JP5114910B2 - Alc構造物の補修方法 - Google Patents
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Description
補強鉄筋には防錆処理が施されているが、雨水、炭酸ガス、NOxやSOx等の排気ガス等の劣化因子により徐々に発錆が促され、ついにはパネル表面へのクラック発生となり、ALCの耐久性の著しい低下を招く。
また、このように補修した箇所が、コンクリート構造体の母体等から剥離する事故も発生しており、このような剥離が生じる主原因としては、補修した箇所のモルタルが下地ALCとの付着性が低いことや、繰り返し受ける温度及び湿度等の環境変化による作用がある。
これらの作用が長期にわたると、ひび割れが生じたり、補修箇所の浮きや剥離等が発生してしまい、結果的にひび割れが生じてひび割れを通じて劣化原因である水、炭酸ガス、排気ガス、塩化物イオンなどが侵入しやすくなり、結果的に補修箇所の耐久性が損なわれるといった問題点が生じる。
しかしながら、ALC構造体は、工場で製造されたALCパネルによって構成されるが、ALCパネルの水和反応過程が通常のセメントの水和反応とは異なり、シリカ源として石英微粉末等を添加し、高温高圧のオートクレーブ養生を行うため、一般のコンクリートとは異なり、ALC内部は弱アルカリ性〜中性領域となり、そのままでは鋼材腐食に対する抵抗性は低い。
鋼材自体は、防錆処理により保護する手法がとられているが、上記したような劣化原因によって劣化が起きた場合、劣化範囲の特定は難しく、従来の補修方法に見られるような、脆弱部のはつりと不陸調整的なモルタルの充填では、劣化環境下にさらされる部位に耐久性を付与するような根本的に有効な補修方法とはならない。
従って、耐久性に優れ十分に満足ができるALC構造体の補修方法の開発が望まれていた。
すなわち、本発明の請求項1記載のALC構造体の補修方法は、劣化したALC構造体より脆弱部を取り去った後に、該脆弱部を取り去ったALC表面にアクリル酸エステル樹脂系ポリマーディスパージョンであるプライマーを塗布し、次いでアクリル酸エステルを含み、単位容積質量(kg/L)が0.8〜1.5であり、絶乾かさ比重が0.6〜1.3である軽量モルタルを塗布し、その後アクリル酸エステル樹脂系ポリマーセメント系表面被覆材を塗布することを特徴とする、ALC構造体の補修方法である。
本発明のALC構造体の補修方法は、劣化したALC構造体より脆弱部を取り去った後に、該脆弱部を取り去ったALC表面にプライマーを塗布し、次いで軽量モルタルを塗布し、その後ポリマーセメント系表面被覆材を塗布することを特徴とするALC構造体の補修方法である。
かかるプライマーは、充填する軽量モルタルとALC本体との接着性を良好にする作用を有するもので、特に限定されず、本発明の効果を損なわない限り、市販の任意のものを使用できるが、特に好適には、住友大阪セメント製のライオンボンドA(ポリマー固形分45%)または水性トリート(ポリマー固形分22%)等が例示できる。
その中でも、特にアクリル酸エステルからなるポリマーディスパージョンが、ALC基材への浸透性、固着性の点から好ましく用いられる。
その塗布量は当業者が通常実施している程度の塗布量であれば問題なく、一般にポリマー固形分に換算して10〜100g/m2が通常の塗布量である。
本発明に用いる軽量モルタルは、好適には、単位容積質量(kg/L)が0.8〜1.5であり、好ましくは0.85〜1.10であるものを用いる。
軽量モルタルの単位容積質量(kg/L)を上記範囲とすることによって、後述の絶乾状態の当該モルタル層の物性がALCパネル構造体と近似した強度、熱伝導率、熱膨張率等の性状と同程度となり、一体化後において、より安定的となるからである。
更に、当該単位容積質量が0.8未満となると、補修モルタルの強度発現性が十分でなく、ALC構造体の補修に用いるには適当ではなくなる場合があるからである。
