JP5175472B2 - ハイドロカルマイトの製造方法 - Google Patents

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本発明は、新規なハイドロカルマイトの製造方法に関するものである。
ハイドロカルマイトは2価−3価金属複合水酸化物の一種で、Ca−Al系複合水酸化物の形をとる層状結晶性化合物であり、アニオン交換性のあることが知られている。これらハイドロカルマイトの中、硝酸イオン、亜硝酸イオン、水酸イオンをハイドロカルマイト構造中に取り込んだものは、特に優れた防錆能を有することが知られている(例えば、特許文献1)。
これらの硝酸型、亜硝酸型又は水酸型のハイドロカルマイトを製造する方法としては、例えば、アルミン酸ナトリウムの溶液と、必要に応じて苛性アルカリ及び亜硝酸カルシウム、硝酸カルシウム、水酸化カルシウム等のカルシウム塩を添加してゲルを析出させ、これを結晶化させる方法(例えば、特許文献1〜2)、Ca−Al23系化合物と、亜硝酸カルシウム、硝酸カルシウムの可溶性カルシウム又は消石灰とを液中で反応させ、次いで結晶化させる方法(例えば、特許文献3)等が提案されている。
ところで、臨海地域の金属構造物は常に塩素イオンによる腐食に曝されており、亜鉛被覆鋼の使用、ステンレス鋼の使用、防食塗料の塗装などで対処されているが、最も耐食性に優れるステンレス鋼でさえ長期間の塩素イオン接触には耐えられなく、腐食を生じる。
また、コンクリート構造物においても、外部から侵入する塩素イオンによる鉄筋の腐食いわゆる塩害が問題となっている。一方、内陸部でも、道路凍結の防止や融雪のために道路のようなコンクリート構造物に塩化カルシウム溶液を散布することがあり、鉄筋の腐食がおこる。
これら防食用の塗料やコンクリート組成物としてハイドロカルマイトを含有させることも提案されている(例えば、特許文献4〜5参照)。
また、ゴミ焼却場、めっき工場、精練工場等の排水には、人体に有毒な、例えば、水銀、鉛、カドミニウム、銅、砒素、ニッケル、クロム、銀等の重金属が含まれている。従来、排水中に含まれる重金属の処理方法としては、排水中にキレート剤や高分子凝集剤を添加し、これにより重金属イオンを捕集することが行われている。また、近年、無機系吸着剤を用いる方法として、ハイドロタルサイト型吸着剤を用いる方法(特許文献6)が提案されている。
特開平4−154648号公報 特開平7−33430号公報 特開平7−33431号公報 特開平11−92692号公報 特開平5−43282号公報 特開平10−128313号公報
従来提案されている前記した製法で得られる硝酸型、亜硝酸型又は水酸型ハイドロカルマイトを用いた場合には塗膜の防錆能は優れた評価が得られるが、防錆能以外の塗膜性能に不具合を生じることが避けられない。また、塗料形態での粒子沈降がおこり実用的にはいくつかの欠点があり、また、従来の硝酸型、亜硝酸型又は水酸型ハイドロカルマイトは粒度分布の広い板状の結晶であり、広い分野での利用がなされず、用途がセメント製品の分野に限られていた。
本発明者らは、これらの問題に鑑み、鋭意研究したところ、特定のハイドロカルマイトが、セメント材料の添加剤としてだけではなく、塗料、接着剤などの塗装材料分野でも有用な組成物を構成できることを見出し、本発明を完成した。
即ち、本発明が目的とするところは、粒度分布がシャープで優れた塩素イオン捕集能を有する新規なハイドロカルマイトの製造方法を提供することにある。
また、本発明が提供しようとする第1の発明は、下記一般式(2)
[式中、nはn≦20を表す。]
で示され、レーザー光散乱法による平均粒子径が1μm以上7μm未満であり、100μm以上の粒子の含有量が3重量%未満の炭酸型ハイドロカルマイトを400〜900℃で加熱処理するA−1工程、前記A−1工程で得られた生成物を水に浸漬し、下記一般式(3)
[式中、nはn≦20を表す。]
で示されるハイドロカルマイトを得るB−1工程を有することを特徴とするハイドロカルマイトの製造方法である。
また、本発明が提供しようとする第2の発明は、下記一般式(2)
[式中、nはn≦20を表す。]
で示され、レーザー光散乱法による平均粒子径が1μm以上7μm未満であり、100μm以上の粒子の含有量が3重量%未満の炭酸型ハイドロカルマイトを400〜900℃で加熱処理するA−1工程、前記A−1工程で得られた生成物を亜硝酸、硝酸又はこれらの金属塩を含む水溶液に浸漬し、下記一般式(1)
[式中、XはOH-、NO3 - 及びNO2 - から選択される少なくとも1種のアニオンであり、nはn≦20を表す。]
で示されるハイドロカルマイトを得るB−2工程を有することを特徴とするハイドロカルマイトの製造方法である。
前記A−1工程の炭酸型ハイドロカルマイトは、水酸化カルシウムとアルミン酸ナトリウムを含む水溶媒中に、炭酸塩又は炭酸水素塩を含む水溶液を添加し、60℃未満で第1の反応を行い、次いで60〜100℃で第2の反応を行う工程を有す方法により製造された炭酸型ハイドロカルマイトであることが好ましい。
また、本発明が提供しようとする第3の発明は、更に、上記のB−1工程で得られた下記一般式(3)
[式中、nはn≦20を表す。]
で示されるハイドロカルマイトを亜硝酸、硝酸又はこれらの金属塩を含む水溶液に浸漬し、下記一般式(4)
[式中、AはNO3 - 及びNO2 - から選択される少なくとも1種のアニオンであり、nはn≦20を表す。]
で示されるハイドロカルマイトを得るC−1工程を有することを特徴とするハイドロカルマイトの製造方法である。
本発明は、粒度分布がシャープで優れた塩素イオン捕集能を有する新規なハイドロカルマイト工業的に有利な製造方法を提供することができる。
以下、本発明につき詳述する。
本発明の製造方法により得られたハイドロカルマイトは酸化物表示で、下記一般式(1)
で表される。XはOH-、NO3 - 及びNO2 - のアニオンを示し、他のアニオンが存在するとアニオン交換性を有する。ハイドロカルマイトは製法やその物体によって多様であるが、Ca/Alのモル比はほぼ2であり、結晶水の量を示すnは多くの場合、15までであるが、本発明では20まで含みうる。アニオンとしては、XがNO3 - 、NO2 - またはOH-の1価アニオンであり、それらは1種または2種以上であっても差し支えない。特にNO2 - が好ましい。従って、本発明では、これら好ましいアニオンを含有するものをそれぞれ硝酸型ハイドロカルマイト、亜硝酸型ハイドロカルマイト、水酸型ハイドロカルマイトと称することにする。
ハイドロカルマイトは層状構造をもつ含水結晶性化合物で、X線回折により容易に同定でき、結晶水は300℃程の温度域で脱水する。前記した硝酸型、亜硝酸型または水酸型のハイドロカルマイトは、塩素イオンと接触するとアニオン交換してそれぞれNO3 - 、NO2 - 、OH-を遊離し、塩素イオンを捕集する作用に著しく優れている。かかる塩素イオン捕集能は樹脂中またはモルタルやコンクリート中であっても同様であり、捕集された塩素イオンは遊離塩素イオンと異なってハイドロカルマイト中に担持され、いわば不活性となっているために金属の腐食を誘発する作用はない。しかも、ハイドロカルマイトはその主成分がセメント成分と同様であることのほかに、塩基性物質であるため、セメントの物性を阻害するようなことはない。
