JP5142037B2 - ベルト部材、転写装置及び画像形成装置 - Google Patents

ベルト部材、転写装置及び画像形成装置 Download PDF

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Description

本発明は、プリンタ、ファクシミリ、複写機などの画像形成装置に用いられるベルト部材、転写装置、及び、それらを備えた画像形成装置に関するものである。
この種の画像形成装置、とりわけフルカラー画像形成装置として次のようなものが知られている。すなわち、像担持体に対して中間転写ベルトのベルト外周面を接触させ、転写バイアス印加手段により形成される転写電界によって、像担持体上に形成されたトナー像を、中間転写ベルトのベルト外周面に1次転写する。そして、この中間転写ベルトのベルト外周面に1次転写されたトナー像を、ベルト外周面に沿って搬送される転写材上に2次転写して転写材上に画像形成を行うものである。
特許文献1に記載の画像形成装置では、中間転写ベルトとして、トナー像を担持する側のベルト外周面を形成する高抵抗の表面層と、トナーの帯電極性とは逆極性の転写バイアスが印加される中間転写ベルトのベルト内周面を形成する中抵抗の基層とを有する多層構造の多層ベルトが用いられている。このように表面層を高抵抗とすることで表面層を中抵抗などにした場合よりも転写後の表面層に上記逆極性の電荷を多く残留させることができる。転写後の表面層に残留する上記逆極性の電荷が少ないと、ベルト外周面上に形成されたトナー像を静電的な力によってその場に留めておくことができなくなる。その結果、中間転写ベルトのベルト外周面上に一部のトナーが飛散し、この飛散したトナーがチリとなって画像品質に影響を及ぼすことがある。転写後の表面層に上記逆極性の電荷が多く残留することで、ベルト外周面に形成されたトナー像を静電的な力によってその場に留めることができ、上述のようなチリの発生が抑制することができるとされている。
特開平11−282277号公報
ここで、従来から知られている定電流制御で行われる転写時においては、装置本体内の温度湿度環境等により中間転写ベルトなどの抵抗が変化することで転写時に印加するトナーの帯電極性とは逆極性の転写バイアスの大きさが異なり中間転写ベルトの帯電電位も異なってくる。
高温高湿環境では常温常湿度環境に比べ中間転写ベルトの抵抗が低くなり、定電流制御で行われる転写時に印加される転写バイアスが低くなって、中間転写ベルトの帯電電位が低くなる。また、中間転写ベルトの抵抗が低くなることで中間転写ベルトの表面層に残留する上記逆極性の電荷も常温常湿度環境のときに比べて少なくなる。そのため、中間転写ベルトの帯電電位が低くなるのに加えて、転写後に表面層に残留する上記逆極性の電荷が少なくなることで、ベルト外周面上に形成されたトナー像を静電的な力によってその場に留めにくくなり、チリが発生し易くなる。
低温低湿環境では常温常湿度環境に比べて中間転写ベルトの抵抗が高くなり、定電流制御で行われる転写時に印加される転写バイアスが高くなって、中間転写ベルトの帯電電位が高くなる。また、中間転写ベルトの抵抗が高くなることで中間転写ベルトの表面層に残留する上記逆極性の電荷も常温常湿度環境のときに比べて多くなる。そのため、中間転写ベルトの帯電電位が高くなるのに加えて転写後に表面層に残留する上記逆極性の電荷が多くなることで、ベルト外周面上に形成されたトナー像を静電的な力によってその場により留めることができ、チリの発生をより抑制することができる。ところが、転写後の表面層に残留する電荷が多くなる分、残像が発生し易くなる。
このように、高抵抗の表面層と中抵抗からの基層とを有する多層構造の中間転写ベルトを用いたとしてもチリが発生するのを抑制できない場合があったり、さらには残像が発生してしまう場合があるといった問題が生じる。
本発明は以上の問題点に鑑みなされたものであり、その目的は、チリや残像などの発生を抑制できるベルト部材、転写装置及びそれらを備えた画像形成装置を提供することである。
上記目的を達成するために、請求項1の発明は、画像形成装置に用いられる、トナー像を担持する高抵抗の表面層を有した多層構造のループ状のベルト部材において、ループ内側の面である裏面における表面抵抗率の500[V]印加時の10[sec]測定値が常用対数値[log(Ω/□)]で9.0〜12.5であり、ループ外側の面であるおもて面における表面抵抗率の100[sec]測定値と1[sec]測定値との差であるおもて面表面抵抗率変化量が、100[V]印加時に常用対数値[log(Ω/□)]で0.5〜1.50、及び、500[V]印加時に常用対数値[log(Ω/□)]で0.2以下であり、該裏面における表面抵抗率の100[sec]測定値と1[sec]測定値との差である裏面表面抵抗率変化量が、100[V]印加時及び500[V]印加時共に常用対数値[log(Ω/□)]で0.1以下であることを特徴とするものである。
また、請求項2の発明は、請求項1のベルト部材において、上記表面層には少なくともカーボンブラックが添加されていることを特徴とするものである。
また、請求項3の発明は、請求項1または2のベルト部材において、上記おもて面側及び上記裏面側に、電子導電性部材とイオン導電性部材とを含む層が設けられていることを特徴とするものである。
また、請求項4の発明は、潜像担持体上のトナー像が一時的に転写される中間転写体を備えた転写装置において、該中間転写体として、請求項1、2または3のベルト部材を用いることを特徴とするものである。
また、請求項5の発明は、潜像を担持する潜像担持体と、該潜像をトナー像に現像する現像手段と、該潜像担持体上のトナー像が一時的に転写される中間転写ベルトを有する転写手段とを備えた画像形成装置において、該転写手段として、請求項4の転写装置を用いることを特徴とするものである。
