JP2006342662A - コンクリート剥落防止膜およびコンクリート剥落防止膜形成方法 - Google Patents

コンクリート剥落防止膜およびコンクリート剥落防止膜形成方法 Download PDF

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Abstract

【課題】 基材の変位に対する追従性が高く、充分な剥落防止機能を確保できるコンクリート剥落防止膜及びコンクリート剥落防止膜形成方法を提供する。
【解決手段】 コンクリート基材上に設けられた変位層と、上記変位層の上に設けられた補強層とを備えたコンクリート剥落防止膜であって、(1)上記変位層は、温度23℃、湿度65%、及び、剥離速度50mm/分における凝集力又は上記基材との接着力が0.1〜50N/mmであり、(2)上記補強層は、温度23℃、湿度65%及び引っ張り速度10mm/分における抗張力が5MPa以上であり、かつ、伸び率が3%以上であり、(3)上記コンクリート剥落防止膜は、温度23℃、湿度65%の環境下での直径100mmのコンクリート押し抜き試験において、最大変位が10mm以上であり、かつ、最大荷重が0.3kN以上であるコンクリート剥落防止膜。
【選択図】 なし

Description

本発明は、コンクリート剥落防止膜およびコンクリート剥落防止膜の形成方法に関する。
コンクリートは塩害、中性化、アルカリ骨材反応および凍害等によって劣化し、剥離することが知られている。道路や線路の高架、トンネル、建造物等のコンクリート構造物等において、この劣化が進行することによって、剥離したコンクリート片が自動車や鉄道の通過による応力やくり返し振動のために落下するという危険性が指摘されている。このようなコンクリート片の剥離を防止するためにビニロンメッシュ等による被覆層が形成されている場合がある。しかしながら、この被覆層を形成するには多くの工程が必要であるという問題があった。
一方、コンクリート構造物表面に、引張り強さおよび引張り伸びを規定した樹脂塗膜を含む1層以上の塗膜層を形成するものがある(例えば、特許文献1参照)。しかしながら、被覆層が樹脂単膜からなるために、変位と強度を両立できる範囲が狭く、高いレベルでの両立は困難であった。また、この方法で得られる塗膜層は樹脂からなるため、コンクリートの亀裂、ひび割れなど、コンクリートの変位への追従性は充分であるものの、コンクリート躯体の補強という観点からは不充分であった。
また、コンクリート表面保護用補強層を形成する方法として、ガラス繊維シートと含浸用熱硬化性樹脂とからなる補強層を形成する方法がある(例えば、特許文献2参照)。
しかしながら、この方法で得られた被覆層はコンクリート躯体の補強という観点からは充分であるものの、コンクリートの変位への追従性は不充分であった。
特開2004−60197号公報 特開2003−213624号公報
本発明は、基材の変位に対する追従性が高く、充分な剥落防止機能を確保できるコンクリート剥落防止膜およびコンクリート剥落防止膜形成方法を提供することを目的とする。
本発明は、コンクリート基材上に設けられた変位層と、上記変位層の上に設けられた補強層とを備えたコンクリート剥落防止膜であって、(1)上記変位層は、温度23℃、湿度65%、及び、剥離速度50mm/分における凝集力又は上記基材との接着力が0.1〜50N/mmであり、(2)上記補強層は、温度23℃、湿度65%及び引っ張り速度10mm/分における抗張力が5MPa以上であり、かつ、伸び率が3%以上であり、(3)上記コンクリート剥落防止膜は、温度23℃、湿度65%の環境下での直径100mmのコンクリート押し抜き試験において、最大変位が10mm以上であり、かつ、最大荷重が0.3kN以上であることを特徴とするコンクリート剥落防止膜である。
変位層は、例えば、変位層用硬化性樹脂組成物から得られるものであってもよく、さらに、補強層は、例えば、補強層用硬化性樹脂組成物から得られるものであってもよい。
また、補強層は、補強層用硬化性樹脂組成物と高抗張力繊維シートとから得られるものであってもよい。
さらに、高抗張力繊維シートは、樹脂繊維からなるものであってもよい。
ここで、変位層用硬化性樹脂組成物は、補強層用硬化性樹脂組成物と同一であってもよい。
上記コンクリート剥落防止膜は、さらに、保護層を備えていてもよい。
また、本発明は、コンクリート基材上に、変位層を形成する工程(a)、上記工程(a)によって得られた変位層上に補強層を形成する工程(b)を含むコンクリート剥落防止膜形成方法であって、(1)上記変位層は、温度23℃、湿度65%、及び、剥離速度50mm/分における凝集力又は上記基材との接着力が0.1〜50N/mmであり、(2)上記補強層は、温度23℃、湿度65%、及び、引っ張り速度10mm/分における抗張力が5MPa以上であり、かつ、伸び率が3%以上であり、(3)上記コンクリート剥落防止膜は、温度23℃、湿度65%の環境下での直径100mmのコンクリート押し抜き試験において、最大変位が10mm以上であり、かつ、最大荷重が0.3kN以上であることを特徴とするコンクリート剥落防止膜形成方法である。
さらに、本発明は、コンクリート基材上の変位したコンクリート剥落防止膜を除去し、コンクリートを修復した後、上述のコンクリート剥落防止膜形成方法を行うことを特徴とするコンクリート補修方法である。
本発明のコンクリート剥落防止膜は、上記2つの層を備えているので、基材の劣化によるコンクリート片の剥離が起こっても膜が変位するだけで、膜の破断は起こらない。これは、コンクリート剥落防止膜が、機能を分担させた所定の物性値を有する変位層と補強層とを有することによって可能となった。
すなわち、コンクリート片の剥落が発生した場合、変位層には剥落によって生じる膜に対する応力を剥離や膜内部の凝集破壊によって適度に分散させる機能を、また、補強層には剥離したコンクリートの荷重に耐え、膜の変位が急激に進行して膜が破壊することを防止する機能を分担させる。
