JP4067790B2 - シリコーンゴム組成物及び導電性ゴム硬化物並びに導電性ゴム硬化物の製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、取扱に優れ、安定した導電性を示す導電性ゴム硬化物を与えるシリコーンゴム組成物、及びこれを硬化させてなる導電性ゴム硬化物並びに導電性ゴム硬化物の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術及び発明が解決しようとする課題】
従来、低抵抗率のゴムを得る方法として、電気伝導度の大きい銀粉末をポリマーに添加した付加反応硬化型シリコーンゴム組成物、縮合反応硬化型シリコーンゴム組成物、パーオキサイド加硫シリコーンゴム組成物等を用いる方法が知られている。しかしながら、導電粉末として銀を用いた場合、銀粉末の凝集性が高くシリコーンゴム中に均一分散しないこと、また環境安定性に乏しく、特に高温高湿雰囲気下では銀表面が酸化劣化する問題があった。
【0003】
本発明は、上記の問題点に鑑みなされたものであり、作業性に優れ、しかも体積抵抗率が低い導電性ゴム硬化物を与えるシリコーンゴム組成物、及びこれを硬化させてなる導電性ゴム硬化物並びに導電性ゴム硬化物の製造方法を提供することを目的とする。
【0004】
【課題を解決するための手段及び発明の実施の形態】
本発明者は、上記目的を達成するために鋭意検討を重ねた結果、下記一般式(1)で示される直鎖状の、分子鎖両末端ビニル基含有オルガノポリシロキサンと、特定のビニル基含有レジン構造のオルガノポリシロキサンとを特定比率で併用すると共に、金属メッキシリカ、オルガノハイドロジェンポリシロキサン、白金族金属系触媒及び溶剤を含有する付加型シリコーンゴム組成物が、低粘度で作業性に優れ、熱で硬化し得ること、更に、この組成物を硬化して得られる導電性ゴム硬化物が、電気的に低抵抗であり、長期の使用にも耐え得ることを知見し、本発明をなすに至った。
【0005】
従って、本発明は、(A)下記一般式
【0006】
【化2】
(式中、R1は同一又は異種の脂肪族不飽和結合を有しない非置換又は置換の一価炭化水素基、Rはアルケニル基、m及びnは0又は正の整数である。)
で表され、粘度(25℃)が10〜200,000mPa・sのオルガノポリシロキサン、
(B)SiO2単位、Vi(R2)2SiO0.5単位、及び(R2)3SiO0.5単位(式中、Viはビニル基、R2は脂肪族不飽和結合を含まない一価炭化水素基)を含有してなるレジン構造のオルガノポリシロキサンを(A)成分:(B)成分=95:5〜40:60(重量比)の割合で含有し、かつ
(C)金属メッキシリカ:(A)及び(B)成分の合計100重量部に対して100〜500重量部
(D)一分子中に2個以上の、ケイ素原子に結合した水素原子を有するオルガノポリシロキサン:硬化有効量
(E)白金族金属系触媒:触媒量
(F)ヘキサメチルジシロキサン:(A)及び(B)成分の合計100重量部に対して10〜1,000重量部
を含有することを特徴とするシリコーンゴム組成物、及びこのシリコーンゴム組成物を硬化させてなる導電性ゴム硬化物並びに上記シリコーンゴム組成物を硬化させる導電性ゴム硬化物の製造方法を提供する。
【0007】
特に、このシリコーンゴム組成物及び導電性ゴム硬化物は、電気電子部品の導電性接着剤、導電性コーティング剤、電磁波シール接着剤、電極材料として最適である。
【0008】
以下、本発明につき更に詳しく説明する。
【0009】
(A)オルガノポリシロキサン
本発明のシリコーンゴム組成物におけるベース成分であるオルガノポリシロキサンは、下記一般式(1)
【0010】
【化3】
で表されるビニル基を有するオルガノポリシロキサンである。上記式中、R1は脂肪族不飽和結合を有しない非置換又は置換の炭素数1〜10、特に1〜6の一価炭化水素基であるが、具体的にはメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、ヘキシル基等のアルキル基、シクロヘキシル基等のシクロアルキル基、フェニル基、トリル基、キシリル基等のアリール基、ベンジル基等のアラルキル基、及びこれらの基の水素原子の一部又は全部をハロゲン原子、シアノ基等で置換した基、例えばクロロメチル基、シアノエチル基、3,3,3−トリフルオロプロピル基等を例示することができる。Rは、ビニル基、アリル基、プロペニル基、ブテニル基等の好ましくは炭素数2〜6のアルケニル基である。
【0011】
また、n及びmは、0又は正の整数であるが、25℃の粘度が10〜200,000mPa・sの範囲となるような数である。一般的には、0<n+m≦10,000を満足する整数が好ましく、特に10≦n+m≦2,000かつ0<m/(n+m)≦0.2を満足する整数であることが好ましい。
【0012】
一方、25℃における粘度は、10〜200,000mPa・sであるが、好ましくは60〜100,000mPa・s、特に好ましくは100〜50,000mPa・sの範囲である。粘度が10mPa・sより低いと、シリコーンゴム組成物より得られる硬化物の引張強度及び伸び率が不満足となる。
【0013】
本発明のオルガノポリシロキサンの代表例をしては、以下の式で表されるものを挙げることができるが、これらに限定されるものではない。なお、下記式中、k,mは0以上の整数、nは1以上の整数であり、k+m及びk+m+nはそれぞれ10〜2,000で、かつ、25℃における粘度が前述した範囲となるような数である。
