JP6859211B2 - コンクリート剥落防止工法および該コンクリート剥落防止工法に用いるための塗料組成物 - Google Patents

コンクリート剥落防止工法および該コンクリート剥落防止工法に用いるための塗料組成物 Download PDF

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Description

本発明は、コンクリート構造物からのコンクリートの剥落を防止する方法(以下、コンクリート剥落防止工法ともいう)及び該コンクリート剥落防止工法に用いるための塗料組成物に関するものである。
高架橋、トンネル、橋梁やその他の構造物は、その強度や耐久性に優れることから、コンクリート製の構造物が広く用いられている。しかしながら、近年では、コンクリートの塩害による鉄筋の腐食や排ガス等による中性化、アルカリ骨材反応、ひび割れに浸入した水分の凍結等により、コンクリートが劣化し、劣化が進行するとコンクリート構造物の表面からコンクリート片が剥がれ落ち、コンクリート構造物自体の強度低下や美観の低下、剥落による事故の危険性等の課題が発生している。この課題に対して、特許文献1〜3に示されるようなコンクリート剥落防止工法が提案されている。
特許文献1は、コンクリート構造物に対して、接着用ポリマーセメントモルタル及びメッシュ状シートでコンクリート構造物表面を被覆し、その上から水系塗料で被覆することを特徴とするコンクリート剥落防止工法を記載している。特許文献1に記載の方法は、コンクリートの剥落を防止するとともに、火災時には有毒ガスの発生が殆ど無い環境に優しい剥落防止工法であるが、ポリマーセメントモルタルによってコンクリート表面が隠蔽されるため、施工後に発生したコンクリート表面の亀裂を目視により確認することができない。
特許文献2は、コンクリートの表面に、プライマー層(A)、主材層(B)、コンクリート剥落防止用シート(C)、主材層(B)及び上塗り塗膜層(D)を順次積層するコンクリート剥落防止表面被覆工法であって、主材層(B)が20℃における粘度が15〜200Pa・sである水性ポリウレタン塗料(b)によって形成されるものであることを特徴とするコンクリート剥落防止表面被覆工法を記載している。しかしながら、特許文献2に記載の方法は、施工後のコンクリート表面の管理については考慮されていない。
特許文献3は、コンクリート表面に、シリコンアクリル樹脂プライマーから形成される透明プライマー層と、ポリウレア樹脂塗材から形成される透明補強層であって、ガラス繊維製クロスを内部に有する透明補強層と、アクリルシリコン樹脂塗材から形成される透明保護層とを備えるコンクリート剥落防止構造を記載している。しかしながら、特許文献3に記載の方法に用いる塗膜は、施工後の視認性に優れるものの、透明な塗料を用いて塗装を行っており、塗装時の膜厚の確認が困難であり、施工管理に困難を要する。
また、特許文献4では、非磁性金属フィルム層を設けたガラス繊維シートを内部に有する保護被覆膜をコンクリート構造物に形成させると、渦電流式膜厚計を用いることで保護被覆膜の厚みを測定管理できることを記載している。更に、特許文献5では、金属ないし金属を含む塗料でコンクリート下地表面を塗装することで、施工時の膜厚を管理する方法が記載されている。しかしながら、特許文献5に記載の方法は、構造物の補修の際には利用が困難になる。
特開2011−099209号公報 特開2007−247290号公報 特開2016−030716号公報 特開2015−013478号公報 特開平06−331759号公報
このように、コンクリート剥落防止工法においては、コンクリートの剥落を防止するという目的以外にも、施工後のコンクリート表面に対する視認性や施工時の膜厚の管理に対する要求がある。
ところで、コンクリート構造物のうち、高架橋、トンネル、橋梁等は、ひび割れが発生する部分が高所の下部分であることが多く、これらは暗所であることが多いため、コンクリート面に対する点検や補修時の塗膜の確認も困難な作業となり得る。更に、このような点検や補修は夜間に行われることも多く、この場合、より一層困難な作業となる。このため、コンクリート構造物における剥落防止対策は、コンクリート片の剥落防止に加えて、施工後のコンクリート表面に対する視認性や施工時の膜厚の管理に対する要求も高い。
そこで、本発明の目的は、上記従来技術の問題を解決し、施工時の膜厚の確認が容易であると共に、施工後のコンクリート面の目視確認も容易であるコンクリート剥落防止工法を提供することにある。また、本発明の他の目的は、かかるコンクリート剥落防止工法に使用可能な塗料組成物を提供することにある。
本発明者は、上記目的を達成するために鋭意検討した結果、コンクリート構造物の表面に、下塗り塗膜、繊維シート及び上塗り塗膜を備える積層体を形成させて、コンクリート構造物からのコンクリートの剥落を防止する方法において、エマルジョン樹脂及び/又はディスパージョン樹脂を含み、塗膜形成成分中の顔料全体の含有量が0.01質量%〜10質量%であり且つ塗膜形成成分中の着色顔料の含有量が0質量%〜0.5質量%であり、波長360〜750nmの可視光透過率が50%以上であり且つヘーズが70以下である乾燥膜厚400μmの塗膜を形成可能な水系塗料を水系下塗り塗料及び水系上塗り塗料として用いることで、施工時の膜厚の確認及び施工後のコンクリート面の確認が容易に達成できることを見出し、本発明を完成させるに至った。
即ち、本発明のコンクリート剥落防止工法は、コンクリート構造物の表面に、下塗り塗膜、繊維シート及び上塗り塗膜を備える積層体を形成させて、コンクリート構造物からのコンクリートの剥落を防止する方法であって、
水系下塗り塗料でコンクリート構造物の表面を塗装し、下塗り塗膜を形成させる第1の工程と、
下塗り塗膜上に繊維シートを配置させる第2の工程と、
下塗り塗膜及び繊維シートを覆うように水系上塗り塗料による塗装を行い、上塗り塗膜を形成させる第3の工程とを含み、
前記水系下塗り塗料及び前記水系上塗り塗料が、エマルジョン樹脂及びディスパージョン樹脂から選択される少なくとも一方の樹脂を含む水系塗料であり、
前記水系塗料は、塗膜形成成分中の顔料全体の含有量が0.01質量%〜10質量%であり且つ塗膜形成成分中の着色顔料の含有量が0質量%〜0.5質量%であり、
前記水系塗料は、乾燥膜厚400μmの塗膜を形成させた際の波長360〜750nmの可視光透過率が50%以上であり且つヘーズが70以下であることを特徴とする。
本発明のコンクリート剥落防止工法の好適例において、前記水系塗料は、塗膜形成成分の含有量が35〜80質量%である。
本発明のコンクリート剥落防止工法の他の好適例において、前記水系塗料は、体質顔料を含み、塗膜形成成分中の体質顔料の含有量が0.1質量%〜10質量%である。
本発明のコンクリート剥落防止工法の他の好適例において、前記水系塗料は、顔料を含み、該顔料の50%体積平均径が1μm以下である。
本発明のコンクリート剥落防止工法の他の好適例において、前記体質顔料はホワイトカーボンを含み、塗膜形成成分中のホワイトカーボンの含有量が0.1質量%〜5質量%である。
本発明のコンクリート剥落防止工法の他の好適例において、前記水系塗料は、液状増粘剤を含む。
本発明のコンクリート剥落防止工法の他の好適例において、前記樹脂が、エポキシ樹脂、アクリル変性エポキシ樹脂、ウレタン変性エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、アクリル変性ウレタン樹脂、及びウレタン変性アクリル樹脂より選ばれる少なくとも1種類の樹脂を含む。
本発明のコンクリート剥落防止工法の他の好適例において、前記積層体は、厚さが100〜400μmの範囲内である。
また、本発明の水系塗料組成物は、上記の方法に用いるための水系塗料組成物であって、
エマルジョン樹脂及びディスパージョン樹脂から選択される少なくとも一方の樹脂を含み、塗膜形成成分中の顔料全体の含有量が0.01質量%〜10質量%であり且つ塗膜形成成分中の着色顔料の含有量が0質量%〜0.5質量%であり、