従って、膜の変位によって基材の剥離を目視にて確認することができ、的確にコンクリート基材の補修等を行うことができた。
また、補強層として高抗張力繊維シートを含む場合は、高い変位と剥離したコンクリートの耐荷重性とを両立させることにより、コンクリート基材の軽補強が可能となる。特に、環境温度以上の温度領域で処理または製造された繊維シートを用いると、低温および高温環境下においてもこれらの機能を確保することが容易に実現できた。
コンクリート剥落防止膜
本発明のコンクリート剥落防止膜は、コンクリート基材上に設けられた変位層と、上記変位層の上に設けられた補強層とを備えることを特徴とするものである。上記コンクリート基材としては、例えば、セメント類、石灰類、石膏類等からなるものを挙げることができる。
上記変位層は、上記基材の変位に追従し、また変位によって発生する応力を集中させないように、変位層内の凝集破壊、上記変位層と上記基材との層間剥離および/または上記変位層と上記補強層との層間剥離を緩やかに進行させることによって適度に分散させて、剥落によるコンクリート片の落下を防止し、コンクリート剥落防止膜を破壊から守る働きを分担する。従来技術のように、ガラス繊維シート等のような堅い膜で強度を出す場合、見た目の膜変位が小さく分かりにくいうちに膜が耐えきれなくなって、膜の破壊が急激に起こり危険である。本願のコンクリート剥落防止膜は、膜の変位が大きく発生し、膜の急激な破壊を防止することができるものである。
上記変位層は、温度23℃、湿度65%、及び、剥離速度50mm/分における凝集力又は上記基材との接着力が0.1〜50N/mmである。上記凝集力又は上記基材との接着力が0.1N/mmを下回ると、上記基材の小さな変位に対しても変位層内の凝集破壊、基材からの剥離、および/または補強層との剥離が起こり、基材の補修を行う際においては補修箇所の特定が困難になる。また、50N/mmを超える場合は、実質的に基材の変位に対する追従が困難になる。好ましくは0.5〜30N/mmであることが好ましい。
上記凝集力および接着力は、具体的には、JIS K 6854−1に準拠して、コンクリート剥落防止膜を形成した基材に対して、ピーリング試験と呼ばれる90度剥離試験によって測定することができ、例えば、引張試験器によって測定することができる。
上記測定によって得られた値が凝集力であるか接着力であるかは、測定終了後の試料の剥離界面を確認することによって判断する。すなわち、剥離が変位層内での凝集破壊によるものである場合は、得られた値は凝集力であると判断し、基材とコンクリート剥落防止膜との界面等いずれかの層間の界面で発生する場合には、得られた値は接着力であると判断する。すなわち、上記変位層においては、上記90度剥離試験により得られた剥離接着強さの値が、上述した値の範囲を満たすものである。
上記測定によって得られる値は凝集力であることが好ましい。上記得られる値が接着力であった場合、剥離界面が層間になり、実際にコンクリート剥落防止膜を形成した時、この層間部分に結露等によって水分が浸入してコンクリート剥落防止膜や、コンクリート基材の劣化速度が速くなる恐れがある。
このような変位層としては、特に限定されず、例えば、セメント成分および細骨材成分等からなる、いわゆるモルタル;上記モルタルに、エマルションやスチレン−ブタジエンゴムエマルション等の有機樹脂を加えたポリマーセメントモルタル等のセメント系組成物から得られるセメント系膜;変位層用硬化性樹脂組成物から得られる硬化樹脂膜等を挙げることができる。上記変位層の膜物性を容易に調整できるという観点から、上記変位層は変位層用硬化性樹脂組成物から得られるものであることが好ましい。
上記変位層用硬化性樹脂組成物としては特に限定されず、常温で硬化が進行するもの、および、加熱によって硬化が進行するものを挙げることができるが、適用される状況から、常温で硬化が進行するものであることが好ましい。上記常温で硬化が進行するものとしては、例えば、放置乾燥によって硬化するもの、湿気によって硬化するもの、および、光照射によって硬化するもの等を挙げることができる。
上記常温で硬化が進行するものとしては、特に限定されず、得られるコンクリート剥落防止膜の耐薬品性等の観点から、水酸基含有樹脂とイソシアネート基含有硬化剤とを含むウレタン樹脂系、アミノ基含有樹脂とイソシアネート基含有硬化剤とを含むウレア樹脂系、および、エポキシ基含有樹脂とアミノ基含有硬化剤とを含むエポキシ樹脂系等、あるいは、不飽和基含有樹脂と酸化重合促進剤とを含む不飽和樹脂系の放置乾燥することによって硬化する樹脂系、UV硬化型ビニルエステル樹脂系が好ましい。なお、上記変位層用硬化性樹脂組成物は、水性型、有機溶剤型、無溶剤型等の種々の形態を取ることができる。
上記水酸基含有樹脂としては、例えば、硬化性官能基として水酸基を有するアクリル樹脂、ポリエステル樹脂、ポリエーテル樹脂、各種油脂およびポリブタジエン樹脂等を挙げることができる。上記アミノ基含有樹脂として、例えば、硬化性官能基としてアミノ基を有する脂肪族ポリアミン、芳香族ポリアミン、脂環式ポリアミンおよびこれらの変性物等を挙げることができる。上記エポキシ基含有樹脂として、例えば、硬化性官能基としてエポキシ基を有するグリシジルエーテル型、グリシジルエステル型、その他のグリシジル型等のエポキシ樹脂、および、脂環族エポキシ樹脂、さらに、これらを油変性したり、ウレタン変性したりすることによって得られるもの等を挙げることができる。上記不飽和基含有樹脂としては、例えば、硬化性官能基として不飽和基を有するアクリル樹脂、ポリエステル樹脂およびポリエーテル樹脂等を挙げることができる。
