JP4989946B2 - 半導電性ポリイミド樹脂ベルト及びその製造方法 - Google Patents

半導電性ポリイミド樹脂ベルト及びその製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、カラー画像形成装置を備えた電子写真複写機、プリンタ、ファクシミリ、これらの複合機、さらにはデジタル印刷機などの中間転写ベルトとして使用される半導電性ポリイミドベルト及びその製造方法に関する。
電子写真方式を応用した画像形成装置では、先ず無機又は有機光導電性感光体からなる潜像担持体上に一様な電荷を形成し、画像信号を変調したレーザーや発光ダイオード光等で静電潜像を形成した後、帯電したトナーで前記静電潜像を現像して可視化したトナー像とする。そして、前記トナー像を静電的に中間転写ベルト上へ一次転写し、さらに中間転写ベルト上のトナー像を記録紙に静電的に二次転写して、これを加熱や加圧することによって定着させることによって、所要の再生画像を得る中間転写方式が知られている。
特許文献1では導電性カーボンブラックであるアセチレンブラック、ケッチェンブラック等の粉体抵抗が比較的小さい導電性カーボンブラックが、ポリイミド樹脂に分散されてなる導電性ポリイミドシームレスベルトが例示されている。しかし、導電性カーボンブラックを充填した中間転写ベルトでは、電気抵抗率の値を所定の範囲に設定したときであっても、形成画像にムラが発生するといった問題を除去することができない。導電性カーボンブラックをポリイミド樹脂に分散させた場合、1次凝集によるストラクチャー形成や2次凝集による導電性の連鎖が画像に顕著に影響を与えるためと考えられる。
そして、特許文献2では、揮発性酸成分を主とする揮発分10〜25%を含有する導電性カ−ボンブラックを用いた半導電性ベルトが開示されている。そして、カーボンブラックの揮発分が10%未満では、カーボンブラックの分散性が悪く、結果として電気抵抗値も満足できないものであると記載されている。
次に、長期耐久試験において経時的に電気抵抗率の変動が少ない中間転写体として、特許文献3には、ポリイミド樹脂に導電性の異なる複数種類のカーボンブラックを含有し、そのうち少なくとも1種類として酸化処理カーボンブラックを用いることが記載されている。また、特許文献4には、ポリイミド樹脂に酸化処理したカーボンブラックを10〜30重量%含有することが記載されている。これら、特許文献3及び4は、連続して10000回転写を繰り返し後も、表面抵抗率の変動幅が、常用対数値で1.0(logΩ/□)以内であることが開示されている。
しかし、これら特許文献に用いられているポリイミド樹脂は、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物とp−フェニレンジアミンとを反応させた高分子量のポリアミド酸溶液を経由してなる剛直なポリイミド樹脂である。このような剛直なポリイミド樹脂にカーボンブラックを20重量%近傍まで含有した半導電ベルトは非常に脆く、ポリイミド樹脂本来の強靭性が失われ、中間転写ベルトとして使用した場合、幅方向にかかる荷重によるクラックや割れが発生するという問題があった。
また、ポリイミド樹脂の強靭化として、特許文献5及び特許文献6では、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物とp−フェニレンジアミンと4,4’−ジアミノジフェニルエーテルとの共重合体ベルトが開示されている。しかし、これら共重合体ベルトであってもポリイミド樹脂にカーボンブラックを20重量%以上含有した半導電性ベルトでは、長期間走行させた場合にベルトが破損するなどの問題があった。この原因の一つは、ポリイミド樹脂が結晶構造を持っているため、応力の不均一な分布すなわち応力集中をもたらし、この応力集中によりポリイミド樹脂の分子鎖の局所的な破断がおきるためである。
ポリイミドフイルム(ベルト)は、一般に、その前駆体であるポリアミド酸溶液の重量平均分子量20000以上の高分子量の溶液を用いている。重量平均分子量が20000を下回ってしまう場合、120〜200℃の乾燥工程中の解重合による分子量低下でフイルムが機械的に脆弱になり、結果として熱イミド化時のフイルム面内方向への反応収縮に耐えきれず割れを生じてしまいフイルムの作製が非常に困難になるためである。
特許文献7〜10には、液体トナー、インキ、塗料等の用途に好適なカーボンブラックを製造することを目的として、オイルファーネス法のカーボンブラックを改質して、その表面に酸素官能基を付与する種々の酸化方法が報告されている。
特開平5−77252号公報 特開2001−47451号公報 特開2002−148951号公報 特開2002−148957号公報 特開2002−341673号公報 特開2003−266454号公報 特開平11−181326号公報 特開2000−7937号公報 特開2000−290529号公報 特開2001−40240号公報
本発明は、カラー画像形成装置において正確な転写を実現することができ、転写電圧による抵抗変化を防止し、長期間安定して高品質の転写画像を得ることができる等の優れた電気的特性とともに、ベルトの幅方向にかかる荷重によるクラックや割れが発生しにくく、耐久性に優れ、長期間走行させても安定した使用が可能である等の優れた機械的特性を兼ね備えた半導電性ベルトを提供することにある。
本発明者は、上記の課題を解決するために鋭意研究を行った結果、耐久性に優れかつ精密な半導電性制御を実現できる中間転写ベルトを得るためには、中間転写ベルトのマトリックスであるポリイミド樹脂の組成と、ポリイミド樹脂中のカーボンブラックの分散性に着目した。
前記特許文献4〜6では、ポリイミド樹脂が結晶構造を有するため剛直となり、応力の不均一な分布すなわち応力集中をもたらす。そのため、ポリイミド樹脂の結晶性を低くして柔軟性を付与することが重要であると考えた。
また、強靭な機械的特性をもつ半導電性ポリイミドベルトを得るためには、その前駆体溶液であるポリアミド酸溶液の調製方法も検討の余地があると考えた。
さらに、ポリイミド樹脂中に含まれるカーボンブラックの分散性を向上させるため、その物性に着目した。
例えば、図1に示される樹脂中でのカーボンブラックの導電モデルでは、部分連続するもの(A)、不連続なもの(B)、及び連続するもの(C)の3種類が考えられる。その右に示した等価回路より、ポリイミドベルトでの導電性は、カーボンブラックによる連鎖効果(R:抵抗体)とトンネル効果(C:コンデンサ)の組み合わせによって発現することが理解できる。図2は、(A)〜(C)の状態を再現した顕微鏡写真である。(A)では、カーボンブラックが凝集しミクロレベルでの抵抗バラツキが発生するために画像欠陥が生じる。(B)では、均一分散にて半導電性制御が可能であるが、機械的又は電気的ストレスにて抵抗率が変化してしまう。(C)では、安定した導電性を発現しカーボンブラックの粉体抵抗によって導電性がほぼ決定される。
従って、図1に示されるように、樹脂中でカーボンブラックが部分連続や不連続に分散しているのではなく、可能な限り連続して均一分散させることが必要であり、そのためには、樹脂中にカーボンブラックを高充填化させること、即ち、カーボンブラック分散ポリイミド前駆体溶液組成物における固形分中のカーボンブラック濃度を高くすることが重要と考えた。
そこで、本発明者は、非対称性のビフェニルテトラカルボン酸成分を含むビフェニルテトラカルボン成分と芳香族ジアミンを共重合して得られるポリイミド樹脂に、オイルファーネス法で製造される揮発分2〜6%のカーボンブラックを分散させた半導電性ベルトが、機械的特性に優れ、かつ、高品質の転写画像が得られることを見出した。かかる知見に基づき、さらに研究を重ねて本発明を完成するに至った。
即ち、本発明は下記の半導電性ポリイミド樹脂ベルト及びその製造方法を提供する。