乾燥膜厚400μmの塗膜を形成させた際の波長360〜750nmの可視光透過率が50%以上であり且つヘーズが70以下であることを特徴とする。
本発明によれば、エマルジョン樹脂及び/又はディスパージョン樹脂を含み、塗膜形成成分中の顔料全体の含有量が0.01質量%〜10質量%であり且つ塗膜形成成分中の着色顔料の含有量が0質量%〜0.5質量%であり、波長360〜750nmの可視光透過率が50%以上であり且つヘーズが70以下である乾燥膜厚400μmの塗膜を形成可能な水系塗料を水系下塗り塗料及び水系上塗り塗料として用いることによって、施工時の膜厚の確認が容易であると共に、施工後のコンクリート面の目視確認も容易であるコンクリート剥落防止工法を提供することができ、また、該コンクリート剥落防止工法に使用可能な塗料組成物を提供することができる。
以下に、本発明を詳細に説明する。本発明のコンクリート剥落防止工法は、コンクリート構造物の表面に、下塗り塗膜、繊維シート及び上塗り塗膜を備える積層体を形成させて、コンクリート構造物からのコンクリートの剥落を防止する方法であって、水系下塗り塗料でコンクリート構造物の表面を塗装し、下塗り塗膜を形成させる第1の工程と、下塗り塗膜上に繊維シートを配置させる第2の工程と、下塗り塗膜及び繊維シートを覆うように水系上塗り塗料による塗装を行い、上塗り塗膜を形成させる第3の工程とを含み、前記水系下塗り塗料及び前記水系上塗り塗料が、エマルジョン樹脂及びディスパージョン樹脂から選択される少なくとも一方の樹脂を含む水系塗料であり、前記水系塗料は、塗膜形成成分中の顔料全体の含有量が0.01質量%〜10質量%であり且つ塗膜形成成分中の着色顔料の含有量が0質量%〜0.5質量%であり、前記水系塗料は、乾燥膜厚400μmの塗膜を形成させた際の波長360〜750nmの可視光透過率が50%以上であり且つヘーズが70以下であることを特徴とする。
また、本発明の水系塗料組成物は、本発明のコンクリート剥落防止工法に用いるための水系塗料組成物であり、エマルジョン樹脂及びディスパージョン樹脂から選択される少なくとも一方の樹脂を含み、塗膜形成成分中の顔料全体の含有量が0.01質量%〜10質量%であり且つ塗膜形成成分中の着色顔料の含有量が0質量%〜0.5質量%であり、乾燥膜厚400μmの塗膜を形成させた際の波長360〜750nmの可視光透過率が50%以上であり且つヘーズが70以下であることを特徴とする。即ち、本発明の水系塗料組成物の実施態様としては、後述する下塗り塗料及び上塗り塗料として用いられる水系塗料を挙げることができる。
本発明のコンクリート剥落防止工法において、下塗り塗料及び上塗り塗料は、水系の塗料である。このため、本発明のコンクリート剥落防止工法は、環境への負荷が少ない上、塗料自体は引火点を有さない完全水系の剥落防止工法であると言える。また、水系塗料は、作業者への有機溶剤中毒の防止の観点からも好ましい健康や安全面を考慮された塗料であるし、たとえ火災が発生しても延焼等の二次災害を引き起こすこともない。更に、水系塗料であれば、都市部や繁華街等でも臭気が気にならず、近隣への臭気対策が可能である。
なお、水系塗料とは、水を主溶媒として含む塗料である。本発明のコンクリート剥落防止工法において、下塗り塗料及び上塗り塗料中における水の含有量は、それぞれ独立して、15〜75質量%であることが好ましく、20〜65質量%であることがより好ましい。
本発明のコンクリート剥落防止工法において、下塗り塗料及び上塗り塗料は、それぞれ独立して、エマルジョン樹脂及びディスパージョン樹脂から選択される少なくとも一種の樹脂を含む水系塗料である。本発明において、エマルジョン樹脂とは、水を必須成分として含み、必要に応じて水に溶解あるいは分散可能な有機溶剤を含む水性媒体中で分散し乳濁液(エマルジョン)を形成可能な樹脂であり、その具体例として、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、アクリルシリコーン樹脂、ウレタン樹脂、ふっ素樹脂等のエマルジョン樹脂が挙げられる。また、ディスパージョン樹脂とは、水を必須成分として含み、必要に応じて水に溶解あるいは分散可能な有機溶剤を含む水性媒体中で分散し分散液(ディスパージョン)を形成可能な樹脂であり、その具体例として、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、アクリルシリコーン樹脂、ウレタン樹脂、ふっ素樹脂等の樹脂が挙げられる。なお、これら樹脂は、単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
エマルジョン樹脂塗料やディスパージョン樹脂塗料は、塗装時に形成される塗膜が白濁しているため、膜厚の確認が容易で、施工時の膜厚の管理がし易い。乾燥後には、溶媒が蒸発することで、透明な塗膜が形成されるため、コンクリート面の変状を目視で確認することもできる。更に、下塗り塗料及び上塗り塗料はいずれもエマルジョン樹脂および/またはディスパージョン樹脂を含む水系塗料であるため、施工期間を短縮することが可能である。なお、下塗り塗料及び上塗り塗料は完全に同一の塗料である必要はないものの、より確実に施工期間を短縮する観点からは、完全に同一の塗料であることが好ましい。
本発明のコンクリート剥落防止工法において、下塗り塗料及び上塗り塗料として用いられる水系塗料(以下、単に「水系塗料」ともいう)は、乾燥膜厚400μmの塗膜を形成させた際の波長360〜750nmの可視光透過率が50%以上であり且つヘーズが70以下である。水系塗料から形成される乾燥膜厚が400μmである塗膜の、波長360〜750nmの可視光透過率が50%以上であり且つヘーズが70以下であれば、施工後のコンクリート面の目視確認が容易であるため、コンクリート面の変状を目視で確認することもできる。上記可視光透過率について言えば、その上限は100%であるが、60〜95%であることが好ましい。また、ヘーズについては、完全に透明な塗膜であれば0となるが、0.2〜50であることが好ましく、5〜42であることがより好ましい。
ここで、可視光透過率及びヘーズを測定する際に用いる塗膜としては、既知の塗装手段により水系塗料をガラス板上に塗布し、23℃、50%相対湿度の条件で24時間乾燥させることによって形成される乾燥膜厚400μmの塗膜を使用できる。上記可視光透過率は、可視領域(360nm〜750nm)における全光線透過率を意味し、塗膜の全光線透過率をJIS R3106:1998「板ガラス類の透過率・反射率・放射率・日射熱取得率の試験方法」に基づき測定される。可視光透過率の測定装置には、例えば紫外可視近赤外分光光度計(株式会社島津製作所製「MPC3100UV−3100PC」等)を使用できる。また、上記ヘーズは、曇り度とも称されるものであり、透明度を示す指標となる。JIS K7136:2000「プラスチック−透明材料のヘーズの求め方」に基づき、塗膜のヘーズを測定することができる。ヘーズの測定装置には、例えばヘーズメーター(日本電色工業株式会社「HAZE METER NDH5000」等)を使用できる。
上記水系塗料から、上記特定した範囲の可視光透過率及びヘーズを有する乾燥膜厚400μmの塗膜を形成するためには、顔料の含有量を調整することが最も重要である。具体的には、上記水系塗料の塗膜形成成分中における顔料全体の含有量を0.01質量%〜10質量%に調整し且つ該塗膜形成成分中の着色顔料の含有量を0質量%〜0.5質量%に調整することで、上記特定した範囲の可視光透過率及びヘーズを有する乾燥膜厚400μmの塗膜を形成することが可能となる。
なお、本発明においては、上記水系塗料を130℃で30分間乾燥させた際に残存する成分を塗膜形成成分として取り扱う。上記水系塗料に占める塗膜形成成分の割合(R)(質量%)は、以下の式により求められる。
R=(塗膜形成成分の質量)×100/(塗料組成物の質量)
