の水硬性スラリー組成物をポンプ圧送する場合は、所望の物性に調整され、練りあがった水硬性スラリー組成物を、適切に配設された配管にポンプで圧送することで実施できる。ミキサー車などで搬送後に、水硬性スラリーをポンプ車などのポンプを用いて圧送することもできる。
ポンプの種類は、一般的に用いるスクイーズ式とピストン式などが挙げられ、特に限定されるものではない。
<使用した成分>
(A)成分、(B)成分、(C)成分は、以下のものを用いた。
(A)成分
(a−1):ポリオキシエチレンアルケニル硫酸エステル塩(一般式(a1)中、R1a:炭素数18のアルケニル基(オレイル基)、R2a:エチレン基、n:9、M:アンモニウムイオン)
(B)成分
(b−1):脂肪酸ジエタノールアミド:脂肪酸部分が炭素数18のアルケニル基(オレイル基)である化合物
(C)成分
表に示す化合物を使用した。なお本発明の(C)成分に該当しないものも便宜的に(C)成分の欄に示した。
<レオロジー改質剤の調製方法>
表1〜2に示す含有量の(A)成分と、(B)成分と、(C)成分と、水とを混合してレオロジー改質剤を調製した。その際、(E)成分としてアルキレングリコール系溶剤(Log Pow:−1.6以上1.2以下)を適量用いて、一液型のレオロジー改質剤を得た。表中の含有量は、有効分の含有量である。
具体的には、スクリュー管に、20℃の水、(A)成分、(C)成分、及び(E)成分を配合し、恒温槽(40℃)で、(A)成分が完全に溶解するまで加熱し、(A)成分が全量溶解したのを確認したのち、(B)成分を配合し、(B)成分が均一に分散するまで撹拌した。この方法で、表1〜2に記載の各レオロジー改質剤を得た。調製直後の各レオロジー改質剤について、20℃におけるpHを測定した。
表中の実施例のレオロジー改質剤を、水、及び水硬性粉体と混合することで、粘弾性を有する水硬性スラリー組成物を得ることができる。
また調製したレオロジー改質剤の一部を、スクリュー管(マルエム製、No.7、35mm×78mm)に100g入れ、60℃の条件下に2週間放置した。
<水硬性スラリー組成物のレオロジー改質効果>
(1)水硬性スラリー組成物の調製
水400gとセメント(普通ポルトランドセメント、太平洋セメント製と住友大阪セメント製を質量比50/50で混合した物)400gを混合し、市販のハンドミキサーを用いて20℃で30秒間撹拌した。その後、調製直後のレオロジー改質剤、又は60℃の条件下に2週間放置したレオロジー改質剤を、水硬性スラリー組成物中の水100質量部に対して、(A)成分と(B)成分の含有量の合計が1質量部となるように添加し、90秒間撹拌を続けることで、水硬性スラリー組成物を調製した。
最初にセメントに添加した水量とレオロジー改質剤中の水量との合計は400gとなるように調製した。水は水道水を使用した。
調製した各水硬性組成物の水/水硬性粉体比(W/P)は100質量%であった。
(2)スラリーの粘度の測定
得られた水硬性スラリー組成物の粘度をB型粘度計(RION株式会社製、VISCOTESTER VT−04E、ローターNo.1)を用いて回転数62.5rpmで撹拌し、撹拌から1分後の値を採用した。結果を表1〜2に示す。水硬性スラリー組成物の温度は、何れも20℃であった。水硬性スラリー組成物の粘度が2,500mPa・s以上であれば、スラリーに粘弾性が確認されるため好ましい。
Figure 0006710195
Figure 0006710195
<処方例>
表3に、本発明のレオロジー改質剤の処方例を示す。これらのレオロジー改質剤は、高温、例えば60℃の高温で保存した後も、水溶液やスラリーに対して粘弾性を付与することができる。
Figure 0006710195
表3中の成分は、上記した以外の成分は以下のものである。また表3中、(C)成分は、組成物中のpHが4.0〜6.0の範囲となるように「適量」を含有している。また表3の組成物中、(A)〜(E)成分以外の残部は水である。
(A)成分
(a−2):ポリオキシエチレンアルキル硫酸エステル塩(一般式(a1)中、R1a:炭素数18のアルキル基(ステアリル基)、R2a:エチレン基、n:11、M:ナトリウムイオン)