以上、本発明においては、画像形成装置に用いられる、トナー像を担持する高抵抗の表面層を有した多層構造のループ状のベルト部材において、ループ内側の面である裏面における表面抵抗率の500[V]印加時の10[sec]測定値が常用対数値[log(Ω/□)]で9.0〜12.5であり、ループ外側の面であるおもて面における表面抵抗率の100[sec]測定値と1[sec]測定値との差であるおもて面表面抵抗率変化量が、100[V]印加時に常用対数値[log(Ω/□)]で0.5〜1.5、及び、500[V]印加時に常用対数値[log(Ω/□)]で0.2以下であり、上記裏面における表面抵抗率の100[sec]測定値と1[sec]測定値との差である裏面表面抵抗率変化量が、100[V]印加時及び500[V]印加時共に常用対数値[log(Ω/□)]で0.1以下であることで、後述する実験で明らかにしたように、チリや残像などが発生するのを抑制できるという優れた効果がある。
以下、図面を参照しながら、本発明の一実施形態について説明する。図2は本発明の一実施形態を示す画像形成装置の概略構成図である。この画像形成装置の中央には、複数の支持ローラに掛け回された中間転写体である無端ベルト状の中間転写ベルト201を備えた転写装置200が設けられている。また、第1の支持ローラ202と第2の支持ローラ203との間に張り渡された中間転写ベルト201上には、その搬送方向に沿って、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(Bk)の各色用の4つの画像形成部(画像形成ユニット)101Y,101M,101C,101Bkが横に並べて配置されており、これらの画像形成部(画像形成ユニット)101Y,101M,101C,101Bkはタンデム型画像形成部を構成している。このタンデム型画像形成部の各画像形成部101Y,101M,101C,101Bkの構成は同じであり、例えば図3に示すように構成されている。
図3はブラック(Bk)用の画像形成部101Bkを例に上げたものであり、この画像形成部101Bkには、像担持体であるドラム状の感光体102Bkと、該感光体にトナー像を形成するための画像形成手段を構成する帯電装置103Bk、露光装置110Bk、現像装置104Bkが設けられている。
露光装置110Bkは、図示の例では感光体102Bkの軸方向(主走査方向)に配置された発光ダイオード(LED)アレイとレンズアレイからなるLED書込み方式の露光装置であり、画像信号に応じてLEDを発光して感光体上に静電潜像を形成するものであるが、この他、レーザ光源と光偏向器(回転多面鏡等)と結像走査光学系からなるレーザ走査方式の露光装置を用いることができる。
現像装置104Bkは、現像剤を担持して回転する現像ローラ(または現像スリーブ)と、現像剤を撹拌・搬送して現像ローラ(または現像スリーブ)に供給する撹拌・搬送部材等で構成され、感光体102Bk上に形成された静電潜像を現像剤のトナーで現像して可視像化する。現像剤としては、トナーのみからなる一成分現像剤、あるいはトナーと磁性キャリアからなる二成分現像剤が用いられる。なお、図3はブラック(Bk)用の画像形成部101Bkの例であるので、トナーには、ブラック色のトナーが用いられるが、図2に示す他の色の画像形成部101Y,101M,101Cでは、それぞれイエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)の各色のトナーが用いられる。
上記の帯電装置103Bk、露光装置110Bk及び現像装置104Bkにより感光体102Bk上に形成されたトナー像は、一次転写部で中間転写ベルト201に転写されるが、一次転写部の中間転写ベルト201を挟んで感光体102Bkと対向する位置には一次転写手段である転写ブラシ105Bkが配設されており、この転写ブラシ105Bkには直流電源により転写バイアスが印加される。さらに感光体102Bkの回転方向で一次転写部の下流側には、画像転写後に感光体102Bk上に残留する残留トナーを除去するための感光体クリーニング装置106Bkが設けられている。
以上、ブラック(Bk)用の画像形成部101Bkを例に上げて説明したが、他のイエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)の各色の画像形成部101Y,101M,101Cの構成も同様である。そして図2では同じ構成部材には同じ番号を付け、各番号の後にY,M,C,Bkの記号を付けて色の区別をしている。
以上に説明したタンデム型画像形成部では、カラー画像形成時には、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(Bk)の各色の画像形成部(画像形成ユニット)101Y,101M,101C,101Bkで、それぞれ感光体102Y,102M,102C,102Bk上にイエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(Bk)の各色のトナー像を形成して中間転写ベルト201上に重ね合わせて転写し、カラー画像を形成する。また、白黒画像形成時には、ブラック用の画像形成部101Bkのみで画像形成を行い、中間転写ベルト201上に転写する。
一方、中間転写ベルト201を挟んでタンデム型画像形成装置と反対の側には、二次転写部が設けられている。この二次転写部は、外部ローラである二次転写ローラ308と、クリーニングブレード305と、除電針307から構成されている。外部ローラである二次転写ローラ308は、中間転写ベルト201を介して内部ローラである第3の支持ローラ304に押し当てられるように配置され、中間転写ベルト201上のトナー画像を、用紙等の記録媒体に転写する。また、記録媒体の搬送方向で二次転写部の上流側には、給紙カセット151や給紙コロ152からなる給紙部と、給紙ローラ153を有する給紙路155、及び、レジストローラ154が設けられている。また、二次転写部の下流側には、画像が転写された記録媒体を搬送する搬送ユニット156と、記録媒体上の転写画像を定着する定着装置107、及び、定着後の記録媒体を排紙部に排紙する排紙ローラ108が設けられている。また、複数ある支持ローラのうち、第1の支持ローラ202の図中左側に、画像転写後に中間転写ベルト201上に残留する残留トナーを除去する中間転写ベルトクリーニング装置210が設けられている。
