JP3603945B2 - 導電性シリコーンゴム組成物 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、体積抵抗率が低く、体積抵抗率の安定性に優れた硬化物を与える導電性シリコーンゴム組成物に関する。
【0002】
【従来の技術及び発明が解決しようとする課題】
従来、弾性体で低い抵抗率を得る方法として、電気伝導度の大きい銀粉末をポリマーに添加した付加反応硬化型シリコーンゴム組成物、縮合反応硬化型シリコーンゴム組成物、パーオキサイド加硫型シリコーンゴム組成物等のシリコーンゴム組成物が知られている。しかしながら、導電粉末として銀を用いた場合、銀粉末の凝集性が高く、シリコーンゴム中に均一分散しないこと、また環境安定性に乏しく、特に高温高湿雰囲気下では銀表面が酸化劣化する問題があった。
【0003】
本発明は、上記事情に鑑みなされたもので、体積抵抗率が低く、かつ安定なシリコーンゴムに硬化し得る導電性シリコーンゴム組成物を提供することを目的とする。
【0004】
【課題を解決するための手段及び発明の実施の形態】
本発明者らは、上記目的を達成するため鋭意検討を行った結果、下記平均組成式(1)で示されるオルガノポリシロキサン100部(重量部、以下同様)に、予めシリカ粒子からなる基材粒子の表面をメッキ処理することによって得られた表面が金属メッキ層で被覆されたシリカ粒子(導電化粒子)90〜800部を添加することにより、シリコーンゴム組成物に配合した場合の分散性が優れるため、安定した体積抵抗率を得ることができ、得られたシリコーンゴム組成物は、有機過酸化物又はオルガノハイドロジェンポリシロキサン/白金系触媒単独でも、また有機過酸化物とオルガノハイドロジェンポリシロキサン/白金系触媒の併用系でも硬化し得、その硬化物(シリコーンゴム)は、結果的に安定的な電気的に抵抗の低い(高導電性)部材となり、長期の使用に耐え得ることから、導電性接点部材、事務機用ロール部材、電磁波シールドガスケット材等に最適であることを知見し、本発明をなすに至った。
【0005】
従って、本発明は、
(A)下記平均組成式(1)
R1 nSiO(4-n)/2 …(1)
(式中、R1は同一又は異種の非置換又は置換1価炭化水素基であり、nは1.98〜2.02の正数である。)
で示され、脂肪族不飽和基を少なくとも2個有するオルガノポリシロキサン
100重量部、
(B)シリカからなる基材粒子の表面が、ニッケル層を介して金層が形成された構造を有する金属メッキ層で被覆されてなる導電化粒子 90〜800重量部、
(C)硬化剤 上記(A)成分を硬化させ得る量
を含有してなることを特徴とする導電性シリコーンゴム組成物を提供する。
【0006】
以下、本発明につき更に詳述すると、本発明に係るシリコーンゴム組成物の第1必須成分のオルガノポリシロキサンは、下記平均組成式(1)で示されるものである。
R1 nSiO(4−n)/2 …(1)
(式中、R1は同一又は異種の非置換又は置換1価炭化水素基であり、nは1.98〜2.02の正数である。)
【0007】
ここで、上記式中、R1はメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ヘキシル基、オクチル基等のアルキル基、シクロヘキシル基等のシクロアルキル基、ビニル基、アリル基、プロペニル基、ブテニル基、ヘキセニル基等のアルケニル基、フェニル基、トリル基等のアリール基、ベンジル基、フェニルエチル基等のアラルキル基などや、これらの基の炭素原子に結合した水素原子の一部又は全部をハロゲン原子、シアノ基などで置換したクロロメチル基、トリフルオロプロピル基、シアノエチル基などから選択される同一又は異種の好ましくは炭素数1〜10、より好ましくは炭素数1〜8の非置換又は置換1価炭化水素基である。特に好ましくはメチル基、ビニル基、フェニル基、トリフルオロプロピル基である。この場合、R1は脂肪族不飽和基(アルケニル基)を少なくとも2個有していることが必要であるが、R1中の脂肪族不飽和基の含有量は0.001〜20モル%、特に0.025〜5モル%であることが好ましい。また、nは1.98〜2.02の正数である。上記式(1)のオルガノポリシロキサンは、基本的には直鎖状であることが好ましいが、分子構造の異なる1種又は2種以上の混合物であってもよい。
【0008】
更に、上記オルガノポリシロキサンは、平均重合度が100〜20,000、特に3,000〜10,000であることが好ましい。
【0009】
次に、第2必須成分[(B)成分]は、基材粒子の表面が金属メッキ層で被覆された導電化粒子であり、これは基材粒子として無機粒子(無機質充填剤)を使用し、その表面を金属メッキすることにより得られる。
【0010】
ここで、無機質充填剤としては、シリカが挙げられ、特に球状シリカが好ましい。
【0011】
上記基材粒子(シリカ)の平均粒径は適宜選択されるが、0.01〜1,000μm、特に0.01〜10μmとすることが好ましい。平均粒径が小さすぎると、比表面積が高くなるため、メッキ金属量が多くなり、高価になる場合があり、平均粒径が大きすぎると、シリコーンゴム組成物に対する配合性が低下する。
【0012】
