JP2004205617A - 半導電性シームレスベルト及びその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】中間転写型画像形成装置に用いられる中間転写ベルトにおいて、抵抗のばらつきが小さくかつ抵抗の環境変動が小さくて画像形成装置側で湿度の計測や制御を必要としない中間転写ベルトを提供することを目的とする。
【解決手段】ポリアミド酸溶液と脱ドープ状態のポリアニリン溶液の混合物に脱水試薬とドーパントを配合して製造されるシームレスベルトであって、表面抵抗率の面内ばらつきや環境変動に対する影響を一定範囲にすることを特徴とする。また、ポリアニリンを適正量含む重合体を形成すること、脱水試薬が脱水剤と触媒との混合物であること、ドーパントが脱水試薬の反応生成物または所定の無機酸、有機酸であることがより好ましい。
【選択図】 なし
【解決手段】ポリアミド酸溶液と脱ドープ状態のポリアニリン溶液の混合物に脱水試薬とドーパントを配合して製造されるシームレスベルトであって、表面抵抗率の面内ばらつきや環境変動に対する影響を一定範囲にすることを特徴とする。また、ポリアニリンを適正量含む重合体を形成すること、脱水試薬が脱水剤と触媒との混合物であること、ドーパントが脱水試薬の反応生成物または所定の無機酸、有機酸であることがより好ましい。
【選択図】 なし
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、半導電性のシームレスベルトに関し、画像形成装置を備えた電子写真複写機、レーザービームプリンタ、ファクシミリ、これらの複合機等に用いる中間転写体や中間転写定着体等として特に有用である。
【0002】
【従来の技術】
電子写真式画像形成装置においては,一般的に、帯電させた感光体の表面に、画像読取装置で得られた画像に対応する静電潜像を形成し、現像器によってトナー画像とした後、中間転写体に静電転写(一次転写)し、中間転写体から紙等へ再度転写(二次転写)して定着ロールまたは定着ベルトで加熱定着される。つまり、電子写真方式を応用した画像形成装置は、無機又は有機光導電性感光体からなる潜像担持体上に一様な電荷を形成し、画像信号を変調したレーザーや発光ダイオード光等で静電潜像を形成した後、帯電したトナーで前記静電潜像を現像して可視化したトナー像とする。そして、上記トナー像を中間転写体を介して、あるいは直接記録紙等の転写材に静電的に転写することにより、所要の再生画像を得る。特に、上記像担持体に形成したトナー像を中間転写体に一次転写し、さらに中間転写体のトナー像を記録紙に二次転写する中間転写方式が知られている。
【0003】
この中間転写方式を用いた画像形成装置に用いられる無端ベルトの材料としては、ポリカーボネート樹脂(PC)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリアルキレンフタレート、PC/ポリアルキレンフタレート(PAT)のブレンド材料、エチレンテトラフルオロエチレン共重合体(ETFE)等の熱可塑性樹脂からなる半導電性の無端ベルト等が提案されている。
【0004】
また、像保持体から中間転写体にトナー像が転写されるとき、中間転写体は絶縁体的な働きをして形成された電荷が有効にトナーに働く一方、中間転写体へ転写されたトナーは静電気をもっているため、転写効率が悪く鮮明な画像を得ることは難しい場合があり、中間転写体の抵抗制御においては、カーボンブラックや金属酸化物といった導電性粒子を樹脂中に混合する方法がよく知られている。例えば、通常のカーボンブラックを導電性微粉末としてポリイミド樹脂に分散させた中間転写体が提案されている(例えば、特許文献1および2参照)。中間転写体がわずかに導電性をもっているため、記録紙等に転写する前にこの静電気は転写体を介してアースに逃げて、中間転写における静電気の影響はほとんどなくなる。このため、転写効率が高く、鮮明な画像が得られることが知られている。
【0005】
また、樹脂に特定物質を混入する方法ではなく、ポリエチレンオキサイド等のイオン導電性を持つ樹脂もしくはイオン導電性基を導入した樹脂を混合する方法も実施されている。ベルトが形成されたとき、均一な混合物となり均一な導電性が確保しやすい点において優位な方法である。また、上記のように異なるものの混合ではなく、樹脂自体が導電性を有するもの、例えば、ドープ型導電性ポリマーの使用も検討されている。ベルトが形成されたとき、さらに導電性の均一性を確保することが期待できるためである。
【0006】
【特許文献1】
特許2560727号公報
【特許文献2】
特開平5−77252号公報
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記中間転写体では、以下のような課題が生じることがある。
【0008】
中間転写体の抵抗制御において、カーボンブラックや金属酸化物といった導電性粒子を樹脂中に混合する方法では、中間転写体に必要とされる抵抗領域は表面抵抗で1×1010〜1×1013Ω/□で高いため制御が困難であり、抵抗のばらつきが大きくなり、かつ、ベルトそのものが硬くなりすぎるという欠点があった。また、ポリエチレンオキサイド等のイオン導電性を持つ樹脂もしくはイオン導電性基を導入した樹脂を混合する場合には、中間転写体に必要とされる抵抗領域を容易に達成可能でばらつきも小さくなるが、抵抗の環境変動が大きく、画像形成装置で湿度を測定しながら転写条件を制御しなければいけないという問題があった。また、ドープ型導電性ポリマーの使用も検討されているが、非溶解性のため、粒子の均一分散レベルのものでしかなかった。