また、上記イソシアネート基含有硬化剤として、例えば、芳香族ポリイソシアネート、脂肪族ポリイソシアネートおよび脂環族ポリイソシアネート等の単量体、2量体および3量体等、ならびに、これらをポリプロピレングリコール等のジオールによって鎖延長変性したもの等を挙げることができる。上記アミノ基含有硬化剤としては、上記アミノ基含有樹脂で述べた中で比較的分子量の小さいものを挙げることができる。
また、上記酸化重合促進剤としては、例えば、コバルト化合物等の遷移金属化合物を挙げることができる。
上記変位層用硬化性樹脂組成物は、さらに、顔料を含むことができる。上記変位層用硬化性樹脂組成物が上記顔料を含む場合、その顔料体積濃度は、例えば、5〜30%である。上記顔料としては特に限定されず、例えば、黄鉛、黄色酸化鉄、酸化鉄、カーボンブラック、二酸化チタン等の無機顔料、アゾキレート系顔料、不溶性アゾ系顔料、縮合アゾ系顔料、フタロシアニン系顔料、インジゴ顔料、ペリノン系顔料、ペリレン系顔料、ジオキサン系顔料、キナクリドン系顔料、イソインドリノン系顔料、金属錯体顔料等の有機顔料等の着色顔料や、炭酸カルシウム、沈降性硫酸バリウム、クレー、タルク等の体質顔料等を挙げることができる。
さらに、上記変位層用硬化性樹脂組成物は、一般の塗料分野で用いられているその他の樹脂、有機溶剤、消泡剤、増粘剤、表面調整剤、可塑剤、紫外線吸収剤、光安定剤等を含むことができる。なお、上記の各条件を満たすのであれば、当業者によってよく知られているパテや下塗り塗料等を上記変位層用硬化性樹脂組成物として用いてもよい。
上記変位層は、温度23℃、湿度65%、及び、引っ張り速度10mm/分における抗張力が1MPa以上であり、かつ、伸び率が10%以上であることが好ましい。上記抗張力が1MPa未満であると、最終的に得られるコンクリート剥落防止膜が強靱でなくなり、充分な剥落防止機能を得ることができない恐れがある。上限値としては特に限定されないが、実質的には、50MPaである。50MPaを超えると上記伸び率を満たさない恐れがある。より好ましくは1〜30MPaである。また、伸び率が10%未満であると、得られるコンクリート剥落防止膜が堅くなり充分な変位を確保できないため、充分な剥落防止機能を得ることができない恐れがある。上限値としては特に限定されないが、実質的には1000%である。1000%を超えると上記抗張力を満たさない恐れがある。より好ましくは伸び率が10〜700%である。なお、上記抗張力および伸び率は、例えば、上記変位層単独膜のフリーフィルムを試料として、オートグラフAG−100KNE(島津製作所社製)およびテンシロン(東洋ボールドウィン社製)等の当業者によって良く知られている引張試験器によって測定することができる。上記機器を用いて測定する場合は、温度23℃、湿度65%、引っ張り速度10mm/分の条件下で行う。
上記変位層用硬化性樹脂組成物を選択することにより、得られる変位層の抗張力及び伸び率を上記好ましい範囲とすることができる。
上記抗張力および伸び率は、相互に密接に関連していると考えられる。一般に、抗張力が大きいと伸び率が小さくなり、膜は堅くて脆い性質を有する。逆に、伸び率が大きいと抗張力が小さくなり、膜は柔らかくて弱い性質になる。上記抗張力と伸び率とは、膜のガラス転移温度(Tg)、架橋間分子量、および、顔料を含む場合は顔料体積濃度等によって調節することができる。すなわち、上記膜のTgを高くすると、一般に抗張力が大きくなり、伸び率が小さくなる。上記架橋間分子量を大きくすると、一般に伸び率が大きくなり、抗張力が小さくなる。また、顔料体積濃度を高くすると抗張力が低下し、伸び率が小さくなる。この考えに基づいて、上記変位層用硬化性樹脂組成物の構成の変更を行うことができる。
上記変位層単独膜のTgは、用いる変位層用硬化性樹脂組成物を構成する樹脂および硬化剤のTg及び配合、硬化性官能基量等で制御することができる。一方、架橋間分子量は、樹脂および硬化剤の分子量や硬化性官能基濃度等で制御することができる。例えば、樹脂側からTgを制御する方法としては、その種類により選択が可能である。一般的に、ポリエーテル樹脂やポリブタジエン樹脂のTgは低い傾向にあり、アクリル樹脂やポリエステル樹脂のTgは、原料のTgによって制御しやすい。
また、硬化剤側からTgを制御する方法としては、例えば、硬化剤がイソシアネート基含有のものである場合には、芳香族系のものやイソシアヌレート体のような会合体のようなTgの高いものを選択したり、一方、ジイソシアネートの鎖延長に柔らかいジオールを使用することによって、低いTgのものを得ることができる。また、硬化性官能基の量および濃度、分子量の調節についても、当業者によく知られた方法により行うことができるものである。ただし、樹脂および硬化剤のTgおよび硬化性官能基量と、膜の抗張力および伸び率とが必ずしも一義的に相関しているわけではないため、試行錯誤を重ねることによって、目的とする変位層用硬化性樹脂組成物を選択することが好ましい。
上記変位層を形成するための変位層用硬化性樹脂組成物を構成する樹脂のTgは、−60〜−10℃であることが好ましい。なおTgは、樹脂を構成するモノマー組成により算出することができる。
上記Tgの場合、本願の特定の凝集力又は接着力を実現するためには、例えば、架橋間分子量は、500〜10000の範囲で調整するとよい。
上記変位層用硬化性樹脂組成物の構成の変更においては、各成分を自ら製造してもよいし、市販されている材料から選択してもよい。
