JP2014063989A - 導電性回路描画用インク組成物、導電性回路形成方法及びそれにより形成された導電性回路 - Google Patents

導電性回路描画用インク組成物、導電性回路形成方法及びそれにより形成された導電性回路 Download PDF

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Abstract

【解決手段】直径0.8mm、高さ0.4mmのドット形状の印刷パターンを形成後、80〜200℃で熱硬化させ、印刷された形状と硬化後の形状を比較した場合、ドット形状の高さの変化量が5%以内であり、溶剤を実質的に含有せず、付加型のシリコーンゴム形成用前駆体と硬化触媒の組み合わせと、密度2.75g/cm3以下の導電性粒子を含み、カーボンブラック等のチクソ化剤を含有する導電性回路描画用インク組成物を用い、印刷法によって回路を形成する導電性回路形成方法。
【効果】本発明の導電性回路形成方法によれば、印刷性に優れ、チクソ性を持ったインクによってスクリーン印刷を初めとする印刷方法によって回路を描画することができ、描画された回路は、形状の再現性に優れ、高速印刷が可能で、高スループット、高歩留まりのパターン描画が可能である。
【選択図】なし

Description

本発明は導電性回路描画用インク組成物、及びそれを用いた導電性回路形成方法に関し、特に印刷法によってシリコーンゴムを構造形成材料とする回路を形成する導電性回路形成方法に関する。更に、本発明は、この導電性回路形成方法によって形成された導電性回路に関する。
導電性粒子を含有するインクを用いて印刷法により導電性回路を形成する技術は、既にスクリーン印刷による太陽電池基板等における導電性回路形成方法等として実用化されており、更にその改良方法についても多数の技術が提案されている。例えば特許文献1(特開2010−149301号公報)では、常用される導電性インクとして金属粒子とガラスフリットを含むインクを用い、超音波振動を使ったスクリーン印刷により印刷することで、高速な導電性回路の形成が可能になることを開示している。
一方、半導体回路製品等に対して導電性インクを用いて回路を形成する場合、回路形成後に基板の接着やパッケージング等の加熱工程を行うと、ガラスを構造形成材料に用いる導電性材料の場合にはクラック等により導線の抵抗変化や断線が生じる可能性があり、高い耐応力能を持った回路形成用材料が求められる。シリコーン材料は、耐熱性と応力緩和能に優れる材料であるが、例えば特許文献2(特開平11−213756号公報)では、熱可塑性樹脂、エポキシ変性シリコーン、金属粉、シリコーンゴム弾性体を溶剤でのばしたインクを用いることで、加熱処理を行った場合にもクラック等の発生のない導電性回路が得られることが開示されている。また、シリコーンゴムに導電性粒子を分散させた組成物をインクとして用いる方法も開示されている。
特開2010−149301号公報 特開平11−213756号公報 特開2007−53109号公報 特開平7−109501号公報
現在、半導体回路の微細化が進行して、それに用いる導電性回路も微細化が進んでいる。また、一つの基板上に作製した半導体回路を、更に2つ以上積層させて半導体回路を積層する、いわゆる3D半導体装置等の検討も進められている。このような、より微細な回路から複数の接点を設けて実装する場合や、2つ以上のシリコン基板上に形成された半導体回路間の接続を行う場合、接続される導電性回路は、上述のような熱応力に対する耐性がもちろん要求されるが、更に、微細構造としての形状の制御が要求される。
例えば、異なる線幅部分のある導電性回路を、溶剤を含有する導電性インクを用いて形成すると、溶剤の揮発速度等による影響で、硬化前後で、導線の平坦性や形状の異なる部分が発生したり、回路の高低差ができてしまうおそれがある。また、それらの影響を考慮して接続を取ろうとすると、微細化を行うためのマージンが失われることになる。そこで、半導体装置等の微細化を進める場合や、半導体装置の3次元積層等を行おうとする場合、導電性インクを用いて導電性回路を形成する際、回路形状がより厳密に制御できる回路形成技術が望まれる。
シリコーンゴムに金属粒子を分散させたインク組成物は、チクソ化剤を添加することにより導電性回路を印刷により形成でき、印刷をした後の硬化前後で形状がよく保持され、更に形成された回路が熱応力等に対し高い応力緩和能を有する導電性回路形成方法を提供することができるが、密度の高い金属粒子を添加した場合、形状を安定化させるために多量のチクソ化剤の添加が必要になり、高粘度化のために印刷用インクとしての特性の低下が問題になっていた。
本発明は、導電性回路の印刷性に優れ、印刷をした後の硬化前後で形状がよく保持され、更に、形成された回路が熱応力等に対し高い応力緩和能を有する導電性回路形成方法及び導電性回路描画用インク組成物並びに導電性回路を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記要求を満たすことのできる材料について種々検討を行った結果、シリコーンゴム形成用素材は、溶剤を使用することなく印刷用インクとして必要な流動性を確保することが可能であることから、シリコーンゴムであれば印刷後の硬化前後での形状変化を起こすことなく、応力緩和能の高い導電性回路を形成できることを想到した。そこで、印刷により形成された立体形状が熱硬化するまでに変形してしまわないようチクソ性を高めるためのチクソ化剤の検討を行った。
まず、常用されるチクソ性を高める方法として乾式シリカの添加を試みたが、シリカ添加量が増加するにつれて、チクソ性は上がるものの、抵抗値も上がってしまい、チクソ性と導電性を共に満足する組成物を得ることは困難であった。ところが、チクソ化剤として1Ω・cm程度の中間的な抵抗率を持つカーボンブラック等の後述するチクソ化剤の添加を試みたところ、添加量と共にチクソ性は上がると共に、驚くべきことに抵抗値は不変かむしろ低下し、導電性を問題にすることなくチクソ性のコントロールが可能なことを見出し、良好な導電性回路描画用インク組成物が得られたものである。