【0009】
そこで本発明は、前記問題点を解決し、抵抗のばらつきが小さくかつ抵抗の環境変動が小さくて画像形成装置側で湿度の計測や制御を必要としない中間転写ベルトを提供することを目的とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記課題を解決するために、鋭意研究を重ねた結果、以下に示すシームレスベルトにより上記目的を達成できることを見出し、本発明を完成するに到った。
【0011】
本発明は、ポリアミド酸溶液と脱ドープ状態のポリアニリン溶液の混合物に脱水試薬とドーパントを配合して製造されるシームレスベルトであって、表面抵抗率が1×1010〜1×1013Ω/□でその面内ばらつきが0.5桁(logΩ/□)以内で、かつ、40℃×80%RHにおける表面抵抗率と10℃×15%RHにおける表面抵抗率との比が1.5桁(logΩ/□)以内であることを特徴とする半導電性シームレスベルトであり、その製造方法である。溶剤可溶な脱ドープ状態のポリアニリンを溶液分散で均一に混合し、かつ低温ですばやくゲル化およびイミド化することが可能なため、ばらつきが少なく、温度や湿度といった環境因子の変動に対する寸法変化も小さい。従って、本発明のシームレスベルトを中間転写ベルトとして用いれば、画像形成装置側に湿度の計測や制御を必要としなくてよいという利点がある。
【0012】
上記ベルトは、ポリアニリンを20〜80重量%含むことが好ましい。ポリアニリンを適正量含む重合体を形成することで、環境因子の変動に対する寸法変化を大幅に低減し、安定した中間転写ベルトを作製することができる。
【0013】
上記ベルトは、吸湿膨張係数が40PPM/%RH以下であることが好ましい。上記の安定要素による改善に加え、さらに作製されたベルトについてその特性を確認することで、より安定した中間転写ベルトを供給することができる。
【0014】
上記製造方法において、脱水試薬が、脱水剤と触媒との混合物であることが好ましい。硬化とともに、脱水反応の促進が図られ、低温ですばやくゲル化およびイミド化することが可能となるとともに、特性のばらつきをなくすことができる。
【0015】
上記製造方法において、ドーパントが、脱水試薬の反応生成物またはpKa値が4.8以下である無機酸、有機酸であることが好ましい。ドーパントによるドーピングが硬化と同時に行なわれるため、安定した電子導電性を示しかつ環境変動に対して安定した電気抵抗率を有するシームレスベルトを提供する。特に、脱水試薬の反応生成物によってドーピングを行う場合には、別途に試薬を添加する必要がなく、反応の安定性も期待できる。
【0016】
【発明の実施の態様】
以下、本発明の実施の形態について説明する。なお、ここで示す表面抵抗率等の物性の具体的な評価方法は、後述の〔実施例〕において記載する。
【0017】
前記課題を解決するための手段は、ポリアミド酸溶液と脱ドープ状態のポリアニリン溶液の混合物に脱水試薬とドーパントを配合して製造され、表面抵抗率が1×1010〜1×1013Ω/□でその面内ばらつきが0.5桁(logΩ/□)以内でかつ40℃×80%RHにおける表面抵抗率と10℃×15%RHにおける表面抵抗率との比が1.5桁(logΩ/□)以内であることを特徴とする半導電性シームレスベルトを作製することである。ポリアミド酸溶液と溶剤可溶な脱ドープ状態のポリアニリン溶液を混合すると、溶液分散で均一に混合した状態となり、同時に配合された脱水試薬とドーパントとの作用によって、低温で、すばやくゲル化およびイミド化することが可能となる。従って、導電性粒子を樹脂中に混合する方法やドープ型導電性ポリマーの場合のように、制御の困難性、抵抗値のばらつき、ベルトが硬くなるという欠点もなく、導電特性の均一性を確保しつつ、温度や湿度といった環境因子の変動に対する寸法変化も小さいベルトの作製が可能となる。さらに、作製されたベルトについて、実際に表面抵抗率に関する試験や確認を行うことで、より安定した中間転写ベルトを供給することができる。具体的には、表面抵抗率について、測定値が上記範囲を外れた場合には、トナーの静電気の影響を受け、面内ばらつきが上記範囲を外れた場合には、局部的に画像のムラが発生し、環境変動比(高温高湿条件下での値と低温低湿条件下での値との比較)が上記範囲を外れた場合には、環境因子の変動に対する寸法変化が無視できなくなる。こうした試験や確認は、生産ラインにおいて完成品全てについて行う場合や一定の生産ロット単位で行う場合がある。
【0018】
上記ベルトは、ポリアニリンを20〜80重量%含むことが好ましい。ポリアニリンを適正量含む重合体は、環境因子の変動に対する寸法変化が非常に少なく、安定するためである。本発明において用いるポリアニリンは、プロトン酸の存在下にアニリンを酸化重合してドープ状態のポリアニリンを作製し、次いで、このポリアニリンを脱ドープして得られるもので、高分子量を有し、しかも、種々の有機溶剤に溶解する。かかる有機溶剤としては、N−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド等を挙げることができる。このような脱ドープされたポリアニリンの溶解度は、ポリアニリンの平均分子量や溶剤にもよるが、重合体の0.5〜100%が溶解し、1〜30重量%の溶液を得ることができる。ポリアミド酸とポリアニリンの比率は重量比で20:80〜80:20である。
【0019】
本発明のポリイミドの樹脂組成としては、引張弾性率が4,000N/mm2以上で、吸湿膨張係数が40PPM/%RH以下であることが望ましく、多くのポリイミド樹脂の中でも数種に限定される。