本発明の塩素イオン捕集剤は、前記一般式(1)で表わされるハイドロカルマイトを有効成分することに加えて、該ハイドロカルマイトは、レーザー光散乱法による平均粒子径が1μm以上7μm未満であり、100μm以上の粒子の含有量が3重量%未満であることが重要な構成要件となり、かかる構成を有する塩素イオン捕集剤は、優れた塩素イオン捕集能を有し、セメント材料への添加剤としてだけでなく、塗料、接着剤などの塗装材料分野でも有用な組成物を構成することができる。
更に、該ハイドロカルマイトは平均粒子径が1μm以上5μm未満であり、10μm以上の粒子の含有量が3重量%未満であると、該塩素イオン捕集剤を含有する樹脂フィルムや透明塗料などの薄膜形成体において、透明性や平滑性等の性能を向上させることができる点で特に好ましい。
また、本発明において、前記一般式(1)で表わされるハイドロカルマイトは粒子表面を疎水化剤で表面処理することにより樹脂との密着性や分散性などの性能をより向上させることができる。ハイドロカルマイトの粒子表面の水酸基は活性が高く、ヘキサメチルシラザンのようなシリル化剤と水中でも容易に反応するので、当該シリル化剤を用いることでハイドロカルマイトの粒子を疎水化粒子とすることができる。乾燥した粒子では、粒子表面の水酸基がカルボン酸やアルコール類のOH基と脱水反応しエステル化が起こるため粒子の表面をエステル化処理することができる。
前記疎水化剤としては、具体的には、例えば分散剤、界面活性剤、シラン系カップリング剤、チタネート系カップリング剤を使用することができる。
前記分散剤は、以下の脂肪酸及びその誘導体、アマイド、アミン類、脂肪酸エステル、アルコールエステル類を使用することができる。
(1)脂肪酸及びその誘導体:合成または天然脂肪酸及びそれらのアルカリ金属塩またはアルカリ土類金属塩、亜鉛塩、アルミニウム塩など。例えばステアリン酸、オレイン酸等及びそれらのナトリウム塩やアンモニウム塩等が挙げられる。(2)アマイド、アミン類:例えば、エルカ酸アミド、オレイルパルミトアマイド、ステアリルエルカミド、2−ステアロミドエチルステアレート、エチレンビス脂肪酸アマイド、N,N’−オレオイルステアリルエチレンジアミン、N,N’−ビス(2ヒドロキシエチル)アルキル(C12〜C18)アマイド、N,N’−ビス(ヒドロキシエチル)ラウロアマイド、脂肪酸ジエタノールアミン等が挙げられる。(3)脂肪酸エステル・アルコールエステル類:例えば、ステアリン酸n−ブチル、水添ロジンメチルエステル、セバチン酸ジブチル(n−ブチル)、セバチン酸ジオクチル(2−エチルヘキシル、n−オクチル共)、グリセリン脂肪酸エステル、ペンタエリスリトールテトラステアレート、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル、ポリエチレングリコール脂肪酸ジエステル、ジエチレングリコール脂肪酸ジエステル、プロピレングリコール脂肪酸ジエステル等が挙げられる。(4)ワックス類:例えば、スパームアセチワックス、モンタンワックス、カルナバワックス、蜜蝋、木蝋、ラノリン、ポリエチレンワックス、ポリプロピレンワックス、エポキシ変性ポリエチレンワックス、石油系ワックス等が挙げられる。(5)低融点樹脂類:融点或いは軟化点が40〜200℃、特に70〜160℃である各種樹脂、例えば、エポキシ樹脂、キシレン−ホルムアルデヒド樹脂、スチレン系樹脂、クロマン−インデン樹脂、その他の石油樹脂、アルキッド樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−アクリル酸エステル共重合体、低融点アクリル樹脂、ポリビニルブチラール、低融点コポリアミド、低融点コポリエステル等を挙げることができる。
前記界面活性剤としては、(1)第一級アミン塩、第三級アミン、第四級アンモニウム化合物、ピリジン誘導体等のカチオン系のもの、(2)硫酸化油、石ケン、硫酸化エステル油、硫酸化アミド油、オレフィンの硫酸エステル塩類、脂肪アルコール硫酸エステル塩、アルキル硫酸エステル塩、脂肪酸エチルスルホン酸塩、アルキルナフタレンスルホン酸塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、コハク酸エステルスルホン酸塩、リン酸エステル塩等のアニオン系のもの、(3)多価アルコールの部分的脂肪酸エステル、脂肪アルコールのエチレンオキサイド付加物、脂肪酸のエチレンオキサイド付加物、脂肪アミノまたは脂肪酸アミドのエチレンオキサイド付加物、アルキルフェノールのエチレンオキサイド付加物、アルキルナフトールのエチレンオキサイド付加物、多価アルコールの部分的脂肪酸エステルのエチレンオキサイド付加物、ポリエチレングリコール等の非イオン系のもの、(4)カルボン酸誘導体、イミダゾリン誘導体等の両性系のものが一般に使用可能である。
前記シラン系カップリング剤としては、例えば次のものが使用可能である。γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−β(アミノエチル)γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−フェニル−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−β(アミノエチル)γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、などのアミノ系シラン。γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、などのメタクリロキシ系シラン。ビニルトリス(βメトキシエトキシ)シラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリクロルシラン、などのビニル系シラン。β−(3,4エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、などのエポキシ系シラン。γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、などのメルカプト系シラン。γ−クロロプロピルトリメトキシシラン、などのクロロプロピル系シラン。
前記チタネート系カップリング剤としては、例えば次のものが使用可能である。イソプロピルトリイソステアロイルチタネート、イソプロピルトリドデシルベンゼンスルホニルチタネート、イソプロピルトリス(ジオクチルバイロホスフェート)チタネート、テトラオクチルビス(ジトリデシルホスファイト)チタネート、テトラ(2,2−ジアリルオキシメチル−1−ブチル)ビス(ジ−トリデシル)ホスファイトチタネート、ビス(ジオクチルバイロホスフェート)オキシアセテートチタネート、ビス(ジオクチルバイロホスフェート)エチレンチタネート、イソプロピルトリオクタノイルチタネート、イソプロピルジメタクリルイソステアロイルチタネート、イソプロピルイソステアロイルジアクリルチタネート、イソプロピルトリ(ジオクチルホスフェート)チタネート、イソプロピルトリクミルフェニルチタネート、イソプロピルトリ(N−アミノエチル−アミノエチル)チタネート、ジクミルフェニルオキシアセテートチタネート、ジイソステアロイルエチレンチタネート、ポリジイソプロピルチタネート、テトラノルマルブチルチタネート、ポリジノルマルブチルチタネート。
