以下、図面を参照しながら本発明を実施するための形態を、複数の形態について説明する。各形態で先行する形態で説明している事項に対応している部分には同一の参照符を付し、重複する説明を略する場合がある。構成の一部のみを説明している場合、構成の他の部分は、先行して説明している形態と同様とする。また実施の各形態で具体的に説明している部分の組合せばかりではなく、特に組合せに支障が生じなければ、実施の形態同士を部分的に組合せることも可能である。
図1は、一対のニップローラ2,3が近接する状態(以下、「閉状態」と称する)の実施の第1の形態の編地引下げ装置1を示す正面図である。図2は、一対のニップローラ2,3が間隔をあけて離隔する状態(以下、「開状態」と称する)の編地引下げ装置1を示す正面図である。図3は、編地引下げ装置1の一端側4を示す平面断面図である。図4は、図1の切断面線S1−S1から見た編地引き下げ装置1を示す断面図である。図5は、図1の切断面線S2−S2で切断して見た編地引下げ装置1の断面図である。図6は、図3の切断面線S3−S3から見た編地引下げ装置1の断面図である。図7は、図3の切断面線S4−S4から見た編地引下げ装置1の断面図である。図3,4および5では、説明の便宜上、一部の構成は、各構成が支持および固着する軸の軸線を含む切断面線で切断して記載している。編地引き下げ装置1は、横編機5に設けられる。横編機5は、互いに間隔をあけて山状に配置される2つのニードルベッド6を備える。編地引下げ装置1は、2つのニードルベッド6の歯口部7の下方に配設され、歯口部7から垂れ下がる編地8を一対のニップローラ2,3によって把持して引下げ可能に構成される。以下では、水平方向をX方向(図1の紙面において、左右方向)、横編機5の長手方向をY方向(図1の紙面において、手前および奥行きに相当する方向)鉛直方向をZ方向(図1の紙面において、上下方向)と称する場合がある。一対のニップローラ2,3が互いに近接し編地8を把持して下方に引下げ可能な状態を閉状態と称する。一対のニップローラ2,3が互いに離隔して一対のニップローラ2,3間が開口し、編地8が通過可能な状態を開状態と称する。
編地引下げ装置1は、第1駆動軸11と、支持軸12と、第1アーム13と、第1ワンウェイクラッチ14と、第2アーム15と、一対のニップローラ2,3と、第1係止軸16と、第1引張コイルばね17と、第2駆動軸18と、第1プーリ19と、第2プーリ20と、第1ベルト21と、フレーム22と、係合制御部材23と、第2ワンウェイクラッチ24と、第2引張コイルばね25と、キックばね26と、係合部材27と、第3引張コイルばね28と、第3プーリ29と、第1歯車30と、第2歯車31と、第4プーリ32と、第2ベルト35と、第3アーム36と、第4アーム37と、第2係止軸38と、第4引張コイルばね39と、第5プーリ40と、第6プーリ41と第3ベルト42を備える。以下では、閉状態における編地引下げ装置1について説明する。
編地引下げ装置1の筐体には、第1駆動軸11および支持軸12が設けられる。第1駆動軸11および支持軸12は、軸線L1,L2がY方向に延びる円柱状の軸であり、編地引下げ装置1の筐体に回動可能に支持される。第1駆動軸11の軸線方向中間部、すなわちY方向中間部には、第1アーム13が設けられ、支持軸12のY方向一端部には、第2アーム15が設けられる。第1アーム13は、第1アーム本体43と、第1ブラケット44とを備える。第1アーム本体43には、第1ワンウェイクラッチ14(以下、単に「第1クラッチ14」と称する)を嵌合して装着可能な円筒状の装着部45が形成される。第1クラッチ14は、装着部45に嵌合させて装着され、第1駆動軸11のY方向中間部の外周面部に固着される。第1クラッチ14は、第1駆動軸11が軸線L1回り一方向A1に回転すると、その一方向A1の回転駆動力を第1アーム本体43に伝達する。一方向A1は、図1の紙面に向かって、時計回りに回る方向と同義である。第1クラッチ14は、第1駆動軸11が軸線L1回り他方向A2に回転すると、第1アーム13に対して滑り、その他方向A2の回転駆動力の第1アーム本体43への伝達を解除する。他方向A2は、図1の紙面に向かって、反時計回りに回る方向と同義である。
第1アーム本体43は、第1ニップローラ2を回動可能に支持する。第1ニップローラ2は、軸線L3がY方向に延びる円筒状のローラであり、一対のニップローラ2,3のうちの一方のローラである。第1ニップローラ2は、たとえば金属の引抜き材を加工して得られる部材である。第1ニップローラ2には、第1ニップローラ2を貫通し、第1ニップローラ2のY方向一端および他端からY方向に突出する第1ローラ軸46が形成される。第1ローラ軸46の軸線は、第1ニップローラ2の軸線L3と一致している。
第1アーム本体43には、第1ローラ軸46の軸線方向一端部、すなわちY方向一端部を嵌合して、回動可能に支持する円筒状の第1支持部47が形成される。第1アーム本体43は、装着部45と第1支持部47とを連結する第1連結部48を備える。第1連結部48は、板状に形成され、Y方向平面視でL字状に形成される。第1ブラケット44は、装着部45に連なって形成される。第1ブラケット44には、Y方向一方(以下、「Y1方向」と称する)に突出する、第1引掛軸49が形成される。第1引掛軸49は、引張コイルばねを係止するために設けられる。Y1方向は、図1において紙面に対して手前に向かう方向に相当する。