上記補強層は、その強靱さによって、剥落したコンクリートの荷重に耐えてコンクリート剥落防止膜を破壊から守る働きを分担する。上記補強層は、温度23℃、湿度65%、及び、引っ張り速度10mm/分における抗張力が5MPa以上であり、かつ、伸び率が3%以上である。上記抗張力が5MPa未満であると、最終的に得られるコンクリート剥落防止膜が強靱でなくなり、充分な剥落防止機能を得ることができない。上限値としては特に限定されないが、実質的には、50MPaである。50MPaを超えると上記伸び率を満たさない恐れがある。より好ましくは5〜30MPaである。また、伸び率が3%未満であると、得られるコンクリート剥落防止膜が堅くなり充分な変位を確保できないため、充分な剥落防止機能を得ることができない。上限値としては特に限定されないが、実質的には1000%である。1000%を超えると上記抗張力を満たさない恐れがある。より好ましくは伸び率が3〜700%である。なお、上記抗張力および伸び率は、具体的には、上記変位層のところでの抗張力および伸び率の測定と同一の方法によって得ることができる。
このような補強層としては、補強層用硬化性樹脂組成物から得られるものを挙げることができる。上記補強層用硬化性樹脂組成物としては、具体的には、上記変位層のところで述べた変位層用硬化性樹脂組成物を挙げることができ、上記変位層用硬化性樹脂組成物と同じ種類のものであってもよい。本発明のコンクリート剥落防止膜は、上記変位層および補強層の両方の条件を満たす全く同一の硬化性樹脂組成物であっても、本発明のコンクリート剥落防止膜が厚膜での1層からなるのではなく、変位層および補強層の2つの層からなることが重要である。
上記補強層用硬化性樹脂組成物に使用する樹脂としては、上記の抗張力および伸び率を得るには、例えば、Tgは−50〜0℃で、架橋間分子量は500〜10000の範囲で調整するとよい。
さらに、上記補強層用硬化性樹脂組成物はチョップドストランド等の繊維素誘導体を含んでいてもよい。
また、上記補強層は、補強層用硬化性樹脂組成物と補強材とから得られるものであってもよい。上記補強材を含むことで、得られるコンクリート剥落防止膜の強靱さが増し、コンクリート基材の軽補強機能を高めることができる。上記補強材としては特に限定されず、例えば、ガラスマット、繊維シート等を挙げることができる。
ここで、上記補強材は高抗張力繊維シートであることが好ましい。上記高抗張力繊維シートを含むことで上記補強層がさらに強靱になり、コンクリート基材の軽補強機能をさらに向上させることが可能であり、かつ、低温および高温環境下においても極めて高い剥離防止機能を確保することができる。
上記高抗張力繊維シートとしては、23℃、湿度65%における引張強度が5N/mm以上であり、かつ、切断伸度が3%以上であることが好ましい。上記引張強度が5N/mm未満のものであると上記基材を補強する効果が不充分となる恐れがある。また、上限値としては特に限定されないが、実質的には100N/mmである。100N/mmを超えると、経済的でなく、上記切断伸度の条件を満たさない恐れがある。さらに好ましくは10〜90N/mmである。また、上記切断伸度が3%未満のものであると上記基材の変位に対する追従性が低下する恐れがある。上限値としては特に限定されないが、実質的には500%以下である。上記切断伸度が500%を超えるものであると基材の軽補強機能が不充分になる恐れがある。さらに好ましくは4〜100%である。なお、上記引張強度および切断伸度は、繊維シート単体を用い、上記変位層のところで述べた抗張力および伸び率の測定と同一の方法によって得ることができる。
このような高抗張力繊維シートの形態としては特に限定されず、例えば、平織り、3軸メッシュ、不織布等を挙げることができる。また、上記高抗張力繊維シートの材質としては特に限定されず、炭素繊維を含むもの、金属繊維を含むもの、ガラス繊維を含むもの、および、樹脂繊維を含むもの等を挙げることができるが、上記引張強度と切断伸度とを高いレベルで両立することが可能な樹脂繊維からなるものであることが、経済的にも好ましい。上記樹脂繊維としては特に限定されず、ナイロン繊維、アラミド繊維、アクリル繊維、ポリエステル繊維、ビニロン繊維等を挙げることができ、100℃以上の温度で処理または製造されたものであることが好ましい。また、上記硬化性樹脂組成物との密着性を向上するために、上記樹脂繊維が水酸基を有していることが好ましい。樹脂との一体化によって押し抜き変位や強度を向上させることができる。このような高抗張力繊維シートで市販されているものとしては、例えば、ビニロンクロスUV#130、UV#200、ビニロン三軸メッシュであるトリネオTSS−1810−Y(いずれもユニチカ社製)等を例示することができる。
本発明のコンクリート剥落防止膜を構成する上記変位層および補強層の各々は、1層だけでなく、上記変位層または上記補強層としてのそれぞれの条件を満たす限り、それぞれ2層以上からなってもよい。2層以上にすることによって、膜を厚膜化することができ、外観の向上や、各々の層に付与する性能の向上等を図ることができる。
本発明のコンクリート剥落防止膜は、温度23℃、湿度65%の環境下での直径100mmのコンクリート押し抜き試験において、最大変位が10mm以上であり、かつ、最大荷重が0.3kN以上である。10mm未満の変位で破断してしまう膜の場合、基材の変位に耐えることが難しい。また、上記最大荷重が0.3kN未満であると、上記基材の小さな変位に耐えきれず、コンクリート剥落防止膜が容易に破壊してコンクリートが剥落してしまう恐れがある。好ましくは1.5kN以上であり、上限は特に限定されないが実質的に10kNであることが好ましい。なお、上記コンクリート押し抜き試験は以下の要領で行うものとする。
(i)温度23℃、相対湿度65%の環境下で養生したJIS A 5372:2000(プレキャスト鉄筋コンクリート製品)に規定するU形ふた、呼び名1種300(縦400mm×横600mm×厚さ60mm)のコンクリート板の中央部分を直径100mmの形状でコンクリート用コアカッターにより底部を5mm残した状態で垂直に削孔する。なお、削孔は施工面の裏面より行う。さらに、施工面にサンダーケレン等により表面処理を行う。
(ii)次に、施工仕様に基づき、本発明のコンクリート剥落防止膜を形成して試験体を作成する。なお、形成する面積はU形ふた中心部400mm×400mmとする。
