JP4127179B2 - 半導電性シームレスベルト - Google Patents

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Description

本発明は、低コストで、耐久性に優れ、優れた画質が得られる半導電性シームレスベルトに関するものであり、詳しくはフルカラーLBP(レーザービームプリンター)やフルカラーPPC(プレーンペーパーコピア)等の電子写真技術を採用した電子写真機器において、中間転写ベルトや紙転写搬送ベルト等に用いられる半導電性シームレスベルトに関するものである。
一般に、フルカラーLBPやフルカラーPPC等の電子写真技術を採用した電子写真機器において、トナー像の転写用,紙転写搬送用,感光体基体用等の用途に、シームレスベルト(無端ベルト)が多用されている。このようなシームレスベルトとしては、例えば、PVDF(ポリフッ化ビニリデン)等のフッ素系樹脂,ポリカーボネート樹脂,ポリイミド樹脂等に、導電性カーボンブラックを配合したものを、ディッピング法,押出成形法,遠心成形法等の成形方法により、筒状フィルムに形成したものが用いられている。
しかし、上記フッ素系樹脂製ベルトは、電気特性には優れるものの、弾性率等のベルト物性が低く、コストが高くなるという難点がある。上記ポリカーボネート樹脂製ベルトは、コストが安いという利点はあるものの、通常、押出成形により形成されるため、電気抵抗のばらつきが大きく、屈曲性等のベルト物性に劣るという難点がある。また、上記ポリイミド樹脂製ベルトは、ベルト物性については特に問題はないものの、電気特性においてロット毎のばらつきが大きく、コストも高いという難点がある。そして、このようなベルト物性の低さ、電気抵抗のばらつきは、複写画像の画質の低下原因となる。
また、感光ドラムの帯電部材用途として、カーボンブラック等の粉状導電剤5〜30重量%と、粉状ガラス5〜30重量%とを主成分として含有する芳香族ポリエーテルスルホン樹脂を、フィルム状に成型した半導電性芳香族ポリエーテルスルホンフィルムが提案されている(特許文献1参照)。
特開平9−237519号公報
上記特許文献1には、半導電性芳香族ポリエーテルスルホンフィルムを、感光ドラムの帯電部材として使用する旨の記載はあるが、中間転写ベルト等のシームレスベルトとして使用する旨の記載はない。たとえ、上記特許文献1に記載の半導電性芳香族ポリエーテルスルホンフィルムを、中間転写ベルトとして用いた場合でも、上記半導電性芳香族ポリエーテルスルホンフィルムのみからなるベルトは、ポリエーテルスルホンを主成分とするため、高強度による引き裂き力に弱く、耐久性に劣るという難点がある。
本発明は、このような事情に鑑みなされたもので、低コストで、耐久性に優れ、優れた画質が得られる半導電性シームレスベルトの提供をその目的とする。
上記の目的を達成するため、本発明の半導電性シームレスベルトは、の外周に、直接または他の層を介して、表層が形成されてなる半導電性シームレスベルトであって、上記基層が、下記の(A)〜(C)を必須成分とし、かつ、上記(A)成分と(B)成分との混合比が、重量比で、(A)成分/(B)成分=99/1〜50/50の範囲内である導電性組成物を用いて形成され、上記表層が、シリコーン変性アクリル系樹脂を用いて形成されているとともに、この表層は、鉛筆硬度がB〜5Hの範囲内に設定され、かつ、純水の接触角が60〜120°の範囲内に設定されているという構成をとる。
(A)下記の化学式(1)で表される構造単位を繰り返し単位とするポリエーテルスルホン樹脂。
(B)ポリアミドイミド樹脂。
(C)導電性充填剤。
本発明者らは、低コストで、耐久性に優れ、優れた画質が得られる半導電性シームレスベルトを得るべく、鋭意研究を重ねた。その結果、基層を含む2層以上の層からなる複層の半導電性シームレスベルトにおいて、その基層(ベース層)を、ポリエーテルスルホン樹脂とポリアミドイミド樹脂とを併用し、これに導電性充填剤を配合することにより形成すると、所期の目的が達成できることを突き止めた。すなわち、ポリエーテルスルホン樹脂は、コストが安く、伸びが殆どなく、カール癖特性に優れ(カール癖が少なく)、また、ポリアミドイミド樹脂は、耐久性に優れるため、ポリエーテルスルホン樹脂と、ポリアミドイミド樹脂とを併用すると、低コストで、耐久性に優れ、カール癖が少なく画質に優れた半導電性シームレスベルトが得られることを見いだし、本発明に到達した。
