JP5875899B2 - 亜硝酸型ハイドロカルマイト組成物の製造方法 - Google Patents

亜硝酸型ハイドロカルマイト組成物の製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、コンクリート構造物用の塩化物イオン捕集剤等として有用な亜硝酸型ハイドロカルマイト組成物の製造方法に関する。
ハイドロカルマイトは一般式3CaO・Al・CaX2/m・nHOで示されるCa−Al系複合水酸化物である(Xは1価又は2価のアニオンであり、mはアニオンの価数を表し、nは20以下の自然数である。)。ハイドロカルマイトは層状結晶性化合物であり、アニオン交換性のあることが知られている。これらハイドロカルマイトの中、アニオンXとして亜硝酸イオンを含むハイドロカルマイト(以後、亜硝酸型ハイドロカルマイトと称する。)は、例えばコンクリート構造物における塩害等による鉄筋の腐食を抑制するための塩化物イオン捕集剤として有用であることが知られている(特許文献1)。
亜硝酸型ハイドロカルマイトは、その強力な陰イオン交換能により塩化物イオン等の腐食因子を捕捉すると同時に、亜硝酸イオンを放出する。更に、放出された亜硝酸イオンにより、金属表面に不動態膜が形成される。このように亜硝酸型ハイドロカルマイトは塩化物イオン捕捉機能と不動態膜形成機能を併せ持つため、コンクリート構造物の鉄筋に対し、優れた防錆効果を発揮する。
従来、亜硝酸型ハイドロカルマイトを製造する方法として、アルミン酸ナトリウムの溶液と、亜硝酸カルシウム及び/または亜硝酸ナトリウムと、消石灰とからなる原料液を反応させ、次いで結晶化させる方法(特許文献1、実施例1〜4)、CaO−Al系化合物と可溶性亜硝酸塩、又はCaO−Al系化合物と可溶性亜硝酸塩及び消石灰とからなる原料液を反応させ、次いで結晶化させる方法(特許文献2、実施例1〜5)が知られている。
上記いずれの方法も、原料成分を水溶液中にて混合・反応させてゲル状沈殿物を得、次いで該ゲル状沈殿物のスラリーを所定温度にて熟成して結晶化させ、得られた結晶の沈殿物を濾過・回収する工程よりなり、その生成物は主成分たる亜硝酸型ハイドロカルマイトと他の副生物を含む組成物(以後、亜硝酸型ハイドロカルマイト組成物の用語を用いる。)である。
近年、コンクリート構造物における塩害の問題がより深刻化しており、副生物が少なく、かつ安価に亜硝酸型ハイドロカルマイト組成物を得ることのできる製造方法の確立が望まれている。この点、特許文献2の方法は原料が安価に入手できる利点を有していた。
特開平04−154648号公報 特開平07−033431号公報
従来、特許文献2の製造方法においては、副生物の生成抑制のため、結晶化及び乾燥処理は一貫して70℃以下の温度に保っておこなわれてきた。これは温度が70℃より大きくなるとハイドロカルマイトの層構造が崩れて、陰イオン交換能の低いものになり、また、Ca(OH)と3CaO・Alが生成する副反応が生じるとされていたためである(特許文献2、段落[0017])。しかし、最終的に得られる亜硝酸型ハイドロカルマイト組成物中には依然として副生物が含まれるものであることを本発明者らは確認した。
従って、本発明の目的は、CaO−Al系化合物と可溶性亜硝酸塩、又はCaO−Al系化合物と可溶性亜硝酸塩及び消石灰から、副生物の含量が低く、亜硝酸型ハイドロカルマイト含量の高い亜硝酸型ハイドロカルマイト組成物を得る新たな製造方法、その製造方法によって得られる亜硝酸型ハイドロカルマイト組成物、並びに従来の亜硝酸型ハイドロカルマイト組成物に比べて、亜硝酸イオンの放出量が多い新規な陰イオン交換体を提供することにある。