【0014】
【化4】
【0015】
(B)レジン構造のオルガノポリシロキサン
本発明のレジン構造(即ち、三次元網状構造)のオルガノポリシロキサンは、硬化物の物理的強度を改善するために配合されるものであり、SiO2単位(以下、a単位と略記する)、Vi(R2)2SiO0.5単位(以下、b単位と略記する)、及び(R2)3SiO0.5単位(以下、c単位と略記する)を含有してなるものであり、通常、重量平均分子量が2,000〜4,000、特に2,500〜3,500の範囲にあるものが好適である。なお、上記式中、Viはビニル基、R2は脂肪族不飽和二重結合を含まない一価炭化水素基である。R2としては前記一般式(1)の置換基R1として例示したものを挙げることができるが、特に好ましいものはメチル基、フェニル基である。
【0016】
上記各単位は[(b単位)+(c単位)]/(a単位)=0.3〜3、特に0.7〜1.0のモル比、また(c単位)/(a単位)=0.01〜1、特に0.07〜0.15のモル比で組み合わされていることが好ましい。このようなレジン構造のオルガノポリシロキサンは、反応後、対応する各単位となる化合物(以下、単位源と称する)を、所望の比となるように組み合わせ、例えば酸の存在下で共加水分解反応を行うことによって容易に製造することができる。
【0017】
a単位源としてはケイ酸ソーダ、アルキルシリケート、ポリアルキルシリケート、四塩化ケイ素等を例示することができる。また、b単位源としてはVi(R2)2SiOSi(R2)2Vi、Vi(R2)2SiCl等を例示することができる。更に、c単位源としては(R2)3SiOSi(R2)3、(R2)3SiCl等を例示することができる。なお、上記式中、Vi及びR2は前述の通りである。
【0018】
(B)成分のレジン構造のオルガノポリシロキサン中には、上記したa単位、b単位、c単位の他に、(R2)2SiO単位、Vi(R2)SiO単位等のジオルガノシロキサン単位、R2SiO1.5単位、ViSiO1.5単位等のオルガノシルセスキオキサン単位を本来の目的を損わない程度の割合で含有することができる。
【0019】
なお、前述の(A)成分と、この(B)成分との比率は、(A)成分:(B)成分=95:5〜40:60(重量比)であるが、好ましくは90:10〜50:50、特に好ましくは90:10〜60:40である。
【0020】
(C)金属メッキシリカ
本発明の金属メッキシリカとは、シリコーンゴム組成物から得られる硬化物に導電性を与えるために配合するものであり、シリカ粉体の表面に金属メッキを施したものである。
【0021】
シリカ粉体とは、二酸化ケイ素で構成される粉体で高い耐熱性を持っている。本発明で用いるシリカ粉体の形状は、粉末状、繊維状、フレーク状等形状を問わないが、メッキする金属の使用量を最少にし、シリコーンゴム組成物から得られる硬化物中で高充填にするためには、同一粒径では最も比表面積の低くなる球状が望ましい。このようなシリカ粉末は、クロロシランを燃焼させたり、アルコキシシランを加水分解したり、ガス化した金属ケイ素を酸化したり、石英粉末を溶融したりすることで容易に得ることができる。
【0022】
また、比表面積を低くするためには、内部の表面に繋がる空洞を持たないものが望ましく、石英粉末を溶融して得られる溶融石英が好適に用い得る。シリカの粒径は0.01〜1,000μmが望ましく、より望ましくは0.1〜100μmである。0.01μm未満では、比表面積が高くなるためメッキ金属の量が多くなり高価となる場合がある。また、1,000μmを超えるとシリコーンゴム組成物中に混合しにくなる場合がある。
【0023】
本発明の金属メッキシリカは、特に限定するものではないが、例えば、以下の工程で製造されたものが使用できる。
(1)シリカ粉体を、還元性を有するケイ素系高分子で処理し、シリカの表面にケイ素系高分子の層を形成する工程
(2)工程(1)で得られた粉体を、標準酸化還元電位0.54V以上の金属からなる金属塩を含む溶液で処理することで、ケイ素系高分子層表面に金属コロイドを析出させる工程
(3)工程(2)で得られた粉体を、金属コロイドを触媒として無電解ニッケルメッキを行い、粉体表面にニッケルを析出させ、次いで無電解金メッキを行い、金を析出させる工程
【0024】
以下、各工程について更に詳しく説明する。
【0025】
工程(1)は、次のように行う。
この工程では、還元性を有するケイ素系高分子を有機溶剤に溶解させ、この中にシリカ粉末を投入、混合した後に有機溶剤を除くことでシリカ表面にケイ素系高分子の層を形成する。
【0026】
この工程で用いるケイ素系高分子としては、後述の工程(2)において金属コロイドを析出させるための還元作用を持つケイ素系高分子を用いる。還元作用を持つケイ素系高分子としては、Si−Si結合又はSi−H結合を有するもの、例えばポリシラン、ポリカルボシラン、ポリシロキサン、ポリシラザンが好ましく、中でもポリシラン又はケイ素原子に直接結合した水素原子(SiH基)を有するポリシロキサンが好適に用い得る。
【0027】
このうちポリシランとしては、主鎖にSi−Si結合をもつ下記式(2)で表される高分子が挙げられる。
(R11 cXdSi)e (2)
