JP6288670B2 - 鋼材防食用下塗り材、鋼材の防食塗装方法及び防食鋼材 - Google Patents

鋼材防食用下塗り材、鋼材の防食塗装方法及び防食鋼材 Download PDF

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Description

本発明は鋼材防食用下塗り材、鋼材の防食塗装方法及び防食鋼材に関する。
今日多くの鋼材が、橋梁・道路フェンス・歩道橋等の公共設備、手摺り・バルコニー・フェンス・門扉などの住宅建築資材、タンク等などの工業設備、その他多くの分野で使用されている。しかし、鋼材は本質的に錆びるという性質を有する。
鋼材の錆びは、水分と空気中の酸素により引き起こされるが、工場排気ガスに由来する硫酸イオン、海塩粒子に由来する塩化物イオンにより促進される。また寒冷地の道路設備においては、冬季に散布される解氷剤(塩化カルシウム)によっても促進される。
このため、鋼材表面には通常防食塗装が施される。防食効果を高めるため多くの場合、下塗り塗装後、中塗り、上塗り等の多層塗工が施される。
防食塗材の一つとして、ポリマーセメント系塗料が知られている(例えば、特開昭60−243169号公報(以後、特許文献1))。ポリマーセメント系塗料は、水硬化性であり、かつ、ポリマーの選択によっては可撓性を持たせることが出来るため、鋼材の膨張、収縮に十分追従でき、そのためクラック等が発生しにくく、長期防食性に優れるとされるが、塗膜自体には塩化物イオンの捕捉機能が無いため、防食性能が十分でなかった。
一方、特開平05−043282号公報(以後、特許文献2)には、塩化物イオンの捕捉機能を有する化合物として、ハイドロカルマイト(とりわけ亜硝酸型ハイドロカルマイト)が記載されている。また、特開平11−92692号公報(以後、特許文献3)、特開2007−191385号公報(以後、特許文献4)、特許第3859731号公報(以後、特許文献5)には、塗料ビヒクルに上記ハイドロカルマイトを配合した防錆塗料組成物が開示されている。
特開2004−299979号公報(以後、特許文献6)には、セメント系下地調整材にハイドロカルマイトを含有させた鋼材用下地調整材が開示されている。より具体的にはセメントを含む水硬化性成分に、陰イオン吸着剤としてのハイドロカルマイト、およびポリマー混和剤として水性エポキシ樹脂等を配合した鋼材用の下地調整材が開示されている。
特許文献3〜5の防錆塗料組成物や、特許文献6の下地調整材は、その成分として、塩化物イオン捕捉機能を有するハイドロカルマイトを含んでいるため、従来の防食塗材よりも防食機能が高いものと期待された。
特開昭60−243169号公報 特開平05−043282号 特開平11−92692号公報 特開2007−191385号公報 特許第3859731号公報 特開2004−299979号公報
そこで、特許文献3〜5に記載の防錆塗料組成物につき、本発明者らがその性能を評価したところ、その防錆効果は未だ十分ではないことが判明した。この理由は定かではないが、特許文献3〜5に記載の防錆塗料組成物は、ハイドロカルマイトを有機系のポリマーを基体成分とする塗料ビヒクルに添加したものであるため、亜硝酸イオン/塩化物イオン/水酸化物イオンなどのイオンが移動しにくくなり、ハイドロカルマイトの機能が十分に発揮されないものと本発明者らは推定している。
また、特許文献6に記載の下地調整材につき、本発明者らがその後さらに詳細に評価検討した結果、鋼材の防食効果が未だ十分でないことが判明した。また当該下地調整材は粘度が高いため、塗装ムラが生じやすく、そのため防食効果を十分に確保するためには、過度の重ね塗りを要するという問題があることも判明した。
そこで本発明者らは、ハイドロカルマイトの塩化物イオン捕捉機能を最大限に活かした、防食性・塗装性に優れる鋼材防食用下塗り材、防食性に優れる鋼材の防食塗装方法及び防食性に優れる鋼材を完成することを課題として検討を進めた。
鋭意検討の結果、本発明者らは、
1.セメント系水硬化材(A)、細骨材(B)、亜硝酸型ハイドロカルマイト(C)、再乳化形粉末樹脂(D)及び増粘剤(E)を含む組成物が鋼材の防食効果に優れ、かつ、塗装性の良好な水硬化性下塗り材となること、上記水硬化性下塗り材がさらに消泡剤(F)及び流動性改良剤(G)を含む場合には防食効果及び塗装性の一層優れた下塗り材となること、また上記増粘剤(E)を粉末系増粘剤(E1)とし、上記消泡剤(F)を粉末系消泡剤(F1)とし、上記流動性改良剤(G)を粉末系流動性改良剤(G1)とすることで、防食性能がさらに高まり、その上水を加えるだけ塗装ができる粉末系の水硬化性下塗り材となること、
2.鋼材に防食塗装を施すに際して、上記の下塗り材の水硬化物にて下塗り層を形成させ、次いで弱溶剤エポキシ塗料を塗装して中塗り層を形成させる方法が鋼材に卓越した防食性能を付与できること、
3.鋼材表面に、上記の下塗り材の水硬化物よりなる下塗り層を形成させ、ついでその下塗り層に重ねて弱溶剤エポキシ樹脂塗料よりなる中塗り層を形成させ、さらにその中塗り層に重ねて、上塗り層を形成させてなる鋼材が卓越した防食鋼材となること、