項1. ポリイミド樹脂70〜80重量%及びオイルファーネス法で製造された揮発分が2〜6%のカーボンブラック30〜20重量%を含み、表面抵抗率が1×10〜1×1014Ω/□である半導電性ベルトであって、該ポリイミド樹脂が、非対称性のビフェニルテトラカルボン酸成分15〜50モル%及び対称性の3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸成分85〜50モル%からなるビフェニルテトラカルボン酸成分と、芳香族ジアミンとの略等モル量をイミド化した共重合体である半導電性ベルト。
項2. 前記非対称性のビフェニルテトラカルボン酸成分が、2,3,3’,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物又は2,3,3’,4’−ビフェニルテトラカルボン酸ジエステルである項1に記載の半導電性ベルト。
項3. 前記芳香族ジアミンが、4,4’−ジアミノジフェニルエーテルである項1又は2に記載の半導電性ベルト。
項4. 前記オイルファーネス法で製造されたカーボンブラックのpHが2〜4、窒素吸着比表面積が60〜150m/g、かつDBP吸収量が40〜120ml/100gであることを特徴とする項1〜3のいずれかに記載の半導電性ベルト。
項5. 項1〜4のいずれかに記載の半導電性ベルトからなる電子写真機器の中間転写ベルト。
項6. 非対称性のビフェニルテトラカルボン酸二無水物15〜50モル%及び対称性の3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物85〜50モル%からなるビフェニルテトラカルボン酸二無水物と、芳香族ジアミンとの略等モル量とを、有機極性溶媒中で反応して重量平均分子量が20000以下のポリアミド酸溶液を製造し、該ポリアミド酸溶液に、オイルファーネス法で製造された揮発分が2〜6%のカーボンブラックを均一分散させてポリイミド前駆体溶液組成物を調製し、該カーボンブラック分散ポリイミド前駆体溶液組成物を回転成形法にて管状物に成形し、該成形体を加熱処理してイミド化する半導電性ベルトの製造方法であって、
(1)重力加速度の0.5〜10倍程度の遠心加速度で回転する円筒金型の内周面に該カーボンブラック分散ポリイミド前駆体溶液組成物を均一な厚さで塗布する工程、
(2)該円筒金型を重力加速度の0.5〜10倍程度の遠心加速度で回転させたまま100〜140℃程度の温度で加熱して、自己支持性の皮膜を形成する工程、及び
(3)該皮膜を円筒金型の内周面に付着した状態のまま約300℃以上の温度で加熱、してイミド化する工程、
を含むこと特徴とする製造方法。
項7. 非対称性のビフェニルテトラカルボン酸ジエステル15〜50モル%及び対称性の3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸ジエステル85〜50モル%からなるビフェニルテトラカルボン酸ジエステルと、芳香族ジアミンとの略等モル量とを有機極性溶媒に溶解してナイロン塩型モノマー溶液を調製し、該ナイロン塩型モノマー溶液に、オイルファーネス法で製造された揮発分が2〜6%のカーボンブラックを均一分散させてポリイミド前駆体溶液組成物を調製し、該カーボンブラック分散ポリイミド前駆体溶液組成物を回転成形法にて管状物に成形し、該成形体を加熱処理してイミド化する半導電性ベルトの製造方法であって、
(1)重力加速度の0.5〜10倍程度の遠心加速度で回転する円筒金型の内周面に該カーボンブラック分散ポリイミド前駆体溶液組成物を均一な厚さで塗布する工程、
(2)該円筒金型を重力加速度の0.5〜10倍程度の遠心加速度で回転させたまま100〜140℃程度の温度で加熱して、自己支持性の皮膜を形成する工程、及び
(3)該皮膜を円筒金型の内周面に付着した状態のまま約300℃以上の温度で加熱、してイミド化する工程、
を含むこと特徴とする製造方法。
項8. 項6又は7に記載の製造方法により製造される半導電性ベルト。
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明の半導電性ポリイミドベルトは、ポリイミド樹脂70〜80重量%及びオイルファーネス法で製造された揮発分が2〜6%のカーボンブラック30〜20重量%を含んでおり、その表面抵抗率が1×10〜1×1014Ω/□であり、該ポリイミド樹脂が、非対称性のビフェニルテトラカルボン酸成分15〜50モル%及び対称性の3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸成分85〜50モル%からなるビフェニルテトラカルボン酸成分と、芳香族ジアミンとの略等モル量をイミド化した共重合体であることを特徴とする。
そして、この半導電性ポリイミドベルトは、安定した高品質の転写画像が得られ、しかも耐久性に優れている。
1.揮発分2〜6%の範囲を有するカーボンブラック
本発明で使用するカーボンブラックは、オイルファーネス法で製造されたカーボンブラックを、さらに酸化処理により揮発分2〜6%の範囲に調製されたものである。
オイルファーネス法によるカーボンブラックの製法は、チャンネル法に比べて歩留まり及び生産性が良く製造の際に環境を汚さないため、現在ではカーボンブラックの主流となっている。しかしながら、チャンネルブラックは揮発分を多く(通常10.0%以上)含むため、ポリイミド前駆体溶液と馴染みが良く分散性に優れるのに対し、オイルファーネス法のカーボンブラックは、チャンネルブラックに比べて揮発分が著しく少ない(通常1.5%以下)ため、ポリイミド前駆体溶液への分散性が悪く、貯蔵の際カーボンブラック凝集するなどの欠点をもっている。これは、オイルファーネス法のカーボンブラックは、燃料を燃やした高温ガス中で炭化水素を還元雰囲気で熱分解して製造されるため、空気中低温で作るチャンネルブラックに比べて、揮発分が著しく少なくなるためである。
本発明では、オイルファーネス法のカーボンブラックを改質(酸化処理)して揮発分を2〜6%の範囲に増加させる。
酸化処理では、その酸化に使う酸化剤の種類は特に重要であり、その酸化剤としては、硝酸を含む窒素酸化物、オゾン、次亜塩素酸類、硫酸ガス等の酸化剤が使用可能である。特に、処理後のカーボンブラックに原料の酸化剤の残存が少なく、未分解原料炭化水素(PAH)が分解される点から、オゾンを含む酸化剤、特にオゾンが好適に使用される。未分解原料炭化水素(PAH)は可能な限り少ない方が良く、具体的には10ppm以下であればよい。
酸化処理により、オイルファーネス法によるカーボンブラックの揮発分を2〜6%の範囲とすることが重要であり、好ましくは2.5〜5%程度である。
揮発分2〜6%のカーボンブラックの表面には、フェノール性水酸基やカルボニル基、カルボキシル基等の酸素官能基(特に、カルボキシル基)を含むため、ポリアミド酸溶液での流動性及び分散安定性が向上し、またポリイミド樹脂への親和性も向上する。
また、オイルファーネス法で製造された同じ比表面積及びジブチルフタレート吸着量(DBP吸収量)のカーボンブラックであれば、その揮発分量と粉体抵抗はほぼ比例関係にある。該カーボンブラック表面の揮発分である酸素官能基はπ電子の流れを阻害する絶縁物としてはたらくため、酸化処理されていないオイルファーネス法によるカーボンブラックよりも粉体抵抗が大きくなり、揮発分を上記の範囲に設定することにより、カーボンブラックの粉体抵抗を3〜30Ω・cm程度の高い値で制御することができる。
そのため、ポリイミド樹脂ベルトの表面抵抗率を所望の範囲(10〜1014Ω/□)に設定する場合に、ポリイミド樹脂中へ該カーボンブラックを高充填(ポリイミド樹脂中カーボンブラック濃度が20〜30重量%)することができる。これにより、カーボンブラック同士の連鎖による導電性が付与され、外部環境や印加電圧に影響を受けにくい安定した電気特性を有するポリイミド樹脂ベルトを得ることができる。換言すれば、カーボンブラック分散ポリイミド前駆体溶液組成物における固形分中のカーボンブラック濃度を20〜30重量%の高濃度に制御できることになる。