(式中、R11は、水素原子、又は置換又は非置換の脂肪族、脂環式又は芳香族の一価炭化水素基、Xはアルコキシ基、ハロゲン原子、酸素原子又は窒素原子であり、cは0.5≦c≦2.5、dは0≦d≦0.5であり、かつ、1≦c+d≦2.5を満足する数であり、eは2≦e≦100,000の整数である。)
【0028】
上記ポリシランにおいて、R11は水素原子、置換又は非置換の脂肪族、脂環式又は芳香族の一価炭化水素基であるが、非置換の脂肪族又は脂環式の一価炭化水素基の場合、炭素原子数は1〜12、特に1〜6が好ましく、例えばメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等が挙げられる。また、非置換の芳香族一価炭化水素基としては、炭素原子数が6〜14、特に6〜10のものが好適であり、例えばフェニル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基、ベンジル基等が挙げられる。
【0029】
一方、置換一価炭化水素基としては、上記に例示した非置換の一価炭化水素基の水素原子の一部又は全部をハロゲン原子、アルコキシ基、アミノ基、アルキルアミノ基等で置換したもの、例えばモノフルオロメチル基、トリフルオロメチル基、m−ジメチルアミノフェニル基等が挙げられる。
【0030】
また、上記ポリシランにおいて、Xはアルコキシ基、ハロゲン原子、酸素原子、又は窒素原子であるが、アルコキシ基としてはメトキシ基、エトキシ基、イソプロポキシ基等の炭素原子数1〜4のものが挙げられ、通常、メトキシ基、エトキシ基が好ましく用いられる。ハロゲン原子としてはフッ素原子、塩素原子、臭素原子等が挙げられる。
【0031】
なお、cは0.5≦c≦2.5、好ましくは1≦c≦2、dは0≦d≦0.5、好ましくは0≦d≦0.2であり、かつ、1≦c+d≦2.5、好ましくは1.5≦c+d≦2.02を満足する数であり、eは2≦e≦100,000、好ましくは10≦e≦10,000の範囲の整数である。
【0032】
一方、Si原子に直接結合した水素原子(SiH基)を有するポリシロキサンとしては、側鎖にSi−H基、主鎖にSi−O−Si結合をもつ下記式(3)で表される高分子が挙げられる。
(R21 f(H)gSiO(4-f-g)/2)h (3)
(式中、R21は、置換又は非置換の脂肪族、脂環式又は芳香族の一価炭化水素基、アルコキシ基、又はハロゲン原子であり、fは0.8≦f≦2、gは0.01≦g≦1であり、かつ、1≦f+g≦2.5を満足する数であり、hは2≦h≦100,000の整数であるが、一分子中にSiH基を2個以上、好ましくは10個以上含む。)
【0033】
上記ポリシロキサンにおいて、R21は置換又は非置換の脂肪族、脂環式又は芳香族の一価炭化水素基、アルコキシ基、又はハロゲン原子であるが、非置換の脂肪族又は脂環式一価炭化水素基の場合、炭素原子数は1〜12、特に1〜6が好ましく、例えばメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等が挙げられる。また、非置換の芳香族一価炭化水素基としては、炭素原子数が6〜14、特に6〜10のものが好適であり、例えばフェニル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基、ベンジル基等が挙げられる。
【0034】
一方、置換一価炭化水素基としては、上記に例示した非置換の一価炭化水素基の水素原子の一部又は全部をハロゲン原子、アルコキシ基、アミノ基、アルキルアミノ基等で置換したもの、例えばモノフルオロメチル基、トリフルオロメチル基、m−ジメチルアミノフェニル基が挙げられる。
【0035】
また、アルコキシ基としてはメトキシ基、エトキシ基、イソプロポキシ基等の炭素原子数1〜4のものが挙げられるが、通常、メトキシ基、エトキシ基が好ましく用いられる。ハロゲン原子としてはフッ素原子、塩素原子、臭素原子等が挙げられる。
【0036】
なお、fは0.8≦f≦2、好ましくは1≦f≦2、gは0.01≦g≦1、好ましくは0.1≦g≦1であり、かつ、1≦f+g≦2.5、好ましくは1.5≦f+g≦2.02を満足する数であり、hは2≦h≦100,000、好ましくは10≦h≦10,000の範囲の整数である。
【0037】
ケイ素系高分子を溶解させる有機溶剤は、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族系炭化水素、ヘキサン、オクタン、シクロヘキサン等の脂肪族系炭化水素、テトラヒドロフラン、ジブチルエーテル等のエーテル類、酢酸エチル等のエステル類、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、ヘキサメチルホスホリックトリアミド等の非プロトン性極性溶剤の他、ニトロメタン、アセトニトリル等が好適に用いられる。
【0038】
ケイ素系高分子溶液の濃度は、0.01〜30重量%、特に1〜10重量%が好適である。溶液の濃度が0.01重量%未満では、大量の溶剤を使用するのでコストの上昇を招くことがあり、30重量%を超えると、ケイ素系高分子層を粉体表面全面に均一に形成できなくなる恐れがある。
【0039】
シリカ粉体とケイ素系高分子の混合方法としては、特に限定されず、公知の方法を適宜用いることができるが、ケイ素系高分子の有機溶剤溶液と粉体のスラリーを容器内で攪拌羽根を回転させ、分散接触させる攪拌式が好適に用いうる。