(iii)得られた試験板を、温度23℃、相対湿度65%の環境下において、JIS B7733の6に規定する1等級以上の引張試験機を押し抜き試験機として用い、剥落防止膜面を下向きにしてH鋼上に固定して上方向からの載荷によって測定する。載荷速度は初期ピークまでは1mm/分、初期ピーク値が表れた後は5mm/分とする。
なお、上記引張試験機としては特に限定されず、例えば、オートグラフAG(島津製作所社製)等を挙げることができる。
上記コンクリート剥落防止膜が上述した物性を有するように、変位層及び補強層を任意に組み合わせるとよい。
本発明のコンクリート剥落防止膜は、上記補強層の上に、防食性、耐火性、紫外線劣化防止、景観向上等の機能を有する保護層を備えることができる。上記保護層は、具体的には、上記のような機能を発現できるものであり、上記保護層は保護塗料から得られるものである。このような保護塗料としては特に限定されず、例えば、アクリル樹脂系塗料、エポキシ樹脂系塗料、ウレタン樹脂系塗料、フッ素樹脂系塗料等、当業者によってよく知られている中塗り塗料や上塗り塗料を挙げることができる。なお、上記基材がコンクリート系基材である場合は、基材の変位に追従できるように、柔軟形と呼ばれる弾性を有するものを用いることが好ましい。
コンクリート剥落防止膜形成方法
本発明のコンクリート剥落防止膜形成方法は、コンクリート基材上に、変位層を形成する工程(a)を有する。上記変位層は、温度23℃、湿度65%及び剥離速度50mm/分における凝集力又は上記基材との接着力が0.1〜50N/mmである。ここで、上記コンクリート基材は、具体的には、上述のコンクリート剥落防止膜のところで述べたものを挙げることができる。
上記変位層は、例えば、上記コンクリート剥落防止膜のところで述べたセメント系膜または硬化樹脂膜からなる。膜物性の調整が容易なことから、上記変位層は硬化樹脂膜であることが好ましく、上記コンクリート剥落防止膜の変位層のところで述べた変位層用硬化性樹脂組成物から得られるものであることが好ましい。
上記工程(a)は、具体的には、上記コンクリート基材上に、モルタル系組成物または変位層用硬化性樹脂組成物を塗布するものである。上記塗布方法としては特に限定されず、ハケ塗布、スプレー塗布、ローラー塗布、コテ塗布、ヘラ塗布等、当業者によってよく知られている方法を挙げることができ、具体的には、上記モルタル系組成物および変位層用硬化性樹脂組成物の種類に応じて適宜選択することができる。このようにして得られる変位層の膜厚は特に限定されず、上記モルタル系組成物および変位層用硬化性樹脂組成物の種類に応じて適宜設定することができ、例えば、モルタル系組成物の場合は0.5〜5mm、変位層用硬化性樹脂組成物の場合は30〜1000μmである。
ここで、上記工程(a)は、上記コンクリート基材上に直接行ってもよいし、断面修復モルタル等によって、コンクリート基材の凹凸を平滑にした後に行ってもよい。
本発明のコンクリート剥落防止膜形成方法は、更に、上記工程(a)によって得られた変位層上に補強層を形成する工程(b)を有する。上記補強層は、温度23℃、湿度65%及び引っ張り速度10mm/分における抗張力が5MPa以上であり、かつ、伸び率が3%以上である。上記補強層は、例えば、上記コンクリート剥落防止膜のところで述べた補強層用硬化性樹脂組成物から得られるものである。
上記工程(b)は、具体的には、変位層上に、上記補強層用硬化性樹脂組成物を塗布するものである。上記塗布方法としては特に限定されず、上記工程(a)で述べたものを挙げることができる。上記塗布膜厚は特に限定されず、例えば、0.5〜2mmである。
また、上記補強層が上記コンクリート剥落防止膜のところで述べた補強材を含む場合、上記工程(b)は、補強材を貼付する段階(b−1)と上記補強層用硬化性樹脂組成物を塗布する段階(b−2)とからなるものであってもよい。得られる補強層が上記補強材を含むことによって強靱さが増加し、上記コンクリート基材への軽補強機能をさらに高くすることが可能である。
上記補強材は、さらに、低温および高温環境下においても極めて高い剥離防止機能を確保するという観点から、高抗張力繊維シートであることが好ましい。上記高抗張力繊維シートとしては、具体的には、上述のコンクリート剥落防止膜のところで述べたものを挙げることができる。
上記段階(b−1)は、例えば、上記工程(a)で得られた変位層上に、接着剤を全面または必要箇所のみ塗布した後、上記補強材を貼付するものである。上記接着剤としては特に限定されず、当業者によってよく知られているものの他、上述のコンクリート剥落防止膜のところで述べた補強層用硬化性樹脂組成物を挙げることができる。上記段階(b−1)において、上記接着剤を塗布する方法としては特に限定されず、具体的には、上記工程(a)のところで述べたものを挙げることができる。上記塗布膜厚は特に限定されず、上記補強材が次の段階(b−2)を終えるまで接着できている程度でよい。上記補強材の貼付方法としては特に限定されず、当業者によってよく知られている方法を挙げることができる。
上記段階(b−2)は、上記段階(b−1)の後、例えば、貼付された上記補強材の上から上記補強層用硬化性樹脂組成物を上記補強材と一体化するように塗布するものである。このようにすることによって、補強層用硬化性樹脂組成物と補強材とが一体化した複合膜を得ることができ、補強層をより強靱にすることができる。
なお、上記段階(b−1)における接着剤と上記段階(b−2)における補強層用硬化性樹脂組成物とは、上記工程(a)における変位層用硬化性樹脂組成物と同一のものであってもよい。上記工程(b−2)において、上記補強層用硬化性樹脂組成物を塗布する方法としては特に限定されず、具体的には、上記工程(a)のところで述べたものを挙げることができる。上記塗布膜厚は特に限定されず、得られる膜の強靱さの観点から、上記補強層用硬化性樹脂組成物によって上記補強材が包埋されるまでであることが好ましく、上記一体化した膜としての厚さとして、例えば、5mm以下である。