これらの疎水化剤の中、特に脂肪酸及びその誘導体が広い用途に適しており、処理工程が簡易である点で特に好ましく用いられる。
また、前記疎水化剤の被覆量は前記一般式(1)で表されるハイドロカルマイトに対して0.5〜15重量%、好ましくは1〜10重量%とすることが塩素イオン捕集能の低下を防ぎ、組成物の安定性を保つという観点から特に好ましい。
本発明に係る前記諸物性を持った前記一般式(1)で表わされるハイドロカルマイトは、例えば、公知の方法により得られる前記一般式(1)で表わされるハイドロカルマイト(以下、「粗粒のハイドロカルマイト」と呼ぶ)を得た後、何度も粉砕を行う等により製造することができるが、以下の3つの方法を用いると効率的、且つ工業的に有利に前記諸物性を有するハイドロカルマイトを得ることができる点で好ましい。
粗粒のハイドロカルマイトの粒子径は、一般にレーザー光散乱法による平均粒子径が8μm以上であり、100μm以上の粒子の含有量が5重量%以上である。
第1の方法は公知の方法で粗粒のハイドロカルマイトを得た後、該粗粒のハイドロカルマイトを分散剤の存在下に湿式又は乾式で粉砕処理する方法である。
前記公知の方法としては、例えばアルミン酸ナトリウムの溶液と、必要に応じて苛性アルカリ及び亜硝酸カルシウム、硝酸カルシウム、水酸化カルシウム等のカルシウム塩を添加してゲルを析出させ、これを結晶化させる方法(例えば、特開平4−154648号公報、特開平7−33430号公報参照。)、Ca−Al23系化合物と、亜硝酸カルシウム、硝酸カルシウムの可溶性カルシウム又は消石灰とを液中で反応させ、次いで結晶化させる方法(例えば、特開平7−33431号公報参照。)等を用いることができる。かくして得られる粗粒のハイドロカルマイトは、多くの場合、レーザー光散乱法による平均粒子径が3〜50μmであるが、粒度分布図において二つの山を形成し(図1参照。)、100μm以上の粒子の含有量が3重量%を超える。
次に粗粒のハイドロカルマイトを分散剤の存在下に湿式又は乾式で粉砕処理する。
乾式法で粉砕処理する方法は、粗粒のハイドロカルマイトと分散剤とを混合し、得られた混合物を乾式粉砕装置に導入し粉砕処理する方法、或いは粗粒のハイドロカルマイトを常法により分散剤で表面処理したものを乾式粉砕装置に導入し粉砕処理する方法等が挙げられる。前記乾式粉砕装置としては、例えばジェットミル、アトマイザー、バンタムミル、乾式ボールミル、乾式ビーズミル等の装置を用いることができる。
湿式法で粉砕処理する方法は、粗粒のハイドロカルマイトと分散剤を含有する水性スラリーを湿式粉砕装置に導入し粉砕処理する方法である。前記湿式粉砕装置としては、例えばボールミル、ビーズミル等の装置を用いることができる。
使用する分散剤は、前記したものと同じものを使用することができ、また、分散剤の添加量は、粗粒のハイドロカルマイトに対して0.5〜15重量%、好ましくは1〜10重量%とすることが好ましい。
粉砕処理後は得られたハイドロカルマイトを回収し、必要により水又は溶剤で洗浄し、次いで乾燥を行って製品とする。
なお、本発明では、前記必要により行われる溶剤での洗浄により分散剤を除去した前記一般式(1)で表わされるハイドロカルマイトが得られるが、この洗浄を省くか水のみで洗浄することにより分散剤で表面処理された前記一般式(1)で表わされるハイドロカルマイトを得ることができる。
第2の方法は、微細で粒度分布がシャープな炭酸型ハイドロカルマイトを原料とし、該炭酸型ハイドロカルマイトの粒度特性を保持した水酸型ハイドロカルマイ、硝酸型ハイドロカルマイト或いは亜硝酸型ハイドロカルマイトを炭酸型ハイドロカルマイトから転換させて得る方法である。
この第2の方法は、下記一般式(2)
[式中、nはn≦20を表す。]
で示される炭酸型ハイドロカルマイトを400〜900℃で加熱処理するA−1工程を含み、次いで下記B−1工程又はB−2工程を行う。
B−1工程;
前記A−1工程で得られた生成物を水に浸漬し、下記一般式(3)
[式中、nはn≦20を表す。]
で示されるハイドロカルマイトを得る工程。
B−2工程;
前記A−1工程で得られた生成物を亜硝酸、硝酸又はこれらの金属塩を含む水溶液に浸漬し、下記一般式(1)
[式中、XはOH-、NO3 - 及びNO2 - から選択される少なくとも1種のアニオンであり、nはn≦20を表す。]
で示されるハイドロカルマイトを得る工程。
前記A−1工程で用いる炭酸型ハイドロカルマイトは、レーザー光散乱法による平均粒子径が1μm以上7μm未満、100μm以上の粒子の含有量が3重量%未満であるものを用いることが前記した諸物性を持った前記一般式(1)で表わされるハイドロカルマイトを得ることができる点で好ましく、特に用いる炭酸型ハイドロカルマイトは、レーザー光散乱法による平均粒子径が1μm以上5μm未満であり、10μm以上の粒子の含有量が3重量%未満であるものが特に好ましく用いられる。
このような微粒で粒度分布がシャープな炭酸型ハイドロカルマイトは、例えば水酸化カルシウムとアルミン酸ナトリウムを含む水溶媒中(A液)に、炭酸塩又は炭酸水素塩の含む水溶液(B液)を添加し、60℃未満で第1の反応を行い、次いで60〜100℃で第1の反応温度よりも高い温度で第2の反応を行うことにより、製造することができる。この炭酸型ハイドロカルマイトの製造方法において前記A液中の水酸化カルシウムとアルミン酸ナトリウムの量は、Al原子に対するCa原子のモル比(Ca/Al)で1.0〜3.0、好ましくは1.5〜2.5である。この理由はこのモル比が1.0より小さくなると、収率が低下し反応の効率が悪くなり、一方、このモル比が3.0より大きくなると未反応の水酸化カルシウムが残存し、粒度分布がシャープなハイドロカルマイトが得られにくくくなるからである。
なお、A液における水溶媒の使用量は特に制限されるものではないが、多くの場合水酸化カルシウム100重量部に対して1000〜3000重量部とすることが好ましい。
次に、前記の水酸化カルシウムとアルミン酸ナトリウムを含む水溶媒(A液)へ、炭酸塩又は炭酸水素塩を含む水溶液(B液)を添加する。前記炭酸塩としては、例えば炭酸ナトリウム、炭酸カリウム等の炭酸アルカリ金属塩、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム等の炭酸水素アルカリ金属塩を使用することができる。B液中の炭酸塩又は炭酸水素塩の濃度は水に溶解できる濃度であれば特に制限されるものではないが多くの場合0.5〜5.0重量%の水溶液として用いることが望ましい。
前記B液の添加量はAl原子に対するCO3原子のモル比(CO3/Al)で0.2〜1.0、好ましくは0.4〜0.6である。この理由はこのモル比が0.2より小さくなるとハイドロカルマイトの板状粒子が得られにくくなり、一方、このモル比が1.0より大きくなると炭酸カルシウムの生成が多くなり、微粒で粒度分布がシャープなものが得られなくなる傾向からである。なお、前記B液の添加は60℃未満、好ましくは10〜50℃として行うことが得られる結晶の成長を抑制し、ハイドロカルマイトが微粒子となることから特に好ましい。