【0040】
次に、温度を上げたり減圧にすることにより溶剤を留去し、シリカ粉体を乾燥させる。溶剤を留去するときの温度は、通常は、留去時の圧力における溶剤の沸点以上の温度であればよいが、たとえば1〜100mmHgの減圧下、40〜200℃程度の温度で攪拌しながら乾燥することは効果的である。
【0041】
また、溶媒がある程度留去できた後、攪拌をやめ、常圧又は減圧下、40〜200℃程度の温度で静置して溶剤を更に留去して乾燥することが好ましい。
【0042】
この留去、乾燥の方法としては、気流中にこのスラリーを分散させ、瞬時に乾燥させる噴霧式が好適に用いうる。
【0043】
ケイ素系高分子層の厚さは、望ましくは0.001〜1μm、特に望ましくは0.01〜0.1μmである。0.001μm未満では、ケイ素系高分子でシリカを完全に覆うことができなくなることがあり、メッキ時にメッキされない部分ができる可能性があり、また、1μmを超えると使用するケイ素系高分子の量が多くなり高価となる恐れがある。
【0044】
工程(2)は、次のように行う。
この工程では、ケイ素系高分子処理したシリカ粉体を、水で希釈した界面活性剤と接触させ、次いで金属塩を含む溶液と接触させることで、ケイ素系高分子の還元作用により金属コロイドを析出させる。
【0045】
ケイ素系高分子処理したシリカ粉体は、表面が疎水性となる。このため、金属塩を溶解させた溶媒との親和性が低下し液中に分散しにくくなり、金属塩還元反応の効率が低下することがある。この効率の低下は、界面活性剤を添加して向上させることができる。界面活性剤としては、発泡を起こさず表面張力のみを下げるものが望ましく、例えば、サーフィノール104、402、504(いずれも日信化学工業(株)製)等の非イオン性界面活性剤を好適に用いることができる。
【0046】
金属塩としては、標準酸化還元電位0.54V以上の金属の塩を用いる。より具体的には、金(標準酸化還元電位1.50V)、パラジウム(標準酸化還元電位0.99V)、銀(標準酸化還元電位0.80V)等の塩が好適に用いられるが、標準酸化還元電位が0.54Vより低い銅(標準酸化還元電位0.34V)、ニッケル(標準酸化還元電位−0.25V)等の塩では、本発明のケイ素系高分子で還元することができないため適さない。
【0047】
より具体的には、金塩としては、溶媒中でAu+,Au3+を生成するもの、特にNaAuCl3、NaAu(CN)2、NaAu(CN)4等が好適に用いられる。パラジウム塩としては、溶媒中でPd2+を生成するもの、特にPdCl2、PdBr2、PdI2、Pd(OCOCH3)2、Pd(OCOCF3)2、PdSO4、Pd(NO3)2、PdO等が好適に用いられる。銀塩としては、溶媒中でAg+を生成するもの、特にAgBF4、AgClO4、AgPF6、AgBPh4(Phはフェニル基を表す)、Ag(CF3SO3)、AgNO3等が好適に用いられる。
【0048】
金属塩を溶解させる溶媒は、水、アセトン、メチルエチルケトンのようなケトン類、メタノール、エタノールのようなアルコール類、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、ヘキサメチルホスホリックトリアミドのような非プロトン性極性溶媒等が挙げられ、好適には水が用いられる。
【0049】
溶液中の金属塩の濃度は、塩を溶解させる溶媒によって異なるが、0.01重量%以上で、かつ用いる溶媒に対する飽和濃度以下が好ましい。0.01重量%未満では、金属コロイドのメッキ触媒としての効果が十分でなくなる恐れがあり、また、飽和濃度を超えると、急激な固体塩の析出が起こり、均一に金属コロイドを形成できなくなる恐れがある。特に溶媒が水の場合、好ましくは0.01〜20重量%、より好ましくは、0.1〜5重量%の濃度がよく用いうる。
【0050】
金属塩溶液への浸漬は、10℃〜70℃、特に室温(25℃程度)〜70℃の温度で、0.1〜120分、特に1〜60分、更には1〜15分ケイ素系高分子処理粉体を、金属塩溶液に浸漬することが好ましい。この金属塩溶液への浸漬は、前述のシリカ粉末を分散させた界面活性剤溶液に、金属塩溶液を添加する方法でも可能である。これにより、ケイ素系高分子層表面に金属コロイドが析出したシリカ粉体が製造できる。
【0051】
工程(3)は、次のように行う。
工程(2)で生成した金属コロイドを触媒として、シリカ粉体に無電解メッキ処理を行うことにより、金属で被覆されたシリカ粉体を得ることができる。この無電解メッキ処理は、最初にニッケルで行い、次にそのニッケル表面での置換反応を利用した金メッキを行うことが好ましい。これは、金が高価ではあるが、酸化を受けにくく導電性も低下させにくいためである。なお、ニッケル及び金の無電解メッキ液としては、市販のメッキ液を適宜使用することができる。
【0052】
シリカとの密着性や金属メッキシリカの凝集に影響を与えるニッケルメッキは重要である。
【0053】
ニッケルメッキ液は、通常、硫酸ニッケル、塩化ニッケル等のニッケル金属塩、次亜リン酸ナトリウム、ヒドラジン、水素化ホウ素ナトリウム等の還元剤、酢酸ナトリウム等のpH調整剤、フェニレンジアミンや酒石酸ナトリウムカリウム等の錯化剤を含むものである。
【0054】
