JP2000313071A - シームレスベルト - Google Patents

シームレスベルト

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JP2000313071A JP12390999A JP12390999A JP2000313071A JP 2000313071 A JP2000313071 A JP 2000313071A JP 12390999 A JP12390999 A JP 12390999A JP 12390999 A JP12390999 A JP 12390999A JP 2000313071 A JP2000313071 A JP 2000313071A
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 プラスチックを用いて、完全に均質なシーム
レスで、良好な表面状態を有し、優れた抗張力と耐クリ
ープ性に優れたシームレスベルトを提供する。 【解決手段】 沸点が150〜250℃の範囲にある溶
剤にポリアミドイミドを溶解した溶液を成形型内に塗布
し、溶剤を除去して得られるシームレスベルトであっ
て、前記ポリアミドイミド100重量部に対し、0.5
〜6.0重量部の範囲の溶剤を前記ベルト中に残留させ
たシームレスベルトとし、導電性物質の全部また一部を
カーボンフィラーとし、その表面のカーボンブラックの
炭素に結合するカルボン酸、ラクトン、フェノール及び
キノンよりなる群から選択される官能基を有し、官能基
が合計でカーボンフィラー1g当たり50×10−5
2,000×10−5モルであるカーボンフィラーを、
ポリアミドイミド100重量部に対し5〜50重量部含
有させてなるシームレスベルトである。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、電子写真式複写
機、レーザープリンタ等に使用されるシームレスベルト
に関し、特に、複数のローラ間に懸架して使用される感
光体基体用、中間転写用、紙搬送用、現像用あるいは定
着用等に有用なシームレスベルトに関するものである。
【0002】
【従来の技術】近年、フルカラー複写機等の電子写真複
写機の実用化に伴って、感光体上に現像されたトナー像
を複写紙に転写する際に、一旦トナーを中間転写体に写
し取った後、複写紙に転写するという中間転写体を使用
するプロセスが採用されている。このプロセスにおいて
は、感光ドラムの表面に現像装置によりトナー像が形成
され、そのトナー像が、感光ドラムの下部の一次転写ロ
ーラに張架されて回転移動する中間転写体であるシーム
レスベルトに転写され、シームレスベルト上のトナー像
は、このシームレスベルトと二次転写ローラとの間に挟
まれた複写紙に転写される。また、中間転写体だけでは
なく、従来の金属製ドラム体に替わって、感光体等にも
シームレスベルトの使用が検討されるようになってきて
いる。
【0003】このようなシームレスベルトは、成形性が
良くかつ軽量であることが要求され、そのような素材と
してプラスチック類が使用されている。好適なプラスチ
ック材料として、ポリエチレンテレフタレート(PE
T)とポリイミドについて検討がなされてきたが、PE
Tフィルムは、形成されたフィルムの両端を衝合して製
作するので、衝合部分と非衝合部分との間に品質性能に
差が生ずることは避けられない。また、半導電化におい
ては、通常、導電性カーボンブラックが練り込まれる
が、その微粒子によって表面の平滑性が阻害されるだけ
でなく、二軸延伸によって表面が一層粗面化されるの
で、ベルトの平滑性には限界があった。この粗面は、最
終的に得られる複写画質に好影響を与えない原因とな
り、一定のレベルにとどまっているのが現状である。
【0004】他方、ポリイミド製シームレスベルトは、
一般に、ポリイミドの前駆体であるポリアミドイミド酸
の溶液を遠心注型することにより製造される。この方法
で成形されるベルトは無端状のベルトであるから、前記
PET製ベルトのような継目は全くない。従って、得ら
れるベルトは全体が均質な品質性能を有するが、この方