本発明の半導電性シームレスベルトは、PES樹脂(A成分)、ポリアミドイミド樹脂(B成分)および導電性充填剤(C成分)を必須成分とする導電性組成物を用いて基層が形成されている。上記PES樹脂(A成分)は、コストが安く、伸びが殆どなく、カール癖特性に優れ(カール癖が少なく)、また、ポリアミドイミド樹脂(B成分)は、耐久性に優れるため、本発明の半導電性シームレスベルトは、PES樹脂(A成分)と、ポリアミドイミド樹脂(B成分)との併用効果により、低コストで、耐久性に優れるとともに、保持画像の伸びもなく、色ずれ画像を防止することができる。
また、上記基層の外周に、直接または他の層を介して、特殊な表層を形成しているため、トナーによる傷つきや割れ等によるフィルミングの発生を防止できるとともに、転写効率の向上を図ることができる。
また、上記基層の表面に、直接または他の層を介して、熱可塑性樹脂層もくしは表層を形成し、多層構造にすると、基層と、熱可塑性樹脂層もくしは表層とによって、表面抵抗と体積抵抗とを別々に制御することが可能となり、電気特性の制御が容易となるため、転写効率が向上する。
また、上記基層と表層との間に、ゴム弾性層を形成すると、柔軟性が向上するとともに、トナー量や紙の表面性に追従しやすくなり、トナーの転写効率がさらに向上する。
また、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリアミドイミド樹脂および導電性充填剤に加えて、シリカを配合した導電性組成物を用いて基層を形成すると、強度が向上し、ベルト使用時の機械耐久性がさらに向上する。
つぎに、本発明の実施の形態について説明する。
本発明の半導電性シームレスベルトは、例えば、図1に示すように、基層1の外周面に表層2が直接形成されて構成されている。本発明においては、上記基層1が、ポリエーテルスルホン樹脂(A成分)、ポリアミドイミド樹脂(B成分)および導電性充填剤(C成分)を必須成分とする導電性組成物を用いて形成されているのであり、これが最大の特徴である。
ここで、本発明の半導電性シームレスベルトにおける「半導電性」とは、基層1の体積電気抵抗率が、104 〜1016Ω・cmの範囲内、好ましくは105 〜1013Ω・cmの範囲内にあることを意味する。なお、上記体積電気抵抗率は、Hiresta-UP MCP-HT450(三菱化学社製)と、HRS プロープ(三菱化学社製)とを用いて、100Vの電圧を印加した場合の値を示す。
上記基層1を形成する導電性組成物の必須成分であるポリエーテルスルホン(PES)樹脂(A成分)としては、下記の化学式(1)で表される構造単位を繰り返し単位とするものが用いられる。上記PES樹脂は、このような構造単位を繰り返し単位として高分子化した固形ポリマーであって、熱によって可塑化し、押出成形等によってフィルム状に成形可能な高分子量体である。この熱による可塑化温度(軟化温度)は、重合度(n)により若干の差はあるものの、通常、200〜270℃程度の範囲内にある。
上記化学式(1)で表される構造単位を繰り返し単位とするPES樹脂(A成分)は、例えば、4,4′−ジヒドロキシジフェニルスルホンと、4,4′−ジクロロジフェニルスルホンとの当モルを、有機極性溶媒中で混合し、通常、150〜350℃の加熱下で、縮合重合することによって合成することができる。
上記有機極性溶媒としては、特に限定はないが、出発原料および合成したPES樹脂(A成分)の双方を溶解可能であるものが好ましく、例えば、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドン等があげられる。
上記PES樹脂(A成分)の数平均分子量(Mn)は、10,000〜500,000の範囲内が好ましく、特に好ましくは20,000〜400,000の範囲内である。
上記PES樹脂(A成分)とともに用いられるポリアミドイミド樹脂(B成分)は、特に限定はないが、例えば、酸クロリド法またはイソシアネート法等の公知の方法によって製造されるものがあげられる。
