JP4042882B2 - シームレスベルト - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、電子写真式複写機、レーザープリンタ等に使用されるシームレスベルトに関し、特に、複数のローラ間に懸架して使用される感光体基体用、中間転写用、紙搬送用、現像用あるいは定着用等に有用なシームレスベルトに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年、フルカラー複写機等の電子写真複写機の実用化に伴って、感光体上に現像されたトナー像を複写紙に転写する際に、一旦トナーを中間転写体に写し取った後、複写紙に転写するという中間転写体を使用するプロセスが採用されている。このプロセスにおいては、感光ドラムの表面に現像装置によりトナー像が形成され、そのトナー像が、感光ドラムの下部の一次転写ローラに張架されて回転移動する中間転写体であるシームレスベルトに転写され、シームレスベルト上のトナー像は、このシームレスベルトと二次転写ローラとの間に挟まれた複写紙に転写される。また、中間転写体だけではなく、従来の金属製ドラム体に替わって、感光体等にもシームレスベルトの使用が検討されるようになってきている。
【0003】
このようなシームレスベルトは、成形性が良くかつ軽量であることが要求され、そのような素材としてプラスチック類が使用されている。好適なプラスチック材料として、ポリエチレンテレフタレート(PET)とポリイミドについて検討がなされてきたが、PETフィルムは、形成されたフィルムの両端を衝合して製作するので、衝合部分と非衝合部分との間に品質性能に差が生ずることは避けられない。また、半導電化においては、通常、導電性カーボンブラックが練り込まれるが、その微粒子によって表面の平滑性が阻害されるだけでなく、二軸延伸によって表面が一層粗面化されるので、ベルトの平滑性には限界があった。この粗面は、最終的に得られる複写画質に好影響を与えない原因となり、一定のレベルにとどまっているのが現状である。
【0004】
他方、ポリイミド製シームレスベルトは、一般に、ポリイミドの前駆体であるポリアミドイミド酸の溶液を遠心注型することにより製造される。この方法で成形されるベルトは無端状のベルトであるから、前記PET製ベルトのような継目は全くない。従って、得られるベルトは全体が均質な品質性能を有するが、この方法で製造されるベルトには極めて微細な無数の気泡が含まれ、表面に微細な凹凸が形成されるという問題がある。遠心注型においては、まず無端のポリアミドイミド酸フィルムを形成させる段階まで遠心注型で行ない、そのフィルムを一担遠心注型機から取り出して、加熱・縮合によりポリアミドイミドへの変換が行われる。この加熱の際に、残存する溶媒と縮合水との蒸発が微細気泡を形成し、また、カーボンブラックを含有する半導電性ベルトの場合には、二軸延伸によってカーボン微粒子が表面に露出して一層粗い表面状態が形成されるものと考えられている。
【0005】
そのような問題を解決する方法として、特開平10−226028号公報には、プラスチック材料としてポリアミドイミドを使用し、そのポリアミドイミドの溶液を遠心注型により成形して溶剤を完全に除去する、ポリアミドイミド樹脂ベルトの製造方法が記載されている。しかし、中間転写体に用いられるシームレスベルトは、前記したように、複数のローラによって一定の張力が加わった懸架状態で長期間使用されるため、大きな耐クリープ性が要求されるところ、ポリアミドイミドは、PETやポリイミドと比較して抗張力が小さく、耐クリープ性に劣るという欠点がある。