法で製造されるベルトには極めて微細な無数の気泡が含
まれ、表面に微細な凹凸が形成されるという問題があ
る。遠心注型においては、まず無端のポリアミドイミド
酸フィルムを形成させる段階まで遠心注型で行ない、そ
のフィルムを一担遠心注型機から取り出して、加熱・縮
合によりポリアミドイミドへの変換が行われる。この加
熱の際に、残存する溶媒と縮合水との蒸発が微細気泡を
形成し、また、カーボンブラックを含有する半導電性ベ
ルトの場合には、二軸延伸によってカーボン微粒子が表
面に露出して一層粗い表面状態が形成されるものと考え
られている。
【0005】そのような問題を解決する方法として、特
開平10−226028号公報には、プラスチック材料
としてポリアミドイミドを使用し、そのポリアミドイミ
ドの溶液を遠心注型により成形して溶剤を完全に除去す
る、ポリアミドイミド樹脂ベルトの製造方法が記載され
ている。しかし、中間転写体に用いられるシームレスベ
ルトは、前記したように、複数のローラによって一定の
張力が加わった懸架状態で長期間使用されるため、大き
な耐クリープ性が要求されるところ、ポリアミドイミド
は、PETやポリイミドと比較して抗張力が小さく、耐
クリープ性に劣るという欠点がある。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、軽量なプラ
スチックを用いて、完全に均質なシームレスで、かつ良
好な表面状態を有するベルトを提供し、また、特に優れ
た抗張力と耐クリープ性に優れたプラスチック製シーム
レスベルトを提供することを課題とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】本発明は、沸点が150
〜250℃の範囲にある溶剤にポリアミドイミドを溶解
した溶液を成形型内に塗布し、溶剤を除去して得られる
シームレスベルトであって、前記ポリアミドイミド10
0重量部に対し、0.5〜6.0重量部の範囲の溶剤を
前記ベルト中に残留させたシームレスベルトであり、シ
ームレスベルトに導電性を付与するために、導電性物質
を混入させ、また、その導電性物質の全部また一部をカ
ーボンフィラーとし、その表面のカーボンブラックの炭
素に結合するカルボン酸、ラクトン、フェノール及びキ
ノンよりなる群から選択される官能基を有し、官能基が
合計でカーボンフィラー1g当たり50×10−5
2,000×10−5モルであるカーボンフィラーを、
ポリアミドイミド100重量部に対し5〜50重量部含
有させてなるシームレスベルトである。
【0008】
【発明の実施の形態】本発明者等は、フルカラー複写機
等の電子写真式複写機やレーザープリンタ等に使用され
るシームレスベルトの上記のような実情に鑑み、上記欠
点が克服され、一層改善されたベルトを開発すべく試作
研究を重ねて、特定の溶剤と、カーボンフィラーの特性
を規定することによって、極めて好ましいシームレスベ
ルトを得ることができた。本発明は、基本的にポリアミ
ドイミドを基本担体とする。本発明のベルトに用いられ
るポリアミドイミドは、通常知られた物質類であって、
アミド基と1〜2個のイミド基とが有機基を介して結合
された各種の縮合性化合物を構成単位として、その構成
単位を繰り返すことによって得られる高分子量物質であ
る。
【0009】これらのポリアミドイミド樹脂は、基本的
には、有機基がアミド基で繋がれる有機ジアミンとテト
ラカルボン酸二無水物の当量とを反応させる方法、有機
ジアミン、またはその誘導体(例えば、ジイソシアネー
ト)とトリカルボン酸無水物、またはその誘導体(例え
ば、モノクロリド)との当量を反応させる方法等によっ
て合成されるが、溶剤への溶解性、機械的特性のバラン
スの点で、1個のイミド基と1個のアミド基とが有機基
を介して結合した、これらの繰返し単位からなるポリア
ミドイミドが好ましい。前記有機基が脂肪族か芳香族か
によって、脂肪族ポリアミドイミドと芳香族ポリアミド
イミドとに分類されるが、本発明においては、分子構造
が剛直で、フィルムの機械特性に優れた芳香族ポリアミ
ドイミドが好ましく用いられる。
【0010】このようにして得られるポリアミドイミド
