JP4643318B2 - ポリマーセメント系コンクリート表面被覆材及びその施工方法 - Google Patents
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特に、アルカリ骨材反応によるコンクリート構造物の劣化は、コンクリート中に含まれる骨材の種類によってアルカリ骨材反応が生じるためであり、具体的には、コンクリート中に含有される水酸化アルカリと砂や砂利などの骨材との間の化学反応によって生成するアルカリ・シリカゲルが、コンクリート中の余剰水を吸水し、それによって生じる膨張圧力がコンクリート構造物にひび割れを発生させ、当該ひび割れから、雨水が浸入したり、塩害を招いたりして、結局コンクリートが劣化してしまい、崩壊させるに至る。
更に、かかる表面被覆材には、コンクリートの変形やひび割れの進行に追従できる伸び能力である追従性と、コンクリートへの高い付着性が要求される。
一般に、有機系被覆材は、樹脂により緻密で柔軟性に富む被覆を形成することができるため、外部からの水を遮断し、コンクリートの変形やひび割れの進行に追従できる反面、コンクリート中の余剰水を外部に蒸発させることができないため、アルカリ骨材反応によるコンクリートの膨張を抑制することが困難である。
また、低温になるほどポリマーの伸び能力が低下し、ポリマーセメント系被覆材のひび割れ追従性がさらに低下するため、ポリマーの混合割合を高くしてひび割れ追従性を高めたポリマーセメント系被覆材が望まれる。
しかしながら、ポリマーの混合割合を多くするほど水蒸気透過性は低下し、アルカリ骨材反応による膨張を十分に抑制できない。
更に、上記従来のものでは、コンクリート構造物の追従性が十分ではなく、アルカリ骨材反応によるコンクリートの膨張の抑制が満足できるものではなく、コンクリート構造物の均一な劣化防止を十分に期待することはできない。
また本発明の他の目的は、取り扱いが容易で、上記表面被覆材の特性を有効に発現させることができ、高強度で耐久性の高い構造物を得ることができる簡便な、当該コンクリート表面被覆材の施工方法を提供することである。
好適には、上記本発明のポリマーセメント系コンクリート表面被覆材において、セメント:増量材が質量比で40:60〜80:20である無機粉体100質量部に対して、前記アクリル系ポリマーの水性ポリマーディスパージョンがポリマー固形分で40〜100質量部含有されてなることを特徴とするものである。
本発明のコンクリート表面被膜組成物の施工方法は、上記本発明のポリマーセメント系コンクリート表面被覆材を、コンクリート構造物の表面に塗布または散布することを特徴とする施工方法である。
更に、アルカリ骨材反応によるコンクリートの膨張を抑制することが可能となり、更にコンクリート構造物との接着性能も優れるため、長期に渡り前記効果を維持することが可能となる。
また本発明の当該コンクリート表面被覆材の施工方法は、施工方法が簡便で、上記表面被覆材の特性を有効に発現させることができ、高強度で耐久性の高い構造物を得ることができる。
すなわち、本発明のポリマーセメント系コンクリート表面被覆材は、セメント、平均粒径が150μm以上で最大粒径が1180μm未満の増量材及び、アクリル系ポリマーの水性ディスパージョンとを含有し、当該セメント及び当該増量材の無機粉体中、前記増量材は粒径150μm以上600μm未満の粒子が無機粉体中に20〜37質量%含有されるとともに、粒径600μm以上1180μm未満の粒子が無機粉体中1質量%以下の量で含有されてなるものである。
ここで、本発明の表面被覆材が適用できるコンクリートとしては、劣化が進行する前のコンクリートや、劣化してしまったコンクリートのいずれのコンクリート構造物をも含むものであり、鉄筋コンクリート等の鋼材を含むコンクリート構造物やアルカリ骨材反応を起こした、または起こす可能性がある骨材を含むコンクリートも含まれるものである。
また、本発明において「コンクリート」とは、硬化したコンクリートのみならず、硬化したセメント、モルタルをも含む概念である。
かかる増量材は、その粒子の平均粒径が150μm以上であって、かつ最大粒径が1180μm未満とするものである。
このように増量材の粒子の大きさを規定することにより、表面被覆材に十分な水蒸気透過性を与えるとともに、外部から侵入する水分を有効に遮断することが可能となる。