を見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は下記(1)から(5)の態様に示す鋼材防食用下塗り材を提供するものである;
(1)セメント系水硬化材(A) 、細骨材(B)、亜硝酸型ハイドロカルマイト(C)、再乳化形粉末樹脂(D)及び増粘剤(E)を含む鋼材防食用下塗り材。
(2)再乳化形粉末樹脂(D)がアクリル酸エステル系再乳化形樹脂である上記(1)の鋼材防食用下塗り材。
(3)さらに、消泡剤(F)及び流動性改良剤(G)を含む上記(1)の鋼材防食用下塗り材。
(4)さらに、消泡剤(F)及び流動性改良剤(G)を含む上記(2)の鋼材防食用下塗り材。
(5)セメント系水硬化材(A)100質量部 、細骨材(B)50〜150質量部、亜硝酸型ハイドロカルマイト(C)10〜100質量部、再乳化形粉末樹脂(D)5〜30質量部、増粘剤(E)0.05質量部〜1質量部、消泡剤(F)0.05〜0.5質量部及び流動性改良剤(G)0.05〜0.7質量部からなる上記(3)又は(4)の鋼材防食用下塗り材。
また本発明は、上記(1)から(5)の鋼材防食用下塗り材のより好ましい態様として、その構成成分がすべて粉末であって、当該構成成分をあらかじめプレミックスして生成される下記(6)、(7)の鋼材防食用粉末系下塗り材を提供するものである。これらの鋼材防食用粉末系下塗り材は、単に水を加えるのみで水硬化するため、ハンドリング性、現場作業性に優れる下塗り材となる;
(6)上記(1)から(5)の態様において、増粘剤(E)として粉末系増粘剤(E1)、消泡剤(F)として粉末系消泡剤(F1)、流動性改良剤(G)として粉末系流動性改良剤(G1)を含む鋼材防食用粉末系下塗り材。
(7)上記粉末系増粘剤(E1)は、セルロース系増粘剤又はポリサッカライド系増粘剤である、上記(6)の鋼材防食用粉末系下塗り材。
(以下、上記(1)〜(7)の態様の鋼材防食用下塗り材を「本発明下塗り材」と称し、上記(6)、(7)の態様の鋼材防食用粉末系下塗り材を「本発明粉末系下塗り材」と称し、本発明下塗り材の水硬化物により形成される下塗り層を「本発明下塗り層」と称することがある。)
さらに本発明は、別の態様として、下記(8)に示す鋼材防食塗装方法を提供するものである;
(8)鋼材表面に順次、
(ア)下塗り層を形成させる工程と、
(イ)上記工程(ア)にて形成された下塗り層に重ねて中塗り層を形成させる工程と、
(ウ)上記工程(イ)にて形成された中塗り層に重ねて上塗り層を形成させる工程と、
を含む鋼材防食塗装方法であって、
上記工程(ア)は、鋼材表面に本発明下塗り材の水硬化層を形成させる工程であり、
上記工程(イ)は、上記工程(ア)にて形成された水硬化層に重ねて、弱溶剤エポキシ樹脂塗料の硬化層を形成させる工程である、
ことを特徴とする鋼材防食塗装方法。
さらに本発明は、別の態様として、下記(9)、(10)に示す防食鋼材を提供するものである;
(9)鋼材表面に、下塗り層、中塗り層、上塗り層が順次形成された防食鋼材であって、
a)上記下塗り層は、本発明下塗り材の水硬化物よりなり、
b)上記中塗り層は、弱溶剤系エポキシ樹脂塗料の硬化膜よりなる、
ことを特徴とする防食鋼材。
(10)下塗り層の厚さは50〜500μmであり、中塗り層の厚さは20〜200μmである、上記(9)に記載の防食鋼材。
(以下、上記(9)、(10)の防食鋼材を「本発明防食鋼材」と称することがある。)
以下、本発明について詳しく説明する。
<鋼材防食用下塗り材>
上記(1)〜(7)に示した本発明下塗り材は、セメント系水硬化材(A)、細骨材(B)、再乳化形粉末樹脂(C)、亜硝酸型ハイドロカルマイト(D)及び増粘剤(E)を必須成分として含む。本発明下塗り材は水と混和することにより、塗装性が良好で、鋼材との密着性に優れ、かつ防食性能の卓越した鋼材防食用水硬化性下塗り材となる。
本発明下塗り材は、上記(A)から(E)の成分のいずれを欠いてもその目的を達成することが出来ない。
以下、本発明下塗り材について、その構成成分毎に説明する。
(A)セメント系水硬化材
本発明下塗り材はセメント系水硬化材を必須成分として含む。
本発明にいうセメント系水硬化材とは、セメントを主成分とする水硬化性組成物をいい、本発明下塗り材に水硬化性を付与する。これにより、本発明下塗り材と水との混和物を鋼材に塗布することにより、その表面に強固な水硬化性塗膜を形成することができる。また、セメント系水硬化材は水和反応により水酸化カルシウムを生成し、結果アルカリ性を呈するため、鋼材の錆発生を抑制する。
本発明において、セメント系水硬化材は、コンクリート構造物におけるセメント成分とは異なり、単に水硬化するのみならず、下塗り材として、鋼板表面に高強度かつ均一の塗膜を形成するものがより好ましい。
したがって、本発明にいうセメント系水硬化材としては、
(A1)セメント単独のほか、