第2アーム15は、第2アーム本体50と、第2ブラケット51とを備える。第2アーム本体50は、支持軸12の軸線方向一端部、すなわちY方向一端部が嵌合されて固着される嵌合部52を備える。嵌合部52は、大略的には、円筒状に形成される。第2アーム15は、第2ニップローラ3を回動可能に支持する。第2ニップローラ3は、軸線L4がY方向に延びる円筒状のローラであり、一対のニップローラ2,3のうちの他方のローラである。第2ニップローラ3は、たとえば金属の引抜き材を加工して得られる部材でである。第2ニップローラ3には、第2ニップローラ3を貫通し、第2ニップローラ3のY方向一端および他端からY方向に突出する第2ローラ軸53が形成される。第2ローラ53の軸線は、第2ニップローラ3の軸線L4と一致している。一対のローラである一対のニップローラ2,3は、一対のニードルベッド6の歯口部7の下方に配設される。一対のニップローラ2,3は、これらの軸線がZ方向に垂直な仮想平面上にX方向に間隔をあけて並設される。一対のニップローラ2,3は、第1駆動軸11および支持軸12に対してY方向に離隔して設けられる。
第2アーム本体50には、第2ローラ軸53を嵌合して、回動可能に支持する円環状の第1補助支持部54と円筒状の第2支持部55とが形成される。第1補助支持部54は、第2ローラ軸53の軸線方向一端部、すなわちY方向一端部に設けられる。第2支持部55は、第1補助支持部54と第2ニップローラ3との間に設けられる。第1補助支持部54と第2支持部55とは、第2ローラ軸53にY方向に互いに離隔させて設けられる。第2アーム本体50は、嵌合部52と第2支持部55とを連結する第2連結部56を備える。第2連結部56は、長手状の板状部材であり、その長手方向一端に嵌合部52が連なり、長手方向他端に第2支持部55が連なる。第2連結部56には、その厚み方向一方、すなわちY1方向に立ち上がる第1立設部57が形成される。第1補助支持部54には、第1補助支持部54と第1立設部57を連結する第1補助連結部58が形成される。第1補助連結部58は、第2連結部56に対しての厚み方向、すなわちY1方向に間隔をあけて、第2連結部56の一部分に対向して並設される。第1補助連結部58は、大略的には、長手方向に延びる短冊状の板状部材に形成される。第2ブラケット51は、嵌合部52に連なって形成される。第2ブラケット51には、Y1方向に突出する、第2引掛軸59が形成される。
第2アーム15は、第1アーム13に対してY1方向に離隔して配設される。第2アーム15と第1アーム13とは、Y方向平面視で第1連結部48と第2連結部56とが互いに交差して配設され、第1連結部48および第2連結部56の一部分が互いに対向して配設される。第1連結部48と第2連結部56とが互いに対向する部分には、第1連結部48および第2連結部56を挿通して係止する第1係止軸16が設けられる。第1連結部48には、第1係止軸16を支持する第1軸受け部材60が設けられ、この第1軸受け部材60を嵌合して設けるための第1嵌合溝部61が形成される。第1係止軸16は、第2連結部56および第1軸受け部材60を挿通される。第1係止軸16は、第1連結部48の第1駆動軸11の軸線L1回りの揺動に連動させて、第2連結部56を揺動させるために設けられる。第1嵌合溝部61は、第1軸受け部材60を嵌合しつつ、この第1軸受け部材60の変位を許容可能に形成される。具体的には、第1嵌合溝部61は、第1連結部48および第2連結部56が連動して揺動する際の第1係止軸16の第1連結部48に対する相対変位にともなう第1軸受け部材60の相対変位を許容可能に形成される。第2連結部56は、第1連結部48の揺動に連動して、支持軸12の軸線L2回りに揺動可能に構成される。換言すると、第2アーム15は、第1アーム13の軸線L1回りの揺動に連動して、支持軸12の軸線L2回りに揺動可能に構成され、一対のニップローラ2,3を近接離隔可能に構成される。第2連結部56には、第1連結部48に当接して、閉状態から他方向A2への第1アーム13の揺動を規制する揺動規制部62が形成される。揺動規制部62は、第2連結部56からY方向他方(以下、「Y2方向」と称する)に突出して、第1連結部48に当接可能に形成される。第1アーム13の第1引掛軸49および第2アーム15の第2引掛部59は、第1引張コイルばね17の一端部および他端部がそれぞれ掛止される。第1引張コイルばね17は、X方向に平行に配設される。第1引張コイルばね17は、第1アーム13および第2アーム15にX方向に弾発力を付勢可能に配設される。
第2ローラ軸53には、第2支持部55と第1補助支持部54との間に第1プーリ19が配設される。第1プーリ19は、第2ローラ軸53が挿通され、第2ローラ軸53に固着される。編地引下げ装置1の筐体には、第2駆動軸18が設けられる。第2駆動軸18は、軸線がY方向に延びる円柱状の軸であり、編地引下げ装置1の筐体に回動可能に支持される。第2駆動軸18の軸線は、支持軸12の軸線L2に一致している。第2駆動軸18の軸線方向、すなわちY方向一端部には、第2プーリ20が設けられる。第2プーリ20は、第2駆動軸18が挿通され、第2駆動軸18に固着される。第1ベルト21は、第1プーリ19と第2プーリ20とにわたって張架され、第2プーリ20の回転駆動力を第1プーリ19に伝達可能に構成される。