上記ポリアミドイミド樹脂(B成分)の製造に用いる酸成分としては、例えば、トリメリット酸およびその無水物または酸塩化物の他、ピロメリット酸,ビフェニルテトラカルボン酸,ビフェニルスルホンテトラカルボン酸,ベンゾフェノンテトラカルボン酸,ビフェニルエーテルテトラカルボン酸,エチレングリコールビストリメリテート,プロピレングリコールビストリメリテート等のテトラカルボン酸およびこれらの無水物、シュウ酸,アジピン酸,マロン酸,セバチン酸,アゼライン酸,ドデカンジカルボン酸,ジカルボキシポリブタジエン,ジカルボキシポリ(アクリロニトリル−ブタジエン),ジカルボキシポリ(スチレン−ブタジエン)等の脂肪族ジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸,1,3−シクロヘキサンジカルボン酸,4,4′−ジシクロヘキシルメタンジカルボン酸,ダイマー酸等の脂環族ジカルボン酸、テレフタル酸,イソフタル酸,ジフェニルスルホンジカルボン酸,ジフェニルエーテルジカルボン酸,ナフタレンジカルボン酸等の芳香族ジカルボン酸があげられる。これらは単独でもしくは2種以上併せて用いられる。これらのなかでも、反応性、耐熱性、溶解性等の点から、トリメリット無水物が好適に用いられる。
また、上記ポリアミドイミド樹脂(B成分)の製造に用いるジアミンまたはジイソシアネートとしては、例えば、エチレンジアミン,プロピレンジアミン,ヘキサメチレンジアミン等の脂肪族ジアミンおよびこれらのジイソシアネート、1,4−シクロヘキサンジアミン,1,3−シクロヘキサンジアミン,イソホロンジアミン,4,4′−ジシクロヘキシルメタンジアミン等の脂環族ジアミンおよびこれらのジイソシアネート、m−フェニレンジアミン,p−フェニレンジアミン,4,4′−ジアミノジフェニルメタン,4,4−ジアミノジフェニルエーテル,4,4′−ジアミノジフェニルスルホン,ベンジジン,o−トリジン,2,4−トリレンジアミン,2,6−トリレンジアミン,キシリレンジアミン等の芳香族ジアミンおよびこれらのジイソシアネートがあげられる。これらは単独でもしくは2種以上併せて用いられる。これらのなかでも、耐熱性、機械的特性,溶解性等の点から、4,4′−ジアミノジフェニルメタンおよびそのジイソシアネート、2,4−トリレンジアミンおよびそのジイソシアネート、o−トリジンおよびそのジイソシアネート、イソホロンジアミンおよびそのジイソシアネートが好適に用いられる。
上記ポリアミドイミド樹脂(B成分)は、N,N−ジメチルホルムアミドや、N−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルホルムアミド、γ−ブチロラクトン等の極性溶剤中、60〜200℃に加熱しながら撹拌することで容易に製造することができる。
上記PES樹脂(A成分)と、ポリアミドイミド樹脂(B成分)との混合比は、重量比で、A成分/B成分=99/1〜50/50の範囲内であり、好ましくはA成分/B成分=95/5〜70/30の範囲内である。すなわち、A成分が99を超える(B成分が1未満である)と、耐久性がやや悪くなり、逆にA成分が50未満(B成分が50を超える)であると、カール癖特性が劣る傾向がみられ、コストも高くなるからである。
上記PES樹脂(A成分)およびポリアミドイミド樹脂(B成分)とともに用いられる導電性充填剤(C成分)としては、特に限定はないが、例えば、カーボンブラック,グラファイト等の導電性粉末、アルミニウム粉末,ステンレス粉末等の金属粉末、導電性酸化亜鉛(c−ZnO),導電性酸化チタン(c−TiO2 ),導電性酸化鉄(c−Fe3 4 ),導電性酸化錫(c−SnO2 )等の導電性金属酸化物、第四級アンモニウム塩,リン酸エステル,スルホン酸塩,脂肪族多価アルコール,脂肪族アルコールサルフェート塩等のイオン性導電剤等があげられる。これらは単独でもしくは2種以上併せて用いられる。
上記導電性充填剤(C成分)の配合割合は、A成分とB成分との合計量100重量部(以下「部」と略す)に対して、0.1〜30部の範囲内が好ましく、特に好ましくは1〜20部の範囲内である。すなわち、導電性充填剤(C成分)が0.1部未満であると、転写に必要な電位がベルト表面に発現されず転写効率が悪化する傾向がみられ、逆に30部を超えると、ベルトの屈曲性が悪化し、機械耐久性が悪化する傾向がみられるからである。
なお、基層1を形成する導電性組成物には、A〜C成分とともに、シリカを配合することが、機械耐久性の点から好ましい。
