JPH11282277A - 画像形成方法及び画像形成装置 - Google Patents

画像形成方法及び画像形成装置

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JPH11282277A
JPH11282277A JP8359898A JP8359898A JPH11282277A JP H11282277 A JPH11282277 A JP H11282277A JP 8359898 A JP8359898 A JP 8359898A JP 8359898 A JP8359898 A JP 8359898A JP H11282277 A JPH11282277 A JP H11282277A
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JP
Japan
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image
potential
toner
image forming
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Application number
JP8359898A
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English (en)
Inventor
Hiroyuki Sugimoto
浩之 杉本
Katsuichi Ota
勝一 大田
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Ricoh Co Ltd
Original Assignee
Ricoh Co Ltd
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Publication date
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  • Electrostatic Charge, Transfer And Separation In Electrography (AREA)

Abstract

(57)【要約】 【課題】 転写チリの抑制の向上を図る。 【解決手段】 導電性基体上に直接または下引き層を介
して少なくとも電荷発生顔料と有機正孔輸送物質が結着
剤中に分散された単層の有機感光層を設けた感光体を用
い、感光体上にトナー画像を形成し、このトナー画像を
転写電界によって転写体表面に転写するとともに、感光
体上の非画像部と転写体間の放電により転写体表面の非
画像部にトナーと同極性の電荷を発生させ、転写体上で
の非画像部の電位が、転写されたトナー画像の表面電位
よりも絶対値が大きくなるように、転写工程時の電界強
度を設定する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、複写機、プリン
タ、ファクシミリ等の画像形成装置に関し、詳しくは、
トナー画像を転写体へ転写する際のトナーの飛び散り防
止技術に関する。
【0002】
【従来の技術】一般に、複写機、プリンタ、ファクシミ
リ等の画像形成装置では、像担持体としての感光体上に
静電潜像を形成し、静電潜像を現像手段で現像してトナ
ー画像を形成し、転写手段で転写バイアスを印加してト
ナー画像を転写体に転写することが行われている。カラ
ー複写機では、複数色のトナー画像を重ね転写すること
によりカラー画像を得るようになっており、その一方式
として、感光体上に異なる色成分毎に形成されるトナー
画像を中間転写体上に順次重ね転写し、その重ね転写さ
れたトナー画像を転写紙等に一括転写することによって
カラー画像を得る中間転写方式がある。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】一般に、上述のような
画像形成装置での転写工程では、感光体上で電場により
拘束されているトナー粒子群を拘束力のない転写体上の
均一面に静電引力で引っ張って移動させるため、原理的
にトナーが飛び散り易いという問題がある。このトナー
の飛び散りは「転写チリ」とも呼ばれており、転写チリ
は画像ボケ等の原因となる。中間転写方式の画像形成装
置は、トナー画像の転写工程が二回あるため、最終的な
出力画像にボケやにじみ等を生じ易いといういう点で直
接転写方式のものに比べて不利である。
【0004】一般に、トナー画像の転写効率が最大で、
且つ、転写チリが最小となるように、転写バイアス値や
転写電流値などの転写条件の初期設定を工場出荷時等に
行っているが、トナー画像の転写効率と転写チリ抑制を
