JP5493555B2 - コンクリートの剥落防止工法 - Google Patents
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コンクリート構造物の劣化によるコンクリートの剥落防止対策として、NEXCO「構造物施工管理要領」等に、剥落防止の性能照査が規格化されている。
また、特に、被覆材にポリマーセメントモルタルを用いることで、設置したメッシュ繊維シートの変形に追従することがより可能となる。
図1は、本発明に係るコンクリートの剥落防止工法の一例を説明する図である。
本発明のコンクリートの剥落防止工法の一例は、予めコンクリート構造物1におけるコンクリートの剥落防止対象部分(図1(a))に、メッシュ繊維シート2を設置する工程(図1(b)参照)、該設置されたメッシュ繊維シートを、透水量1g以上かつ付着強度1.5N/mm2以上のモルタルで固定する工程(図1(c))、更にその表面を透水量20ml/m2・日以下、透湿量が15g/m2・日以上でかつ伸び率が50%以上である被覆材で被覆する工程(図1(d))を含む、コンクリートの剥落防止工法である。
本発明のコンクリートの剥落防止工法の他の一例は、予めコンクリート構造物1におけるコンクリートの剥落防止対象部分(図2(a))に、透水量1g以上かつ付着強度1.5N/mm2以上のモルタルを塗布し(図2(b)参照)、該モルタルにメッシュ繊維シート2を設置する工程(図2(c)参照)、次いで該メッシュ繊維シートが設置された前記モルタルの上に更に透水量1g以上かつ付着強度1.5N/mm2以上のモルタルで固定する工程(図2(d))、更にその表面を透水量20ml/m2・日以下、透湿量が15g/m2・日以上でかつ伸び率が50%以上である被覆材で被覆する工程(図2(e))を含む、コンクリートの剥落防止工法である。
メッシュ繊維シートを構成する繊維としては、炭素繊維、アラミド繊維、ポリパラフェニレンベンズビスオキサゾール繊維(PBO)、ガラス繊維、ビニロン繊維、ポリプロピレン繊維等の公知の繊維を用いることができる。
またその形状は、特に限定されず、例えば三軸組布、二軸組布等、任意のメッシュ繊維シートを用いることができる。
透気性を得るために、設置するメッシュ繊維シート間の目開きが5mm以上であることが好ましく、10mm以上であることがより望ましい。
ここで、透水量は、JIS A 1404に準じて測定した値であり、また付着強度は、JIS A 6909に準じて測定した値である。
固定方法としては、該メッシュ繊維シートをコンクリートに設置した後に、該モルタルを打設して、硬化させることにより固定しても、あるいは、モルタルをコンクリートに塗布した後、該モルタルが硬化する前に該モルタルに該メッシュ繊維シートを押し込むように設置し、更にその上から該モルタルを更に打設して硬化させることにより固定しても、メッシュ繊維シートを固定できれば、いずれの工程を用いてもよい。
該メッシュ繊維シートは、このモルタル打設工程により、モルタルで被覆されて固定される。また、該モルタルは、メッシュ繊維シートを含む、コンクリート構造物の剥落対象部分全体に打設される。
該モルタルは、透水量が1g以上であり、水分散が良好なモルタルである。好ましくは、該モルタルは、ポリマーセメントモルタルであることが、弾性を有することより、メッシュ繊維シートの変形追随性に優れるので、より望ましい。該ポリマーセメントモルタルとしては、アクリル樹脂系ポリマーセメントモルタル等を使用することができる。
また、前記メッシュ繊維シートが、例えばビニロン繊維やポリプロピレン繊維などの繊維強度が低いメッシュを使用する場合には、特に、付着強度が1.5N/mm2以上でかつ2.5N/mm2未満であることが望ましい。
また、付着強度が1.5N/mm2未満では、応力がかかったときに剥離するおそれがある。更に、例えばビニロン繊維やポリプロピレン繊維などの繊維強度が低いメッシュを使用する場合には、上記したように、特に、付着強度が2.5N/mm2未満であることが望ましく、これはメッシュ繊維シートに局部的に応力が加わり、破断するおそれがあるからである。
更に、コンクリート構造物の剥落防止対象箇所に、必要に応じて下地としてプライマーを刷塗り等で塗布して硬化させ、次いで、凸部を削ったり、凹部にパテ埋めを行ったりして、不陸修正を行ってもよい。
上記モルタルが硬化した後に、該モルタルの上を被覆材で被覆する。
被覆材としては、透水量20ml/m2・日以下、透湿量15g/m2・日以上でかつ伸び率が50%以上である被覆材が使用可能である。
被覆材は、このような透水量および透湿量の性能を有することにより、メッシュ繊維シートによる剥落防止効果に加え、被覆材によりコンクリート構造物の内部水分は外部に有効に放出され、外部水分や有害因子は侵入が阻止されるため、メッシュ繊維シートの耐久性が向上する。そして、特に、基材コンクリートがアルカリ骨材反応を引き起こす場合には、その膨張劣化の抑制効果も得られる。
該伸び率が50%以上であることにより、コンクリート構造物にひび割れが生じたとしても有害因子の侵入を阻止することが可能となり、耐久性をさらに高めることが可能となる。