【0020】
シームレスベルトの引張弾性率は、周方向の引張弾性率が4,000N/mm2以上が好ましい。引張弾性率は、JIS K 7127に準じて測定し、周方向の引張弾性率が4,000N/mm2より低い場合には、例えばタンデム式中間転写型画像形成装置に用いた場合に、色合わせが難しくなり、色ズレをおこすことがある。ベルト自体の強度と合わせ一定の弾力性が求められ、中間転写体としての特性を確保するには適正な範囲の引張弾性率を有するものでなければならない。
【0021】
また、吸湿膨張係数が40PPM/%RH以下であることが好ましいとしたのは、上記の環境因子の温度および湿度に対する影響の内、特に影響度が高い吸湿特性に対する制限を加重したもので、より安定した中間転写ベルトを供給することができる。
【0022】
このようなポリイミド樹脂組成としては、3,3' ,4,4' −ビフェニルテトラカルボン酸二無水物とp−フェニレンジアミンからなる重合体及びそれらを50モル%以上主成分とする共重合体、ピロメリット酸二無水物とペンジジン誘導体からなる重合体及びそれらを50モル%以上主成分とする共重合体であり、ポリアミド酸溶液の溶媒としては、特に制限はないが、N,N' −ジメチルアセトアミド、ジメチルホルムアミド、N−メチル−2−ピロリドン等が使用される。
【0023】
本発明によれば、ポリアミド酸溶液と脱ドープ状態のポリアニリン溶液の混合物に脱水試薬とドーパントが配合されることが好ましい。脱水試薬は、脱水剤と触媒からなり、脱水剤としては、例えば、無水酢酸などの脂肪族酸無水物、安息香酸無水物,フタル酸無水物などの芳香族酸無水物などが挙げられる。また、触媒としては、例えば、トリエチルアミンなどの脂肪族第3級アミン類、N−ジメチルアニリンなどの芳香族第3級アミン類、ピリジン、ピコリン、キノリン、イソキノリンなどの複素環式第3級アミン類などが挙げられる。前記脱水剤の添加量は、ポリアミド酸溶液中のポリアミド酸1モルに対し1.0〜3.0モルが好ましく、触媒の添加量は、0.2〜1.5モルが好ましい。前記脱水剤及び触媒は、予め有機溶媒に溶解し、希釈してからポリアミド酸溶液に添加し混合することや、使用直前にすばやく混合することが好ましい。
【0024】
本発明におけるドーパントは、脱水試薬の反応生成物またはpKa値が4.8以下である無機酸、有機酸であることが好ましい。つまり、脱ドープ状態のポリアニリンをドーピングして導電性とすることができるため、ドーピングが硬化と同時に行なわれ、安定した電子導電性を得ることができる。ドーパントとしては、例えば、スルホン酸、燐酸、塩化スルホニル等の無機酸及び有機カルポン酸、フェノール等の有機酸が挙げられる。なお、pKa値が4.8以下としたのは、ドーパントにより安定した導電性を得るためである。また、特に脱水試薬の反応生成物、例えば、前記脱水剤より精製する有機カルボン酸を利用してドーピングを行う場合には、別途に試薬を添加する必要がなく、反応の安定性も期待できる。
【0025】
次に、本発明のシームレスベルトの製造工程の一例について説明する
(1)上記の条件に基づいて所定量で混合された製膜用溶液を、円筒状金型の内周面に塗布する工程を有する。第1金型に塗布する方法は、公知の方法を適用することが可能で、例えば遠心成形する方法、ディスペンサーやダイスにより塗布する方法、スクレーパを用いる方法、弾丸状走行体を用いる方法等が挙げられる。金型の内面は、鏡面仕上げにより表面粗さを所定の範囲内にすることがあるが、従来からシームレス状ベルトの製造に用いられているものであればどのようなものでも差し支えなく、材質としてはその耐熱性の観点から、金属、ガラス、セラミック等の各種のものが挙げられる。例えば、遠心成形法によれば、内面に塗布された溶液は遠心成形の高速回転により、脱泡、レベリングされ厚みが均一で精度の良い樹脂層が得られる。回転数は、シリンダー径にもよるが、通常500〜2,000rpm、好ましくは、800〜1,500rpmである
(2)金型上に均一に塗布した溶液を加熱乾燥することにより残存溶媒の除去、閉環水の除去、及びイミド転化反応の完結を行う。加熱温度は、適用した溶媒を蒸発させることができる温度であれば特に制限はなく適宜に断定できるが、80〜300℃であることが好ましい。また、加熱時間は、加熱温度に応じて適宜設定され、通常、10〜60分程度である。このとき、300℃以上で急激に加熱すると溶液中の溶媒が急激に蒸発するために微小ボイドが発生し、80℃以下で長時間加熱すると製造上時間がかかりすぎて生産性が低くなるため好ましくない。例えば、遠心成形法によれば、樹脂層は、回転させながら80〜130℃に加熱され、ゲル化される。さらに250〜300℃で溶媒の除去等とイミド化を完結させることができる
(3)冷却後、離型され、目的の半導電性シームレスベルトが得られる。金型からベルトを剥離する方法としては、例えば金型端部の周壁に予め設けられた微小貫通孔に空気を圧送する方法等が挙げられる。なお、金型周面に予めシリコーン樹脂等による離型処理を施しておけば、ベルトの剥離作業性が向上するため好ましい。
【0026】
【実施例】
以下、本発明の構成と効果を具体的に示す実施例について説明する。各実施例における評価項目は下記の通りである。なお、これら各実施例は、本発明を制限するものではない。
【0027】
<評価方法>
(1)表面抵抗率:ハイレスタUP(三菱油化社製)を用い、プローブUR、印加電圧500V、10秒値の表面抵抗率を測定し、表面抵抗率の対数値で示した。