揮発分が2%未満のカーボンブラック(例えば、三菱化学製 三菱カーボンブラック「MA11」「MA100」、デクサ製「Printex 95」「Printex L6」など)では、ポリイミド前駆体溶液に対する親和性の問題があり、分散後にファンデルワールス力によって2次凝集体を形成しやすい傾向にある。
また、揮発分が6%を越えるカーボンブラック(例えば、デクサ製「Color Black FW200」「Special Black 5」「Special Black 4」「Printex 150T」など)は、チャンネル法のカーボンブラックがほとんどであり、水素や酸素以外に、硫黄や未分解原料炭化水素(PAH)などの不純物が多く含まれ、この不純物がポリイミド樹脂などのバインダー樹脂本来の機械的特性を低下させてしまう。また、オイルファーネス法のカーボンブラックであり揮発分6%を超えて酸化処理した場合には、粉体抵抗が大幅に高くなるため(絶縁性カーボンブラックになるため)、中間転写ベルトとして必要な表面抵抗率109〜1014Ω/□を実現できない。
本発明で使用するカーボンブラックは、窒素吸着比表面積(JIS K6217)が60〜150m/g、さらに80〜130m/gの範囲が好適である。一般にカーボンブラックを各種の方法で酸化すると、比表面積が大きくなるほど酸素官能基は多く付与される。ところが、カーボンブラックの粉体抵抗やこれを各種材料に配合した際の物性は、酸素官能基の絶対量でなく単位表面に付与している酸素官能基の数と相関している。
比表面積が60m/gより小さい場合は、ポリイミド前駆体溶液との親和性が得られず粉体抵抗も十分に高い値にならない。また、150m/gを越える場合は、高比表面積のカーボンブラック、即ち一次粒子が小さいか又は同一粒子径においても細孔を形成したカーボンブラックとなり、酸素官能基を付与しても結果的にカーボンブラックの粉体抵抗が高くならない。そのため、該固形分中のカーボンブラック濃度が高い(例えば、20重量%以上の高濃度で充填した)半導電性ポリイミド樹脂ベルトが得られなくなる。つまり、低いカーボンブラック充填量の半導電性ポリイミド樹脂ベルトしか得られない。
本発明で使用するカーボンブラックは、pHが2〜4、好ましくは2〜3である。
また、本発明で使用するカーボンブラックは、ジブチルフタレート吸収量(DBP吸収量)が40〜120ml/100g、さらに50〜90ml/100gの範囲が好適である。DBP吸収量が120ml/100gを越えると、酸化処理を施してもカーボンブラックの粉体抵抗が高くならない。そのため該固形分中のカーボンブラック濃度を20重量%以上の高濃度で充填した半導電性ポリイミド樹脂ベルトが得られなくなる。DBP吸収量が40ml/100g未満では粉体抵抗が高くなりすぎるため、該固形分中のカーボンブラック濃度は30重量%を越えて充填しないと半導電性ポリイミド樹脂ベルトが得られなくなる。
2.カーボンブラック分散ポリイミド前駆体溶液組成物
本発明の半導電性ポリイミドベルトは、原料であるカーボンブラック分散ポリイミド前駆体溶液組成物(以下「CB分散PI前駆体溶液組成物」とも呼ぶ。)を回転成型して製造する。このCB分散PI前駆体溶液組成物は、有機極性溶媒及び固形分としてポリイミド樹脂の原料を含むポリイミド前駆体溶液(以下「PI前駆体溶液」とも呼ぶ。)に、オイルファーネス法で製造された揮発分が2〜6%のカーボンブラックを均一分散させたものである。
PI前駆体溶液は、非対称性のビフェニルテトラカルボン酸成分15〜50モル%及び対称性の3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸成分85〜50モル%からなるビフェニルテトラカルボン酸成分と、芳香族ジアミンとの略等モル量から調製される。具体的には、下記に示す重量平均分子量が20000以下のポリアミド酸溶液、或いは、ナイロン塩型モノマー溶液が挙げられる。
なお、ビフェニルテトラカルボン酸成分としては、以下に述べるようにビフェニルテトラカルボン酸二無水物又はビフェニルテトラカルボン酸ジエステルが挙げられる。
重量平均分子量20000以下のポリアミド酸の溶液
この重量平均分子量20000以下のポリアミド酸の溶液は、非対称性のビフェニルテトラカルボン酸二無水物15〜50モル%及び対称性の3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物85〜50モル%からなるビフェニルテトラカルボン酸二無水物と、芳香族ジアミンとの略等モル量とを、有機極性溶媒中で反応させて製造する。
非対称性のビフェニルテトラカルボン酸二無水物の典型例としては、2,3,3’,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(a-BPDA)を挙げることができる。非対称性のビフェニルテトラカルボン酸二無水物は、ビフェニルテトラカルボン酸二無水物中15〜50モル%、好ましくは20〜40モル%、より好ましくは20〜30モル%である。
また、対称性の3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物は、ビフェニルテトラカルボン酸二無水物中85〜50モル%、好ましくは80〜60モル%、より好ましくは80〜70モル%である。
非対称性のビフェニルテトラカルボン酸二無水物が50モル%以下であると、得られたベルトの降伏強さと弾性率が良好であり、中間転写ベルトとして使用した場合、駆動での応答性に優れる。
一方、15モル%未満の場合には、高結晶性で剛直なポリイミドが生成されるため、カーボンブラックを20重量%近傍まで含有した半導電ベルトは非常に脆く、強靭性が失われてしまう。しかも、ポリアミド酸の重量平均分子量が20000を下回る場合には、120〜200℃の乾燥工程で皮膜にクラックが入り、結果として熱イミド化時のフイルム面内方向への反応収縮に耐えきれず割れを生じてしまいベルトの作製が困難となる。
芳香族ジアミンとしては、1つの芳香環上に2個のアミノ基を有する化合物、又は2つ以上の芳香環(ベンゼン核等)が−O−、−S−、−CO−、−CH−、−SO−、−SO−等の基若しくは単結合で架橋された2個のアミノ基を有する化合物が挙げられる。具体的には、例えば、p−フェニレンジアミン、o−フェニレンジアミン、m−フェニレンジアミン、4、4’―ジアミノジフェニルエーテル、4、4’―ジアミノジフェニルチオエーテル、4、4’―ジアミノジフェニルカルボニル、4、4’―ジアミノジフェニルメタン、1、4―ビス(4―アミノフェノキシ)ベンゼン等が挙げられる。中でも、4、4’―ジアミノジフェニルエーテルが特に好ましい。これらの芳香族ジアミンを用いることにより、反応がより円滑に進行すると共に、より強靭かつ高い耐熱性のフイルムを製造することができるからである。
有機極性溶媒としては、非プロトン系有機極性溶媒が好ましく、例えばN−メチル−2−ピロリドン(以下、「NMP」と呼ぶ。)、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジエチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、ヘキサメチルホスホアミド、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン等が使用される。これらのうちの1種又は2種以上の混合溶媒であってもよい。特に、NMPが好ましい。
ポリアミド酸の分子量の調節は、公知のいずれの方法を用いても構わない。例えば、ビフェニルテトラカルボン酸二無水物/芳香族ジアミンのモル比を0.5〜0.95で重合して所定の分子量のポリアミド酸を形成した後で、必要に応じてビフェニルテトラカルボン酸二無水物/芳香族ジアミンが略等モルになるようにビフェニルテトラカルボン酸を添加する方法(例えば、特公平1−22290号公報参照)や、ビフェニルテトラカルボン酸二無水物/芳香族ジアミンを略等モルで反応するに際して、水のような高分子量化を抑制する化合物を所定量共存させる方法(例えば、特公平2−3820号公報参照)等により、好適に行うことができる。