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、軽量なプラスチックを用いて、完全に均質なシームレスで、かつ良好な表面状態を有するベルトを提供し、また、特に優れた抗張力と耐クリープ性に優れたプラスチック製シームレスベルトを提供することを課題とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明は、沸点が150〜250℃の範囲にある溶剤にポリアミドイミドを溶解した溶液を成形型内に塗布し、溶剤の大半を除去して得られるシームレスベルトであって、前記ポリアミドイミド100重量部に対し、0.5〜6.0重量部の範囲の溶剤を前記ベルト中に残留させたシームレスベルトであり、シームレスベルトに導電性を付与するために、導電性物質を混入させ、また、その導電性物質の全部また一部をカーボンフィラーとし、その表面のカーボンブラックの炭素に結合するカルボン酸、ラクトン、フェノール及びキノンよりなる群から選択される官能基を有し、官能基が合計でカーボンフィラー1g当たり50×10-5〜2,000×10-5モルであるカーボンフィラーを、ポリアミドイミド100重量部に対し5〜50重量部含有させてなるシームレスベルトである。
【0008】
【発明の実施の形態】
本発明者等は、フルカラー複写機等の電子写真式複写機やレーザープリンタ等に使用されるシームレスベルトの上記のような実情に鑑み、上記欠点が克服され、一層改善されたベルトを開発すべく試作研究を重ねて、特定の溶剤と、カーボンフィラーの特性を規定することによって、極めて好ましいシームレスベルトを得ることができた。
本発明は、基本的にポリアミドイミドを基本担体とする。
本発明のベルトに用いられるポリアミドイミドは、通常知られた物質類であって、アミド基と1〜2個のイミド基とが有機基を介して結合された各種の縮合性化合物を構成単位として、その構成単位を繰り返すことによって得られる高分子量物質である。
【0009】
これらのポリアミドイミド樹脂は、基本的には、有機基がアミド基で繋がれる有機ジアミンとテトラカルボン酸二無水物の当量とを反応させる方法、有機ジアミン、またはその誘導体(例えば、ジイソシアネート)とトリカルボン酸無水物、またはその誘導体(例えば、モノクロリド)との当量を反応させる方法等によって合成されるが、溶剤への溶解性、機械的特性のバランスの点で、1個のイミド基と1個のアミド基とが有機基を介して結合した、これらの繰返し単位からなるポリアミドイミドが好ましい。
前記有機基が脂肪族か芳香族かによって、脂肪族ポリアミドイミドと芳香族ポリアミドイミドとに分類されるが、本発明においては、分子構造が剛直で、フィルムの機械特性に優れた芳香族ポリアミドイミドが好ましく用いられる。
【0010】
このようにして得られるポリアミドイミドのうち、特に芳香族ポリアミドイミドが好ましいことは前述したとおりであるが、芳香族といっても、基本的にはイミド基、アミド基が、1つまたは2つのベンゼン環に結合しているものが一般的である。
特殊なものとしてベンゼン環が2つの場合に、両環がエーテル、カルボニル、メチレンの各基を介して結合されている有機基も本発明の芳香族ポリアミドイミドに含まれる。
芳香族ポリアミドイミドは、通常、前記有機ジアミンとトリカルボン酸無水物との当量反応によって製造されるが、該有機ジアミンとしては、例えば、パラフェニレンジアミン、4,4’−ジアミノジフェニル、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、4,4' −ジアミノジフェニルエーテル等が挙げられ、トリカルボン酸無水物の例としては、トリメリット酸無水物が代表的に挙げられる。また、本発明においては、市販のポリイミドアミドを材料とすることもできる。
【0011】
本発明のシームレスベルトの形成に使用される溶剤としては、前記ポリアミドイミドを溶解することができ、且つ沸点が150〜250℃の範囲内にあることが重要である。沸点が150〜250℃の範囲内の溶剤は、本発明のシームレスベルトが使用される環境において、クリープを相殺する程度に、徐々に溶剤を揮発させることができるからであって、沸点が150℃未満のものでは、揮発スピードが速すぎて、かえって変形を招く結果となり、250℃を超えるものでは、十分にクリープを相殺することができないからである。
【0012】
そのような溶剤としては、例えば、ジメチルホルムアミド(沸点153℃)、ジメチルアセトアミド(沸点165.5℃)、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)(沸点204℃)等が例示される。また、この溶剤のベルト中の含有量は、シームレスベルトを構成するポリアミドイミド樹脂100重量部に対して、0.5〜6.0重量部の範囲とすることが重要である。0.5重量部未満では、十分にクリープを相殺することができず、また、6.0重量部を超えると、初期段階における機械的特性、特に、弾性率の低下が著しく、実用に耐えないという不具合を生じる。