通常は、これらの成分を含む金属メッキ液中に粉体を投入してメッキを行うバッチ法か、水に分散させた粉体に混合メッキ液を滴下する滴下法が行われる(「導電性フィラーの開発と応用 p.182 技術情報協会 1994年」参照)。いずれの方法でも、メッキ速度をコントロールすることで凝集を防ぎ、密着性のよい均一な被膜を得ようとすることに変わりはないが、この方法で、均一にニッケルメッキで被覆されたシリカ粉体を得ることは容易ではない。
【0055】
これは、シリカ粉体のような比表面積の高い粉体をメッキする場合、メッキの開始が雰囲気中の酸素の影響を受けて遅れる反面、いったんメッキ反応が始まると急激かつ非常に活発になるため、メッキ速度がコントロールできず、均一にメッキされた粉体が得にくいためである。
【0056】
このため、シリカ粉体のニッケルメッキは以下の方法で行う。ニッケルメッキ液を還元剤、pH調整剤、錯化剤を含有した水溶液とニッケル塩水溶液に分けて調製する。シリカ粉体は還元剤等を含有した水溶液中に分散し、ニッケルメッキに最適な温度に保温しておく。この溶液にニッケル塩水溶液を気体と同伴させて、あらかじめシリカ粉体を分散させた還元剤等を含有した水溶液に加える。ニッケル塩水溶液は、気体により還元剤等を含有した水溶液中で速やかに均一に混合され、粉体表面がニッケルメッキされる。このことにより、凝集がなく、均一メッキされたニッケルメッキシリカを非常に効果的に得ることができる。
【0057】
しかし、メッキ液への気体の導入は、しばしば発泡によるメッキの効率の低下をもたらすことがあるが、これは界面活性剤を添加して防止することができる。界面活性剤としては、消泡作用を持ち表面張力を下げるものが望ましく、KS−538(信越化学工業(株)製)等のポリエーテル変性シリコーン系界面活性剤を好適に用いることができる。
【0058】
無電解ニッケルメッキにおいては、メッキ液中の酸素濃度がニッケルの析出に影響を及ぼす。溶存酸素の量が多いと、触媒としてメッキの核となる金属コロイドが酸化され、金属カチオンとして液中に溶出したり、一度析出したニッケル表面が酸化されたりして、ニッケルの析出が抑制される。逆に、溶存酸素の量が少ないと、メッキ液の安定性が低下し、シリカ以外の場所にもニッケルの析出が起こりやすくなり、微細なニッケル粉の生成やこぶ状の析出物の生成が起こる。このため、メッキ液中の溶存酸素の量を、1〜20ppmの範囲とすることが好ましい。1ppm未満では、微細なニッケル粉やこぶ状析出物が発生してしまうことがあり、20ppmを超えると、メッキ速度が低下したり、未メッキ部が発生したりする恐れがあるため好ましくない。
【0059】
溶存酸素量を制御するためにニッケル塩水溶液に同伴させる気体は、空気のような含酸素気体とアルゴンや窒素のような不活性気体を事前に混合して、又はメッキ液中で混合しながら用いるのが好ましい。粉体のメッキにおいては、しばしばメッキの開始は遅いが、一度メッキが開始されれば反応が暴走するという現象を起こすことがあるので、これを防止するために、例えば窒素を最初に用い、ニッケルメッキ反応が開始するのを確認後、空気に切り換えるということを行うことも効果的である。ニッケルメッキ温度は35〜120℃で、接触時間は1分〜16時間が好適に用いうる。より望ましくは40〜85℃で10〜60分で処理される。
【0060】
ニッケルメッキ層の厚さは、望ましくは0.01〜10μm、特に望ましくは0.1〜2μmである。0.01μm未満ではシリカを完全に覆い、かつ十分な硬度や強度が得られにくくなる恐れがある。また、10μmを超えるとニッケルの量が多くなり、かつ比重が高くなり、高価となる場合がある。
【0061】
ニッケルメッキのあと、すぐに金メッキを行う。この時ニッケルが酸化されて不動態化した表面の酸化膜を希酸で除き、金メッキを行うことは効果的である。金メッキ温度は35〜120℃で、接触時間は1分〜16時間が好適に用いうる。より望ましくは40〜95℃で10〜60分で処理される。
【0062】
金メッキ層の厚さは、望ましくは0.001〜1μm、特に望ましくは0.01〜0.1μmである。0.001μm未満では、抵抗率が高くなるため、シリコーンゴム組成物から得られる導電性ゴム硬化物が十分な導電性を得られにくくなり、また、1μm以上では金の量が多くなり、高価となる場合がある。
【0063】
また、メッキの最後に、不要な界面活性剤を除くため、水洗を行うとよい。こうして得られたシリカは、シリカ−ケイ素系高分子−ニッケル−金という4層構造を持つ導電性シリカである。
【0064】
最後に、得られた導電性シリカを、還元性気体存在下に200℃以上の温度で熱処理することが望ましい。処理条件は、通常200〜900℃が望ましく、処理時間は1分〜24時間が好適に用いうる。より望ましくは、250〜500℃で、処理時間は30分〜4時間行うのがよい。これにより、粉体と金属間にあるケイ素系高分子は、セラミックに変化し、より高い耐熱性と密着性を持つことになる。このときの雰囲気を水素のような還元系で行うことにより、金属中の酸化物を減少させることができるとともに、熱によってケイ素系高分子を安定な構造に変えることができ、シリカと金属が強固に結合し高い導電性を示す金属メッキシリカを得ることができる。
【0065】
この金属メッキシリカの配合量は、(A)成分と(B)成分の合計100重量部に対して100〜500重量部、好ましくは150〜450重量部、特に好ましくは200〜400重量部である。100重量部未満では、充分な導電性が得られず、500重量部を超えると組成物の粘度が高くなりすぎ作業性が低下すると共に、導電性の向上も得られない。