両立させる転写条件の範囲が狭い場合もあり、また、転
写条件の設定が微妙で不安定性を有しているため、転写
チリの発生を低減させることは従来困難であった。特
に、中間転写方式では、中間転写体上のトナー画像のボ
ケを低減させること、すなわち、感光体から中間転写体
への転写(一次転写)での転写チリの抑制が高画質化実
現へのキーポイントとなる。
【0005】本発明は、このような転写工程における転
写チリの発生をハイレベルに且つ確実に抑制できる画像
形成方法及び画像形成装置の提供を、その目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】上述のように、トナー粒
子群であるトナー画像が電場により拘束された状態から
拘束されないところへ引っ張られる転写プロセスに転写
チリの発生原因があり、これを解決するためには転写体
上においてもトナー画像を電場により拘束すればよい。
転写体上にポテンシャル井戸を形成し、この中にトナー
画像を移動させて全体的に嵌め込めばトナーの飛び散り
を防止することが可能となる。これが本発明の大まかな
趣旨である。具体的には、請求項1記載の発明では、導
電性基体上に直接または下引き層を介して少なくとも電
荷発生顔料と有機正孔輸送物質が結着剤中に分散された
単層の有機感光層を設けた感光体を用い、感光体上にト
ナー画像を形成し、このトナー画像を転写電界によって
転写体表面に転写するとともに、感光体上の非画像部と
転写体間の放電により転写体表面の非画像部にトナーと
同極性の電荷を発生させ、転写体上での非画像部の電位
が、転写されたトナー画像の表面電位よりも絶対値が大
きくなるように、転写工程時の電界強度を設定する、と
いう手順を採っている。
【0007】請求項2記載の発明では、請求項1記載の
画像形成方法において、上記結着剤中に有機アクセプタ
性化合物が分散されている感光体を用いることを特徴と
する。
【0008】請求項3記載の発明では、導電性基体上に
直接または下引き層を介して少なくとも電荷発生顔料と
有機正孔輸送物質が結着剤中に分散された単層の有機感
光層を設けた感光体と、感光体を均一に帯電する帯電手
段と、露光手段と、感光体上に形成された静電潜像を現
像して感光体上にトナー画像を形成する現像手段と、感
光体上に形成されたトナー画像を転写体表面に転写する
転写手段と、トナー画像の転写工程において感光体上の
非画像部と転写体間に放電を発生させる放電発生手段と
を有し、転写体上における非画像部の転写工程後の電位
が、転写されたトナー画像の表面電位よりも絶対値が大
きくなるように上記転写手段及び放電発生手段を制御す
る、という構成を採っている。
【0009】請求項4記載の発明では、請求項3記載の
構成において、上記結着剤中に有機アクセプタ性化合物
が分散されている、という構成を採っている。
【0010】請求項5記載の発明では、請求項3又は4
記載の構成において、転写工程において、上記放電発生
手段による転写体上の非画像部への電位形成が、上記転
写手段によるトナーの転写に先駆けて始まるように制御
する、という構成を採っている。
【0011】請求項6記載の発明では、請求項3,4又
は5記載の構成において、トナーが負帯電性、上記感光
体が正帯電性であり、有機感光層中の有機正孔輸送物質
の含有率が20重量%〜60重量%の範囲である、とい
う構成を採っている。
【0012】請求項7記載の発明では、請求項6記載の
構成において、上記感光体が、有機感光層塗布後の乾燥
温度を有機正孔輸送物質の融点の−5℃から+30℃の
範囲として製造されたものである、という構成を採って
いる。
【0013】請求項8記載の発明では、請求項3,4,
5又は6記載の構成において、上記転写手段が上記放電
発生手段を兼ねる、という構成を採っている。
【0014】請求項9記載の発明では、請求項3,4,
5,6又は7記載の構成において、上記転写体が、トナ
ー画像を一時的に担持する無端ベルト状の中間転写ベル
トである、という構成を採っている。
【0015】請求項10記載の発明では、請求項9記載
の構成において、上記中間転写ベルトが、少なくとも中
抵抗層からなるベース層と、高抵抗層からなる表面層を
有する積層構造である、という構成を採っている。
【0016】
【実施例】まず、具体的実施例を説明する前に、その基
本的概念を説明する。本発明では、従来と異なり、転写
工程において意図的に放電を発生させるという概念が存
在し、放電発生手段により感光体の非画像部と転写体間
で発生する放電電荷を利用し、転写体上の非画像部に誘
起した電荷とトナー粒子との間に働くクーロン反発力に
よって転写チリを抑制することを特徴とする。この、放
電による転写体上の非画像部への電荷誘起は、「TES