このことが、上記効果をより有効に発現させるために望ましい。
粒径150μm以上600μm未満の増量材が無機粉体中、20質量%より少ない量で含まれていると、高い水蒸気透過性が得られず、一方45質量%を越える量で増量材に含まれていると、得られるコンクリート表面被覆材中に対する十分な水蒸気透過性が得られるが、外部から浸入する水分に対する防水性が劣ってしまうこととなる。
更に、粒径600μm以上1180μm未満の増量材を無機粉体中、1質量%を超えて含むと、高い水蒸気透過性は得られるものの、外部の水分に対する遮水性能が十分ではない。
これは、セメントが当該無機粉体中40質量%より少ない量で含有されると、コンクリート表面での十分な接着性能が得られず、一方、セメントが80質量%より多いと、得られる表面被覆被膜に十分な水蒸気透過性が付与されない場合があるからである。
更に望ましくは、得られるコンクリート表面被覆材の塗布または散布量の膜厚は、一般的に約0.5〜1.5mmであり、均一な膜をコンクリート構造物表面に成膜させることから、600μm以上1180μm未満の粒径の増量材は、多く含有されないことが望ましい。
上記無機粉体や、必要に応じて添加される増粘剤や消泡剤等の混和剤と安定に混合できるものであれば、特に限定されず、任意のアクリル系ポリマーディスパージョンが使用できる。
当該ポリマーディスパージョンは、水にアクリル系ポリマーを分散させた状態であるので、表面被覆材の水分が蒸発し、ポリマー粒子同士が結合しポリマーフィルムを形成するため、コンクリート構造物表面から水分蒸発を抑制することができる。
これらの混和用ポリマーは、変形追従性能、即ち弾性を付与することを目的に使用され、その変形追従性能は、使用するポリマーのガラス転位温度に依存しているところが大きいものである。
従って、本発明におけるポリマーセメント系表面被覆材に混合できる混和用アクリル系ポリマーとしては、そのガラス転移温度が−50〜―20℃であるものを使用することができ、好ましくは−25〜−45℃、より好ましくは−25〜−35℃である。
ガラス転移温度が−20℃よりも高いものは、常温でのひび割れ追従性に優れているが、低温でのひび割れ追従性が急激に低下してしまうことがあり、一方、ガラス転移温度が−50℃よりも低いものは、成膜したポリマーの強度が低く、表面被覆材の付着強度の低下を招くことがあるからである。
かかる範囲であると、粘性を良好に保持でき、付着性が優れ、またひび割れ追従性も十分に確保できるからであり、40質量部より少ないと、ひび割れ追従性が低下する場合があり、一方、100質量部より多いと、表面被覆材の成膜が遅れ、相対的に含有されるセメント量が減少するためコンクリートとの付着性が低下してしまう場合があり、好ましくない。
かかる範囲で水を配合することにより、十分な作業性と十分な強度発現性が得られることとなる。
なお、本発明における水/無機粉体比を算出する際の水には、上記混練水のほかに、ポリマーディスパージョン中に含まれる水も含むものである。
このようにして得られた本発明のポリマーセメント系コンクリート表面被覆材の塗膜は、伸び率が100%以上で、水蒸気透過性が5mg/cm2・日以上である性能を有するものである。
但し、伸び率は及び水蒸気透過率は、後述する試験例で記載するように、伸び率は、JIS A 6910の「複層仕上塗材の伸び試験方法」に準じて測定した数値であり、水蒸気透過率は、JIS Z 0208の「防湿包装材料の透湿度試験方法」に準じて測定した数値を示す。
更に、水蒸気透過性が5mg/cm2・日以上である性能を有することで、水蒸気透過性に優れた成膜が形成されるので、コンクリート内部を乾燥状態とすることができ、アルカリ骨材反応の発生を抑制することもできることとなる。
使用材料
ポリマーセメント系コンクリート表面被覆材を調製し、試験するにあたり、以下の材料を使用した。
・セメント:普通ポルトランドセメント(住友大阪セメント株式会社製)
・増量材:下記表1に示す粒度分布及び平均粒径を有する石灰石粉末A、B、C、D、E
・アクリル系ポリマーディスパージョン:スチレン−アクリル系ポリマーディスパージョン(固形分57質量% ガラス転移温度−22℃、商品名LDM6481、ニチゴー・モビニール社製)
・増粘剤:商品名PS−20L(松本油脂製薬社製)