本発明において用いられる樹脂は、上述したように、エマルジョン樹脂及びディスパージョン樹脂が挙げられるが、更に、水溶性樹脂を含んでいてもよい。水溶性樹脂とは、水を必須成分として含み、必要に応じて水に溶解あるいは分散可能な有機溶剤を含む水性媒体中に溶解可能な樹脂であり、その具体例として、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、アクリルシリコーン樹脂、ウレタン樹脂、ふっ素樹脂等の水溶性樹脂が挙げられる。なお、塗装管理の面から、樹脂成分中に含まれるエマルジョン樹脂とディスパージョン樹脂の合計割合は70〜100質量%であることが好ましい。
上記水系塗料において、エマルジョン樹脂及びディスパージョン樹脂から選択される少なくとも一方の樹脂は、エポキシ樹脂、アクリル変性エポキシ樹脂、ウレタン変性エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、アクリル変性ウレタン樹脂、及びウレタン変性アクリル樹脂より選ばれる少なくとも1種類の樹脂を含むことが好ましい。エポキシ樹脂は、コンクリート構造物に対する付着性に優れるため、高度なコンクリート剥落防止性能を提供することができ、ウレタン樹脂やウレタン変性タイプの樹脂は耐候性、柔軟性に優れることから、塗装物を長期に保護することができる。
1.エポキシ樹脂
上記水系塗料に用いるエポキシ樹脂としては、1分子中に少なくとも2個のエポキシ基を有する樹脂であることが好ましく、例えば、多価アルコール又は多価フェノールとハロヒドリンとを反応させて得られるものであり、具体例としては、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ハロゲン化ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ノボラック型エポキシ樹脂、ポリグリコール型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、エポキシ化油、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル及びネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル等が挙げられる。これらの中でも、塗膜の耐久性やコンクリート構造物に対する付着性の観点から、ビスフェノールA型エポキシ樹脂及びビスフェノールF型エポキシ樹脂が好ましい。なお、これらエポキシ樹脂は、単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
また、上記エポキシ樹脂は、塗膜の仕上がり性や硬化性の観点から、通常、エポキシ当量は100〜1,000g/eqが好ましく、160〜980g/eqがより好ましく、160〜550g/eqが更に好ましい。エポキシ当量が100g/eq未満では、十分な塗膜物性が得られないおそれがあり、一方でエポキシ当量が1,000g/eqより大きい場合には、レベリング性が低下し、均一な塗膜が得られないおそれがある。
上記エポキシ樹脂は、エポキシ樹脂エマルジョンまたはディスパージョンの形態で配合されるのが好ましい。本発明において、エポキシ樹脂エマルジョン又はディスパージョンとは、エポキシ樹脂が水性媒体中で分散してなる乳濁液又は分散液を意味する。上記エポキシ樹脂エマルジョンは、特に制限されないが、通常の強制乳化方式(乳化剤及び高速攪拌機等を使用する方式)によって、水性媒体中でエポキシ樹脂を乳化させることにより調製される。ここで、乳化剤としては、例えば、ポリオキシエチレンアルキルフェノールエーテル系ノニオン界面活性剤、ポリオキシエチレン・ポリオキシプロピレンブロック共重合体等のポリエーテル類、或いは該ノニオン界面活性剤及び該ポリエーテル類の少なくとも一方とジイソシアネート化合物との付加物等が挙げられる。なお、これら乳化剤は、1種単独でも、2種以上のブレンドとして用いてもよい。また、エポキシ樹脂エマルジョンの市販品としては、例えば、エポルジョンEA1、2、3、7、12、20、55及びHD2(ヘンケルジャパン社製);ユカレジンKE−002、KE−116、E−1022、KE−301C(吉村油化学社製);アデカレジンEM−101−50(アデカ社製);jER−W3435R67、W1155R55(三菱化学社製)等が挙げられる。一方、エポキシ樹脂ディスパージョンの市販品としては、例えば、Beckpox EP2381(オルネクス社製);EPI−REZ6530−WH−53(モメンティブ社製)等が挙げられる。
2.アクリル変性エポキシ樹脂
上記水系塗料に使用できるアクリル変性エポキシ樹脂は、エポキシ樹脂(a1)、グリシジル基含有ラジカル重合性不飽和単量体(a2)及びアミン類(a3)を反応させてなる変性エポキシ樹脂(A1)の存在下に、アクリレート系単量体(A2)及びカルボキシル基含有ラジカル重合性不飽和単量体(A3)を必須成分とする不飽和単量体を重合反応させて得られるものを例示できる。
変性エポキシ樹脂(A1)の製造におけるエポキシ樹脂(a1)としては、例えばエピクロルヒドリンとビスフェノールとを、必要に応じてアルカリ触媒等の触媒の存在下に高分子量まで縮合させてなる樹脂や、エピクロルヒドリンとビスフェノールとを、必要に応じてアルカリ触媒等の触媒の存在下に、縮合させて低分子量のエポキシ樹脂とし、この低分子量のエポキシ樹脂とビスフェノール類とを重付加反応させることにより得られた樹脂が挙げられる。
上記ビスフェノール類としては、ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン[ビスフェノールF]、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン[ビスフェノールA]、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ブタン[ビスフェノールB]、ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1,1−イソブタン、ビス(4−ヒドロキシ−tert−ブチル−フェニル)−2,2−プロパン、p−(4−ヒドロキシフェニル)フェノール、オキシビス(4−ヒドロキシフェニル)、スルホニルビス(4−ヒドロキシフェニル)、4,4’−ジヒドロキシベンゾフェノン、ビス(2−ヒドロキシナフチル)メタン等を挙げることができ、なかでもビスフェノールA、ビスフェノールFが好適に使用される。上記ビスフェノール類は、1種で又は2種以上の混合物として使用することができる。
上記エポキシ樹脂(a1)の市販品としては、例えば三菱化学(株)製jER1007(エポキシ当量約1,700、数平均分子量(約2,900)、jER1009(エポキシ当量約3,500、数平均分子量約3,750)、jER1010(エポキシ当量約4,500、数平均分子量約5,500);旭化成イーマテリアルズ(株)製のアラルダイトAER6099(エポキシ当量約3,500、数平均分子量約3,800);及び三井化学(株)製のエポミックR−309(エポキシ当量約3,500、数平均分子量約3,800)などを挙げることができる。
本明細書において、数平均分子量及び重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーで測定したポリスチレン換算の数平均分子量及び重量平均分子量である。
エポキシ樹脂(a1)は、ビスフェノール型エポキシ樹脂であることが好ましく、ここで、数平均分子量は2,000〜35,000が好ましく、4,000〜30,000が更に好ましく、また、エポキシ当量は、1,000〜12,000が好ましく、3,000〜10,000が更に好ましい。
グリシジル基含有ラジカル重合性不飽和単量体(a2)は、例えば、グリシジル(メタ)アクリレート、β−メチルグリシジル(メタ)アクリレート、(メタ)アリルグリシジルエーテル等が挙げられる。