【0066】
(D)オルガノハイドロジェンポリシロキサン
本発明の(D)成分のオルガノハイドロジェンポリシロキサンは架橋剤として作用するものであり、この様なオルガノハイドロジェンポリシロキサンとしては、例えば、下記平均組成式
Ha(R3)bSiO(4-a-b)/2 (4)
(式中、R3は脂肪族不飽和結合を含有しない同一又は異種の置換又は非置換の一価炭化水素基であり、a及びbは、0.001≦a<2、0.7≦b≦2、かつ0.8≦a+b≦3を満たす数である。)
で表され、一分子中にケイ素原子に結合した水素原子(SiH基)を少なくとも2個、好ましくは3個以上有するものが挙げられる。
【0067】
ここで、上記式(4)中のR3は脂肪族不飽和結合を含有しない同一又は異種の置換または非置換の炭素原子数1〜10、特に炭素原子数1〜7の一価炭化水素基であることが好ましく、例えばメチル基等の低級アルキル基、フェニル基等のアリール基等、前述の一般式(1)の置換基R1で例示したものが挙げられる。また、a及びbは、0.001≦a<2、0.7≦b≦2、かつ0.8≦a+b≦3を満たす数であり、好ましくは0.05≦a≦1、0.8≦b≦2、かつ1≦a+b≦2.7となる数である。ケイ素原子に結合した水素原子の位置は特に制約はなく、分子の末端でも途中でもよい。
【0068】
具体的には、例えば両末端トリメチルシリル基封鎖のメチルハイドロジェンポリシロキサン、両末端トリメチルシリル基封鎖のジメチルシロキサン・メチルハイドロジェンポリシロキサン共重合体、両末端ジメチルハイドロジェンシリル基封鎖のメチルハイドロジェンポリシロキサン、両末端ジメチルハイドロジェンシリル基封鎖のジメチルシロキサン・メチルハイドロジェンシロキサン共重合体、テトラメチルテトラハイドロジェンシクロテトラシロキサン、ペンタメチルトリハイドロジェンシクロテトラシロキサン、トリ(ジメチルハイドロジェンシロキサン)メチルシラン等が挙げられる。
【0069】
なお、本成分は、分子構造上直鎖状、分枝鎖状、環状、網状のいずれであってもよい。このようなオルガノハイドロジェンポリシロキサンは、通常、R3SiHCl2、(R3)3SiCl、(R3)2SiCl2、(R3)2SiHCl(R3は、前記のとおりである)のようなクロロシランを加水分解するか、加水分解して得られたシロキサンを平衡化することにより得ることができる。
【0070】
なお、このオルガノハイドロジェンポリシロキサンの配合量は、上記(A)、(B)成分の硬化有効量であり、特にそのSiH基が(A)成分及び(B)成分中のビニル基の合計量当たり0.1〜4.0、特に好ましくは1.2〜3.0、更に好ましくは1.4〜2.8のモル比で使用されることが好ましい。0.1未満では硬化反応が進行せずシリコーンゴム硬化物を得ることが困難であり、4.0を超えると、未反応のSiH基が硬化物中に多量に残存するため、ゴム物性が経時的に変化する原因となる。
【0071】
(E)白金族金属系触媒
本発明の白金族金属系触媒としては公知のものが使用でき、具体的には白金元素単体、白金化合物、白金複合体、塩化白金酸、塩化白金酸のアルコール化合物、アルデヒド化合物若しくはエーテル化合物、各種オレフィン類との錯体や、これらと同様のパラジウム錯体、ロジウム錯体などが例示される。
【0072】
白金族金属系触媒の添加量は、触媒量であり、(A)成分のオルガノポリシロキサンに対し白金族金属原子として1〜2,000ppm、特に好ましくは1〜500ppm、更に好ましくは2〜100ppmの範囲とすることが望ましい。1ppm未満では硬化不良となる場合があり、2,000ppmを超えると、保存安定性が低下する場合がある。
【0073】
(F)溶剤
本発明の必須成分である溶剤としては、シリコーンゴム組成物の(A)、(B)、(D)成分を溶解可能なヘキサメチルジシロキサンを用いる。
【0074】
この溶剤は、(A)成分及び(B)成分の合計100重量部に対して、10〜1,000重量部となる割合、好ましくは10〜500重量部、特に好ましくは50〜200重量部で用いられる。10重量部未満では溶剤添加効果が得られず、1,000重量部を超えると、金メッキシリカの分離が著しくなる。
【0075】
本発明のシリコーンゴム組成物には、本発明の効果を妨げない範囲で必要に応じ、任意成分を配合することができる。
【0076】
本発明のシリコーンゴム組成物は、一液型にも二液型にも調製することができるが、一液型にする場合には、通常、硬化反応抑制剤を配合することが好ましい。硬化反応抑制剤としては、例えばCH2=CHR’SiO単位(式中、R’は脂肪族不飽和二重結合を含まない一価炭化水素基を表す)を含むポリシロキサン(特公昭48−10947号公報参照)、アセチレンアルコール(例えば3−メチル−1−ブチン−3−オール)等のアセチレン化合物(米国特許第3,445,420号公報参照)などの硬化反応抑制剤が好適に使用される。硬化反応抑制剤の配合量は(E)成分の白金族金属系触媒の白金分に対して50〜10,000倍(重量比)であることが好ましい。50倍未満ではシリコーンゴム組成物の保存安定性が悪く、長期保存中に硬化する場合があり、10,000倍を超えると硬化速度が極端に遅くなる場合がある。
【0077】