この第2の方法において、微細で粒度分布がシャープなハイドロカルマイトを得る上で特に反応温度が重要な要件となる。即ち、本発明では60℃未満、好ましくは10〜50℃で第1の反応を行い、次いで60〜100℃、好ましくは80〜95℃で第2の反応を行う。
この第1の反応では、ゲル状の沈殿物を析出させる。この第1の反応において、反応温度を前記範囲にする理由は反応温度が60℃以上になるとゲル状物質の結晶化が進行し大粒子に成長するからである。一方、10℃より小さくなると反応が遅くなるため、10〜50℃で行うことが好ましい。この第1の反応の反応時間は0.5〜6.0時間、好ましくは1.0〜3.0時間である。
次いで、昇温して第2の反応を行い第1の反応により得られたゲル状の沈殿物を結晶化させる。第2の反応において、微粒で粒度分布がシャープな炭酸型ハイドロカルマイトを得る上で、反応温度を60〜100℃、好ましくは80〜95℃とすることが重要な要件となる。この理由はこの反応温度が60℃より小さくなると結晶化に要する時間が長くなり、一方、100℃より大きくなっても特に製品の品質には影響ないが常圧での反応が不可能となり、耐圧容器を用いなければならず、作業効率が著しく低下するためである。
この第2の反応の反応時間は3〜12時間、好ましくは6〜9時間である。
反応終了後、固液分離後、洗浄、乾燥、必要により粉砕を行って炭酸型ハイドロカルマイトを得ることができる。
本発明では、この炭酸型ハイドロカルマイトを用いてA−1工程を行うことができるが、操作中の凝集を効果的に抑制するため、該炭酸型ハイドロカルマイトを更に分散剤で表面処理することができる。この場合、前記反応終了後の炭酸型ハイドロカルマイトを含有する反応液に前記した分散剤を炭酸型ハイドロカルマイトに対して0.5〜15重量%、好ましくは1〜10重量%添加し、その後乾燥を行えばよい。
A−1工程は前記炭酸型ハイドロカルマイトを特定温度範囲で加熱処理し、該炭酸型ハイドロカルマイト構造中から炭酸イオンを脱離させ、複合酸化物を得る工程である。
A−1工程において、該炭酸型ハイドロカルマイトを加熱処理する温度は400〜900℃、好ましくは700〜850℃とすることが重要な構成要件となる。この理由は加熱処理温度が900℃より大きくなると、目的とする焼生物以外の複合酸化物が生成しやすくなり、一方、400℃より小さくなると炭酸の除去時間が長くなり、また、除去できない炭酸が残存するようになるからである。加熱処理を行う雰囲気は大気中であっても不活性ガス雰囲気下でも特に制限されるものではない。加熱処理時間は温度により異なり特定できなが、一例を示せば800℃で30分ないし4時間である。
かくして得られるものは、ハイドロカルマイトの構造中から炭酸イオンが脱離した複合酸化物である。なお、分散剤が添加されたものはこの加熱処理により加熱分解される。
次いで、本発明では、下記するB−1工程又はB−2工程を実施しハイドロカルマイト構造の再生と所望のアニオンの取り込みを行う。
B−1工程は前記A−1工程で得られた複合酸化物を水に浸漬し、水酸イオンをハイドロカルマイト構造中に取り込んでハイドロカルマイト構造を再生させて、下記一般式(3)
[式中、nはn≦20を表す。]
で示されるハイドロカルマイト(水酸化ハイドロカルマイト)を得る工程である。
B−1工程において、前記の好ましい加熱処理条件、例えば800〜850℃で1時間の加熱処理を行うことにより水酸イオンを理論値に近い量まで取り込ませることが出来る。
B−1工程の具体的な操作は、所定量の複合酸化物と水とを0〜50℃、好ましくは10〜30℃で1時間以上、好ましくは3〜6時間、攪拌下に反応を行って、ハイドロカルマイト構造の再生と水酸イオンの導入を行う。
反応終了後、濾過、水洗、乾燥、必要により粉砕、分級して製品とする。
B−2工程は前記A−1工程で得られた生成物を亜硝酸、硝酸又はこれらの金属塩を含む水溶液に浸漬し、下記一般式(1)
[式中、XはOH-、NO3 - 及びNO2 - から選択される少なくとも1種のアニオンであり、nはn≦20を表す。]
で示されるハイドロカルマイトを得るものである。
なお、A−1工程で得られる複合酸化物を亜硝酸、硝酸又はこれらの金属塩を含む水溶液に浸漬すると、最初に前記一般式(1)の式中のXがOH-の水酸型ハイドロカルマイトが生成され、次いでOH-とNO3 - 又はNO2 - とのアニオン交換により硝酸型ハイドロカルマイト又は亜硝酸型ハイドロカルマイトが生成される。従って、このB−2工程で得られるハイドロカルマイトは式中のXが例えばOH-、NO3 - 、NO2 - 単独、或いはOH-とNO3 - 、OH-とNO2 - の2種以上のアニオンを含むハイドロカルマイトを得ることができる。
B−2工程で使用する亜硝酸、硝酸又はこれの金属塩を含む水溶液は、亜硝酸、硝酸又はこれの金属塩を水に溶解した水溶液であり、前記亜硝酸、硝酸の金属塩としては、例えば亜硝酸ナトリウム、亜硝酸リチウム、亜硝酸カリウム、亜硝酸カルシウム、亜硝酸マグネシウム、亜硝酸亜鉛、硝酸ナトリウム、硝酸リチウム、硝酸カリウム、硝酸カルシウム、硝酸マグネシウム、硝酸亜鉛等が挙げられ、これらは1種又は2種以上で用いることができる。
亜硝酸、硝酸又はこれの金属塩を含む水溶液は、亜硝酸イオン又は硝酸イオンを0.03〜0.3規定、好ましくは0.1〜0.2規定含む水溶液として調製する。
前記A−1工程で得られる複合酸化物は一般式(1)の式中のXにおいて全てのOH-をNO2 - 又はNO3 - に置換するまで取り込むことが可能であるが好ましい置換率は0.8〜0.5、更に好ましくは0.7〜0.6であり、なお、置換率を上げるため大量のNO3−又はNO2 - との接触はカルマイト構造の破壊を生じるため本発明では使用する亜硝酸、硝酸又は、これらの金属塩は複合酸化物に対して亜硝酸イオン又は硝酸イオンとして理論量以上の1.0〜1.4当量、特に好ましくは1.0〜1.2倍当量とすることが亜硝酸イオン又は硝酸イオンをカルマイト構造を壊さずに理論値に近い量まで取り込ませることが出来るので好ましい。なお、本発明では、この亜硝酸、硝酸又は、これらの金属塩を含む水溶液への浸漬は1回に限らず必要により何度でも繰り返し行うことができる。
B−2工程の具体的な操作は、所定量の複合酸化物と亜硝酸イオン又は硝酸イオンを含む溶液とを室温、好ましくは10〜30℃で30分以上、好ましくは30分〜6時間、攪拌下に反応を行って、ハイドロカルマイト構造の再生と水酸イオン、亜硝酸イオン又は硝酸イオンの導入を行う。
反応終了後、濾過、水洗、乾燥、必要により粉砕、分級して製品とする。
第3の方法は、微細で粒度分布がシャープな水酸型ハイドロカルマイトを用い、該水酸型ハイドロカルマイトの粒度特性を保持した硝酸型ハイドロカルマイト或いは亜硝酸型ハイドロカルマイトをアニオン交換反応により得る方法である。
この第3の方法は、好ましくは前記B−1工程で得られた下記一般式(3)
[式中、nはn≦20を表す。]
で示されるハイドロカルマイト(水酸型ハイドロカルマイト)を亜硝酸、硝酸又はこれらの金属塩を含む水溶液に浸漬し、下記一般式(4)
[式中、AはNO3 - 及びNO2 - から選択される少なくとも1種のアニオンであり、nはn≦20を表す。]