【0013】
本発明のシームレスベルトは、導電性ないし半導電性である必要がある場合がある。導電性を付与するためには、本発明で用いられるポリアミドイミドに導電性物質を混練させる。導電性物質としては、金属や、合金からなる針状、球状、板状、不定形等の粉末、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、ファーネスブラック等のカーボン粉末、天然黒鉛、人造黒鉛、膨張黒鉛等の黒鉛粉末、セラミックス粉末、表面が金属メッキされた各種粒子等が用いられ、その形状、サイズ等は、球状ないし不定形をなし、0.01〜10μm程度のものとすることが望ましく、添加量は、所望の導電性により適宜調整すればよいが、おおよそ5〜25容量%の範囲から選択されることが好ましい。5容量%未満では、導電性物質同士の距離が大きくなり、導電性が発現し難く、25容量%を超えると、シームレスベルトの機械的強度に悪影響を及ぼす危険性が増大するからである。
【0014】
本発明の一層望ましい第2の発明の形態としては、上記導電性物質の一部又は全部に、カーボンフィラーを用いる。このカーボンフィラーは、導電性を付与するばかりでなく、溶剤をベルト樹脂中により積極的に残留させ、揮発量をコントロールするのに望ましいものである。ポリアミドイミドを溶解することのできる上記溶剤は、極性を有するものであり、極性基を有するカーボンフィラーを用いると溶剤との親和性が高く、溶剤の一部を除去する工程において容易に所望の溶剤量を残留させることができるので、実用上極めて有利である。さらに、実使用状態における溶剤の揮発状態が制御される。カーボンフィラーの添加量、極性基の含有量により違いがあるが、これらの含有量が後述する範囲にある場合、0.5〜1.5%程度の残留量で溶剤の揮発がほぼ平衡状態に達し、長期にわたりシームレスベルトの特性を維持することができる。
【0015】
そのようなカーボンフィラーは、表面酸化処理を施した、粒径0.01〜1μm程度の、不定形状のカーボンブラックとすればよい。例えば、前述したファーネスブラックを酸化性の気流中で加熱処理することにより得られるものである。その表面のカーボンブラックの炭素に結合する官能基は、次の化学式[化1]に示されるカルボン酸、ラクトン、フェノール及びキノンよりなる群から選択される官能基構造を、カーボンフィラー1g中に50×10−5〜2,000×10−5モル含むことが重要である。
【0016】
【化1】
Figure 0004042882
なお、上記化学式で、大括弧より左の「C」はカーボンブラックを構成する炭素である。
【0017】
かかるカーボンフィラーは一種類でもよいが、二種以上を組合せて使用することもできる。また、上記本発明の目的を阻害しない程度の少量の他のフィラー、例えばシリカ、ZnO、MgO、CaCO等、を併用することもできる。
本発明のベルトに用いられるカーボンフィラーは、その表面のカーボンブラックの炭素に結合して形成されたカルボン酸、ラクトン、フェノール及びキノンよりなる群から選択される官能基構造を有するものであって、通常、カーボンブラックの表面酸化によって形成される。表面に特殊官能基構造を有する上記カーボンフィラーは、前述のように、溶剤との親和性が高く、溶剤の一部を除去する工程において、所望の溶剤量を残すのに極めて有用である。カーボンフィラーの前記官能基の含有量が50×10−5モル/g未満では、溶剤を十分に捕捉することができないので、満足し得る溶剤の残留効果が得られず、また2000×10−5モル/gを超えると、ポリアミドイミド溶液が増粘する傾向にあるので、本発明のベルトの遠心注型には好ましくなくなる。
【0018】