アミン類(a3)は、例えばモノメチルアミン、ジメチルアミン、モノエチルアミン、ジエチルアミン、モノイソプロピルアミン、ジイソプロピルアミン、モノブチルアミン、ジブチルアミン等のモノ−若しくはジ−アルキルアミン;モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、モノ(2−ヒドロキシプロピル)アミン、ジ(2−ヒドロキシプロピル)アミン、モノメチルアミノエタノール、モノエチルアミノエタノール等のアルカノールアミン;エチレンジアミン、プロピレンジアミン、ブチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、テトラエチレンペンタミン、ペンタエチレンヘキサミン、ジエチルアミノプロピルアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン等のアルキレンポリアミン;エチレンイミン、プロピレンイミン等のアルキレンイミン;ピペラジン、モルホリン、ピラジン等の環状アミン等が挙げられる。
また、変性エポキシ樹脂(A1)の製造には、必要に応じて、水分散性や防食性向上を目的として、1〜3価の有機酸、1〜4価のアルコール、イソシアネート化合物等を用いることができる。
上記1価〜3価の有機酸は、脂肪族、脂環族または芳香族の各種公知のカルボン酸が使用でき、例えばダイマー酸、トリメリット酸等があげられる。1価〜4価のアルコールとしては、脂肪族、脂環族または芳香族の各種公知のアルコールが使用でき、例えばネオペンチルグリコール、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール等があげられる。イソシアネート化合物としては、芳香族、脂肪族または脂環族の各種公知のポリイソシアネートが使用でき、例えばトリレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、4,4'−ジフェニルメタンジイソシアネート等が挙げられる。これらの1価〜3価の有機酸、1価〜4価のアルコール、イソシアネート化合物等は、本発明の効果を損なわない範囲で必要に応じて使用できる。
変性エポキシ樹脂(A1)の製造は、有機溶剤の存在下に、前述の各成分を加熱することにより容易に製造できる。反応温度、反応時間は、通常60〜200℃、好ましくは90〜150℃の温度で、1〜10時間、好ましくは1〜5時間行うことができる。
ここで、上記有機溶剤としては、例えばメチルアルコール、エチルアルコール、n−ブチルアルコール、イソプロピルアルコール、2−エチルヘキサノール、ベンジルアルコール、エチレングリコール、プロピレングリコール等のアルコール系溶剤、;エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノヘキシルエーテル、エチレングリコールモノ2−エチルヘキシルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノフェニルエーテル、3−メチル−3−メトキシブタノール、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル等のエーテル系溶剤;アセトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、イソホロン、アセチルアセトン等のケトン系溶剤;エチレングルコールモノエチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート等のエステル系溶剤;これらの混合物が挙げられる。
上記のようにして得られた変性エポキシ樹脂(A1)の存在下に、アクリレート系単量体(A2)及びカルボキシル基含有ラジカル重合性不飽和単量体(A3)並びに必要に応じて、その他の重合性不飽和単量体(A4)を重合させることにより、アクリル変性エポキシ樹脂を製造することができる。
アクリレート系単量体(A2)は、アクリロイルオキシ基(CH2=CHCOO−)又はメタクリロイルオキシ基(CH2=C(CH3)COO−)を1つ以上有するモノマーであり、具体的には、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n−プロピル、アクリル酸イソプロピル、アクリル酸n−,i−又はt−ブチル、アクリル酸ヘキシル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸n−オクチル、アクリル酸デシル、アクリル酸ラウリル、アクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸n−プロピル、メタクリル酸イソプロピル、メタクリル酸n−,i−又はt−ブチル、メタクリル酸ヘキシル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸オクチル、メタクリル酸デシル、メタクリル酸ラウリル、メタクリル酸シクロヘキシル等のアクリル酸又はメタクリル酸の炭素数1〜18のアルキルエステル又はシクロアルキルエステル;2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、3−ヒドロキシプロピルアクリレート、ヒドロキシブチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、2−ヒドロキシプロピルメタクリレート、3−ヒドロキシプロピルメタクリレート、ヒドロキシブチルメタクリレート等のアクリル酸又はメタクリル酸のC〜Cヒドロキシアルキルエステル等の単量体が挙げられ、これらは単独若しくは2種以上組み合わせて使用することができる。
カルボキシル基含有ラジカル重合性不飽和単量体(A3)は、得られたアクリル変性エポキシ樹脂の水性化(水分散又は溶解)のために使用されるが、具体的には、(メタ)アクリル酸、マレイン酸、クロトン酸、イタコン酸、フマル酸等の単量体が挙げられ、これらは単独若しくは2種以上組み合わせて使用することができる。
その他の重合性不飽和単量体(A4)は、上記カルボキシル基含有重合性不飽和単量体と共重合可能な単量体であればよく、求められる性能に応じて適宜選択して使用することができるものであり、例えば、スチレン、ビニルトルエン、2−メチルスチレン、t−ブチルスチレン、クロルスチレン等の芳香族系ビニル単量体;N−メチロールアクリルアミド、N−ブトキシメチルアクリルアミド、N−メトキシメチルアクリルアミド、N−メチロールメタクリルアミド、N−ブトキシメチルメタクリルアミド等のN−置換アクリルアミド系又はN−置換メタクリルアミド系モノマー等の1種又は2種以上の混合物を挙げることができる。
ここで、変性エポキシ樹脂(A1)とアクリレート系単量体(A2)及びカルボキシル基含有ラジカル重合性不飽和単量体(A3)並びに必要に応じて配合されるその他の重合性不飽和単量体(A4)との共重合反応には、例えば、ベンゾイルパーオキサイド、tert−ブチルパーオクトエイト、2,2−アゾビスイソブチロニトリル、2,2−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)等の公知各種の有機過酸化物やアゾ化合物を用いることができる。
また、当該共重合反応に際しては、重合様式には限定されないが、溶液重合法が好ましい。例えば、上述のような重合開始剤の存在下で60〜150℃の反応温度で重合できる。有機溶剤については、変性エポキシ樹脂(A1)の製造において用いたのと同様のものを使用できる。
なお、アクリル変性エポキシ樹脂の市販品としては、モデピクス301、モデピクス302、モデピクス303、KA−1828(以上、荒川化学株式会社製)等が挙げられる。
3.ウレタン変性エポキシ樹脂