一般に、対称構造のポリイミドフイルム(ベルト)の引張特性(引張強度、破断伸度、弾性率)は、ポリアミド酸溶液中のポリアミド酸の重量平均分子量に大きく依存することが知られている。該引張特性は、重量平均分子量が30000以上でほぼ一定の値を示すが20000以下になると急激に減少する。そのため対称構造のポリアミド酸では、重量平均分子量が30000以上のポリアミド酸が用いられている。
これに対し、15モル%以上の非対称性ビフェニルテトラカルボン酸二無水物を含む非対称構造のポリアミド酸を含む溶液では、ポリイミドフイルムの引張特性はポリアミド酸の重量平均分子量に依存性することなく、重量平均分子量が20000以下であっても、強靭なフイルムの成形が可能となる。そのため、後述するようなポリイミド前駆体組成がナイロン塩型モノマー溶液(重量平均分子量5000前後)であっても高強度・強靭なポリイミドベルトの作製が可能になる。
さらに、15モル%以上非対称性のビフェニルテトラカルボン酸二無水物を含むポリアミド酸溶液の場合には、ポリアミド酸の有機極性溶媒への溶解性を高めることが可能となり、ポリアミド酸溶液組成物の固形分濃度を、20重量%以上、特に30〜50重量%の高い濃度に調製することができる。このように高い固形分濃度に調製できるのは、ポリアミド酸が高分子量化していないため溶媒に溶解しやすいことが挙げられる。そのため、容易に膜厚100μm以上あるベルトを製造することができ、使用する溶媒の量が少ないためコストが抑えられ溶媒の蒸発除去が簡便になる。
また、蒸発させる溶媒が多いと乾燥過程における温度対流や蒸発対流を起こす浮力と表面張力、溶媒蒸発による粘度変化、密度変化などが大きく、カーボンブラックの分散状態が不均一になって起こる「浮きまだら現象」を発生させてしまう。しかし、本発明で使用するポリアミド酸溶液組成物では溶媒の量が少ないためこの様な問題が極力抑えられる。
また、非対称性のビフェニルテトラカルボン酸二無水物を所定量混合したものを、芳香族ジアミンと共重合することにより、ポリイミド樹脂の分子構造が曲がって、ポリイミド樹脂ベルトにフレキシブル性が生まれる。
対称性と非対称性のビフェニルテトラカルボン酸二無水物の共存効果は、非対称性のビフェニルテトラカルボン酸二無水物を15〜50モル%配合したときに、最も有効に発揮される。ポリイミド樹脂ベルトの引っ張り試験における降伏強さ、破断強さ、そして破断ひずみが大きく改善される。その結果ポリイミド樹脂にカーボンブラックを20重量%以上の高濃度で含有させた場合であっても、強靭な半導電性ベルトとなる。
また、一般に、対称性のビフェニルテトラカルボン酸二無水物(s-BPDA)からポリイミドを作製すると、その高い対称性に由来して容易に結晶構造を形成する。しかし、非対称性のビフェニルテトラカルボン酸二無水物(a-BPDA)を15モル%以上加えて共重合すると、分子鎖の規則性が阻害されるために結晶の形成が抑制され、非晶構造が支配的となる。そのために、揮発分2〜6%のカーボンブラックとの親和性も高くなり、ポリイミド樹脂中のカーボンブラック濃度も高めることができる。カーボンブラック濃度は、例えば20〜30重量%(特に25〜30重量%)の高濃度に調製できる。
ナイロン塩型モノマー溶液
ナイロン塩型モノマー溶液は、非対称性のビフェニルテトラカルボン酸ジエステル15〜50モル%及び対称性の3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸ジエステル85〜50モル%からなるビフェニルテトラカルボン酸ジエステルと、芳香族ジアミンとの略等モル量とを有機極性溶媒に溶解して調製する。
非対称性のビフェニルテトラカルボン酸ジエステルの典型例としては、2,3,3’,4’−ビフェニルテトラカルボン酸ジエステルを挙げることができる。非対称性のビフェニルテトラカルボン酸ジエステルは、ビフェニルテトラカルボン酸ジエステル中15〜50モル%、好ましくは20〜40モル%、より好ましくは20〜30モル%である。
また、対称性の3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸ジエステルは、ビフェニルテトラカルボン酸ジエステル中85〜50モル%、好ましくは80〜60モル%、より好ましくは80〜70モル%である。
上記対称性の又は非対称性のビフェニルテトラカルボン酸ジエステルは、ビフェニルテトラカルボン酸の4個のカルボキシル基のうち、2個のカルボキシル基がエステル化されており、かつ2つのベンゼン環上の隣接する2個のカルボキシル基の一方がエステル化された化合物である。
上記ビフェニルテトラカルボン酸ジエステルにおける2個のエステルとしては、ジ低級アルキルエステル、好ましくはジメチルエステル、ジエチルエステル、ジプロピルエステル等のジC1−3アルキルエステル(特に、ジメチルエステル)が挙げられる。
なお、上記対称性の又は非対称性のビフェニルテトラカルボン酸ジエステルは、市販されているか又は公知の方法により製造することができる。例えば、対応するビフェニルテトラカルボン酸二無水物1モルに対し、対応するアルコール(低級アルコール、好ましくはC1−3アルコール等)を2モル反応させる等の公知の方法により容易に製造することができる。これにより、原料の酸無水物がアルコールと反応して開環して、2つのベンゼン環上の隣接する炭素上にそれぞれエステル基とカルボキシル基を有するジエステルが製造される。
非対称性のビフェニルテトラカルボン酸ジエステルが50モル%を超えると、得られたベルトの降伏強さと弾性率が弱く、中間転写ベルトとして使用した場合、駆動での応答性が悪いだけでなく、初期の段階でベルト伸びが発生してしまうなどの問題がある。
一方、15モル%未満の場合には、高結晶性で剛直なポリイミドが生成されるため、カーボンブラックを20重量%近傍まで含有した半導電ベルトは非常に脆く、強靭性が失われてしまう。
芳香族ジアミンとしては、1つの芳香環上に2個のアミノ基を有する化合物、又は2つ以上の芳香環(ベンゼン核等)が−O−、−S−、−CO−、−CH−、−SO−、−SO−等の基若しくは単結合で架橋された2個のアミノ基を有する化合物が挙げられる。具体的には、例えば、p−フェニレンジアミン、o−フェニレンジアミン、m−フェニレンジアミン、4、4’―ジアミノジフェニルエーテル、4、4’―ジアミノジフェニルチオエーテル、4、4’―ジアミノジフェニルカルボニル、4、4’―ジアミノジフェニルメタン、1、4―ビス(4―アミノフェノキシ)ベンゼン等が挙げられる。中でも、4、4’―ジアミノジフェニルエーテルが特に好ましい。これらの芳香族ジアミンを用いることにより、反応がより円滑に進行すると共に、より強靭かつ高い耐熱性のフイルムを製造することができるからである。
有機極性溶媒としては、非プロトン系有機極性溶媒が好ましく、例えばN−メチル−2−ピロリドン(以下、「NMP」と呼ぶ。)、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジエチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、ヘキサメチルホスホアミド、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン等が使用される。これらのうちの1種又は2種以上の混合溶媒であってもよい。特に、NMPが好ましい。
ナイロン塩型モノマー溶液は、有機極性溶媒にビフェニルテトラカルボン酸ジエステルと芳香族ジアミンとの略等モル量を溶解させることにより製造される。有機極性溶媒中でビフェニルテトラカルボン酸ジエステルのカルボン酸イオンと芳香族ジアミンのアンモニウムイオンのイオン対が実質的モノマー状態をとっていると考えられる。