(2)表面抵抗率の面内ばらつき:シームレスベルトの周方向に8点、幅方向に3点の24点の表面抵抗率を測定し、表面抵抗率の対数値をとり、その最大値と最小値の差として算出した。
(3)表面抵抗率の環境変動幅:高温高湿(40℃×80%RH)と低温低湿(10℃×15%RH)の環境下における表面抵抗率の対数値の差として算出した。
(4)吸湿膨張係数:120℃で1時間乾燥処理したものにつき25℃、100%RH、24時間の条件で吸湿させて、吸湿前の長さ(Lo)と吸湿後の長さ(L)を測定し、下式より算出した。
吸湿膨張係数=(Lo−L)/100Lo
【0028】
<実施例のための試薬の準備>
(1)ポリアニリン溶液の調整:N,N−ジメチルアセトアミド(DMAC)6,000g中にポリアニリン粉末600gを添加し、オートホモミキサーを用いて5,000rpmで1時間撹拌し、溶解させて10wt%濃度の脱ドープ状態ポリアニリン溶液を得た。
(2)ポリアニリン含有ポリアミド酸の調製:5,000mLの4つ口フラスコにN,N−ジメチルアセトアミド2,524.64gとp−フェニレンジアミン129.77g(1.2モル)と4,4' −ジアミノジフェニルエーテル60.06g(0.3モル)を仕込み、常温で撹拌させながら溶解した。次いで、3,3' ,4,4' −ビフェニルテトラカルボン酸メリット酸二無水物441.33g(1.5モル)を添加し、温度20℃で1時間反応させた後、75℃で20時間加熱しながら撹拌することにより、B型粘度計による溶液粘度が160Pa・sのポリアミド溶液(固形分濃度20wt%)を得た。
【0029】
<実施例1>
(1)前記ポリアミド酸溶液と前記ポリアニリン溶液を、ポリアミド酸:ポリアニリンの重量比で51.3:48.7になるように混合し、撹拌羽根を用いて室温で1時問撹拌した後、#800のステンレス製メッシュでろ過し、ポリアニリン含有ポリアミド酸溶液を得た。
(2)また別に、ポリアニリンのドーパントとしてドデシルベンゼンスルホン酸、及びポリアミド酸の脱水試薬としてイソキノリンと無水酢酸のNMP溶液を用意し、均一に混合し吐出できるディスペンサー装置に充填した。配合量は、ドデシルベンゼンスルホン酸が、ポリアニリン含有ポリアミド酸溶液のポリアニリンに対して0.5モルとし、イソキノリンと無水酢酸が、ポリアニリン含有ポリアミド酸溶液のポリアミド酸に対してそれぞれ0.5モルと2.0モルとした。
(3)この混合溶液を用いて、次のように、製膜した。
(4)内径300mm、長さ500mmの内面鏡面仕上げした円筒状金型の内周面に、前記ディスベンサーで厚みが600μmになるように塗工し、回転成形機にて1,500rpmで10分間遠心成形した。さらに、この円筒状金型を回転させながら100℃の加熱炉で10分間加熱し、次いで2℃/分の速度で300℃に昇温しその温度で10分間加熱硬化(キュアー)した後、冷却、剥離して、厚さ70μmの半導電性シームレスベルトを得た。
【0030】
<実施例2>
ポリアニリンのドーパントとしてドデシルベンゼンスルホン酸を添加しない以外は実施例1と同様にしてシームレスベルトを得た。
【0031】
<比較例1>
実施例1のポリアミド酸溶液にドープ型ポリアニリンスルホン酸をポリアミド酸溶液のポリアミド酸に対し10重量%分散した以外は、実施例1と同様にしてシームレスベルトを得た。
【0032】
<比較例2>
実施例1のポリアミド酸溶液にカーボンブラックPrintex V(デグサジャパン製)をポリアミド酸溶液のポリアミド酸に対し25重量%分散した以外は、実施例1と同様にしてシームレスベルトを得た。
【0033】
<比較例3>
実施例1のイミド化剤としてイソキノリンと無水酢酸を添加しない以外は、実施例1と同様にしてシームレスベルトを得た。
【0034】
<試験結果>
上記4つの評価項目について、各例の試験結果を表1に示す。
【表1】
実施例1および2については、各評価項目で規定の範囲内となる結果が得られたが、比較例1については、「表面抵抗率の面内ばらつき」および「表面抵抗率の環境変動幅」に関し範囲外となり、比較例2については、「表面抵抗率の面内ばらつき」に関し範囲外となり、比較例3については、「表面抵抗率の環境変動幅」および「吸湿膨張係数」に関し範囲外となった。
【0035】
【発明の効果】
本発明のシームレスベルトは、溶剤可溶な脱ドープ状態のポリアニリンを溶液分散で均一に混合し、かつ低温ですばやくゲル化およびイミド化することが可能なため、ばらつきが少なく、温度や湿度といった環境因子の変動に対する寸法変化も小さい。従って、本発明のシームレスベルトを中間転写ベルトとして用いれば、画像形成装置側に湿度の計測や制御を必要としなくてよいという利点がある。特に、ポリアニリンを適正量含む重合体を形成することで、安定した効果が得られる。また、吸湿膨張係数といった作製されたベルトの特性を確認することで、より安定した中間転写ベルトを供給することができる。
【0036】
また、脱水試薬が、脱水剤と触媒との混合物である場合には、硬化とともに脱水反応の促進が図られ、低温ですばやくゲル化およびイミド化することが可能となるとともに、特性のばらつきをなくすことができる。さらに、ドーパントによるドーピングが硬化と同時に行なわれるため、安定した電子導電性を示しかつ環境変動に対して安定した電気抵抗率を有するシームレスベルトを提供する。特に、脱水試薬の反応生成物によってドーピングを行う場合には、別途に試薬を添加する必要がなく、反応の安定性も期待できる。
【発明の属する技術分野】