のうち、特に芳香族ポリアミドイミドが好ましいことは
前述したとおりであるが、芳香族といっても、基本的に
はイミド基、アミド基が、1つまたは2つのベンゼン環
に結合しているものが一般的である。特殊なものとして
ベンゼン環が2つの場合に、両環がエーテル、カルボニ
ル、メチレンの各基を介して結合されている有機基も本
発明の芳香族ポリアミドイミドに含まれる。芳香族ポリ
アミドイミドは、通常、前記有機ジアミンとトリカルボ
ン酸無水物との当量反応によって製造されるが、該有機
ジアミンとしては、例えば、パラフェニレンジアミン、
4,4’−ジアミノジフェニル、4,4’−ジアミノジ
フェニルメタン、4,4' −ジアミノジフェニルエーテ
ル等が挙げられ、トリカルボン酸無水物の例としては、
トリメリット酸無水物が代表的に挙げられる。また、本
発明においては、市販のポリイミドアミドを材料とする
こともできる。
【0011】本発明のシームレスベルトの形成に使用さ
れる溶剤としては、前記ポリアミドイミドを溶解するこ
とができ、且つ沸点が150〜250℃の範囲内にある
ことが重要である。沸点が150〜250℃の範囲内の
溶剤は、本発明のシームレスベルトが使用される環境に
おいて、クリープを相殺する程度に、徐々に溶剤を揮発
させることができるからであって、沸点が150℃未満
のものでは、揮発スピードが速すぎて、かえって変形を
招く結果となり、250℃を超えるものでは、十分にク
リープを相殺することができないからである。
【0012】そのような溶剤としては、例えば、ジメチ
ルホルムアミド(沸点153℃)、ジメチルアセトアミ
ド(沸点165.5℃)、N−メチル−2−ピロリドン
(NMP)(沸点204℃)等が例示される。また、こ
の溶剤のベルト中の含有量は、シームレスベルトを構成
するポリアミドイミド樹脂100重量部に対して、0.
5〜6.0重量部の範囲とすることが重要である。0.
5重量部未満では、十分にクリープを相殺することがで
きず、また、6.0重量部を超えると、初期段階におけ
る機械的特性、特に、弾性率の低下が著しく、実用に耐
えないという不具合を生じる。
【0013】本発明のシームレスベルトは、導電性ない
し半導電性である必要がある場合がある。導電性を付与
するためには、本発明で用いられるポリアミドイミドに
導電性物質を混練させる。導電性物質としては、金属
や、合金からなる針状、球状、板状、不定形等の粉末、
アセチレンブラック、ケッチェンブラック、ファーネス
ブラック等のカーボン粉末、天然黒鉛、人造黒鉛、膨張
黒鉛等の黒鉛粉末、セラミックス粉末、表面が金属メッ
キされた各種粒子等が用いられ、その形状、サイズ等
は、球状ないし不定形をなし、0.01〜10μm程度
のものとすることが望ましく、添加量は、所望の導電性
により適宜調整すればよいが、おおよそ5〜25容量%
の範囲から選択されることが好ましい。5容量%未満で
は、導電性物質同士の距離が大きくなり、導電性が発現
し難く、25容量%を超えると、シームレスベルトの機
械的強度に悪影響を及ぼす危険性が増大するからであ
る。
【0014】本発明の一層望ましい第2の発明として
は、上記導電性物質の一部又は全部に、カーボンフィラ
ーを用いる。このカーボンフィラーは、導電性を付与す
るばかりでなく、溶剤をベルト樹脂中により積極的に残
留させ、揮発量をコントロールするのに望ましいもので
ある。ポリアミドイミドを溶解することのできる上記溶
剤は、極性を有するものであり、極性基を有するカーボ
ンフィラーを用いると溶剤との親和性が高く、溶剤の一
部を除去する工程において容易に所望の溶剤量を残留さ
せることができるので、実用上極めて有利である。さら
に、実使用状態における溶剤の揮発状態が制御される。
カーボンフィラーの添加量、極性基の含有量により違い
があるが、これらの含有量が後述する範囲にある場合、
0.5〜1.5%程度の残留量で溶剤の揮発がほぼ平衡
状態に達し、長期にわたりシームレスベルトの特性を維
持することができる。
【0015】そのようなカーボンフィラーは、表面酸化
処理を施した、粒径0.01〜1μm程度の、不定形状