従来の導電性粒子では、金、銀、銅などの金属粒子や、ガラスビーズに金メッキ、銀メッキ、あるいは銅メッキを施した金属メッキ粒子などが用いられてきた。これらの導電性粒子の比重は、10.5〜2.79と重く、導電性粒子を配合したシリコーンゴム組成物の比重も重くなるため、形状安定化のため多量のチクソ化剤を添加しなければならない。その結果、導電性回路描画用インク組成物の粘度上昇を引き起こし、印刷時の印刷機への負荷を上昇させるおそれがあった。
しかし、従来使用していたこれら導電性粒子の代わりに、プラスチック等、密度の軽い粒子を金属メッキして、密度2.75g/cm3以下の導電性粒子を使用することにより、導電性回路描画用インク組成物の粘度を下げることができ、チクソ化剤の添加量を低減することが可能となった。その結果、印刷性を向上させながら、形状安定性を保つことができる導電性回路の形成方法を見出し、本発明に至った。
即ち、本発明は、下記の導電性回路描画用インク組成物、導電性回路形成方法及びそれにより形成された導電性回路を提供する。
〔1〕
直径0.8mm、高さ0.4mmのドット形状の印刷パターンを形成後、80〜200℃で熱硬化させ、印刷された形状と硬化後の形状を比較した場合、ドット形状の高さの変化量が5%以内であり、溶剤を実質的に含有せず、付加型のシリコーンゴム形成用前駆体と硬化触媒の組み合わせと、密度2.75g/cm3以下の導電性粒子を含み、更に、カーボンブラック、亜鉛華、錫酸化物、錫−アンチモン系酸化物、SiCから選ばれるチクソ化剤を含有する導電性回路描画用インク組成物を用い、印刷法によって回路を形成することを特徴とする導電性回路形成方法。
〔2〕
前記シリコーンゴム形成用前駆体と硬化触媒の組み合わせは、少なくとも2個のケイ素原子に結合したアルケニル基を含有するオルガノポリシロキサンと少なくとも2個のケイ素原子に結合した水素原子を含有するオルガノハイドロジェンポリシロキサンとヒドロシリル化反応触媒の組み合わせであることを特徴とする〔1〕に記載の導電性回路形成方法。
〔3〕
導電性回路描画用インク組成物が、
(A)下記平均組成式(1)
aR’bSiO(4-a-b)/2 (1)
(式中、Rはアルケニル基、R’は脂肪族不飽和結合を持たない非置換又は置換の炭素数1〜10の一価炭化水素基、a、bは、0<a≦2、0<b<3、0<a+b≦3を満たす数である。)
で示される少なくとも2個のアルケニル基を含有する25℃の粘度が100〜5,000mPa・sであるオルガノポリシロキサン:100質量部、
(B)下記平均組成式(2)
c3 dSiO(4-c-d)/2 (2)
(式中、R3は独立に脂肪族不飽和結合を含有しない非置換又は置換の一価炭化水素基、又はアルコキシ基であり、c及びdは、0<c<2、0.8≦d≦2かつ0.8<c+d≦3となる数であり、また、一分子中のケイ素原子の数(又は重合度)は、2〜300個である。)
で示される少なくとも2個のケイ素原子に結合した水素原子を含有するオルガノハイドロジェンポリシロキサン:(A)成分中の全ケイ素原子に結合したアルケニル基に対して(B)成分中のケイ素原子に結合した水素原子が0.5〜5.0倍モルとなる量、
(C)ヒドロシリル化反応触媒として白金族金属系触媒:(A)、(B)成分の合計に対して質量換算で1〜500ppm、
(D)導電性粒子として密度が2.75g/cm3以下である金属メッキした粒子:60〜300質量部、
(E)カーボンブラック、亜鉛華、錫酸化物、錫−アンチモン系酸化物、SiCから選ばれるチクソ化剤:0.5〜30質量部、
(F)脂肪酸、脂肪酸エステル、脂肪族アルコールのエステル、脂肪酸金属塩から選ばれる安定化剤:0.1〜10質量部
を含有するものである〔1〕に記載の導電性回路形成方法。
〔4〕
(B)成分が、接着性付与剤としてエポキシ基及び/又はアルコキシシリル基を有するオルガノハイドロジェンポリシロキサンを(A)成分100質量部に対し0.5〜20質量部含有する〔3〕に記載の導電性回路形成方法。
〔5〕
エポキシ基及び/又はアルコキシシリル基を有するオルガノハイドロジェンポリシロキサンが、
Figure 2014063989

である〔4〕に記載の導電性回路形成方法。
〔6〕
前記導電性回路描画用インク組成物は、密度が2.0g/cm3以下であることを特徴とする〔1〕〜〔5〕のいずれかに記載の導電性回路形成方法。
〔7〕
前記導電性粒子は、金メッキ粒子、銀メッキ粒子、銅メッキ粒子から選ばれる密度2.75g/cm3以下の粒子であることを特徴とする〔1〕〜〔6〕のいずれかに記載の導電性回路形成方法。
〔8〕
前記印刷法はスクリーン印刷である〔1〕〜〔7〕のいずれかに記載の導電性回路形成方法。
〔9〕
〔1〕〜〔8〕のいずれかに記載の導電性回路形成方法によって形成された導電性回路。
〔10〕
〔1〕〜〔8〕のいずれかに記載の導電性回路描画用インク組成物。
本発明の導電性回路形成方法によれば、印刷性に優れ、チクソ性を持ったインクによってスクリーン印刷を初めとする印刷方法によって回路を描画することができ、描画された回路は、形状の再現性に優れ、高速印刷が可能で、高スループット、高歩留まりのパターン描画が可能である。描画後に硬化工程を行った際にも形状がよく保持され、回路形状の高度な制御が可能である。また、シリコーンゴムを主体とする構造を有するため、形成された回路が熱応力等に対し高い応力緩和能を有する。
本発明に用いる回路描画用インク組成物は、溶剤を実質的に含有せず、シリコーンゴム形成用前駆体と硬化触媒の組み合わせと、密度2.75g/cm3以下の導電性粒子、及びチクソ化剤を含有する好ましくは密度2.0g/cm3以下の導電性回路描画用インク組成物である。
描画後に更に硬化した際に得られる導電性回路パターンの形状を高精度に制御するためには、描画時に形成されたパターン形状をよく維持したまま硬化するパターンを得ることが好ましい。このため、本発明で用いる導電性回路描画用インク組成物は、描画後硬化工程が完了するまでの間、揮発する成分の発生を極力抑制可能な材料から選択する必要があり、インク組成物を調製する際に溶剤を実質的に用いない。