上記シリカの配合割合は、PES樹脂(A成分)100部に対して、1〜10部の範囲内が好ましく、特に好ましくは1〜3部の範囲内である。すなわち、シリカの配合割合が1部未満であると、充分な補強効果が得られず、伸び、開き角度の改良効果が乏しく、逆に10部を超えると、靱性が悪化し、耐久性が劣る傾向がみられるからである。
なお、上記シリカは、例えば、ポリアミドイミド樹脂(B成分)中で、ゾル−ゲル反応等によって生成させたシリカとして存在する場合であってもよい。
また、基層1を形成する導電性組成物には、上記各成分とともに、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF),N,N−ジメチルアセトアミド(DMAC),トルエン,アセトン,N−メチル−2−ピロリドン(NMP)等の有機溶剤や、充填剤を、必要に応じて含有させることも可能である。
上記基層1を形成する導電性組成物は、例えば、PES樹脂(A成分)と、ポリアミドイミド樹脂(B成分)と、導電性充填剤(C成分)と、有機溶剤と、必要に応じてシリカや充填剤を適宜に配合し、攪拌羽根で混合した後、リングミル,ボールミル,サンドミル等を用いて分散させることにより調製することができる。
つぎに、基層1の外周面に形成される表層2用材料としては、表層2の鉛筆硬度がB〜5Hの範囲内にあり、かつ、純水の接触角が60〜120°の範囲内にあるような材料が用いられ、より好ましくは鉛筆硬度がF〜2Hの範囲内で、かつ、純水の接触角が80〜120°の範囲内にある材料が用いられる。すなわち、表層2の鉛筆硬度がB未満であると、トナーが表層2を傷つけ、フィルミングが発生し、逆に鉛筆硬度が5Hを超えると、表層2が割れ易くなり、割れた部分からフィルミングが発生するおそれがあるからである。また、純水の接触角が60°未満であると、2次転写後クリーニング不良が発生するからであり、逆に接触角が120°を超えると、1次転写の転写効率が悪化するからである。
なお、上記鉛筆硬度は、JIS K5600の鉛筆ひっかき値に準じて測定した値である。また、上記接触角は、JIS R3257に準じて測定した値である。
なお、上記表層2の厚みは、0.1〜10μmの範囲内が好ましく、特に好ましくは0.5〜5μmの範囲内である。すなわち、表層2の厚みが0.1μm未満であると、表層2の機能が充分に発揮されず、基層1にキズがつきやすくなり、逆に表層2の厚みが10μmを超えると、変形(ロールの曲率)に追従できず、表層2が割れ易くなり、フィルミングが発生するおそれがあるからである。
このような表層2用材料としては、汚れ防止を向上させる目的で、アクリル樹脂の分子構造を母体とし、他の樹脂ないし樹脂成分で変性されたシリコーン変性アクリル系樹脂が用いられる。なかでも、通常作業性を考慮して、液状または溶剤可溶タイプが好適に用いられる
上記シリコーン変性アクリル系樹脂としては、例えば、シリコーングラフトアクリル系樹脂があげられる。このシリコーングラフトアクリル系樹脂としては、アクリル系樹脂(主鎖)にシリコーン系樹脂がグラフト重合したものであれば特に限定するものではない。このシリコーングラフトアクリル系樹脂の具体例としては、東亞合成社製のサイマックUS−350等があげられる。
なお、上記表層2用材料としては、前記樹脂材料に対して、イソシアネート樹脂,アミノ樹脂,フェノール樹脂,キシレン樹脂等の樹脂架橋剤を用いて、樹脂架橋を施した材料や、感光性モノマーまたはポリマーに光重合開始剤を混合した紫外線硬化型材料を用いても差し支えない。
上記表層2用材料は、例えば、変性アクリル系樹脂と、DMF,トルエン,アセトン等の有機溶剤とを適宜に配合し、攪拌羽根で混合することにより調製することができる。なお、各層を精度良く形成するためには、隣接する層の形成材料に用いる有機溶剤は、互いに異なった種類のものを使用することが好ましい。すなわち、表層2用材料に用いる有機溶剤と、基層1用材料に用いる有機溶剤とは、互いに異なった種類のものを使用することが好ましい。