本発明者らは、上記実情に鑑みて、鋭意研究を重ねた結果、CaO−Al系化合物と可溶性亜硝酸塩、又はCaO−Al系化合物と可溶性亜硝酸塩及び消石灰から得られる亜硝酸型ハイドロカルマイト組成物の製造過程にて生成する特定の副生物(b’)に着目し、この副生物(b’)の生成が抑制された亜硝酸型ハイドロカルマイト組成物は、亜硝酸イオンの放出量及び塩化物イオン捕捉能に優れることを見出した。
更に、前記特定の副生物(b’)の生成は、70℃以下で結晶化処理を行って得られた結晶化処理物を、従来の上記予見に反し、90℃以上で更に加熱処理することにより、抑制されることを見出し、本発明を完成するに至った。
また、本発明者らは、亜硝酸イオン型ハイドロカルマイト粉末を亜硝酸イオン含有水溶液に浸漬した後、乾燥を行って得られるものは、亜硝酸イオン型ハイドロカルマイトとは、X線回折図において異なる回折ピークのパターンを示し、新規な陰イオン交換体になり、該陰イオン交換体は、従来の亜硝酸型ハイドロカルマイト組成物に比べて、特に亜硝酸イオンの放出量が多いものになることを見出し、本発明を完成するに到った。
従って、本発明が提供しようとする第一の発明は、CaO−Al系化合物と可溶性亜硝酸塩、又はCaO−Al系化合物と可溶性亜硝酸塩及び消石灰とを水溶媒中で混合・反応させてゲル状沈殿物を生成させる沈殿生成工程と、
前記ゲル状沈殿物を70℃以下で熟成し、結晶化処理物を得る結晶化工程と、
前記結晶化処理物を90℃以上で加熱する加熱処理工程と、
を備える下記一般式(1)
3CaO・Al・Ca(NO・nHO ・・・・(1)
(式中、nは20以下の自然数を表す。)で表される亜硝酸型ハイドロカルマイトを主成分とする、亜硝酸型ハイドロカルマイト組成物の製造方法である。
また、本発明が提供しようとする第二の発明は、X線回折分析したときに、2θ=11.0°付近の回折ピークの強度に対する2θ=29.4°付近の回折ピークの強度の相対強度比が0.3以下であることを特徴とする、第一の発明の方法により得られる亜硝酸型ハイドロカルマイト組成物である。
また、本発明が提供しようとする第三の発明は、第一の発明の方法によって得られる亜硝酸型ハイドロカルマイト組成物を、亜硝酸イオンを含む水溶液に浸漬した後、乾燥して得られることを特徴とする陰イオン交換体である。
本発明によれば、従来の製造方法よりも副生物の生成を低減することができ、得られる亜硝酸型ハイドロカルマイト組成物は従来の亜硝酸型ハイドロカルマイト組成物よりも、防錆成分となる亜硝酸イオンの放出量が多く、かつ腐食因子となる塩化物イオンの捕捉能に優れる。
さらに、本発明の方法により得られる亜硝酸型ハイドロカルマイト組成物に基づき、亜硝酸イオンの放出量が多い新規な陰イオン交換体を得ることが出来る。
実施例1で得られた亜硝酸型ハイドロカルマイト組成物のX線回折図。 比較例1で得られた亜硝酸型ハイドロカルマイト組成物のX線回折図。 比較例2で得られた亜硝酸型ハイドロカルマイト組成物のX線回折図。 比較例3で得られた亜硝酸型ハイドロカルマイト組成物のX線回折図。 実施例2で得られた陰イオン交換体のX線回折図。
以下、本発明をその好ましい実施形態に基づき説明する。
本発明に係る亜硝酸型ハイドロカルマイト組成物の製造方法は、
CaO−Al系化合物と可溶性亜硝酸塩、又はCaO−Al系化合物と可溶性亜硝酸塩及び消石灰とを水溶媒中で混合・反応させてゲル状沈殿物を生成させる沈殿生成工程と、
前記ゲル状沈殿物を70℃以下で熟成し、結晶化処理物を得る結晶化工程と、
前記結晶化処理物を90℃以上で加熱する加熱処理工程と、
を含む下記一般式(1)
3CaO・Al・Ca(NO・nHO ・・・・(1)
(式中、nは20以下の自然数を表す。)で表される亜硝酸型ハイドロカルマイトを主成分とする、亜硝酸型ハイドロカルマイト組成物の製造方法である。
以下、工程ごとに説明する。
<沈殿生成工程>