I法」で知られる潜像転写法と同様な現象を利用するも
のである。また、本発明は、上記放電による電荷誘起の
効率を高めるために、ある種の単層型有機感光体を用い
ることを特徴とする。
【0017】図2は、一般的な転写工程における感光体
と転写体の電位のモデル図である。図の縦軸は電位を表
し、マイナス極性を上側に表現している。感光体とし
て、一般的な負帯電性の機能分離型有機感光体を用い、
転写体として絶縁性のシート状部材を用いた場合であ
る。まず、感光体表面を均一にVS =−600V程度に
帯電し、画像部を露光して電位をVL=−100V程度
まで低下させる。現像工程において、−500V程度の
現像バイアス値で負帯電性のトナーにより反転現像す
る。現像条件やトナーの粒径などで異なるが、トナーの
帯電電荷によりトナー層自体が−200V程度の電位を
持つような付着量のトナー画像が現像され、感光体上の
トナー層表面電位はVt =−300V程度になる(図2
(a))。
【0018】転写工程において、感光体と転写体を接触
させて転写手段により転写体側にプラス極性の転写バイ
アス値を印加すると、静電引力によるトナー画像の転写
が行われる。さらに、放電発生手段により転写体の裏面
に所定のバイアス値が印加され、感光体の非画像部と転
写体間の空隙の電界がパッシェンの放電限界以上になる
と、空隙で放電が発生し、感光体上にプラス電荷が、転
写体上にマイナス電荷が誘起される。この時の転写体上
の非画像部の電位は、感光体及び転写体の静電容量や感
光体と転写体間の電位差などで決まる。例えば、感光層
の誘電率εsが3.2、厚さLs が28μm、転写体の
誘電率εp が3.0、厚さLp が70μmで、放電発生
手段により転写体裏面にバイアス値Vb =+600Vを
印加した場合を考える。転写体が帯電していなかった場
合、転写体の非画像部では感光体表面電位Vsと転写体
裏面電位Vb の電位差Vst(=Vs −Vb )は−120
0Vとなり、放電により転写体上の非画像部に約−13
0V分の電荷が誘起される(図2(b))。
【0019】この放電による電荷の誘起現象は、TES
I法による電荷転写と同様な現象である。TESI法の
理論は、例えば、[「電子写真の基礎と応用 電子写真
学会編」の3.3 .1 静電像転写のメカニズムの章]など
に記載されている。この転写工程では、トナー画像の転
写も行われるが、転写手段による転写バイアス値が通常
の転写条件であるVb =+600V程度では、トナー画
像部での放電は発生せず、約−200V分の電位を持つ
トナー画像が転写体上に移動する。ここで、転写体裏面
がアースされた状態を考えると、非画像部の電位は−1
30V、トナー画像部の電位は−200Vとなる(図2
(b))。この状態は、転写体上の非画像部に形成され
たポテンシャル井戸にトナー画像が入り込んだ状態であ
るが、トナー画像の表層部がポテンシャル井戸の上端か
ら突出している。従って、この状態では、トナー画像の
上方のエッジ部は電界により拘束されておらず、トナー
粒子を飛び散らせる方向の電界が生じており、トナー粒
子間の付着力が比較的小さい場合には転写チリが発生し
てしまう。
【0020】トナーの付着量や電荷量及びトナー粒子間
の付着力などを変えずに転写チリを低減させるために
は、転写体上の非画像部のマイナス電位を大きくして、
トナー画像のエッジ部のトナー粒子を静電的に拘束する
必要がある。この考え方の正当性と、転写体上の非画像
部のマイナス電位をどの程度大きくした場合に転写チリ
の抑制が有効となるかの根拠を、図3に基づいて説明す
る。図3は、転写体上でのトナー層(トナー画像)部の
電位と非画像部の電位の差に対する転写チリレベルの相
関を示すグラフである。転写体上の電位は表面電位計で
測定した。横軸の電位差がプラス側に大きいほど、非画
像部の電位の方がマイナス側に大きいことを示してい
る。換言すれば、電位差がマイナス側に大きいほど、ト
ナー画像の電位の方がマイナス側に大きいことを示して
いる。なお、転写体上での単位面積当たりのトナー付着
量は約1.5mg/cm2、トナー帯電量は約−15μ
C/gで一定にした。横軸の電位差は、転写条件、転写
体の抵抗値などを実験的に変化させて、非画像部の電位
を変化させることによって変えた。縦軸の転写チリレベ
ルは、ライン画像のエッジ部から飛び散ったトナー粒子
数を拡大観察により計数し、単位長さ当たりから飛び散
ったトナー数として表した。数が大きいほど転写チリレ
ベルが悪いことを表す。図3に示された結果から、トナ
ー画像の電位よりも非画像部の電位の方が−100V程
度以上マイナス側に大きくなると、転写チリが低減する
ことが判る。
【0021】そこで、転写体の非画像部に転写される