また、上記単位容積質量が1.5を超えると、前記諸物性がALCパネル構造体と大きく異なり、補修界面での安定性が問題となる場合があるからである。
かかる絶乾かさ比重とは、モルタル補修材を、4×4×16cmの型枠に成型し、28日間養生を行った後、105±5℃で減量がなくなるまで乾燥し、当該乾燥状態でのモルタルのかさ比重を測定した(絶乾かさ比重)値をいう。
絶乾かさ比重が上記範囲であると、硬化後の当該モルタル層の物性がALCパネル構造体と近似した強度、熱伝導率、熱膨張率等の性状と同程度となり、一体化後において、より安定的となるからである。
その混練方法は特に限定されず、前記材料中の一部を予め混合して用いてもよく、また現場にて全材料を一度に混合してもよい。
特に安価で早期強度を発現することから、早強セメントを用いることが好ましい。
その配合割合は、特に限定されず、適宜設計することができるが、特にカルシウムサルフォアルミネート系膨張材は、セメント100質量部に対して、5〜20質量部が好ましく、これは、自己収縮を抑制するとともに過剰膨張を防止することが容易となるからである。
これらのセメント混和用ポリマーディスパージョン及び/または再乳化形粉末樹脂としては、JIS A 6203に規定されたものを使用することができ、例えば、ポリアクリル酸エステル、スチレンブタジエン、エチレン酢酸ビニル、酢酸ビニル/バーサック酸ビニルエステル、酢酸ビニル/バーサック酸ビニルエステル/アクリル酸エステル等の樹脂が挙げられ、これらの中から適宜、選択して単独、または混合して使用することができる。
特に、再乳化形粉末樹脂を用いる場合には、現場計量の必要がなく、品質管理が容易になる。
好適には、アクリル系ポリマーを用いることができ、かかるアクリル系ポリマーのディスパージョン及び/または再乳化形粉末樹脂を用いることが耐久性の点から好ましい。
ポリマーを安定化する方法としては、例えば、アクリル酸を共重合するカルボキシル方式(アニオン化方式)、水溶性ポリマー例えばポリビニルアルコール等の水溶液中で重合する保護コロイド方式、重合反応性界面活性剤等を共重合する方式、非重合反応性界面活性剤による安定化方式がある。
かかる再乳化形粉末樹脂の製造方法は特に限定されることなく、これらのポリマーディスパージョンを粉末化方法やブロッキング防止法等の公知の任意の方法を用いて調製することができる。
ポリマーディスパージョン及び/または再乳化形粉末樹脂の再乳化液としては、最低造膜温度が5℃以下であることが望ましい。
最低造膜温度が5℃以下であることにより、ALCとの付着性に優れるとともに、特に低温時の硬化性状に優れることとなる。
これは、かかる配合比で、ポリマーを混合することより、ALCに対して、良好な接着性を有するものとなるからである。
ポリマーがセメントに対して0.5質量%未満では、ALCとの付着性能が十分に発揮できず、また、20質量%を超えると、モルタルの流動性や強度が低下し、ALC構造物の断面修復または増厚材としての性能に支障が発生する恐れがあるからである。
その際、混練したフレッシュな軽量モルタルの単位容積質量が0.8〜1.5であり、硬化後の軽量モルタルの絶乾かさ比重が0.6〜1.3の範囲にあるように調整して配合割合を調整して使用することが重要である。
また、配合される水の量は、使用する材料の種類や配合により変化させることができるため、一義的に決定されるものではないが、通常、水/粉体比で20〜50質量%が好ましく、特に25〜40質量%が好ましい。
上記ポリマーディスパージョン等、配合材料にすでに水が含まれている場合には、当該水も含まれる。
かかる範囲で水を配合することにより、十分な作業性と十分な強度発現性が得られることとなる。
上記軽量モルタルが十分に硬化した後、上記軽量モルタルの上に、ポリマーセメント系表面被覆材を塗布する。
本発明に用いるポリマーセメント系表面被覆材は、原材料であるセメント、樹脂、及び水と、必要に応じて珪砂、石灰石砂等の一般骨材(細骨材)、石灰石粉、高炉スラグ微粉末、フライアッシュ等の混和材、及び増粘剤、消泡剤、着色剤等の混和剤(添加剤)等を混練して製造することができるものである。