で示されるハイドロカルマイト(亜硝酸型又は硝酸型のハイドロカルマイト)を得るC−1工程を行う。なお、C−1工程の条件は亜硝酸、硝酸又はこれらの金属塩を含む水溶液と浸漬条件等も前記B−1工程と同じなので詳細な説明は省略し、前記B−2工程を参照のこと。
C−1工程の反応終了後、濾過、水洗、乾燥、必要により粉砕、分級して製品とする。
前記一般式(1)で表されるハイドロカルマイトにおいて、前記した疎水化剤で表面処理されていないものにあっては、更に疎水化剤で表面処理することができる。この場合、疎水化剤で表面処理する方法としては、湿式又は乾式で行うことができる。湿式法により行う場合は、前記疎水化剤を所望の濃度含む溶媒に前記一般式(1)で表されるハイドロカルマイトを浸漬し、溶媒ごと噴霧乾燥するか、或いは固液分離後、乾燥を行うことにより、前記疎水化剤で表面処理されたハイドロカルマイトを得ることができる。
一方、乾式法は疎水化剤とハイドロカルマイトとをヘンシェルミキサー等を用いて乾式で十分混合する方法、或いは疎水化剤を溶剤で希釈し、ハイドロカルマイトに前記希釈液を加えて混合し、これを加熱、乾燥することにより、該疎水化剤で表面処理されたハイドロカルマイトを得ることができる。
なお、疎水化剤の添加量は、前述したようにハイドロカルマイトに対して0.5〜15重量%、このましくは1〜10重量%となるように調製することが好ましい。
また、前記第2又は第3の方法では、B−1工程、B−2工程又はC−1工程終了後の反応液に例えば、所定量の分散剤、界面活性剤を添加し、固液分離後、乾燥を行うことにより効果的に製造することができる。
本発明の塩素イオン捕集剤は、ゼオライト、ハイドロタルサイト等の他の塩素イオン捕集剤と併用して用いることができる。
本発明の塩素イオン捕集剤は塗料材料組成物やコンクリート組成物の1成分として含有させて使用することができる。
塗装材料には、塗料、シーラント、樹脂モルタル、セメントモルタルなどの形態があるが、いずれの塗装材料にも好適に使用できる。また、水性、油性の別なく使用できる。なかでも金属用塗料に配合して、防錆塗料の形態とするのが、最も見合った使用方法である。塗料用には、粒子の沈降防止のため、好ましくは平均粒子径が1〜3μmの微粉末であるものがよい。
防錆塗装材料として組成物を形成する際には、他の防錆顔料と併用することができる。
例えば、防錆顔料としては、Mg、Ca、Ba、Sr、Zn又はAlの1種又は2種以上から選ばれたリンのオキシ金属塩、モリブデン酸金属塩、リンモリブデン酸金属塩、ホウ酸金属塩、ホウ珪酸金属塩、リン珪酸金属塩、クロム酸塩、鉛酸塩、金属の複合酸化物等が挙げられが、クロム系、鉛系等の防錆顔料に対しても十分な効果はあるものの、環境上の問題から好ましくない。
リンのオキシ金属塩としては、例えば亜リン酸金属塩、リン酸金属塩及び/又はポリリン酸金属塩が挙げられる。亜リン酸金属塩としては、例えば亜リン酸マグネシウム、亜リン酸カルシウム、亜リン酸バリウム、亜リン酸ストロンチウム、亜リン酸亜鉛、亜リン酸アルミニウム、亜リン酸亜鉛カルシウム、亜リン酸亜鉛カリウム等が挙げられる。リン酸塩としては、例えば、リン酸マグネシウム、リン酸カルシウム、リン酸バリウム、リン酸ストロンチウム、リン酸亜鉛、リン酸アルミニウム、リン酸亜鉛マグネシウム、リン酸亜鉛カルシウム、リン酸亜鉛カリウム、ポリリン酸金属塩としては、例えばポリリン酸カルシウム、ポリリン酸マグネシウム、ポリリン酸亜鉛及びポリリン酸アルミニウム等が挙げられる。
モリブデン酸金属塩としては、例えばモリブデン酸亜鉛、モリブデン酸カルシウム、モリブデン酸バリウム、モリブデン酸アルミニウム、モリブデン酸マグネシウム、モリブデン酸ストロンチウム、モリブデン酸亜鉛カルシウム等及びモリブデン酸亜鉛カリウム等が挙げられる。
リンモリブデン酸塩としては、例えばモリブデン酸亜鉛、モリブデン酸カルシウム、モリブデン酸バリウム、モリブデン酸アルミニウム、モリブデン酸マグネシウム、モリブデン酸ストロンチウム及びモリブデン酸亜鉛カリウム等が挙げられる。
ホウ酸塩としては、例えばホウ酸亜鉛、ホウ酸カルシウム、ホウ酸バリウム、ホウ酸アルミニウム、ホウ酸マグネシウム、ホウ酸ストロンチウム、ホウ酸亜鉛カルシウム及びホウ酸亜鉛カリウム等が挙げられる。
ホウ珪酸塩としては、例えばホウ珪酸亜鉛、ホウ珪酸カルシウム、ホウ珪酸バリウム、ホウ珪酸アルミニウム、ホウ珪酸マグネシウム、ホウ珪酸ストロンチウム、ホウ珪酸亜鉛カリウム、ホウ珪酸亜鉛カルシウムストロンチウム及びホウ珪酸カルシウムストロンチウム亜鉛等が挙げられる。
リン珪酸塩としては、例えばリン珪酸亜鉛、リン珪酸カルシウム、リン珪酸バリウム、リン珪酸アルミニウム、リン珪酸マグネシウム、リン珪酸ストロンチウム、リン珪酸亜鉛カリウム、リン珪酸亜鉛カルシウム及びリン珪酸カルシウムストロンチウム亜鉛等が挙げられる。
これらの防錆顔料は、1種又は2種以上で用いられ、また、中性塩、塩基性塩又は複合塩のいずれであってもよく、また、含水物又は無水物のいずれであってもよい。また、これらの防錆顔料は、レーザー光散乱法により求められる平均粒子径が20μm以下、好ましくは0.01〜10であると塗料分散性が良好となる点で好ましい。
また、上記した防錆顔料を所望により酸性リン酸エステル又は/及びキレート能を有するホスホン酸、又はその誘導体から選ばれた有機リン酸化合物で表面処理したものであったりも差し支えない。ハイドロカルマイトと防錆顔料の配合割合は特に制限されるものではないが、多くの場合、ハイドロカルマイト100重量部に対して防錆顔料3〜3000重量部、好ましくは5〜2000重量部とすることが防錆効果の設計自由度と経済性の面で好ましい。
本発明の塗装材料組成物において前記塩素イオン捕集剤は塗料ビヒクルに配合させて使用することができる。塗料ビヒクルとは、塗料成分を分散させる媒体をいう。即ち、塗膜形成成分である重合油、天然または合成樹脂、無機系結合剤、繊維素やゴムの誘導体等の高分子物質やそれらを溶剤に溶解させたものである。
前記合成樹脂としては、例えばフェノール樹脂、アルキド樹脂、メラミン樹脂、グアナジン樹脂、ビニル樹脂、エポキシ樹脂、ポリアミン樹脂、アクリル樹脂、ポリブタジエン樹脂、ポリエステル樹脂、ウレタン樹脂、ケイ素樹脂、含フッ素樹脂等が挙げられ、これらは必要に応じ、混合系または変性された樹脂であってもよく、また、湿気硬化型樹脂でも差し支えない。
また、前記無機系結合剤としては、水溶性珪酸塩、変性水溶液珪酸塩、アルキルシリケート、アルコキシシリケート、カップリング剤、コロイダルシリカ等が挙げられる。
前記水溶性珪酸塩としては、一般式M2O・xSiO2・yH2Oで表され、Mはナトリウム、リチウム、カリウム等のアルカリ金属、N(C24OH)2、N(CH2OH)4、N(C24OH)4、C(NH23NHを示し、式中のx及びyは整数を示し、具体的な化合物としては例えば、珪酸ナトリウム、珪酸カリウム、珪酸リチウム等の珪酸アルカリ金属塩、珪酸トリエタノールアミン、珪酸テトラメタノールアンモニウム、珪酸テトラエタノールアンモニウム等が挙げられる。
前記変性水溶性珪酸塩としては、前記水溶性珪酸塩をアルミニウム、マグネシウム、カルシウム、バリウム、ストロンチウム、亜鉛、ジルコニウム、バナジウムから選ばれる金属の酸化物、水酸化物、弗化物、珪弗化物の1種又は2種以上で変性させたもの、或いは珪弗化ナトリウム、トリ珪弗化亜鉛酸カリウム、フルオロアルミニウム錯塩、フルオロ亜鉛錯塩等で変性させたもの(特開昭53−18636号参照。)等が挙げられる。