(A2)セメント及びポゾラン活性材、
(A3)セメント及び潜在水硬材、又は
(A4)セメント、ポゾラン活性材及び潜在水硬材
よりなるものを挙げることができる。
上記(A1)〜(A4)のセメント系水硬化材はいずれも鋼材表面に強固な水硬化性塗膜を形成し得るが、セメントの一部をポゾラン活性材で置換したもの(A2)、セメントの一部を潜在水硬材で置換したもの(A3)、セメントの一部をポゾラン活性材及び潜在水硬材で置換したもの(A4)は、セメント単独の場合よりも緻密な塗膜が形成されるため、防錆効果が更に高まり好ましい。
(A1)〜(A4)におけるセメントは、典型的にはポルトランドセメントであるがこれに制約されない。またポルトランドセメントの種類としては、普通ポルトランドセメントのほか、早強ポルトランドセメント、超早強ポルトランドセメント、中庸熱ポルトランドセメント、低熱ポルトランドセメント、耐硫酸塩ポルトランドセメントがあるが、本発明においてはこれらのいずれも使用することができる。以上のうち、早強ポルトランドセメント、超早強ポルトランドセメントを好適に使用することが出来る。
上記(A2)、(A4)にいうポゾラン活性材とは、二酸化ケイ素を主成分として含有する微粉状物質で、それ自身は水硬化しないものの、セメントの水和の際に生成される水酸化カルシウムと、上記シリカ質とが反応して(ポゾラン反応と称せられる)、緻密構造の珪酸カルシウム水和物を生成するものをいう。セメント系水硬化材がポゾラン活性材を含むと、本発明下塗り層は、セメント単独の場合よりも、塗膜強度、鋼板密着強度、塩化物イオン遮蔽性が向上し、結果その防錆効果が一層高まる。
ポゾラン活性材としては、シリカヒューム、フライアッシュ、火山灰、珪酸白土などを挙げることができる。これらのうち、シリカヒューム、フライアッシュは、ともに二酸化ケイ素含有量が高く、かつ、粒度が細かいので特に好ましい。
加えてシリカヒュームとフライアッシュはともに粒子形状が球状であるため、ベアリング効果により、下塗り材の流動性を高め、本発明下塗り材の塗装性も向上させる。すなわち、ローラーや刷毛へののりが良好で、ローラー塗装後の塗装ムラがなくなる。
上記シリカヒューム又はフライアッシュに代表されるポゾラン活性材がセメント系水硬化材に占める割合は、5〜20質量%の範囲が好ましい。
上記(A3)、(A4)にいう潜在水硬材とは、主成分として酸化カルシウムと二酸化ケイ素を含有し、アルカリ条件下で、水硬性を発現するものをいい、代表例として高炉スラグ微粉末を挙げることが出来る。セメントの水和反応で生じた水酸化カルシウムによりアルカリ雰囲気になると、潜在水硬材中の酸化カルシウムと二酸化ケイ素は徐々に溶出し二酸化ケイ素の緻密な水和物を形成する。上記反応は長期にわたり継続される。
したがって、セメント系水硬化材が成分として潜在水硬材を含む場合には、本発明下塗り材は、高強度かつ緻密な硬化膜の層を長期にわたり形成するので、その塩化物イオンの遮蔽効果が長年月の間保持される。
上記高炉スラグ微粉末に代表される潜在水硬材がセメント系水硬化材に占める割合は、10〜40質量%の範囲が好ましい。
高炉スラグ微粉末は、その粒度の指標としてブレーン比表面積が4000(g/cm)以上のものが好ましく、6000(g/cm)以上のものがより好ましい。ここでブレーン比表面積とは、JISR5201(セメントの物理試験方法)に規定する、ブレーン空気透過装置を用いて測定される比表面積をいう(以下同じ)。
(B)細骨材
本発明下塗り材は細骨材を必須成分として含む。
下塗り材が細骨材を欠くと、下塗り層の塗膜強度が低くなり、鋼材に振動や衝撃が加わるとクラックが発生しやすくなり、結果鋼材の防食性が乏しいものとなってしまう。
細骨材としては、天然細骨材、人工細骨材ともに好適に用いることができる。天然細骨材としては、川砂、陸砂、海砂、天然珪砂などを挙げることが出来る。但し、海砂を用いる場合には、塩分を十分に除去したものであることが肝要である。人工細骨材としては、高炉スラグ細骨材、フェロニッケルスラグ細骨材、銅スラグ細骨材、電気炉酸化スラグ細骨材等を使用することができる。
本発明下塗り材に含まれる細骨材の量は、セメント系水硬化材100質量部に対し50〜150質量部が好ましい。
細骨材が、セメント系水硬化材100質量部に対し50質量部以上含まれることにより、本発明下塗り層に一層高い強度が付与される。細骨材量は、セメント系水硬化材100質量部に対し、60質量部以上がより好ましく、80質量部以上が更に好ましい。
他方、細骨材がセメント系水硬化材100質量部に対し150質量部以下含まれることにより、本発明下塗り材と水との混和物は、優れた塗装性(ワーカビリティ)を有することとなる。細骨材量は、上記セメント系水硬化材100質量部に対し、120質量部以下がより好ましく、100質量部以下が更に好ましい。