前記図1に示した、本発明の半導電性シームレスベルトは、例えばつぎのようにして作製することができる。すなわち、前記と同様にして、基層用材料を調製し、これを金型(円筒形基体)の表面にスプレーコーティングする。ついで、これを150〜300℃で3〜6時間乾燥することにより、金型の表面に基層1を形成する。つぎに、この基層1の表面に、前記と同様にして調製した表層2用材料を、ディッピング法にてコーティングし乾燥した後、基層1と円筒形基体との間にエアー吹き付け等することにより、円筒形基体を抜き取り、基層1の表面に、表層2が形成されてなる2層構造のシームレスベルト(図1参照)を作製することができる。なお、表層2の形成方法は、上記ディッピング法に限定されるものではなく、基層1の形成方法と同様に、スプレーコーティングすることにより形成しても差し支えない。
また、本発明の半導電性シームレスベルトの基層1は、上記製法以外に、押出成形法、インフレーション法、ブロー成形法,ディッピング法等により、作製することも可能である
本発明の半導電性シームレスベルトの各層の厚みは、ベルトの用途に応じて適宜に設定されるが、基層1の厚みは、通常、30〜300μmの範囲内であり、好ましくは50〜200μmの範囲内である。また、表層2の厚みは、前述のように、0.1〜10μmの範囲内が好ましく、特に好ましくは0.5〜5μmの範囲内である。また、本発明の半導電性シームレスベルトは、内周長が90〜1500mmで、幅が100〜500mm程度のものが好ましい。すなわち、上記寸法の範囲内に設定すると、電子写真複写機等に組み込んで使用するのに適当な大きさとなるからである。
なお、本発明の半導電性シームレスベルトは、前記図1に示したような、基層1の外周面に表層2を直接形成した2層構造に限定されるものではない。本発明の半導電性シームレスベルトは、例えば、基層1と表層2との間に、熱可塑性樹脂層もしくはゴム弾性層を介在させた3層構造、基層1と表層2との間に、熱可塑性樹脂層およびゴム弾性層の双方を介在させた4層構造等であっても差し支えない。ただし、基層1は、PES樹脂(A成分)、ポリアミドイミド樹脂(B成分)および導電性充填剤(C成分)を必須成分とする導電性組成物を用いて形成されている必要がある。
上記基層1と表層2との間に介在させる熱可塑性樹脂層用材料としては、特に限定はないが、熱可塑性樹脂とともに、必要に応じて、メチルエチルケトン(MEK),トルエン等の溶剤等が用いられる。なお、この熱可塑性樹脂層用材料中にも、先に述べたような、導電性充填剤(C成分)を配合しても差し支えない。
上記熱可塑性樹脂としては、特に限定はないが、基層1の外周に直接熱可塑性樹脂層を形成する場合は、上記PES樹脂(A成分)およびポリアミドイミド樹脂(B成分)以外の熱可塑性樹脂を用いることが好ましい。上記PES樹脂(A成分)およびポリアミドイミド樹脂(B成分)以外の熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリフッ化ビニリデン(PVDF),テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA),エチレン−テトラフルオロエチレン共重合体(ETFE)等のフッ素系樹脂、ポリエチレン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、アクリル系樹脂、ポリカーボネート(PC)系樹脂、ポリアミド系樹脂、EVA(エチレン−酢酸ビニル共重合体)系樹脂、EEA(エチレン−アクリル酸エチル共重合体)系樹脂等があげられる。これらは単独でもしくは2種以上併せて用いられる。これらのなかでも、難燃性に優れる点で、PVDF等のフッ素系樹脂を用いることが好ましい。なお、基層1の外周に、他の層を介して熱可塑性樹脂層を形成する場合は、熱可塑性樹脂として、PES樹脂(A成分)やポリアミドイミド樹脂(B成分)を用いても差し支えない。
このように、基層1と表層2との間に、熱可塑性樹脂層を介在させてなる3層構造の半導電性シームレスベルトは、例えば、つぎのようにして作製することができる。すなわち、前述と同様のスプレーコーティングにより基層1を形成し、この基層1の表面に前記同製法,ディッピング法等により、熱可塑性樹脂層用材料をコーティングした後、加熱乾燥させることにより、熱可塑性樹脂層を形成する。そして、この上に先に述べたようにして、表層2を形成することにより作製することができる。この熱可塑性樹脂層の厚みは、通常、10〜200μmの範囲内であり、好ましくは10〜100μmの範囲内である。