本発明は、半導電性のシームレスベルトに関し、画像形成装置を備えた電子写真複写機、レーザービームプリンタ、ファクシミリ、これらの複合機等に用いる中間転写体や中間転写定着体等として特に有用である。
【0002】
【従来の技術】
電子写真式画像形成装置においては,一般的に、帯電させた感光体の表面に、画像読取装置で得られた画像に対応する静電潜像を形成し、現像器によってトナー画像とした後、中間転写体に静電転写(一次転写)し、中間転写体から紙等へ再度転写(二次転写)して定着ロールまたは定着ベルトで加熱定着される。つまり、電子写真方式を応用した画像形成装置は、無機又は有機光導電性感光体からなる潜像担持体上に一様な電荷を形成し、画像信号を変調したレーザーや発光ダイオード光等で静電潜像を形成した後、帯電したトナーで前記静電潜像を現像して可視化したトナー像とする。そして、上記トナー像を中間転写体を介して、あるいは直接記録紙等の転写材に静電的に転写することにより、所要の再生画像を得る。特に、上記像担持体に形成したトナー像を中間転写体に一次転写し、さらに中間転写体のトナー像を記録紙に二次転写する中間転写方式が知られている。
【0003】
この中間転写方式を用いた画像形成装置に用いられる無端ベルトの材料としては、ポリカーボネート樹脂(PC)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリアルキレンフタレート、PC/ポリアルキレンフタレート(PAT)のブレンド材料、エチレンテトラフルオロエチレン共重合体(ETFE)等の熱可塑性樹脂からなる半導電性の無端ベルト等が提案されている。
【0004】
また、像保持体から中間転写体にトナー像が転写されるとき、中間転写体は絶縁体的な働きをして形成された電荷が有効にトナーに働く一方、中間転写体へ転写されたトナーは静電気をもっているため、転写効率が悪く鮮明な画像を得ることは難しい場合があり、中間転写体の抵抗制御においては、カーボンブラックや金属酸化物といった導電性粒子を樹脂中に混合する方法がよく知られている。例えば、通常のカーボンブラックを導電性微粉末としてポリイミド樹脂に分散させた中間転写体が提案されている(例えば、特許文献1および2参照)。中間転写体がわずかに導電性をもっているため、記録紙等に転写する前にこの静電気は転写体を介してアースに逃げて、中間転写における静電気の影響はほとんどなくなる。このため、転写効率が高く、鮮明な画像が得られることが知られている。
【0005】
また、樹脂に特定物質を混入する方法ではなく、ポリエチレンオキサイド等のイオン導電性を持つ樹脂もしくはイオン導電性基を導入した樹脂を混合する方法も実施されている。ベルトが形成されたとき、均一な混合物となり均一な導電性が確保しやすい点において優位な方法である。また、上記のように異なるものの混合ではなく、樹脂自体が導電性を有するもの、例えば、ドープ型導電性ポリマーの使用も検討されている。ベルトが形成されたとき、さらに導電性の均一性を確保することが期待できるためである。
【0006】
【特許文献1】
特許2560727号公報
【特許文献2】
特開平5−77252号公報
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記中間転写体では、以下のような課題が生じることがある。
【0008】
中間転写体の抵抗制御において、カーボンブラックや金属酸化物といった導電性粒子を樹脂中に混合する方法では、中間転写体に必要とされる抵抗領域は表面抵抗で1×1010〜1×1013Ω/□で高いため制御が困難であり、抵抗のばらつきが大きくなり、かつ、ベルトそのものが硬くなりすぎるという欠点があった。また、ポリエチレンオキサイド等のイオン導電性を持つ樹脂もしくはイオン導電性基を導入した樹脂を混合する場合には、中間転写体に必要とされる抵抗領域を容易に達成可能でばらつきも小さくなるが、抵抗の環境変動が大きく、画像形成装置で湿度を測定しながら転写条件を制御しなければいけないという問題があった。また、ドープ型導電性ポリマーの使用も検討されているが、非溶解性のため、粒子の均一分散レベルのものでしかなかった。
【0009】
そこで本発明は、前記問題点を解決し、抵抗のばらつきが小さくかつ抵抗の環境変動が小さくて画像形成装置側で湿度の計測や制御を必要としない中間転写ベルトを提供することを目的とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記課題を解決するために、鋭意研究を重ねた結果、以下に示すシームレスベルトにより上記目的を達成できることを見出し、本発明を完成するに到った。
【0011】
本発明は、ポリアミド酸溶液と脱ドープ状態のポリアニリン溶液の混合物に脱水試薬とドーパントを配合して製造されるシームレスベルトであって、表面抵抗率が1×1010〜1×1013Ω/□でその面内ばらつきが0.5桁(logΩ/□)以内で、かつ、40℃×80%RHにおける表面抵抗率と10℃×15%RHにおける表面抵抗率との比が1.5桁(logΩ/□)以内であることを特徴とする半導電性シームレスベルトであり、その製造方法である。溶剤可溶な脱ドープ状態のポリアニリンを溶液分散で均一に混合し、かつ低温ですばやくゲル化およびイミド化することが可能なため、ばらつきが少なく、温度や湿度といった環境因子の変動に対する寸法変化も小さい。従って、本発明のシームレスベルトを中間転写ベルトとして用いれば、画像形成装置側に湿度の計測や制御を必要としなくてよいという利点がある。
【0012】