上記水系塗料に使用できるウレタン変性エポキシ樹脂としては、ウレタン結合(−NHCOO−)を有する化合物とエポキシ樹脂との反応により合成できる。例えば、エチレングリコール等のアルキレングリコールと、トリレンジイソシアネート等の多価イソシアネート化合物を反応させて、イソシアネート残基を末端に有するウレタン化合物を得、これに、ポリオキシプロピレンアミン等のポリオキシアルキレン基を有するアミンを反応させて、末端にポリオキシアルキレンアミノ基を有するウレタン化合物を得、これをエポキシ樹脂と反応させることにより得られるウレタン変性エポキシ樹脂を例示できる。
4.ウレタン樹脂
上記水系塗料に使用できるウレタン樹脂としては、ポリイソシアネート、ポリオール及び鎖伸長剤を反応させて得られるウレタン樹脂を例示できるが、ポリイソシアネート、ポリカーボネートポリオール及び鎖伸長剤を反応させて得られるウレタン樹脂が好ましい。
ポリイソシアネート成分は、その化合物中に少なくとも2個のイソシアネート基を有する化合物であり、例えば、トリレンジイソシアネート、キシレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、ナフチレンジイソシアネート、1,3−ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン、テトラメチルキシレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート及びノルボルナンジイソシアネート等からなるポリイソシアネート化合物が挙げられる。これらのポリイソシアネート成分中、好ましくは、キシレンジイソシアネート、1,3−ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、4,4’−メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)又はノルボルナンジイソシアネートである。これらのポリイソシアネート成分は、1種を単独で使用することもでき、あるいは2種以上を組み合わせて使用することもできる。
ポリオール成分は、その化合物中に少なくとも2個の水酸基を有する化合物であり、例えば、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、アクリルポリオール、ポリカーボネートポリオール等が挙げられる。
ポリエステルポリオールとしては、特に制限はなく、例えば、ポリエチレンアジペート、ポリエチレンプロピレンアジペート、ポリブチレンアジペート、ポリヘキサメチレンアジペート、ポリジエチレンアジペート、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンイソフタレート、ポリヘキサメチレンイソフタレート、ポリエチレンサクシネート、ポリブチレンサク2シネート、ポリエチレンセバケート、ポリブチレンセバケート、ポリ−ε−カプロラクタムジオール及びポリ(3−メチル−1,5−ペンチレンアジペート)等を挙げることができる。
ポリエーテルポリオールとしては、特に制限はなく、例えば、ポリオキシテトラメチレングリコール、ポリオキシプロピレングリコール、ポリオキシエチレングリコール及びポリオキシエチレン・プロピレングリコール等を挙げることができる。
アクリルポリオールとしては、特に制限はなく、例えば、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸3−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸4−ヒドロキシブチル及びこれらのε−カプロラクトン付加物等のアクリル系単量体を必須成分とするアクリル系重合体を挙げることができる。
ポリカーボネートポリオールは、特に制限はなく、例えば、1,6−ヘキサンジオールポリカーボネートポリオール、1,4−ブタンジオールポリカーボネートポリオール及びポリ−1,4−シクロヘキサンジメチレンカーボネートジオール等を挙げることができる。
これらのポリオール成分は、1種を単独で使用することもでき、また2種以上を組み合わせて使用することもできる。
鎖伸長剤としては、例えば、低分子量の多価アルコール及び低分子量のポリアミンを挙げることができる。低分子量の多価アルコールとしては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、ジメチロールブタン酸及びジメチロールプロピオン酸等のジメチロールアルカン酸類等が挙げられる。低分子量のポリアミンとしては、例えば、エチレンジアミン、トリメチレンジアミン、テトラメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ヒドラジン、ピペラジン、イソホロンジアミン、ノルボルナンジアミン、ジアミノジフェニルメタン、ジアミノシクロヘキシルメタン、トリレンジアミン、キシレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン及びイミノビスプロピルアミン等が挙げられる。これらの鎖伸長剤は、1種を単独で使用することもでき、また2種以上を組み合わせて使用することもできる。
5.アクリル変性ウレタン樹脂
上記水系塗料に使用できるアクリル変性ウレタン樹脂とは、例えば、ウレタン樹脂がアクリル系重合体によって変性された樹脂であって、(a)2価以上の多官能ポリオール、(b)イオン基を形成する化合物、(c)少なくとも1つの官能基がイソシアネート基に対して反応可能なアクリルモノマー、(d)イソシアネート基に対して非反応性のアクリルモノマー、(e)ジイソシアネート、(f)鎖延長剤からなり、ウレタン重合体とアクリル重合体が化学的に結合した重合体であり、特開2006−104315号公報や特開2002−138128号公報に記載の樹脂等を例示できる。
6.ウレタン変性アクリル樹脂
上記水系塗料に使用できるウレタン変性アクリル樹脂としては、水酸基含有アクリル樹脂と低分子ポリオールとポリイソシアネートを反応させて得られるウレタン変性アクリル樹脂を例示できる。なお、水酸基含有アクリル樹脂(アクリルポリオール樹脂とも称される)は、市販品を好適に使用できるが、例えばアクリル樹脂の合成の際に、水酸基含有モノマーを用いることで容易に得られる。また、ポリイソシアネートとしては、例えば、脂肪族、芳香族又は芳香脂肪族のポリイソシアネートが含まれ、具体例としては、トリレンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、4,4’−メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)、メチルシクロヘキサンジイソシアネート、ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン、イソホロンジイソシアネート、ダイマー酸ジイソシアネート、リジンジイソシアネート等の他、これらポリイソシアネートの変性体が挙げられる。変性体の具体例としては、ビウレット変性体、イソシアヌレート変性体、アダクト変性体(例えばトリメチロールプロパン付加物)、アロファネート変性体、ウレトジオン変性体等が挙げられる。
上記水系塗料は、2液反応硬化型塗料であることが好ましい。本発明における2液反応硬化型塗料とは、塗装時にエポキシ樹脂等の樹脂(通常、既にエマルジョン又はディスパージョン形態で存在する)を含む主剤と硬化剤とを混合することで使用されるものであり、常温乾燥型の塗料として容易に使用可能である。このため、既に建設されたコンクリート構造物への塗装までを考慮すると、2液反応硬化型塗料は好適である。なお、ここでいう「常温」とは5〜35℃である。