ナイロン塩型モノマー溶液は、例えば、有機極性溶媒中でビフェニルテトラカルボン酸ジエステルのカルボン酸イオンと芳香族ジアミンのアンモニウムイオンのイオン対が、実質的モノマー状態をとっていると考えられる(例えば下記式を参照)。また、実質的モノマー状態であるため上記の有機極性溶媒に極めて溶解しやすく、使用する溶媒の量を極力低減できるというメリットがある。
Figure 0004989946
(式中、Arはビフェニルテトラカルボン酸ジエステルから2つのカルボキシル基と2つのエステル基を除いた4価の残基、Ar’は芳香族ジアミンから2つのアミノ基を除いた2価の残基、Rはアルキル基を表す。)
そのため、ナイロン塩型モノマー溶液の固形分濃度を、20重量%以上、特に30〜50重量%の高い濃度に調製することができる。これにより、容易に膜厚100μm以上あるベルトを製造することができ、使用する溶媒の量が少ないためコストが抑えられ溶媒の蒸発除去が簡便になる。
また、蒸発させる溶媒が多いと乾燥過程における温度対流や蒸発対流を起こす浮力と表面張力、溶媒蒸発による粘度変化、密度変化などが大きく、カーボンブラックの分散状態が不均一になって起こる「浮きまだら現象」を発生させてしまう。しかし、本発明のナイロン塩型モノマー溶液(PI前駆体溶液)では溶媒の量が少ないためこの様な問題が極力抑えられる。
また、非対称性のビフェニルテトラカルボン酸ジエステルを所定量混合したものを、芳香族ジアミンと共重合することにより、ポリイミド樹脂の分子構造が曲がって、ポリイミド樹脂ベルトにフレキシブル性が生まれる。
対称性と非対称性のビフェニルテトラカルボン酸ジエステルの共存効果は、非対称性のビフェニルテトラカルボン酸ジエステルを15〜50モル%配合したときに、最も有効に発揮される。ポリイミド樹脂ベルトの引っ張り試験における降伏強さ、破断強さ、そして破断ひずみが大きく改善される。その結果ポリイミド樹脂にカーボンブラックを20重量%以上の高濃度で含有させた場合であっても、強靭な半導電性ベルトとなる。
また、一般に、対称性のビフェニルテトラカルボン酸ジエステルからポリイミドを作製すると、その高い対称性に由来して容易に結晶構造を形成する。しかし、非対称性のビフェニルテトラカルボン酸ジエステルを15モル%以上加えて共重合すると、分子鎖の規則性が阻害されるために結晶の形成が抑制され、非晶構造が支配的となる。そのために、揮発分2〜6%のカーボンブラックとの親和性も高くなり、ポリイミド樹脂中のカーボンブラック濃度も高めることができる。カーボンブラック濃度は、例えば20〜30重量%(特に25〜30重量%)の高濃度に調製できる。
カーボンブラック分散ポリイミド前駆体溶液組成物の調製
CB分散PI前駆体溶液組成物は、オイルファーネス法で製造された揮発分が2〜6%のカーボンブラックを、前記のPI前駆体溶液に均一分散させて調製する。
該カーボンブラックをPI前駆体溶液に混合する方法は、カーボンブラックがPI前駆体溶液中に均一に混合、分散される方法であれば特に制限はない。例えば、サンドミル、ビーズミル、超音波ミル、3本ロール等を用いた方法が用いられる。混合及び分散後のカーボンブラックの平均粒子径は、通常0.1〜0.5μm程度、好ましくは0.2〜0.4μm程度である。
PI前駆体溶液に添加されるカーボンブラックの量は、PI前駆体溶液組成物の固形分中20〜30重量%となるように決定される。下限が20重量%以上であるのは、例えばカラー画像形成装置の中間転写ベルトなどとして使用した場合、電荷の帯電安定性と徐電を適切に行うことができ、並びに長期間安定して高品質の転写画像を得るために必要であり、30重量%以下とするのは、中間転写ベルトとしての強度を保持し、長期間の使用でも中間転写部材の破損などの問題が発生しないようにするためである。
なお、本発明の効果に悪影響を与えない範囲で、上記組成物中にイミダゾール系化合物(2-メチルイミダゾール、1,2−ジメチルイミダゾール、2-メチル-4-メチルイミダゾール、2-エチル-4-エチルイミダゾール、2-フェニルイミダゾール)、界面活性剤(フッ素系界面活性剤等)等の添加剤を加えてもよい。
かくしてカーボンブラックが固形分中に20〜30重量%の範囲で均一分散されたPI前駆体溶液組成物が製造される。
このカーボンブラックの分散PI前駆体溶液組成物の粘度は、例えば、0.5〜50Pa・s、好ましくは1〜10Pa・sにすれば、カーボンブラックの分散悪化を最小限に制御できる。また、溶液中でのカーボンブラックの平均粒径は0.1〜0.5μmの範囲で、最大粒子径は1μm以下にすることが好ましい。
3.半導電性ポリイミドベルトの製造方法
本発明の半導電性ポリイミドベルトは、上記のカーボンブラック分散ポリイミド前駆体溶液組成物(CB分散PI前駆体溶液組成物)を回転成形法にて管状物に成形し、これを加熱処理して製造される。
特に、(1)重力加速度の0.5〜10倍程度の遠心加速度で回転する円筒金型の内周面に該CB分散PI前駆体溶液組成物を均一な厚さで塗布する工程、(2)該円筒金型を重力加速度の0.5〜10倍程度の遠心加速度で回転させたまま100〜140℃程度の温度で加熱して、自己支持性(皮膜の流動が発生しない)の皮膜を形成する工程、及び(3)該皮膜を円筒金型の内周面に付着した状態のまま約300℃以上の温度で加熱、してイミド化する工程、を含むこと特徴とする。
以下、CB分散PI前駆体溶液組成物(以下、簡略化して「液体原料」とも呼ぶ)を使った半導電性ベルトの成形手段について説明する。
液体原料は、重力加速度の0.5〜10倍の遠心加速度で低速回転する円筒金型の内周面に均一な厚さで塗布される。つまり、重力加速度の0.5〜10倍の遠心加速度という低速回転で、液体原料が供給されることで回転方向に受けるせん断力が小さく、分子鎖の配向やカーボンブラックなどのフィラーのストラクチャー配向を抑制できる。前記の遠心加速度が重力加速度の0.5倍未満であると、供給された液体原料が円筒金型の内周面に密着せずに流れ落ちる(たれ)危険性がある。一方、重力加速度の10倍より大きくなると、供給時にうける回転方向へのせん断力による分子鎖の配向やカーボンブラックなどのフィラーのストラクチャー配向だけでなく、遠心力による液体原料の流動が発生するためである。
なお、本発明で使用する遠心加速度(G)は、下記式から導かれる。
G(m/s2)=r・ω2=r・(2・π・n)2
ここで、rは円筒金型の半径(m)、ωは角速度(rad/s)、nは1秒間での回転数(60s間の回転数がr.p.m)を示す。比較する重力加速度(g)は、9.8 (m/s2)である。
ここで液体原料の供給方法としてスプレー法が好ましい。スプレー法で塗布する作用効果は、液体原料を霧化することで、供給時の流動を限りなく小さく、回転する円筒金型の内周面に瞬間的に密着できる。液体原料の粘度にもあまり影響されず同一回転速度下で原料供給できる。そして、薄い厚みの塗膜を容易に得ることができ、液体原料の不揮発分濃度を高く設定することが可能となる。
液体原料の供給手段は、ノズル法やスプレー法で吐出させながら回転する円筒金型の回転軸方向に移動させることによって、円筒金型の内周面に液体原料を均一な厚みで塗布する。塗布ヘッドの形状は、特に制約はなく、円形や矩形など適時使用できる。また、その大きさも特に制約はなく、吐出される液体原料の粘度との組み合わせによって、適正な吐出圧力となるように設計することが可能である。スプレーヘッドと円筒金型の距離は任意でよく、5mm〜200mm程度が好ましい。吐出圧力の方式には特に制限はないが、圧縮空気や高粘度液対応のモーノポンプ、ギヤポンプなどが用いられる。
このように円筒金型の内周面に均一な厚みで液体原料を塗布した場合は、円筒金型の高速回転、即ち、遠心力によって液体原料を流動させ塗膜の膜厚を均一にさせる必要はない。一般に、遠心力を利用した回転成形では、原料を供給後、遠心力により液体原料を円筒金型の内面に均一に流延させるため、遠心力によって生じる流動によってカーボンブラックの粒子が流動方向にストラクチャーを成形したように並ぶ。これによってポリイミド製中間転写ベルトの電気特性に悪影響を引き起こす場合がある。これに対し、高速回転しない本発明の方法によれば、この様な問題はほとんど生じない。