[シリコーンゴム形成用前駆体と硬化触媒の組み合わせ]
硬化型シリコーン材料は、硬化メカニズムにより縮合型と付加型に分類することができるが、付加型のシリコーンゴム形成材料は、硬化時に脱ガス成分を伴わないことから、本発明の目的を達するために最適な材料である。また、描画時の形状をよく維持したまま硬化するためには、200℃以下の緩和な条件、特に150℃以下で硬化可能であることが好ましいが、付加型のシリコーンゴム形成材料はこの要請も容易に満たすことができる。
付加型のシリコーンゴム形成用前駆体と硬化触媒の組み合わせは、例えば特許文献3(特開2007−53109号公報)を初めとして、既に多数の材料が公知であり、基本的にはいずれの材料も用いることができるが、好ましい材料として、以下のものを挙げることができる。
付加型のシリコーンゴム形成用前駆体として最も好ましい材料は、少なくとも2個のケイ素原子に結合したアルケニル基を含有するオルガノポリシロキサンと少なくとも2個のケイ素原子に結合した水素原子を含有するオルガノハイドロジェンポリシロキサンの混合物であり、より詳細には下記の材料を挙げることができる。
(A)少なくとも2個のアルケニル基を含有するオルガノポリシロキサン
少なくとも2個のアルケニル基を含有するオルガノポリシロキサン(A)は、下記平均組成式(1)で表される。
aR’bSiO(4-a-b)/2 (1)
(式中、Rはアルケニル基、R’は脂肪族不飽和結合を持たない非置換又は置換の炭素数1〜10の一価炭化水素基、a、bは、0<a≦2、0<b<3、0<a+b≦3を満たす数である。)
(A)成分のアルケニル基含有オルガノポリシロキサンは、この組成物の主剤(ベースポリマー)であり、一分子中に平均2個以上(通常2〜50個)、好ましくは2〜20個、より好ましくは2〜10個程度のケイ素原子に結合したアルケニル基を含有する。(A)成分のオルガノポリシロキサンのアルケニル基Rとしては、例えば、ビニル基、アリル基、ブテニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基、ヘプテニル基等が挙げられ、特に、ビニル基であることが好ましい。(A)成分のアルケニル基の結合位置としては、例えば、分子鎖末端及び/又は分子鎖側鎖が挙げられる。
(A)成分のオルガノポリシロキサンにおいて、アルケニル基以外のケイ素原子に結合した有機基R’としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基等のアルキル基;フェニル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基等のアリール基;ベンジル基、フェネチル基等のアラルキル基;クロロメチル基、3−クロロプロピル基、3,3,3−トリフルオロプロピル基等のハロゲン化アルキル基などが挙げられ、特に、メチル基、フェニル基であることが好ましい。
このような(A)成分の分子構造としては、例えば、直鎖状、一部分岐を有する直鎖状、環状、分岐鎖状、三次元網状等が挙げられるが、基本的に主鎖がジオルガノシロキサン単位(D単位)の繰り返しからなり、分子鎖両末端がトリオルガノシロキシ基で封鎖された、直鎖状のジオルガノポリシロキサン、直鎖状のジオルガノポリシロキサンと分岐鎖状あるいは三次元網状のオルガノポリシロキサンの混合物であることが好ましい。
この場合、レジン状(分岐鎖状、三次元網状)のオルガノポリシロキサンとしては、アルケニル基とSiO4/2単位(Q単位)及び/又はR’’SiO3/2(T単位)(R’’はR及び/又はR’)を含有するオルガノポリシロキサンであれば特に制限されないが、SiO4/2単位(Q単位)と、RR’2SiO1/2単位やR’3SiO1/2単位等のM単位からなり、M/Qのモル比が0.6〜1.2であるレジン状オルガノポリシロキサンや、T単位とM単位及び/又はD単位からなるレジン状オルガノポリシロキサン等が例示される。
但し、このようなレジン状のオルガノポリシロキサンの適用は本発明の実施において粘度が高くなり導電性粉末を高充填できなくなる理由から多く添加されない。直鎖状オルガノポリシロキサンとレジン状オルガノポリシロキサンの好ましい配合割合は、質量比で好ましくは70:30〜100:0、特に好ましくは80:20〜100:0である。
式(1)中、aは、0<a≦2、好ましくは0.001≦a≦1、bは、0<b<3、好ましくは0.5≦b≦2.5、a+bは、0<a+b≦3、好ましくは0.5≦a+b≦2.7、更に好ましくは1.8≦a+b≦2.2、特に1.9≦a+b≦2.1を満たす数である。
(A)成分の25℃における粘度は、得られるシリコーンゴムの物理的特性が良好であり、また組成物の取り扱い作業性が良好であることから、100〜5,000mPa・sの範囲内であることが好ましく、特に100〜1,000mPa・sの範囲内であることが好ましい。直鎖状オルガノポリシロキサンにレジン状オルガノポリシロキサンを併用する場合は、レジン状オルガノポリシロキサンは直鎖状オルガノポリシロキサンに溶解するため、混合して均一な状態での粘度とする。なお、本発明において、粘度はディスクレオメーター(Thermo Scientific社製、HAAKE RotoVisco 1)により測定することができる。