(a―3):ポリオキシエチレンアルキル硫酸エステル塩(一般式(a1)中、R1a:炭素数18のアルキル基(ステアリル基)、R2a:エチレン基、n:7、M:アンモニウムイオン)
(a―4):ポリオキシエチレンアルケニル硫酸エステル塩(一般式(a1)中、R1a:炭素数18のアルケニル基(オレイル基)、R2a:エチレン基、n:11、M:アンモニウムイオン)
(a―5):ポリオキシエチレンアルキル硫酸エステル塩(一般式(a1)中、R1a:炭素数22のアルキル基(ドコシル基)、R2a:エチレン基、n:13、M:ナトリウムイオン)
(B)成分
(b−2):脂肪酸ジエタノールアミド:脂肪酸部分が炭素数12のアルキル基(ラウリル基)である化合物
(b−3):脂肪酸ジエタノールアミド:脂肪酸部分がヤシ油脂肪酸由来の炭化水素基である化合物
(b−4):脂肪酸ジエタノールアミド:脂肪酸部分が炭素数18のアルキル基(ステアリル基)である化合物
(C成分)
(c−1):乳酸
(c−2):リン酸
(c−3):エチレンジアミン4酢酸
(c−4):クエン酸
(c−5):酢酸
(D成分)
(D―1):ポリエチレングリコール(重量平均分子量2,000)
(D―2):ポリエチレングリコール(重量平均分子量5,000)
(D―3):ポリエチレングリコール(重量平均分子量8,500)
(D―4):ポリエチレングリコール(重量平均分子量13,000)
(E成分)
(E―1):プロピレングリコール
(E―2):ネオペンチルグリコール
(E―3):2−メチルペンタン−2,4−ジオール
(E―4):ベンジルアルコール
(E―5):ジエチレングリコールモノブチルエーテル

Claims (10)

  1. (A)炭化水素基の炭素数が16以上22以下であり、アルキレンオキサイドの平均付加モル数が0以上25以下である、硫酸エステル又はその塩(以下、(A)成分という)、(B)脂肪酸部分の炭素数が10以上22以下である、脂肪酸アルカノールアミド(以下、(B)成分という)、並びに(C)炭素数8以上の直鎖脂肪酸を除くオキソ酸、及び塩酸から選ばれる1種以上の酸(以下、(C)成分という)を含むレオロジー改質剤。
  2. 液状物である、請求項1に記載のレオロジー改質剤。
  3. 更に水を含有する、請求項1又は2に記載のレオロジー改質剤。
  4. 25℃におけるpHが、3.0以上7.5以下である、請求項3に記載のレオロジー改質剤。
  5. (C)成分が、25℃における酸解離定数(pKa)−4.0以上8.5以下の酸である、請求項1〜4の何れか1項に記載のレオロジー改質剤。
  6. (C)成分が、炭素数0以上10以下であり、且つ1価以上3価以下のオキソ酸である、請求項1〜5の何れか1項に記載のレオロジー改質剤。
  7. 下記標準試験(I)において、撹拌停止時に液状物に気泡の巻き返しが観察される、請求項1〜6の何れか1項に記載のレオロジー改質剤。
    標準試験(I):200mlビーカーに、水硬性粉体と水との質量比が、水/水硬性粉体で、300質量%の水硬性組成物から採取した上澄み液90mgに、前記レオロジー改質剤を、(A)成分と(B)成分の合計含有量が上澄み液100質量部に対して3質量部以上10質量部以下となるように加え、直径6mmのガラス棒で4回転/秒で180秒間撹拌し、撹拌停止時に液状物に気泡の巻き返しがあるか観察する。
  8. 請求項1〜7の何れか1項に記載のレオロジー改質剤、水及び粉体を含有するスラリー組成物。
  9. 粉体が水硬性粉体又は水硬性粉体とベントナイトとの混合物である、請求項8に記載のスラリー組成物。
  10. (A)炭化水素基の炭素数が16以上22以下であり、アルキレンオキサイドの平均付加モル数が0以上25以下である、硫酸エステル又はその塩と、(B)脂肪酸部分の炭素数が10以上22以下である、脂肪酸アルカノールアミドを含むレオロジー改質剤に、
    (C)炭素数8以上の直鎖脂肪酸を除くオキソ酸、及び塩酸から選ばれる1種以上の酸を加える、
    レオロジー改質剤の保存方法。
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