円筒金型の内周面には、ポリイミド樹脂が密着しないように、離型剤を塗布することが好ましい。離型剤の種類に制限はないが、液体原料の溶媒や加熱反応時に樹脂から発生する水の蒸気などに侵されないものであれば特に限定はない。
液体樹脂の皮膜形成工程においては、重量加速度の0.5〜10倍の遠心加速度で低速回転させたまま、100〜140℃の温度で溶媒を揮発して固形分濃度を40重量%以上とすることで円筒金型の内周面に自己支持性の皮膜を形成することで達成できる。
ポリイミド樹脂皮膜形成工程においては、ポリイミド樹脂の種類によって異なるが円筒金型の内周面に付着した状態のまま、60〜120分間で約250℃に上昇する。次に完全にポリイミド転化する温度、例えば300〜350℃で30〜90分間、皮膜を加熱させることでポリイミド樹脂皮膜を形成することができる。皮膜形成を円筒金型の内周面に付着した状態で行うことで、イミド化反応や溶媒揮発で起こる収縮を抑えてその応力でポリマー鎖を面内方向に均一配向させることが可能となる。
このように製造したポリイミド系樹脂を70〜80重量%及びカーボンブラックを30〜20重量%含む半導電性ベルトは、カラー画像形成装置において正確な転写を実現することができ、転写電圧による抵抗変化を防止し、長期間安定して高品質の転写画像を得ることができる。また、ベルトの幅方向にかかる荷重によるクラックや割れが発生しにくく、長期間走行させても、耐久性に優れ、安定した使用が可能となる。さらに、非対称性の2,3,3’,4’-ビフェニルテトラカルボン酸成分が増加するとガラス転移点が高温側にシフトする。そのため、転写と定着を一本のベルトで同時に行ってしまう転写兼定着ベルト方式のベルト基材としての使用も有効となる。
得られる半導電性ポリイミドベルトの平均膜厚は、通常50〜150μm程度、好ましくは60〜120μm程度に調節される。
また、表面抵抗率は、通常109〜1014Ω/□程度、好ましくは1010〜1013Ω/□程度になるように調節される。
このように製造した半導電性ポリイミドベルトは、例えば、電子写真機器のカラー画像形成装置の中間転写ベルトとして使用した場合、電荷の帯電安定性と徐電を適切に行うことができ、並びに長期間安定して高品質の転写画像を得ることが可能となる。
カラー画像形成装置は、本発明のポリイミド系樹脂製中間転写部材を少なくとも1種類以上備えることを特徴とする電子写真方式の画像形成装置である。本発明のポリイミド系樹脂製中間転写部材を中間転写ベルト、直接転写ベルトあるいは転写兼定着ベルトとして備えることで、高画質の転写画像を得ることができる。転写兼定着ベルトとして使用する場合には、表面に付着するトナーの剥離性向上のため、表面に非粘着性の樹脂皮膜を形成することが有効である。その非粘着性の樹脂皮膜の材料としては、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)などのフッ素系樹脂などが好ましい。また、弾性シリコーン樹脂、フッ素ゴム樹脂、弾性フロロシリコーン樹脂、弾性ポリシロキサンなどを用いてもよい。
本発明のポリイミド樹脂ベルトは、カラー画像形成装置において正確な転写を実現することができ、転写電圧による抵抗変化を防止し、長期間安定して高品質の転写画像を得ることができる等の優れた電気的特性とともに、ベルトの幅方向にかかる荷重によるクラックや割れが発生しにくく、耐久性に優れ、長期間走行させても安定した使用が可能である等の優れた物理的特性を兼ね備えている。そのため、中間転写ベルト、一本のベルトで転写と定着を兼ね備えた転写兼定着ベルトのベルト基材として有効である。
以下、比較例と共に実施例を用いて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
本明細書に記載される各物性値の測定は、以下のようにして行った。
(1)窒素吸着表面積
窒素吸着表面積は、JIS K6217(低温窒素吸着法)に準拠して測定した。或いは、市販カーボンの特性データを参照した。
(2)DBP吸収量
DBP吸収量は、JIS K6217に準拠して測定した。或いは、市販カーボンの特性データを参照した。
(3)カーボンブラックの揮発分
揮発分は、JIS K6221に準拠して、該カーボンブラックを950℃で7分間加熱した時の減量を測定し、加熱前のカーボンブラック重量に対する減量をパーセント表示(重量%)した。
(4)カーボンブラックのpH
pH値は、カーボンブラックと蒸留水の混合液をガラス電極メーターで測定した値とした。
(5)溶液中でのカーボンブラックの粒度
溶液中でのカーボンブラックの粒度は、HORIBA社製LA−920型レーザー回折・散乱式粒度分布測定装置を用いて測定した値である。
(6)ポリイミド前駆体溶液組成物中の固形分及びその濃度
カーボンブラック分散ポリイミド前駆体溶液組成物の固形分濃度は、次のように算出された値である。試料を金属カップ等の耐熱性容器で精秤しこの時の試料の重量をA(g)とする。試料を入れた耐熱性容器を電気オーブンに入れて、120℃×15分、180℃×15分、260℃×30分、及び300℃×30分で順次昇温しながら加熱、乾燥し、得られる固形分の重量(固形分重量)をB(g)とする。同一試料について5個のサンプルのA及びBの値を測定し(n=5)、次式にあてはめて固形分濃度を求めた。その5個のサンプルの平均値を、固形分濃度として採用した。
固形分濃度=B/A×100(%)
(7)ポリアミド酸の重量平均分子量
本明細書における重量平均分子量は、GPC法(溶媒:NMP、ポリエチレンオキサイド換算)により測定した値である。
(8)半導電性ベルトの表面抵抗率
表面抵抗率(SR)の測定は、得られた半導電性ベルトを長さ400mmにカットしたものをサンプルとして、三菱化学株式会社製の抵抗測定器“ハイレスタIP・URプロ−ブ”を使って、幅方向に等ピッチで3カ所と縦(周)方向に4カ所の合計12ヶ所について各々測定し、全体の平均値で示した。表面抵抗率(SR)は電圧500V印加の下10秒経過後に測定した。
(9)力学特性の評価
各例で得られたベルトを幅5mm、長さ100mmにカットし、これを試験片として一軸引張試験機(株式会社 島津製作所製 オートグラフ)にて、引張スパン40mm、ひずみ速度200mm/分で測定した。記録されたS―Sカーブ曲線から降伏強さ及び破断強さを読み取った。強靭の指標として破断強さは、降伏強さより大きいことも必要で、ベルト回転の耐寿命(タフネス)に寄与する。この目安として少なくとも(破断強さ)÷(降伏強さ)=1.10以上必要とされる。
トラウザー引裂強度はJIS K7128に準じ、ひずみ速度200mm/分で測定した。
(10)高電圧印加テスト及び空転耐久テスト
20℃、55%RHの環境下で図3に示す通電システムにて評価した。印加電圧は4.0kV(通電電流約60μA)、50時間運転して後の表面抵抗率の変動を測定した。その後、印加電圧なしで走行速度を280mm/sで空転耐久評価を実施し、連続300時間を耐久性クリアとした。
実施例1
1400℃以上の高温雰囲気を形成したオイルファーネス法で作製したカーボンブラックに、オゾンを含有したジェット気流により気相酸化反応を行い、窒素吸着比表面積120(m2/g)、揮発分を3.52(%)、pH値2.4のカーボンブラックとした。
4,4’−ジアミノジフェニルエーテルをN-メチル-2-ピロリドン(NMP)溶液に100モル%溶解させた後、2,3,3’4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物:20モル%と3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物:80モル%をそれぞれ投入し、これに水を加えて特公平2-3820号公報に従い合成したポリアミド酸溶液(重量平均分子量15000)を5kg用意した。この溶液は粘度6.5Pa・s、固形分濃度30.0重量%であった。