次に、上記の構成の画像形成装置による画像形成についてより詳しく説明する。図示しない操作部のスタートスイッチが押されると、図示しない駆動モータにより支持ローラ202,203,304のうちの1つが回転駆動されると共に、他の2つの支持ローラが従動回転され、中間転写ベルト201が回転搬送される。また、これと同時に、各色の画像形成部(画像形成ユニット)101Y,101M,101C,101Bkで、像担持体である感光体102Y,102M,102C,102Bkが回転され、各感光体102Y,102M,102C,102Bk上にそれぞれイエロ−、マゼンタ、シアン、ブラックの単色画像が形成される。そして、中間転写ベルト201の搬送とともに、それらの単色画像が一次転写部で中間転写ベルト201に順次重ね合わせて転写され、中間転写ベルト201上に合成カラー画像が形成される。また、前述のようにスタートスイッチが押されると、給紙コロ152が回転され、給紙カセット151から用紙等のシート状の記録媒体が繰り出され、給紙路155に導かれた後、レジストローラ154に突き当てられて止められる。
その後、中間転写ベルト201上の合成カラー画像にタイミングを合わせてレジストローラ154が回転され、中間転写ベルト201と二次転写部の二次転写ローラ(外部ローラ)308との間に記録媒体が送り込まれる。そして、二次転写ローラ308による転写によって、記録媒体上にカラー画像が転写される。
[多層構造ベルト]
図4に多層ベルトの概略を示す。多層ベルトとは厚み方向に抵抗が異なる構成を有し模式的に図4(a)、図4(b)、図4(c)、図4(d)に示す。図中(○)は導電剤(カーボンブラック:CB)を示し、導電剤が多い部分は抵抗が低いことを示している。
図4(a)に示す積層ベルトの表層には、導電剤が添加されているが表示していない。図4(b)に示す2層ベルトの上層と基層との間に描いた太い線が抵抗の異なる層の境界を示している。図4(c)に示す無段層ベルトは単層ベルトであるが表層面側の導電剤が少なく抵抗が高くなっている。図4(d)に示す積層ベルトは、近年弾性ベルトで採用されている構成である。
また、図4(a)に示す積層ベルトは2層であるが、図4(d)に示すように基層と表層との間に中間層として弾性層等を設けた3層以上にすることができる。また、各層同士の接着性を高めるためにプライマー層を必要に応じて別途設けることがある。
[中間転写ベルトの製法]
中間転写ベルトの製造方法は限定するものでなく、ディッピング法、遠心成型法、押出成型法、インフレーション法、フローコート塗工法、スプレイ塗工法等内型または外型を用いて全ての製法で製造できるものである。
中間転写ベルトの層構成により上記製法を組み合わせて多層転写体を製造することができる。薄層である表層は、特にスプレイ塗工法、ディッピング法、又はフローコート塗布法等の製造が好ましい。
2層ベルトは、遠心成型法では外層を成型し乾燥・固化後、内層(基層)を同様に成型し、乾燥・固化し2層ベルトを製造する。また無段階ベルトは半乾燥状態とし、カーボンブラックを層中に固定させその後移動させる方法がある。例えばポリイミドベルトを1次乾燥工程で半乾燥状態としカーボンブラックを層中に固定化後、表面を溶剤で濡らすことで層の一部を膨潤、溶解させカーボンブラックを移動可能とし、再度乾燥を行う。乾燥工程で表面の導電剤が内部に移行させ表面のカーボンブラック量が低減することで表面を高抵抗化する。
[基層材料]
ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリフェニレンサルファイド樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂、ポリフッ化ビニリデン樹脂、ポリサルフォン樹脂、ポリエーテルサルフォン樹脂、ポリメチルペンテン樹脂等単独、又は複数使用できる。強度からポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂が好ましく、導電性カーボンブラック等を添加することで抵抗をコントロールする。
[中間層として弾性材料]
クロロプレンゴム、ウレタンゴム、イソプレンゴム、ブチルゴム、エピクロルヒドリン系ゴム、フッ素系ゴム、シリコーンゴム、アクリルゴム、EPDM、SBR、NBR、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレンゴム等が挙げられる。導電剤にはイオン導電剤、カーボンブラック、又は両者添加するハイブリッド添加し抵抗をコントロールする。多くは基層と同一製法により製造することが出来、例えば、基層上に基層と同一製法のスパイラル状に塗布することが好ましい。
中間転写ベルトの表層材料としては、特に制限はないが、中間転写ベルトのベルト外周面へのトナーの付着力を小さくして2次転写性を高めるものが要求される。
例えば、ポリウレタン、ポリエステル、ポリミアド等の樹脂材料で構成することができる。これら樹脂材料で構成されるコート層は、イソシアンート、メラミン、シランカプラー、カルボジイミド等の硬化剤により樹脂塗膜として得られる。また、コート層は、PTFE(ポリ4フッ化エチレン)、シリカ、2硫化モリブデン、カーボンブラックなどの離型性フィラーを充填させることによって表面の離型性を高めクリーニング性の改善やトナー、放電性生成物の蓄積を抑えることができる。また、コート層は、抵抗調整用として導電性のカーボンブラック、酸化錫、酸化亜鉛などの導電性フィラー(導電剤)を含有してもよい。さらに、コート層には、これらのフィラーを均一混合分散するために、フッ素系、シリコーン系、ノニオン系の界面活性材などを含有してもよい。