このようなカーボンフィラーの添加効果は、ポリアミドイミド100重量部に対し5〜50重量部含有させることによって達成される。カーボンフィラーの添加量が少なすぎると、溶剤を捕捉する能力が不十分となり、多すぎると、シームレスベルトとしての物性を損なうおそれがあるので好ましくない。なお、本発明のシームレスベルトには、ある程度の導電性が要求される場合には、上記カーボンフィラーを導電性の付与に利用することができる。その場合、前記した範囲の添加量を考慮して導電性を調整すればよく、適切な溶剤の捕捉と導電性の付与等、複数の機能を持たせることができる。
【0019】
次に、本発明のシームレスベルトの代表的製造方法である遠心注型成形法について、簡単に説明する。この方法は、まず、原材料としてのポリアミドイミドを溶剤に溶解し、その溶液を回転するシームレスベルト形成用の円筒状金型の内側に注入して、回転遠心力の作用で金型の内壁に流動状溶液の層を形成させ、加熱することにより大部分の溶剤を除去して遠心注型は終了する。金型の内に形成されたポリアミドイミドシームレス環状体は、冷却後、型から取り出される。かかる遠心注型に用いられるポリアミドイミドの溶液は、溶剤中で、前記した方法により合成してもよいし、また、溶液化された市販のポリアミドイミドを用いても良い。本発明においては、溶剤は、前述のように、沸点が150〜250℃の範囲内で且つポリアミドイミドを溶かすことができることが重要である。
【0020】
この溶液にカーボンフィラーを分散させる方法としては、カーボンフィラーを直接ポリアミドイミド溶液に投入し、混合、攪拌してもよいし、カーボンフィラーを適当な溶剤に分散させたものをポリアミドイミド溶液に加えて混合してもよい。カーボンフィラーの二次凝集粒子が多数存在すると、シームレスベルトの表面に突部が形成され、平滑面が得られ難いため、いずれの方法においても、二次凝集粒子を解砕する手段をとることが好ましい。そのような手段としては、タンク内で直径数ミリ程度のボールと共に回転させるボールミルやサンドミル、高速回転翼を有する各種のホモジナイザー、三本ロール、衝撃力や超音波を加える等による方法が例示される。
【0021】
溶液の調整においては、溶液の低粘度化、乾燥スピードの制御等の目的で、沸点が150℃未満の溶剤や、単独ではポリアミドイミドを溶解することのできない溶剤を併用することもできるが、本発明における、クリープの相殺という効果を阻害しないように、その添加量は全溶剤量に対して50重量%を超えない範囲とすることが好ましい。また、ポリアミドイミド溶液は、粘度を50,000cP(センチポアズ)以下に調整することが好ましい。50,000cPを超える粘度では、遠心力による金型内壁へのレベリングが困難となるので採用できない。下限は特に限定されないが、材料の取り扱い性を考慮するとき、10cP以上が好ましい。
【0022】
本発明のシームレスベルトの製造を添付図面により説明する。図1は、遠心注型装置の一例の模式的正面図であり、図2は、その模式的側面図である。両図において、回転する二対のローラ1,1’と2,2’上に置かれた回転金型3の中に、溶液を必要量だけ注入する。金型3は通常、金属製であって、内側面には、形成されたシームレスベルトが容易に剥離するように鏡面加工またはフッ素樹脂やシリコーン樹脂等で被覆処理したものが好ましく用いられる。金型3の両端は注入したポリアミドイミド溶液が漏れないように、金属製あるいは樹脂製等のリング状の蓋(図示せず)が設けられる。また、蓋の中央には、ポリアミドイミド溶液注入のための穴が設けられリング状となっている。
【0023】
ポリアミドイミド溶液の注入量は、溶液の濃度、固形分の比重、金型の内面寸法、製品の所望厚さから算出される。本発明のシームレスベルトには、機械的強度と可撓性が求められるので、厚さは、使用対象ないし使用状況に応じて、概略0.03〜1.0mm程度の範囲内から選択形成される。操作は、まず、金型3を当初はゆっくり回転させ、内壁にポリアミドイミド溶液を均一に塗布しつつ、徐々に回転数を上げる。必要に応じ、金型を外部より適当なヒーターで加熱して、ポリアミドイミド溶液の粘度低減、有機溶媒の蒸発を促進することができる。
【0024】