上記基材粒子(シリカ)にメッキする金属としては、上記基材粒子(シリカ)上にニッケル層を介して金属が形成された構造を有するものである。更に、金属メッキ層と基材粒子との密着性を向上させるために、基材粒子とニッケルの間にケイ素系化合物を挿入した基材粒子−ケイ素系化合物−ニッケル−金の4層構造を有するものが特に好ましい。ケイ素系化合物としては、アミノプロピルトリエトキシシラン、アミノプロピルトリメトキシシランのような接着性を有するシランカップリング剤や還元性を有するケイ素系高分子が挙げられる。
【0013】
上記基材粒子に金属をメッキする方法は特に限定されず、湿式メッキ法によっても気相メッキ法によってもよく、また湿式メッキ法の場合、公知の無電解又は電気メッキ液組成のものを用いて公知の前処理法、メッキ法にてメッキを行うことができるが、特に下記工程(1)〜(4)により製造する方法を採用することができる。なお、下記の製造法の説明においては、基材粒子としてシリカを用いて金属メッキシリカを製造する場合について説明する。
(1)シリカ粉体をケイ素系化合物、好ましくは還元性を有するケイ素系化合物で処理し、シリカの表面に該ケイ素系化合物の層を形成する第1工程。
(2)第1工程で得られた粉体を標準酸化還元電位0.54V以上の金属からなる金属塩を含む溶液で処理し、上記シリカ表面のケイ素系化合物層上に該金属コロイドを析出させる第2工程。
(3)上記金属コロイドを触媒として無電解ニッケルメッキを行い、上記ケイ素系化合物層表面に金属ニッケル層を形成する第3工程。
(4)更に金メッキを行い、上記金属ニッケル層上に金層を形成する第4工程。
【0014】
金属メッキシリカにおいては、原料シリカは、二酸化ケイ素で構成される粉体で、高い耐熱性を持っている。形状は、粉末状、繊維状、フレーク状等、特に制限されないが、メッキする金属(ニッケル、金)の使用量を最少にし、シリコーンゴム等に高充填するためには、同一粒径では最も比表面積の低くなる球状が望ましい。このようなシリカは、クロルシランを燃焼させたり、アルコキシシランを加水分解したり、ガス化した金属ケイ素を酸化したり、石英粉末を溶融したりして容易に得ることができる。比表面積を低くするためには、内部に表面に繋がる空洞をもたないものが望ましく、溶融石英が好適に用いられる。
【0015】
本発明に係る金属メッキシリカを製造する場合、上記シリカ粉体を還元性を有するケイ素系化合物で処理し、シリカ表面に該ケイ素系化合物の層を形成することが好ましい。
【0016】
ここで、還元作用を持つケイ素系化合物としては、上記シランカップリング剤のほか、Si−Si結合あるいはSi−H結合を有するポリシラン、ポリカルボシラン、ポリシロキサン、ポリシラザンを使用することができ、中でもポリシランあるいはケイ素原子に直接結合した水素原子を有するポリシロキサンが好適に用いられる。
【0017】
このうち、ポリシランとしては、主鎖にSi−Si結合を持つ下記一般式(2)で表される高分子化合物が挙げられる。
(R2 mR3 kXpSi)q …(2)
【0018】
上記式(2)中、R2,R3はそれぞれ水素原子、置換もしくは非置換の1価炭化水素基であり、R2とR3とは互いに同一であっても異なっていてもよいが、上記1価炭化水素基としては、脂肪族、脂環式又は芳香族1価炭化水素基が用いられる。脂肪族又は脂環式1価炭化水素基としては、炭素数1〜12、特に1〜6のものが好ましく、例えばメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基等のアルキル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等のシクロアルキル基などが挙げられる。また、芳香族1価炭化水素基としては、炭素数6〜14、特に6〜10のものが好適であり、例えばフェニル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基、ベンジル基等が挙げられる。なお、置換1価炭化水素基としては、上記に例示した非置換の1価炭化水素基の水素原子の一部又は全部をハロゲン原子、アルコキシ基、アミノ基、アミノアルキル基などで置換したもの、例えばモノフルオロメチル基、トリフルオロメチル基、m−ジメチルアミノフェニル基等が挙げられる。
【0019】
Xは、R2と同様の基、アルコキシ基、ハロゲン原子、酸素原子又は窒素原子であり、アルコキシ基としては、例えばメトキシ基、エトキシ基、イソプロポキシ基等の好ましくは炭素数1〜4のもの、ハロゲン原子としてはフッ素原子、塩素原子、臭素原子等が挙げられる。Xとしては、これらの中でも通常メトキシ基、エトキシ基が好適に用いられる。
【0020】
mは0.1≦m≦1、好ましくは0.5≦m≦1、kは0.1≦k≦1、好ましくは0.5≦k≦1、pは0≦p≦0.5、好ましくは0≦p≦0.2であり、かつ1≦m+k+p≦2.5、好ましくは1.5≦m+k+p≦2を満足する数であり、qは2≦q≦100,000、好ましくは10≦q≦10,000の範囲の整数である。
【0021】
また、ケイ素原子に直接結合した水素原子(Si−H基)を有するケイ素系化合物は、ケイ素原子に直接結合した水素原子を有するオルガノハイドロジェンポリシロキサンであれば特に制限されないが、側鎖にSi−H基、主鎖にSi−O−Si結合を持つ下記一般式(3)で表されるポリシロキサンが好適に用いられる。