上記ベルトは、ポリアニリンを20〜80重量%含むことが好ましい。ポリアニリンを適正量含む重合体を形成することで、環境因子の変動に対する寸法変化を大幅に低減し、安定した中間転写ベルトを作製することができる。
【0013】
上記ベルトは、吸湿膨張係数が40PPM/%RH以下であることが好ましい。上記の安定要素による改善に加え、さらに作製されたベルトについてその特性を確認することで、より安定した中間転写ベルトを供給することができる。
【0014】
上記製造方法において、脱水試薬が、脱水剤と触媒との混合物であることが好ましい。硬化とともに、脱水反応の促進が図られ、低温ですばやくゲル化およびイミド化することが可能となるとともに、特性のばらつきをなくすことができる。
【0015】
上記製造方法において、ドーパントが、脱水試薬の反応生成物またはpKa値が4.8以下である無機酸、有機酸であることが好ましい。ドーパントによるドーピングが硬化と同時に行なわれるため、安定した電子導電性を示しかつ環境変動に対して安定した電気抵抗率を有するシームレスベルトを提供する。特に、脱水試薬の反応生成物によってドーピングを行う場合には、別途に試薬を添加する必要がなく、反応の安定性も期待できる。
【0016】
【発明の実施の態様】
以下、本発明の実施の形態について説明する。なお、ここで示す表面抵抗率等の物性の具体的な評価方法は、後述の〔実施例〕において記載する。
【0017】
前記課題を解決するための手段は、ポリアミド酸溶液と脱ドープ状態のポリアニリン溶液の混合物に脱水試薬とドーパントを配合して製造され、表面抵抗率が1×1010〜1×1013Ω/□でその面内ばらつきが0.5桁(logΩ/□)以内でかつ40℃×80%RHにおける表面抵抗率と10℃×15%RHにおける表面抵抗率との比が1.5桁(logΩ/□)以内であることを特徴とする半導電性シームレスベルトを作製することである。ポリアミド酸溶液と溶剤可溶な脱ドープ状態のポリアニリン溶液を混合すると、溶液分散で均一に混合した状態となり、同時に配合された脱水試薬とドーパントとの作用によって、低温で、すばやくゲル化およびイミド化することが可能となる。従って、導電性粒子を樹脂中に混合する方法やドープ型導電性ポリマーの場合のように、制御の困難性、抵抗値のばらつき、ベルトが硬くなるという欠点もなく、導電特性の均一性を確保しつつ、温度や湿度といった環境因子の変動に対する寸法変化も小さいベルトの作製が可能となる。さらに、作製されたベルトについて、実際に表面抵抗率に関する試験や確認を行うことで、より安定した中間転写ベルトを供給することができる。具体的には、表面抵抗率について、測定値が上記範囲を外れた場合には、トナーの静電気の影響を受け、面内ばらつきが上記範囲を外れた場合には、局部的に画像のムラが発生し、環境変動比(高温高湿条件下での値と低温低湿条件下での値との比較)が上記範囲を外れた場合には、環境因子の変動に対する寸法変化が無視できなくなる。こうした試験や確認は、生産ラインにおいて完成品全てについて行う場合や一定の生産ロット単位で行う場合がある。
【0018】
上記ベルトは、ポリアニリンを20〜80重量%含むことが好ましい。ポリアニリンを適正量含む重合体は、環境因子の変動に対する寸法変化が非常に少なく、安定するためである。本発明において用いるポリアニリンは、プロトン酸の存在下にアニリンを酸化重合してドープ状態のポリアニリンを作製し、次いで、このポリアニリンを脱ドープして得られるもので、高分子量を有し、しかも、種々の有機溶剤に溶解する。かかる有機溶剤としては、N−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド等を挙げることができる。このような脱ドープされたポリアニリンの溶解度は、ポリアニリンの平均分子量や溶剤にもよるが、重合体の0.5〜100%が溶解し、1〜30重量%の溶液を得ることができる。ポリアミド酸とポリアニリンの比率は重量比で20:80〜80:20である。
【0019】
本発明のポリイミドの樹脂組成としては、引張弾性率が4,000N/mm2以上で、吸湿膨張係数が40PPM/%RH以下であることが望ましく、多くのポリイミド樹脂の中でも数種に限定される。
【0020】
シームレスベルトの引張弾性率は、周方向の引張弾性率が4,000N/mm2以上が好ましい。引張弾性率は、JIS K 7127に準じて測定し、周方向の引張弾性率が4,000N/mm2より低い場合には、例えばタンデム式中間転写型画像形成装置に用いた場合に、色合わせが難しくなり、色ズレをおこすことがある。ベルト自体の強度と合わせ一定の弾力性が求められ、中間転写体としての特性を確保するには適正な範囲の引張弾性率を有するものでなければならない。
【0021】
また、吸湿膨張係数が40PPM/%RH以下であることが好ましいとしたのは、上記の環境因子の温度および湿度に対する影響の内、特に影響度が高い吸湿特性に対する制限を加重したもので、より安定した中間転写ベルトを供給することができる。
【0022】
このようなポリイミド樹脂組成としては、3,3' ,4,4' −ビフェニルテトラカルボン酸二無水物とp−フェニレンジアミンからなる重合体及びそれらを50モル%以上主成分とする共重合体、ピロメリット酸二無水物とペンジジン誘導体からなる重合体及びそれらを50モル%以上主成分とする共重合体であり、ポリアミド酸溶液の溶媒としては、特に制限はないが、N,N' −ジメチルアセトアミド、ジメチルホルムアミド、N−メチル−2−ピロリドン等が使用される。
【0023】