細骨材は、細骨材成分の総質量中に占める粒子径500μm以上の成分の割合が30質量%以下であることが好ましい。粒子径500μm以上の成分が30質量%以下である場合には、最終的に得られる下塗り層塗膜の表面が平滑となり好ましい。粒子径500μm以上の成分の割合は、10質量%以下であることがより好ましく、5質量%以下であることが更に好ましい。なお粒子径分布の測定は、JIS Z 8011に定める篩法に従って求められる。
(C)亜硝酸型ハイドロカルマイト
本発明下塗り材は亜硝酸型ハイドロカルマイトを必須成分として含む。
亜硝酸型ハイドロカルマイトは、鋼材の腐食要因である塩化物イオンを吸着するのみならず、鋼材の腐食抑制効果のある亜硝酸イオンを放出する作用を有する。下塗り材が亜硝酸型ハイドロカルマイトを欠く場合、下塗り層の鋼材防食性能は著しく劣ったものとなってしまい、本発明の目的を達することができない。
本発明に言う亜硝酸型ハイドロカルマイトとは、一般式:3CaO・Al・Ca(NO・nHO(nは20以下の自然数を表す。)の化学式で示されるCa−Al系複合水酸化物であり、板状結晶構造を有している。
亜硝酸型ハイドロカルマイトは、例えばアルミン酸ソーダと可溶性カルシウム塩及び/又はアルカリ金属塩と消石灰とからなる原料系を反応・結晶化させる方法(特開平07−033340号公報)、CaO・Al系化合物と可溶性カルシウム塩及び/又は消石灰とを液中で反応・結晶化させる方法(特開平07−033341号公報)により、粉末形態にて得ることが出来る。
本発明下塗り材に含まれる亜硝酸型ハイドロカルマイトの量は、上記セメント系水硬化材100質量部に対し10〜100質量部であることが好ましい。
亜硝酸型ハイドロカルマイトが上記セメント系水硬化材100質量部に対し10質量部以上含まれることにより、本発明下塗り材の水硬化物は、塩化物イオンの吸着能と亜硝酸イオン放出能に優れるものとなる。結果当該水硬化物により形成される下塗り層は卓越した防食性能を発揮する。
亜硝酸型ハイドロカルマイトがセメント系水硬化材100質量部に対し100質量部を超えて添加しても、その添加量の増分に見合う塩化物イオンの吸着能の増加が認められず経済的でなく、また本発明下塗り材と水との混和物の塗装性(ワーカビリティ)が低下し、かつまた本発明下塗り層の塗膜強度が低下する傾向にあり、好ましくない。亜硝酸型ハイドロカルマイト量は、セメント系水硬化材100質量部に対し、50質量部以下であることがより好ましい。
亜硝酸型ハイドロカルマイトは、先に述べた反応・結晶化方法により、通常5〜100μmの範囲の粉末物質として得られるが、反応条件を適正化させることにより、小粒子かつ粒子径範囲の狭い粉末として得ることが出来る。
本発明においては、市販の粉末状亜硝酸型ハイドロカルマイトを好適に使用することができる。入手可能な粉末状亜硝酸型ハイドロカルマイトとして、例えば、日本化学工業株式会社製「ソルカット」(日本化学工業株式会社登録商標)を挙げることが出来る。
(D)再乳化形粉末樹脂
本発明下塗り材は再乳化形粉末樹脂を必須成分として含む。
再乳化形粉末樹脂は、本発明下塗り材の水硬化物の引っ張り強度、伸びを向上させると同時に鋼材との接着力を高める。下塗り材が再乳化形粉末樹脂を欠くと、下塗り層は鋼材との熱膨張率差に起因する歪みに抗しきれず、結果剥離やひび割れが生じてしまい、温度変化の激しい環境に耐えることが出来ない。
本発明において、下塗り層の補強を目的とする樹脂成分として再乳化形粉末樹脂を採用する理由は、以下の理由による。すなわち、本発明の主要成分を成す水硬化成分としてのセメント系水硬化材と、水硬化層への強度付与成分としての細骨材と、塩化物イオン捕捉成分としてのハイドロカルマイトと、再乳化形粉末樹脂成分とを、粉末状態のままミキサーにてあらかじめプレミックスすることが可能となり、結果下塗り層中に各成分がミクロに分散する。結果、下塗り材の塗装性が向上し、かつ水硬化した下塗り層の防食機能も高まる。
また、下塗層の補強を目的に、粉末状ではない樹脂成分、例えば樹脂エマルション等を使用する場合には、塗膜厚を確保するのに多くの塗布回数を必要とし、塗装施工性および塗膜の品質が悪くなる。
上記再乳化形粉末樹脂は、本発明下塗り材と水との混和物の造膜形成温度、及び本発明下塗り層の低温下での強度保持の観点から、そのガラス転移温度は10度C以下であることが好ましい。
再乳化形粉末樹脂としては、公知の再乳化形粉末樹脂を用いることが出来、具体的には基体樹脂が、(メタ)アクリル酸エステル系共重合体、エチレン酢酸ビニル共重合体(EVA)又は酢酸ビニル・ビニルバーサテート共重合体であるものを挙げることが出来る。また再乳化性能を高めるため、基体樹脂の一部がポリビニルアルコール鎖と結合しているものを用いることも出来る。
本発明下塗り材においては、上記再乳化形粉末樹脂のうち、基体樹脂がアクリル酸エステル系樹脂であるもの(以下、アクリル酸エステル系再乳化形粉末樹脂という。)は、水硬化物により形成される下塗り層の塗膜の耐水性が優れるため特に好ましい。