(R4 aR5 bHcSiOd)e …(3)
【0022】
上記式中、R4,R5はそれぞれ水素原子、置換もしくは非置換の1価炭化水素基、アルコキシ基又はハロゲン原子であり、R4とR5とは互いに同一であっても異なっていてもよいが、上記1価炭化水素基としては、脂肪族、脂環式又は芳香族1価炭化水素基が用いられる。脂肪族又は脂環式1価炭化水素基としては、炭素数1〜12、特に1〜6のものが好ましく、例えばメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基等のアルキル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等のシクロアルキル基等が挙げられる。芳香族1価炭化水素基としては、炭素数6〜14、特に6〜10のものが好適であり、例えばフェニル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基、ベンジル基等が挙げられる。なお、置換の脂肪族、脂環式又は芳香族の1価炭化水素基としては、上記に例示した非置換の1価炭化水素基の水素原子の一部又は全部をハロゲン原子、アルコキシ基、アミノ基、アミノアルキル基などで置換したもの、例えばモノフルオロメチル基、トリフルオロメチル基、m−ジメチルアミノフェニル基等が挙げられる。アルコキシ基としては、例えばメトキシ基、エトキシ基、イソプロポキシ基等の炭素数1〜4のものが好適であり、ハロゲン原子としては、例えばフッ素原子、塩素原子、臭素原子等が挙げられ、通常メトキシ基、エトキシ基が好適に用いられる。
【0023】
aは0.1≦a≦1、好ましくは0.5≦a≦1、bは0.1≦b≦1、好ましくは0.5≦b≦1、cは0.01≦c≦1、好ましくは0.1≦c≦1であり、かつ1≦a+b+c≦2.5、好ましくは1≦a+b+c≦2.2を満足する数である。dは1≦d≦1.5である。eは2≦e≦100,000、好ましくは10≦e≦10,000の範囲の整数である。
【0024】
シリカ表面にケイ素系化合物の層を形成する工程(第1工程)は、具体的には、ケイ素系化合物を有機溶剤に溶解させ、この中にシリカ粉体を投入混合した後に有機溶剤を除くことで、シリカの表面にケイ素系化合物の層を形成することによって行うことができる。
【0025】
この工程において、ケイ素系化合物を溶解させる有機溶剤としては、例えばベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族系炭化水素溶剤、ヘキサン、オクタン、シクロヘキサン等の脂肪族系炭化水素溶剤、テトラヒドロフラン、ジブチルエーテルなどのエーテル系溶剤、酢酸エチル等のエステル類、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、ヘキサメチルホスホリックトリアミド等の非プロトン性極性溶媒や、ニトロメタン、アセトニトリル等が好適に用いられる。
【0026】
ケイ素系化合物含有溶液の濃度は、0.01〜50%(重量%、以下同様)、好ましくは0.01〜30%、より好ましくは1〜20%が好適であり、濃度が0.01%未満では大量の溶剤を使用することになるのでコストが上昇し、50%を超えるような濃度ではケイ素系化合物を粉体表面全面に十分形成できない場合がある。
【0027】
粉体を有機溶剤に溶解したケイ素系化合物で処理する方法としては、ケイ素系化合物を溶剤に溶解させて希釈した状態で粉体と混合し、このスラリーを容器内で撹拌羽根を回転させ分散接触させる撹拌式、気流中にこのスラリーを分散させ瞬時に乾燥させる噴霧式などが好適に採用できる。
【0028】
上記処理工程では、温度を上げたり減圧にすることにより、有機溶媒を留去するが、通常は溶媒の沸点以上の温度、具体的には1〜100mmHgという減圧下で40〜200℃程度の温度で撹拌しながら乾燥することが効果的である。
【0029】
処理後は、しばらく乾燥雰囲気下、あるいは減圧下で40〜200℃程度の温度で静置することで、溶剤が効果的に留去して処理粉体が乾燥し、ケイ素系化合物処理粉体を製造できる。
【0030】
ケイ素系化合物層の厚さは、好ましくは0.001〜1μm、特に好ましくは0.01〜0.1μmである。0.001μmより薄いと、シリカを完全に覆うことができなくなるため、メッキが起こらない部分ができるおそれがある。また、厚すぎると、ケイ素系化合物の量が多くなって高価となる場合がある。
【0031】
なお、上記シリカ粉体は、ケイ素系化合物処理により疎水性となる。このため、金属塩を溶解させる溶媒との親和性が低下し、液中に分散しないため、金属塩還元反応の効率が低下することがある。このことによって起こる金属塩還元反応の効率の低下は、界面活性剤を添加して向上させることができる。界面活性剤としては、発泡を起こさず表面張力のみを下げるものが望ましく、サーフィノール104,420,504(日信化学工業(株)製)等の非イオン界面活性剤を好適に用いることができる。
【0032】