その混練方法は特に限定されず、前記材料中の一部を予め混合して用いてもよく、また現場にて全材料を一度に混合してもよい。
また、該セメントには、前述の軽量モルタルに用いるものと同様の公知の混和材及び細骨材を添加することができる。
その配合割合は、特に限定されず、適宜設計することができるが、例えば、セメント100質量部に対して、混和材と細骨材の合計量が60〜150質量部とすることができる。
当該樹脂として、前述の軽量モルタルに用いるものと同様の公知のものを使用することができるが、ポリマーセメント系表面被覆材に用いるものは、十分なひび割れ追従性が必要であり、軽量モルタルに用いるものと比較してガラス転移温度(Tg)が低いものを選定することが好ましく、特にアクリル樹脂系ポリマーディスパージョンを用いることが好ましい。
ガラス転移温度が−20℃以下のアクリル系ポリマーディスパージョンがセメント100質量部に対してポリマー固形分で60〜150質量部添加されているものとすることにより、当該表面被覆材が成膜後、上記軽量モルタルとの接着性に優れ、一般的な地域では空気中の二酸化炭素、酸素、NOx、SOx等の排気ガス、水、海岸地域では塩化物イオンなどのALCまたはALC補修材の劣化因子を遮蔽する能力に優れたものとなる。
また、乾燥後のポリマーセメント系膜は、柔軟性に富んだものとなり、万一、ALCまたはALC補修材にひび割れが発生した場合でも、そのひび割れに追従し、外部からの劣化因子を遮蔽する。
また、本発明のポリマーセメント系表面被覆材に、必要に応じて添加される珪砂、石灰石砂等の一般骨材(細骨材)、石灰石粉、高炉スラグ微粉末、フライアッシュ等の混和材、及び増粘剤、消泡剤、着色剤等の混和剤(添加剤)等は、適宜必要に応じた量を添加すればよい。
本発明を以下の実施例、比較例および試験例により詳細に説明する。
ポルトランドセメント 住友大阪セメント株式会社製
石灰石粉 LP−200 近江鉱業株式会社
粉末樹脂 酢酸ビニル/バーサック酸ビニルエステル/アクリル酸エステル系再乳化形
粉末樹脂;商品名 モビリスDM2072P(最低造膜温度0℃) ニチゴ
ーモビニール株式会社
軽量骨材 フヨーライト 芙蓉ーライト株式会社
珪砂6号 あさり6号 三久海運株式会社
増粘剤 マーポローズM−4000 松本油脂製薬株式会社
ALC材 シポレックス 住友金属鉱山シポレックス株式会社
プライマー アクリル酸エステル樹脂系ポリマーディスパージョン;商品名 住友大阪セ
メント社製ライオンボンドA(最低造膜温度1℃、ポリマー固形分45%)の3倍希釈液
表1に示す配合割合で、ポルトランドセメント、石灰石粉、軽量骨材、粉末樹脂、珪砂6号、増粘剤及び水を混合撹拌して、配合1〜4の各モルタル補修材を得た。
但し、表1中の水/粉体比の粉体とは、使用したポルトランドセメント、石灰石粉、粉末樹脂、軽量骨材、珪砂6号、増粘剤に該当する各原材料を混合した粉体であり、水/粉体比は、かかる原材料粉体を100とした場合の水の添加量を質量%で表したものである。
また、単位容積質量とは、得られた各軽量モルタルの質量をkg/Lで示した値である。
得られた各軽量モルタルについて下記各試験を実施し、各物性を測定した結果も上記表1に示す。
また、参考のため補修対象とするALC母体の物性についても表1に示す。
絶乾かさ比重
上記で得られた各軽量モルタルを、4×4×16cmの型枠に成型し、28日間養生を行った後、105±5℃で減量がなくなるまで乾燥し、当該乾燥状態での各モルタルのかさ比重を測定した(絶乾かさ比重)。
上記で得られた各軽量モルタル補修材を打設して得られた、4×4×16cmの供試体の材齢28日後の曲げ強度および圧縮強度を、JIS R 5201に準拠して測定した。
各軽量モルタルを打設して得られた、φ10×20cmの供試体の材齢28日後の割裂引張り強度を、JIS A 1113に準拠して測定した。