本発明によれば、ポリアミド酸溶液と脱ドープ状態のポリアニリン溶液の混合物に脱水試薬とドーパントが配合されることが好ましい。脱水試薬は、脱水剤と触媒からなり、脱水剤としては、例えば、無水酢酸などの脂肪族酸無水物、安息香酸無水物,フタル酸無水物などの芳香族酸無水物などが挙げられる。また、触媒としては、例えば、トリエチルアミンなどの脂肪族第3級アミン類、N−ジメチルアニリンなどの芳香族第3級アミン類、ピリジン、ピコリン、キノリン、イソキノリンなどの複素環式第3級アミン類などが挙げられる。前記脱水剤の添加量は、ポリアミド酸溶液中のポリアミド酸1モルに対し1.0〜3.0モルが好ましく、触媒の添加量は、0.2〜1.5モルが好ましい。前記脱水剤及び触媒は、予め有機溶媒に溶解し、希釈してからポリアミド酸溶液に添加し混合することや、使用直前にすばやく混合することが好ましい。
【0024】
本発明におけるドーパントは、脱水試薬の反応生成物またはpKa値が4.8以下である無機酸、有機酸であることが好ましい。つまり、脱ドープ状態のポリアニリンをドーピングして導電性とすることができるため、ドーピングが硬化と同時に行なわれ、安定した電子導電性を得ることができる。ドーパントとしては、例えば、スルホン酸、燐酸、塩化スルホニル等の無機酸及び有機カルポン酸、フェノール等の有機酸が挙げられる。なお、pKa値が4.8以下としたのは、ドーパントにより安定した導電性を得るためである。また、特に脱水試薬の反応生成物、例えば、前記脱水剤より精製する有機カルボン酸を利用してドーピングを行う場合には、別途に試薬を添加する必要がなく、反応の安定性も期待できる。
【0025】
次に、本発明のシームレスベルトの製造工程の一例について説明する
(1)上記の条件に基づいて所定量で混合された製膜用溶液を、円筒状金型の内周面に塗布する工程を有する。第1金型に塗布する方法は、公知の方法を適用することが可能で、例えば遠心成形する方法、ディスペンサーやダイスにより塗布する方法、スクレーパを用いる方法、弾丸状走行体を用いる方法等が挙げられる。金型の内面は、鏡面仕上げにより表面粗さを所定の範囲内にすることがあるが、従来からシームレス状ベルトの製造に用いられているものであればどのようなものでも差し支えなく、材質としてはその耐熱性の観点から、金属、ガラス、セラミック等の各種のものが挙げられる。例えば、遠心成形法によれば、内面に塗布された溶液は遠心成形の高速回転により、脱泡、レベリングされ厚みが均一で精度の良い樹脂層が得られる。回転数は、シリンダー径にもよるが、通常500〜2,000rpm、好ましくは、800〜1,500rpmである
(2)金型上に均一に塗布した溶液を加熱乾燥することにより残存溶媒の除去、閉環水の除去、及びイミド転化反応の完結を行う。加熱温度は、適用した溶媒を蒸発させることができる温度であれば特に制限はなく適宜に断定できるが、80〜300℃であることが好ましい。また、加熱時間は、加熱温度に応じて適宜設定され、通常、10〜60分程度である。このとき、300℃以上で急激に加熱すると溶液中の溶媒が急激に蒸発するために微小ボイドが発生し、80℃以下で長時間加熱すると製造上時間がかかりすぎて生産性が低くなるため好ましくない。例えば、遠心成形法によれば、樹脂層は、回転させながら80〜130℃に加熱され、ゲル化される。さらに250〜300℃で溶媒の除去等とイミド化を完結させることができる
(3)冷却後、離型され、目的の半導電性シームレスベルトが得られる。金型からベルトを剥離する方法としては、例えば金型端部の周壁に予め設けられた微小貫通孔に空気を圧送する方法等が挙げられる。なお、金型周面に予めシリコーン樹脂等による離型処理を施しておけば、ベルトの剥離作業性が向上するため好ましい。
【0026】
【実施例】
以下、本発明の構成と効果を具体的に示す実施例について説明する。各実施例における評価項目は下記の通りである。なお、これら各実施例は、本発明を制限するものではない。
【0027】
<評価方法>
(1)表面抵抗率:ハイレスタUP(三菱油化社製)を用い、プローブUR、印加電圧500V、10秒値の表面抵抗率を測定し、表面抵抗率の対数値で示した。
(2)表面抵抗率の面内ばらつき:シームレスベルトの周方向に8点、幅方向に3点の24点の表面抵抗率を測定し、表面抵抗率の対数値をとり、その最大値と最小値の差として算出した。
(3)表面抵抗率の環境変動幅:高温高湿(40℃×80%RH)と低温低湿(10℃×15%RH)の環境下における表面抵抗率の対数値の差として算出した。
(4)吸湿膨張係数:120℃で1時間乾燥処理したものにつき25℃、100%RH、24時間の条件で吸湿させて、吸湿前の長さ(Lo)と吸湿後の長さ(L)を測定し、下式より算出した。
吸湿膨張係数=(Lo−L)/100Lo
【0028】
<実施例のための試薬の準備>
(1)ポリアニリン溶液の調整:N,N−ジメチルアセトアミド(DMAC)6,000g中にポリアニリン粉末600gを添加し、オートホモミキサーを用いて5,000rpmで1時間撹拌し、溶解させて10wt%濃度の脱ドープ状態ポリアニリン溶液を得た。
(2)ポリアニリン含有ポリアミド酸の調製:5,000mLの4つ口フラスコにN,N−ジメチルアセトアミド2,524.64gとp−フェニレンジアミン129.77g(1.2モル)と4,4' −ジアミノジフェニルエーテル60.06g(0.3モル)を仕込み、常温で撹拌させながら溶解した。次いで、3,3' ,4,4' −ビフェニルテトラカルボン酸メリット酸二無水物441.33g(1.5モル)を添加し、温度20℃で1時間反応させた後、75℃で20時間加熱しながら撹拌することにより、B型粘度計による溶液粘度が160Pa・sのポリアミド溶液(固形分濃度20wt%)を得た。
