JP4154781B2 - 半導電性ゴム材料 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、電子写真複写機、プリンター等に用いられる半導電性ゴムロール用途、半導電性無端ゴムベルト用途等に用いられる、半導電性を有するポリエーテル系加硫用組成物及びこの組成物を加硫してなる半導電性ゴム材料に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
電子写真複写機のゴム帯電ロール、ゴム現像ロールおよびゴム転写ロール等のゴム材料は, 下記(1)〜(5)の条件をみたすことが要求されている。
(1)体積抵抗率106〜1010Ω・cm程度の導電性を有すること、
(2)低温低湿下、高温高湿下においても印刷特性が変わらないことが好ましいため、体積抵抗率の環境依存性が小さいこと。
(3)ロールを上記用途に用いる場合は、ロールの両端部に荷重をかけて使用するため、長期にわたって、荷重変形が繰り返されることが多くゴムのへたりが問題となるため、圧縮永久歪性に優れていること。
(4)ロールの駆動トルクを低減させるため、また感光体表面に均一に帯電させるため軟質なゴム材料であること。
(5)印刷ムラを少なくするためロール表面が平滑であること。
【0003】
(1)の様な、体積抵抗率を与えるゴム材料を得る方法として、通常ゴム材料にカーボンブラックを分散させる等の方法が知られているが、カーボンブラックを分散させる際にバラツキが生じやすい欠点が知られている。カーボンブラックの分散不良は導電性のバラツキを生じると共に、高電圧下での絶縁破壊を引き起こしやすいという欠点がある。上記欠点を補うため、カーボンブラックを分散させずとも、エピクロルヒドリンラバー等の導電性に優れたポリマー材料を使用することが、すでに、特開平1-142569、特開平2-311867、特開平6-240145、特開平7-164571、特開平7-175290等により、提案されている。またカーボンブラックの代わりに非導電性充填剤を加えることで(4)の軟質なゴム弾性体を与えうることは一般的に知られている。
【0004】
なお、特開平7-157566には本発明の構成要素である、(a)(b)(c)を含む速やかな加硫速度と、保存安定性に優れた加硫組成物が提案されている。また同提案には、本発明の構成要素(d)を加えることによりさらに速い加硫速度が得られることが例示されている。
【0005】
本発明者らは、種種検討の結果、本発明の構成要素である、(a)(b)(c)(d)を含む加硫組成物が、上記(1)、(2)、(3)の要件を満たすことを確認し、上記さらに非導電性充填剤を加えた系では(4)の要件を満たすことも確認できたが、該加硫用組成物のスコーチタイムが短く早期加硫が起こり、しばしば成型物表面の平滑性が失われる等加工成形上重要な問題があることが判明した。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、(1)体積抵抗率1×106〜1×108Ω-cm程度の導電性を有し、(2)環境依存性に優れ、(3)圧縮永久歪性に優れ、(4)軟質なゴム材料であり、(5)成型物表面が平滑である半導電性加硫ゴム材料及びそれを得るための加硫用組成物を提供することを目的とするものである。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、ポリエーテル系加硫ゴム弾性体の加硫剤について種々研究の結果、
(a)含ハロゲンポリエーテル系ポリマー 100重量部
(b)下記一般式(I)で表される2,3-ジメルカプトキノキサリン誘導体 0.1〜10重量部
【0008】
【化3】
【0009】
(R1、R2、R3及びR4はそれぞれ水素原子又は炭素数1〜4のアルキル基)
(c)ハイドロタルサイト類 1〜10重量部
(d)1,8-ジアザビシクロ(5,4,0)ウンデセン-7 もしくはその弱酸塩 0.1〜5重量部
(e)PH=7以下である二酸化ケイ素 1〜20重量部
(f)非導電性充填剤 0〜100重量部
上記(a)〜(f)を含むことを特徴とする、加硫用組成物及び該加硫用組成物を加硫してなる半導電性ゴム材料が解決手段であることを見いだした。
上記ゴム材料は電子写真複写機、プリンター等に用いられる半導電性ゴムロール用途、半導電性無端ゴムベルト用途等に適している。