編地引下げ装置1の筐体には、フレーム22が設けられる。フレーム22は、その一部に支持軸12が挿通され、支持軸12を回動可能に支持する。フレーム22には、引張コイルばねを掛止可能なY1方向に延びる円柱状のフレーム掛止軸67が形成される。
第1駆動軸11には、そのY方向中間部に係合制御部材23、キックばね26および係合部材27が設けられる。係合制御部材23、キックばね26および係合部材27は、第1アーム13よりY1方向側に設けられる。係合制御部材23は、係合制御部材本体63、係合制御部材突出部64および係合制御部材引掛部65を備える。係合制御部材本体63は、円筒状に形成され、第2ワンウェイクラッチ24(以下、単に「第2クラッチ24」と称する)を嵌合して装着可能に形成される。第2クラッチ24は、係合制御部材本体63に嵌合させて装着され、第1駆動軸11のY方向中間部の外周面部に固着される。第2クラッチ24は、第1駆動軸11が軸線L1回り一方向A1に回転すると、その一方向A1の回転駆動力を係合制御部材本体63に伝達する。第2クラッチ24は、第1駆動軸11が軸線L1回り他方向A2に回転すると、係合制御部材本体63に対して滑り、その他方向A2の回転駆動力の係合制御部材本体63への伝達を解除する。第2クラッチ24は、係合制御部材本体63よりY方向に長尺に形成される。第2クラッチ24は、係合制御部材本体63からY2方向に突出して装着される。
係合制御部材本体63には、引張コイルばねの一端部を掛止可能な係合制御部材引掛部65が、その外周面部の一部から外方に向かって形成される。係合制御部材引掛部65は、長手状に形成される板状部材である。係合制御部材引掛部65は、その長手方向一端が係合制御部材本体63の外周面部の一部に連なり、その長手方向他端側の部分66が鉤状に形成される。この鉤状の部分66には、第2引張コイルばね25の一端部が掛止される。第2引張コイルばね25の他端部は、フレーム22のフレーム掛止軸67に掛止される。この鉤状の部分およびフレーム掛止軸67は、第2引張コイルばね25の軸線がZ方向に平行に配設可能に形成される。第2引張コイルばね25は、係合制御部材23に第1駆動軸11の軸線L1回り他方向A2に回動させる弾発力を付勢可能に配設される。
係合制御部材本体63には、その外周面部であって、係合制御部材引掛部65が形成される部分と異なる一部から外方に向かって突出する板状の係合制御部材突出部64が形成される。編地引下げ装置1の筐体には、Y方向に突出する円柱状の回動規制部材68が設けられる。回動規制部材68は、係合制御部材突出部64に当接可能に設けられる。回動規制部材68は、係合制御部材突出部64に当接して、回動規制部材68が係合制御部材突出部64に当接する位置から第1駆動軸11の軸線L1回り他方向A2に揺動することを阻止可能に形成される。回動規制部材68は、係合制御部材23が第1駆動軸11の軸線L1回り他方向A2に揺動して係合制御部材引掛部65から第2引張コイルばね25が離脱することを防止するために設けられる。
キックばね26は、いわゆるねじりばねであり、その一端部69が軸線方向一方に突出し、その他端部70が軸線方向他方に突出して形成される。キックばね26は、第1アーム13と係合制御部材23との間に配設される。キックばね26は、その内周面部に第1クラッチ14を挿通させて第1駆動軸11のY方向中間部に配設される。キックばね26の軸線は、第1駆動軸11の軸線L1に一致している。キックばね26の一端部69は、係合制御材引掛部65に挿通させて係合制御部材23に固着されている。
保持手段である係合部材27は、板状の部材であり、係合部材本体71と、係合部材引掛部72と、係合部材突出部73とを備える。係合部材本体71には、第1駆動軸11を挿通して回動可能に支持する係合部材支持部71aと、第1立設部57の一部と係合可能な鉤状の係合部材鉤部71bと、係合部材支持部71aと係合部材鉤部71bとを連結する係合部材連結部71cとが形成される。係合部材本体71は、第1駆動軸11が係合部材支持部71aを挿通し、係合部材支持部71aがキックばね26と第1アーム13との間に配設される。係合部材本体71は、係合部材連結部71cの一部が第2連結部56と第1補助連結部58との間に配設され、Y方向平面視で第2アーム15と交差している。さらに係合部材本体71は、第2連結部56と第1補助連結部58の間から係合部材鉤部71bを突出させて配設される。第1立設部57には、突出方向A3に突出する被係合部74が形成される。突出方向A3は、係合部材鉤部71bが第2連結部56と第1補助連結部58との間から突出する方向と同義である。係合部材鉤部71bは、この被係合部74に係合可能に形成される。具体的には、係合部材鉤部71bは、閉状態で、被係合部74から離隔し、開状態で、被係合部74に係合可能に形成される。