その他任意に添加される成分としては、例えば、重金属のイオン性化合物(米国特許第3,532,649号公報参照)などがある。この添加剤は本発明の硬化を妨げない範囲の量で添加することができる。組成物を薄膜コーティングの形成に使用する場合には、硬化時における熱収縮の減少、硬化して得られる硬化物の熱膨張率の低下、熱安定性、耐候性、耐薬品性、難燃性或いは機械的強度を向上させたりガス透過率を下げる目的で、充填剤を添加してもよく、これには例えばフュームドシリカ、石英粉末、酸化チタン、カーボンブラック等が挙げられる。また、必要に応じて基材との接着性を向上させる目的で公知のアルコキシシロキサン、エポキシ基含有オルガノポリシロキサン、アクリル基含有オルガノポリシロキサン等を加えることができる。
【0078】
また、金属メッキシリカと併用して、従来から知られている導電性カーボンブラック、導電性亜鉛華、導電性酸化チタン等の導電性無機酸化物等の導電材や、増量剤としてシリコーンゴムパウダー、ベンガラ、粉砕石英、炭酸カルシウムなどの充填剤を添加してもよい。
【0079】
本発明に係るシリコーンゴム組成物は、上記した成分をプラネタリーミキサーやスクリューミキサー等の混練り機を用いて均一に混合して得ることができる。
【0080】
このようにして得られたシリコーンゴム組成物は、作業性に優れ、ディスペンサーやスプレー法にて基材に塗布し目的の形状に加工したり、被着物を接合したりすることができる。なお、硬化方法は、従来公知の方法を適宜選択することができるが、通常80〜200℃で10秒〜24時間の条件にて行うことが好ましい。
【0081】
【実施例】
以下、本発明を実施例及び比較例を示して具体的に説明するが、本発明は下記実施例に制限されるものではない。なお、金属メッキシリカは下記の方法にて製造したものを使用し、この組成、構造分析、及び電気特性は、以下の方法で評価した。
【0082】
金属メッキシリカの製造方法
▲1▼シリカ粉末のケイ素系高分子処理
シリカとしては、球状シリカ US−10(三菱レーヨン(株)製;平均粒径10μm、比表面積0.4m2/g)を用いた。フェニルハイドロジェンポリシラン(以下、PPHSと略記する)5gをトルエン65gに溶解させ、この溶液をUS−10 100gに加え1時間攪拌しスラリーにした。ロータリエバポレーターにて、80℃の温度、45mmHgの圧力でトルエンを65g留去させ乾燥させた。このPPHS処理球状シリカは、ローラー、ジェットミルで解砕した。
【0083】
▲2▼パラジウムコロイド析出シリカの製造
界面活性剤として、サーフィノール504(日信化学工業(株)製)の0.5重量%水溶液50gに、前述のケイ素系高分子処理シリカ100gを投入し水中に分散させた。パラジウム処理は、上記シリカ−水分散体150gに対し、1重量%PdCl2水溶液を70g(塩化パラジウムとして0.7g、パラジウムとして0.4g)添加して30分攪拌することにより行った。これらの処理により、シリカ表面にパラジウムコロイドが析出した黒灰色に着色したシリカが得られた。このシリカはろ過によって単離し、水洗後直ちに以下のニッケルメッキを行った。
【0084】
▲3▼パラジウムコロイド析出シリカのニッケルメッキ
ニッケルメッキ用還元液として、イオン交換水で希釈した次亜リン酸ナトリウム2.0mol/l、酢酸ナトリウム1.0mol/l、グリシン0.5mol/lの混合溶液100gを用いた。パラジウムコロイド析出シリカを、KS−538(信越化学工業(株)製界面活性剤)0.5gと共に上記混合溶液中に分散させた。激しく攪拌しながら液温を室温から65℃に上げた。イオン交換水で希釈した水酸化ナトリウム2.0mol/l水溶液を空気に同伴させながら、還元液中に導入した。すると、細かい発泡とともにシリカが黒色となり、シリカ表面にニッケルが析出したニッケルメッキシリカが生成した。このシリカは、全面に金属ニッケルが析出しており、凝集もこぶ状物の生成も見られなかった。
【0085】
▲4▼ニッケルメッキシリカの金メッキ
金メッキ液として、金メッキ液K−24N(高純度化学研究所製)100gを用いた。全面に金属ニッケルが析出したシリカを、金メッキ液中に分散させた。激しく攪拌しながら液温を室温から95℃に上げると、細かい発泡とともにシリカが金色となり、シリカ表面に金が析出した。
【0086】
メッキ水底に沈殿したシリカはろ過、水洗、乾燥(50℃で30分)の後、水素で置換された電気炉で300℃で1時間熱処理した。
【0087】
シリカ−ケイ素系高分子−ニッケル−金構造を持つ金属メッキシリカの組成及び構造分析
上記方法により得られた金属メッキシリカは、実体顕微鏡で観察した外観は黄色であり、全表面が金により覆われたシリカが得られていることがわかった。またこの金属メッキシリカの比重は3.5であり、IPC分析により、パラジウム、ニッケル、金が検出された。
【0088】
更に金属メッキシリカを、エポキシ樹脂(アラルダイドA/B;バイエル社製)に混合後、硬化させ、その切片を電子顕微鏡にて観察したところ、シリカ部と複層メッキ部の2層構造が確認された。また、この金属メッキシリカをオージェ電子分光分析により、表面をイオンエッチングしながら深さ方向に存在する構成元素を分析したところ、深さ方向に金層、ニッケル層、ケイ素系高分子層(炭素とケイ素含有のセラミック層)、シリカ層の4層構造を形成していることが明らかとなった。各層の厚みは、金層0.03μm、ニッケル層0.25μm、ケイ素系高分子層0.1μmであった。