前記アルキルシリケートとしては、一般式;SiR4又はSiXR3で表され、式中のRはアルキル基を示し、Xはアルコキシ基、ビニル基、エポキシ基、アミノ基、メタクリル基、メルカプト基を示す。前記アルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基等の炭素数1〜5の直鎖状又は分岐状のアルキル基が挙げられ、具体的な化合物として、例えば、テトラメチルシリケート、テトラエチルシリケート、テトラプロピルシリケート、テトラブチルシリケート等が挙げられる。
前記アルコキシシランとしては、一般式;Si(OR)4又はSiX(OR)3、SiR(OR)3で表され、式中のRはアルキル基を示し、Xはビニル基、エポキシ基、アミノ基、メタクリル基、メルカプト基を示す。前記アルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基等の炭素数1〜5の直鎖状又は分岐状のアルキル基が挙げられ、具体的な化合物として、例えば、テトラメチルキシシリケート、テトラエトキシシリケート、テトラプロポキシシリケート、テトラブトキシシリケート等が挙げられる。
前記カップリング剤としては、例えば、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシランや、γ−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、γ−メタクリロキシトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン等のシラン系カップリング剤、イソプロピルトリイソステアロイルチタネートや、テトラオクチルビス(ジドデシル)ホスファイトチタネート、イソプロピルトリオクタノイルチタネート、イソプロピルトリドデシルベンゼンスルホニルチタネート等のチタン系カップリング剤、アルミニウム系カップリング剤、ジルコニウム系カップリング剤等が挙げられる。
前記コロイダルシリカとしては、粒径が通常2〜100nm程度のもので、固形分20〜40%程度で0.7%以下のNa2Oを含むもので、特に好ましくはpH8〜10でアルカリで安定化されたコロイダルシリカを用いることができる。
前記塗膜成分は1種又は2種以上で適宜組み合わせて用いることができる。
また、希釈剤としては、水、アルコール類、ケトン類、ベンゼン類、トルエン、キシレンの如き芳香族炭化水素類、液化パラフィンの如き脂肪族炭化水素類など、一般的に塗料で用いられている溶剤が適用できる。
塗料ビヒクルに対する本発明の塩素イオン捕集剤の配合量は、通常0.01〜40重量%、好ましくは0.1〜30重量%である。配合量が0.01重量%より小さくなると防錆力が低くなり、40重量%より大きくなると、塗料粘性が高くなり、好ましい塗料特性が得られなくなる。
本発明の塗装材料組成物は上記以外の成分として塗装分野で一般的に用いられる各種の添加剤を含有させて用いることができる。
本発明に係る塗装材料組成物は、刷毛やローラー塗り、スプレー塗装、静電気塗装、粉体塗装、ロールコーター、カーテンフローコーター、ディッピング塗装や電着塗装等に供することができる。
また、セメント組成物に含有させて使用する場合には、セメント粒子の粉末度以下、好ましくは平均粒子径が1〜7μm、更に好ましくは1〜5μmの微粉末であるものがよい。本発明に係るセメント組成物は主としてコンクリート構造物の塩害等による鉄筋の腐食を抑制させる目的で使用するものであって、その機能を効果的に発揮させるため、その使用の態様は特に限定する必要はないが、例えば次のようなことが挙げられる。
(1)セメント組成物中に単独または他の添加剤(例えば、分散剤、減水剤、硬化遅延剤、硬化促進剤など)共に配合せしめて事前にコンクリート中の遊離の塩素イオンを抑制する。
(2)塩害により鉄筋の腐食が懸念されるコンクリート躯体内に単独または他の添加剤と共に注入材として用いる。
(3)塩害により劣化して表面剥離したコンクリート躯体に対し他の添加剤と共に断面修復材あるいは表面修復材として用いる。
従って、以上から判るように、本発明に係る塩素イオン捕集剤において、ハイドロカルマイトを有効成分とするというのは必ずしも化学組成的に純粋であることではなく、主組成としてX線回折的に特定できるものであって、塩素イオン捕集能があるものをいい、他方、これを塩素イオン捕集剤として、単独は勿論、他の添加剤と併用してセメント材料に添加、使用する場合を含むことを意味する。本発明の塩素イオン捕集剤は、例えば、普通、早強、超早強等の各種ポルトランドセメント、これらポルトランドセメントに高炉スラグ、フライアッシュ、及びシリカを混合した各種混合セメント、中庸熱セメント、ビ−ライトセメント、並びに、アルミナセメント等のセメント成分に含有させて用いることができる。この場合、塩素イオン捕集剤の使用量は特に限定されるものではないが、通常、セメント組成物100重量部に対して0.5〜30重量部、好ましくは1〜10重量部とすることが好ましい。また、セメントとセメント混和材の他に、減水剤、消泡剤、防凍剤、凝結促進剤や凝結遅延剤等の凝結調整剤、セメント膨張材、セメント急硬材、無機硫酸塩、ベントナイトやゼオライト等の粘土鉱物、ハイドロドカルマイト等のアニオン交換体等を、本発明の目的を実質的に阻害しない範囲で併用することができる。
本発明に係る塩素イオン捕集剤は、平均粒子径が1μm以上7μm未満であり、100μm以上の粒子が3重量%未満であることを特徴とする前記一般式(1)で表されるハイドロカルマイトを有効成分とし、該ハイドロカルマイトのアニオン交換作用により塗装材料やコンクリート中の塩素イオンを容易に捕集し、一方で腐食抑制効果の高いOH-、NO3 - 、NO2 - のアニオンを放出する。このため各種構造物における金属の腐食を抑制することができる。特に、NO2 - は鉄筋の腐食を抑制または阻止する作用が強いので、セメント添加剤として一層優れた機能を発揮することができる。
本発明を更に具体的に説明するために、実施例をもって以下に説明するが本発明はこれらに限定されるものではない。なお、以下の実施例1〜6の中で、実施例5,6は本発明の実施例を示し、実施例1〜4は参考例を示す。
なお、物性評価および化学分析に用いた機器と方法を以下に記載した。
(1)X線回折パターン(XRD):X線回折装置(理学製RINT2400型)を用いた。
(2)水分測定:TG/DTA(熱重量示差熱分析;セイコーインスツルメンス製のTG/DTA6300型)を用いて、昇温速度10℃/minで40〜800℃の重量変化を測定し、結晶水を算出した。
(3)レーザー光散乱法による平均粒子径(D50):マイクロトラック(日機装製 HRA型)を用いて、レーザー光散乱法による平均粒子径(D50)の測定をした。
(4)化学組成分析:カルシウムとアルミニウムはICP(Varian製 LIBERT YII型)によって定量した。
(5)塩素イオン吸着能の評価:試料2.0gを100mlビーカーにとり、所定濃度のNaCl溶液20mlを加え、室温で4時間攪拌する。次いで、固液分離して蒸留水で十分洗浄し、50℃で20時間乾燥させ粉末を得た。この粉末について蛍光X線分析により塩素イオン含有率を求め、各試料の塩素イオン吸着能を算出した。