係合部材支持部71aには、引張コイルばねの一端部を掛止可能な係合部材引掛部72が、その外周面部の一部から外方に向って形成される。係合部材引掛部72は、長手状に形成される板状部材である。係合部材引掛部72は、その長手方向一端が係合部材本体71の外周面部の一部に連なり、その長手方向他端側の部分75が鉤状に形成される。この鉤状の部分75には、第3引張コイルばね28の一端部が掛止される。第3引張コイルばね28の他端部は、フレーム22のフレーム掛止軸67に掛止される。第3引張コイルばね28は、係合部材27に第1駆動軸11の軸線L1回り他方向A2に回動させる弾発力を付勢可能に配設される。キックばね26は、その他端部70が係合部材引掛部72の周縁部から軸線L1回り他方向に角度θ1離隔させて配設される。角度θ1は、たとえば10度である。ただし角度θ1は、これに限定されず、キックばね26の他端部が係合部材引掛部72の周縁部に当接していてもよい。キックばね26は、その他端部から係合部材引掛部72の下端に第1駆動軸11の軸線L1回り一方向A1に回動させる弾発力を付勢可能に設けられる。
係合部材本体71には、その外周面部であって、係合部材引掛部72が形成される部分と異なる一部から外方に向かって突出する板状の係合部材突出部73が形成される。係合部材突出部73は、回動規制部材68に当接可能に設けられる。係合部材突出部73は、回動規制部材68に当接して、係合部材突出部73が回動規制部材68に当接する位置から第1駆動軸11の軸線L1回り他方向A2に揺動することを阻止可能に形成される。係合部材突出部73は、係合部材27が第1駆動軸11の軸線L1回り他方向A2に揺動して、係合部材引掛部72から第3引張コイルばね28が離脱することを防止するために設けられる。
第2駆動軸18には、そのY方向他端部に第3プーリ29が設けられる。第3プーリ29は、第2駆動軸18が挿通され、第2駆動軸18に固着される。第1駆動軸11には、そのY1方向側の端部であるY方向一端部に第1歯車30が配設される。第1歯車30は、第1駆動軸11が挿通され、第1駆動軸11に固着される。
編地引下げ装置1には、駆動モータ76が設けられる。駆動モータ76は、モータ軸77を備え、モータ軸77を回動可能に構成される。モータ軸77は、駆動モータ76の筐体からY方向に突出させて設けられる。モータ軸77の軸線L5は、Y方向に平行に設けられる。モータ軸77には、そのY方向一端部に第2歯車31が設けられる。第2歯車31は、モータ軸77が挿通され、モータ軸77に固着される。第2歯車31は、第1歯車30に常時噛合ってモータ軸77に配設される。モータ軸77には、さらに駆動モータ76と第2歯車31との間に第4プーリ32が設けられる。第4プーリ32は、モータ軸77が挿通され、モータ軸77に固着され、第2歯車31に固着される。第2ベルト35は、第4プーリ32と第3プーリ29とにわたって張架される。第2ベルト35は、第4プーリ32に伝達される回転駆動力を第3プーリ29に伝達可能に形成される。
編地引下げ装置1の筐体には、センサ78が設けられる。センサ78は、たとえば近接スイッチによって構成される。センサ78は、第2アーム15が近接すると、スイッチのオンおよびオフを切替え可能に構成される。センサ78は、第2アーム15が閉状態から角度θ1角変位すると、スイッチを切替え可能に構成される。
図8は、閉状態の編地引下げ装置1の背面図を示す図である。図9は、編地引下げ装置1の他端側9を側方から見た断面図である。支持軸12のY方向他端部寄りの部分には、第3アーム36が設けられる。第3アーム36は、第3アーム本体79と、第3ブラケット80とを備える。第3アーム本体79には、支持軸12が挿通され固着される円筒状の挿通部79aが形成される。第3アーム本体79には、第2ローラ軸53のY方向他端部を嵌合して、回動可能に支持する円筒状の第3支持部79bが形成される。第3アーム本体79は、挿通部79aと第3支持部79bとを連結する第3連結部79cを備える。第3連結部79cは、板状に形成され、Y方向平面視でL字状に形成される。第3ブラケット80は、挿通部79aに連なって形成される。第3ブラケット80には、Y2方向に突出する、第3引掛軸81が形成される。第3引掛軸81は、引張コイルばねを掛止するために設けられる。
第1駆動軸11のY方向他端部寄りの部分には、第4アーム37が設けられる。第4アーム37は、第4アーム本体82と、第4ブラケット83とを備える。第4アーム本体82は、第1駆動軸11を嵌合して、回動可能に支持する挿通支持部84を備える。挿通支持部84は、大略的には、円筒状に形成される。第4アーム本体82には、第1ローラ軸46を嵌合して、回動可能に支持する円環状の第2補助支持部85と円筒状の第4支持部86とが形成される。第2補助支持部85は、第1ローラ軸46のY方向他端部に設けられる。第4支持部86は、第2補助支持部85と第1ニップローラ2との間に設けられる。第2補助支持部85と第4支持部86とは、第1ローラ軸46にY方向に互いに離隔させて設けられる。第4アーム本体82は、挿通支持部84と第4支持部86とを連結する第4連結部87を備える。第4連結部87には、Y2方向に立ち上がる第2立設部88が形成される。第2補助支持部85には、第2補助支持部85と第2立設部88を連結する第2補助連結部89が形成される。第2補助連結部89は、第4連結部87に対しての厚み方向、すなわちY1方向に間隔をあけて、第4連結部87の一部分に対向して並設される。第2補助連結部89は、大略的には、長手方向に延びる短冊状の板部材である。第4ブラケット83は、挿通支持部84に連なって形成される。第4ブラケット83には、Y2方向に突出する、第4引掛軸90が形成される。