(誘起される)電荷量を増加させて、非画像部のマイナ
ス電位を大きくするために、放電発生手段により通常の
転写条件としては過剰となるバイアス値Vb =+900
Vを転写体裏面に印加すると、感光体表面電位Vs と転
写体裏面電位Vb の電位差Vst(=Vs −Vb )は−1
500Vとなり、転写体上の非画像部には約−350V
分の電荷が誘起される(図2(c))。ここで、理想的
にトナー画像部に放電が発生しなければ、トナー画像部
の電位は−200Vであるので、非画像部の方が−15
0Vほど大きくなり、図3で示した転写チリ抑制条件が
満たされることになる。しかし、この場合のように単純
に転写体裏面電位Vb を大きくしても、トナー画像部で
も放電が発生し、転写体上のトナー画像部の電位がマイ
ナス側に大きくなってしまう。実際には、転写体上のト
ナー画像部の電位は放電により−400V程度まで増加
し、トナー画像部の方が非画像部よりもマイナス電位が
大きくなる。この状態では、図2(b)で示した場合と
同様に、トナー画像の上部のエッジ部は電界により拘束
されておらず、トナー粒子を飛び散らせる方向の電界が
生じている。すなわち、従来の負帯電性の感光体を用い
た反転現像による場合、一度の転写工程後の転写体上に
おいて、トナー画像部よりも非画像部の電位を大きくす
ることは現実的に困難である。換言すれば、従来の感光
体を用いて転写体上にトナー画像を静電的に拘束するポ
テンシャル井戸を形成しようとしても、トナー画像部の
放電によりトナー画像部の電位が常にポテンシャル井戸
よりもマイナス側に大きくなるのである。
【0022】これを解決するためには、放電発生手段に
よる転写体上の非画像部での電荷誘起量を、トナー画像
部での放電を発生させることなく向上させなければなら
ない。
【0023】特開平9−15873号公報には、ある種
の単層型有機感光体を用いた場合、感光体から静電記録
紙上に潜像転写を行う場合に、その転写効率が従来技術
に比べて2倍から3倍程度大きくなることが開示されて
いる。ある種の感光体とは、導電性基体上に直接または
下引き層を介して少なくとも電荷発生顔料と有機正孔輸
送物質が結着剤中に分散された単層の有機感光層を設け
た感光体である。本発明者らの考えは、この単層型有機
感光体の特性を利用し、放電発生手段による転写体上の
非画像部での誘起電荷量のレベル、すなわち、TESI
法的レベルを突破しようというものである。
【0024】この本発明者らの考えを、図4に基づいて
電位モデルで具体的に説明する。感光体として、正帯電
性の単層型有機感光体を用い、転写体として絶縁性のシ
ート状部材を用いた場合である。まず、感光体を均一に
+600V程度に帯電し、非画像部を露光して電位を0
V程度まで低下させる。現像工程において、+200V
程度の現像バイアス値で、負帯電性のトナーにより画像
部を現像する。この時、現像条件やトナーの粒径などで
異なるが、トナーの電荷によりトナー画像自体が−20
0V程度の電位を持ち、トナー画像の表面電位は+40
0V程度になる(図4(a))。
【0025】転写工程において、感光体と転写体を接触
させ、転写手段によって転写体側にプラス極性の転写バ
イアス値を印加すると、静電引力によるトナー画像の転
写が行われる。さらに、放電発生手段によるバイアス値
の印加によって感光体上の非画像部と転写体間の空隙の
電界がパッシェンの放電限界以上になると、空隙で放電
が発生し、感光体上にプラス電荷が、転写体上にマイナ
ス電荷が移動する。この時の転写体上の非画像部の電位
は、感光体及び転写体の誘電厚みや感光体と転写体間の
電位差、感光体の組成や製法などで決まる。例えば、前
述の負帯電性の機能分離型感光体と同様に、感光層の誘
電率εsが3.2、厚さLs が28μm、転写体の誘電
率εp が3.0、厚さLp が70μmで、放電発生手段
により転写体裏面にバイアス値Vb =+1200Vを印
加した場合、転写体上の非画像部では、感光体表面電位
VLと転写体表面電位Vb の電位差Vs t (=VL−V
b )は前述とほぼ同じ−1200Vとなるが、この場合
には放電により転写体上に約−300V程度分の電荷が
誘起される。この誘起電荷量は、感光層の組成や製法に
よりさらに増加することが実験で確認されており、TE
SI法の電荷転写理論では単純に説明できない。
【0026】この時、転写手段によりトナー画像の転写
も行われるが、本発明に係る単層型有機感光体の場合、
トナー画像部での放電は発生せず、約−200V分の電
位を持つトナー画像が転写体上に移動する。ここで、転
写体裏面がアースされた状態を考えると、非画像部の電
位は−300V、トナー画像部の電位は−200Vとな
る(図4(b))。従って、トナー画像部の電位よりも