ここで、上記工程(a)で得られる変位層と、上記工程(b)で得られる補強層とは、1層だけ形成する場合に限定されず、上記各層の条件を満たす限り、2層以上形成する場合も含むものである。2層以上形成することによって、膜を厚膜化することができ、外観の向上や、各々の層に付与する性能の向上等を図ることができる。
なお、付着性の観点から、上記工程(a)および上記工程(b)における各工程と、その直前の工程とのインターバルとしては、各々塗布する面が指で触れて指紋が付かない程度に乾燥している程度であることが好ましい。
本発明のコンクリート剥落防止膜形成方法において、得られるコンクリート剥落防止膜は、温度23℃、湿度65%の環境下での直径100mmのコンクリート押し抜き試験において、最大変位が10mm以上であり、かつ、最大荷重が0.3kN以上である。具体的には、上記コンクリート剥落防止膜のところで述べたものを挙げることができる。
本発明のコンクリート剥落防止膜形成方法は、さらに、保護塗料を塗布して保護層を形成する工程(c)を含むことができる。上記保護塗料としては特に限定されず、上述のコンクリート剥落防止膜のところで述べたものと同様のものを挙げることができる。また、上記塗布方法としては特に限定されず、具体的には、上記工程(a)で述べたものを挙げることができる。このようにして得られる保護膜の乾燥膜厚は特に限定されず、例えば、30〜100μmである。
コンクリート補修方法
本発明のコンクリート補修方法は、コンクリート基材上の変位したコンクリート剥落防止膜を除去し、コンクリートを修復した後、上述のコンクリート剥落防止膜形成方法を行うことを特徴とするものである。上記コンクリート基材としては、具体的には、上述のコンクリート剥落防止膜のところで述べたものを挙げることができる。また、上記変位したコンクリート剥落防止膜としては特に限定されず、上述のコンクリート剥落防止膜の他、一般に用いられる鋼板、シート、メッシュまたはガラス繊維シート等を接着剤で貼り付けたもの、さらに、その上に中塗り塗料および/または上塗り塗料を塗布したもの等を挙げることができる。
上記変位は、コンクリート片の剥落によって発生するものである。上記変位の発生は、上記コンクリート剥落防止膜表面を目視により点検することによって確認されるものである。ここで、変位とはコンクリート剥落防止膜面に対する鉛直方向への変化量をいうものであり、例えば、変化量が10mmであれば、10mmの変位が発生していると判断される。変位の発生部分に対して行われるコンクリート補修は、変位が確認された部分のコンクリート剥落防止膜を切除した後、当業者によってよく知られた方法、例えば、修復モルタル等によってコンクリートを修復する。
上記修復されたコンクリートは、その表面に対して、必要な処理を行った後、上述のコンクリート剥落防止膜形成方法を行う。
以下、具体的な実施例を挙げて本発明を詳細に説明するが、本発明は以下の実施例により限定されるものではない。なお、以下において「部」とあるのは「質量部」を意味する。
製造例1 基材の調製
温度23℃、相対湿度65%の環境下で養生したJIS A 5372:2000(プレキャスト鉄筋コンクリート製品)に規定するU形ふた、呼び名1種300(縦400mm×横600mm×厚さ60mm)のコンクリート板の中央部分を直径100mmの形状でコンクリート用コアカッターにより底部を5mm残した状態で垂直に削孔した。
さらに、削孔していない面に対してサンダーによってケレンし、表面の脆弱層を除去し平滑にした後、タフガードE−VMプライマー(日本ペイント社製エポキシ樹脂系プライマー)を塗布量0.2kg/mとなるようにハケにて塗布し、常温で1日間放置して基材を得た。
製造例2 硬化性樹脂組成物1の調製
アデカレジンEPU−86(旭電化社製、ウレタン変性エポキシ樹脂、固形分100%、室温で液状)100部、タイペークR−820(石原産業社製、二酸化チタン)を15部、タルクPK50(富士タルク社製、タルク)を40部およびキシレンを10部を混合し混練した後、アデカハードナーEH−220(旭電化社製アミノ基含有硬化剤)14部を混合してエポキシ系の硬化性樹脂組成物1を調製した。なお、この時のPVCは15%であった。
製造例3 硬化性樹脂組成物2の調製
ポリハードナーUD−503(第一工業製薬社製、水酸基を有するポリエーテル樹脂、固形分100%、室温で液状)30部、タイペークR−820 15部、タルクPK50 47部およびキシレン10部を混合し混練した後、ポリフレックスFL−83(第一工業製薬社製、イソシアネート基含有硬化剤)100部を混合してウレタン系の硬化性樹脂組成物2を得た。この時のPVCは15%であった。
<抗張力および伸び率の測定>
この硬化性樹脂組成物2から得られた単独膜のフリーフィルムを用い、JIS K 7113−1981に準拠して、オートグラフAG−100KNE(島津製作所社製引張試験器、温度23℃、湿度65%、引っ張り速度10mm/分)にて膜物性を測定したところ、抗張力9.3MPa、伸び率350%であった。
製造例4 硬化性樹脂組成物3の調製
タルクPK50を11部としたこと、および、ポリフレックスFL−83を100部に代えて、硬化性官能基量の多いMILLIONATE MTL(日本ポリウレタン工業社製イソシアネート系硬化剤)20部としたこと以外、製造例3と同様にして、ウレタン系の硬化性樹脂組成物3を調製した。なお、この時のPVCは15%であった。
硬化性樹脂組成物3から得られた単独膜のフリーフィルムの抗張力および伸び率を製造例3と同様にして測定したところ、それぞれ、16.0MPa、52%であった。
実施例1
<変位層の凝集力および接着力の測定>