[製造例1]
<粗粒の亜硝酸型ハイドロカルマイトの合成>
特開平7−33431号公報に基づいて亜硝酸型ハイドロカルマイトを合成した。Al23:54.89重量%、CaO:34.59重量%を含有するアルミナセメント5kgと、亜硝酸カルシウム1水塩4.04kg、水酸化カルシウム(工業用消石灰)3.69kg、水40kgを加え、25℃で24時間反応を行ったところ、ゲル状の沈澱物が生成した。次いで、このスラリーを60℃に加温して常圧で4時間撹拌を続けながら結晶化を行った。得られた沈澱物を常法により濾過、洗浄した後、乾燥したところ17kgの白色固体を得た。得られた白色固体をコーヒミルで粉砕し、150メッシュ以下の白色粉末を得た。白色粉末をX線回折、化学分析、電子顕微鏡写真で解析した結果、不純物として少量のCa(OH)2を含有する亜硝酸型ハイドロカルマイト(3CaO・Al23・Ca(NO22・10H2O)であることを確認した。
この粉末はレーザー光散乱法による平均粒子径(D50)が9.4μmであり、その粒度分布を図1に示した。図1より明らかなように、粒度分布は二つの山を示しており、得られた粉末が微粒子と粗大粒子の2種類で構成されていた。10μm以上の粒子が約50重量%存在し、100μm以上の粒子が約7重量%存在した。150メッシュ以下に調製した粉末であっても、レーザー光散乱法による粒度分布は300μmまでの粒子の存在を示している。凝集2次粒子を計測していると推測される。
実施例1
<微粒子亜硝酸型ハイドロカルマイトの作成>
製造例1で得られた亜硝酸型ハイドロカルマイトの粉末の粗大粒子を少なくするため、更にコーヒミルで粉砕を繰り返した。得られた粗大粒子の少ない粉末の粒度分布を図2に示した。図2より明らかなように、粗大粒子の山は減少し、微小粒子の山が大きくなっており、粒度分布が大きく改善された。
この粉末のレーザー光散乱法による平均粒子径(D50)は5.3μmであり、10μm以上の粒子が約30重量%存在し、100μm以上の粒子が約1重量%存在した。
実施例2
<微粒子亜硝酸型ハイドロカルマイトの作成>
製造例1で作成した平均粒子径が9.4μmの粉末をジェットミル(株式会社 セイシン企業製、STJ−200型)を用いて粉砕を行い、微粉末の亜硝酸型ハイドロカルマイトを得た。
微粉末の亜硝酸型ハイドロカルマイトは、レーザー光散乱法による平均粒子径(D50)は2.5μmであり、10μm以上の粒子が存在しないことを確認した。この粒度分布測定結果を図3に示した。図3からわかるように、粒度分布が正規分布に近い良好な特性になっている。
実施例3
<微粒子硝酸型ハイドロカルマイトの作成>
Al23:54.89重量%、CaO:34.59重量%を含有するアルミナセメント5kgと、消石灰5.68kg、硝酸ソーダ4.57kg、水40kgとを加え、25℃で24時間反応し、ゲル状の沈殿物が生成した。次いで、このスラリーを60℃に加温して常圧で4時間攪拌を続けながら結晶化を行った。得られた沈殿物を常法により濾過、洗浄した後、乾燥したところ、17kgの白色固体を得た。得られた白色固体をコーヒミルで粉砕し、150メッシュ以下の白色粉末を得た。白色粉末をX線回折、化学分析、電子顕微鏡写真で解析した結果、不純物として少量のCa(OH)2を含有する硝酸型ハイドロカルマイト(3CaO・Al23・Ca(NO22・10H2O)であることを確認した。この硝酸型ハイドロカルマイトをジェットミル(株式会社セイシン企業製、STJ−200型)を用いて粉砕を行い、微粉末の硝酸型ハイドロカルマイトを得た。
微粉末の硝酸型ハイドロカルマイトは、レーザー光散乱法による平均粒子径(D50)は4.2μmであり、10μm以上の粒子が2.5重量%であり、100μm以上の粒子の存在しないことを確認した。
実施例4
<微粒子亜硝酸型ハイドロカルマイトの合成>
Na2O:19重量%、Al23:20重量%のアルミン酸ソーダ10kgに水を加えて100kgとした(a液)。水酸化カルシウム(工業用消石灰)4.35kgと亜硝酸カルシウム1水塩2.94kgに水を加えて100kgとした(b液)。次いで、a液にb液を室温で注入ポンプで約1時間掛けて添加を行ったところ、ゲル状の沈殿物が生成した。添加終了後、このスラリーを60℃の昇温し、常圧で4時間結晶化を行った。次いで、このスラリーにオレイン酸120gを添加混合した後、室温まで冷却し、ビーズミル(アシザワ株式会社製 LMZ2型、0.5mmφジルコニアビーズ使用)を用いて湿式粉砕を行った。得られた沈殿物を常法により濾過、洗浄して後、乾燥、粉砕してレーザー光散乱法による平均粒子径(D50)が3.1μmであって、10μm以上の粒子の存在しないオレイン酸で表面処理された亜硝酸型ハイドロカルマイト(3CaO・Al23・Ca(NO22・10H2O)12kgを得た。
実施例5
<微粒子水酸型ハイドロカルマイトの合成>
水酸化カルシウム(純正化学製、試薬)59.28gを純水1000mlに添加し、攪拌してスラリーとした。粉末アルミン酸ソーダ(関東化学製、試薬、Na/Al元素比1.5)40.40gを純水600mlに溶解して、前記水酸化カルシウムのスラリーに攪拌下添加した。次いでこのスラリーに、炭酸水素ナトリウム(キシダ化学製、試薬)15.00gを純水200mlに溶解した水溶液を攪拌下25℃に保持して添加して、25℃で30分反応を行うことによりゲル状の沈殿物を生成させた。ゲル状の沈殿物のスラリーを攪拌下加熱して、80℃で6時間結晶化を行った。次いで、このスラリーにオレイン酸1mlを添加混合した後、室温まで冷却し、濾過、洗浄して後、乾燥、粉砕してレーザー光散乱法による平均粒子径(D50)が2.8μmの炭酸型ハイドロカルマイト(3CaO・Al23・CaCO3・11H2O)を得た。
炭酸型ハイドロカルマイトは電気炉で800で2時間焼成して一旦複合酸化物とし、常温まで冷却して純水1000mlに25℃で3時間攪拌下に分散させることで再水和させて、水酸型ハイドロカルマイト(3CaO・Al23・Ca(OH)2・11H2O)を得た。この水酸型ハイドロカルマイトはレーザー光散乱法による平均粒子径(D50)が2.8μmであり、その粒度分布を図4に示した。図4より明らかなように、10μm以上の粒子は存在しなかった。
また、前記で得られた炭酸型ハイドロカルマイトの電子顕微鏡写真を図5及び図6に示した。なお、市販の炭酸型ハイドロカルマイトの電子顕微鏡写真を第7図に併記した。
実施例6
<微粒子亜硝酸型ハイドロカルマイトの合成>
実施例5で得られた水酸型ハイドロカルマイトの塩素イオン吸着能は0.29ミリモル/gであり、等量の0.1規定亜硝酸ナトリウムを用いて3回アニオン交換を行うことによって、亜硝酸型ハイドロカルマイト(3CaO・Al23・Ca(NO22・10H2O)を得た。この亜硝酸型ハイドロカルマイトはレーザー光散乱法による平均粒子径(D50)が2.8μmであり、その粒度分布は第4図と同じで、10μm以上の粒子は存在しなかった。
比較例1
<亜硝酸型ハイドロカルマイトの合成>