非画像部の電位の方が−100V程度以上マイナス側に
大きくなるので、図3で示した転写チリ抑制条件が満た
されることになる。トナー画像は電位の大きいポテンシ
ャル井戸の中に嵌め込められた状態となり、エッジ部の
トナー粒子は非画像部との間におけるクーロン反発によ
って飛び散りを拘束される。これによって転写体上での
転写チリがハイレベルで抑制されることになる。
【0027】カラー画像を形成する場合、トナー画像が
形成された転写体上に、異なる色のトナー画像を形成す
る。2色のトナーからなる色の画像を形成する場合、二
色目の転写時の転写手段及び放電発生手段の出力値を大
きくして、トナー画像の転写と非画像部での放電を行わ
せる。二色目の転写手段又は放電発生手段による出力を
Vb =+1500Vとすると、転写体上の非画像部の電
位は前述と同じ+1200V、一色目のトナー画像部の
表面電位は+1300Vになる(図4)c))。二色目
の感光体上での作像条件が同じである場合、非画像部で
はさらに−300Vの放電が発生し、トナー画像部では
放電は発生せずトナー画像の移動のみが起こる。二色目
の転写工程後、転写体裏面をアースに切り替えると、非
画像部の電位は−600V、トナー画像部の表面電位は
−400Vとなる。従って、二色重ねしたトナー画像部
の電位よりも非画像部の電位の方が−200V程度以上
マイナス側に大きくなるので、転写体上での転写チリが
ハイレベルに抑制される。なお、図4(b)で示される
転写チリの抑制は、カラー画像の一色目の場合だけでな
く、白黒画像の場合も同様になることを意味している。
【0028】次に、本発明で用いられる単層型有機感光
体について詳細に説明する。感光体は単層の有機感光層
からなり、感光層には少なくとも電荷発生顔料と有機正
孔輸送物質が結着剤中に分散されたものである。また、
感光層における有機正孔輸送物質の表面近傍における含
有濃度と導電性基体もしくは導電性基体と感光層の間に
設けられる下引き層と接する面近傍における含有濃度を
4/5以上の比率で設けている。また、このような感光
層は、感光層塗布乾燥時の温度を、使用する有機正孔輸
送物質の融点の−5〜30℃の範囲とすることによって
得られる。ここで、近傍とは、感光層表面から、また、
感光層が接する導電性基体又は下引き層表面からそれぞ
れ厚さ1μmの領域をいう。
【0029】有機正孔輸送物質としては、発生した正孔
が有機正孔輸送物質が分子状に分散されたマトリックス
に効率良く注入され高速に移動するような高い正孔移動
度を有するものが望ましく、例えば、オキサジアゾール
化合物、ヒドラゾン化合物、ベンジン系のジアミン化合
物、スチリルトリアリールアミン化合物、ブタジエン系
化合物などを使用できる。感光層全体に占める有機正孔
輸送物質の量は、好ましくは20から60重量%が適当
である。20重量%以下では放電による転写体上の非画
像部での電荷誘起量が少なく、本発明が狙う効果が十分
に得られない。また、60重量%以上では結着剤樹脂の
含有率が低下するため、感光層の機械的強度の低下など
の不具合が生じる。
【0030】電荷発生顔料としては、例えば、X型の無
金属フタロシアニン、π型の無金属フタロシアニン、τ
型の無金属フタロシアニン、ε型の銅フタロシアニン、
α型チタニルフタロシアニン、β型チタニルフタロシア
ニン等のフタロシアニン顔料や、ジスアゾ・トリスアゾ
系顔料、アントラキン系顔料、多環キノン系顔料、イン
ジゴ顔料、ジフェニルメタン、トリメチルメタン系顔
料、シアニン系顔料、キノリン系顔料、ベンゾフェノ
ン、ナフトキノン系顔料、ペリレン顔料、フルオレノン
系顔料、アズレニウム系顔料、ペリノン系顔料、キナク
リドン系顔料、ナフタロシアニン系顔料、ポルフィリン
系顔料を使用できる。これら電荷発生顔料の感光層全体
に占める量は、0.1〜40重量%、好ましくは0.3
〜25重量%が適当である。
【0031】また、本発明では必要により、有機アクセ
プタ性化合物を感光層に添加することができる。有機ア
クセプタ性化合物を使用した場合の利点は、有機正孔輸
送物質と有機アクセプタ性化合物の組成を変えること
で、正負両方の帯電極性に対応できることである。ま
た、有機アクセプタ性化合物の使用は、感光体の残留電
位の低下、静電的特性の長寿命化、転写電位の繰り返し
安定化をもたらす。このような有機アクセプタ性化合物
による改良特性の発現原因は明確でないが、その一つと
して、光照射により電荷発生顔料で発生した正孔と電子
のうち、電子を有機アクセプタ性化合物が引き抜くこと
で電荷発生顔料の内部電界の低減の防止と電気抵抗の低
下を防止することが考えられる。本発明で用いることが
できる有機アクセプタ性化合物としては、公知の化合物
が使用でき、例えば、キノン化合物、ニトリル基を有す