また、上記基層1と表層2との間に介在させるゴム弾性層用材料としては、ゴム材および加硫剤とともに、必要に応じて、加硫促進剤、溶剤、加工助剤、老化防止剤等が用いられる。なお、このゴム弾性層用材料中にも、先に述べたような、導電性充填剤(C成分)を配合しても差し支えない。
上記ゴム材としては、特に限定はないが、難燃性の観点から、塩素化ポリエチレンゴム(CPE)、クロロプレンゴム(CR)等が用いられる。これらのなかで、各中間転写ベルトに要求される電気特性、弾力性、耐久性に合わせて最適材料を選定する。
このように、基層1と表層2との間に、ゴム弾性層を介在させてなる3層構造の半導電性シームレスベルトは、例えば、つぎのようにして作製することができる。すなわち、前述と同様のスプレーコーティングにより基層1を形成し、この基層1の表面に前記同製法,ディッピング法等によりゴム弾性層用材料をコーティングした後、加熱乾燥(加硫)させることにより、ゴム弾性層を形成する。そして、この上に先に述べたようにして表層2を形成することにより、作製することができる。このゴム弾性層の厚みは、通常、10〜200μmの範囲内であり、好ましくは10〜100μmの範囲内である。
なお、本発明の半導電性シームレスベルトは、基層1と表層2との間に、熱可塑性樹脂層およびゴム弾性層の双方を介在させた4層構造であってもよい。このような4層構造の半導電性シームレスベルトは、例えば、つぎのようにして作製することができる。すなわち、前述と同様のスプレーコーティングにより基層1を形成し、この基層1の表面に前記同製法,ディッピング法等により、熱可塑性樹脂層用材料をコーティングした後、加熱乾燥させることにより、熱可塑性樹脂層を形成する。つぎに、この熱可塑性樹脂層の表面に前記同製法,ディッピング法等によりゴム弾性層用材料をコーティングした後、加熱乾燥(加硫)させることにより、ゴム弾性層を形成する。そして、この上に先に述べたようにして、表層2を形成することにより作製することができる。
本発明の半導電性シームレスベルトは、フルカラーLBPやフルカラーPPC等の電子写真技術を採用した電子写真機器において、トナー像の転写用,紙転写搬送用,感光体基体用等の用途に好適に用いられるが、これに限定するものではなく、例えば、フルカラーではない、単色の電子写真複写機の転写ベルト等にも使用することができる。
つぎに、実施例について比較例と併せて説明する。
〔基層用材料の調製〕
前記化学式(1)で表される構造単位を繰り返し単位とするPES樹脂(PES粉末)90部と、ポリアミドイミド樹脂を固形分で10部と、カーボンブラック(三菱化学社製、♯5110B)10部と、NMP溶剤300部とを配合し、攪拌羽根で混合した後、ミル分散させて基層用塗料(粘度:5000mPa・s)を調製した。
〔表層用材料の調製〕
シリコーングラフトアクリル系樹脂(東亞合成社製、サイマックUS−350)100部と、トルエン溶剤500部とを配合し、攪拌羽根で混合して、表層用塗料(粘度:5mPa・s)を調製した。
〔シームレスベルトの作製〕
金型(円筒形基体)を準備し、この表面に上記基層用材料をスプレーコーティングし、金型の表面に基層を形成した。つぎに、この基層の表面に、上記で調製した表層用塗料を、ディッピングにてコーティングした後、基層と円筒形基体との間にエアー吹き付けすることにより、円筒形基体を抜き取り、基層(厚み:80μm)の表面に、表層(厚み:1μm)が形成されてなる2層構造のシームレスベルトを作製した。
〔基層用材料の調製〕
前記化学式(1)で表される構造単位を繰り返し単位とするPES樹脂(PES粉末)80部と、ポリアミドイミド樹脂を固形分で20部と、カーボンブラック(三菱化学社製、♯5110B)10部と、NMP溶剤300部とを配合し、攪拌羽根で混合した後、ミル分散させて基層用塗料(粘度:5000mPa・s)を調製した。
〔シームレスベルトの作製〕
上記基層用材料を用いる以外は、実施例1と同様にして、基層(厚み:80μm)の表面に、表層(厚み:1μm)が形成されてなる2層構造のシームレスベルトを作製した。
〔弾性層用材料の調製〕
クロロピレンゴム(電気化学工業社製、デンカクロロプレンA−30)100部と、加硫剤(三新化学工業社製、サンセラー22C)1.5部と、カーボンブラック(ケッチェンブラックインターナショナル社製、ケッチェンEC)2部とを混練りした後、MEK溶剤500部に溶解し、弾性層用塗料(粘度:5000mPa・s)を調製した。
