JP2007169093A - ポリマーセメント組成物 - Google Patents

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Abstract

【課題】硬化後の耐再乳化性、耐吸水性に優れ、乾燥収縮の小さい水硬性ポリマーセメント組成物の提供。
【解決手段】(A)セメント、(B)カチオン系粉末樹脂及び(C)アニオン系粉末樹脂を含有する水硬性組成物。
【選択図】なし

Description

本発明は、硬化後の耐再乳化性、耐吸水性に優れ、乾燥収縮が小さい、水硬性ポリマーセメント組成物に関する。
コンクリート構造物や建造物の表面仕上げや保護に用いられるセメントモルタルでは、躯体に対する接着性を高めたり、薄塗りであるが故に起こりやすいドライアウトを防止するため、しばしば有機ポリマーエマルションが混入されたポリマーセメントモルタルが使用されている。また劣化コンクリート構造物の補修では、劣化部を除去した後に行われる断面修復においても、接着性増強効果のほか、中性化抵抗性、塩化物イオン透過抵抗性、酸素透過抵抗性などの耐久性の高さからポリマーセメントモルタルが用いられている。まだ少数ではあるが、ポリマーセメントコンクリートも施工されている。
セメント混和用の有機ポリマーの水への分散(安定化)様式は、アニオン化、カチオン化、保護コロイドの重合に大別される。しかしながら保護コロイドの重合は、保護コロイド自体アニオン性又はカチオン性が与えられることにより水中で安定化するため、広義にはアニオン系とカチオン系に分類することができる。アニオン系の有機ポリマーは、カルボキシル基やヒドロキシ基によりアニオン性が付与されており、ノニオン系及び/又はアニオン系界面活性剤が併用されることがある。カチオン系の有機ポリマーは主に第4級アンモニウム基でカチオン性が付与され、ノニオン系及び/又はカチオン系界面活性剤が併用されることがある。
水に分散したポリマーはセメントの硬化後乾燥することによりポリマー皮膜を形成する。ポリマーはセメント水和物と架橋することにより、耐水性を得る。ポリマー皮膜は躯体とモルタルとの間に介在して接着性を増したり、硬化モルタル中のセメント水和物の空隙を埋めることにより様々な劣化物質の透過を阻害したりする。
従来セメント混和用の有機ポリマーは水中に乳化安定化された液体エマルションの形で供給されてきたが、最近では施工の単純化、運送費の削減などの必要から粉末樹脂の使用が増えてきた。これは液体樹脂エマルションを乾燥・粉末化したものであり、水と混合することにより再乳化して液体エマルションとなりうるよう、界面活性作用が高められている。粉末樹脂においても接着性の増強、耐久性の向上等の効果が認められ、これらを利用した技術として、特許文献1では下地調整用、タイル貼り用などの左官モルタルに、特許文献2では吹付けモルタルに利用する方法が開示されている。
特開2002−114551号公報 特許第3320785号公報
しかしながら、セメントの硬化とともに形成されるポリマー皮膜は、架橋の不完全さ、造膜の不完全さなどから、水の介在により皮膜が弱められたり、再乳化したりする。また、粉末樹脂は硬化のための水との混練の際の再乳化性を高めるため、親水性が高く設計されており、硬化・造膜後にも再乳化を受け易い問題点がある。このように、硬化・造膜後にも再乳化すると、施工されたモルタルの耐吸水性が低下し、乾燥収縮が増大し、接着強度が低下する等の問題が生じる。従って、本発明は硬化・造膜後の再乳化や吸水に対する抵抗性を高めた水硬性ポリマーセメント組成物を提供することを目的とする。
本発明者は、上記課題を解決すべく鋭意検討を行った結果、カチオン系の有機ポリマーとアニオン系の有機ポリマーを組み合わせることより、硬化後のポリマーセメント組成物の耐再乳化性や耐吸水性が改善されることを見出した。またカチオン系とアニオン系の双方を液体樹脂エマルションで供給された場合、その液体の安定性に問題があることから、該有機ポリマーの片方、または双方を粉末樹脂として使用することにより、安定性も確保できることを見出し、本発明を完成させた。