このような(A)成分のオルガノポリシロキサンとしては、例えば、分子鎖両末端トリメチルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルビニルシロキサン共重合体、分子鎖両末端トリメチルシロキシ基封鎖メチルビニルポリシロキサン、分子鎖両末端トリメチルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルビニルシロキサン・メチルフェニルシロキサン共重合体、分子鎖両末端ジメチルビニルシロキシ基封鎖ジメチルポリシロキサン、分子鎖両末端ジメチルビニルシロキシ基封鎖メチルビニルポリシロキサン、分子鎖両末端ジメチルビニルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルビニルシロキサン共重合体、分子鎖両末端ジメチルビニルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルビニルシロキサン・メチルフェニルシロキサン共重合体、分子鎖両末端トリビニルシロキシ基封鎖ジメチルポリシロキサン、式:R1 3SiO0.5で示されるシロキサン単位と式:R1 22SiO0.5で示されるシロキサン単位と式:R1 2SiOで示されるシロキサン単位と式:SiO2で示されるシロキサン単位からなるオルガノシロキサン共重合体、式:R1 3SiO0.5で示されるシロキサン単位と式:R1 22SiO0.5で示されるシロキサン単位と式:SiO2で示されるシロキサン単位からなるオルガノシロキサン共重合体、式:R1 22SiO0.5で示されるシロキサン単位と式:R1 2SiOで示されるシロキサン単位と式:SiO2で示されるシロキサン単位からなるオルガノシロキサン共重合体、式:R12SiOで示されるシロキサン単位と式:R1SiO1.5で示されるシロキサン単位もしくは式:R2SiO1.5で示されるシロキサン単位からなるオルガノシロキサン共重合体、及びこれらのオルガノポリシロキサンの2種以上からなる混合物が挙げられる。
ここで、上記式中のR1はアルケニル基以外の非置換又は置換の一価炭化水素基であり、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基等のアルキル基;フェニル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基等のアリール基;ベンジル基、フェネチル基等のアラルキル基;クロロメチル基、3−クロロプロピル基、3,3,3−トリフルオロプロピル基等のハロゲン化アルキル基などが挙げられる。また、上記式中のR2はアルケニル基であり、例えば、ビニル基、アリル基、ブテニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基、へプテニル基などが挙げられる。
(B)少なくとも2個のケイ素原子に結合した水素原子を含有するオルガノハイドロジェンポリシロキサン
少なくとも2個のケイ素原子に結合した水素原子を含有するオルガノハイドロジェンポリシロキサン(B)は、一分子中に少なくとも2個(通常2〜300個)、好ましくは3個以上(例えば、3〜150個程度)、より好ましくは3〜100個程度のケイ素原子に結合した水素原子(即ち、SiH基)を含有するものであり、直鎖状、分岐鎖状、環状、あるいは三次元網状構造の樹脂状物のいずれでもよい。このようなオルガノハイドロジェンポリシロキサンとしては、例えば、下記平均組成式(2)で表されるオルガノハイドロジェンポリシロキサンが挙げられる。
c3 dSiO(4-c-d)/2 (2)
(式中、R3は独立に脂肪族不飽和結合を含有しない非置換又は置換の一価炭化水素基、又はアルコキシ基であり、c及びdは、0<c<2、0.8≦d≦2かつ0.8<c+d≦3となる数であり、好ましくは0.05≦c≦1、1.5≦d≦2かつ1.8≦c+d≦2.7となる数である。また、一分子中のケイ素原子の数(又は重合度)は、2〜300個、好ましくは2〜150個、より好ましくは3〜150個、更に好ましくは3〜100個、特に3〜50個が好ましい。)
式(2)中、R3の脂肪族不飽和結合を含有しない非置換又は置換の一価炭化水素基としては、前記のR’として例示したものと同様の非置換一価炭化水素基、ハロゲン化アルキル基が挙げられるほか、グリシジル基、グリシドキシ基、エポキシシクロヘキシル基等のエポキシ基置換アルキル基が挙げられ、更にメトキシ基、エトキシ基等のアルコキシ基が挙げられるが、好ましくはフェニル基等の芳香族基を含まないものであり、代表的なものは炭素数が1〜10、特に炭素数が1〜7のものであり、好ましくはメチル基等の炭素数1〜3の低級アルキル基、3,3,3−トリフルオロプロピル基、炭素数1〜4のアルコキシ基であり、特に好ましくはメチル基、メトキシ基、エトキシ基である。
このようなオルガノハイドロジェンポリシロキサンとしては、例えば、1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン、1,3,5,7−テトラメチルテトラシクロシロキサン、1,3,5,7,8−ペンタメチルペンタシクロシロキサン、メチルハイドロジェンシクロポリシロキサン、メチルハイドロジェンシロキサン・ジメチルシロキサン環状共重合体、トリス(ジメチルハイドロジェンシロキシ)メチルシラン等のシロキサンオリゴマー;分子鎖両末端トリメチルシロキシ基封鎖メチルハイドロジェンポリシロキサン、分子鎖両末端トリメチルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルハイドロジェンシロキサン共重合体、分子鎖両末端シラノール基封鎖メチルハイドロジェンポリシロキサン、分子鎖両末端シラノール基封鎖ジメチルシロキサン・メチルハイドロジェンシロキサン共重合体、分子鎖両末端ジメチルハイドロジェンシロキシ基封鎖ジメチルポリシロキサン、分子鎖両末端ジメチルハイドロジェンシロキシ基封鎖メチルハイドロジェンポリシロキサン、分子鎖両末端ジメチルハイドロジェンシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルハイドロジェンシロキサン共重合体等;R3 2(H)SiO1/2単位とSiO4/2単位からなり、任意にR3 3SiO1/2単位、R3 2SiO2/2単位、R3(H)SiO2/2単位、(H)SiO3/2単位又はR3SiO3/2単位を含み得るシリコーンレジン(但し、R3は前記と同じである)等のほか、これらの例示化合物においてメチル基の一部又は全部をエチル基、プロピル基等のほかのアルキル基で置換したものなどが挙げられ、更には下記式
Figure 2014063989

(式中、R3は前記と同じであり、s、tはそれぞれ0又は1以上の整数である。)
等で表されるものが挙げられる。