第4アーム37は、第3アーム36に対してY2方向に離隔して配設される。第3アーム36と第4アーム37とは、Y方向平面視で第3連結部79cと第4連結部87とが互いに交差して配設され、第3連結部79cおよび第4連結部87の一部分が互いに対向して配設される。第3連結部79cと第4連結部87とが互いに対向する部分には、第3連結部79cおよび第4連結部87を挿通して係止する第2係止軸38が設けられる。第3連結部79cには、第2係止軸38を支持する第2軸受け部材91が設けられ、この第2軸受け部材91を嵌合して設けるための第2嵌合溝部92が形成される。第2係止軸38は、第4連結部87および第2軸受け部材91を挿通される。第2係止軸38は、第1支持軸12の回動にともなう第3連結部79cの揺動に連動して、第4連結部87を揺動させるために設けられる。第2嵌合溝部92は、第2軸受け部材91を嵌合しつつ、この第2軸受け部材91の変位を許容可能に形成される。具体的には、第2嵌合溝部92は、第4連結部87が第3連結部79cに連動して揺動する際の第2係止軸38の第3連結部79cに対する相対変位にともなう第2軸受け部材91の相対変位を許容可能に形成される。第4連結部87は、第3連結部79cの揺動に連動して、第1駆動軸11の軸線L1回りに揺動可能に構成される。換言すると、第4アーム37は、第3アーム36の軸線L2回りの揺動に連動して、第1駆動軸11の軸線L1回りに揺動可能に構成され、一対のニップローラ2,3を近接離隔可能に構成される。第4連結部87には、第3連結部79cに当接して、閉状態から一方向A1への第3アーム36の揺動を規制する揺動規制部93が形成される。揺動規制部93は、第4連結部87からY2方向に突出して、第3連結部79cに当接可能に形成される。第3アーム36の第3引掛部軸81および第4アーム37の第4引掛軸90は、第4引張コイルばね39の一端部および他端部がそれぞれ掛止される。第4引張コイルばね39は、X方向に平行に配設される。第4引張コイルばね39は、協働して、第3アーム36および第4アーム37にX方向に弾発力を付勢可能に配設される。
第1ローラ軸46には、第4支持部86と第2補助支持部85との間に第5プーリ40が配設される。第5プーリ40は、第1ローラ軸46が挿通され固着される。第1駆動軸11には、そのY方向他端部に、第6プーリ41が設けられる。第6プーリ41は、第1駆動軸11が挿通され固着される。第3ベルト42は、第5プーリ40と第6プーリ41とにわたって張架され、第6プーリ41の回転駆動力を第5プーリ40に伝達可能に構成される。
支持手段95は、第1および第2アーム13,15に相当する。ロック手段96は、係合部材鉤部71bおよび被係合部74に相当する。駆動手段97は、駆動モータ76、第1クラッチ14および第2クラッチ24に相当する。
図10は、閉状態の編地引下げ装置1を簡略化して示す図である。図11は、一対のニップローラ2,3が最も離隔する状態の編地引下げ装置1を簡略化して示す図である。図12は、ロックされる状態の編地引下げ装置1を簡略化して示す図である。図13は、ロックが解除された状態の編地引下げ装置1を簡略化して示す図である。図10〜13では、説明の便宜上、構成部材を省略して要部だけを記載している。編地引下げ装置1の動作について説明する。以下では、回動および揺動の動作について、いずれの軸線回りに回動および揺動するかを省略して記載する場合がある。駆動モータ76によってモータ軸77を回動させると、第1歯車30および第2歯車31を介して、第1駆動軸11が回動し、第1〜第3プーリ19,20,29を介して、第2ニップローラ3が回動する。第1駆動軸11が回動すると、第5プーリ40および第6プーリ41を介して、第1ニップローラ2が回動する。
閉状態では、第1引張コイルばね17が第1および第2アーム13,15に対して弾発力を付勢し、一対のニップローラ2,3を互いに近接させ閉じさせる。これによって一対のニップローラ2,3は、これらに把持される編地に対して面圧力を付与する。係合制御部材23は、第2引張コイルばね25によって弾発力が付勢され、係合制御部材突出部64が回動規制部材68に当接している。係合部材27は、第3引張コイルばね28によって弾発力が付勢され、係合部材突出部73が回動規制部材68に当接している。キックばね26の他端部は、係合制御部材23および係合部材27が回動規制部材68に当接する状態(以下、「基準位置」と称する)で、係合部材引掛部72の周縁部に対して軸線L1回り他方向A2に角度θ1離隔している。駆動モータ76を駆動させて第1駆動軸11を他方向A2に回転させると、第1ニップローラ2が他方向A2に、第2ニップローラ3が一方向A1に回転し、近接する一対のニップローラ2,3が編地8を把持して下方に引下げることができる。
次に閉状態から係合部材27と被係合部74とが係合するロック状態に移る動作について説明する。閉状態から駆動モータ76を駆動させて第1駆動軸11を一方向A1に回転させると、第1クラッチ14によって第1アーム13に一方向A1の回転駆動力が伝達される。これによって第1アーム13は、第1ニップローラ2を第2ニップローラ3に対して離隔させる方向に揺動する。第2アーム15は、この第1アーム13の揺動に連動して、第2ニップローラ3を第1ニップローラ2に対して離隔させる方向に揺動する。このとき係合制御部材23は、第2クラッチ24から一方向A1の回転駆動力が伝達され、第2引張コイルばね25の弾発力に抗して一方向A1に揺動する。係合制御部材23が一方向A1に揺動すると、キックばね26は、係合部材27に一方向A1の弾発力を付勢し、係合部材27を第3引張コイルばね28の弾発力に抗して一方向A1に揺動させる。