上記アクリル酸エステル系再乳化形粉末樹脂としては、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n−プロピル、(メタ)アクリル酸i−プロピル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸i−ブチル、(メタ)アクリル酸t−ブチル、(メタ)アクリル酸2エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸ドデシル、(メタ)アクリル酸オクタデシルのいずれか又はこれらの二以上のモノマー単位から構成されるものを挙げることが出来、(メタ)アクリル酸を構成モノマー単位として含んでいても良い。
本発明下塗り材に含まれる再乳化形粉末樹脂の量は、セメント系水硬化材100質量部に対し5質量部〜30質量部であることが好ましい。
再乳化形粉末樹脂がセメント系水硬化材100質量部に対し5質量部以上含まれることにより、本発明下塗り材の水硬化物と鋼材との接着性がより向上し、結果本発明下塗り層の防食効果が増す。再乳化形粉末樹脂量は、セメント系水硬化材100質量部に対し、10質量部以上であることがより好ましい。
また、再乳化形粉末樹脂量をセメント系水硬化材100質量部に対し30質量部以下とすることにより、亜硝酸型ハイドロカルマイトのキャリアー成分たるセメント系水硬化材の本発明下塗り材の水硬化物に占める割合を高く保つことが出来るので、本発明下塗り層の防食性能が損なわれることがない。再乳化形粉末樹脂はセメント系水硬化材100質量部に対し20質量部以下であることがより好ましい。
(E)増粘剤
本発明下塗り材は増粘剤を必須成分として含む。
増粘剤は、本発明下塗り材と水との混和物に適正な粘度を付与し、鋼材表面への塗装性を高める。下塗り材が増粘剤を欠くと薄肉塗装が極めて困難となる。
増粘剤としては、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロースなどのセルロースエーテル類、ポリアクリルアミド、ポリエチレンオキサイド、ポリビニルアルコール、カゼインなどの各種の水溶性高分子のほか、キサンタンガム、ウェランガム、デュータンガムなどのポリサッカライドを挙げることができ、これらの一種又は二種以上を組み合わせて用いることができる。
増粘剤として粉末系の増粘剤(E1)を採用することにより、本発明の他の粉末系の構成成分との併用により、鋼材防食用水硬化性粉末系下塗り材となし得る。粉末状増粘剤(E1)としては、市販品を好適に使用することが出来る。そのようなものとして、メチルセルロース系粉末増粘剤、ポリアクリル酸系粉末増粘剤などが挙げられる。
本発明下塗り材に含まれる増粘剤の量は、セメント系水硬化材100質量部に対し、0.05質量部〜1質量部であることが好ましい。
増粘剤量がセメント系水硬化材100質量部に対し0.05質量部以上含まれることにより、本発明下塗り材と水との混和物が伸びやすくなり、良好な刷毛塗り性を付与する。増粘剤量は、0.1質量部以上であることがより好ましい。
他方、増粘剤量をセメント系水硬化材100質量部に対し1質量部以下とすることにより、本発明下塗り材と水の混和物の粘度が高くなり過ぎることが無い。増粘剤量は、セメント系水硬化材100質量部に対し、0.5質量%以下であることがより好ましい。
(F)消泡剤
本発明下塗り材は消泡剤を任意成分として含むことができる。
消泡剤は、本発明下塗り材と水とを混和する際に、泡立ちと空気の巻き込みを抑制する。その結果本発明下塗り層中の微細孔(ピンホール)の生成が抑制され、結果本発明下塗り層の防食機能が一層高まる。
本発明において使用し得る消泡剤としては、アルコール系、ポリオール系、脂肪酸エステル系、酸化エチレン−酸化プロピレン系、シリコーン系などの各種の消泡剤が挙げられ、これらの一種又は二種以上を組み合わせて用いることができる。
消泡剤として粉末系の消泡剤(F1)を採用することにより、本発明の他の粉末系の構成成分との併用により、鋼材防食用粉末系下塗り材となし得る。粉末系消泡剤(F1)としては、市販品を好適に使用することが出来る。
消泡剤の添加量は、セメント系水硬化材100質量部に対し、1質量部以下とすることが好ましい。1質量部を超えて加えても、消泡効果はそれ以上向上しにくくなり、経済的でない。消泡効果と経済性のバランスから、消泡剤の添加量は、0.05〜0.5質量部がより好ましく、0.1〜0.4質量部がさらに好ましい。
(G)流動性改良剤
本発明下塗り材は流動性改良剤を任意成分として含むことができる。本発明にて流動性改良剤とは、その分散効果によりセメント系水硬化材粒子の凝集を抑制し、本発明下塗り材と水との混和物の流動性を高める効果を奏するものである。本発明の流動性改良剤には、当業者にはその性能により、減水剤、AE減水剤、高性能AE減水剤として知られているもののほか、セメント系水硬化材と水との混練物に、後添加して混和し、攪拌することにより、当該混練物の流動性を増大させる効果を有する混和剤(当業者には流動化剤として知られている)が含まれる。