のカーボンブラックとすればよい。例えば、前述したフ
ァーネスブラックを酸化性の気流中で加熱処理すること
により得られるものである。その表面のカーボンブラッ
クの炭素に結合する官能基は、次の化学式[化1]に示
されるカルボン酸、ラクトン、フェノール及びキノンよ
りなる群から選択される官能基構造を、カーボンフィラ
ー1g中に50×10−5〜2,000×10 −5モル
含むことが重要である。
【0016】
【化1】 なお、上記化学式で、大括弧より左の「C」はカーボン
ブラックを構成する炭素である。
【0017】かかるカーボンフィラーは一種類でもよい
が、二種以上を組合せて使用することもできる。また、
上記本発明の目的を阻害しない程度の少量の他のフィラ
ー、例えばシリカ、ZnO、MgO、CaCO等、を
併用することもできる。本発明のベルトに用いられるカ
ーボンフィラーは、その表面のカーボンブラックの炭素
に結合して形成されたカルボン酸、ラクトン、フェノー
ル及びキノンよりなる群から選択される官能基構造を有
するものであって、通常、カーボンブラックの表面酸化
によって形成される。表面に特殊官能基構造を有する上
記カーボンフィラーは、前述のように、溶剤との親和性
が高く、溶剤の一部を除去する工程において、所望の溶
剤量を残すのに極めて有用である。カーボンフィラーの
前記官能基の含有量が50×10−5モル/g未満で
は、溶剤を十分に捕捉することができないので、満足し
得る溶剤の残留効果が得られず、また2000×10
−5モル/gを超えると、ポリアミドイミド溶液が増粘
する傾向にあるので、本発明のベルトの遠心注型には好
ましくなくなる。
【0018】このようなカーボンフィラーの添加効果
は、ポリアミドイミド100重量部に対し5〜50重量
部含有させることによって達成される。カーボンフィラ
ーの添加量が少なすぎると、溶剤を捕捉する能力が不十
分となり、多すぎると、シームレスベルトとしての物性
を損なうおそれがあるので好ましくない。なお、本発明
のシームレスベルトには、ある程度の導電性が要求され
る場合には、上記カーボンフィラーを導電性の付与に利
用することができる。その場合、前記した範囲の添加量
を考慮して導電性を調整すればよく、適切な溶剤の捕捉
と導電性の付与等、複数の機能を持たせることができ
る。
【0019】次に、本発明のシームレスベルトの代表的
製造方法である遠心注型成形法について、簡単に説明す
る。この方法は、まず、原材料としてのポリアミドイミ
ドを溶剤に溶解し、その溶液を回転するシームレスベル
ト形成用の円筒状金型の内側に注入して、回転遠心力の
作用で金型の内壁に流動状溶液の層を形成させ、加熱す
ることにより大部分の溶剤を除去して遠心注型は終了す
る。金型の内に形成されたポリアミドイミドシームレス
環状体は、冷却後、型から取り出される。かかる遠心注
型に用いられるポリアミドイミドの溶液は、溶剤中で、
前記した方法により合成してもよいし、また、溶液化さ
れた市販のポリアミドイミドを用いても良い。本発明に
おいては、溶剤は、前述のように、沸点が150〜25
0℃の範囲内で且つポリアミドイミドを溶かすことがで
きることが重要である。
【0020】この溶液にカーボンフィラーを分散させる
方法としては、カーボンフィラーを直接ポリアミドイミ
ド溶液に投入し、混合、攪拌してもよいし、カーボンフ
ィラーを適当な溶剤に分散させたものをポリアミドイミ
ド溶液に加えて混合してもよい。カーボンフィラーの二
次凝集粒子が多数存在すると、シームレスベルトの表面
に突部が形成され、平滑面が得られ難いため、いずれの
方法においても、二次凝集粒子を解砕する手段をとるこ
とが好ましい。そのような手段としては、タンク内で直
径数ミリ程度のボールと共に回転させるボールミルやサ
ンドミル、高速回転翼を有する各種のホモジナイザー、
三本ロール、衝撃力や超音波を加える等による方法が例
示される。
【0021】溶液の調整においては、溶液の低粘度化、
乾燥スピードの制御等の目的で、沸点が150℃未満の
溶剤や、単独ではポリアミドイミドを溶解することので
きない溶剤を併用することもできるが、本発明におけ
る、クリープの相殺という効果を阻害しないように、そ