該伸び率が、50%未満であると、メッシュ繊維シートの変形に対する追従性が十分ではなく、剥離に対する応力分散が十分ではなく、剥落防止性能に支障が生じるおそれがある。
これらの性能を有する被覆材として、アクリル樹脂系ポリマーセメントモルタル等が例示できる。
・メッシュ繊維固定用透水モルタル
普通ポルトランドセメント(住友大阪セメント株式会社製)39.6重量部、珪砂7号50重量部および再乳化型粉末樹脂(酢酸ビニル・ベオバ・アクリル酸共重合系再乳化型粉末樹脂、商品名;LDM7000P、日本合成化学株式会社製)10重量部、更には水を21重量部添加して、混練してメッシュ繊維固定用モルタルを調製した。
得られたメッシュ繊維固定用モルタルの透水量(JIS A 1404)は1.5g、付着強度(JIS A 6909)は、2.4N/mm2であった。
メッシュ繊維固定用遮水エポキシ樹脂として、二液型エポキシ樹脂である商品名;ネオパテ、ショーボンド化学株式会社製を使用した。
該エポキシ樹脂の透水量(JIS A 1404)は0.1g、付着強度(JIS A 6909)は、2.4N/mm2であった。
・遮水性・透湿性表面被覆材
普通ポルトランドセメント(住友大阪セメント株式会社製)50重量部、炭酸カルシウム粉(商品名;KD−100、株式会社カルファイン製)50重量部、エマルジョンポリトロンZ871(旭化成株式会社製)を100重量部(但し、固体換算で50重量部)添加して、混練して遮水性・透湿性表面被覆材を調製した。
得られた遮水性・透湿性表面被覆材は、透水量が11ml/m2・日(JIS A 6909 透水試験B法)、透湿量が48g/m2・日(JIS Z 0208)、伸び率が180%(JIS A 6909)であった。
遮湿性弾性エポキシ樹脂表面被覆材として、二液型エポキシ樹脂である商品名;ネオライナー、ショーボンド化学株式会社製を使用した。
該エポキシ樹脂被覆材は、透水量が1ml/m2・日(JIS A 6909 透水試験B法)、透湿量が5g/m2・日(JIS Z 0208)、伸び率が60%(JIS A 6909)であった。
ビニロン繊維(商品名;トリネオ1810、ユニチカ株式会社製)を使用した。
20cm角のスレート板に、図1に示すように、上記メッシュ繊維シートを全面的に貼り付けて設置し、次いで表1に示す、上記各メッシュ繊維固定材を用いて該メッシュ繊維シートを固定した。硬化後、更に、表1に示す、上記各表面被覆材で被覆し、20℃、60%RH中で14日間養生した。
次いで、図3(a)に示すように、該スレート板背面に、Φ5cm×h5cmの塩化ビニル管を設置し、該塩化ビニル管の上端まで水を入れて、背面水を想定した状況で、28日後の外観の変化を目視で確認した。
なお、表1中のメッシュ繊維固定相の浮きの評価は、図3(b)に示すように、切り込みを入れて、該切り込みで囲まれた部分を取り外すことにより、被覆材の付着を確認することで評価した。なお、切り込みの深さは、図3(c)に示すように、スレート板に達する程度までの深さとした。
メッシュ繊維固定相の浮きが目視で確認できなかったものを○、確認できたものを×とした。
また、被覆材の膨れは、外観を目視で評価し、膨れが確認できなかったものを○、膨れが観られたものを×とした。
その結果を表1に示す。
一方、遮水エポキシ樹脂に遮水透湿被覆材を被覆した比較例1のものは、メッシュ繊維シートの固定層が剥離し、また透水モルタルに遮湿被覆材を被覆した比較例2は、被覆材に膨れが生じていた。
2 メッシュ繊維シート
3 モルタル
4 被覆材
5 塩化ビニル管
6 切り込み
Claims (5)
- コンクリート構造物に、ビニロン繊維又はポリプロピレン繊維からなるメッシュ繊維シートを設置する工程、該メッシュ繊維シートを、透水量1g以上かつ付着強度1.5N/mm2以上でかつ2.5N/mm 2 未満のモルタルで固定する工程、更にその表面を透水量11〜20ml/m2・日、透湿量が15〜48g/m2・日でかつ伸び率が50〜180%である被覆材で被覆する工程を含むことを特徴とする、コンクリートの剥落防止工法。
- コンクリート構造物に、透水量1g以上かつ付着強度1.5N/mm2以上でかつ2.5N/mm 2 未満のモルタルを塗布し、該モルタルにビニロン繊維又はポリプロピレン繊維からなるメッシュ繊維シートを設置する工程、該モルタルに設置されたメッシュ繊維シートを、前記モルタルで更に固定する工程、更にその表面を透水量11〜20ml/m2・日、透湿量が15〜48g/m2・日でかつ伸び率が50〜180%である被覆材で被覆する工程を含むことを特徴とする、コンクリートの剥落防止工法。
- 請求項1又は2記載のコンクリートの剥落防止工法において、該メッシュ繊維シートを固定したモルタルが硬化した後に、前記被覆材で被覆することを特徴とする、コンクリートの剥落防止工法。
- 請求項1〜3いずれかの項記載のコンクリートの剥落防止工法において、該モルタルは、ポリマーセメントモルタルであることを特徴とするコンクリートの剥落防止工法。
- 請求項1〜4のいずれかに記載のコンクリートの剥落防止工法において、該被覆材は、ポリマーセメントモルタルであることを特徴とするコンクリートの剥落防止工法。
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