上記の減水剤としては、リグニンスルホン酸塩やオキシカルボン酸塩を主成分とするものを挙げることが出来る。AE減水剤としては、ポリオール系のものを挙げることが出来る。高性能AE減水剤としてはポリカルボン酸系、ナフタリン系、メラミン系、アミノスルホン酸系のものを挙げることが出来る。また流動化剤としては、ナフタリンスルホン酸ホルムアルデヒド高縮合物塩、メラミンスルホン酸ホルムアルデヒド縮合物塩、ポリカルボン酸の水溶性塩、スチレンスルホン酸共重合物塩を挙げることが出来る。
これらのうち、ポリカルボン酸塩は、少量で高い分散・流動性改良効果を発揮するため好ましい。
ポリカルボン酸塩としては、ポリアクリル酸塩、ポリアクリルアミド部分加水分解物、オレフィン−マレイン酸共重合体、スチレン−マレイン酸共重合体、スチレン−マレイン酸(ポリオキシエチレン)エステル共重合体、アリル(EO)エーテル−無水マレイン酸−スチレン共重合体、アリル(EO)エーテル−マレイン酸−スチレン共重合体などを挙げることが出来る。
流動性改良剤として粉末系流動性改良剤(G1)を採用することにより、本発明の他の粉末系の構成成分との併用により、鋼材防食用粉末系下塗り材となし得る。粉末系流動性改良剤(G1)としては、市販品を好適に使用することが出来る。
流動性改良剤の添加量は、セメント系水硬化材100質量部に対して、1質量部以下とすることが好ましい。1質量部を超えて加えても、流動性はそれ以上向上しにくく、経済的でない。流動性の向上と経済性のバランスから、流動性改良剤の添加量は、0.05〜0.7質量部がより好ましく、0.1〜0.5質量部がさらに好ましい。
<鋼材防食用粉末組成物>
本発明下塗り材を構成する上記(A)〜(D)の各必須成分はいずれも粉末状成分である。従い、上記(E)〜(G)の各任意成分がいずれも粉末状である場合には、これら粉末成分をあらかじめ所望の比率にて配合し、プレミックスした鋼材防食用粉末系下塗り材とすることが出来る。プレミックスするためのミキサーとしては、タンブラーミキサー、V型混合機などのミキサーを好適に用いることができる。かかる粉末系下塗り材は、塗装するに際して、当該粉末系下塗り材と水とを混和するだけで、水硬化性の鋼材防食用塗材を調製することが出来るため、現場作業性に優れる。
次に本発明の鋼材防食塗装方法について説明する。
<鋼材の防食塗装方法>
本発明の鋼材防食塗装方法は、以下の、下塗り層形成工程(ア)、中塗り層形成工程(イ)、および上塗り層形成工程(ウ)よりなる。
(ア)下塗り層形成工程
本発明の鋼材防食塗装方法においては、上記本発明下塗り材と水との混和物が鋼材表面に塗布される。下塗り材塗装性と下塗り層強度の観点から、本発明下塗り材と水の混合比を、下塗り材に含まれるセメント系水硬化材(A)の質量に対する水の質量の百分率が30〜80%の範囲に収まるように調製することが好ましい。
本発明の下塗り材は、増粘剤の効果により、塗装液が塗装表面に良く伸び、かつ、一定膜厚の均一塗膜が得られ、塗装性が良好となる。それゆえ、本工程(ア)では、刷毛塗り、ローラー塗装などの通常の塗装方法を採用することが出来る。また本発明の下塗り材は、塗装性に優れるため、重ね塗りをせずとも均一かつ平滑な下塗り層を形成することが出来る。
本発明の目的からは、下塗り層の厚さは50〜500μmの範囲であることが好ましく、100〜400μmの範囲であることがより好ましい。
下塗り材を塗装した後、好ましくは24時間以上の時間をおいて、水硬化させる。
(イ)中塗り層形成工程
本発明の鋼材防食塗装方法では、上記下塗り層形成工程(ア)に引き続き中塗り層形成工程(イ)が施される。
本工程にて使用される中塗り材としては、本発明下塗り層との密着性の観点から、特定のエポキシ樹脂塗料が使用される。
すなわち、塗料は、希釈溶剤の種類に応じ、トルエン、キシレン、メチルイソブチルケトン等に代表される高揮発性の溶剤を用いた強溶剤塗料と、ミネラルスピリット等に代表される低極性かつ低揮発性の溶剤を用いた弱溶剤塗料に類別されるが、本発明においては弱溶剤エポキシ樹脂塗料を用いることが必要である。弱溶剤エポキシ樹脂塗料に代えて強溶剤エポキシ樹脂塗料を用いると最終的に得られる鋼板は防食性能の劣ったものとなり、本発明の目的を達することができない。
弱溶剤エポキシ樹脂塗料としては弱溶剤2液性エポキシ樹脂塗料、弱溶剤1液性エポキシ樹脂塗料のいずれもが入手可能である。
エポキシ樹脂塗料として、強溶剤エポキシ樹脂塗料でなく、弱溶剤エポキシ樹脂塗料を使用することにより、防食効果の優れた塗膜を得ることが出来る理由は定かではないが、弱溶剤は強溶剤と比較して低揮発性であるため、エポキシ樹脂塗料が硬化する前にエポキシ樹脂成分が多孔性の下塗り層に十分に浸透し、その後硬化するため、当該中塗り層は外部から浸透の塩化物イオンの遮断層として有効に機能するためと本発明者らは考えている。
本発明の目的からは、中塗り層の厚さは20〜200μmの範囲であることが好ましく、50〜100μmの範囲であることがより好ましい。
(ウ)上塗り層形成工程
本発明の鋼材防食塗装方法では、上記中塗り層形成工程(イ)に引き続き上塗り層形成工程(ウ)が施される。