上記硬化剤は、エポキシ樹脂の硬化剤である場合、アミン化合物が好ましく、1分子中に2個以上のアミノ基を含有し、分子量120以上のポリアミン化合物が更に好ましい。上記ポリアミン化合物としては、例えば、エチレンジアミン、トリメチレンジアミン、テトラメチレンジアミン、ペンタメチレンジアミン、トリアミノプロパン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、イソホロンジアミン、及び1,3−ビスアミノメチルシクロヘキサン等の脂肪族ポリアミン;フェニレンジアミン、メタキシリレンジアミン、パラキシリレンジアミン、及びジアミノジフエニルメタン等の芳香族ポリアミン;ポリオキシエチレンジアミン、ポリオキシプロピレンジアミン、トリエチレングリコールジアミン、及びトリプロピレングリコールジアミン等の他のポリアミン化合物と、これらポリアミン化合物のアミノ基を変性してなる変性ポリアミン化合物とが挙げられる。なお、上記ポリアミン化合物の変性には、既知の方法が利用でき、変性反応の例としては、アミノ基のアミド化、アミノ基とカルボニル化合物のマンニッヒ反応、アミノ基とエポキシ基の付加反応等が挙げられる。ここで、アミノ基にエポキシ基等が付加したタイプの変性ポリアミン化合物をアダクトタイプの変性ポリアミン化合物といい、アミノ基にエポキシ基が付加したエポキシアダクトタイプの変性ポリアミン化合物が好ましい。なお、これらアミン化合物は、単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
上記アミン化合物は、アミン化合物のエマルジョン、アミン化合物のディスパージョン又はアミン化合物の水溶液の形態で使用してもよいが、アミン化合物それ自体を直接使用することも可能である。なお、本発明において、アミン化合物のエマルジョンとは、アミン化合物が、水を必須成分として含み、必要に応じて水に溶解あるいは分散可能な有機溶剤を含む水性媒体中で分散してなる乳濁液を意味し、アミン化合物のディスパージョンとは、アミン化合物が、水を必須成分として含み、必要に応じて水に溶解あるいは分散可能な有機溶剤を含む水性媒体中で分散してなる分散液を意味する。なお、上記アミン化合物としては、市販品を好適に使用できる。
上記水系塗料がエポキシ樹脂用の硬化剤としてアミン化合物を含む場合、該硬化剤の配合割合は、塗膜の硬化性の観点から、エポキシ樹脂のエポキシ基1当量に対して、アミン化合物の活性水素が、0.5〜3.0当量であることが好ましく、0.6〜1.5当量であることが更に好ましい。
上記水系塗料に使用できる好適な硬化剤としては、上述したようなイソシアネート化合物も例示できる。
なお、上記水系塗料中において、樹脂と硬化剤の合計含有量は、10〜80質量%であることが好ましく、30〜50質量%であることが更に好ましい。
上記水系塗料は、上述した可視光透過率及びヘーズの範囲を満たす限り、着色顔料や体質顔料等の各種顔料を含むことができる。上記水系塗料は、塗膜形成成分中の顔料全体の含有量が0.01質量%〜10質量%であり、0.1質量%〜5質量%であることが好ましく、0.5〜3質量%であることがより好ましい。なお、顔料は、単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
上記水系塗料は、塗膜形成成分中の着色顔料の含有量が0質量%〜0.5質量%であり、0質量%〜0.1質量%であることが好ましい。着色顔料としては、例えば、酸化チタン及びカーボンブラック等が好適に挙げられる。
上記水系塗料は、塗膜形成成分中の体質顔料の含有量が0.1質量%〜10質量%であることが好ましく、0.3質量%〜8質量%であることがより好ましく、0.5質量%〜5質量%であることが更に好ましい。体質顔料を配合することで、塗膜のヘーズをより確実に低下させることができるとともに、塗料をたれずに厚みをつけて塗装することができる。また、体質顔料としては、例えば、炭酸カルシウム、シリカ、アルミナ、水和アルミナ、マグネシア、タルク、クレー、硫酸バリウム、炭酸バリウム、ウォラストナイト、セラミック粉末、ガラス繊維粉末、ホワイトカーボン、珪酸マグネシウム等が挙げられ、これらの中でも、ホワイトカーボン、炭酸カルシウム、シリカ、硫酸バリウムが好ましく、特に、水中での分散安定性やヘーズの低減効果の観点から、ホワイトカーボンが好ましい。
上記水系塗料において、塗膜形成成分中のホワイトカーボンの含有量は0.1質量%〜5質量%であることが好ましく、0.5質量%〜3質量%であることがより好ましい。塗膜形成成分中のホワイトカーボンの含有量が5質量%を超えると、可視光透過率、ヘーズ、光沢が低下したり、レベリング性が低下して均一な塗膜が得られないおそれがある。
上記水性塗料に用いる顔料は、50%体積平均径が1μm以下であることが好ましく、0.003〜0.5μmであることがより好ましく、0.003〜0.1μmであることが更に好ましい。顔料の50%体積平均径が1μm以下であれば、塗膜のヘーズをより確実に低下させることができる。本発明において、50%体積平均径は、体積基準粒度分布の50%粒子径(D50)を指し、粒度分布測定装置(例えばレーザ回折/散乱式粒度分布測定装置)を用いて測定される粒度分布から求めることができる。そして、本発明における粒子径は、レーザ回折・散乱法による球相当径で表される。
上記水系塗料は、上記特定した範囲の可視光透過率及びヘーズを有する乾燥膜厚400μmの塗膜をより確実に形成させる観点から、液状増粘剤を含むことが好ましい。なお、本発明において、液状の増粘剤とは、5〜35℃において液体である増粘剤を指す。液状増粘剤は、ポリアクリル酸系粘性調整剤やポリウレタン系粘性調整剤が好ましい。ポリアクリル酸系粘性調整剤としては、アクリル酸又はそのエステル、アミド及びニトリル等から選択されるアクリル成分の1種又は複数種を重合させて得られる重合体のアミン塩、アマイド塩又はナトリウム塩であり、分子内に複数のカルボキシル基又はその塩を有する。ポリアクリル酸系粘性調整剤の例としては、チクゾールK−130B(共栄社、ポリアクリル酸脂肪族ポリアマイドの水分散液)、等が挙げられる。ポリウレタン系粘性調整剤としては、水酸基とイソシアネート基の反応から形成されるウレタン部位と親水性部位を分子内に有する化合物や、アミノ基とイソシアネート基の反応から形成されるウレア部位と親水性部位を分子内に有する化合物、又はウレタン部位、ウレア部位及び親水性部位を分子内に有する化合物が挙げられる。ポリウレタン系粘性調整剤としては、例えば、BYK−7420ES(BYK、ウレアウレタン溶液)等が挙げられる。
上記水系塗料には、その他の成分として、防錆剤、分散剤、消泡剤、レベリング剤、沈降防止剤、ダレ止め剤、硬化促進剤、防藻剤、防カビ剤、防腐剤、紫外線吸収剤、光安定剤等を必要に応じて適宜配合してもよい。なお、添加剤には有機溶剤が使用されている場合もあるが、本発明に使用される水系塗料中においては、環境への負荷を抑える観点から、有機溶剤の含有量が10質量%未満であることが好ましい。
本発明のコンクリート剥落防止工法において、上記水系塗料は、塗膜形成成分の割合が25〜80質量%であることが好ましく、35〜80質量%であることが更に好ましい。塗膜形成成分の割合が35質量%以上であれば、環境負荷が小さいだけでなく、厚膜塗装性に優れるという効果も得られる。なお、本発明において、塗膜形成成分とは、塗膜を形成するための塗料中に含まれる成分を意味し、樹脂の他、必要に応じて配合される顔料、添加剤等が挙げられる。
上記水系塗料は、必要に応じて適宜選択される各種成分を混合することによって調製できる。2液反応硬化型塗料の場合、樹脂を含む主剤と硬化剤は分けて保存されており、塗装直前にこれらを混合して調製される。主剤は、樹脂や水の他、必要に応じて適宜選択される各種成分と組み合わせて保存されており、既にエマルション形態またはディスパージョン形態であることが好ましい。また、硬化剤も、通常、水や必要に応じて適宜選択される各種成分と組み合わせて保存されており、これを硬化剤配合物と称する。上記水系塗料の粘度を調整するため、上記主剤と、硬化剤又は硬化剤配合物とを混合した後に、水を更に加えてもよい。
上記水系塗料は、ずり速度0.1(1/s)における粘度が1〜1000(Pa・s、23℃)であり、ずり速度1000(1/s)における粘度が0.05〜10(Pa・s、23℃)であることが好ましい。上述の特定した範囲内に粘度を調整することにより、塗装作業性を向上させることができる。それぞれのせん断速度での粘度が上記の範囲内にあることで、塗装作業性、タレ性に優れるため、膜厚の均一な塗膜を容易に形成することが可能となる。なお、本発明において、粘度は、TAインスツルメンツ社製レオメーターARESを用い、液温を23℃に調整した後に測定される。