前記沈殿生成工程に係る原料のCaO−Al系化合物は、工業的に入手できるものであれば、いずれでもよいが、CaO−Al23系化合物としては、例えば化学式としてCaO・Al23、5CaO・3Al23、2CaO・Al23、3CaO・5Al23、12CaO・7Al23、3CaO・Al23等の鉱物組成を有する微粉末が挙げられる。本発明においては、特に、CaO・Al23、5CaO・3Al23、2CaO・Al23等の鉱物組成で構成されるアルミナセメントが安価であり好ましい。
前記沈殿生成工程に係る原料の可溶性亜硝酸塩としては、亜硝酸カルシウム、亜硝酸リチウム、亜硝酸ナトリウム、亜硝酸カリウムが挙げられる。本発明において、特に亜硝酸カルシウムを用いると、洗浄工程を省き、工程を簡素化できるので工業的に有利である。
CaO−Al系化合物及び可溶性亜硝酸塩、又はCaO−Al系化合物、可溶性亜硝酸塩及び消石灰の添加割合は、CaO/Alのモル比が1.0〜3.5、好ましくは1.7〜2.3、亜硝酸イオン/Alのモル比が0.5〜3.0、好ましくは1.5〜2.5である。
CaO/Alのモル比を上記範囲とする理由は、CaO/Alのモル比が1.0未満では目的物の収率が極端に低くなるばかりでなく、結晶化における熟成反応を行っても非晶質の割合が多くなり、結晶化度が低くなり、一方、CaO/Alのモル比が3.5より大きくなるとハイドロカルマイトが生成されず、Ca(OH)や3CaO・Al(以下、「CA」と呼ぶ)の不純物が生成されるからである。
また、亜硝酸イオン/Alのモル比を上記範囲とする理由は、亜硝酸イオン/Alのモル比が0.5未満では最終的に得られる亜硝酸型ハイドロカルマイトの亜硝酸イオン放出量が低くなり、一方、亜硝酸イオン/Alのモル比が3.0より大きくなると亜硝酸型ハイドロカルマイトの結晶層間に亜硝酸イオンを担持することが困難となり、また担持された亜硝酸イオンが酸化して硝酸イオンへ変化するなど亜硝酸イオンとして長期保持することが困難になるためである。
沈殿生成工程に係る水溶媒は、水のほか、可溶性亜硝酸塩を溶解でき、生成物に対して不活性な水溶性有機溶媒と水との混合溶媒であってもよい。
沈殿生成工程における水溶媒は、生成されるゲル状沈殿物を含むスラリーの固形分濃度が5〜30質量%の範囲となるように調整することが、反応を効率的に行う観点から好ましい。
なお、原料系の混合操作は、CaO−Al系化合物と可溶性亜硝酸塩、又はCaO−Al系化合物と可溶性亜硝酸塩及び消石灰が水溶媒中に存在していればよく、その添加方法及び添加順序は特に制限されるものではない。
沈殿生成工程に係る反応条件は、反応温度が60℃以下であればよく、好ましくは5〜40℃である。この理由は反応温度が60℃を超えると亜硝酸イオンが酸化されやすく、また層構造形成が阻害されるからである。また、反応時間は本製造方法において臨界的ではない。一般に5分以上、好ましくは10〜30分反応を行えば、ゲル状沈殿物が生成する。
<結晶化工程>
沈殿生成工程に次いで結晶化工程にて、ゲル状沈殿物を含むスラリーをそのまま熟成させハイドロカルマイトの結晶粒子を生成させる。
結晶化工程では、70℃以下、好ましくは40〜65℃で熟成反応を行う。熟成温度を上記範囲にする理由は、熟成温度が70℃を超えると、Ca(OH)とCaAを生成する副反応が生じ、若しくはハイドロカルマイトは生成するものの陰イオン交換能の低いものとなるからである。
結晶化工程で得られる結晶粒子を含む結晶化処理物は、得られた結晶化処理物をX線回折したときに、少なくとも2θ=11.0°付近と、2θ=13.1°付近に中乃至強の回折ピークが存在しているものであることが好ましい。この2θ=11.0°付近の回折ピーク(以下、回折ピーク(P1)と称することがある。)と、2θ=13.1°付近の回折ピークは、ハイドロカルマイトの層構造形成を示す一つの尺度となる。この2つの回折ピークが存在すると、亜硝酸イオンの放出量が多く、且つ、腐食因子となる塩化物イオンの捕捉能が高いハイドロカルマイト粉末が得られやすい。