次に、第2工程は、上記第1工程で得られたシリカ表面にケイ素系化合物層が形成された粉体を標準酸化還元電位0.54V以上の金属からなる金属塩を含む溶液で処理し、ケイ素系化合物層上に該金属コロイドを析出させる工程である。これは、ケイ素系化合物処理粉体の表面を金属塩を含む溶液と接触させるもので、この処理では、ケイ素系化合物の還元作用により、金属コロイドがケイ素系化合物の被膜表面に形成され、金属被膜が形成されるものである。
【0033】
ここで、標準酸化還元電位0.54V以上の金属の塩として、より具体的には、金(標準酸化還元電位1.50V)、パラジウム(標準酸化還元電位0.99V)、銀(標準酸化還元電位0.80V)等の塩が好適に用いられる。なお、標準酸化還元電位が0.54Vより低い銅(標準酸化還元電位0.34V)、ニッケル(標準酸化還元電位0.25V)等の塩では、ケイ素系化合物で還元し難い。
【0034】
金塩としては、Au+又はAu3+を含んでなるもので、具体的には、NaAuCl4、NaAu(CN)2、NaAu(CN)4等が例示される。パラジウム塩としては、Pd2+を含んでなるもので、通常Pd−Z2の形で表すことができる。Zは、Cl、Br、I等のハロゲン、アセテート、トリフルオロアセテート、アセチルアセトネート、カーボネート、パークロレート、ナイトレート、スルフェート、オキサイド等の塩である。具体的には、PdCl2、PdBr2、PdI2、Pd(OCOCH3)2、Pd(OCOCF3)2、PdSO4、Pd(NO3)2、PdO等が例示される。銀塩としては、溶剤に溶解し、Ag+を生成させ得るもので、通常Ag−Z(Zはパークロレート、ボレート、ホスフェート、スルフォネート等の塩とすることができる)の形で表すことができる。具体的には、AgBF4、AgClO4、AgPF6、AgBPh4、Ag(CF3SO3)、AgNO3等が例示される。
【0035】
ここで、金属塩を溶解させる溶媒としては、水や、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類、メタノール、エタノール等のアルコール類、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、ヘキサメチルホスホリックトリアミド等の非プロトン性極性溶媒などが挙げられ、中でも水が好適に用いられる。
【0036】
金属塩の濃度は、塩を溶解させる溶媒によって異なるが、0.01%〜塩の飽和溶液までが好ましい。濃度が0.01%未満では、メッキ触媒の効果が十分でない場合があり、飽和溶液を超えると、固体塩の析出がある場合がある。なお、溶媒が水の場合は、金属塩の濃度が0.01〜20%、特に0.1〜5%の範囲であることが好ましい。上記ケイ素系化合物処理粉体を室温〜70℃の温度で0.1〜120分、より好ましくは1〜15分程度、金属塩溶液に浸漬すればよい。これにより、金属コロイド処理粉体が製造できる。
【0037】
なお、この第2工程は、まずケイ素系化合物処理粉体を、水で希釈した界面活性剤と接触させ、次いで上記金属塩を含む溶液と接触させることが好ましく、これによりシリカ表面が第1工程のケイ素系化合物処理により疎水性となることで、金属塩を溶解させる溶媒との親和性が低下し、液中に分散し難くなって金属塩還元反応の効率が低下するのを防止することができ、ケイ素系化合物処理粉体を金属塩を含む溶液に短時間で簡単に分散させることができる。
【0038】
ここで、界面活性剤としては、陰イオン界面活性剤、陽イオン界面活性剤、両イオン界面活性剤、非イオン界面活性剤を用いることができる。
【0039】
陰イオン界面活性剤としては、スルホン酸塩系、硫酸エステル塩系、カルボン酸塩系、リン酸エステル塩系を用いることができる。また、陽イオン界面活性剤としては、アンモニウム塩系、アルキルアミン塩系、ピリジニウム塩系を用いることができる。両イオン界面活性剤としては、ベタイン系、アミノカルボン酸系、アミンオキシド系、非イオン界面活性剤としては、エーテル系、エステル系、シリコーン系を用いることができる。
【0040】
より具体的に陰イオン界面活性剤としては、アルキルベンゼンスルホン酸塩、スルフォコハク酸エステル、ポリオキシエチレン硫酸アルキル塩、アルキルリン酸エステル、長鎖脂肪酸セッケン等を用いることができる。また、陽イオン界面活性剤としては、塩化アルキルトリメチルアンモニウム塩、塩化ジアルキルジメチルアンモニウム塩、塩化アルキルピリジニウム塩等を用いることができる。両イオン界面活性剤としては、ベタイン系スルホン酸塩、ベタイン系アミノカルボン酸アミン塩を用いることができる。非イオン界面活性剤としては、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ポリオキシアルキレン変性ポリシロキサン等を用いることができる。また、市販されているこのような界面活性剤を混合した水溶液、例えば商品名ママレモン(ライオン(株)製)などを利用することもできる。
【0041】
なお、必要によっては、上記したような界面活性剤を金属塩溶液100部に対して0.0001〜10部、特に0.001〜1部、とりわけ0.01〜0.5部の範囲で使用することができる。
【0042】
また、上記金属塩処理後は、金属塩を含まない上記と同様の溶剤で処理し、粉体に担持されなかった不要な金属塩を除き、最後にこの粉体から不要な溶媒を乾燥除去することができる。乾燥は、通常0〜150℃で常圧又は減圧下で行うのが好ましい。
【0043】