このようなオルガノハイドロジェンポリシロキサンは、公知の方法で得ることができ、例えば、一般式:R3SiHCl2及びR3 2SiHCl(式中、R3は前記と同じである)から選ばれる少なくとも1種のクロロシランを(共)加水分解し、あるいは該クロロシランと一般式:R3 3SiCl及びR3 2SiCl2(式中、R3は前記と同じである)から選ばれる少なくとも1種のクロロシランを組み合わせて共加水分解し、縮合することにより得ることができる。また、オルガノハイドロジェンポリシロキサンは、このように(共)加水分解縮合して得られたポリシロキサンを平衡化したものでもよい。
また、アルコキシシリル基及び/又はエポキシ基を有するオルガノハイドロジェンポリシロキサンとしては、下記のものが挙げられる。
Figure 2014063989
このようなアルコキシシリル基及び/又はエポキシ基を有するオルガノハイドロジェンポリシロキサンは、接着性付与剤として作用する。このような接着性付与剤として作用するオルガノハイドロジェンポリシロキサンを用いる場合、その配合量は(A)成分100質量部に対して0.5〜20質量部、好ましくは1〜10質量部である。0.5質量部未満であると接着性付与効果が十分に得られなくなり、20質量部を超えると組成物の保存性が悪くなったり、硬化物の性状(硬度)が経時で変化するおそれがあるほか、用いる材料によっては脱ガスによるパターン形状変化の原因となる危険がある。
(B)成分の配合量は、(A)成分中の全ケイ素原子に結合したアルケニル基に対して(B)成分中のケイ素原子に結合した水素原子が0.5〜5.0倍モルとなる量であることが好ましく、より好ましくは0.7〜3.0倍モルとなる量である。0.5倍モル未満でも5.0倍モル超でも、架橋バランスが崩れ十分な強度の硬化物が得られない場合がある。
(C)ヒドロシリル化反応触媒
本発明に用いる付加(ヒドロシリル化)反応触媒は、前記の(A)成分のアルケニル基と(B)成分のケイ素原子に結合した水素原子(即ち、SiH基)との付加反応を促進するための触媒であり、ヒドロシリル化反応に用いられる触媒として白金族金属系触媒等の周知の触媒が挙げられる。
この白金族金属系触媒としては、ヒドロシリル化反応触媒として公知のものが全て使用できる。例えば、白金黒、ロジウム、パラジウム等の白金族金属単体;H2PtCl4・yH2O、H2PtCl6・yH2O、NaHPtCl6・yH2O、KHPtCl6・yH2O、Na2PtCl6・yH2O、K2PtCl4・yH2O、PtCl4・yH2O、PtCl2、Na2HPtCl4・yH2O(式中、yは0〜6の整数であり、好ましくは0又は6である)等の塩化白金、塩化白金酸及び塩化白金酸塩;アルコール変性塩化白金酸(米国特許第3,220,972号明細書参照);塩化白金酸とオレフィンとのコンプレックス(米国特許第3,159,601号明細書、同第3,159,662号明細書、同第3,775,452号明細書参照);白金黒、パラジウム等の白金族金属をアルミナ、シリカ、カーボン等の担体に担持させたもの;ロジウム−オレフィンコンプレックス;クロロトリス(トリフェニルフォスフィン)ロジウム(ウィルキンソン触媒);塩化白金、塩化白金酸又は塩化白金酸塩とビニル基含有シロキサン、特にビニル基含有環状シロキサンとのコンプレックス等が挙げられる。これらの中で、好ましいものとして、相溶性の観点及び塩素不純物の観点から、塩化白金酸をシリコーン変性したものが挙げられ、具体的には例えば塩化白金酸をテトラメチルジビニルジシロキサンで変性した白金触媒が挙げられる。添加量は、白金原子にして上記(A)、(B)成分の合計質量に対し、質量換算で1〜500ppm、好ましくは3〜100ppm、より好ましくは5〜80ppmである。
[導電性粒子]
本発明の導電性回路描画用インク組成物には、導電性粒子(D)が含まれる。導電性粒子には、金メッキ粒子、銀メッキ粒子、銅メッキ粒子などがある。
導電性粒子としては、密度が2.75g/cm3以下、好ましくは2.50g/cm3以下、より好ましくは2.10g/cm3以下の金属メッキした粒子、特に高導電性である銀メッキを施したプラスチック粒子等の粉末が好ましい。
金属メッキを施す粒子は、金属メッキをした粒子の密度が2.75g/cm3以下の粒子となればよく、特に決まりはない。
金属メッキを施す粒子は、その内部に空気泡など密度の小さいものを入れ、その見掛け密度を小さくすることもできるが、より簡便な方法として、プラスチックなど密度が軽いものを使用すればよい。
また、導電性粒子の大きさは、平均粒径が5〜20μmであることが好ましい。なお、50μmを超える粒子が混入した場合、スクリーンプリントのメッシュに詰まるなどの不都合が生じるおそれがある。平均粒径は、レーザー光回折法による粒度分布測定における質量平均値D50として求めることができる。
なお、導電性粒子の密度(真密度、見掛け密度)は、一般的な方法として、ピクノメーター法で測定することが可能である。
本発明に使用するインク組成物における導電性粒子の配合量は、上記(A)成分100質量部に対して60〜300質量部であることが好ましく、より好ましくは100〜200質量部である。導電性粒子が60質量部より少ない場合、シリコーンゴムの導電率が低下し、300質量部より多い場合、流動性が悪化するため組成物の取り扱いが困難となる。
このとき導電性粒子の密度を2.75g/cm3以下とすることにより、これらを含むインク組成物の密度が2.0g/cm3以下になり、多量のチクソ化剤添加による高粘度化を必要とせず、印刷時のインクの粘度低下に寄与し、ひいては印刷精度の向上、繰り返し精度の向上、更には印刷速度の向上により、高スループット、高歩留まりの印刷プロセスを提供することができる。なお、導電性粒子の密度の下限は通常1.70g/cm3以上であり、インク組成物の密度の下限は通常1.25g/cm3以上であるが、これに制限されるものではない。
[チクソ化剤]
チクソ化剤(E)は、インクにチクソ性与え、導電性回路描画後、硬化までに導電性パターンの形状を維持するために必要な材料であり、本発明に添加されるチクソ化剤は、中間的な抵抗値を持つカーボンブラック、亜鉛華、錫酸化物、錫−アンチモン系酸化物、SiCから選ばれ、カーボンブラックが特に好ましい。