なお、前記2θ=11.0°付近及び2θ=13.1°付近とは、各々±0.5°の誤差範囲を含むことを意味する。
前記結晶化工程に係る熟成時間は、特に制限はないが、前述した2θ=11.0°付近と、2θ=13.1°付近に中乃至強の回折ピークが存在するようになるまで行うことが肝要である。一般に熟成時間は2時間以上であれば良く、20〜48時間であることがより好ましい。
結晶化工程の後、以下に述べる加熱処理前に、必要に応じ残余の可溶性亜硝酸塩を除去するべく水で洗浄しても良いが、可溶性亜硝酸塩として亜硝酸カルシウムを用いた場合には、洗浄操作を省略することが出来る。
<加熱処理工程>
結晶化工程終了後、加熱処理を行う。この加熱処理工程により、最終的に得られる亜硝酸型ハイドロカルマイト組成物中の副生物(b’)の含量が低減することが出来る。このため、亜硝酸イオン放出量が高く、かつ塩化物イオン等の陰イオン捕捉能に優れる亜硝酸型ハイドロカルマイト組成物を得ることができる。
加熱処理は、結晶化工程を経た結晶化処理物を含むスラリーをろ過等により固液分離した後に加熱する方法、または結晶化工程を経た結晶化処理物を含むスラリーを、固液分離すると同時に加熱する方法のいずれでも良い。後者の方法は、製品となる粉末が一気に得られる利点を有する。後者の方法は、例えば、(イ)減圧下に上記温度範囲で加熱処理する方法(以下、「加熱処理法(イ)」ということもある)、或いは、(ロ)上記温度範囲に加熱した空気を、スラリー状態、または湿潤状態の結晶化処理物に通気して接触させる方法(以下、「加熱処理法(ロ)」ということもある)等を用いることができる。
このうち、本製造方法において、ムラ無く効率的に行うことができる観点から加熱処理法(ロ)により行うことが好ましい。
工業的規模で加熱処理法(ロ)を実施するための装置として、例えば、箱型乾燥機、パドルドライヤー、スラリードライヤー等の装置を用いることができる。
加熱処理に係る温度は90℃以上であることが必要であり、好ましくは90〜120℃、一層好ましくは90〜105℃である。加熱処理の温度が90℃より低い場合は、前記副生物(b’)の生成を抑制することが困難となるからである。
前記副生物(b’)の生成は、最終的に得られる亜硝酸型ハイドロカルマイト組成物をX線回折分析したときに、2θ=29.4°付近の回折ピーク(以下、回折ピーク(P2)と称することがある。)の有無により判定することが出来る。ここに、2θ=29.4°付近とは±0.5°の誤差範囲を含むことを意味する。
加熱処理を行うことにより、最終的に得られる亜硝酸型ハイドロカルマイト組成物をX線回折分析したときに回折ピーク(P1)の強度(a)に対する回折ピーク(P2)の強度(b)の相対強度比(b/a)は0.3以下、好ましくは0.2以下となる。ここにピーク強度比は、各々のピーク高さの比率である。
また、加熱処理の時間は、前記温度条件にて一般に10時間以上、好ましくは20〜28時間である。
なお、前記加熱処理は、断続的に行うと、前記回折ピークの相対強度比(b/a)を上記範囲にすることが難しくなる。従って前記回折ピークの相対強度比(b/a)が上記範囲となるまで加熱処理を一気に行うことが好ましい。
従来は結晶化工程終了後、固液分離して湿潤状態の結晶化処理物を70℃以下の温度で長時間乾燥処理を行って亜硝酸型ハイドロカルマイト組成物を得ていたが、本発明の加熱処理工程を行うことにより短期間で乾燥品を得ることができるので、トータルの製造時間を短縮できるという工業的な利点も有する。