るπ電子化合物、ニトロ基を有するπ電子化合物等が挙
げられ、さらに具体的には、フルオレノン又はベンゾフ
ルオレノン系化合物、インデノン系化合物、インデノキ
ノキサリン系化合物、ペンタジエン系化合物及びこれら
の誘導体等がある。
【0032】有機アクセプタ性化合物を使用した場合、
有機正孔輸送物質と有機アクセプタ性化合物の量比は5
0/1〜1/5である。有機アクセプタ性化合物の含有
量がこれよりも少ない場合には、静電特性の繰り返しが
低下し、これよりも多い場合いは帯電性が劣化する。
【0033】感光体における結着剤の役割は、電荷発生
顔料の良好な分散と、有機正孔輸送物質の分子状の分散
ばかりでなく、複写プロセスで必要とされる感光体の機
械的強度をも担っている。本発明で用いることができる
結着剤としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、アク
リル樹脂、メタクリル樹脂、塩化ビニル樹脂、酢酸ビニ
ル樹脂、エポキシ樹脂、ポリウレタン樹脂、フェノール
樹脂、ポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂、シリ
コーン樹脂、メラミン樹脂等の付加重合型樹脂、重付加
型樹脂、重縮合型樹脂、並びにこれらの繰り返し単位の
うち2つ以上を含む共重合体樹脂、例えば塩化ビニル−
酢酸ビニル共重合体、塩化ビニル−酢酸ビニル−無水マ
レイン酸共重合体樹脂を挙げることができる。これらの
結着剤の感光層全体に占める量は20〜90重量%、好
ましくは30〜70重量%である。
【0034】感光層の厚さは5〜30μmが望ましい。
これより薄いと帯電性が低下し、厚いと感光層の静電容
量が低下して転写電位の低下を来す。
【0035】本発明で用いることができる導電性基体と
しては、アルミニウム、ニッケル、銅、ステンレス等の
金属板、金属ドラム又は金属箔、アルミニウム、酸化ス
ズ、ヨウ化銅の薄膜を塗布したプラスチックフィルムあ
るいはガラス等が挙げられる。本発明では帯電性を改良
する目的で感光層と導電性基体の間に下引き層を設ける
ことができる。これらの材料としては、前記結着剤材料
の他に、ポリアミド樹脂、ポリビニルアルコール、カゼ
イン、ポリビニルピロリドン等を用いることができる。
本発明における感光層の塗布方法としては、前記の材料
を有機溶媒中に溶解、又はボールミル、超音波等で分散
して調整した感光層形成液を浸漬法やブレード塗布、ス
プレー塗布等の公知の方法で導電性基体上に塗布し、形
成すればよい。
【0036】本発明では、感光体を正帯電させた場合の
感光体の非帯電部あるいは低帯電部が転写体上に電荷転
写される(ネガ潜像転写)プロセスに用いると、同じ転
写条件で電荷転写した場合、用いる有機正孔輸送物質の
融点に対して10℃以上低い温度で加熱乾燥した感光体
に比べ、転写体上の非画像部の電位が大幅に向上する。
但し、融点よりも極端に高い温度で加熱乾燥した場合に
は有機正孔輸送物質が熱分解してしまうなどの問題が生
じる。ここにいう電荷転写は、既述の放電による電荷誘
起を意味する。この転写体上の非画像部の電位が大幅に
向上する理由について、本発明者らは上記プロセスにお
いて高い転写体電位を得るためのモデルを以下のように
考え、これを検証した。
【0037】このプロセスにおける転写体上の非画像部
への負電荷の転写は、感光体の非画像部と転写体間の放
電現象による電荷の誘起によるが、この時感光体側には
正電荷が誘起され、これらの電荷量は、通常、放電発生
手段による印加バイアス値、感光体及び転写体の静電容
量によって決定される。放電がある程度継続し、感光体
表層と転写体表層にそれぞれ所定の電荷量が誘起される
と、感光体と転写体の間の電界強度はこの間の空気層の
絶縁破壊電圧を下回り、放電は停止して電荷の転写はそ
れ以上行われなくなる。ここで、感光体表層の非画像部
に誘起された正電荷の一部が感光層内部へ注入された場
合、上記と同様に感光体と転写体の間の電界強度が空気
層の絶縁破壊電圧を下回った時放電が停止するのである
が、この時正電荷の注入がない場合と比較して更なる放
電の継続が行われるものと考えられる。
【0038】この場合、より大きな電荷が転写体上に誘
起されるものと考えられる。この正電荷の注入は、感光
体表層の有機正孔輸送物質濃度が高いほど効率が高くな
ると考えられる。その理由は、本発明のように、感光体
製作時の乾燥温度を、用いる有機正孔輸送物質の融点の
−5〜+30℃とすることで感光体表層の有機正孔輸送
物質濃度が増加することが確かめられているからであ
る。有機正孔輸送物質の濃度が増加する理由は、塗布時
に感光体の導電性基体付近に偏在していた有機正孔輸送