ポリウレタン、ポリエステル、エポキシ樹脂等の1種類あるいは2種類以上を使用し表面エネルギーを小さくし潤滑性を高める材料、たとえばフッ素樹脂、フッ素化合物、フッ化炭素、2酸化チタン、シリコンカーバイト等の粉体、粒子を、1種類あるいは2種類以上または粒径を異ならしたものを分散させ使用することができる。また、フッ素系ゴム材料のように熱処理を行うことでベルト外周面にフッ素リッチな層を形成させ表面エネルギーを小さくさせたものを使用することもできる。抵抗制御用にカーボンブラックを用いることができる。
遠心成型によるポリイミド樹脂について説明を行う。ポリイミドは、一般的には芳香族多価カルボン酸無水物或いはその誘導体と芳香族ジアミンとの縮合反応によって得られる。しかし、その剛直な主鎖構造により不溶、不融の性質を持つため、酸無水物と芳香族ジアミンからまず有機溶媒に可溶なポリアミック酸(又はポリアミド酸〜ポリイミド前駆体)を合成し、この段階で様々な方法で成型加工が行われ、その後加熱若しくは化学的な方法で脱水環化(イミド化)することでポリイミドが得られる。
例えば芳香族多価カルボン酸無水物を具体的に挙げるなら、エチレンテトラカルボン酸二無水物、シクロペンタンテトラカルボン酸二無水物、ピロメリット酸二無水物、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物等が挙げられる。これらは単独あるいは2種以上混合して用いられる。
次に混合して使用できる芳香族ジアミンとしては、例えばm−フェニレンジアミン、o−フェニレンジアミン、p−フェニレンジアミン、m−アミノベンジルアミン、p−アミノベンジルアミン、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、3,3’−ジアミノジフェニルエーテル、3,4’−ジアミノジフェニルエーテル、等が挙げられる。これらは単独または2種以上を混合して使用される。勿論上記材料に限定されるものではないことは当然である。
これらの芳香族多価カルボン酸無水物成分とジアミン成分を略等モル有機極性溶媒中で重合反応させることによりポリイミド前駆体(ポリアミック酸)を得ることができる。
ポリアミック酸の重合反応に使用される有機極性溶媒としては、ポリアミック酸を溶解するものであれば特に限定されないが、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドンが特に好ましい。
これらのポリアミック酸組成物は容易に合成することが可能であるが、簡便には有機溶媒にポリアミック酸組成物が溶解されているポリイミドワニスとして上市されているものを入手することが可能である。
それらは例えば、トレニース(東レ社製)、U−ワニス(宇部興産社製)、リカコート(新日本理化社製)、オプトマー(JSR社製)、SE812(日産化学社製)、CRC8000(住友ベークライト社製)等を代表的に挙げることができる。
電気抵抗値を調節するための抵抗制御剤のうち、電子電導性抵抗制御剤としては、例えば、カーボンブラック、黒鉛、或いは銅、スズ、アルミニウム、インジウム等の金属、酸化スズ、酸化亜鉛、酸化チタン、酸化インジウム、酸化アンチモン、酸化ビスマス、アンチモンをドープした酸化スズ、スズをドープした酸化インジウム等の金属酸化物微粉末などが挙げられる。
また、イオン電導性抵抗制御剤としては、テトラアルキルアンモニウム塩、トリアルキルベンジル、アンモニウム塩、アルキルスルホン酸塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルサルフェート、グルセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルアミン、ポリオキシエチレン脂肪アルコールエステル、アルキルベタイン、過塩素酸リチウム、などが挙げられる。しかし、本発明はこれらの例示化合物に限定されるものでない。
本発明のポリイミドはこれらの抵抗制御剤の内、カーボンブラックを好ましく用いることができる。
このようにして得られたポリアミック酸は、300〜350[℃]に加熱することによってポリイミドに転化する方法で、ポリイミド樹脂を得ることができる。
一方、熱溶融による押し出し成型に使用される熱可塑性樹脂として特に制限はないが、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、PBT(ポリブチレンテレフタレート)、PET(ポリエチレンテレフタレート)、PC(ポリカーボネート)、ETFE(エチレンテトラフルオロエチレン)、PVdF(ポリ塩化ビニリデン)等がある。
熱溶融成形方法については、特に限定されるものではないが、例えば、連続溶融押出成形法、射出成形法、ブロー成形法、あるいはインフレーション成形法など公知の方法を採用して得ることができるが、シームレスベルトの成形方法として望ましいのは、連続溶融押出成形法である。
導電剤に多くはカーボンブラックを使用し、混練によりカーボンブラックの分散を行い高圧で押し出すため、高分散導電剤等、液体原料を使用する成型よりカーボンブラックの分散性は劣り、抵抗変動等静電特性は劣る傾向にある。
[中間転写ベルト製造実施例]