立体形状を持つパターンを印刷する際、印刷によってインクパターンを形成した後パターンを熱硬化させるまでの間、印刷されたパターン形状を維持するためには、用いるインクにはチクソ性が必要である。また、印刷可能な流動性を持つ材料のチクソ性を高めるためにはチクソ化剤を添加する方法が一般的である。本発明者らはチクソ性を高める方法として、乾式シリカ(NSX−200:日本アエロジル(株)製)の添加を試みたが、シリカ添加量が増加するにつれて、チクソ性は上がるものの、抵抗値も上がってしまい、チクソ性と導電性を共に満足する組成物を得ることは困難であった。そこで、わずかでも導電性を向上させるために中間程度の抵抗値を持つカーボンブラック(HS−100:電気化学工業(株)製)の添加を試みたところ、添加量と共にチクソ性が上がるだけでなく、驚くべきことに抵抗値は不変か、むしろ低下することを見出した。既にカーボンブラック添加による導電性シリコーン組成物は広く知られているが、その抵抗率は1Ω・cm程度であり、本発明の目的とする1×10-2〜1×10-5Ω・cmレベルの導電性に比較して極めて低いレベルである。導電性粒子を含有するインク中で、このカーボンブラックの添加が抵抗率を低下させることの理由はまだはっきり解明されていないが、このような中程度の抵抗率を持つチクソ化剤を用いることによって、導電性を問題にすることなくチクソ性のコントロールが可能となる。
カーボンブラックとしては、通常導電性ゴム組成物に常用されているものが使用し得、例えばアセチレンブラック、コンダクティブファーネスブラック(CF)、スーパーコンダクティブファーネスブラック(SCF)、エクストラコンダクティブファーネスブラック(XCF)、コンダクティブチャンネルブラック(CC)、1,500〜3,000℃程度の高温で熱処理されたファーネスブラックやチャンネルブラック等を挙げることができる。これらの中で、アセチレンブラックは不純物含有率が少ない上、発達した2次ストラクチャー構造を有することから導電性に優れており、本発明において特に好適に使用される。
上記カーボンブラック等のチクソ化剤を用いた場合の添加量は、(A)成分100質量部に対して0.5〜30質量部であり、特に1〜20質量部であることが好ましい。添加量が0.5質量部より少ない場合には形状保持性が悪くなるおそれがあり、30質量部より多い場合は粘度が上昇しすぎて組成物の取り扱いが困難となるおそれがある。
更に本発明に用いるインク組成物には、更に、安定化剤、接着性付与剤を加えることが好ましい。
[安定化剤]
インク組成物の付加硬化性の安定化を行うため、インク組成物には脂肪酸類やアセチレン化合物等の安定化剤(F)を加えることが好ましく、特に、脂肪酸あるいは脂肪酸誘導体及び/又はその金属塩を加えることが好ましい。脂肪酸あるいは脂肪酸誘導体及び/又はその金属塩を安定化剤として使用する場合の添加量は、(A)成分100質量部に対して0.1〜10質量部、好ましくは0.1〜5質量部である。0.1質量部未満であると保存後の硬化安定化作用が十分に得られないおそれがあり、10質量部を超えると付加硬化性が悪くなる。ここで、脂肪酸あるいは脂肪酸誘導体及び/又はその金属塩の好ましい炭素数は8以上である。
脂肪酸の具体的な例としては、カプリル酸、ウンデシレン酸、ラウリル酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、マーガリン酸、ステアリン酸、アラギン酸、リグノセリン酸、セロチン酸、メリシン酸、ミリストレイン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸などが例示される。
脂肪族誘導体の例としては、脂肪酸エステル、脂肪族アルコールのエステルなどが挙げられる。脂肪族エステルとしては、上記脂肪酸等とC1〜C5の低級アルコールエステル、ソルビタンエステル、グリセリンエステル等の多価アルコールエステルが例示される。脂肪族アルコールのエステルとしては、カプリリルアルコール、カプリルアルコール、ラウリルアルコール、ミスチルアルコール、ステアリルアルコール等の飽和アルコールなどの脂肪酸アルコールのグルタル酸エステルやスペリン酸エステルのような2塩基酸エステル、クエン酸エステルのような3塩基酸エステルが例示される。
脂肪酸金属塩における脂肪酸の例としては、カプリル酸、ウンデシレン酸、ラウリル酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、マーガリン酸、ステアリン酸、アラギン酸、リグノセリン酸、セロチン酸、メリシン酸、ミリストレイン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸等が挙げられ、金属としては、例えば、リチウム、カルシウム、マグネシウム、亜鉛等が挙げられる。
上述のうち、安定化剤としてはステアリン酸及びその塩が最も好ましい。また、安定化剤は単独で添加しても、あらかじめヒドロシリル化反応触媒と混合しておいたものを添加してもよい。
本発明に使用するインク組成物には、必要に応じて上述のもの以外の各種の添加剤を更に添加することができる。特に、貯蔵安定性向上のために、ヒドロシリル化反応抑制剤を配合することができる。反応抑制剤としては、従来から公知のものを使用することができ、例えばアセチレン系化合物、アルケニル基を2個以上含有する化合物、アルキニル基を含有する化合物や、トリアリルイソシアヌレートやその変性品などが挙げられる。これらの中でも、アルケニル基又はアルキニル基を有する化合物の使用が望ましい。これらの反応抑制剤の添加量は、インク中の他成分の合計量100質量部に対して0.05〜0.5質量部の範囲であることが望ましい。インク中の他成分の合計量100質量部に対して0.05質量部よりも少なすぎるとヒドロシリル化反応の遅延効果が得られないおそれがあり、逆にインク中の他成分の合計量100質量部に対して0.5質量部よりも多すぎると硬化そのものが阻害されてしまうおそれがある。