しかし、本発明においては溶剤が完全に除去されるのを防ぐ必要があり、また、急激な溶剤の乾燥は、シームレスベルトの表面状態に悪影響を与えるので、はじめのうちは、金型の加熱を溶剤の沸点より120〜50℃程度低くすることがよく、例えば、ジメチルホルムアミドを溶剤として選択した場合には、30〜100℃、ジメチルアセトアミドを選択した場合には、50〜120℃の温度範囲に、NMPを選択した場合には、80〜150℃程度の温度になるように条件を設定すればよい。残留溶剤量が少なくともポリアミドイミド100重量部に対し0.5重量部以上とする必要があり、この加熱工程で成形を完了する場合には6.0重量部以下にし、更に、熱処理の工程を経る場合には、その熱処理後に6.0重量部以下となる程度の溶剤を残留させることが必要で、設定された温度条件で、所望の残留溶剤量を得るための時間をあらかじめ実験で求めておくとよい。
【0025】
更に熱処理を行う場合、回転させたまま温度を上昇させてもよいし、また、金型の回転を停止しても材料が金型内壁に固定される状態まで溶剤が除去されている場合は、金型の回転を停止し、オーブン等の装置により別途加熱処理を行うことができる。いずれの場合においても、最終的に溶剤の残留量を、ポリアミドイミド100重量部に対し、0.5〜6.0重量部の範囲とすることが必要である。成形が終了したら、金型ごと空冷すると、金型とシームレスベルトを構成するポリアミドイミドとの熱膨張率の差によって、シームレスベルトが金型内面より自然に剥離する。シームレスベルトと金型内面との密着が強く、自然に剥離しない場合は、端部から徐々に剥離することで、シームレスベルトが得られる。最後に、これを所望の幅にカットして、本発明のシームレスベルトとされる。
【0026】
以上のように、本発明においては、シームレスベルトの主材料としてポリアミドイミドを使用し、遠心注型成形法によって完全に無端で、良好な表面状態を有するベルトを製造し得るだけでなく、溶剤の残留量を0.5〜6.0重量%の範囲に調整することにより、クリープ現象が相殺され、耐クリープ性に優れたシームレスベルトを得ることができる。また、カーボンフィラーとして、その表面のカーボンブラックの炭素に結合するカルボン酸、ラクトン、フェノール、キノンより選択される官能基構造の特定範囲量を有するものは、適度の溶剤との親和性を有し、溶剤を除去する工程において、所望の溶剤量を残すのに極めて好適である。
【0027】
【実施例】
次に、実施例、比較例により、本発明を更に具体的に説明する。
(ポリアミドイミド溶液の調整)
トリメリット酸無水物と4,4' −ジアミノジフェニルメタンとの当量をジメチルアセトアミドに溶解し、加熱反応させて固形分(実質的全閉環のポリアミドイミド)濃度が28重量%の芳香族ポリアミドイミド溶液を得た。更に、ジメチルアセトアミドを加えて、固形分濃度15重量%、固形分の比重1.2、粘度2,000cPのポリアミドイミド溶液とした。以下の実施例及び比較例においては、すべてこのポリアミドイミド溶液を使用した。
【0028】
(実施例1)内径200mm、外径220mm、長さ400mmの円筒形を有し、両末端に材料漏れを防止するための、内径170mm、外径220mmのリング状の蓋を備えた金型内に、この金型を100r.p.m.の速度で回転させながら、上記のように調製されたポリアミドイミド溶液200gを注入した。これに熱風送風機の温風を吹き付けて、雰囲気温度を60℃に保ち、その後、回転数を徐々に上げて1,650回転とした。この状態に1時間保持した後、回転を停止し、金型ごと150℃に設定したオーブンに投入、45分後にオーブンから取り出した。そのまま室温に放置し冷却すると、ポリアミドイミド製のシームレスベルトが金型より剥離し、得られた厚さ約100μmのシームレスベルトの一部を切り取って重量を測定し、更に、200℃で真空乾燥して重量を測定して溶剤の残量を測定したところ、3.2重量%(ポリアミドイミド100重量部に対し、3.3重量部)であった。このシームレスベルトより、幅10mm、長さ100mmの試料を5枚切り出し、それぞれ500gの荷重をかけて、60℃のオーブンに30日間放置したところ、伸びの平均値は0.14%であった。
【0029】
(比較例1)