の添加量は全溶剤量に対して50重量%を超えない範囲
とすることが好ましい。また、ポリアミドイミド溶液
は、粘度を50,000cP(センチポアズ)以下に調
整することが好ましい。50,000cPを超える粘度
では、遠心力による金型内壁へのレベリングが困難とな
るので採用できない。下限は特に限定されないが、材料
の取り扱い性を考慮するとき、10cP以上が好まし
い。
【0022】本発明のシームレスベルトの製造を添付図
面により説明する。図1は、遠心注型装置の一例の模式
的正面図であり、図2は、その模式的側面図である。両
図において、回転する二対のローラ1,1’と2,2’
上に置かれた回転金型3の中に、溶液を必要量だけ注入
する。金型3は通常、金属製であって、内側面には、形
成されたシームレスベルトが容易に剥離するように鏡面
加工またはフッ素樹脂やシリコーン樹脂等で被覆処理し
たものが好ましく用いられる。金型3の両端は注入した
ポリアミドイミド溶液が漏れないように、金属製あるい
は樹脂製等のリング状の蓋(図示せず)が設けられる。
また、蓋の中央には、ポリアミドイミド溶液注入のため
の穴が設けられリング状となっている。
【0023】ポリアミドイミド溶液の注入量は、溶液の
濃度、固形分の比重、金型の内面寸法、製品の所望厚さ
から算出される。本発明のシームレスベルトには、機械
的強度と可撓性が求められるので、厚さは、使用対象な
いし使用状況に応じて、概略0.03〜1.0mm程度
の範囲内から選択形成される。操作は、まず、金型3を
当初はゆっくり回転させ、内壁にポリアミドイミド溶液
を均一に塗布しつつ、徐々に回転数を上げる。必要に応
じ、金型を外部より適当なヒーターで加熱して、ポリア
ミドイミド溶液の粘度低減、有機溶媒の蒸発を促進する
ことができる。
【0024】しかし、本発明においては溶剤が完全に除
去されるのを防ぐ必要があり、また、急激な溶剤の乾燥
は、シームレスベルトの表面状態に悪影響を与えるの
で、はじめのうちは、金型の加熱を溶剤の沸点より12
0〜50℃程度低くすることがよく、例えば、ジメチル
ホルムアミドを溶剤として選択した場合には、30〜1
00℃、ジメチルアセトアミドを選択した場合には、5
0〜120℃の温度範囲に、NMPを選択した場合に
は、80〜150℃程度の温度になるように条件を設定
すればよい。残留溶剤量が少なくともポリアミドイミド
100重量部に対し0.5重量部以上とする必要があ
り、この加熱工程で成形を完了する場合には6.0重量
部以下にし、更に、熱処理の工程を経る場合には、その
熱処理後に6.0重量部以下となる程度の溶剤を残留さ
せることが必要で、設定された温度条件で、所望の残留
溶剤量を得るための時間をあらかじめ実験で求めておく
とよい。
【0025】更に熱処理を行う場合、回転させたまま温
度を上昇させてもよいし、また、金型の回転を停止して
も材料が金型内壁に固定される状態まで溶剤が除去され
ている場合は、金型の回転を停止し、オーブン等の装置
により別途加熱処理を行うことができる。いずれの場合
においても、最終的に溶剤の残留量を、ポリアミドイミ
ド100重量部に対し、0.5〜6.0重量部の範囲と
することが必要である。成形が終了したら、金型ごと空
冷すると、金型とシームレスベルトを構成するポリアミ
ドイミドとの熱膨張率の差によって、シームレスベルト
が金型内面より自然に剥離する。シームレスベルトと金
型内面との密着が強く、自然に剥離しない場合は、端部
から徐々に剥離することで、シームレスベルトが得られ
る。最後に、これを所望の幅にカットして、本発明のシ
ームレスベルトとされる。
【0026】以上のように、本発明においては、シーム
レスベルトの主材料としてポリアミドイミドを使用し、
遠心注型成形法によって完全に無端で、良好な表面状態
を有するベルトを製造し得るだけでなく、溶剤の残留量
を0.5〜6.0重量%の範囲に調整することにより、
クリープ現象が相殺され、耐クリープ性に優れたシーム
レスベルトを得ることができる。また、カーボンフィラ
ーとして、その表面のカーボンブラックの炭素に結合す
るカルボン酸、ラクトン、フェノール、キノンより選択