本発明に用いるインク組成物を調製する方法としては、例えば上述の成分をプラネタリーミキサー、ニーダー、品川ミキサー等の混合機で混合する方法等が挙げられる。
本発明に用いるインク組成物が持つ粘度とチクソ係数は、本発明の導電性回路形成を行う際の重要な因子である。Thermo Scientific社製、HAAKE RotoVisco 1を使用したときの回転速度が10radian/sec.のときの25℃における組成物の粘度が10Pa・s以上200Pa・s以下、特に20〜100Pa・sであることが好ましい。このときの粘度が10Pa・s未満であると、ディスペンス等により塗布した際あるいは加熱硬化時に流れて形状が保持できない場合があり、また、このときの粘度が200Pa・sより高いと、ディスペンスの際にマスクのパターンに十分に追従できず、パターンの欠損を起こすおそれがある。
また、25℃における組成物の剪断速度0.5radian/sec.における粘度と25℃における組成物の剪断速度10radian/sec.における粘度との比((0.5radian/sec.)/(10radian/sec.))(以下、チクソ係数と示す)は、1.1以上、特に1.5〜5.0であることが好ましい。このチクソ係数が1.1未満であると、塗布した形状を安定させることが困難となる場合がある。
本発明の導電性回路形成方法に用いる導電性回路描画用インク組成物は、ヒドロシリル化反応に用いられる触媒を調製したさい、わずかに溶剤を含むことがあるが、全体の0.1質量%未満と極めてわずかである。
この導電性回路描画用インク組成物の、粘度とチクソ性を調整することによって、直径0.8mm、高さ0.4mmのドット形状の印刷パターンを形成後、80〜200℃で熱硬化させた場合には、硬化前後のドット形状の高さの変化量が5%以内となる物性が与えられる。なお、導電性回路描画用インク組成物の形状保持性能の比較は、このような印刷された形状と硬化後の形状の比較による形状変化の程度を比べることにより行うことができる。この場合に比較する形状は、ドット形状に限らず、ライン形状を用いて行うこともできるが、ドット形状がインクの形状保持性能に対して鋭敏に変化するため好ましく採用される。形状変化の値の測定は、種々の光学的手法で行うことが可能であるが、例えば、共焦点レーザー顕微鏡を用いて、硬化前の印刷されたパターン形状と、硬化後のパターン形状を測定し、基板に対するパターンの最高高さを比較することで行うことができる。なお、この検定に合格となるものは、実用上、印刷によるパターン形成から熱硬化までの引き起き時間を変化させてもパターン形状に大きな変化を示さず、また、不合格となるものは、硬化処理中に形状変化を起こすため、検定における印刷から硬化までの引き起き時間は任意に設定できる。
本発明の導電性回路形成方法に用いる印刷法としては、上述した導電性回路描画用インク組成物の適用量が高精度に制御可能な方法であればいずれの方法でもよく、好ましい印刷法として、ディスペンス印刷法やスクリーン印刷法を挙げられるが、特にスクリーン印刷法は高度な制御が可能であることから好ましい印刷法である。また、印刷に使用するマスク形状に合わせて本発明の組成物の粘度やチクソ性を調整することにより、数十μm〜数百μmレベルのパターンサイズに対応することができる。
本発明の導電性回路形成方法では、印刷により回路を描画した後、硬化工程を経ることによって導電性回路が完成する。描画時の形状をよく維持したまま導電性回路パターンを完成するためには、硬化条件として、100〜150℃で1〜120分の処理によって硬化させることが好ましい。また、ここでの硬化処理は、用いる基板に合わせ、ホットプレート、オーブン等の公知の加熱装置を用いて行うことができる。
このようにして得られた導電性回路の体積抵抗率は、1×10-1〜1×10-5Ω・cm、より好ましくは1×10-2〜1×10-5Ω・cm、更に好ましくは1×10-3〜1×10-5Ω・cmであることが回路形成を歩留まりよく作製する上で好ましい。
以下、実施例及び比較例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
[実施例1〜4、比較例1〜3]
[インク組成物の調製]
下記に示す成分を、表1に示す配合量で、プラスチック容器中、金属へらにより均一に混合後、減圧脱泡して実施例1〜4及び比較例1〜3のインク組成物を調製した。
粘度は、Thermo Scientific社製、HAAKE RotoVisco 1により回転速度が10radian/sec.のときの25℃における組成物の粘度である。
チクソ係数は、25℃における組成物の剪断速度0.5radian/sec.における粘度と25℃における組成物の剪断速度10radian/sec.における粘度との比((0.5radian/sec.)/(10radian/sec.))である。
また、平均粒径のデータはメーカー報告値である。
(A)一分子中にケイ素原子に直結したアルケニル基を2個以上有し、粘度600mPa・sであるオルガノポリシロキサン
(B−1)25℃における粘度が5mPa・sで水素ガス発生量が350ml/gであるオルガノハイドロジェンポリシロキサン
(B−2)下記式で示されるアルコキシ基含有化合物
Figure 2014063989

(D−1)三菱マテリアル(株)製、銀メッキアクリル樹脂、平均粒径25μm
(D−2)三菱マテリアル(株)製、銀メッキフェノール樹脂、平均粒径10μm
(D−3)ポッターズ・バロティーニ(株)製、シルバーガラスビーズS−5000−S3、平均粒径20μm
(D−4)福田金属箔粉工業(株)製、銀粉(AgC−237)をアセトンで洗浄、乾燥させたもの、平均粒径7.2μm
(E)電気化学工業(株)製、デンカブラックHS−100
(C−1)塩化白金酸から誘導した、テトラメチルビニルジシロキサンを配位子として有する白金触媒(白金原子量:1質量%)
(C−2)(C−1)とステアリン酸を質量比3/2で混合したもの
(F)ステアリン酸
(反応抑制剤)1−エチニル−1−シクロヘキサノール
[導電率の測定]