このようにして駆動モータ76を駆動させて第1駆動軸11を一方向A1に角度θ2回転させると、第2アーム15を閉状態から角度θ2揺動変位し、係合部材23が基本位置から角度(θ2−θ1)だけ揺動して、係合部材鉤部71bの先端が被係合部74を越える。角度θ2は、たとえば20度である。ただしこの角度に限定されない。つまり図11に示すように、係合部材27は、係合部材27鉤状部と被係合部74とが対向しかつ間隙をあけて配置される。センサ78は、第2アーム15がこの位置に配置されることを検出してスイッチを切替え、駆動モータ76が逆回転する。駆動モータ76が逆回転し第1駆動軸11の他方向A2に回転すると、係合制御部材23は、第2引張コイルばね25によって付勢される弾発力によって、係合制御部材突出部64が回動規制部材68に当接する位置まで他方向A2に回転する。キックばね26は、係合制御部材23とともに、他方向A2に回転し、その他端部から係合部材引掛部72への弾発力の付勢が解除される。第1アーム13および第2アーム15は、第1駆動軸11の他方向A2の回転によって、一対のニップローラ2,3が互いに近接する方向に揺動変位する。係合部材27は、キックばね26の他端部からの一方向A1に付勢される弾発力が解除されるので、第3引張コイルばね28によって他方向A2に揺動する。この係合部材27が他方向A2に戻る際、係合部材27が他方向A2に角度θ3揺動すると、一方向A1に揺動する第2アーム15の被係合部74に係合部材鉤部71bが係合する。角度θ3は、たとえば3.5度である。ただしこの角度に限定されない。この係合によって、図12に示すように、第2アーム15が係合部材27によって機械的にロックされ、ロック状態になる。このように第2アーム15は、一方向A1に揺動しつつ係合部材27によって係合され、一方向A1の揺動が不可能に機械的にロックされる。第2アーム15を機械的にロックすることによって、開状態を維持することができる。
このロック状態で、駆動モータ76を駆動させて第1駆動軸11を他方向A2に回転させると、第1ニップローラ2が他方向A2に、第2ニップローラ3が一方向A1に回転する。第1駆動軸11の他方向A2の回転駆動力は、第1および第2クラッチ14,24によって第1アーム13および係合制御部材23に伝達されない。したがって第1駆動軸11の他方向A2の回転にともなって、第1アーム13および係合制御部材23が揺動変位することがなく、第1アーム13に連動する第2アーム15も揺動することない。これによってロック状態が維持され、編地引下げ装置1は、開状態で、第1ニップローラ2を他方向A2に、第2ニップローラ3が一方向A1に回転させることができる。このようにして閉状態からロック状態に切替えることができ、開状態を維持したうえで、第1ニップローラ2を他方向A2に、第2ニップローラ3が一方向A1に回転させることができる。
次にロック状態から係合を解除する、すなわちロックを解除する動作について説明する。ロック状態から駆動モータ76を駆動させて第1駆動軸11を一方向A1に回転させると、第1アーム13および係合制御部材23が一方向A1に揺動する。第2アーム15は、第1アーム13の一方向A1の揺動に連動して他方向A2に揺動する。第2アーム15が他方向A2に回転すると、図13に示すように、被係合部74は、係合部材鉤部71bから離脱する。これによって係合部材鉤部71bと被係合部74との係合が解除される。係合が解除されると、係合部材27は、キックばね26の他端が離反しているので、第3引張コイルばね28によって、係合部材引掛部72がキックばね26の他端に当接するまで、他方向A2に揺動する。これによって第2アーム15のロックが解除される。このようにロックを解除して、駆動モータ76を逆回転させる、すなわち第1駆動軸11を他方向A2に回転させると、第1引張コイルばね17によって、第1アーム13が軸線回り他方向A2に揺動し、第2アーム15が一方向A1に揺動する、つまり第1アーム13および第2アーム15が、一対のニップローラ2,3が互いに近接する方向にそれぞれ揺動する。これによってロック状態からロックを解除して、閉状態に切替えることができる。
以下では、このようにして構成される編地引下げ装置1が奏する効果について説明する。本実施の形態の編地引下げ装置1によれば、一対のニップローラ2,3は、近接および離隔する2つの位置に配置することができる。これによって一対のニップローラ2,3は、閉状態で、編地8を把持して回転し、編地8を引下げることができる。一対のニップローラ2,3は、開状態で、一対のニップローラ2,3間の間隔を広く確保することができる。換言すると、一対のニップローラ2,3間に歯口部7から垂れ下がる編地8を通す編地8の通路を広く確保することができる。これによって編み出しに反り返りを有する編地8などX方向に広がった編地8を、一対のニップローラ2,3間に通すことができる。編地引下げ装置1は、一対のニップローラ2,3を近接させて把持し回転させることによって、このようにして一対のニップローラ2,3間を通る編地8を引下げる。このように一対のニップローラ2,3が離隔可能であるので、一対のニップローラ2,3間を通すことができる編地8および引下げ可能な編地8が限定されない。したがって様々な編地8に対して利用が可能であり、従来の技術のものより汎用性が高い。