本発明のコンクリート剥落防止工法においては、水系下塗り塗料及び水系上塗り塗料としての上記した水系塗料の塗装により下塗り塗膜及び上塗り塗膜を形成することになるが、塗装方法は、特に限定されず、既知の塗装手段、例えば、刷毛塗装、ローラー塗装、コテ塗装、ヘラ塗装、エアースプレー塗装、エアレススプレー塗装等が利用できるが、既に建設されたコンクリート構造物への塗装までを考慮すると、刷毛塗装、ローラー塗装、コテ塗装及びヘラ塗装が好適である。
本発明のコンクリート剥落防止工法において、コンクリート構造物は、コンクリートを単体で利用した構造物や鉄筋コンクリートを利用した構造物であり、その具体例としては、高架橋、橋梁、橋脚、橋台、桁、床版、高欄、ドルフィン、トンネル、道路、導水路、貯蔵槽、壁、屋根、バルコニー等の各種コンクリート構造物やその部材等が挙げられる。
本発明のコンクリート剥落防止工法においては、まず、水系下塗り塗料でコンクリート構造物の表面を塗装し、下塗り塗膜を形成させる(第1の工程)。上記第1の工程によって得られる下塗り塗膜は、その乾燥膜厚が50〜1000μmであることが好ましい。本発明において、塗膜の乾燥膜厚とは、最終的に形成される塗膜の厚さを指すが、具体的には23℃、50%相対湿度の条件にて24時間乾燥した後の膜厚を例示することができる。なお、上記コンクリート構造物は、下塗り塗料による塗装を行う前に、その表面をプライマーやパテ材で塗装される場合もある。この場合、水系下塗り塗料及び水系上塗り塗料をエポキシ樹脂系塗料とし、プライマーやパテ材にもエポキシ樹脂系のものを使用することで施工期間を短縮することができる。
本発明のコンクリート剥落防止工法においては、次に、上記第1の工程により形成された下塗り塗膜上に繊維シートを配置させる(第2の工程)。ここで、繊維シートは、上記下塗り塗料の乾燥や硬化が完了する前に塗膜上に置くことが好ましい。これにより、繊維シートを下塗り塗膜上へ容易に貼り付けることができる。
上記繊維シートとしては、通常のコンクリート剥落防止工法に使用される繊維シートが使用できる。繊維シートの形状は、特に制限されないが、例えば格子状であり、この場合、繊維シートの厚さは0.1〜3mmであることが好ましく、目合いは一辺が0.1〜20mmであることが好ましい。剥落防止性能においてシートの引張強度は、150(N/5cm)以上が好ましい。上記繊維シートとしては、例えば、ガラス繊維、ポリエステル繊維、ビニロン繊維、ポリアミド繊維、ポリエチレン繊維、ポリパラフェニレン繊維、ポリアリレート繊維、アラミド繊維、炭素繊維等の繊維で構成されるシートが挙げられるが、例えば基材の可視性を求める場合にはガラス繊維、ポリエステル繊維、ナイロン繊維、ポリエチレン繊維等の繊維で構成されるシートが特に好ましい。
本発明のコンクリート剥落防止工法においては、次に、下塗り塗膜及び繊維シートを覆うように水系上塗り塗料による塗装を行い、上塗り塗膜を形成させる(第3の工程)。上記下塗り塗料の乾燥や硬化が完了する前に、繊維シートの貼り付けと、上塗り塗料の塗装までを終わらせることで、施工期間を大幅に短縮することができる。上記第3の工程によって得られる上塗り塗膜は、その乾燥膜厚が50〜1000μmであることが好ましい。本発明において、塗膜の乾燥膜厚とは、最終的に形成される塗膜の厚さを指すが、具体的には23℃、50%相対湿度の条件にて24時間乾燥した後の膜厚を例示することができる。
本発明のコンクリート剥落防止工法において、上記積層体は、100〜2000μmの範囲内であることが好ましいが、上記特定した範囲の可視光透過率及びヘーズを達成する観点から、その厚さが100〜400μmの範囲内であることが好ましい。
以下に、実施例を挙げて本発明を更に詳しく説明するが、本発明は下記の実施例に何ら限定されるものではない。
表1〜3に示す配合処方に従い、主剤1〜20及び硬化剤配合物1〜5を調製した。
Figure 0006859211
Figure 0006859211
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(注1)Beckpox EP2381(オルネクス社製ビスフェノールA型エポキシ樹脂エマルジョン、塗膜形成成分55質量%、エポキシ当量500g/eq(塗膜形成成分))
(注2)エポルジョンEA55(日本NSC社製ビスフェノールA型エポキシ樹脂エマルジョン、塗膜形成成分55質量%、エポキシ当量495g/eq(塗膜形成成分))
(注3)jER W3435R67(三菱化学社製ビスフェノールA型エポキシ樹脂ディスパージョン、塗膜形成成分67質量%、エポキシ当量273g/eq(塗膜形成成分))
(注4)バーノック WE−301(DIC社製アクリルポリオール樹脂エマルジョン、塗膜形成成分45質量%、水酸基価80g/eq(塗膜形成成分))
(注5)ユーコートUX−485(三洋化成社製ウレタン樹脂エマルジョン、塗膜形成成分40質量%)
(注6)AEROSIL R972(日本アエロジル社製ホワイトカーボン、平均粒子径0.016μm)
(注7)サイリシア350(フジシリシア社製ホワイトカーボン、平均粒子径3.9μm)
(注8)レオロシールQS−20(株式会社トクヤマ社製ホワイトカーボン、平均粒子径0.012μm)
(注9)MC−K(丸尾カルシウム社製炭酸カルシウム、平均粒子径0.05μm)
(注10)タイペークCR−90(石原産業社製二酸化チタン、平均粒子径0.25μm)
(注11)チクゾールK−130B(共栄社化学製液状増粘剤、塗膜形成成分21質量%)
(注12)フジキュアーFXS−918−FA(T&K TOKA社製、アミノ基にエポキシ基が付加したエポキシアダクトタイプの変性ポリアミン化合物の水分散液、塗膜形成成分60質量%)
(注13)EK8545−W52(モメンティブ社製、ポリアミンのアミノ基をアミド化して得られる変性ポリアミドアミンの水分散液、塗膜形成成分52質量%)
(注14)DNW−6000(DIC社製、無溶剤型ポリイソシアネート、塗膜形成成分100質量%)
(実施例1〜21及び比較例1〜4)
表4〜6に示す配合処方に従う塗料を下塗り塗料として用意し、各種試験を行った。結果を表4〜6に示す。なお、実施例15は一液形ウレタン樹脂エマルジョンのため、主剤19を塗料として単独で用いた。また、上塗り塗料を用いる場合は、実施例19〜20を除き、下塗り塗料と同一の塗料を上塗り塗料として用いた。実施例19の上塗り塗料は主剤19、実施例20の上塗り塗料はDNTビューウレタンクリヤー(大日本塗料社製、1液反応型水系ウレタン樹脂塗料、クリヤー塗料)であり、下塗り塗料と異なる塗料であるため、上塗り塗料による塗装は、繊維シートを配置してから下塗り塗膜を24時間養生した後に行った。
<塗装作業性>
コンクリート基材の水平な表面を塗料で塗装し、下記の基準に従って塗装作業性を評価した。なお、塗装作業性は、刷毛とローラーの両方の場合で評価した。
◎:300μm以上の均一な塗膜を1回の塗装で容易に形成できる。
○:100μm以上であるが300μm未満の均一な塗膜を1回の塗装で容易に形成できる。
×1:塗装ムラが大きく、均一な塗膜を形成できない。
<タレ限界>
刷毛により塗料でポリプロピレン板(厚み150mm、幅70mm)の垂直面を塗装し、タレが生じた時点で塗装を完了した。その後、塗膜を温度23℃相対湿度50%で168時間乾燥させ、ポリプロピレン板の上端から20mm下方に位置する塗膜の厚みをタレ限界として評価した。なお、膜厚は、塗膜をポリプロピレン板から剥がし、ノギスを用いて測定した。
<可視光透過率>