実施例1と同様の装置、材料を使用し、金型を100r.p.m.の速度で回転させながら、ポリアミドイミド溶液を注入した。熱風送風機により、雰囲気温度を60℃に保ち、回転数を徐々に上げて1,650回転とした。この状態で1時間保持した後、回転を停止し、金型ごと200℃に設定したオーブンに投入、60分後にオーブンより取り出した。そのまま室温に放置して冷却すると、ポリアミドイミド製のシームレスベルトが、金型より剥離し、厚さ約100μmのシームレスベルトを得た。このベルトの一部を切り取り、重量を測定し、更に、200℃で真空乾燥して溶剤の残量を測定したところ、0.22重量%(ポリアミドイミド100重量部に対し、0.22重量部)であった。このシームレスベルトより、幅10mm、長さ100mmの試料を5枚切り出し、それぞれ500gの荷重をかけて、60℃のオーブンに30日間放置したところ、伸びの平均値は2.1%であった。
【0030】
(実施例2)
カーボンフィラーとして、デグサ社製の商品名:「Special Black 250 」 (カルボン酸60×10−5モル/g、ラクトン14×10−5モル/g、フェノール15×10−5モル/g、キノン98×10−5モル/g、合計187×10−5モル/gを含有、比重1.9)を、ジメチルアセトアミドに15重量%となるように混合し、これをボールミルにて24時間攪拌、混合してカーボンフィラー混合液を調製した。先に調製したポリアミドイミド溶液中のポリアミドイミド100重量部に対して、カーボンフィラー混合液中のカーボンフィラー25重量部を加え、ボールミルにて24時間混合攪拌して、ポリアミドイミド・カーボンフィラー混合液を得た。粘度は2,000cPであった。
【0031】
実施例1で用いたものと同様の装置を使用し、金型を100r.p.m.の速度で回転させながら、前記ポリアミドイミド・カーボンフィラー混合溶液217gを注入し金型内面に塗工した。これを熱風送風機により、雰囲気温度を60℃に保ち、回転数を徐々に上げて1,650回転とした。この状態で1時間保持した後、回転を停止し、金型ごと200℃に設定したオーブンに投入し、60分後にオーブンより取り出した。そのまま室温に放置して冷却すると、ポリアミドイミド製のシームレスベルトが、金型より剥離し、厚さ約100μmのシームレスベルトを得た。このベルトの一部を切り取って重量を測定し、更に、200℃で真空乾燥して溶剤の残量を測定したところ、2.2重量%(ポリアミドイミド100重量部に対し、2.5重量部)であった。
【0032】
このシームレスベルトより、幅10mm、長さ100mmの試料を5枚切り出し、それぞれ500gの荷重をかけて、60℃のオーブンに30日間放置したところ、伸びの平均値は0.20%であった。また、表面抵抗値を測定(測定装置:三菱化学製「Hiresta−UPMCP−HT450」、プローブ:UR−100、測定電圧:500V、測定点数、表裏面それぞれ20点)したところ、表(外)側平均値8.7×1014Ω/□、最小値6.2×1014Ω/□、最大値10.3×1014Ω/□、裏(内)側平均値10.6×1014Ω/□、最小値8.9×1014Ω/□、最大値13.3×1014Ω/□であった。
【0033】
(実施例3)
実施例2で使用したものと同様のポリアミドイミド・カーボンフィラー混合溶液を使用し、実施例1で用いたものと同様の装置を使用し、金型を100r.p.m.の速度で回転させながら、前記ポリアミドイミド・カーボンフィラー混合溶液217gを注入し金型内面に塗布した。これを熱風送風機により、雰囲気温度を60℃に保ち、回転数を徐々に上げ、1,650回転とした。この状態で1時間保持した後、回転を停止し、金型ごと150℃に設定したオーブンに投入し、45分後にオーブンより取り出した。そのまま室温に放置して冷却すると、ポリアミドイミド製のシームレスベルトが、金型より剥離し、厚さ約100μmの、本発明のシームレスベルトを得た。このシームレスベルトの一部を切り取り、重量を測定し、さらに250で真空乾燥して溶剤の残量を測定したところ、4.1重量%(ポリアミドイミド100重量部に対し、4.3重量部)であった。このシームレスベルトより、幅10mm、長さ100mmの試料を5枚切り出し、それぞれ500gの荷重をかけて、60℃のオーブンに30日間放置したところ、伸びの平均値は−0.10%(0.10%収縮)であった。
【0034】
(比較例2)