物質が熱的移動により感光層中にほぼ均一に分布するよ
うになったためと推測される。
【0039】本発明者らは、この転写モデルの検証のた
め、感光層の代わりに有機正孔輸送物質とバインダーか
らなる膜を用いて転写実験を行ったところ、膜の乾燥温
度により転写体電位が異なり、高温で乾燥した方が高い
転写体電位が得られることが判明した。この結果は上記
モデルを裏付けるものであると考えられる。そこで、実
際に、膜厚方向における有機正孔輸送物質の濃度分布を
測定した。本発明における感光体は単層構造であるた
め、直接、感光層の膜厚方向における有機正孔輸送物質
の濃度を評価することは困難である。従って、便宜的に
図5(実施例における感光層の組成)に示す化合物4
(有機正孔輸送物質:融点138℃)と化合物2(結着
剤樹脂:ポリカーボネート)のみからなる膜を作製し、
膜厚方向における有機正孔輸送物質の濃度を評価した。
有機正孔輸送物質の組成が50重量%、ポリカーボネー
トの組成が50重量%となるように、有機正孔輸送物質
と15重量%のPCテトラヒドロフラン溶液より塗布液
を作製した。この液を導電性基体上にブレードコート法
にて塗布し、80℃で5分間1次乾燥した後、2次乾燥
として150℃あるいは110℃でそれぞれ20分間加
熱乾燥して2種類の約13μmの膜を作製した。次に、
膜を導電性基体から剥離し、それぞれ表面側と導電性基
体に接していた側、約1μmの部分を削り取り、赤外線
吸収スペクトルを測定した。有機正孔輸送物質に起因す
る吸収ピーク(1323cm-1)とポリカーボネートに
起因する吸収ピーク(1775cm-1)の強度比[Ab
s(1323cm-1)/Abs(1775cm-1)]を
基に、膜厚方向における有機正孔輸送物質の濃度分布を
評価した。その結果を表1に示す。
【0040】
【表1】
【0041】表1から、有機正孔輸送物質の融点138
℃の−5℃〜+30℃の範囲内の条件を満足する乾燥温
度150℃の方が、満足しない乾燥温度110℃の場合
よりも有機正孔輸送物質の濃度が高くなることが判る。
【0042】次に、転写体について説明する。転写体は
表面の電荷を保持できるように、表面抵抗値が1×10
13Ω/□以上の高抵抗体あるいは絶縁体が好ましい。転
写体としては、PET,PC,PVDF,ETFEなど
を用いることができる。また、転写体裏面の全面に導電
層を設けてもよい。トナー画像を転写体上に転写した後
加熱定着するように、転写体を直接記録体として用いる
こともできる。また、転写体を中間転写体として、中間
転写体上にトナー画像を一旦担持した後、紙などの記録
体に転写することもできる。特に、複数色のトナーを用
いるカラー画像形成装置では中間転写体を用いることが
好ましい。一般に電子写真方式のカラー画像形成装置で
は、ブルー、レッド、グリーンの部分は二色のトナー層
を重ねて形成するため、トナー付着量が大きくなる。ト
ナー付着量が大きくなると、急激に転写チリは悪化して
しまうため、本発明は特に有効となる。中間転写体裏面
に導電層を設けてもよい。
【0043】転写体が中間転写体の場合には、感光体か
ら中間転写体に転写する一次転写工程と、中間転写体か
ら紙などの記録体に転写する二次転写工程があるが、中
間転写体裏面に導電層を設けている場合、転写バイアス
電圧のリークを防止するために、一次転写工程が完全に
終了した後、中間転写体裏面をアースに切り替え、二次
転写工程を行う必要がある。このため、画像形成動作の
作業効率が悪くなってしまう場合もある。そこで、中間
転写体の場合、ベース層に中抵抗体を用い、その表面に
高抵抗層あるいは絶縁層を設けた積層構造とすることが
好ましい。ベース層の中抵抗体は、前記転写体材料中に
カーボンブラックなどのフィラーを混入させ、体積抵抗
率が107 Ωcm〜1011Ωcm程度のものを用いるこ
とができる。この積層ベルト構造の中間転写体を用い、
一次転写工程と二次転写工程の間でベルト裏面をアース
に落とす構成にすることにより、一次転写と二次転写を
同時に行った場合のバイアスリークの問題を回避するこ
とができる。
【0044】〔実施例1〕図1に本発明の一実施例に係
る画像形成装置の概略図を示す。なお、本実施例以降の
説明は、上述の基本的概念の説明に対応するものであ
る。従って、特に示さない限り上記基本的概念で示した
数値的限定等はそのまま適用される。一つの感光体2に
対して現像手段としての4色の現像器、Bk(ブラッ
ク)現像器4、C(シアン)現像器5、M(マゼンタ)
現像器6、Y(イエロー)現像器7が配置されており、
感光体2上に異なる色成分毎に形成されるトナー画像を
転写体としての中間転写ベルト8に順次重ね転写し、そ
の重ね転写されたトナー画像を記録紙10に一括転写す
ることによってカラー画像を得る1ドラム中間転写方式