特開平11−92692号公報の記載に基づいて亜硝酸型ハイドロカルマイトを合成した。Na2O:19重量%、Al23:20重量%のアルミン酸ソーダ10kgに水を加えて100kgとした(a液)。水酸化カルシウム(工業用消石灰)4.35kgと亜硝酸カルシウム1水塩2.94kgに水を加えて100kgとした(b液)。次いで、a液にb液を室温で注入ポンプで約1時間掛けて添加を行ったところ、ゲル状の沈殿物が生成した。添加終了後、このスラリーを60℃の昇温し、常圧で4時間結晶化を行った。得られた沈殿物を常法により濾過、洗浄して後、乾燥、コーヒミルで粉砕してレーザー光散乱法による平均粒子径(D50)が22.1μmの亜硝酸型ハイドロカルマイト(3CaO・Al23・Ca(NO22・10H2O)12kgを得た。
<塗装材料組成物>
<塗装材料組成物の調製>
前記で調製した実施例1〜6、比較例1及び製造例1(比較例2とした)で得られたハイドロカルマイトを用いて防錆塗料を調製した。
市販の熱硬化型アクリル塗料樹脂(三井東圧化学製;アルマテックス782−5)100重量部と無機顔料として亜リン酸亜鉛20重量部、炭酸カルシウム10重量部、酸化チタン5重量部及びキシレン/トルエン(1/1:v/v)を仕込み、サンドグラインダーで2500回転/分の撹拌速度で2時間分散した後、上記で調製した亜硝酸型ハイドロカルマイト又は硝酸型ハイドロカルマイトを1.0重量部仕込み、更に、キシレン/トルエン(1/1:v/v)を20重量部仕込んで、再びサンドグラインダーにて分散させて、防錆塗料を調製した。
また、ハイドロカルマイトを添加しないものを比較例3とした。
<塗膜の平滑性と艶の評価および防錆性能の評価>
前記で調製した塗料材料を70×150×0.7mmの日本テストパネル製、SPCC−SD鋼板に乾燥膜厚が25〜30μmになるようにバーコーダーにて塗布し、25℃、湿度60%の恒温恒湿器で1週間乾燥させて塗装鋼板を得た。この塗装鋼板の塗膜の平滑性と艶を目視により評価し、ツブやヘイズ(曇り)等の異常がなく平滑性と艶の良好な状態を評価した。次いで、この塗装鋼板の裏面および端面を3M社スコッチブランドテープでマスキング後、塗装面をクロスカットして塩水噴霧試験機にセットし、防錆試験を行った。防錆性能の評価は塩水噴霧試験400時間後における結果を下記の5段階評価法により評価し、防錆効果を判定し、その結果を表2に示した。
<防錆性能の評価>
評価5:クロスカット部以外の錆発生が全くなく、ブリスターもない。
評価4:クロスカット部から片側2mm以内に錆が発生、ブリスターもない。
評価3:クロスカット部から片側6mm以内に錆および部分的にブリスターが発生。
評価2:クロスカット部から片側12mm以内に錆および部分的に錆の発生。
評価1:鋼板全体に錆およびブリスターが発生。
表2の結果より、本発明の塩素イオン捕集剤を含有する塗装材料組成物は、塗膜性能が著しく改善されることが分かる。
<セメント組成物>
<セメント組成物の調製>
実施例1〜6、比較例1及び製造例1(比較例2)得られたハイドロカルマイトを用いてJIS A5308に準じて防錆モルタルを調製した。すなわち、普通ポルトラドセメント600g、細骨材[有明産枠石、比重2.54、吸水率0.8重量%、粗粒率3.19、配合比(4.75〜2.83mm:2.83〜1.16mm:1.16〜0.6mm:0.6〜0.3mm=10:25:25:15)]1350g及びこれに高カルシウム置換A型ゼオライト(日本化学工業製、商品名「アルカット」)60gおよび前述のハイドロカルマイト試料60gを加えたものを混練機にて30秒間混練した。次いで、1.5重量%のNaCl水330gを添加して30秒間混練し、20秒間休止した後、スプーンで2〜3回かきまぜた。次いで、120秒間混練した後、モルタルを型枠(40×40×160mm)に充填した。24時間後に脱枠し、得られた供試体を20℃±3℃で1日間恒温養生した。
また、ハイドロカルマイトを添加しないものを比較例3とした。
<モルタルの塩素イオン捕捉性能の評価>
上記の供試体を450mlの蒸留水中に浸漬し、所定時間(日)ごとに上澄み液1mlを分取し、蒸留水中に溶出した塩素イオン量をイオンクロマトアナライザにて測定した。この結果を表3に示す。
表3の結果より、本発明の塩素イオン捕集剤を用いたセメント組成物は、塩素イオン捕集能も向上することが分かる。
本発明は、粒度分布がシャープで優れた塩素イオン捕集能を有する新規なハイドロカルマイトを提供することができるので、上記のハイドロカルマイトを有効成分とする塩素イオン捕集剤は、優れた塩素イオン捕集能を有し、セメント材料への添加剤としてだけでなく、塗料、接着剤などの塗装材料分野でも有用な組成物として利用することができる。
製造例1で得られた亜硝酸型ハイドロカルマイトの粒度分布図である。 実施例1で得られた亜硝酸型ハイドロカルマイトの粒度分布図である。 実施例2で得られた亜硝酸型ハイドロカルマイトの粒度分布図である。 実施例5で得られた水酸型ハイドロカルマイトの粒度分布図である。 実施例5で得られた原料の炭酸型ハイドロカルマイトの電子顕微鏡写真である。 実施例5で得られた原料の炭酸型ハイドロカルマイトの電子顕微鏡写真の拡大図である。 市販の炭酸型ハイドロカルマイトの電子顕微鏡写真である。

Claims (4)

  1. 下記一般式(2)
    [式中、nはn≦20を表す。]
    で示され、レーザー光散乱法による平均粒子径が1μm以上7μm未満であり、100μm以上の粒子の含有量が3重量%未満の炭酸型ハイドロカルマイトを400〜900℃で加熱処理するA−1工程、前記A−1工程で得られた生成物を水に浸漬し、下記一般式(3)
    [式中、nはn≦20を表す。]
    で示されるハイドロカルマイトを得るB−1工程を有することを特徴とするハイドロカルマイトの製造方法。
  2. 下記一般式(2)
    [式中、nはn≦20を表す。]
    で示され、レーザー光散乱法による平均粒子径が1μm以上7μm未満であり、100μm以上の粒子の含有量が3重量%未満の炭酸型ハイドロカルマイトを400〜900℃で加熱処理するA−1工程、前記A−1工程で得られた生成物を亜硝酸、硝酸又はこれらの金属塩を含む水溶液に浸漬し、下記一般式(1)
    [式中、XはOH-、NO3 - 及びNO2 - から選択される少なくとも1種のアニオンであり、nはn≦20を表す。]
    で示されるハイドロカルマイトを得るB−2工程を有することを特徴とするハイドロカルマイトの製造方法。
  3. 前記A−1工程の炭酸型ハイドロカルマイトは、水酸化カルシウムとアルミン酸ナトリウムを含む水溶媒中に、炭酸塩又は炭酸水素塩を含む水溶液を添加し、60℃未満で第1の反応を行い、次いで60〜100℃で第2の反応を行う工程を有す方法により製造された炭酸型ハイドロカルマイトである請求項1または2に記載のハイドロカルマイトの製造方法。
  4. 更に、請求項1記載のB−1工程で得られた下記一般式(3)
    [式中、nはn≦20を表す。]
    で示されるハイドロカルマイトを亜硝酸、硝酸又はこれらの金属塩を含む水溶液に浸漬し、下記一般式(4)
    [式中、AはNO3 - 及びNO2 - から選択される少なくとも1種のアニオンであり、nはn≦20を表す。]
    で示されるハイドロカルマイトを得るC−1工程を有することを特徴とするハイドロカルマイトの製造方法。
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