本実施形態では、芳香族多価カルボン酸無水物に3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、芳香族ジアミンとしてp−フェニレンジアミン、有機極性溶媒としてN−メチル−2−ピロリドン(NMP)を用いて重合させポリアミック酸溶液を得る。固形分濃度に対して17[%]のアセチレンブラックを添加しアクアマイザー(細川ミクロン社製)を用いて混合撹拌させ、最終固形分濃度が18%のポリイミド樹脂の前駆体であるポリアミック酸を得た。
[基層]
このようにして得られたポリアミック酸を遠心成型法により環状体に成型を行った。直径319[mm]の金属製円筒型を100[rpm]で回転させながら、型の内面にディスペンサにて固形分濃度19[%]のポリアミック酸を均等に供給し、次に1000[rpm]、5[min]回転させることで液のレベリングを行う。次に回転数を300[rpm]に下げ、徐々に温度を130[℃]まで上げ、40分乾燥固形化を行う。固形化後円筒型は停止状態で350[℃]まで加熱を行いイミド閉環が行われイミド化が完了しポリイミド被膜を得た。室温まで冷却した円筒型からポリイミド被膜を外し、両端部を330[mm]幅にカットすることで膜厚80[μm]の基層となるシームレス中間転写ベルトを得た。抵抗は導電剤添加量(カーボンブラックの添加量)で調整を行った。
上記基層の実施例は遠心成型法で製造を行ったが、回転する内型の外表面にスパイラル状に塗工することも可能であり、基層を形成後そのまま弾性層や表層を形成することが出来積層ベルト製法として好ましい。
[表層]
次に、直径319[mm]の円筒型に上記膜厚80[μm]の基層となるシームレス中間転写ベルトをかぶせ両端をテープにて目張りシールを行う。
表層用にポリウレタンプレポリマー(100重量部)、硬化剤;イソシアネート(3重量部)、カーボンブラック(10重量部)、分散剤(4重量部)、MEK(500重量部)を均一分散させた。ポリイミド樹脂が形成されている円筒形型を浸け、30[mm/sec]で引き上げ自然乾燥を行った。この乾燥後繰り返しを行い5[μm]のウレタンポリマーの表層を形成した。室温で乾燥後、130[℃]で2時間の架橋を行い、樹脂層が80[μm]、表層が5[μm]の積層形成の中間転写ベルトを得た。表層の膜厚制御は繰り返し回数、ポリマー固形分濃度で行った。また、表層抵抗は導電剤の添加量により変化させた。
[表層抵抗]
表層抵抗はカーボンブラックの抵抗、添加量、粒径(2次粒子)によって調整することができる。粒径が大きいと粒子間距離がバラツキ、電流の導通路が形成し易いため抵抗は小さくなり、耐圧が下がることから電圧依存性も大きくなる。カーボン分散液の分散性を高くすることは、カーボン粒子間距離が均等になるにつれ抵抗は上昇し、耐圧が高くなることから電圧依存性も小さくなる。
上記分散性を高くすると抵抗が高くなることから、抵抗調整の為に、カーボンの抵抗や添加量の最適化が必要となる。但し、単純にカーボン添加量を増やすことは硬く脆くなってしまうため評価に負荷の大きな最適化設計が必要となってくる。また、カーボンの分散性を高めることは分散時間や混練時間を長くとることであり一般的にコストアップとなってしまう。従って、品質とコストに優れた環状体が要求されている。
[弾性ベルトの実施例]
本実施形態では、基層として芳香族多価カルボン酸無水物に3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、芳香族ジアミンとしてp−フェニレンジアミン、有機極性溶媒としてN−メチル−2−ピロリドン(NMP)を用いて重合させポリアミック酸溶液を得る。固形分濃度に対して17%のアセチレンブラックを添加しアクアマイザー(細川ミクロン社製)を用いて混合撹拌させ、最終固形分濃度が18%のポリイミド樹脂の前駆体であるポリアミック酸を得た。このようにして得られたポリアミック酸をスパイラル成型法により基層成型を行った。直径319[mm]の金属製円筒型を30[rpm]で回転させながら、型の外面に5[mm]幅のディスペンサを1回転で5[mm]の速度で型の軸方向へ等速で移動させ固形分濃度19[%]のポリアミック酸を均等に塗布する。次に1000[rpm]、5[min]回転させることで液のレベリングを行う。
次に回転数を300[rpm]に下げ、徐々に温度を130[℃]まで上げ、40分乾燥固形化を行う。固形化後円筒型は停止状態で350[℃]まで加熱を行いイミド閉環が行われイミド化が完了し基層となる膜厚80[μm]のポリイミド被膜を得た。抵抗は導電剤添加量(カーボンブラック)で調整を行った。
弾性層としてクロロプレンゴム(CR:電気化学工業社製、デンカクロロプレンA−30)100部と、加硫剤(三新化学工業社製、サンセラー22C)1.5部と、カーボンブラック(ケッチェンブラックインターナショナル社製、ケッチェンEC)2部とを混練りした後、MEK溶剤に溶解し、弾性層用材料を得た。
型の外表面に形成された基層の表面に基層と同一スパイラル成型で弾性層を形成した。
基層が形成された直径319[mm]の金属製円筒型を40[rpm]で回転させながら、型の外面に5[mm]幅のディスペンサを1回転で5[mm]の速度で型の軸方向へ等速で移動させ弾性材料を均等に塗布する。次に1000[rpm]、5[min]回転させることで液のレベリングを行う。
次に回転数を300[rpm]に下げ、徐々に温度を150[℃]まで上げ、50分乾燥固形化しゴム層厚み250[μm]の弾性層を得た。こうして得られた弾性ベルトに表層を形成させる。
表層用にポリウレタンプレポリマー(100重量部)、硬化剤;イソシアネート(3重量部)、カーボンブラック(10重量部)、分散剤(4重量部)、MEK(500重量部)を均一分散させた。弾性層が形成されている円筒形型を浸け、30[mm/sec]で引き上げ自然乾燥を行った。この乾燥後繰り返しを行い5[μm]のウレタンポリマーの表層を形成した。室温で乾燥後、130[℃]で2時間の架橋を行い、樹脂層が80[μm]、ゴム層が250[μm]及び表層が5[μm]の弾性中間転写ベルトを得た。