上記の調製されたインク組成物を、金型内に1mm厚さで塗布し、加熱炉中150℃で1時間オーブンキュアすることにより硬化した導電性シリコーンゴムシートを得た。
導電率の測定は、定電流電源としてKEITHLEY社製、237 High Voltage Source Measure Unit(定電流電源)とKEITHLEY社製、2000 Multimeter(電圧計)を用いて行った。
[形状保持性の測定]
形状保持性能については、直径0.8mm、高さ0.4mmのドット形状を用いて行った。まず、厚さ0.5mm、孔径0.75mmのポリテトラフルオロエチレン製パンチングシートを用いてアルミニウム基板上にインクパターンを形成した。形成されたインクパターンを共焦点レーザー顕微鏡((株)キーエンス製、VK−9700)で観察してドットパターンの直径と基板からの最高高さを測定した。次にパターンが形成されたアルミニウム基板を加熱炉中150℃で1時間オープンキュアし、ドットパターンを硬化させた。更に、再びレーザー顕微鏡を用いて硬化後のドットパターンの基板からの最高高さを測定した。硬化前のドットパターンの最高高さに対する硬化後のドットパターンの最高高さの比(%)を形状保持性として表1に示した。また、印刷精度はニューロング精密工業(株)製、LS−150型スクリーン印刷機により300μmφ、600μmピッチで高さ150μmのパターンを自動印刷で繰り返し印刷した際の1回目と5回目の形状を目視及び顕微鏡で比較して、差が認められないものを◎、若干の変形が認められるものを○、一部に抜けや掠れが認められるものを△、大部分に抜けや掠れが認められるものを×とした。また、印刷速度は、スキージの送引速度を調整した際、良好な印刷形状が得られる速度の目盛りを示した。
Figure 2014063989

Claims (10)

  1. 直径0.8mm、高さ0.4mmのドット形状の印刷パターンを形成後、80〜200℃で熱硬化させ、印刷された形状と硬化後の形状を比較した場合、ドット形状の高さの変化量が5%以内であり、溶剤を実質的に含有せず、付加型のシリコーンゴム形成用前駆体と硬化触媒の組み合わせと、密度2.75g/cm3以下の導電性粒子を含み、更に、カーボンブラック、亜鉛華、錫酸化物、錫−アンチモン系酸化物、SiCから選ばれるチクソ化剤を含有する導電性回路描画用インク組成物を用い、印刷法によって回路を形成することを特徴とする導電性回路形成方法。
  2. 前記シリコーンゴム形成用前駆体と硬化触媒の組み合わせは、少なくとも2個のケイ素原子に結合したアルケニル基を含有するオルガノポリシロキサンと少なくとも2個のケイ素原子に結合した水素原子を含有するオルガノハイドロジェンポリシロキサンとヒドロシリル化反応触媒の組み合わせであることを特徴とする請求項1に記載の導電性回路形成方法。
  3. 導電性回路描画用インク組成物が、
    (A)下記平均組成式(1)
    aR’bSiO(4-a-b)/2 (1)
    (式中、Rはアルケニル基、R’は脂肪族不飽和結合を持たない非置換又は置換の炭素数1〜10の一価炭化水素基、a、bは、0<a≦2、0<b<3、0<a+b≦3を満たす数である。)
    で示される少なくとも2個のアルケニル基を含有する25℃の粘度が100〜5,000mPa・sであるオルガノポリシロキサン:100質量部、
    (B)下記平均組成式(2)
    c3 dSiO(4-c-d)/2 (2)
    (式中、R3は独立に脂肪族不飽和結合を含有しない非置換又は置換の一価炭化水素基、又はアルコキシ基であり、c及びdは、0<c<2、0.8≦d≦2かつ0.8<c+d≦3となる数であり、また、一分子中のケイ素原子の数(又は重合度)は、2〜300個である。)
    で示される少なくとも2個のケイ素原子に結合した水素原子を含有するオルガノハイドロジェンポリシロキサン:(A)成分中の全ケイ素原子に結合したアルケニル基に対して(B)成分中のケイ素原子に結合した水素原子が0.5〜5.0倍モルとなる量、
    (C)ヒドロシリル化反応触媒として白金族金属系触媒:(A)、(B)成分の合計に対して質量換算で1〜500ppm、
    (D)導電性粒子として密度が2.75g/cm3以下である金属メッキした粒子:60〜300質量部、
    (E)カーボンブラック、亜鉛華、錫酸化物、錫−アンチモン系酸化物、SiCから選ばれるチクソ化剤:0.5〜30質量部、
    (F)脂肪酸、脂肪酸エステル、脂肪族アルコールのエステル、脂肪酸金属塩から選ばれる安定化剤:0.1〜10質量部
    を含有するものである請求項1に記載の導電性回路形成方法。
  4. (B)成分が、接着性付与剤としてエポキシ基及び/又はアルコキシシリル基を有するオルガノハイドロジェンポリシロキサンを(A)成分100質量部に対し0.5〜20質量部含有する請求項3に記載の導電性回路形成方法。
  5. エポキシ基及び/又はアルコキシシリル基を有するオルガノハイドロジェンポリシロキサンが、
    Figure 2014063989

    である請求項4に記載の導電性回路形成方法。
  6. 前記導電性回路描画用インク組成物は、密度が2.0g/cm3以下であることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載の導電性回路形成方法。
  7. 前記導電性粒子は、金メッキ粒子、銀メッキ粒子、銅メッキ粒子から選ばれる密度2.75g/cm3以下の粒子であることを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項に記載の導電性回路形成方法。
  8. 前記印刷法はスクリーン印刷である請求項1乃至7のいずれか1項に記載の導電性回路形成方法。
  9. 請求項1乃至8のいずれか1項に記載の導電性回路形成方法によって形成された導電性回路。
  10. 請求項1乃至8のいずれか1項に記載の導電性回路描画用インク組成物。
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