JIS K 5410に準じて作成した150mm×70mm×20mmのセメントモルタル板の成形時の面を、JIS R 6252に規定するP180研磨紙を用いて充分に研磨したものにタフガードE−VMプライマーを塗布量0.2kg/mとなるようにハケにて塗布し、常温で16時間放置して基板を得た。この基板上の半分にクラフトテープを貼付した後、製造例2で得られた硬化性樹脂組成物1を変位層用硬化性樹脂組成物として塗布量0.26kg/mとなるようにハケにて塗布して変位層を形成した。16時間放置して、指で触れても指紋が付かない程度に乾燥したことを確認した後、得られた変位層上に、製造例3で得られた硬化性樹脂組成物2を補強層用硬化性樹脂組成物として塗布量1.8kg/mでヘラにて塗布して補強層を形成した。その後、23℃にて7日間放置してコンクリート剥落防止膜を形成した基板を得た。
続いて、基板に付着していないクラフト上のコンクリート剥落防止膜をオートグラフAG(島津製作所社製引張試験器)のチャックにセットし、温度23℃、湿度65%、及び、剥離速度50mm/分においてJIS K 6854−1に準拠して90度剥離試験を行ったところ、変位層内で凝集破壊が発生し、その時の凝集力は0.6N/mmであった。
<コンクリート押し抜き試験による最大荷重および最大変位の測定>
製造例1で得られた基材上に、製造例2で得られた硬化性樹脂組成物1を塗布面積が400mm×400mmとなるように変位層用硬化性樹脂組成物として塗布量0.26kg/mでヘラにて塗布して変位層を形成した。16時間放置して、指で触れても指紋が付かない程度に乾燥したことを確認した後、得られた変位層上に、製造例3で得られた硬化性樹脂組成物2を塗布面積が400mm×400mmとなるように補強層用硬化性樹脂組成物として塗布量1.8kg/mでヘラにて塗布し補強層を形成した。その後、23℃で7日間放置して、コンクリート剥落防止膜を形成した試験基材を得た。
温度23℃、相対湿度65%の環境下において、得られた試験基材を、スパン400mmとしてH鋼上に、コンクリート剥落防止膜が下向きになるように固定した。オートグラフAGを用いて、削孔した円筒部の中央部に上方向から鉛直にかつ均等に荷重がかかるように球座を挟んで載荷し、最大荷重および最大変位を測定した。なお、載荷速度は初期ピークまでは1mm/分、初期ピーク値が表れたらその後5mm/分とした。また、この時の膜の最大荷重および最大変位を測定したところ、最大荷重1.7kN、最大変位は50mm以上であった。
<補修性>
上記試験基材のコンクリート剥落防止膜の一部分をディスクサンダーで剥離して基材部分を露出させた。露出させた部分に対して、コンクリート押し抜き試験による最大荷重および最大変位の測定の際のコンクリート剥落防止膜形成方法の手順と同様にして、問題なくコンクリート剥落防止膜を再び形成することができた。
実施例2
製造例3の硬化性樹脂組成物2に代えて製造例4の硬化性樹脂組成物3を補強層用硬化性樹脂組成物として用いたこと以外は、実施例1と同様にして、変位層の凝集力および接着力、ならびに、コンクリート押し抜き試験による最大荷重および最大変位を評価した。得られた結果は実施例1の結果とともに表1に示した。
さらに、実施例1と同様にして補修性を評価したところ、問題なくコンクリート剥落防止膜を再び形成することができた。
実施例3
<変位層の凝集力および接着力の測定>
実施例1の変位層の凝集力および接着力の測定に記載した方法と同様にして形成した変位層上に、製造例4で得られた硬化性樹脂組成物3を接着剤として塗布量0.45kg/mとなるように変位層全面にハケにて塗布した後、直ちに、高抗張力繊維シートとして23℃、湿度65%における引張強度70N/mmおよび切断伸度14%であるビニロン繊維シート#UV200(ユニチカ社製)を貼付した。貼付後、高抗張力繊維シートをヘラにて押し付け、高抗張力繊維シート内に硬化性樹脂組成物3を浸透させた。しかしながら硬化性樹脂組成物3によって高抗張力繊維シートが充分覆うことができなかったので、再度、この上に、硬化性樹脂組成物3を補強層用硬化性樹脂組成物として塗布量0.45kg/mでヘラにて塗布して、硬化性樹脂組成物と高抗張力繊維シートとが一体化した補強層を形成した。その後23℃で7日間放置して、コンクリート剥落防止膜を形成した基板を得た。
続いて、基板に付着していないクラフト上のコンクリート剥落防止膜をオートグラフAG(島津製作所社製引張試験器)のチャックにセットし、温度23℃、湿度65%、及び、剥離速度50mm/分においてJIS K 6854−1に準拠して90度剥離試験を行ったところ、変位層内で凝集破壊が発生し、その時の凝集力は0.6N/mmであった。
<コンクリート押し抜き試験による最大荷重および最大変位の測定>
実施例1のコンクリート押し抜き試験による最大荷重および最大変位の測定のところで記載したコンクリート剥落防止膜の形成方法と同様にして形成した変位層上に、製造例4で得られた硬化性樹脂組成物3を接着剤として塗布量0.45kg/mとなるようにヘラにて塗布した後、直ちに、高抗張力繊維シートとしてビニロン繊維シート#UV200を貼付した。貼付後、高抗張力繊維シートをヘラにて押し付け、高抗張力繊維シート内に硬化性樹脂組成物3を浸透させた。しかしながら硬化性樹脂組成物3によって高抗張力繊維シートを充分覆うことができなかったので、再度、この上に、得られた硬化性樹脂組成物3を塗布面積が400mm×400mmとなるように補強層用硬化性樹脂組成物として塗布量0.45kg/mでヘラにて塗布して、硬化性樹脂組成物と高抗張力繊維シートとが一体化した補強層を形成した。その後23℃で7日間放置して、コンクリート剥落防止膜を形成した試験基材を得た。
得られた試験基材を、実施例1と同様にして試験したところ、膜の最大荷重および最大変位を測定したところ、最大荷重4.8kN、最大変位は50mm以上であった。