される官能基構造の特定範囲量を有するものは、適度の
溶剤との親和性を有し、溶剤を除去する工程において、
所望の溶剤量を残すのに極めて好適である。
【0027】
【実施例】次に、実施例、比較例により、本発明を更に
具体的に説明する。 (ポリアミドイミド溶液の調整)トリメリット酸無水物
と4,4' −ジアミノジフェニルメタンとの当量をジメ
チルアセトアミドに溶解し、加熱反応させて固形分(実
質的全閉環のポリアミドイミド)濃度が28重量%の芳
香族ポリアミドイミド溶液を得た。更に、ジメチルアセ
トアミドを加えて、固形分濃度15重量%、固形分の比
重1.2、粘度2,000cPのポリアミドイミド溶液
とした。以下の実施例及び比較例においては、すべてこ
のポリアミドイミド溶液を使用した。
【0028】(実施例1)内径200mm、外径220
mm、長さ400mmの円筒形を有し、両末端に材料漏
れを防止するための、内径170mm、外径220mm
のリング状の蓋を備えた金型内に、この金型を100
r.p.m.の速度で回転させながら、上記のように調
製されポリアミドイミド溶液200gを注入した。これ
に熱風送風機の温風を吹き付けて、雰囲気温度を60℃
に保ち、その後、回転数を徐々に上げて1,650回転
とした。この状態に1時間保持した後、回転を停止し、
金型ごと150℃に設定したオーブンに投入、45分後
にオーブンから取り出した。そのまま室温に放置し冷却
すると、ポリアミドイミド製のシームレスベルトが金型
より剥離し、得られた厚さ約100μmのシームレスベ
ルトの一部を切り取って重量を測定し、更に、200℃
で真空乾燥して重量を測定して溶剤の残量を測定したと
ころ、3.2重量%(ポリアミドイミド100重量部に
対し、3.3重量部)であった。このシームレスベルト
より、幅10mm、長さ100mmの試料を5枚切り出
し、それぞれ500gの荷重をかけて、60℃のオーブ
ンに30日間放置したところ、伸びの平均値は0.14
%であった。
【0029】(比較例1)実施例1と同様の装置、材料
を使用し、金型を100r.p.m.の速度で回転させ
ながら、ポリアミドイミド溶液を注入した。熱風送風機
により、雰囲気温度を60℃に保ち、回転数を徐々に上
げて1,650回転とした。この状態で1時間保持した
後、回転を停止し、金型ごと200℃に設定したオーブ
ンに投入、60分後にオーブンより取り出した。そのま
ま室温に放置して冷却すると、ポリアミドイミド製のシ
ームレスベルトが、金型より剥離し、厚さ約100μm
のシームレスベルトを得た。このベルトの一部を切り取
り、重量を測定し、更に、200℃で真空乾燥して溶剤
の残量を測定したところ、0.22重量%(ポリアミド
イミド100重量部に対し、0.22重量部)であっ
た。このシームレスベルトより、幅10mm、長さ10
0mmの試料を5枚切り出し、それぞれ500gの荷重
をかけて、60℃のオーブンに30日間放置したとこ
ろ、伸びの平均値は2.1%であった。
【0030】(実施例2)カーボンフィラーとして、デ
グサ社製の商品名:「Special Black 2
50 」 (カルボン酸60×10−5モル/g、ラクトン
14×10−5モル/g、フェノール15×10−5
ル/g、キノン98×10−5モル/g、合計187×
10−5モル/gを含有、比重1.9)を、ジメチルア
セトアミドに15重量%となるように混合し、これをボ
ールミルにて24時間攪拌、混合してカーボンフィラー
混合液を調製した。先に調製したポリアミドイミド溶液
中のポリアミドイミド100重量部に対して、カーボン
フィラー混合液中のカーボンフィラー25重量部を加
え、ボールミルにて24時間混合攪拌して、ポリアミド
イミド・カーボンフィラー混合液を得た。粘度は2,0
00cPであった。
【0031】実施例1で用いたものと同様の装置を使用
し、金型を100r.p.m.の速度で回転させなが
ら、前記ポリアミドイミド・カーボンフィラー混合溶液
217gを注入し金型内面に塗工した。これを熱風送風
機により、雰囲気温度を60℃に保ち、回転数を徐々に
上げて1,650回転とした。この状態で1時間保持し