第3工程は、表面に上記金属コロイドが付着された粉体にこの金属コロイドを触媒として無電解ニッケルメッキを行い、上記ケイ素系化合物層表面に金属ニッケル層を形成する工程である。
【0044】
この無電解ニッケルメッキ液は、通常、硫酸ニッケル、塩化ニッケル等の水溶性ニッケル金属塩、次亜リン酸ナトリウム、ヒドラジン、水素化ホウ素ナトリウム等の還元剤、酢酸ナトリウム、フェニレンジアミンや酒石酸ナトリウムカリウムのような錯化剤などを含み、市販品を用いることができる。
【0045】
無電解ニッケルメッキ法としては、常法に従い、無電解メッキ液中に粉体を投入してメッキを行うバッチ法か、水に分散させた粉体にメッキ液を滴下する滴下法を採用し得る(工業技術28(8)42,1987)。いずれの方法でも、メッキ速度をコントロールすることで、凝集を防ぎ密着性のよい均一な被膜を得ようとすることに変わりはないが、しかし、こうしたニッケル被覆シリカを得ることが困難な場合がある。これは、比表面積の高い粉体は、本来、メッキ反応が非常に活発になり、急激に始まりコントロールできなくなる一方、メッキの開始が雰囲気の酸素の影響を受けてしばしば遅れるためニッケルメッキに時間がかかり、均一にメッキされた粉体が得にくいからである。
【0046】
このため、シリカのニッケルメッキを以下の方法で行うことが好ましい。即ち、ニッケルメッキ液を還元剤、pH調整剤、錯化剤などを含有した水溶液とニッケル塩水溶液に分離する。シリカは、還元剤、pH調整剤、錯化剤などを含有した水溶液に分散し、ニッケルメッキの最適な温度に保温しておく。これにニッケル塩水溶液を気体と同伴させて、シリカの分散した還元剤含有水溶液に加えることが、凝集のないニッケル被覆シリカを得るために非常に効果的であることを見出したものである。ニッケル塩水溶液は、気体により還元剤、pH調整剤、錯化剤などを含有した水溶液中で速やかに均一に分散され、粉体表面はニッケルメッキ化される。
【0047】
気体の導入は、しばしば発泡によるメッキの効率の低下をもたらすが、これは、消泡性界面活性剤を添加して防止することができる。界面活性剤としては、消泡作用をもち、表面張力を下げるものが望ましく、KS−538(信越化学工業(株)製)等のポリエーテル変性シリコーン系界面活性剤を好適に用いることができる。
【0048】
無電解ニッケルメッキにおいては、メッキ液中の酸素濃度がニッケルの析出に影響を及ぼす。溶存酸素の量が多いと、メッキ触媒の核となるコロイド状パラジウムがパラジウムカチオンに酸化され、液中に溶出したり、一度析出したニッケル表面が酸化されたりして、ニッケルの析出が抑制される。逆に、溶存酸素の量が少ないと、メッキ液の安定性が低下し、シリカ以外の場所にもニッケルの析出が起こりやすくなり、微細なニッケル粉の生成やこぶ状の析出物の生成が起こる。このため、メッキ液中の溶存酸素の量を1〜20ppmの間に管理することが好ましい。20ppmを超えると、メッキ速度の低下と未メッキ部の発生が認められるおそれがあり、1ppmより少ないと、こぶ状析出物の発生が認められる場合がある。
【0049】
このために、気体は、空気のような含酸素気体とアルゴンや窒素のような不活性気体を混合して用いるのがよい。粉体のメッキにおいては、しばしばメッキの開始が遅いが、一度メッキが開始されれば反応が暴走するという現象を起こすことがあるので、これを防止するために、例えば窒素を最初に用い、ニッケルメッキ反応が開始するのを確認後、空気に切り替えるということを行うことも効果的である。メッキ温度は35〜120℃、接触時間は1分〜16時間が好適に用いられる。より望ましくは40〜85℃で10〜60分で処理される。
【0050】
第4工程は、上記無電解ニッケルメッキ後、金メッキを行って、上記ニッケル層上に金メッキ層を形成する工程である。
【0051】
この場合、金メッキ液としては、電気メッキ液でも無電解メッキ液でもよく、公知の組成のものあるいは市販品を用いることができるが、無電解金メッキ液が好ましい。金メッキ方法としては、上述した常法に従って行うことができる。このとき、ニッケルの酸化されて不動態化した表面を希酸で除き、金メッキを行うことは効果的である。メッキ温度、接触時間は、ニッケルメッキの場合と同じである。
また、メッキの最後に、不要な界面活性剤を除くため、水洗を行うとよい。
【0052】
こうして得られたシリカは、シリカ−ケイ素系化合物−ニッケル−金という4層構造を持つ金属メッキシリカとなる。
【0053】
ニッケル層の厚さは、好ましくは0.01〜10μm、特に好ましくは0.1〜2μmである。0.01μmより薄いと、シリカを完全に覆い、かつ十分な硬度や強度が得られにくくなる場合がある。また、10μmより厚いと、ニッケルの量が多くなり、かつ比重が高くなるため、配合時に高価となる。
【0054】
金層の厚さは、好ましくは0.001〜1μm、特に好ましくは0.01〜0.1μmである。0.001μm未満では、抵抗率が高くなるため、配合時に十分な導電性が得られにくくなるおそれがあり、また、1μmを超えると、金の量が多くなって高価となる。
【0055】