【0089】
シリカ−ケイ素系高分子−ニッケル−金構造を持つ金属メッキシリカの電気特性金属メッキシリカの抵抗率は、4端子を持つ円筒状のセルに金メッキシリカを充填し、両末端の面積が0.2cm2の端子からSMU−257(ケースレ社製電流源)より1〜10mAの電流を流し、円筒の中央部に0.2cm離して設置した端子から、2000型ナノボルトメーター(ケースレ社製)で電圧降下を測定することで求めた。抵抗率は2.2mΩ・cmであった。このシリカを、乳鉢に入れ1分間すり潰し熱処理(200℃、4時間)後の変化を調べたところ外観、抵抗率の変化はなかった。
【0090】
[実施例1]
下記一般式
【0091】
【化5】
(式中、mは正の整数であり、Meはメチル基、Viはビニル基を表す。)
で示される25℃における粘度10,000mPa・sの分子鎖両末端ビニルジメチルシロキシ基封鎖のジメチルポリシロキサン(以下、VFと略記する)75重量部に、SiO2単位50モル%、(CH3)3SiO0.5単位42.5モル%及びVi(CH3)2SiO0.5単位(Viはビニル基を表す)7.5モル%からなるレジン構造のビニルメチルポリシロキサン(以下、VMQと略記する)25重量部、下記式
【0092】
【化6】
で示されるオルガノハイドロジェンポリシロキサンを、SiH基含有量が、前記VF及びVMQ中のビニル基の合計当たり1.8倍モルとなる量(実施例1,2,3及び比較例2では3.2重量部、比較例1では1.0重量部)、テトラアリルイソシアネレート1モルにトリメトキシシラン1モルを付加した変性イソシアヌレート0.25重量部、塩化白金酸のオクチルアルコール変性溶液0.1重量部、前述の方法で得られた、比表面積0.4m2/g、比重2.39の金属メッキシリカを300重量部、及びヘキサメチルジシロキサン100重量部を加え、よく攪拌し、シリコーンゴム組成物を調製した。
【0093】
この組成物を、150℃にて4時間加熱成型して硬化物を形成し、JIS K6249に準拠して、体積抵抗率、引張強度、硬度(タイプA型スプリング試験機を用いて測定)、切断時伸び率及び接着性を測定した。また環境依存性を評価するために、85℃、85%RHの環境下に1,000時間放置し、抵抗率の変化を確認した。各測定結果を表1に示した。
【0094】
[実施例2]
金属メッキシリカを350重量部とした以外は実施例1と同様の方法でシリコーンゴム組成物を調製し、硬化物を形成し、物性、電気特性等を測定した。各測定結果を表1に示した。
【0095】
[実施例3]
金属メッキシリカを260重量部とした以外は実施例1と同様の方法でシリコーンゴム組成物を調製し、硬化物を形成し、物性、電気特性等を測定した。各測定結果を表1に示した。
【0096】
[比較例1]
VMQを使用せず、VFを100重量部とした以外は実施例1と同様の方法でシリコーンゴム組成物を調製し、硬化物を形成し、物性、電気特性等を測定した。各測定結果を表1に示した。
【0097】
[比較例2]
ヘキサメチルジシロキサンを添加しないこと以外は実施例1と同様の方法でシリコーンゴム組成物を調製し、硬化物を形成し、物性、電気特性等を測定した。各測定結果を表1に示した。
【0098】
【表1】
【0099】
表1に示すとおり、実施例で得られた硬化物の体積抵抗率は0.0001Ω・m以下であるので、電気電子部品の導電性接着、導電性コーティング、電極材料、電磁波シールド剤等として使用可能であることがわかる。
【0100】
【発明の効果】
本発明のシリコーンゴム組成物は、低粘度で、取り扱い性に優れ、ディスペンサーやスプレー法にて基材に塗布し、目的の形状に加工したり、接着したりできる。また、このシリコーンゴム組成物を硬化させて得られる導電性ゴム硬化物の体積抵抗率は0.0001Ω・cm以下であり、かつ耐湿性等に優れ、高い信頼性を有することから、電気電子部品の導電性接着、導電性コーティング、電極材料、電磁波シールド剤等として有効に使用することができる。
Claims (3)
- (A)下記一般式
で表され、粘度(25℃)が10〜200,000mPa・sのオルガノポリシロキサン、
(B)SiO2単位、Vi(R2)2SiO0.5単位、及び(R2)3SiO0.5単位(式中、Viはビニル基、R2は脂肪族不飽和結合を含まない一価炭化水素基)を含有してなるレジン構造のオルガノポリシロキサンを(A)成分:(B)成分=95:5〜40:60(重量比)の割合で含有し、かつ
(C)金属メッキシリカ:(A)及び(B)成分の合計100重量部に対して100〜500重量部
(D)一分子中に2個以上の、ケイ素原子に結合した水素原子を有するオルガノポリシロキサン:硬化有効量
(E)白金族金属系触媒:触媒量
(F)ヘキサメチルジシロキサン:(A)及び(B)成分の合計100重量部に対して10〜1,000重量部
を含有することを特徴とするシリコーンゴム組成物。 - 請求項1記載のシリコーンゴム組成物を硬化させてなる、85℃、85%RH、1000時間放置後の体積抵抗率が0.0001Ω・m以下である導電性ゴム硬化物。
- 請求項1又は2記載のシリコーンゴム組成物を硬化させることからなる、85℃、85%RH、1000時間放置後の体積抵抗率が0.0001Ω・m以下である導電性ゴム硬化物の製造方法。
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