表層の膜厚制御は繰り返し回数、ポリマー固形分濃度で行った。また、表層抵抗は導電剤の添加量により変化させた。
弾性層の抵抗制御は、カーボンブラック単独、イオン導電剤であるテトラアルキルアンモニウム塩単独、更にはカーボンブラックとテトラアルキルアンモニウム塩とを添加したハイブリッドで行った。
また、図4(b)に示すような2層ベルトを遠心成型で形成する際には次のようにして行う。上記同一材料で外層と内層はカーボンブラックの添加量を変え、外層は内層より添加量を減らし抵抗を変えている。直径319[mm]の金属製円筒型を100[rpm]で回転させながら、型の内面にディスペンサにて外層材料である固形分濃度19[%]のポリアミック酸を均等に供給し、次に1000[rpm]、5[min]回転させることで液のレベリングを行う。
次に回転数を300[rpm]に下げ、徐々に温度を130[℃]まで上げ、40分乾燥固形化を行い室温まで冷却後、外層が形成された金属製円筒型を100[rpm]で回転させながら、型の内面にディスペンサにて導電剤添加量の異なる内層材料である固形分濃度19[%]のポリアミック酸を均等に供給し、次に1000[rpm]、5[min]回転させることで液のレベリングを行う。次に回転数を300[rpm]に下げ、徐々に温度を130[℃]まで上げ、40分乾燥固形化を行う。
固形化後円筒型は停止状態で350[℃]まで加熱を行いイミド閉環が行われイミド化が完了しポリイミド被膜を得た。室温まで冷却した円筒型からポリイミド被膜を外し、両端部を330[mm]幅にカットすることで内外層厚が均等の80[μm]のシームレス中間転写ベルトを得た。
また、図4(c)に示すような無段層ベルトを、回転する内型の外表面にスパイラル状に塗工して製造する際には次のようにして行う。直径319[mm]の金属製円筒型を30[rpm]で回転させながら、型の外面に5[mm]幅のディスペンサを1回転で5[mm]の速度で型の軸方向へ等速で移動させ固形分濃度19[%]のポリアミック酸を均等に塗布する。
次に1000[rpm]、5[min]回転させることで液のレベリングを行う。その後、回転数を300[rpm]に下げ、徐々に温度を130[℃]まで上げ、40分乾燥固形化を行い室温まで冷却。外層が形成された金属製円筒型を100[rpm]で回転させながら溶剤であるNMPを一定量スプレイで塗布を行う。
[実験]
次に、チリ、残像及び放電画像などの発生を抑制し良好な画像を得ることができるベルト部材の検証のために行った実験について説明する。表1に本実験で用いた実施例1〜3及び比較例1〜6のベルト部材の特性対比表、画像評価及び総合評価などを示す。
Figure 0005142037
実施例1〜3及び比較例1〜6のベルト部材は、基層が基層材料としてポリイミドを用い厚みが80[μm]であり、中間層が中間層材料としてクロロプレンゴムを用い厚みが250[μm]であり、表層が表層材料としてウレタンゴムを用い厚みを各実施例及び各比較例で異ならせた、弾性ベルトであって、上述した中間転写ベルト製法や条件などによって製造した。なお、各層の膜厚は、ベルト厚み方向断面を顕微鏡を用いて撮影し、その撮影画像から測定した。
また、表層における導電剤の種類、導電剤添加量及び膜厚を実施例1〜3及び比較例1〜6のベルト部材それぞれで異ならせ、表層の抵抗が個々で異なる大きさとなるようにした。
表1に、100[V]印加時及び500[V]印加時での、ベルト部材のループ外側の面であるおもて面(トナー像を担持する側の面)における表面抵抗率の100[sec]値と1[sec]値との差であるおもて面表面抵抗率変化量Δρsf100,Δρsf500と、ベルト部材のループ内側の面である裏面における表面抵抗率の100[sec]値と1[sec]値との差である裏面表面抵抗率変化量Δρsb100,Δρsb500とを示す。
また、表1に示した諸特性の測定方法や求め方などは次の通りである。
[体積抵抗測定方法]
本実験におけるベルト部材の体積抵抗率(ρv)の測定は、ハイレスターUP(三菱化学株式会社)を用いて、以下の条件で行った。
・ハイレスターUP(三菱化学株式会社)
・URSプローブ
・レジテーブル:1[mm]厚導電ゴム附き
・測定電圧:100[V]
・測定時間:10[sec]値
・加圧力:2[kgf]
[表面抵抗測定方法]
本実験におけるベルト部材の表面抵抗率(ρs)の測定は、ハイレスターUP(三菱化学株式会社)を用いて、以下の条件で行った。
・ハイレスターUP(三菱化学株式会社)
・URSプローブ
・レジテーブル:絶縁
・測定電圧:500[V]
・測定時間:10[sec]値
・加圧力:2[kgf]
また、本実験においては、体積抵抗率及び表面抵抗率を常用対数値で表示している。
・体積抵抗率:log(Ω・cm)
・表面抵抗率:log(Ω/□)
[表面抵抗率変化量]
表面抵抗率変化量は図5に示すように、表面抵抗率測定時間が100[sec]のときの表面抵抗率である100[sec]値と、表面抵抗率測定時間が1[sec]のときの表面抵抗率である1[sec]値との差であり、数1で表すことができる。
Figure 0005142037
ただし、表面抵抗率測定時間が1[sec]〜100[sec]の間で、100[sec]値より高い表面抵抗率を表示した場合には、その表面抵抗率を100[sec]値に変えて表面抵抗率の最大値とし、その最大値と1[sec]値との差を表面抵抗率変化量とする。
[表面抵抗率電圧依存性]
表面抵抗率電圧依存性(印加電圧が大きくなるほど抵抗が低くなる特性)は500[V]印加時の測定抵抗と100[V]印加時の測定抵抗との差とする。
また、表1に示した画像評価(チリ、残像、放電画像)や総合評価などは、図2に示した画像形成装置が備える転写装置200に、表1に示す実施例1〜3及び比較例1〜6のベルト部材を中間転写ベルト201として搭載し、10[℃]15[%]RH環境にて連続10枚印刷を行い、10枚目の用紙上に形成された画像について行った。