最後に、この金属メッキシリカを還元性気体存在下に200℃以上の温度で熱処理することが望ましい。処理条件は、通常200〜900℃、処理時間は1分〜24時間が好適に用いられる。より望ましくは250〜500℃で処理時間は30分〜4時間行うのがよい。これにより、粉体と金属間にあるケイ素系化合物はセラミックに変化し、より高い耐熱性と絶縁性と密着性を持つことになる。このときの雰囲気を水素のような還元系で行うことにより、金属中の酸化物を減少させ、ケイ素系化合物を安定な構造に変えることで、シリカと金属が強固に結合し、高い導電性を示す粉体を得ることができる。
【0056】
なお、このように水素還元系雰囲気で熱処理すると、ケイ素系化合物は主として炭化ケイ素のセラミックとなる。
【0057】
即ち、上記高温処理により、粉体と金属間にあるケイ素系化合物が部分的又は全部がセラミックに変化し、より高い耐熱性と絶縁性と密着性を持つことになる。
【0058】
(B)成分の導電化粒子の抵抗値は100mΩ・cm(100×10−3Ω・cm)以下、より好ましくは10mΩ・cm以下、更に好ましくは5mΩ・cm以下であることが望ましい。
【0059】
本発明の(B)成分の組成物全体に占める体積分率は25〜75%(体積%)の範囲が好ましく、特に30〜60%が好ましい。体積分率が25%未満では導電性が不十分となることがあり、75%を超えると加工性が悪くなることがある。
【0060】
なお、以上のようにして得られる導電化粒子の比表面積は1m2/g以下が好ましい。比表面積が1m2/gを超えると、シリコーンゴム組成物に添加する際の分散性が低下するおそれがある。
【0061】
本発明の導電化粒子の配合量は、上記オルガノポリシロキサン100部に対し90〜800部であり、特に100〜500部が好ましい。配合量が少ないと十分な導電性を付与し得ないことがあり、多すぎると加工性に問題が生じる場合がある。
【0062】
本発明において、第3必須成分の硬化剤としては、既知のオルガノハイドロジェンポリシロキサン/白金系触媒(付加反応用硬化剤)又は有機過酸化物触媒を使用し得る。
【0063】
白金系触媒としては公知のものが使用でき、具体的には白金元素単体、白金化合物、白金複合体、塩化白金酸、塩化白金酸のアルコール化合物、アルデヒド化合物、エーテル化合物、各種オレフィン類とのコンプレックスなどが例示される。白金系触媒の添加量は、第1成分のオルガノポリシロキサンに対し白金原子として1〜2,000ppmの範囲とすることが望ましい。
【0064】
一方、オルガノハイドロジェンポリシロキサンは、ケイ素原子に直結した水素原子を少なくとも2個以上有するものであれば特に制限されず、直鎖状、分岐鎖状、環状のいずれであってもよいが、R6 fHgSiO(4−f−g)/2(R6はR1と同様の非置換又は置換1価炭化水素基で、好ましくは脂肪族不飽和結合を有さないものである。f,gは、0≦f<3、0<g<3、0<f+g<3の数である。)で表されるものが好ましく、特に重合度が300以下のものが好ましい。具体的には、ジメチルハイドロジェンシリル基で末端が封鎖されたジオルガノポリシロキサン、ジメチルシロキサン単位とメチルハイドロジェンシロキサン単位及び末端トリメチルシロキシ単位との共重合体、ジメチルハイドロジェンシロキサン単位(H(CH3)2SiO0.5単位)とSiO2単位とからなる低粘度流体、1,3,5,7−テトラハイドロジェン−1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサン、1−プロピル−3,5,7−トリハイドロジェン−1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサン、1,5−ジハイドロジェン−3,7−ジヘキシル−1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサンなどが例示される。
【0065】
この硬化剤としてのオルガノハイドロジェンポリシロキサンの添加量は、第1成分のオルガノポリシロキサンの脂肪族不飽和基(アルケニル基)に対して、ケイ素原子に直結した水素原子が50〜500モル%となる割合で用いることが望ましい。
【0066】
また、有機過酸化物触媒としては、例えばベンゾイルパーオキサイド、2,4−ジクロロベンゾイルパーオキサイド、p−メチルベンゾイルパーオキサイド、o−メチルベンゾイルパーオキサイド、2,4−ジクミルパーオキサイド、2,5−ジメチル−ビス(2,5−t−ブチルパーオキシ)ヘキサン、ジ−t−ブチルパーオキサイド、t−ブチルパーベンゾエートなどが挙げられる。有機過酸化物触媒の添加量は、第1成分のオルガノポリシロキサン100部に対して0.1〜5部とすればよい。
【0067】
本発明に係るシリコーンゴム組成物には、上記必須成分に加え、任意成分として本発明の効果を妨げない範囲で、必要に応じ、補強性シリカ粉末を添加してもよい。補強性シリカ粉末は、機械的強度の優れたシリコーンゴムを得るために添加されるものであるが、この目的のためには、比表面積が50m2/g以上、好ましくは100〜300m2/gである。比表面積が50m2/gに満たないと硬化物の機械的強度が十分でないことがある。このような補強性シリカとしては、例えば煙霧質シリカ、沈降シリカ等が挙げられ、またこれらの表面をクロロシランやヘキサメチルジシラザンなどの有機ケイ素化合物で疎水化したものも好適に用いられる。
【0068】