た後、回転を停止し、金型ごと200℃に設定したオー
ブンに投入し、60分後にオーブンより取り出した。そ
のまま室温に放置して冷却すると、ポリアミドイミド製
のシームレスベルトが、金型より剥離し、厚さ約100
μmのシームレスベルトを得た。このベルトの一部を切
り取って重量を測定し、更に、200℃で真空乾燥して
溶剤の残量を測定したところ、2.2重量%(ポリアミ
ドイミド100重量部に対し、2.5重量部)であっ
た。
【0032】このシームレスベルトより、幅10mm、
長さ100mmの試料を5枚切り出し、それぞれ500
gの荷重をかけて、60℃のオーブンに30日間放置し
たところ、伸びの平均値は0.20%であった。また、
表面抵抗値を測定(測定装置:三菱化学製「Hires
ta−UPMCP−HT450」、プローブ:UR−1
00、測定電圧:500V、測定点数、表裏面それぞれ
20点)したところ、表(外)側平均値8.7×10
14Ω/□、最小値6.2×1014Ω/□、最大値1
0.3×1014Ω/□、裏(内)側平均値10.6×
1014Ω/□、最小値8.9×1014Ω/□、最大
値13.3×1014Ω/□であった。
【0033】(実施例3)実施例2で使用したものと同
様のポリアミドイミド・カーボンフィラー混合溶液を使
用し、実施例1で用いたものと同様の装置を使用し、金
型を100r.p.m.の速度で回転させながら、前記
ポリアミドイミド・カーボンフィラー混合溶液217g
を注入し金型内面に塗布した。これを熱風送風機によ
り、雰囲気温度を60℃に保ち、回転数を徐々に上げ、
1,650回転とした。この状態で1時間保持した後、
回転を停止し、金型ごと150℃に設定したオーブンに
投入し、45分後にオーブンより取り出した。そのまま
室温に放置して冷却すると、ポリアミドイミド製のシー
ムレスベルトが、金型より剥離し、厚さ約100μm
の、本発明のシームレスベルトを得た。このシームレス
ベルトの一部を切り取り、重量を測定し、さらに250
で真空乾燥して溶剤の残量を測定したところ、4.1重
量%(ポリアミドイミド100重量部に対し、4.3重
量部)であった。このシームレスベルトより、幅10m
m、長さ100mmの試料を5枚切り出し、それぞれ5
00gの荷重をかけて、60℃のオーブンに30日間放
置したところ、伸びの平均値は−0.10%(0.10
%収縮)であった。
【0034】(比較例2)カーボンフィラーとして、そ
の表面にカルボン酸、ラクトン、フェノール、キノンの
含有量の合計が1×10−5モル/g以下である、電気
化学工業社製商品名:「デンカブラック」(アセチレン
ブラック、比重1.9)を、ジメチルアセトアミドに1
5重量%となるように混合し、これをボールミルにて2
4時間攪拌、混合し、カーボンフィラー混液を得た。ポ
リアミドイミド溶液中のポリアミドイミド100重量部
に対し、カーボンフィラー混合液中のカーボンフィラー
25重量部を加え、ボールミルにて24時間混合攪拌し
て、ポリアミドイミド・カーボンフィラー混合溶液を得
た。粘度は2,000cPであった。このポリアミドイ
ミド・カーボンフィラー混合溶液を使用し、実施例2と
同様の条件でシームレスベルトを作製した。このシーム
レスベルトの一部を切り取り、重量を測定し、さらに2
00℃で真空乾燥して溶剤の残量を測定したところ、
0.24重量%(ポリアミドイミド100重量部に対
し、0.24重量部)であった。このシームレスベルト
より、幅10mm、長さ100mmの試料を5枚切り出
し、それぞれ500gの荷重をかけて、60℃のオーブ
ンに30日間放置したところ、伸びの平均値は2.0%
であった。
【0035】(比較例3)実施例1と同様の装置、材料
を使用し、金型を100r.p.m.の速度で回転させ
ながら、ポリアミドイミド溶液を注入した。熱風送風機
により、雰囲気温度を60℃に保ち、回転数を徐々に上
げ、1,650回転とした。この状態で1時間保持した
後、回転を停止し、金型ごと100℃に設定したオーブ
ンに投入、60分後にオーブンより取り出した。そのま
ま室温に放置して冷却すると、ポリアミドイミド製のシ