加熱処理終了後は、そのまま洗浄及び乾燥することなく製品とすることができるが、使用する用途に合わせて、粉砕、分級等を行って粒度を調整することもできる。
粉砕処理を行う場合には、所望により分散剤を添加し、乾式で機械的手段により粉砕処理を行うことができる。前記乾式粉砕装置としては、例えばジェットミル、アトマイザー、バンタムミル、乾式ボールミル、乾式ビーズミル等の装置を用いることができる。
本製造方法で得られる亜硝酸型ハイドロカルマイト組成物は、従来の亜硝酸型ハイドロカルマイト組成物に比べて、防錆成分となる亜硝酸イオンの放出量が多く、かつ、腐食因子となる塩化物イオン等の陰イオンの捕捉能が高いので、例えば、塩化物イオン捕集剤、防錆用塗料やコンクリート組成物等の添加剤として好適に用いることができる。
また、亜硝酸イオンを含む水溶液に本発明の方法により得られる亜硝酸イオン型ハイドロカルマイト組成物を浸漬した後、乾燥を行うことにより新規な陰イオン交換体を得ることができる。
図1及び図5から明らかなように、当該陰イオン交換体はX線回折図において、亜硝酸イオン型ハイドロカルマイト組成物とは異なる回折ピークのパターンを示す。当該陰イオン交換体は、特に亜硝酸イオンの放出量が多いものになる。
当該陰イオン交換体を得るために用いる前記亜硝酸イオン源としては、亜硝酸カルシウム、亜硝酸ナトリウム、亜硝酸カリウム、亜硝酸リチウム等を用いることができる。
亜硝酸イオン源を溶解した水溶液中の亜硝酸イオン濃度は、亜硝酸イオンの溶解度の範囲内であれば、特に制限されるものではないが、多くの場合、亜硝酸イオンとして10〜40質量%、好ましくは30〜35質量%とすることが好ましい。
亜硝酸イオン源を溶解した水溶液への亜硝酸イオン型ハイドロカルマイト組成物の添加量は、特に制限されるものではなく、一般には、亜硝酸イオン源を溶解した水溶液100重量部に亜硝酸イオン型ハイドロカルマイト粉末を50〜200重量部、好ましくは100〜150重量部添加することが好ましい。
亜硝酸イオン型ハイドロカルマイト組成物の亜硝酸イオン源を溶解した水溶液への混合時間は、一般には、5分以上、好ましくは10分以上であればよい。また、浸漬させる温度は、5〜40℃、好ましくは15〜30℃である。
浸漬処理終了後、常法により固液分離して浸漬処理品を回収し乾燥処理を行ってもよく、また、固液分離することなくそのまま溶液ごと乾燥処理してもよい。
乾燥処理は、乾燥温度が20℃以上、好ましくは60〜105℃であり、前記した(イ)の加熱処理方法又は(ロ)の加熱処理方法の何れかで行うことが好ましい。
乾燥時間は、臨界的ではなく、一般に20時間以上、好ましくは48時間以上行えば、亜硝酸イオン放出能に優れる陰イオン交換体が得られる。
このようにして得られる陰イオン交換体は従来の亜硝酸型ハイドロカルマイト組成物に比べて、防錆成分となる亜硝酸イオンの放出量が高いので、例えば、塩素イオン捕集材だけでなく、特に防錆用の添加剤として好適に用いることができる。
以下、本発明を実施例により詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるわけでない。
{実施例1}
<沈殿生成工程>
Al23:54.89重量%、CaO:34.59重量%を含有するアルミナセメント17.5kgと、亜硝酸カルシウム1水塩39kg、消石灰12kg、水100kgを加え、室温(25℃)で10分間、攪拌下に反応を行ったところ、ゲル状の沈澱物が生成した。
<結晶化工程>
次いで、このスラリーを60℃に加温して常圧で50分撹拌を続けながら結晶化処理を行った。
得られた結晶化処理物を固液分離して反応液から回収し、湿潤状態の結晶化処理物を得た。