〔シームレスベルトの作製〕
実施例1と同様にして基層を形成した後、上記弾性層用塗料をスプレーコーティングし、基層の表面に弾性層を形成した。つぎに、この弾性層の表面に、実施例1と同様にして、表層を形成し、基層(厚み:70μm)の表面に弾性層(厚み:20μm)が形成され、さらにその表面に表層(厚み:1μm)が形成されてなる3層構造のシームレスベルトを作製した。
〔熱可塑性樹脂層用材料の調製〕
PVDF樹脂(ダイキン工業社製、VT−100)100部と、カーボンブラック(三菱化学社製、♯5110B)10部と、アセトン溶剤200部とを配合し、攪拌羽根で混合した後、リングミルを用いて分散させ、熱可塑性樹脂層用塗料(粘度:5000mPa・s)を調製した。
〔シームレスベルトの作製〕
実施例1と同様にして基層を形成した後、上記熱可塑性樹脂層用塗料をスプレーコーティングした。ついで、これを加熱乾燥して、溶剤を除去し、基層の表面に熱可塑性樹脂層を形成した。つぎに、この熱可塑性樹脂層の表面に、実施例1と同様にして、表層を形成し、基層(厚み:70μm)の表面に熱可塑性樹脂層(厚み:20μm)が形成され、さらにその表面に表層(厚み:1μm)が形成されてなる3層構造のシームレスベルトを作製した。
シリカ(日本シリカ工業社製、ニプシールRS−150)2部をさらに配合する以外は、実施例1と同様にして、基層用材料を調製した。そして、この基層用材料を用いる以外は、実施例1と同様にして、シームレスベルトを作製した。
シリカ(日本シリカ工業社製、ニプシールRS−150)2部をさらに配合する以外は、実施例2と同様にして、基層用材料を調製した。そして、この基層用材料を用いる以外は、実施例1と同様にして、シームレスベルトを作製した。
シリカ(日本シリカ工業社製、ニプシールRS−150)2部をさらに配合する以外は、実施例3と同様にして、基層用材料を調製した。そして、この基層用材料を用いる以外は、実施例1と同様にして、シームレスベルトを作製した。
シリカ(日本シリカ工業社製、ニプシールRS−150)1部をさらに配合する以外は、実施例1と同様にして、基層用材料を調製した。そして、この基層用材料を用いる以外は、実施例1と同様にして、シームレスベルトを作製した。
シリカ(日本シリカ工業社製、ニプシールRS−150)10部をさらに配合する以外は、実施例1と同様にして、基層用材料を調製した。そして、この基層用材料を用いる以外は、実施例1と同様にして、シームレスベルトを作製した。
〔比較例1〕
〔基層用材料の調製〕
前記化学式(1)で表される構造単位を繰り返し単位とするPES樹脂(PES粉末)100部と、カーボンブラック(三菱化学社製、♯5110B)10部と、NMP溶剤300部とを配合し、攪拌羽根で混合した後、ミル分散させて基層用塗料(粘度:5000mPa・s)を調製した。
〔シームレスベルトの作製〕
上記基層用材料を用いる以外は、実施例1と同様にして、基層(厚み:80μm)の表面に、表層(厚み:1μm)が形成されてなる2層構造のシームレスベルトを作製した。
〔比較例2〕
ポリカーボネート樹脂(住友ダウ社製、301V−4)100部と、カーボンブラック(三菱化学社製、♯5110B)10部とを配合し、ロールを用いて混練して、基層用材料を調製した。つきに、この基層用材料を押出成形し、厚み150μmの筒状の基層を形成することにより、単層構造のシームレスベルトを作製した。
〔比較例3〕
比較例1と同様にして、基層用材料を調製し、これを用いて比較例1と同様にして基層を形成した。そして、この基層の外周に表層を形成しなかった。このようにして、基層(厚み:80μm)のみからなる単層構造のシームレスベルトを作製した。
このようにして得られた実施例品および比較例品のシームレスベルトを用い、下記の基準に従って各特性の評価を行った。これらの結果を後記の表1および表2に併せて示した。なお、前述の方法に準じて、表層の鉛筆硬度および純水の接触角を測定した。
〔伸び率〕
シームレスベルトを20mm×180mmの大きさに切断して、短冊状のテストピースを作製した。このテストピースの一端に、250±5gの荷重をかけて吊るし、50℃×95%の環境下、24時間放置した後の伸び率を計算した。
〔開き角度〕