ームレスベルトが、金型より剥離し、厚さ約100μm
のシームレスベルトを得た。このシームレスベルトの一
部を切り取り、重量を測定し、さらに200℃で真空乾
燥して溶剤の残量を測定したところ、6.5重量%(ポ
リアミドイミド100重量部に対し、7.0重量部)で
あった。このシームレスベルトより、幅10mm、長さ
100mmの試料を5枚切り出し、それぞれ500gの
荷重をかけて、60℃のオーブンに30日間放置したと
ころ、伸びの平均値は15.8%であった。
【0036】
【発明の効果】以上の結果から明らかなように、本発明
によれば、耐クリープ性に優れたシームレスベルトを得
ることができ、更に、特定のカーボンブラックを添加す
ることによって、本発明の効果を得るための必要溶剤量
を残留させるための製造条件を広範なものとすることが
できるとともに、長期にわたって特性の安定したシーム
レスベルトを得ることができる。また、本発明によるシ
ームレスベルトは、特に、複数のローラーに懸架されて
用いられる電子写真式複写機等の中間転写装置、転写紙
分離装置、帯電装置等に好適である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に用いられる遠心注型成形装置の模式的
正面図である。
【図2】図1の遠心注型成形装置の模式的側面図であ
る。
【符号の説明】
1,1 ’……回転ロール対 2……………他方の回転ロール対 3……………金型 4……………樹脂材料層
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI テーマコート゛(参考) G03G 15/02 G03G 15/02 4F213 15/16 15/16 4J043 15/18 15/18 (72)発明者 日比 登代次 埼玉県大宮市吉野町1丁目406番1号 信 越ポリマー株式会社商品研究所内 (72)発明者 長谷部 晃久 埼玉県大宮市吉野町1丁目406番1号 信 越ポリマー株式会社商品研究所内 Fターム(参考) 2H003 CC04 2H032 BA09 2H068 AA52 AA55 BA12 BB28 CA02 EA07 EA12 3F049 BA13 LA02 4F071 AA60 AB02 AB05 AB12 AE15 AH12 AH17 BA02 BB02 BC01 4F213 AA40 AB13 AB18 AG16 AH33 WA03 WB01 WC02 4J043 PA02 QB15 QB26 QB32 RA05 RA34 SA06 SB01 TA21 TA23 TB01 UA121 UA122 UA131 UB011 UB121 UB401 VA012 VA021 VA052 VA092 XA16 XA19 ZA31 ZB60

Claims (3)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 沸点が150〜250℃の範囲にある溶
    剤にポリアミドイミドを溶解した溶液を成形型内に塗布
    し、溶剤を除去して得られるシームレスベルトであっ
    て、前記ポリアミドイミド100重量部に対し、0.5
    〜6.0重量部の範囲の溶剤を前記ベルト中に残留させ
    たことを特徴とするシームレスベルト。
  2. 【請求項2】 請求項1記載のシームレスベルトに導電
    性を付与するために、導電性物質を混入させたことを特
    徴とするシームレスベルト。
  3. 【請求項3】 前記導電性物質の全部また一部をカーボ
    ンフィラーとし、その表面のカーボンブラックの炭素に
    結合するカルボン酸、ラクトン、フェノール及びキノン
    よりなる群から選択される官能基を有し、官能基が合計
    でカーボンフィラー1g当たり50×10−5〜2,0
    00×10−5モルであるカーボンフィラーを、ポリア
    ミドイミド100重量部に対し5〜50重量部含有させ
    てなることを特徴とする、請求項2に記載されたシーム
    レスベルト。
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