X線回折分析するため、得られた湿潤状態の結晶化処理物の一部を60℃で48時間乾燥処理し、線源としてCuKα線を用いてX線回折分析(X線回折装置;理学製RINT2400型)を行ったところ、2θ=11.1°(強)の回折ピーク(P1)と2θ=13.1°(中)の回折ピークが観察された。
<加熱処理工程>
次いで、湿潤状態の結晶化処理物を箱型乾燥機で105℃に加温した空気を通気しながら24時間、加熱処理を行い50kgの白色固体を得た。得られた白色固体を粉砕し、150メッシュ以下の白色粉末を得た。CuKα線を線源として当該白色粉末のX線回折分析(X線回折装置;理学製RINT2400型)を行い、また、化学分析、赤外線吸収スペクトル、電子顕微鏡写真で解析した結果、亜硝酸型ハイドロカルマイト(3CaO・Al・Ca(NO・nHO、nは20以下の自然数)を主成分とする層状亜硝酸型ハイドロカルマイト組成物であることを確認した。得られたX線回折図を図1に示す。
また、得られた亜硝酸型ハイドロカルマイト組成物の2θ=11.0°付近の回折ピーク(P1)の強度(a)に対する2θ=29.4°付近の回折ピーク(P2)の強度(b)の相対強度比(b/a)は0.16であった。
{比較例1}
<沈殿生成工程>
Al23:54.89重量%、CaO:34.59重量%を含有するアルミナセメント17.5kgと、亜硝酸カルシウム1水塩39kg、消石灰12kg、水100kgを加え、室温(25℃)で10分、攪拌下に反応を行ったところ、ゲル状の沈澱物が生成した。
<結晶化工程>
次いで、このスラリーを60℃に加温して常圧で50分撹拌を続けながら結晶化処理を行った。
得られた結晶化処理物を固液分離して反応液から回収し、湿潤状態の結晶化処理物を得た。
次いで、湿潤状態の結晶化処理物を26日間、室温で自然乾燥を行い得られた白色固体を粉砕し、150メッシュ以下の白色粉末を得た。CuKα線を線源として白色粉末のX線回折分析(X線回折装置;理学製RINT2400型)を行い、また、化学分析、赤外線吸収スペクトル、電子顕微鏡写真で解析した結果、亜硝酸型ハイドロカルマイト(3CaO・Al・Ca(NO・nHO、nは20以下の自然数)を含有する層状亜硝酸型ハイドロカルマイト組成物であることを確認した。得られたX線回折図を図2に示す。
また、得られた亜硝酸型ハイドロカルマイト組成物の2θ= 11.1°の回折ピーク(P1)の強度(a)に対する2θ=29.4°の回折ピーク(P2)の強度(b)の相対強度比(b/a)は2.22であった。
{比較例2}
加熱処理工程で、湿潤状態の結晶化処理物を箱型乾燥機で105℃に加温した空気を通気しながら1.5時間、次いで26日間、室温で自然乾燥を行った以外は、実施例1と同様な条件にて白色粉末を得た。CuKα線を線源として白色粉末のX線回折分析(X線回折装置;理学製RINT2400型)を行い、また、化学分析、赤外線吸収スペクトル、電子顕微鏡写真で解析した結果、亜硝酸型ハイドロカルマイト(3CaO・Al・Ca(NO・nHO、nは20以下の自然数)を含有する層状亜硝酸型ハイドロカルマイト組成物であることを確認した。得られたX線回折図を図3に示す。
また、得られた亜硝酸型ハイドロカルマイト組成物の2θ=11.0の回折ピーク(P1)の強度(a)に対する2θ=29.4°の回折ピーク(P2)の強度(b)の相対強度比(b/a)は1.30であった。
{比較例3}
加熱処理工程で、湿潤状態の結晶化処理物を箱型乾燥機で105℃に加温した空気を通気しながら5時間、次いで17日間、室温で自然乾燥を行った以外は、実施例1と同様な条件にて白色粉末を得た。CuKα線を線源として白色粉末のX線回折分析(X線回折装置;理学製RINT2400型)を行い、また、化学分析、赤外線吸収スペクトル、電子顕微鏡写真で解析した結果、亜硝酸型ハイドロカルマイト(3CaO・Al・Ca(NO・nHO、nは20以下の自然数)を含有する層状亜硝酸型ハイドロカルマイト組成物であることを確認した。得られたX線回折図を図4に示す。