すなわち本発明は、(1)(A)セメント、(B)カチオン系粉末樹脂及び(C)アニオン系粉末樹脂を含有する水硬性組成物、(2)(A)セメント、(C)アニオン系粉末樹脂及び(D)カチオン系液体樹脂エマルションを含有する水硬性組成物、(3)(A)セメント、(B)カチオン系粉末樹脂及び(E)アニオン系液体樹脂エマルションを含有する水硬性組成物を提供するものである。
本発明の水硬性組成物を用いれば、耐再乳化性、耐吸水性に優れており、また乾燥収縮も小さい硬化体を提供し得る。
本発明で用いる(A)セメントは、普通、早強、超早強、中庸熱、低熱、耐硫酸塩等の各種ポルトランドセメント;エコセメント(普通型);微粒子セメント、超微粒子セメント;アルミナセメント;高炉スラグ、フライアッシュ、シリカフューム等との混合セメント;又はこれらの各種セメントの混合物が挙げられる。またその一部を石灰石粉末で置換したセメント、混合セメントに石膏を添加したセメント等も使用できる。
本発明で使用する(B)カチオン系粉末樹脂は、水に分散して乳化し得る粉末状の有機高分子ポリマーで、かつ乾燥することによりポリマー皮膜を形成し得るものであって、ベース樹脂に対してカチオン性を与えたり、保護コロイドや界面活性剤にカチオン性を与えたりすることにより、水中での乳化安定性を付与されるものをいう。乳化安定性の補助にノニオン系の界面活性剤が添加されたものも使用可能である。現在製造されているもののベース樹脂としては、オールアクリル重合体と呼ばれるメタクリル酸アルキルエステルとアクリル酸アルキルエステルの共重合体、スチレン・アクリル共重合体と呼ばれるスチレンとアクリル酸アルキルエステルの共重合体、エチレン・酢酸ビニル共重合体、エチレン・酢酸ビニル・塩化ビニル共重合体、酢酸ビニル・ベオバ共重合体などが挙げられる。これらのベース樹脂は単独又は2種以上を組み合わせて使用してもよい。
これらのベース樹脂のうち、メタクリル酸アルキルエステルとアクリル酸アルキルエステルの共重合体、スチレンとアクリル酸アルキルエステルの共重合体、エチレン・酢酸ビニル共重合体、酢酸ビニル・ベオバ共重合体が、耐吸水性、強度の点で好ましい。
これらのベース樹脂にアンモニウム塩又は第4級アンモニウム基を導入することによりカチオン性を付与されたカチオン系粉末樹脂が特に好ましい。
本発明で使用する(C)アニオン系粉末樹脂は、水に分散して乳化し得る粉末状の有機高分子ポリマーで、かつ乾燥することによりポリマー皮膜を形成し得るものであって、ベースの樹脂のモノマーがアニオン性を有したり、保護コロイドや界面活性剤がアニオン性を有したりすることにより、水中での乳化安定性を有するものをいう。乳化安定性の補助にノニオン系の界面活性剤が添加されたものも使用可能であり、これらはノニオン系の樹脂と称せられることもある。ベース樹脂としては、前記カチオン系粉末樹脂のベース樹脂と同様のものが挙げられる。これらのベース樹脂へのアニオン性の付与は、ベース樹脂にカルボキシル基、ヒドロキシ基、チオール基、スルホン酸基を導入することにより行われたものが好ましい。
本発明で使用する(D)カチオン系液体樹脂エマルションは、有機高分子ポリマーが乳化して水中に均一に分散した水溶液で、かつ乾燥することによりポリマー皮膜を形成し得るものであって、ベース樹脂に対してカチオン性を与えたり、保護コロイドや界面活性剤にカチオン性を与えたりすることにより、水中での乳化安定性を付与されるものをいう。乳化安定性の補助にノニオン系の界面活性剤が添加されたものも使用可能である。現在製造されているもののベース樹脂としては、スチレン・ブタジエン共重合体(SBR)、アクリロニトリル・ブタジエン共重合体(NBR)、メチルメタクリル酸・ブタジエン共重合体(MBR)、ポリクロロプレン、オールアクリル重合体、スチレン・アクリル共重合体、エチレン・酢酸ビニル共重合体、エチレン・酢酸ビニル・塩化ビニル共重合体、酢酸ビニル・ベオバ共重合体などが挙げられる。これらのベース樹脂は単独又は2種以上を組み合わせて使用してもよい。