温度20℃,65%RHにおいて、上記ALC板にプライマー(アクリル系エステル樹脂系ポリマーディスパージョン・商品名 住友大阪セメント社製ライオンボンドAの3倍希釈液)を200g/m2(ポリマー固形分で30g/m2)の割合で均一に薄く塗布し、30〜60分経過後、上記で得られた各軽量モルタル補修材を打設し、これを20℃、65%RHにおいて養生を行い、材齢7日で付着強度を測定した。
但し、配合例4の軽量モルタルは、プライマーを塗布せず、直接上記ALC板に軽量モルタルを打設した。
なお、付着強度は、建築研究所式引っ張り試験機による付着強度試験に準じて行った。
上記で得られた各軽量モルタル補修材を打設して得られた、10×10×2cmの供試体の材齢28日後の熱伝導率をASTM C 518に準拠して測定した。
下記長さ変化率試験で測定の終了した試験体を60℃の恒温槽で恒量になるまで保存した後、試験体を取り出し、20℃の恒温室内で手早くJIS A 1129に準じて基長を測定した。次いで−20℃の恒温槽で24時間以上養生して長さが一定になるまで、試験体を取り出し、20℃の恒温室内で手早くJIS A 1129に準じて長さを測定し、60℃と−20℃の長さの差から、熱膨張係数を算出した。
上記で得られた各軽量モルタル補修材を、JIS R 5201に準じて、4×4×16cmの供試体を成型後、24時間後に脱型し、JIS A 1129に準じて基長を測定した。
基長測定後、20℃、60%RHの恒温室内に保存し、JIS A 1129に準じて28日後の長さ変化率を測定した。
20℃、60%RHにおいて、上記ALC板に、上記で得られた各軽量モルタル補修材を、60×25×0.5cm厚で塗布し、20℃、60%RHで養生して、材齢3ヶ月後に視覚でひび割れ状態を観察した。
○・・・ ひび割れが発生しない
×・・・ ひび割れが発生した
補修工法
上記ALC板にプライマー(アクリル酸エステル樹脂・商品名 住友大阪セメント社製ライオンボンドA3倍希釈液)を200g/m2の割合で均一に薄く塗布し30〜60分経過し乾燥した後、上記で得られた配合1の軽量モルタル補修材を打設した。
当該軽量モルタル打設1日後に、ポリマーセメント系表面被覆材を1.2kg/m2で一様に塗布し、これを20℃、65%RHにおいて28日間養生を行い、実施例1のALC構造体を得た。
また、実施例1におけるポリマーセメント系表面被覆材の塗布を省略することにより、比較例1のALC構造体を得た。
更に、上記ALC板そのものを比較例2のALC構造体とした。
但し、ポリマーセメント系表面被覆材としては、以下のものを用いた。
ポリマーセメント系表面被覆材・・・住友大阪セメント株式会社製レックスコート5200 (ガラス転移温度−25℃のアクリル酸エステル樹脂系ポリマーディスパージョンを使用したポリマー固形分/セメント(質量比)60%の表面被覆材)
促進中性化; JIS A 1171に準じて実施した。
透水性; JIS A 1404に準じて実施した
耐久性;○:ALC材と比較して非常に耐久性に優れている
△:ALC材と比較してやや耐久性に優れている
×:ALC材の耐久性または同等の耐久性を示す
Claims (2)
- 劣化したALC構造体より脆弱部を取り去った後に、該脆弱部を取り去ったALC表面にアクリル酸エステル樹脂系ポリマーディスパージョンであるプライマーを塗布し、次いでアクリル酸エステルを含み、単位容積質量(kg/L)が0.8〜1.5であり、絶乾かさ比重が0.6〜1.3である軽量モルタルを塗布し、その後アクリル酸エステル樹脂系ポリマーセメント系表面被覆材を塗布することを特徴とする、ALC構造体の補修方法。
- 請求項1記載のALC構造体の補修方法において、ポリマーセメント系表面被覆材を、ガラス転移温度が−20℃以下であるセメント混和用アクリル酸エステル系ポリマーディスパージョンをポリマー固形分/セメント(質量比)が60〜150%となるように混和したものとすることを特徴とする、ALC構造体の補修方法。
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