図2に示すように、シームレスベルトを25mm×150mmの大きさに切断して、短冊状のテストピース20を作製した。このテストピース20を、直径13mmの金属製パイプ21に巻き付けた後、テストピース20の端部どうしを重ね合わせ、ここに0.3kgのオモリ(図示せず)をかけて吊るし、50℃×95%の環境下、24時間放置した。ついで、オモリを外し、図3に示すように、重ね合わせたテストピース20の両端を開放した後、テストピース20の円弧状部分を中心に、これを挟む左右のテストピース20の表面を上方に延長させたと仮想し、その左右仮想延長部23で作った角度θを、開き角度θとして測定した。この開き角度θが180°に近い方が、曲がり癖(カール癖)が少ないことを示しており、開き角度θが90°以上であれば画像に影響しない。
〔ベンチ耐久試験〕
直径13mmの金属製ローラーを2本準備し、2本の金属製ローラー間にシームレスベルト(幅150mm)を張架した状態で、一方の金属製ローラーをテーブル上に固定した。ついで、テーブルに固定していない他方の金属製ローラーがテーブルの端部になるように配置し、金属製ローラーの両端にオモリを2kgずつ吊り下げ(総荷重4kg)、ラボ環境(25℃×40%)下で、シームレスベルトを回転させた。そして、シームレスベルトに亀裂が確認できるまでの累積回転数を測定した。
〔電気抵抗の均一性〕
周方向に等分したシームレスベルトの内周側8箇所の体積電気抵抗率を、JIS K6911に準じて測定し、その最大値と最小値のばらつきを桁で表示した。印加電圧は10Vであった。評価は、ばらつきが0.5桁以下のものを○、ばらつきが0.5桁を超えて1桁以下のものを△とした。
〔実機画像評価〕
各シームレスベルトをフルカラーPPCに装着して、1000枚の画出し評価を行い、シームレスベルトへのクリーニング不良等の画像不良の有無を評価した。評価は、画像不良のないものを○、画像不良があるものを×とした。
上記結果から、いずれの実施例品も、伸びが小さく、開き角度が大きく、機械耐久性および電気特性に優れ、実機画像評価も良好であった。また、基層にシリカを用いてなる実施例品は、開き角度がより大きく、機械耐久性がさらに向上した。
これに対し、比較例1品は、機械耐久性に劣っていた。比較例2品は、伸びが大きく、開き角度が小さいうえ、機械耐久性および電気特性に劣っていた。比較例3品は、機械耐久性に劣っていた。
本発明の半導電性シームレスベルトは、フルカラーLBP(レーザービームプリンター)やフルカラーPPC(プレーンペーパーコピア)等の電子写真技術を採用した電子写真機器において、中間転写ベルトや紙転写搬送ベルト等に好適に用いられる。
本発明の半導電性シームレスベルトの一例を示す部分断面図である。
半導電性シームレスベルトの開き角度の測定方法を示す説明図である。
測定する開き角度を示す説明図である。
符号の説明
1 基層
2 表層

Claims (5)

  1. の外周に、直接または他の層を介して、表層が形成されてなる半導電性シームレスベルトであって、上記基層が、下記の(A)〜(C)を必須成分とし、かつ、上記(A)成分と(B)成分との混合比が、重量比で、(A)成分/(B)成分=99/1〜50/50の範囲内である導電性組成物を用いて形成され、上記表層が、シリコーン変性アクリル系樹脂を用いて形成されているとともに、この表層は、鉛筆硬度がB〜5Hの範囲内に設定され、かつ、純水の接触角が60〜120°の範囲内に設定されていることを特徴とする半導電性シームレスベルト。
    (A)下記の化学式(1)で表される構造単位を繰り返し単位とするポリエーテルスルホン樹脂。
    (B)ポリアミドイミド樹脂。
    (C)導電性充填剤。
  2. 上記基層と表層との間に、熱可塑性樹脂層が形成されている請求項記載の半導電性シームレスベルト。
  3. 上記基層と表層との間に、ゴム弾性層が形成されている請求項または記載の半導電性シームレスベルト。
  4. 上記基層が、上記(A)〜(C)に加えて、シリカを含有する導電性組成物を用いて形成されている請求項1〜のいずれか一項に記載の半導電性シームレスベルト。
  5. 上記シリカの配合割合が、(A)成分100重量部に対して、1〜10重量部の範囲内である請求項記載の半導電性シームレスベルト。
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