この溶液に上記カーボンブラックを510gとNMP:1000gを加えて、ビーズミルにてカーボンブラックの均一分散を行った。このカーボンブラック分散ポリアミド酸溶液は、固形分濃度30.88重量%、固形分中のカーボンブラック濃度が25.37重量%であった。また、溶液中でのカーボンブラックの平均粒径は0.28μm、最大粒径は0.51μmであった。
外径324mm、内径300mm、長さ500mmの円筒金型を、重力加速度の4.0倍の遠心加速度で回転させながら、その円筒状金型の内周面に上記カーボンブラック分散ポリアミド酸溶液をスプレー法にて均一に480mmで塗布した。塗布厚さは、固形分濃度から算出し、中間転写部材の厚さが100μmになるよう決定した。その後も重力加速度の4.0倍の遠心加速度で回転させたまま、60分間で120℃に昇温し、その後120℃での60分間加熱して、自己支持性のある皮膜を形成した。
次に、この皮膜を円筒金型の内周面に付着したまま高温加熱炉に投入し、120分間で320℃に昇温し、320℃で60分間高温加熱することでポリイミド転化を完了した。その後、常温まで冷却して金型より半導電性ベルトを取り出した。半導電性ベルトの特徴を表1に示す。
半導電性ベルトは長さ350mmに定寸カットし表面抵抗率の測定を行った。
実施例2
1400℃以上の高温雰囲気を形成したオイルファーネス法で作製したカーボンブラックにオゾンを含有したジェット気流により気相酸化反応を行い、窒素吸着比表面積115(m2/g)、揮発分5.5(%)、pH値2.2のカーボンブラックとした。
NMP溶液とメタノールの混合溶媒に2,3,3’4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物:50モル%と3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物:50モル%を投入し、酸無水物がアルコールと反応して開環して、芳香環上の隣接する炭素上にそれぞれエステル基とカルボキシル基を有するジエステルを合成した後、この溶液に4,4’−ジアミノジフェニルエーテル:100モル%を投入し、50℃で3時間攪拌した後、過剰なメタノールは60℃で1時間かけて取り除くことでナイロン塩型モノマー溶液を5kg用意した。この溶液は粘度0.3Pa・s、固形分濃度40.0重量%であった。
このナイロン塩型モノマー溶液に上記のカーボンブラックを750gとNMP:1200gを加えて、ビーズミルにてカーボンブラックの均一分散を行った。このカーボンブラック分散ポリイミド前駆体溶液は、固形分濃度39.57重量%、固形分中のカーボンブラック濃度が27.27重量%であった。また、溶液中でのカーボンブラックの平均粒径は0.23μm、最大粒径は0.65μmであった。
半導電性ベルトの製造は実施例1と同じ条件にて作製し、その特性を表1に示す。
実施例3
1400℃以上の高温雰囲気を形成したオイルファーネス法で作製したカーボンブラックにオゾンを含有したジェット気流により気相酸化反応を行い、窒素吸着比表面積120(m2/g)、揮発分2.5(%)、pH値2.8のカーボンブラックとした。
4,4’−ジアミノジフェニルエーテルをNMP溶液に100モル%溶解させた後、2,3,3’4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物:30モル%と3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物:70モル%をそれぞれ投入し合成したポリアミド酸溶液(重量平均分子量30000)を5kg用意した。この溶液は粘度6.5Pa・s、固形分濃度20.0重量%であった。
この溶液に上記カーボンブラックを260gとNMP:1000gを加えて、ビーズミルにてカーボンブラックの均一分散を行った。このカーボンブラック分散ポリアミド酸溶液は、固形分濃度20.13重量%、固形分中のカーボンブラック濃度が20.63重量%であった。また、溶液中でのカーボンブラックの平均粒径は0.23μm、最大粒径は0.45μmであった。
半導電性ベルトの製造は実施例1と同じ条件にて作製し、その特性を表1に示す。
比較例1
3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物とp−フェニレンジアミンとを、NMP溶液中で合成したポリアミド酸溶液(重量平均分子量32000)を5kg用意した。この溶液は粘度5.0Pa・s、固形分濃度18.0重量%であった。
この溶液にアセチレンガスから製造(アセチレン法)される電気化学工業製のデンカブラック;窒素吸着比表面積70(m2/g)、揮発分0.1(%)、pH値7.7を70gとNMP:1800gを加えて、ビーズミルにてカーボンブラックの均一分散を行った。ここで、NMPの加える量が1800gとしたのは、溶液粘度が高く、カーボンブラックの分散が困難であったためである。このカーボンブラック分散ポリアミド酸溶液は、固形分濃度14.12重量%、固形分中のカーボンブラック濃度が7.22重量%であった。また、溶液中でのカーボンブラックの平均粒径は1.13μm、最大粒径は11.56μmであった。
外径324mm、内径300mm、長さ500mmの円筒金型を、重力加速度の4.0倍の遠心加速度で回転させながら、その円筒状金型の内周面に上記カーボンブラック分散ポリアミド酸溶液をスプレー法にて均一に480mmで塗布した。塗布厚さは、固形分濃度から算出し、中間転写部材の厚さが100μmになるよう決定した。その後も重力加速度の4.0倍の遠心加速度で回転させたまま、60分間で120℃に昇温し、その後120℃での60分間加熱して、自己支持性のある皮膜を形成した。
次に、成形したベルトを円筒金型の内周面より取り外し、外径290mm、長さ420mmのアルミニウム製の円筒金型を取り外したベルトの内側に挿入した。その後、180分間で400℃に昇温し、400℃で60分間高温加熱することでポリイミド転化を完了した。いったん、成形用の円筒金型から取り外した理由は、150〜250℃でのイミド転化にともなう面内方向への反応収縮によって、ベルトが円筒金型の内周面より剥がれる、もしくは破損するためである。
比較例2
3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物とp−フェニレンジアミンとを、NMP溶液中で合成したポリアミド酸溶液(重量平均分子量32000)を5kg用意した。この溶液は粘度5.0Pa・s、固形分濃度18.0重量%であった。
この溶液にチャンネル法で製造されるデグサ製「Special Black 4」;窒素吸着比表面積180(m2/g)、揮発分14.0(%)、pH値3.0を225gとNMP:1600gを加えて、ビーズミルにてカーボンブラックの分散を行った。このカーボンブラック分散ポリアミド酸溶液は、固形分濃度16.48重量%、固形分中のカーボンブラック濃度が20.00重量%であった。また、溶液中でのカーボンブラックの平均粒径は0.31μm、最大粒径は0.77μmであった。
半導電性ベルトの製造は比較例1と同じ条件にて作製し、その特性を表1に示す。
比較例3
3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物とp−フェニレンジアミンとを、NMP溶液中で合成したポリアミド酸溶液(重量平均分子量32000)を3kgと、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物と4,4’−ジアミノジフェニルエーテルとを、NMP溶液中で合成したポリアミド酸溶液(重量平均分子量32000)を2kg用意した。