画像評価としては、チリ、残像及び放電画像の基準となるものを予め設定しておき、その基準をもとにして、チリはランク付けをして評価を行い、残像及び放電画像は発生の有無で評価を行った。なお、チリのランクはランク4以上を良好とした。
総合評価としては、形成された画像を目視で、良好な画像が得られたものを「○」、チリや残像や放電画像などの少なくとも1つが発生しているが実使用上許容できる問題無い画像が得られたものを「△」、実使用上許容できない不良画像が得られたものを「×」とした。
ここで、表1からわかるように、実施例1〜3及び比較例1〜6のベルト部材において、表層材抵抗から、許容できないチリや残像及び放電画像の発生を抑制できるか否かの判断を行うことができないことがわかる。
一般にベルト部材の抵抗は、一定の測定時間(例えば10[sec])での体積抵抗率や表面抵抗率として測定される。しかし、積層ベルトは異なる抵抗や厚みなどの層で形成されることが一般的であり、積層ベルトにおける上述した抵抗測定は積層ベルト全体の抵抗を測定していることが多く、個々の層の抵抗は測定できていない。したがって、同一抵抗値であっても転写品質がばらつくことが多く、画像形成装置本体のシステムを調整することで転写品質がばらつくのを抑える対応をとることが多い。
例えば、高抵抗の表層を有する積層ベルトであるベルト1とベルト2との表面抵抗を測定すると、図6に示すように、表面抵抗率の10[sec]値は同等であるが、表面抵抗率の100[sec]値が大きく異なっている。
これは、高抵抗の表層を有する積層ベルトに経時で連続して電圧を印加すると、電圧印加時間に応じて高抵抗の表層と、その表層に隣接する層との界面に電荷が保持され電流が流れにくくなっていき積層ベルトの表面抵抗が上昇していくからである。なお、この上昇量は、表層の抵抗が高くなるほど、上記界面に電荷が保持され易くなるため大きくなることが知られている。
このように表層が高抵抗材料で形成されていれば、表層がたとえ1[μm]の薄層であっても上記界面に電荷が保持されることで発生する残留電荷による残像などの問題が生じ得る。
そのため、本実験では、表面抵抗率変化量と画像評価との間に関連性が認められるものと考えて、実施例1〜3及び比較例1〜6のベルト部材において、おもて面表面抵抗率変化量と裏面表面抵抗率変化量とを測定した。
なお、表1に示すように裏面表面抵抗率変化量Δρsb100,Δρsb500は、実施例1〜3及び比較例1〜6のいずれのベルト部材も100[V]印加時及び500[V]印加時共に、常用対数値で0.1以下であった。このことから、おもて面の表面抵抗率変化量は表層の抵抗に起因するものであると判断できる。
また、表1などに基づいて図1に、100[V]印加時のおもて面表面抵抗率変化量Δρsf100を横軸にとり、500[V]印加時のおもて面表面抵抗率変化量Δρsf500を縦軸にとって、実施例1〜3及び比較例1〜6のベルト部材における、おもて面表面抵抗率変化量と画像評価などとの関係を示した。
表1及び図1からわかるように、実施例1〜3のベルト部材においては、画像評価の結果に、許容できないチリ、残像及び放電画像のいずれも発生しておらず、良好な画像が得られた。
実施例1〜3のベルト部材においては、印加電圧が低いとき(例えば100[V]印加時)に、経時で連続して電圧を印加することで、ベルト部材のおもて面上に形成されたトナー像を静電的な力によってその場に充分留めることができる程度の量の電荷(トナーの帯電極性とは逆極性の電荷)が表層と中間層との界面などに保持されるため、チリなどの発生を抑制できたと考えられる。また、印加電圧が高いとき(例えば500[V]印加時)には、経時で連続して電圧を印加することで、表層と中間層との界面などにチリや残像などが発生しない程度の量の電荷が保持されるため、チリや残像などの発生を抑制できたと考えられる。
なお、表1などには示していないが、実施例1〜3のベルト部材においては、大きな表面抵抗率電圧依存性が認められなかった。
これに対し、表1及び図1からわかるように、比較例1〜6のベルト部材においては、画像評価の結果に、チリ、残像または放電画像の少なくとも1つが発生した。ここで、比較例2のベルト部材を用いた場合には、チリのランク3.5と評価が「良好」にはならなかったが、許容できる程度のチリであった。また、比較例3のベルト部材及び比較例6のベルト部材を用いた場合には、残像が発生したが許容できる程度であった。よって、比較例1、4及び5のベルト部材を用いた場合には、許容できないチリ、残像または放電画像の少なくとも1つが発生し不良画像となった。また、比較例2のベルト部材を用いた場合には、チリの発生が認められるが実使用上許容できる問題の無い画像が得られた。また、比較例3のベルト部材及び比較例6のベルト部材を用いた場合には、残像の発生が認められるが実使用上許容できる問題の無い画像が得られた。
これらの結果から、画像形成装置に用いられる、トナー像を担持する高抵抗の表層を有した多層構造のループ状のベルト部材である中間転写ベルト201として、ループ内側の面である裏面における表面抵抗率の500[V]印加時の10[sec]値が常用対数値[log(Ω/□)]で9.0〜12.5であり、ループ外側の面であるおもて面における表面抵抗率の100[sec]値と1[sec]値との差であるおもて面表面抵抗率変化量が、100[V]印加時に常用対数値[log(Ω/□)]で0.5〜1.50、及び、500[V]印加時に常用対数値[log(Ω/□)]で0.2以下であり、上記裏面における表面抵抗率の100[sec]値と1[sec]値との差である裏面表面抵抗率変化量が、100[V]印加時及び500[V]印加時共に常用対数値[log(Ω/□)]で0.1以下であるベルト部材を用いることで、許容できないチリや残像及び放電画像の発生を抑制することができ、良好な画像が得られることがわかる。