カーボンフィラーとして、その表面にカルボン酸、ラクトン、フェノール、キノンの含有量の合計が1×10−5モル/g以下である、電気化学工業社製商品名:「デンカブラック」(アセチレンブラック、比重1.9)を、ジメチルアセトアミドに15重量%となるように混合し、これをボールミルにて24時間攪拌、混合し、カーボンフィラー混液を得た。ポリアミドイミド溶液中のポリアミドイミド100重量部に対し、カーボンフィラー混合液中のカーボンフィラー25重量部を加え、ボールミルにて24時間混合攪拌して、ポリアミドイミド・カーボンフィラー混合溶液を得た。粘度は2,000cPであった。このポリアミドイミド・カーボンフィラー混合溶液を使用し、実施例2と同様の条件でシームレスベルトを作製した。このシームレスベルトの一部を切り取り、重量を測定し、さらに200℃で真空乾燥して溶剤の残量を測定したところ、0.24重量%(ポリアミドイミド100重量部に対し、0.24重量部)であった。このシームレスベルトより、幅10mm、長さ100mmの試料を5枚切り出し、それぞれ500gの荷重をかけて、60℃のオーブンに30日間放置したところ、伸びの平均値は2.0%であった。
【0035】
(比較例3)
実施例1と同様の装置、材料を使用し、金型を100r.p.m.の速度で回転させながら、ポリアミドイミド溶液を注入した。熱風送風機により、雰囲気温度を60℃に保ち、回転数を徐々に上げ、1,650回転とした。この状態で1時間保持した後、回転を停止し、金型ごと100℃に設定したオーブンに投入、60分後にオーブンより取り出した。そのまま室温に放置して冷却すると、ポリアミドイミド製のシームレスベルトが、金型より剥離し、厚さ約100μmのシームレスベルトを得た。このシームレスベルトの一部を切り取り、重量を測定し、さらに200℃で真空乾燥して溶剤の残量を測定したところ、6.5重量%(ポリアミドイミド100重量部に対し、7.0重量部)であった。このシームレスベルトより、幅10mm、長さ100mmの試料を5枚切り出し、それぞれ500gの荷重をかけて、60℃のオーブンに30日間放置したところ、伸びの平均値は15.8%であった。
【0036】
【発明の効果】
以上の結果から明らかなように、本発明によれば、耐クリープ性に優れたシームレスベルトを得ることができ、更に、特定のカーボンブラックを添加することによって、本発明の効果を得るための必要溶剤量を残留させるための製造条件を広範なものとすることができるとともに、長期にわたって特性の安定したシームレスベルトを得ることができる。また、本発明によるシームレスベルトは、特に、複数のローラーに懸架されて用いられる電子写真式複写機等の中間転写装置、転写紙分離装置、帯電装置等に好適である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に用いられる遠心注型成形装置の模式的正面図である。
【図2】図1の遠心注型成形装置の模式的側面図である。
【符号の説明】
1,1 ’……回転ロール対
2……………他方の回転ロール対
3……………金型
4……………樹脂材料層

Claims (3)

  1. 沸点が150〜250℃の範囲にある溶剤にポリアミドイミドを溶解した溶液を成形型内に塗布し、溶剤の大半を除去して得られるシームレスベルトであって、前記ポリアミドイミド100重量部に対し、0.5〜6.0重量部の範囲の溶剤を前記ベルト中に残留させたことを特徴とするシームレスベルト。
  2. 請求項1記載のシームレスベルトに導電性を付与するために、導電性物質を混入させたことを特徴とするシームレスベルト。
  3. 前記導電性物質の全部また一部をカーボンフィラーとし、その表面のカーボンブラックの炭素に結合するカルボン酸、ラクトン、フェノール及びキノンよりなる群から選択される官能基を有し、官能基が合計でカーボンフィラー1g当たり50×10-5〜2,000×10-5モルであるカーボンフィラーを、ポリアミドイミド100重量部に対し5〜50重量部含有させてなることを特徴とする、請求項2に記載されたシームレスベルト。
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