この2種類のポリアミド酸溶液をブレンドして24時間攪拌した。この溶液は粘度5.0Pa・s、固形分濃度18.0重量%であった。この溶液にオイルファーネス法で製造される三菱化学製「MA100」;窒素吸着比表面積110(m2/g)、揮発分1.5(%)、pH値3.5を225gとNMP:1600gを加えて、ビーズミルにてカーボンブラックの分散を行った。このカーボンブラック分散ポリアミド酸溶液は、固形分濃度16.48重量%、固形分中のカーボンブラック濃度が20.00重量%であった。また、溶液中でのカーボンブラックの平均粒径は0.41μm、最大粒径は1.42μmであった。
半導電性ベルトの製造は比較例1と同じ条件にて作製し、その特性を表1に示す。
比較例4
3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物とp−フェニレンジアミンとを、NMP溶液中で合成したポリアミド酸溶液(重量平均分子量32000)を5kg用意した。この溶液は粘度5.0Pa・s、固形分濃度18.0重量%であった。
この溶液にオイルファーネス法で製造される三菱化学製「MA100」;窒素吸着比表面積110(m2/g)、揮発分1.5(%)、pH値3.5を140gとNMP:1200gを加えて、ビーズミルにてカーボンブラックの分散を行った。このカーボンブラック分散ポリアミド酸溶液は、固形分濃度16.40重量%、固形分中のカーボンブラック濃度が13.46重量%であった。また、溶液中でのカーボンブラックの平均粒径は0.40μm、最大粒径は1.12μmであった。
半導電性ベルトの製造は比較例1と同じ条件にて作製し、その特性を表1に示す。
Figure 0004989946
試験例1
実施例1〜3及び比較例1〜4で製造された半導電性ベルトについて、力学特性(降伏強さ、破断強さ及びトラウザー引裂強度)の評価を行った。その結果を表2に示す。
Figure 0004989946
応力−ひずみ曲線から求めた降伏強さと破断強さ、そして降伏強さに対する破断強さの比を示す。降伏強さに対する破断強さの比の大きさは、ベルトの強靭性と比例関係にあり、破断強度は、少なくとも降伏強さより大きいことが必要で、ベルト回転の耐寿命(タフネス)に寄与する。多くの材料では降伏による塑性変形が優先して起き、いわゆる延性変形を起こす。しかし、カーボンブラックを高充填、あるいはその分散状態に依存して応力集中が起きるとその変形様式はぜい性的になる。降伏強さに対する破断強さの比が高いほどその材料は延性的に変形することができ、目安としてこの比が1.10以上であればぜい性的な破壊は回避できる。
また、トラウザー引裂強度は、応力集中に対する敏感性の評価として用いられている。トラウザー引裂強度が大きいほどベルトの幅方向にかかる荷重によるクラックや割れが発生しにくいことになる。
表2によれば、実施例1〜3ではいずれも良好な力学的特性を有していることが分かる。
試験例2
実施例1〜3及び比較例1〜4で製造された半導電性ベルトについて、高電圧印加テスト及び空転耐久テストを行った。その結果を表3に示す。
Figure 0004989946
表3より、実施例1〜3のベルトは、高電圧印加テストにおいても表面抵抗率の変化(低下)は無かった。これはカーボンブラックを高充填化させたことで可能な限り連続した分散状態であるためと考える。
さらに、空転耐久評価で連続300時間行ってもベルトが破損することは無かった。これらの結果は、例えば中間転写ベルトとして用いた場合、過大な電流を繰り返し流しても表面抵抗率の変化がなく高品質の転写画像が得られ、しかも長期間の使用でも破損することがないことを意味する。
樹脂中のカーボンブラックの導電モデルを示す。 図1における(A)〜(C)の状態を再現した顕微鏡写真である。 試験例2における、高電圧印加テスト及び空転耐久テスト(20℃、55%RHの環境下)に用いる通電システムの模式図である。

Claims (8)

  1. ポリイミド樹脂70〜80重量%及びオイルファーネス法で製造された揮発分が2〜6%のカーボンブラック30〜20重量%を含み、表面抵抗率が1×10〜1×1014Ω/□である半導電性ベルトであって、該ポリイミド樹脂が、非対称性のビフェニルテトラカルボン酸成分15〜50モル%及び対称性の3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸成分85〜50モル%からなるビフェニルテトラカルボン酸成分と、芳香族ジアミンとの略等モル量をイミド化した共重合体である半導電性ベルト。
  2. 前記非対称性のビフェニルテトラカルボン酸成分が、2,3,3’,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物又は2,3,3’,4’−ビフェニルテトラカルボン酸ジエステルである請求項1に記載の半導電性ベルト。
  3. 前記芳香族ジアミンが、4,4’−ジアミノジフェニルエーテルである請求項1又は2に記載の半導電性ベルト。
  4. 前記オイルファーネス法で製造されたカーボンブラックのpHが2〜4、窒素吸着比表面積が60〜150m/g、かつDBP吸収量が40〜120ml/100gであることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の半導電性ベルト。
  5. 請求項1〜4のいずれかに記載の半導電性ベルトからなる電子写真機器の中間転写ベルト。
  6. 非対称性のビフェニルテトラカルボン酸二無水物15〜50モル%及び対称性の3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物85〜50モル%からなるビフェニルテトラカルボン酸二無水物と、芳香族ジアミンとの略等モル量とを、有機極性溶媒中で反応して重量平均分子量が20000以下のポリアミド酸の溶液を製造し、該ポリアミド酸溶液に、オイルファーネス法で製造された揮発分が2〜6%のカーボンブラックを均一分散させてポリイミド前駆体溶液組成物を調製し、該カーボンブラック分散ポリイミド前駆体溶液組成物を回転成形法にて管状物に成形し、該成形体を加熱処理してイミド化する半導電性ベルトの製造方法であって、
    (1)重力加速度の0.5〜10倍程度の遠心加速度で回転する円筒金型の内周面に該カーボンブラック分散ポリイミド前駆体溶液組成物を均一な厚さで塗布する工程、
    (2)該円筒金型を重力加速度の0.5〜10倍程度の遠心加速度で回転させたまま100〜140℃程度の温度で加熱して、自己支持性の皮膜を形成する工程、及び
    (3)該皮膜を円筒金型の内周面に付着した状態のまま約300℃以上の温度で加熱、してイミド化する工程、
    を含むこと特徴とする製造方法。
  7. 非対称性のビフェニルテトラカルボン酸ジエステル15〜50モル%及び対称性の3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸ジエステル85〜50モル%からなるビフェニルテトラカルボン酸ジエステルと、芳香族ジアミンとの略等モル量とを有機極性溶媒に溶解してナイロン塩型モノマー溶液を調製し、該ナイロン塩型モノマー溶液に、オイルファーネス法で製造された揮発分が2〜6%のカーボンブラックを均一分散させてポリイミド前駆体溶液組成物を調製し、該カーボンブラック分散ポリイミド前駆体溶液組成物を回転成形法にて管状物に成形し、該成形体を加熱処理してイミド化する半導電性ベルトの製造方法であって、
    (1)重力加速度の0.5〜10倍程度の遠心加速度で回転する円筒金型の内周面に該カーボンブラック分散ポリイミド前駆体溶液組成物を均一な厚さで塗布する工程、
    (2)該円筒金型を重力加速度の0.5〜10倍程度の遠心加速度で回転させたまま100〜140℃程度の温度で加熱して、自己支持性の皮膜を形成する工程、及び
    (3)該皮膜を円筒金型の内周面に付着した状態のまま約300℃以上の温度で加熱、してイミド化する工程、
    を含むこと特徴とする製造方法。
  8. 請求項6又は7に記載の製造方法により製造される半導電性ベルト。
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