本工程にて使用される上塗り材としては、上塗り材として常用の、ウレタン樹脂塗料、アクリル樹脂塗料、シリコーン樹脂塗料、フッ素樹脂塗料、エポキシ樹脂塗料、塩化ゴム樹脂塗料、塩化ビニル樹脂塗料等を挙げることが出来る。
これらの塗料のうち、耐候性(塗膜寿命)の観点からは、ウレタン樹脂塗料、シリコーン樹脂塗料、又はフッ素樹脂塗料が好ましい。
また上記塗料として、溶剤別に、それぞれ強溶剤塗料、弱溶剤塗料が入手できるが、本発明においては、そのいずれも使用することができる。弱溶剤塗料は低臭性(低揮発性)のため作業性に優れ、強溶剤塗料は耐候性に特に優れるため、目的に応じて使い分けることが出来る。
本発明の目的からは、上塗り層の厚さは10〜100μmの範囲であることが好ましく、20〜100μmであることがより好ましい。
以上に述べた鋼材防食方法によれば、鋼材表面に、鋼材防食性能に優れる下塗り層が均一厚さにて形成されており、更にその上に重ねて、弱溶剤エポキシ樹脂塗料の硬化物が下塗り層に強固に密着した中塗り層が形成されている。結果、鋼材には卓越した防食性能が付与される。
次に本発明の防食鋼材について説明する。
<防食鋼材>
本発明の防食鋼材は、
鋼材表面に下塗り層、中塗り層及び上塗り層が順次形成されてなる防食鋼材であって、
a)上記下塗り層は、本発明下塗り材の水硬化物よりなり、
b)上記中塗り層は、弱溶剤系エポキシ樹脂塗料の硬化膜よりなる、
ことを特徴とする防食鋼材である。
上記要件a)及びb)を満たす本発明の防食鋼材が優れた防食性能を備える理由は、上記に述べたとおりである。
本発明の下塗り材、防食塗装方法、防食鋼材により、鋼材を塩害から防止し、鋼材構造物の寿命を延ばすことができる。
本発明の防食鋼材の模式断面図である。 塩水噴霧試験開始前の、実施例1、比較例1、参考例1の試験片の状態を示す写真である。 塩水噴霧500時間経過後の、実施例1、比較例1、参考例1の試験片の状態を示す写真である。 塩水噴霧1500時間経過後の、実施例1、比較例1、参考例1の試験片の状態を示す写真である。
以下、実施例にて本発明の内容を具体的に説明する。
なお、以下の実施例、比較例においては、下記試験方法によった。
<試験用鋼材>
縦150mm、横100mm、厚さ1mmの、JIS K5600 1−4に規定するみがき鋼板を試験用鋼材とする。
<塩水噴霧試験>
試験用鋼材に順次下塗り、中塗り及び上塗り塗装を施した試験片に、クロスカットを入れる(カットを入れた試験片を「クロスカット試験片」と称する。)。クロスカット試験片を温度35℃に保った恒温室に置き、5%濃度食塩水を噴霧させる。300時間、500時間、800時間、1000時間、1500時間、及び2000時間経過後の試験片の状態を観察する。
[実施例1]
1)下塗り材の調製と下塗り層の形成
下記組成にて各成分を配合し、ミキサーにて均一に混合して、粉末系下塗り材を調製した;
・早強ポルトランドセメント:100質量部、
・珪砂(粒子径500μm以上の成分が10質量%以下の市販品):90質量部、
・亜硝酸型ハイドロカルマイト(日本化学工業社製):15質量部、
・アクリル酸エステル系再乳化形粉末樹脂(ガラス転移温度10度C):14質量部、
・セルロース系増粘剤(粉末):0.2質量部、
・粉末系消泡剤:0.2質量部、
・粉末系流動性改良剤:0.3質量部。
調製した上記粉末系下塗り材の総量に水35質量部を加え、ミキサーにて均一に混合した。その混和物を試験用鋼材に塗装して、下塗り層を形成した。下塗り材の塗装性は良好で、重ね塗りを要することなく、一回の刷毛塗りにて、均一かつ平滑な下塗り層を形成することができた。下塗り層の厚さは300μmであった。下塗り塗装後、48時間経過させ、水硬化させた。
2)中塗り層及び上塗り層の形成
上記下塗り層に重ねて、弱溶剤2液エポキシ樹脂塗料(エポロMPプライマー、イサム塗料社製)を中塗り材として中塗り塗装をした。中塗り層の厚さは60μmであった。中塗り層形成後10時間をおいて、上記中塗り層に重ねて強溶剤2液系ウレタン樹脂塗料(ハイアート3000、イサム塗料社製)を上塗り材として上塗り塗装をした。上塗り層の厚さは30μmであった。かくして防食性能試験片を作成した。
3)塩水噴霧試験
上記防食性能試験片にクロスカットを入れ、当該クロスカット試験片を温度35℃に保った恒温室に置き、5%濃度食塩水を噴霧させた。300時間、500時間、800時間、1000時間、1500時間、及び2000時間経過後の試験片表面の状態を観察した。結果を表1、図2〜4に示す。
[比較例1]
実施例1の下塗り材の調製において、亜硝酸型ハイドロカルマイトを加えなかった他は同様にして下塗り材を調製した。次いで実施例1にて用いたと同一の中塗り材、上塗り材を用いて、同様にして、防食性能試験片、次いでクロスカット試験片を作成し、塩水噴霧試験を行った。結果を表1、図2〜4に示す。
[比較例2]