また第1ニップローラ2は、この2つの位置で他方向A2に回転させることができる。これによって一対のニップローラ2,3が開状態で第1ニップローラ2に編地8が当接しても、編地8は、第1ニップローラ2によって下方に案内される。したがって従来の技術のもののように、編地8が引上げられて、構成部品間に挟まり編地8を傷めることを防止できる。また開状態で、第1ニップローラ2を他方向A2に回転させて、第1ニップローラ2に当接する編地8を、一対のニップローラ2,3間に案内することができる。これによって歯口部7から垂れ下がる編地8を、第1ニップローラ2によって案内し、一対のニップローラ2,3を近接させると、この編地8を下方に引下げることができ、編み出しに反り返りを有する編地8を引下げることを円滑に行うことができる。編地8を把持して引下げ可能であるので、編目の大きさが不均一になることを抑制し、目移しによる編地8の乱れを防ぐことができる。
本実施の形態では、閉および開状態で、第2ニップローラ3が一方向A1に回転することができる。第2ニップローラ3は、閉状態で一方向A1に回転し、第1ニップローラ2と協働して編地8を引下げることができる。第2ニップローラ3が開状態で一方向A1に回転することができるので、開状態で第2ニップローラ3に編地8が当接しても、編地8は、第2ニップローラ3によって下方に案内される。したがって従来の技術のもののように、第2ニップローラ3によって編地8が引上げられて、構成部品間に挟まり編地8を傷めることを防止できる。また開状態で、第2ニップローラ3を一方向A1に回転させて、第2ニップローラ3に当接する編地8を、一対のニップローラ2,3間に案内することができる。したがって第2ニップローラ3が開状態で一方向A1に回転することによって、第1ニップローラ2と協働して、編地8の引上げを防止し、編地8の通路から外れることを防止することができる。
さらに1つの駆動モータ76によって、第1および第2アーム13,15の揺動および第1および第2ニップローラ2,3の回動が可能であるので、従来の技術のもののように駆動手段を複数設ける必要がない。したがって部品点数を少なくすることができ、編地引下げ装置1の構成を簡単にすることができるうえ、製造コストを削減することができる。1つの駆動モータ76によって実現できるので、従来の技術のものに比べて、装置を小形化することができ、駆動モータ76の数の低減にともなう故障箇所の低減を図ることができる。
本実施の形態の編地引下げ装置1によれば、第1駆動軸11を一方向A1に回動させた後に、第1駆動軸11から第1アーム13および係合制御部材23への他方向A2の回転駆動力の伝達を解除し、係合部材鉤部71bが被係合部74に係合し、第2アーム15を機械的にロックすることができる。このように一対のニップローラ2,3を駆動させる駆動モータ76以外の駆動手段を用いることなく、容易に第2アーム15を機械的にロックすることができる。したがって部品点数を従来の技術ものより少なくすることができ、装置の製造コストを低減することができる。また装置をコンパクト化することができる。
本実施の形態の編地引下げ装置1によれば、係合部材鉤部71bの先端が被係合部74を越えるまで係合部材27を一方向A1に揺動させてから他方向A2に揺動させて、第2アーム15をロックする。したがってロック状態で第1ニップローラ2を一方向A1に回転させると、第2アーム15が他方向A2に揺動することができる。また係合部材鉤部71bの先端は、被係合部74を越えている状態で、被係合部74に対して間隔があいている。それ故、第2アーム15を他方向A2に揺動させると、係合部材鉤部71bが被係合部74から離脱することができ、ロックの解除を実現することができる。このように簡単な構成で、ロックの解除を実現することができるので、従来の技術のものより部品点数を少なくすることができ、製造コストの低減および装置の小形化を実現することができる。
図14は、実施の第2の形態の編地引下げ装置1Aを簡略化して示す正面図である。編地引下げ装置1Aは、実施の第1の形態の編地引下げ装置1に類似しており、異なる点についてだけ説明し、同一の構成に付いては同一の符号を付して説明を省略する。第1アーム13には、第1補助アーム101と第1圧縮コイルばね102がさらに設けられ、第2アーム15には第2補助アーム103と第2圧縮コイルばね104が設けられる。第1補助アーム101は、長手状の部材であり、その長手方向一端が第1アーム13の長手方向中間部に揺動可能に係止されている。第1補助アーム101は、その長手方向他端に第1ローラ軸46が回動可能に支持されている。第1補助アーム101の長手方向中間部には、第1圧縮コイルばね102の一端部が掛止されている。第1圧縮コイルばね102は、その他端部が第1アーム13に掛止され、第1補助アーム101に対して一対のニップローラ2,3が近接離隔する方向、すなわちX方向に弾発力を付与可能に配設される。第2補助アーム103は、長手状の部材であり、その長手方向一端が第2アーム15の長手方向中間部に揺動可能に係止されている。第2補助アーム103は、その長手方向他端に第1プーリ19と第2ローラ軸53が回動可能に支持されている。第2補助アーム103の長手方向中間部には、第2圧縮コイルばね104の一端部が掛止されている。第2圧縮コイルばね104は、その他端部が第2アーム15に掛止され、第2補助アーム103に対して一対のニップローラ2,3が近接離隔する方向、すなわちX方向に弾発力を付与可能に配設される。被係合部74および係合部材27は、一対のニップローラ2,3が離隔する状態で、一対のニップローラ2,3が歯口部7から垂れ下がる編地8を把持可能な位置で第2アーム15をロック可能に配置される。以下では、このような状態を把持離隔状態と称する。被係合部74および係合部材27は、具体的には、第2アーム15が閉状態から角度θ4揺動した把持離隔状態でロック可能に配置される。角度θ4は、たとえば1度以上3度以下である。ただしこの角度に限定されない。この把持離隔状態で、一対のニップローラ2,3は、編地8を把持して回転して下方に引下げることができる。