【0010】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の構成について詳細に説明する。
【0011】
本発明の対象となる(a)含ハロゲンポリエーテル系ポリマーとは、エピハロヒドリン単独重合体又はエピハロヒドリンと共重合可能な他のエポキシド、例えばエチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、アリルグリシジルエーテル等との共重合体をいう。これらを例示すれば、エピクロルヒドリン単独重合体、エピブロムヒドリン単独重合体、エピクロルヒドリン−エチレンオキサイド共重合体、エピブロムヒドリン−エチレンオキサイド共重合体、エピクロルヒドリン−プロピレンオキサイド共重合体、エピブロムヒドリン−プロピレンオキサイド共重合体、エピクロルヒドリン−エチレンオキサイド−アリルグリシジルエーテル三元共重合体、エピブロムヒドリン−エチレンオキサイド−アリルグリシジルエーテル三元共重合体、エピクロルヒドリン−エチレンオキサイド−プロピレンオキサイド−アリルグリシジルエーテル四元共重合体、エピブロムヒドリン−エチレンオキサイド−プロピレンオキサイド−アリルグリシジルエーテル四元共重合体等を挙げることができる。
【0012】
好ましくはエピクロルヒドリン単独重合体、エピクロルヒドリン−エチレンオキサイド共重合体、エピクロルヒドリン−エチレンオキサイド−アリルグリシジルエーテル三元共重合体であり、更に好ましくはエピクロルヒドリン−エチレンオキサイド共重合体、エピクロルヒドリン−エチレンオキサイド−アリルグリシジルエーテル三元共重合体である。
【0013】
これら単独重合体または共重合体の分子量は通常ムーニー粘度表示でML1+4(100℃)=30〜150程度のものがそのまま用いられる。
【0014】
本発明において、前記一般式(I)で表される(b)成分の2,3-ジメルカプトキノキサリン誘導体を例示するとキノキサリン-2,3-ジチオカーボネート、6-メチルキノキサリン-2,3-ジチオカーボネート、6-イソプロピルキノキサリン-2,3-ジチオカーボネート、5,8-ジメチルキノキサリン-2,3-ジチオカーボネート等が挙げられる。これ等の2,3-ジメルカプトキノキサリン誘導体は通常、含ハロゲンポリエーテル系ポリマー100重量部に対して0.1〜10重量部、好ましくは0.5〜5重量部が用いられる。この範囲未満の量では、本発明の目的の一つである、優れた圧縮永久歪性を得ることが困難になり、一方この範囲を超えると得られた加硫物が剛直になりすぎて、含ハロゲンポリエーテル系ポリマー加硫物に通常期待される物性が得られなくなる。
【0015】
本発明に用いられる、(c)成分のハイドロタルサイト類は、下記一般式(II)
MgxAly(OH)2x+3y-2CO3・wH2O (II)
(但しxは1〜10、yは1〜5、wは正の実数を表す)で示される。これ等の化合物を例示すれば、Mg4.5Al2(OH)13CO3・3.5H2O、Mg4.5Al2(OH)13CO3、Mg4Al2(OH)12CO3・3.5H2O、Mg6Al2(OH)16CO3・4H2O、Mg3Al2(OH)10CO3・1.7H2O等を挙げることが出来る。
【0016】
このようなハイドロタルサイト類は通常含ハロゲンポリエーテル系ポリマー100重量部に対して、1〜10重量部の範囲で用いられる。この範囲の量未満では、本発明の目的の一つである、優れた圧縮永久歪性を得ることが困難になり、一方この範囲を超えても特に効果が増大することはない。
【0017】
本発明に用いられる(d)成分、1,8-ジアザビシクロ(5,4,0)ウンデセン-7(以下DBUと略称する。)は、それ自身を用いても良いが、その取り扱い面から炭酸塩、カルボン酸塩、フェノール塩、チオールとの塩等の様な弱酸塩として使用することもできる。これらDBU塩の代表的なものとしてはDBU-炭酸塩、DBU-ステアリン酸塩、DBU-2-エチルヘキシル酸塩、DBU-安息香酸塩、DBU-サリチル酸塩、DBU-3-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸塩、DBU-フェノール樹脂塩、DBU-2-メルカプトベンゾチアゾール塩、DBU-2-メルカプトベンズイミダゾール塩等を挙げることができる。DBUもしくはその弱酸塩の配合量は、含ハロゲンポリエーテル系ポリマー100重量部に対して、0.1〜5重量部である。配合量が、0.1重量部より少ないと、充分に加硫が進行せず優れた圧縮永久歪性が得られない。一方、配合量が5重量部を越えると含ハロゲンポリエーテル系ポリマーの加硫速度が速くなりすぎて、加工上のトラブルを生じる。