さらに、試験基材を温度50℃の恒温室内に48時間放置した後、同様にして、膜の最大荷重および最大変位の測定をした。なお、試験装置としては、圧力センサおよび変位センサを取り付けたオックスジャッキ社製の油圧プレスを用いた。評価の際には23℃と同様の載荷速度となるように油圧プレスを調整しながら行った。さらに、同様にして、温度−30℃の恒温室内においても評価を行った。得られた結果は表1に示した。
<補修性>
実施例1と同様にして、補修性を評価したところ、問題なくコンクリート剥落防止膜を再び形成することができた。
実施例4
製造例2の硬化性樹脂組成物1に代えて、タフガードEWフィラー(日本ペイント社製水性エポキシ系ポリマーセメント)を変位層用のセメント系組成物として塗布量1.2kg/mで塗布したこと以外は、実施例2と同様にして、変位層の凝集力および接着力、ならびに、コンクリート押し抜き試験による最大荷重および最大変位を評価した。得られた結果は表1に示した。
さらに、実施例1と同様にして補修性を評価したところ、問題なくコンクリート剥落防止膜を再び形成することができた。
比較例1
エピコート828(シェル社製ビスフェノールA型エポキシ樹脂、固形分100%)100部、Ganamid2000(ヘンケル白水社製アミン硬化剤、固形分100%)43部、及びタルクPK50 52部を混合してエポキシ系の硬化性樹脂組成物5を調製した。この時のPVCは15%であった。
製造例2で得られた硬化性樹脂組成物1及び製造例3で得られた硬化性樹脂組成物2に代えて、得られた硬化性樹脂組成物5を変位層用硬化性樹脂組成物及び補強層用硬化性樹脂組成物とした以外は、実施例1と同様にして、コンクリート剥落防止膜を形成して基板を得た。
その後、実施例1と同様にして変位層の凝集力及び接着力、ならびに、コンクリート押し抜き試験による最大荷重及び最大変位を評価した。得られた結果を表1に示した。
比較例2
製造例4で得られた硬化性樹脂組成物3に代えて比較例1で得られた硬化性樹脂組成物5を補強層用樹脂組成物として用いたこと以外は、実施例3と同様にして、コンクリート剥落防止膜を形成して試験基板を得た。
その後、実施例1と同様にして変位層の凝集力及び接着力、並びに、コンクリート押し抜き試験による最大荷重及び最大変位を評価した。得られた結果を表1に示した。
Figure 2006342662
表1の結果から明らかなように、本発明のコンクリート剥落防止膜は、所定の凝集力又は基材に対する接着力を有する変位層と、所定の抗張力および伸び率を有する補強層とから構成されるので、コンクリート剥落防止膜の最大荷重が0.3kN以上であり、最大変位が10mm以上であった。また、補強層として高抗張力繊維シートを含む場合は、低温環境下および高温環境下においても良好な最大荷重および最大変位を示すことがわかった。
また、本発明のコンクリート剥落防止膜は、その補修性についても問題ないことがわかった。
本発明のコンクリート剥落防止膜およびコンクリート剥落防止膜形成方法は、橋梁、高架橋等のコンクリート構造物に対するコンクリート剥落防止方法およびコンクリート剥落防止用のコンクリート剥落防止膜として好適に用いることができる。

Claims (9)

  1. コンクリート基材上に設けられた変位層と、前記変位層の上に設けられた補強層とを備えたコンクリート剥落防止膜であって、
    (1)前記変位層は、温度23℃、湿度65%、及び、剥離速度50mm/分における凝集力又は前記基材との接着力が0.1〜50N/mmであり、
    (2)前記補強層は、温度23℃、湿度65%、及び、引っ張り速度10mm/分における抗張力が5MPa以上であり、かつ、伸び率が3%以上であり、
    (3)前記コンクリート剥落防止膜は、温度23℃、湿度65%の環境下での直径100mmのコンクリート押し抜き試験において、最大変位が10mm以上であり、かつ、最大荷重が0.3kN以上である
    ことを特徴とするコンクリート剥落防止膜。
  2. 前記変位層は、変位層用硬化性樹脂組成物から得られるものである請求項1に記載のコンクリート剥落防止膜。
  3. 前記補強層は、補強層用硬化性樹脂組成物から得られるものである請求項1又は2に記載のコンクリート剥落防止膜。
  4. 前記補強層は、補強層用硬化性樹脂組成物と高抗張力繊維シートとから得られるものである請求項1又は2に記載のコンクリート剥落防止膜。
  5. 前記高抗張力繊維シートは、樹脂繊維からなるものである請求項4に記載のコンクリート剥落防止膜。
  6. 前記変位層用硬化性樹脂組成物は、前記補強層用硬化性樹脂組成物と同一である請求項3、4又は5に記載のコンクリート剥落防止膜。
  7. さらに、保護層を備えている請求項1、2、3、4、5又は6のうちのいずれか1つに記載のコンクリート剥落防止膜。
  8. コンクリート基材上に、変位層を形成する工程(a)、前記工程(a)によって得られた変位層上に補強層を形成する工程(b)を含むコンクリート剥落防止膜形成方法であって、
    (1)前記変位層は、温度23℃、湿度65%、及び、剥離速度50mm/分における凝集力又は前記基材との接着力が0.1〜50N/mmであり、
    (2)前記補強層は、温度23℃、湿度65%、及び、引っ張り速度10mm/分における抗張力が5MPa以上であり、かつ、伸び率が3%以上であり、
    (3)前記コンクリート剥落防止膜は、温度23℃、湿度65%の環境下での直径100mmのコンクリート押し抜き試験において、最大変位が10mm以上であり、かつ、最大荷重が0.3kN以上である
    ことを特徴とするコンクリート剥落防止膜形成方法。
  9. コンクリート基材上の変位したコンクリート剥落防止膜を除去し、コンクリートを修復した後、請求項8に記載のコンクリート剥落防止膜形成方法を行うことを特徴とするコンクリート補修方法。
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