補強性シリカ粉末の添加量は、第1成分のオルガノポリシロキサン100部に対して3〜70部、特に10〜50部とすることが好ましく、3部未満では添加量が少なすぎて補強効果が得られない場合があり、70部を超えると加工性が悪くなり、また機械的強度が低下してしまうおそれが生じる。
【0069】
また、本発明に係る導電化粒子と併用して、従来から知られている導電性カーボンブラック、導電性亜鉛華、導電性酸化チタン等の他の導電性無機酸化物などの導電材や増量剤としてシリコーンゴムパウダー、ベンガラ、粉砕石英、炭酸カルシウムなどの充填剤を添加してもよい。
【0070】
更には、スポンジを成形するための無機、有機の発泡剤を添加してもよい。この発泡剤としては、アゾビスイソブチロニトリル、ジニトロペンタメチレンテトラミン、ベンゼンスルフォンヒドラジド、アゾジカルボンアミドなどが例示され、その添加量は(A)成分のオルガノポリシロキサン100部に対し1〜10部の範囲が好適である。このように、本発明の組成物に発泡剤を添加すると、スポンジ状の導電性シリコーンゴムを得ることができる。
【0071】
また、本発明組成物には、必要に応じて着色剤、耐熱性向上剤などの各種添加剤や反応制御剤、離型剤あるいは充填剤用分散剤などを添加することは任意とされるが、この充填剤用分散剤として使用されるジフェニルシランジオール、各種アルコキシシラン、カーボンファンクショナルシラン、シラノール基含有低分子量シロキサンなどは本発明の効果を損なわないように最小限の添加量に止めることが好ましい。
【0072】
更に、本発明のシリコーンゴム組成物を難燃性、耐火性にするために、白金含有材料、白金化合物と二酸化チタン、白金と炭酸マンガン、白金とγ−Fe2O3、フェライト、マイカ、ガラス繊維、ガラスフレークなどの公知の添加剤を添加してもよい。
【0073】
本発明に係るシリコーンゴム組成物は、上記した成分を2本ロール、バンバリーミキサー、ドウミキサー(ニーダー)などのゴム混練り機を用いて均一に混合して、必要に応じ加熱処理を施すことにより得ることができる。
【0074】
このようにして得られたシリコーンゴム組成物は、金型加圧成形、押出成形、カレンダー成形などの種々の成形法によって必要とされる用途に成形することができる。なお、硬化は硬化方法、成形物の肉厚により適宜選択することができるが、通常80〜400℃で10秒〜30日の条件にて行うことができる。
【0075】
得られたシリコーンゴム組成物の硬化物の体積抵抗率は1Ω・cm以下、特には1×10−1Ω・cm以下とすることができ、電磁波シールド材等として使用することができる。
【0076】
【実施例】
以下、合成例及び実施例、比較例を示して本発明を具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に制限されるものではない。なお、以下の例において部はいずれも重量部を示す。
【0077】
〔合成例1〕 金属メッキシリカの合成
シリカのケイ素系高分子処理
シリカとして、球状シリカUS−10(三菱レーヨン(株)製;平均粒径10μm)を用いた。PPHS(フェニルハイドロジェンポリシラン)5gをトルエン65gに溶解させ、この溶液をUS−10 100gに加え、1時間撹拌し、スラリーにした。ロータリーエバポレーターにて、80℃の温度,45mmHgの圧力でトルエンを65g留去させ、乾燥させたところ、PPHS処理球状シリカが得られた。このPPHS処理球状シリカは、最後にローラー、ジェットミル等により解砕された。
【0078】
パラジウムコロイド析出シリカの製造
PPHS処理球状シリカは疎水化され、水に投入すると水表面に浮くようになる。界面活性剤としてサーフィノール504(日信化学工業(株)製界面活性剤)の0.5%水溶液50gに、合成例で得られたPPHS処理球状シリカ100gを投入し、撹拌したところ、5分程度の短時間で分散した。パラジウム処理は、上記シリカ−水分散体150gに対し、1%PdCl2水溶液を70g(塩化パラジウムとして0.7g、パラジウムとして0.4g)添加して、30分撹拌後、濾過し、水洗した。これらの処理により、シリカ表面はパラジウムコロイドが付着した黒灰色に着色したパラジウムコロイド析出シリカが得られた。このシリカは濾過により単離し、水洗後、直ちにメッキ化を行った。
【0079】
パラジウムコロイド析出シリカのニッケルメッキ化
ニッケルメッキ用還元液として、イオン交換水で希釈した次亜リン酸ナトリウム2.0M、酢酸ナトリウム1.0M、グリシン0.5Mの混合溶液100gを用いた。パラジウムコロイド析出シリカをKS−538(信越化学工業(株)製消泡剤)0.5gと共にニッケルメッキ還元液中に分散させた。激しく撹拌しながら液温を室温から65℃に上げた。イオン交換水で希釈した水酸化ナトリウム2.0Mを空気ガスにより同伴させながら滴下し、同時にイオン交換水で希釈した硫酸ニッケル1.0Mを窒素ガスにより同伴させながら、還元液中に滴下した。これにより、細かい発泡と共にシリカが黒色となり、シリカ表面全面に金属ニッケルが析出した。
【0080】
ニッケルメッキシリカの金メッキ化
金メッキ液として高純度化学研究所製金メッキ液K−24N100gを希釈せず用いた。全面に金属ニッケルが析出したシリカを金メッキ液中に分散させた。激しく撹拌しながら液温を室温から95℃に上げると、細かい発泡と共にシリカが金色となり、シリカ表面に金が析出した。