【0018】
本発明に用いられる(e)成分の、PH=7以下である二酸化ケイ素は、市販の無水二酸化ケイ酸、含水二酸化ケイ酸の中よりる選択する事ができる。PHの測定は該二酸化ケイ素の4%縣濁水で測定する。該二酸化ケイ素の配合量は含ハロゲンポリエーテル系ポリマー100重量部に対して1〜20重量部であり、さらに好ましくは、3〜10重量部である。1重量部未満ではスーコチタイムの短さが改善されず早期加硫が起こり、しばしば成型物表面の平滑性が失われ加工成形上問題を生じる。20重量部を越えると配合物が硬く成りすぎて好ましくない。
【0019】
なお公知のスコーチ防止剤、例えばN−(シクロヘキシルチオ)フタルイミド等を併用することは構わないが、本発明の、PH=7以下の二酸化ケイ素の配合なしには、スコーチタイムの短さは改善されない。
【0020】
本発明に用いられる(f)成分、非導電性充填剤とは、ポリマーに配合しても導電性を増加させる性質の無い充填剤をいい、カーボンブラック、金属表面処理粉末等は排除される。この様な非導電性充填剤としては、ゴム、プラスチック業界で通常白色充填剤と称され、具体的には、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、けい酸アルミニウム、含水けい酸マグネシウウム、等があげれれる。特に炭酸カルシウムが軟質の配合物を与えるので好ましい。該非導電性充填剤の配合量は含ハロゲンポリエーテル系ポリマー100重量部に対して0〜100重量部であり、成形性の点からは特に10〜100重量部が好ましく、さらに好ましくは20〜50重量部である。10重量部未満では、成形性が好ましくない。また100重量部を越えると配合物が硬くなり過ぎ好ましくない。
【0021】
該非導電性充填剤を、ゴムへの分散性を向上させるために、非導電性表面処理剤で表面処理することはかまわない。このような表面処理剤の具体例としては、脂肪酸、樹脂酸、シランカップリング剤、チタネートカップリング剤等があげれれる。なお着色等の目的で、カーボンブラックを3重量部以下の量を添加してもかまわない。
【0022】
本発明加硫用組成物において、加硫速度の調整、加硫物の熱安定性の見地から受酸剤となる金属化合物を更に用いることもできる。それらの化合物には周期律表第II族金属もしくは、周期律表第IV族金属の酸化物、水酸化物、炭酸塩、カルボン酸塩、ケイ酸塩、塩基性炭酸塩、塩基性カルボン酸塩、塩基性亜燐酸塩、塩基性亜硫酸塩、三塩基性硫酸塩等がある。具体的な例としては、マグネシア、水酸化マグネシウム、水酸化バリウム、炭酸マグネシウム、炭酸バリウム、生石灰、消石灰、炭酸カルシウム、ケイ酸カルシウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸亜鉛、フタル酸カルシウム、亜リン酸カルシウム、亜鉛華、酸化錫、リサージ、鉛丹、鉛白、二塩基性フタル酸鉛、二塩基性炭酸鉛、ステアリン酸錫、塩基性亜燐酸鉛、塩基性亜燐酸錫、塩基性亜硫酸鉛、三塩基性硫酸鉛等を挙げることができる。
【0023】
本発明加硫用組成物には、上記の他に当該技術分野で行われる各種の老化防止剤、充填剤、補強剤、可塑剤、加工助剤、顔料、難燃剤、加硫促進剤、加硫遅延剤等を任意に配合できる。さらに本発明の特性が失われない範囲で、当該技術分野で通常行われているゴム、樹脂の少量ブレンドを行うこともできる。。
【0024】
本発明加硫組成物の配合方法としては、従来ポリマー加工の分野において利用されている任意の手段、例えばミキシングロール、バンバリーミキサー、各種ニーダー類等を利用する事ができる。本発明の加硫ゴム材料は、本発明加硫用組成物を通常100〜200℃に加熱する事で得られ、加硫時間は温度により異なるが、0.5〜300分の間で行われるのが普通である。加硫成型の方法としては、金型による圧縮成型、射出成型、スチーム缶、エアーバス、赤外線或いはマイクロウェーブによる加熱等任意の方法を用いることが出来る。
【0025】
【実施例】
以下、本発明を実施例、比較例により具体的に説明する。
【0026】
実施例1〜2、比較例1〜9
表1、表2に示す各配合物を60〜70℃のオープンロールで混練し、これをシート化したものを混練直後に金型に入れ、170℃,80kg/cm2で15分間加圧成型を行った。得られた各加硫物の物性試験を行い、その結果を表3に示す。