ガラス板に、実施例1〜21および比較例1〜4の塗料で刷毛塗装を行い、温度23℃、相対湿度50%で24時間乾燥させて、乾燥膜厚400μmの塗膜を備える試験板を作製した。得られた塗膜の全光線透過率をJIS R3106:1998「板ガラス類の透過率・反射率・放射率・日射熱取得率の試験方法」に基づき、紫外可視近赤外分光光度計「MPC3100UV−3100PC(株式会社島津製作所製)」を使用して測定した。360nm〜750nmまで10nm置きに全光線透過率を測定し、得られた40データの合計を、データ数で割った値を可視光透過率とした。
<ヘーズ>
上記可視光透過率試験にて得られた試験板を用いて、JIS K 7136:2000に基づき、ヘーズを測定した。測定には、日本電色工業株式会社製HAZE METER NDH5000を使用した。
<基材可視性>
コンクリート基材上に、油性マジックを用いて横5cm、縦5cmの大きさで「視」の文字を形成し、乾燥した試験板に、実施例1〜21、比較例1〜4に記載の下塗り塗料を刷毛で塗装し、乾燥膜厚が100μmとなるように下塗り塗膜を形成した。次に、繊維シートを配置させた後、実施例1〜21、比較例1〜4に記載の上塗り塗料を刷毛で塗装し、上塗り塗膜を形成した。得られた積層体を温度23℃相対湿度50%で168時間乾燥させた後、試験片を暗所に配置し、コンクリート基材の表面に1M離れた距離からライトを照射して目視で観察し、以下の基準で基材可視性を評価した。
なお、繊維シートは、実施例1〜19、21及び比較例1〜4が、ガラスクレネット G44126[倉敷紡績株式会社製、引張強度((N/5cm(糸本数、縦:20本、横:15本))、縦:480、横:420、厚み:0.20(mm)]であり、実施例20がポリエステルクレネット E4500[倉敷紡績株式会社製、引張強度((N/5cm)(糸本数、縦:5本、横:5本))、縦:800、横:860、厚み:0.26(mm)]である。
◎:基材上の文字を鮮明に確認できる。
〇:鮮明ではないものの基材上の文字を確認することが出来る。
×:基材上の文字を確認することが出来ない。
<剥落防止性能>
刷毛により、膜厚が100μmとなるように、塗料でコンクリート基材を塗装して下塗り塗膜を形成させ、次いで表4〜6に示す繊維シートを配置させ、次いで、刷毛により、膜厚が100μmとなるように、塗料で下塗り塗膜及び繊維シートを塗装して上塗り塗膜を形成させ、その後、得られた積層体を温度23℃相対湿度50%で168時間乾燥させた。
なお、コンクリート基材としては、JIS A 5372:2004(プレキャスト鉄筋コンクリート製品)に規定するU形ふた、呼び名1種(400×600×60mm)を用いた。次いで、積層体を備えるコンクリート基材に対して、「首都高速道路株式会社 橋梁構造物設計要領 コンクリート片剥落防止編 平成18年8月版」に準拠して剥落防止性能試験を行い、下記基準に従い評価した。
・耐荷性
◎:φ10cmあたりの押抜き荷重0.5kN以上。
〇:φ10cmあたりの押抜き荷重0.3kN以上〜0.5kN未満。
×:φ10cmあたりの押抜き荷重0.3kN未満。
<付着性試験>
コンクリート基材の種類及び積層体の乾燥条件以外は、<剥落防止性能>と同様に、積層体を形成させた。コンクリート基材としては、寸法20×70×70mmのモルタル片を用いた。乾燥条件としては、23℃及び5℃の恒温室(湿度50%RH)にて、それぞれ7日間、30日間養生を行った。次いで、積層体を備えるコンクリート基材に対して、建研式付着力試験機を用いた剥離試験を行い、剥離時の数値を下記基準により評価した。
〇:1.5N/mm以上。
△:1.0N/mm以上1.5N/mm未満。
×:1.0N/mm未満。
<耐久性(耐候性)試験>
刷毛により、膜厚が100μmとなるように、塗料でコンクリート基材を塗装して下塗り塗膜を形成させ、次いで表4〜6に示す繊維シートを配置させ、次いで、刷毛により、膜厚が100μmとなるように、塗料で下塗り塗膜及び繊維シートを塗装して上塗り塗膜を形成させた。その後、得られた積層体を温度23℃相対湿度50%で168時間乾燥させ、試験板を作製した。得られた試験板に、岩崎電気社製EYE SUPER UV TESTER SUV−W23を用いて400時間の照射試験を行った。照射後の試験板に対して、積層体の上からコンクリート基材を目視で観察し、下記基準により評価を行った。
◎:基材表面を鮮明に確認できる。
〇:鮮明ではないものの基材表面を確認することが出来る。
×:基材表面を確認することが出来ない。
Figure 0006859211
Figure 0006859211
Figure 0006859211
(注15)ガラスクレネット G44126[倉敷紡績株式会社製、厚さ:0.20(mm)、目合い:2.5(mm)、引張強度((縦:480、横:420(N/5cm)(糸本数、縦:20本、横:15本))]
(注16)ポリエステルクレネット E4500[倉敷紡績株式会社製、厚さ:0.26(mm)、目合い:2(mm)、引張強度((縦:800、横:860(N/5cm)(糸本数、縦:5本、横:5本))]である。

Claims (9)

  1. コンクリート構造物の表面に、下塗り塗膜、繊維シート及び上塗り塗膜を備える積層体を形成させて、コンクリート構造物からのコンクリートの剥落を防止する方法であって、
    水系下塗り塗料でコンクリート構造物の表面を塗装し、下塗り塗膜を形成させる第1の工程と、
    下塗り塗膜上に繊維シートを配置させる第2の工程と、
    下塗り塗膜及び繊維シートを覆うように水系上塗り塗料による塗装を行い、上塗り塗膜を形成させる第3の工程とを含み、
    前記水系下塗り塗料及び前記水系上塗り塗料が、エマルジョン樹脂及びディスパージョン樹脂から選択される少なくとも一方の樹脂を含む水系塗料であり、
    前記水系塗料は、塗膜形成成分中の顔料全体の含有量が0.01質量%〜10質量%であり且つ塗膜形成成分中の着色顔料の含有量が0質量%〜0.5質量%であり、
    前記水系塗料は、乾燥膜厚400μmの塗膜を形成させた際の波長360〜750nmの可視光透過率が50%以上であり且つヘーズが70以下であることを特徴とする方法。
  2. 前記水系塗料は、塗膜形成成分の含有量が35〜80質量%であることを特徴とする請求項1に記載の方法。
  3. 前記水系塗料は、体質顔料を含み、塗膜形成成分中の体質顔料の含有量が0.1質量%〜10質量%であることを特徴とする請求項1又は2に記載の方法。
  4. 前記水系塗料は、顔料を含み、該顔料の50%体積平均径が1μm以下であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法。
  5. 前記体質顔料はホワイトカーボンを含み、塗膜形成成分中のホワイトカーボンの含有量が0.1質量%〜5質量%であることを特徴とする請求項3に記載の方法。
  6. 前記水系塗料は、液状増粘剤を含むことを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の方法。
  7. 前記樹脂が、エポキシ樹脂、アクリル変性エポキシ樹脂、ウレタン変性エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、アクリル変性ウレタン樹脂、及びウレタン変性アクリル樹脂より選ばれる少なくとも1種類の樹脂を含むことを特徴とする請求項1〜6のいずれか一項に記載の方法。
  8. 前記積層体は、厚さが100〜400μmの範囲内であることを特徴とする請求項1〜7のいずれか一項に記載の方法。
  9. 請求項1〜8のいずれか一項に記載の方法に用いるための水系塗料組成物であって、
    エマルジョン樹脂及びディスパージョン樹脂から選択される少なくとも一方の樹脂を含み、塗膜形成成分中の顔料全体の含有量が0.01質量%〜10質量%であり且つ塗膜形成成分中の着色顔料の含有量が0質量%〜0.5質量%であり、
    乾燥膜厚400μmの塗膜を形成させた際の波長360〜750nmの可視光透過率が50%以上であり且つヘーズが70以下であることを特徴とする水系塗料組成物。
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