実施例1において、セルロース系増粘剤を加えなかった他は同様にして、下塗り材を調製した。次いで防食性能試験片、次いでクロスカット試験片を作成し、塩水噴霧試験を行った。結果を表1に示す。なお、下塗り材の塗装性は不良であった。すなわち、塗液の伸びが悪く、鋼材表面に均一な塗面を形成するのが困難であり、平均厚さ300μmの下塗り層を形成させるのに都合三回の重ね塗りを要した。
[比較例3]
実施例1において、中塗り材として、弱溶剤エポキシ樹脂塗料に代え、水性エポキシ樹脂塗料を用いた他は同様にして、防食性能試験片、次いでクロスカット試験片を作成し、塩水噴霧試験を行った。結果を表1に示す。
[比較例4]
実施例1において、中塗り材として、弱溶剤エポキシ樹脂塗料に代え、強溶剤エポキシ樹脂塗料を用いた他は同様にして、防食性能試験片、次いでクロスカット試験片を作成し、塩水噴霧試験を行った。結果を表1に示す。
[実施例2]
実施例1において、上塗り材として、シリコーン樹脂塗料を用いたほかは同様にして、防食性能試験片、次いでクロスカット試験片を作成し、塩水噴霧試験を行った。2000時間経過後も、試験片表面に変化は認められなかった。
[実施例3]
実施例1において、上塗り材として、フッ素樹脂塗料を用いたほかは同様にして、防食性能試験片、次いでクロスカット試験片を作成し、塩水噴霧試験を行った。2000時間経過後も、試験片表面に変化は認められなかった。
[参考例1]
実施例1において、再乳化形粉末樹脂14質量部に代えて、アクリル酸エステル樹脂エマルジョン14質量部(固形分換算)を用いた他は同様にして、防食性能試験片、次いでクロスカット試験片を作成し、塩水噴霧試験を行った。1000時間経過時では、クロスカット部に錆(錆幅:1.6mm)が認められた。1500時間経過時では、錆の成長(錆幅3.0mm)とともに、膨れが認められた。2000時間経過時では、錆がさらに成長するとともに(錆幅5.2mm)、膨れがさらに増大していた。結果を図2〜4に示す。
なお、下塗り材の塗装性は不良であった。すなわち、塗液の伸びが悪く、鋼材表面に均一な塗面を形成するのが困難であった。すなわち、刷毛塗装時、均一な塗膜が出来ず、下地が透けて極端に薄塗りとなる箇所が生じた。そのため厚さ300μmの均一な下塗り層を形成させるのに三回以上の重ね塗りを要した。
1. 鋼材
2.下塗り層
3.中塗り層
4.上塗り層

Claims (13)

  1. 鋼材表面に順次、下塗り層を形成させる工程(ア)と、工程(ア)にて形成された下塗り層に重ねて中塗り層を形成させる工程(イ)と、工程(イ)で形成された中塗り層に重ねて上塗り層を形成させる工程(ウ)とを含む、鋼材防食塗装方法であって、
    前記工程(ア)は、セメント系水硬化材(A) 、細骨材(B)、亜硝酸型ハイドロカルマイト(C)、再乳化形粉末樹脂(D)及び増粘剤(E)を含む鋼材防食用下塗り材の水硬化層を形成させる工程であり、
    前記工程(イ)は、前記工程(ア)にて形成された水硬化層に重ねて、弱溶剤エポキシ樹脂塗料の硬化層を形成させる工程である、
    ことを特徴とする鋼材防食塗装方法。
  2. セメント系水硬化材(A)は、ポルトランドセメントである請求項1に記載の鋼材防食塗装方法。
  3. セメント系水硬化材(A)は、ポルトランドセメント及びポゾラン活性材よりなる請求項1に記載の鋼材防食塗装方法。
  4. セメント系水硬化材(A)は、ポルトランドセメント及び潜在水硬材よりなる請求項1に記載の鋼材防食塗装方法。
  5. セメント系水硬化材(A)は、ポルトランドセメント、ポゾラン活性材及び潜在水硬材よりなる請求項1に記載の鋼材防食塗装方法。
  6. 前記ポゾラン活性材は、シリカヒューム又はフライアッシュである請求項3に記載の鋼材防食塗装方法。
  7. 前記ポゾラン活性材は、シリカヒューム又はフライアッシュである請求項5に記載の鋼材防食塗装方法。
  8. 前記潜在水硬材は高炉スラグ微粉末である、請求項4、5又は7のいずれか一項に記載の鋼材防食塗装方法。
  9. 再乳化形粉末樹脂(D)はアクリル酸エステル系再乳化形粉末樹脂である請求項1〜8のいずれか一項に記載の鋼材防食塗装方法。
  10. さらに消泡剤(F)及び流動性改良剤(G)を含む請求項9に記載の鋼材防食塗装方法。
  11. セメント系水硬化材(A)100質量部 、細骨材(B)50〜150質量部、亜硝酸型ハイドロカルマイト(C)10〜100質量部、再乳化形粉末樹脂(D)5〜30質量部、増粘剤(E)0.05〜1質量部、消泡剤(F)0.05〜0.5質量部及び流動性改良剤(G)0.05〜0.7質量部からなる請求項10に記載の鋼材防食塗装方法。
  12. 増粘剤(E)は粉末系増粘剤(E1)であり、消泡剤(F)は粉末系消泡剤(F1)であり、かつ流動性改良剤(G)は粉末系流動性改良剤(G1)である、請求項1〜11のいずれか一項に記載の鋼材防食塗装方法
  13. 粉末系増粘剤(E1)は、セルロース系増粘剤又はポリサッカライド系増粘剤である請求項12に記載の鋼材防食塗装方法。
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