表1中の*1、*2、(1)、(2)はそれぞれ以下の通りである。
*1 商品名「エピクロマーCG−102」(ダイソー(株)製、エピクロルヒドリン/エチレンオキシド/アリルグリシジルエーテル=40/56/4mol比の共重合体、ML1+4(100℃)=65)
*2 1,8-ジアザビシクロ(5,4,0)ウンデセン-7
(1)PH=6.0の二酸化ケイ素、商品名「ニップシールVN−3」(日本シリカ(株)製)
(2)PH=10.6の二酸化ケイ素、商品名「カープレックス#1120(シオノギ製薬(株)製)
【0027】
ムーニースコーチテストはJIS K6300に基づき、加硫物性、圧縮永久歪はJIS K6301 に基づき測定した。
【0028】
体積固有抵抗は、加硫したシートを23℃、相対湿度50%の環境下で24時間以上放置し、三菱油化(株)製絶縁抵抗計ハイレスタHPを用いて、10V印加し、1分後の値を読みとった。
【0029】
また環境依存性は右記の式で定義する。環境依存性=log(A)−log(B)
ここでA、Bは各々10℃、相対湿度15%及び40℃、相対湿度90%の環境下でシートを24時間以上放置した後測定した体積固有抵抗である。
【0030】
【表1】
【0031】
【表2】
【0032】
【表3】
【0033】
比較例1は本発明の構成要素(e)欠き、スコーチタイムが短く、早期加硫が起こった。
比較例2は本発明の構成要素(e)以外の二酸化ケイ素を配合した例であり、スコーチタイムが比較例1同様短く、早期加硫が起こった。
比較例3は本発明の構成要素(d)を欠き加硫が進行しなかった。
比較例4は本発明の構成要素(c)を欠き、スコーチタイムが比較例1同様短く、さらに圧縮永久歪みも不充分であった。
比較例5〜7は本発明の構成要素(b)以外の加硫剤を使用した例であり、スコーチタイムが比較例1同様短く、さらに圧縮永久歪みも不充分で合った。
比較例8も本発明の構成要素(b)以外の加硫剤を使用した例であり、スコーチタイムは充分長いが、圧縮永久歪みが悪い。
比較例9も本発明の構成要素(b)以外の加硫剤を使用した例であり、圧縮永久歪みは良好であるが、体積固有抵抗が大きい。
【0034】
【発明の効果】
本発明の半導電性ゴム材料は、導電性、環境依存性、圧縮永久歪性、成形加工性に優れており、従って電子写真複写機、プリンター等に用いられる半導電性ゴムロール、半導電性無端ゴムベルト等の用途に極めて有効である。
Claims (6)
- (a) エピクロルヒドリン−エチレンオキサイド共重合体、又はエピクロルヒドリン−エチレンオキサイド−アリルグリシジルエーテル三元共重合体である含ハロゲンポリエーテル系ポリマー 100重量部
(b)下記一般式(I)で表される2,3-ジメルカプトキノキサリン誘導体 0.1〜10重量部
(c)ハイドロタルサイト類 1〜10重量部
(d)1,8-ジアザビシクロ(5,4,0)ウンデセン-7 もしくはその弱酸塩 0.1〜5重量部
(e)PH=7以下である二酸化ケイ素 3 〜 10 重量部
(f)非導電性充填剤 0〜100重量部
上記(a)〜(f)を含むことを特徴とする、半導電性加硫ゴム用組成物。 - (a)エピクロルヒドリン−エチレンオキサイド共重合体、又はエピクロルヒドリン−エチレンオキサイド−アリルグリシジルエーテル三元共重合体である含ハロゲンポリエーテル系ポリマー 100重量部
(b)下記一般式(I)で表される2,3-ジメルカプトキノキサリン 0.1〜10重量部
(c)ハイドロタルサイト類1〜10重量部
(d)1,8-ジアザビシクロ(5,4,0)ウンデセン-7 もしくはその弱酸塩 0.1〜5重量部(e)PH=7以下である二酸化ケイ素 3 〜 10 重量部
(f)非導電性充填剤 10〜100重量部
上記(a)〜(f)を含むことを特徴とする、半導電性加硫ゴム用組成物。 - 請求項1または2に記載の半導電性加硫ゴム用組成物を加硫してなることを特徴とする半導電性ゴム材料。
- 請求項1〜3のいずれかに記載の半導電性加硫ゴム用組成物を加硫してなり、体積抵抗率1×106〜1×108Ω・cm、圧縮永久歪15%未満となることを特徴とする半導電性ゴム材料。
- 請求項4の半導電性ゴム材料を使用した半導電性ゴムロール。
- 請求項4の半導電性ゴム材料を使用した半導電性無端ゴムベルト。
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