表2に示す配合割合で、各材料を20℃の恒温室内で高速ハンドミキサを用いて均一に混練し、JASS 15M−103に規定されるフロー値が120〜130mmになるように調整して、ポリマーセメント系コンクリート表面被覆材を調製した。
但し、表2中、ポリマー/粉体比(%)は、ポリマーディスパージョン中のポリマー固形分の、普通セメント及び石灰石粉の無機粉体に対する質量%を表す。
また、150μm以上600μm未満の増量材/粉体比(%)は、石灰石粉中の150μm以上600μm未満の粒径を有する石灰石粉の、普通セメント及び石灰石粉の無機粉体に対する質量%を表すものである。
上記実施例1〜6及び比較例1〜3及び参考例1〜3で得られた各ポリマーセメント系コンクリート表面被覆材を以下の試験に供し、その結果を表3に示す。
1)水蒸気透過性試験
上記各ポリマーセメント系コンクリート表面被覆材を離型板に、コテを用いて均一に塗布し、厚さ1mmの膜を成膜した。
次いで20℃、65%の相対湿度の恒温室で28日静置した前記各膜を脱型し、直径65mmの円形に打ち抜いたものを試験体として、JIS Z 0208の「防湿包装材料の透湿度試験方法」に準じて、各試験体の水蒸気透過性を測定した。
上記各ポリマーセメント系コンクリート表面被覆材を離型板に、コテを用いて均一に塗布し、厚さ1mmの膜を成膜した。次いで20℃、65%の相対湿度の恒温室で28日静置した前記各膜を脱型し、JIS K 6301の「加硫ゴム物理試験方法」に規定するダンベル状1号に打ち抜いたものを試験体として、JIS A 6910の「複層仕上塗材の伸び試験方法」に準じて、各試験体の伸びを測定した。
試験基板として70×70×20mmのモルタル板に、上記各ポリマーセメント系コンクリート表面被覆材を、コテを用いて均一に塗布し、厚さ1mmの膜を成膜した。
次いで20℃、65%の相対湿度の恒温室で28日静置したものを試験体として、JIS A 6909の「複層仕上塗材の付着強さ試験法方法」に準じて、各試験体の付着性を測定した。
試験基板としてJIS A 5403に規定する4mm厚のフレキシブル板に、上記各ポリマーセメント系コンクリート表面被覆材をコテを用いて均一に塗布し、厚さ1mmの膜を成膜した。
次いで、20℃、65%の相対湿度の恒温室で28日静置したものを試験体として、JIS A 6910の「複層仕上塗材の透水性試験方法」に準じて、各試験体の透水率を測定した。
一方、比較例1の試験結果から、粒径150μm以上600μm未満の増量材が無機粉体中20質量%より少ない場合には、高い水蒸気透過性が得られず、比較例2の試験結果から、粒径150μm以上600μm未満の増量材が無機粉体中45質量%より多い場合であると、高い水蒸気透過性は得られるものの外部の水分に対する遮水性能が十分ではない。
更に、比較例4の試験結果から、ポリマーディスパージョンの添加量が少ない場合には、良好な水蒸気透過性と付着性を有するものの、ひび割れの進行に追従できる伸び能力は不十分であることがわかる。
Claims (4)
- セメント、平均粒径が150μm以上で最大粒径が1180μm未満の増量材及び、アクリル系ポリマーの水性ディスパージョンとを含有し、当該セメント及び当該増量材の無機粉体中、前記増量材は粒径150μm以上600μm未満の粒子が無機粉体中に20〜37質量%含有されるとともに、粒径600μm以上1180μm未満の粒子が無機粉体中1質量%以下の量で含有されてなることを特徴とする、ポリマーセメント系コンクリート表面被覆材。
- 請求項1記載のポリマーセメント系コンクリート表面被覆材において、セメント:増量材が質量比で40:60〜80:20である無機粉体100質量部に対して、前記アクリル系ポリマーの水性ポリマーディスパージョンがポリマー固形分で40〜100質量部含有されてなることを特徴とする、ポリマーセメント系コンクリート表面被覆材。
- 請求項1または2記載のポリマーセメント系コンクリート表面被覆材において、前記アクリル系ポリマーの水性ディスパージョンのガラス転移温度が−50〜−20℃であることを特徴とする、ポリマーセメント系コンクリート表面被覆材。
- 請求項1〜3いずれかの項記載のポリマーセメント系コンクリート表面被覆材を、コンクリート構造物の表面に塗布または散布することを特徴とする、コンクリート表面被膜の施工方法。
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