【0081】
メッキ水底に沈殿したシリカは、濾過、水洗、乾燥(50℃で30分)の後、水素で置換された電気炉で300℃で1時間焼成した。実体顕微鏡観察により、シリカ全表面が金により覆われたシリカが得られていることがわかった。このシリカは、IPC分析により、パラジウム、ニッケル、金が検出された。
【0082】
シリカ−ケイ素系化合物−ニッケル−金構造を持つ導電性シリカの同定
金メッキシリカは、エポキシ樹脂(アラルダイトA/B)に混合後、硬化させ、その切片を電子顕微鏡にて観察したところ、シリカ部と複相メッキ部の2層構造が確認された。
【0083】
また、この金メッキシリカを、オージェ電子分光分析により、表面をイオンエッチングしながら深さ方向に存在する構成元素を分析したところ、深さ方向に金層、ニッケル層、ケイ素系化合物層(炭素とケイ素含有層)、シリカ層の4層構造を形成していることが明らかとなった。顕微鏡により観察した外観は黄色、比重は3.5で、各層の厚みは、金層0.03μm、ニッケル層0.25μm、ケイ素系化合物層0.1μmであった。
【0084】
シリカ−ケイ素系化合物−ニッケル−金構造を持つ導電性シリカの特性
金メッキシリカの抵抗率は、4端子を持つ円筒状のセルに金メッキシリカを充填し、両末端の面積0.2cm2の端子からSMU−257(ケースレ社製電流源)より1〜10mAの電流を流し、円筒の中央部に0.2cm離して設置した端子から2000型ケースレ社製ナノボルトメーターで電圧降下を測定することで求めた。抵抗率は2.2mΩ・cmであった。このシリカを乳鉢に入れ、1分間すり潰し、熱処理(200℃,4時間)後の変化を調べたところ、外観、抵抗率の変化はなかった。なお、この金属メッキシリカの比表面積は0.4m2/g、比重は2.39であった。
【0085】
〔合成例2〕
シリカとして、球状シリカUS−10(三菱レーヨン(株)製;平均粒径10μm)から4μm以下の大きさの粒子を除去したものを用いた以外は、合成例1と同様にして、比重3.0、抵抗率3mΩ・cmのニッケル−金構造を有する金属メッキシリカを得た。
【0088】
〔実施例1〜3、比較例1〜3〕
合成例1で得られた比表面積0.4m2/g、比重2.39の金属メッキシリカを表1に示す割合でオルガノポリシロキサン85重量%を含むKE−520−U(信越化学工業(株)製,製品名)に添加し、パーオキサイドC−8A(信越化学工業(株)製,製品名)を添加後、170℃で10分間加圧成型し、1mmのシートを得た。その後、150℃で1時間ポストキュアーした後、SRIS−2301の測定方法に準じて抵抗値を測定した。
また、環境依存性を把握するために、50℃,90%RHの環境下に7日間放置し、抵抗の変化を確認した。
また、比較例として、銀粉末450部を添加した場合、金属メッキシリカの配合量が少ない場合、銀メッキされたガラスビーズS−5000S−3(東芝バロティーニ社製)300部を添加した場合の例を示す。
【0089】
【表1】
【0090】
〔実施例4〕
合成例2で得られた金属メッキシリカを用い、実施例1と同様にして導電性シリコーンゴム組成物を製造し、その硬化物の特性を評価した。結果を表2に示す。
【0091】
【表2】
【0092】
【発明の効果】
本発明の導電性シリコーンゴム組成物は、基材粒子を金属メッキすることにより得られた導電化粒子をシリコーンゴムに配合したことにより、分散性に優れ、また該組成物を硬化して得られるシリコーンゴムは、体積抵抗率の低抵抗、安定性に優れたものである。
Claims (6)
- (A)下記平均組成式(1)
R1 nSiO(4-n)/2 …(1)
(式中、R1は同一又は異種の非置換又は置換1価炭化水素基であり、nは1.98〜2.02の正数である。)
で示され、脂肪族不飽和基を少なくとも2個有するオルガノポリシロキサン
100重量部、
(B)シリカからなる基材粒子の表面が、ニッケル層を介して金層が形成された構造を有する金属メッキ層で被覆されてなる導電化粒子 90〜800重量部、
(C)硬化剤 上記(A)成分を硬化させ得る量
を含有してなることを特徴とする導電性シリコーンゴム組成物。 - (B)成分の導電化粒子が、シリカにケイ素系化合物の層を介してニッケル層、次いで金層を形成することにより得られたものである請求項1記載の導電性シリコーンゴム組成物。
- ケイ素系化合物がポリシランである請求項2記載の導電性シリコーンゴム組成物。
- (B)成分の導電化粒子が、シリカにケイ素系化合物の層を介してニッケル層、次いで金層を形成し、得られた金属メッキシリカを還元性気体の存在下に200℃以上の温度で熱処理することにより、ケイ素系化合物を部分的又は全部をセラミックに変化させたものである請求項2又は3記載の導電性シリコーンゴム組成物。
- (B)成分の比表面積が1m2/g以下である請求項1乃至4のいずれか1項記載の導電性シリコーンゴム組成物。
- (B)成分の組成物全体に占める体積分率が25〜75%である請求項1乃至5のいずれか1項記載の導電性シリコーンゴム組成物。
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