【0029】
<実施例1>
(1)前記ポリアミド酸溶液と前記ポリアニリン溶液を、ポリアミド酸:ポリアニリンの重量比で51.3:48.7になるように混合し、撹拌羽根を用いて室温で1時問撹拌した後、#800のステンレス製メッシュでろ過し、ポリアニリン含有ポリアミド酸溶液を得た。
(2)また別に、ポリアニリンのドーパントとしてドデシルベンゼンスルホン酸、及びポリアミド酸の脱水試薬としてイソキノリンと無水酢酸のNMP溶液を用意し、均一に混合し吐出できるディスペンサー装置に充填した。配合量は、ドデシルベンゼンスルホン酸が、ポリアニリン含有ポリアミド酸溶液のポリアニリンに対して0.5モルとし、イソキノリンと無水酢酸が、ポリアニリン含有ポリアミド酸溶液のポリアミド酸に対してそれぞれ0.5モルと2.0モルとした。
(3)この混合溶液を用いて、次のように、製膜した。
(4)内径300mm、長さ500mmの内面鏡面仕上げした円筒状金型の内周面に、前記ディスベンサーで厚みが600μmになるように塗工し、回転成形機にて1,500rpmで10分間遠心成形した。さらに、この円筒状金型を回転させながら100℃の加熱炉で10分間加熱し、次いで2℃/分の速度で300℃に昇温しその温度で10分間加熱硬化(キュアー)した後、冷却、剥離して、厚さ70μmの半導電性シームレスベルトを得た。
【0030】
<実施例2>
ポリアニリンのドーパントとしてドデシルベンゼンスルホン酸を添加しない以外は実施例1と同様にしてシームレスベルトを得た。
【0031】
<比較例1>
実施例1のポリアミド酸溶液にドープ型ポリアニリンスルホン酸をポリアミド酸溶液のポリアミド酸に対し10重量%分散した以外は、実施例1と同様にしてシームレスベルトを得た。
【0032】
<比較例2>
実施例1のポリアミド酸溶液にカーボンブラックPrintex V(デグサジャパン製)をポリアミド酸溶液のポリアミド酸に対し25重量%分散した以外は、実施例1と同様にしてシームレスベルトを得た。
【0033】
<比較例3>
実施例1のイミド化剤としてイソキノリンと無水酢酸を添加しない以外は、実施例1と同様にしてシームレスベルトを得た。
【0034】
<試験結果>
上記4つの評価項目について、各例の試験結果を表1に示す。
【表1】
実施例1および2については、各評価項目で規定の範囲内となる結果が得られたが、比較例1については、「表面抵抗率の面内ばらつき」および「表面抵抗率の環境変動幅」に関し範囲外となり、比較例2については、「表面抵抗率の面内ばらつき」に関し範囲外となり、比較例3については、「表面抵抗率の環境変動幅」および「吸湿膨張係数」に関し範囲外となった。
【0035】
【発明の効果】
本発明のシームレスベルトは、溶剤可溶な脱ドープ状態のポリアニリンを溶液分散で均一に混合し、かつ低温ですばやくゲル化およびイミド化することが可能なため、ばらつきが少なく、温度や湿度といった環境因子の変動に対する寸法変化も小さい。従って、本発明のシームレスベルトを中間転写ベルトとして用いれば、画像形成装置側に湿度の計測や制御を必要としなくてよいという利点がある。特に、ポリアニリンを適正量含む重合体を形成することで、安定した効果が得られる。また、吸湿膨張係数といった作製されたベルトの特性を確認することで、より安定した中間転写ベルトを供給することができる。
【0036】
また、脱水試薬が、脱水剤と触媒との混合物である場合には、硬化とともに脱水反応の促進が図られ、低温ですばやくゲル化およびイミド化することが可能となるとともに、特性のばらつきをなくすことができる。さらに、ドーパントによるドーピングが硬化と同時に行なわれるため、安定した電子導電性を示しかつ環境変動に対して安定した電気抵抗率を有するシームレスベルトを提供する。特に、脱水試薬の反応生成物によってドーピングを行う場合には、別途に試薬を添加する必要がなく、反応の安定性も期待できる。
Claims (6)
- ポリアミド酸溶液と脱ドープ状態のポリアニリン溶液の混合物に脱水試薬とドーパントを配合して製造されるシームレスベルトであって、表面抵抗率が1×1010〜1×1013Ω/□でその面内ばらつきが0.5桁(logΩ/□)以内で、かつ、40℃×80%RHにおける表面抵抗値と10℃×15%RHにおける表面抵抗率との比が1.5桁(logΩ/□)以内であることを特徴とする半導電性シームレスベルト。
- ポリアニリンを20〜80重量%含むことを特徴とする請求項1に記載の半導電性シームレスベルト。
- 吸湿膨張係数が40PPM/%RH以下であることを特徴とする請求項1または2に記載の半導電性シームレスベルト。
- ポリアミド酸溶液と脱ドープ状態のポリアニリン溶液の混合物に脱水試薬とドーパントを配合して複合管状物を形成するとともに、作製されたシームレスベルトの表面抵抗率が1×1010〜1×1013Ω/□でその面内ばらつきが0.5桁(logΩ/□)以内で、かつ、40℃×80%RHにおける表面抵抗値と10℃×15%RHにおける表面抵抗率との比が1.5桁(logΩ/□)以内であることを特徴とする半導電性シームレスベルトの製造方法。
- 脱水試薬が脱水剤と触媒との混合物であることを特徴とする請求項4に記載の半導電性シームレスベルトの製造方法。
- ドーパントが脱水試薬の反応生成物またはpKa値が4.8以下である無機酸、有機酸であることを特徴とする請求項4または5に記載の半導電性シームレスベルトの製造方法。
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