これらのベース樹脂のうち、スチレン・ブタジエン共重合体、メチルメタクリル酸・ブタジエン樹脂、スチレン・アクリル共重合体、エチレン・酢酸ビニル共重合体、酢酸ビニル・ベオバ共重合体が耐吸水性、強度の点で好ましい。
これらのベース樹脂にアンモニウム塩又は第4級アンモニウム基を導入することによりカチオン性を付与されたカチオン系液体樹脂エマルションが特に好ましい。
本発明で使用する(E)アニオン系液体樹脂エマルションは、有機高分子ポリマーが乳化して水中に均一に分散した水溶液で、かつ乾燥することによりポリマー皮膜を形成し得るものであって、ベース樹脂のモノマーがアニオン性を有したり、保護コロイドや界面活性剤がアニオン性を有したりすることにより、水中での乳化安定性を有するものをいう。乳化安定性の補助にノニオン系の界面活性剤が添加されたものも使用可能であり、これらはノニオン系の樹脂と称せられることもある。ベース樹脂としては前記カチオン系液体樹脂エマルションのベース樹脂と同様のものが挙げられる。これらのベース樹脂へのアニオン性の付与は、カルボキシル基、ヒドロキシ基、チオール基、スルホン酸基を導入することにより行われたものが好ましい。
本発明で使用する樹脂の総量は多すぎると粘性が高くなり作業が困難であり、またセメントの硬化阻害作用が生じ、一方少なすぎると、樹脂の配合効果が得られなくなる点から、セメント100重量部に対して固形分として1〜20重量部が好ましく、更に好ましくは1〜15重量部である。
また、カチオン系の樹脂とアニオン系の樹脂の配合割合は、両者を併用することによる再乳化性の効果防止、及び耐吸水性の改善効果の顕著な向上の観点から、固形分の重量比で2:8〜8:2、さらに3:7〜7:3、特に4:6〜6:4が好ましい。
本発明の水硬性組成物は必要に応じて更に(F)消泡剤を配合することができる。水硬性ポリマーセメント組成物は、水との混練時にその粘性により空気を連行し易く、そのまま硬化させた場合は硬化体密度が低くなる。吹付け施工や減圧脱気等により連行空気を除去したり、疎な硬化体が必要とされたりする場合以外の用途では、消泡剤の添加により連行空気を減じ、硬化体密度を高く保つのが望ましい。消泡剤はセメント用として通常使用されているものであれば特に制限されないが、ポリエーテル系、脂肪酸エステル系、鉱物油配合系、シリコーン変性系、エマルション系などが挙げられる。その性状も粉末、液体を問わない。その添加量は使用する樹脂、消泡剤、目標とする硬化体密度によって異なり特に制限されるものではないが、該水硬性組成物100重量部に対し、1重量部以下、特に0.01〜1重量部が好ましい。1重量部を超えると添加効果が頭打ちとなり経済的でない。
本発明の水硬性組成物には、必要に応じて、水硬性成分として高炉スラグ、転炉スラグ、脱リンスラグ、脱ケイスラグ、脱流スラグ等の各種スラグ粉末、フライアッシュ、シリカフューム、メタカオリン、その他粘土鉱物等の潜在水硬性物質などを添加してもよい。さらに粗骨材、細骨材、軽量骨材、スラグ骨材などの骨材、骨材微粉、減水剤、硬化遅延剤・促進剤、増粘剤、膨張材、収縮低減剤、防錆剤、有機繊維、無機繊維、顔料なども添加できる。
本発明の水硬性組成物は、セメント、前記カチオン系樹脂及びアニオン系樹脂、さらに必要に応じて消泡剤、骨材及び水を混練した後、ポリマーセメントモルタル又はポリマーセメントコンクリートとして、コンクリート構造物または建造物の表面仕上げ、保護に用いられる。
次に実施例を挙げて本発明を説明するが、本発明は何らこれら実施例に限定されるものではない。
材料の調整、成形方法:
1.ホバートミキサで3分間混練。