また、少なくともおもて面の表面抵抗率変化量は、印加電圧が低いほど大きくなる傾向にある。例えば、100[V]印加時のおもて面の表面抵抗率変化量Δρsb100が常用対数値[log(Ω/□)]で1.0である、実施例1〜3及び比較例1〜6のベルト部材のような高抵抗の表層を有するベルト部材における500[V]印加時のおもて面の表面抵抗率変化量Δρsb500は、常用対数値[log(Ω/□)]で1.0以上にはならない。このことから、図1に示した灰色部の特性を有するベルト部材は製造できない。
また、本実験で用いたベルト部材は、基層、中間層及び表層が順に積み重なった3層の弾性ベルトであったが、他の構成のベルト部材でも良く、上述した条件を満たすことで、許容できないチリや残像及び放電画像の発生を抑制することができる。
以上、本実施形態によれば、画像形成装置に用いられる、トナー像を担持する高抵抗の表層(表面層)を有した多層構造のループ状のベルト部材において、ループ内側の面である裏面における表面抵抗率の500[V]印加時の10[sec]値が常用対数値[log(Ω/□)]で9.0〜12.5であり、ループ外側の面であるおもて面における表面抵抗率の100[sec]値と1[sec]値との差であるおもて面表面抵抗率変化量が、100[V]印加時に常用対数値[log(Ω/□)]で0.5〜1.50、及び、500[V]印加時に常用対数値[log(Ω/□)]で0.2以下であり、上記裏面における表面抵抗率の100[sec]値と1[sec]値との差である裏面表面抵抗率変化量が、100[V]印加時及び500[V]印加時共に常用対数値[log(Ω/□)]で0.1以下であることで、上述した実験で明らかにしたように、許容できないチリや残像及び放電画像の発生を抑制することができ、良好な画像を得ることができる。
また、本実施形態によれば、上述した実験の結果からわかるように、上記表層には少なくともカーボンブラックが添加されていることで、高転写電圧を印加してもチリや残留電荷による残像などの発生を抑制することができる。
また、本実施形態によれば、上述した実験の結果からわかるように、上記おもて面側及び上記裏面側に、電子導電性部材とイオン導電性部材とを含む層である上記表層と上記中間層とが設けられていることで、高転写電圧を印加してもチリや残留電荷による残像の発生を抑制することができる。
また、本実施形態によれば、潜像担持体である感光体102上のトナー像が一時的に転写される中間転写体である中間転写ベルトを備えた転写装置において、上記中間転写ベルトとして本発明のベルト部材を用いることにより、上述した実験の結果からわかるように、許容できないチリや残像及び放電画像の発生を抑制することができ、良好な画像を得ることができる。
また、本実施形態によれば、潜像を担持する潜像担持体である感光体102と、上記潜像をトナー像に現像する現像手段である現像装置104と、感光体102上のトナー像が一時的に転写される中間転写ベルト201を有する転写手段とを備えた画像形成装置において、上記転写手段として、本発明のベルト部材を中間転写ベルト201として用いた転写装置を用いることで、上述した実験の結果からわかるように、許容できないチリ、残像及び放電画像の発生を抑制することができ、良好な画像を得ることができる。
おもて面表面抵抗率変化量と画像評価などとの関係を示したグラフ。 本実施形態に係る画像形成装置の概略構成図。 画像形成部の概略構成図。 (a)積層ベルトの模式図。(b)2層ベルトの模式図。(c)無段層ベルトの模式図。(d)中間層として弾性層を有する積層ベルトの模式図。 表面抵抗率変化量の説明に用いるグラフ。 高抵抗の表層を有する2種類のベルト部材の表面抵抗率変化を示したグラフ。
符号の説明
101 画像形成部
102 感光体
104 現像装置
200 転写装置
201 中間転写ベルト

Claims (5)

  1. 画像形成装置に用いられる、トナー像を担持する高抵抗の表面層を有した多層構造のループ状のベルト部材において、
    ループ内側の面である裏面における表面抵抗率の500[V]印加時の10[sec]測定値が常用対数値[log(Ω/□)]で9.0〜12.5であり、
    ループ外側の面であるおもて面における表面抵抗率の100[sec]測定値と1[sec]測定値との差であるおもて面表面抵抗率変化量が、100[V]印加時に常用対数値[log(Ω/□)]で0.5〜1.50、及び、500[V]印加時に常用対数値[log(Ω/□)]で0.2以下であり、
    該裏面における表面抵抗率の100[sec]測定値と1[sec]測定値との差である裏面表面抵抗率変化量が、100[V]印加時及び500[V]印加時共に常用対数値[log(Ω/□)]で0.1以下であることを特徴とするベルト部材。
  2. 請求項1のベルト部材において、
    上記表面層には少なくともカーボンブラックが添加されていることを特徴とするベルト部材。
  3. 請求項1または2のベルト部材において、
    上記おもて面側及び上記裏面側に、電子導電性部材とイオン導電性部材とを含む層が設けられていることを特徴とするベルト部材。
  4. 潜像担持体上のトナー像が一時的に転写される中間転写体を備えた転写装置において、
    該中間転写体として、請求項1、2または3のベルト部材を用いることを特徴とする転写装置。
  5. 潜像を担持する潜像担持体と、
    該潜像をトナー像に現像する現像手段と、
    該潜像担持体上のトナー像が一時的に転写される中間転写ベルトを有する転写手段とを備えた画像形成装置において、
    該転写手段として、請求項4の転写装置を用いることを特徴とする画像形成装置。
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