このようにして構成される編地引下げ装置1Aは、第1補助アーム101および第2補助アーム102が第1および第2アーム13,15に対してそれぞれ揺動可能であるので、第1および第2ローラ軸46,53の第1および第2アーム13,15に対するX方向の変位が許容される。換言すると、一対のニップローラ2,3の第1および第2アーム13,15に対するX方向の変位が許容される。また第1および第2圧縮コイルばね102,104によって一対のニップローラ2,3に対して、一対のニップローラ2,3が近接する方向の弾発力が付与可能である。したがって一対のニップローラ2,3が編地8を把持すると、一対のニップローラ2,3は、把持している編地8に対して面圧力を付与する。また第2アーム15を開状態から角度θ3揺動させて第2アーム15をロックさせると、一対のニップローラ2,3間の間隔を広くすることができる。一対のニップローラ2,3間の間隔を広くすると、編地8に対して付与される面圧力が閉状態のときより小さくなる。したがって開状態および把持離隔状態を切替えることによって、編地8に付与される面圧力を調整できる。
本実施の形態の編地引下げ装置1Aによれば、一対のニップローラ2,3は、把持する編地8に面圧力を付与する。一対のニップローラ2,3は、編地8を把持可能な2つの異なる位置に配置することができる。このように2つの異なる位置を変えることによって、一対のローラの間隔を変えることができる。一対のローラの間隔を変えることによって、一対のローラのから編地8に付与する面圧力を変えることができる。これによって編地8を把持する一対のローラの位置を変えて、編地8に付与させる面圧力を調整することができる。これによって編地8の材質に合わせて面圧力を選択することができ、編地8を傷めることを抑制する。
本実施の形態では、一対のニップローラ2,3に付与される弾発力は、ばね部材によって実現されているけれども必ずしもこれに限定されない。第1および第2アーム13,15を板ばねなどの弾性部材によって形成することによって、一対のニップローラ2,3に弾発力を付与してもよい。また本実施の形態では、第2アーム15がロック可能な位置が1つしかないけれども、必ずしも1つに限定されない。たとえば、面圧力調整するため位置と、開状態を維持するための位置と2つの位置でロック可能な構成であってもよく、複数の位置でロック可能に構成してもよい。
また本実施の形態では、保持手段がロック手段96によって構成されているけれども、必ずしもこれに限定されない。電磁石を用いて第2アーム15をロックして、開状態で第2アーム15を保持してもよく、第2アーム15を開状態で保持可能な構成であればよい。さらに本実施の形態では、一対のニップローラ2,3がともに回動可能に構成されているけれども、何れか一方だけが回動可能な構成であってもよい。
また本実施の形態では、一対のニップローラ2,3が互いに離隔する状態で、第2アーム15をロックさせているけれども、必ずしもこれに限定されない。一対のニップローラ2,3が互いに近接する状態でロックして、一対のニップローラ2,3が互いに離隔する状態でロックが解除されていてもよい。第1および第2アーム13,15とを交差させることなく、互いに対向させて山型に配設する。第1引張コイルばね17は、一対のニップローラ2,3が離隔する方向に弾発力を付与可能に配設する。第1および第2クラッチ14,24を第2駆動軸18に設ける。ロック手段96は、閉状態で支持手段95をロック可能に構成される。これによって編地引下げ装置1は、駆動モータ76を駆動させて第2駆動軸18を一方向A1に回転させて、第1および第2アーム13,15を一対のニップローラ2,3が近接する方向に揺動変位させて、閉状態にすることができる。また編地引下げ装置1は、ロック手段96によって閉状態でロックすることができる。これによって、閉状態で支持手段95をロックして、ロックを解除することによって開状態または把持離隔状態にすることができる。
本実施の形態では、第1〜第4引張コイルばね17,25,28,39、第1圧縮コイルばね102および第2圧縮コイルばね104を用いて弾発力を付勢しているけれども、必ずしもこれに限定されない。たとえばエアシリンダであってもよく、弾発力を付勢可能なものであればよい。また本実施の形態では、第2アーム15が角度θ1揺動したか否かをセンサ78で検出しているけれども、必ずしもこれに限定されない。たとえば駆動モータ76の駆動量を、駆動モータ76を制御する制御部によって検出して、第2アーム15が角度θ1揺動したか否かを前記制御部によって検出させてもよい。