2.消泡剤有りの配合はそのまま成形。消泡剤無しの配合はリシンガンを用いて、空気圧約7kgf/cm2で吹付けて成形。
試験方法:乾燥収縮
・長さ変化測定方法: JIS A 1129 に準ずる。
・養生方法: 2日後に脱型・基長測定,その後28日まで20℃−60%RHで養生。
試験方法: 吸水試験
・試験方法: JIS A 6916 の吸水試験に準じる。
・塗り厚: 2 mm
試験方法: 硬化後の再乳化(1)
1.30×30×6cmコンクリート歩道版に2mm厚で塗付ける。
2.成形後7日まで20℃−60%RHで養生。
3.水中に漬け,毎分0.5Lで30日間水を流す。その後1日20℃−60%RHで乾燥。
4.水中に漬ける前後で付着強度を測定し(建研式接着力試験機)、比較する。
試験方法: 硬化後の再乳化(2)
1.30×30×6cmコンクリート歩道版に2 mm厚で塗付ける。
2.成形後7日まで20℃−60%RHで養生。
3.1Lの水中に入れ,亀の子タワシでこすり、溶液の濁り具合を評価。
◎:無色透明、○:僅かに白色、△:白濁して透明でない、×:白色乳液状
使用材料:
(A)セメント:普通ポルトランドセメント(太平洋セメント社製)
寒水石粉:茨城県日立市産
(F)消泡剤:アジタンP801(MUNZING CHEMIE GMBH社製)
(B)カチオン系粉末樹脂:ELOTEX TITAN 8100(日本NSC社製)
(オールアクリル)
(C)アニオン系粉末樹脂:Mowinyl−Powder LDM 7000P(ニチゴー・モビニール社製)
(オールアクリル)
Vinnapas LL−512(WACKER−Chemie GmbH社製)
(スチレンアクリル)
(D)カチオン系液体エマルション:ウルトラゾール CMX−235(ガンツ化成社製)
(オールアクリル)
NSカチオンフレックス(日本化成社製)
(SBR)
(E)アニオン系液体エマルション:ポリトロンA−1500(旭化成ケミカルズ社製)
(スチレンアクリル)
太平洋CX−B(太平洋マテリアル社製)
(SBR)
太平洋エフェクト(太平洋マテリアル社製)
(EVA)
結果を表1〜表5に示す。
樹脂の配合量は固形分で表示し、液体エマルション中の水分は水の配合量として表示した。単位は重量部である。
なお、カチオン系樹脂エマルションとアニオン系樹脂エマルションを併用した場合、保存安定性が悪く、安定して使用できなかった。
Figure 2007169093
Figure 2007169093
Figure 2007169093
Figure 2007169093
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表1〜表5から明らかなように、カチオン系樹脂又はアニオン系樹脂いずれか一方のみを配合した場合には再乳化を生じやすく、その結果、耐吸水性が低く、乾燥収縮も生じ、強度も十分でないのに対し、本発明の水硬性組成物は再乳化を生じ難く、耐吸水性が高く、かつ乾燥収縮もほとんど生じなかった。

Claims (6)

  1. (A)セメント、(B)カチオン系粉末樹脂及び(C)アニオン系粉末樹脂を含有する水硬性組成物。
  2. (A)セメント、(C)アニオン系粉末樹脂及び(D)カチオン系液体樹脂エマルションを含有する水硬性組成物。
  3. (A)セメント、(B)カチオン系粉末樹脂及び(E)アニオン系液体樹脂エマルションを含有する水硬性組成物。
  4. さらに、(F)消泡剤を含有するものである請求項1〜3のいずれか1項記載の水硬性組成物。
  5. 含有する樹脂総量が、セメント100重量部に対して固形分として1〜20重量部である請求項1〜4のいずれか1項記載の水硬性組成物。
  6. カチオン系樹脂とアニオン系樹脂の配合割合が、固形分の重量比で2:8〜8:2である請求項1〜5のいずれか1項記載の水硬性組成物。
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