また、得られた亜硝酸型ハイドロカルマイト組成物の2θ=11.0の回折ピーク(P1)の強度(a)に対する2θ=29.4°の回折ピーク(P2)の強度(b)の相対強度比(b/a)は0.89であった。
<物性評価>
(1)亜硝酸イオン放出量
前記の実施例1及び比較例1〜3で得られた亜硝酸型ハイドロカルマイト組成物5gをガラス瓶に入れ、0.2モル/Lの塩化ナトリウム水溶液100mLを加え、300rpm、25℃、4時間攪拌後のろ液中の亜硝酸イオン濃度をイオンクロマトグラフ法で求めた。その結果を表1に示す。
(2)塩化物イオン吸着量
塩化物イオン吸着量は上記のろ液をイオンクロマトグラフ法で濃度を測定し,初期濃度から差し引いた値をサンプル量1g当たりに換算して求めた。
{実施例2}
亜硝酸カルシウム15gを水に溶解し亜硝酸イオン濃度が30質量%の亜硝酸イオン源を溶解した水溶液を調製した。
次いで、実施例1で得られた亜硝酸型ハイドロカルマイト組成物15gを亜硝酸イオン源を溶解した水溶液を調製に添加し、攪拌下に10分間室温(25℃)で浸漬処理を行った。
浸漬処理終了後、ろ過して浸漬処理品を回収し、次いで、湿潤状態の浸漬処理品を箱型乾燥機で105℃に加温した空気を通気しながら24時間、乾燥処理を行い20gの白色固体を得た。得られた白色固体を粉砕し、150メッシュ以下の陰イオン交換体粉末を得た。CuKα線を線源として当該陰イオン交換体のX線回折分析(X線回折装置;理学製RINT2400型)を行った。そのX線回折図を図5に示す。
また、実施例1と同様に亜硝酸イオン放出量と塩化物イオン吸着量を測定したところ、亜硝酸イオン放出量は274.3mg/gであり、塩化物イオン吸着量は33.1mg/gであった。

Claims (7)

  1. CaO−Al系化合物と可溶性亜硝酸塩、又はCaO−Al系化合物と可溶性亜硝酸塩及び消石灰とを水溶媒中で混合・反応させてゲル状沈殿物を生成させる沈殿生成工程と、
    前記ゲル状沈殿物を70℃以下で熟成し、結晶化処理物を得る結晶化工程と、
    前記結晶化処理物を90℃以上で10時間以上加熱する加熱処理工程と、
    を備えることを特徴とする下記一般式(1)
    3CaO・Al・Ca(NO・nHO ・・・・(1)
    (式中、nは20以下の自然数を表す。)で表される亜硝酸型ハイドロカルマイトを主成分とする、亜硝酸型ハイドロカルマイト組成物の製造方法。
  2. 生成亜硝酸型ハイドロカルマイト組成物は、X線回折分析したときに、2θ=11.0°付近の回折ピーク(P1)の強度(a)に対する2θ=29.4°付近の回折ピーク(P2)の強度(b)の相対強度比(b/a)が0.3以下である、請求項1記載の亜硝酸型ハイドロカルマイト組成物の製造方法。
  3. 前記加熱処理工程は、前記結晶化処理物を120℃以下にて加熱する工程である、請求項1に記載の亜硝酸型ハイドロカルマイト組成物の製造方法。
  4. 前記沈殿生成工程に係る反応温度は、60℃以下である請求項1に記載の亜硝酸型ハイドロカルマイト組成物の製造方法。
  5. CaO−Al系化合物は、アルミナセメントであることを特徴とする請求項1、3又は4に記載の亜硝酸型ハイドロカルマイト組成物の製造方法。
  6. 可溶性亜硝酸塩は、亜硝酸カルシウムであることを特徴とする請求項1、3、又はのいずれかに記載の亜硝酸型ハイドロカルマイト組成物の製造方法。
  7. 請求項1に記載の製造方法によって得た亜硝酸型ハイドロカルマイト組成物を、亜硝酸イオンを含む水溶液に浸漬した後、乾燥することを特徴とする陰イオン交換体の製造方法
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