である。感光体2は、導電性基体としてのアルミニウム
素管上に、下引き層/感光層の順に重ねて成膜した正帯
電性の単層型感光層を有している。
【0045】感光層は、図5に示すように、電荷発生顔
料としての化合物1と、結着剤としての化合物2と、有
機アクセプタ性化合物としての化合物3と、有機正孔輸
送物質としての化合物4とからなっている。具体的に説
明すると、フタロシアニン顔料(化合物1)1gを、ポ
リカーボネート(PC:化合物2)の溶液10g(テト
ラヒドロフラン中に10重量%溶解したものと、テトラ
ヒドロフラン9gとともにボールミリングした後、顔料
組成5重量%、PC組成が50重量%、有機アクセプタ
性化合物(化合物3)が20重量%、有機正孔輸送物質
(化合物4:融点138℃)が25重量%となるよう
に、15重量%のPC溶液、有機アクセプタ性化合物、
有機正孔輸送物質を加え、感光体2の塗布液を作製し
た。この液をアルミニウム素管上にデッピング法にて塗
布し、80℃で5分間一次乾燥した後、二次乾燥として
150℃で20分間加熱乾燥して、約28μmの単層型
感光体とした。感光層の比誘電率は3.2であった。
【0046】感光体2を帯電手段としてのスコロトロン
帯電器12で均一にプラス帯電(約+600V)した
後、図示しない露光手段から発せられる画像情報に応じ
たレーザ光14を非画像部に照射し、非画像部が0V、
画像部が+600Vの静電潜像を形成する(図4(a)
参照)。感光体2の帯電電位や露光部電位を電位センサ
16で検出し、帯電条件や露光条件などを制御すること
もできる。上記4色の現像器によって、各色毎に静電潜
像を現像する。各現像器には乾式2成分現像剤が収容さ
れており、感光体2上のプラス帯電部にマイナス帯電の
トナーを付着させる現像方式である。 トナーは不定形
で平均粒径は7.5μm、平均帯電量は−20μC/
g、現像バイアス値は約+200Vとした。現像工程
後、感光体2の画像部には−200V分の電位を有する
トナー画像が現像された。現像バイアスには交流成分を
重畳させてもよい。感光体2の回転方向における現像後
の位置には、Pセンサ18が配置されており、光学的反
射率からトナー付着量を検出して画像形成プロセス条件
を制御することもできる。各色で現像されたトナー画像
は順次中間転写ベルト8上に重ね転写される。
【0047】中間転写ベルト8は、PETフィルムの裏
面に金属電極を設けた無端状の誘電体ベルトで構成され
ている。誘電体の厚さは約70μm、比誘電率は3.0
である。中間転写ベルト8の裏面の電極には、転写電圧
及び放電電圧(図4で示したVb )が印加される。放電
電圧(Vb )は図示しない電源によって、バイアスロー
ラ20を介して印加され、転写電圧も図示しない他の電
源によってバイアスローラ22を介して印加される。こ
れらの出力値は図示しない装置全体の動作を制御する制
御手段によってコントロールされる。感光体2と中間転
写ベルト8は図示しない接離機構によって接離可能とな
っている。これらの転写電源や接離機構などをまとめて
「一次転写手段」と称し、感光体2から中間転写ベルト
8上へのトナー画像の転写を「一次転写」と称す。バイ
アスローラ20とこれに対応する電源とによって放電発
生手段が構成される。一次転写後の感光体2上の残留ト
ナーは、PCC24によって帯電量が制御され、ドラム
クリーニング装置26のブラシ及びブレードで除去され
る。感光体2上の残留電荷は除電ランプ28で除去され
る。
【0048】中間転写ベルト8上に一色目のトナー画像
が形成された後、二色目の作像動作を開始し、中間転写
ベルト8上に二色目のトナー画像を重ねて転写する。こ
のとき、転写される順番毎に転写電圧を増加させていっ
てもよい。フルカラー画像の場合には、中間転写ベルト
8上にブラック、シアン、マゼンタ、イエローの4色の
トナー画像を順次形成した後、一括して記録紙10上に
転写する。転写ローラ30は、図示しない接離機構によ
って中間転写ベルト8と接離可能に設けられており、図
示しない電源によって転写電圧が印加可能となってい
る。中間転写ベルト8から記録紙10上へのトナー画像
の転写は、中間転写ベルト8の裏面の電極をアースと
し、転写ローラ30で記録紙10の裏面側からプラス極
性の電圧を印加する。これらの転写ローラ30、接離機
構、電源などをまとめて「二次転写手段」と称し、中間
転写ベルト8から記録紙10への転写を「二次転写」と
称す。
【0049】二次転写後の中間転写ベルト8上に残留し
たトナーは、ベルトクリーニング装置32によって除去
される。また、二次転写後の中間転写ベルト8上に残留
した電荷は図示しない交流コロナ放電装置などによる除
電装置により除電され、次の画像の一次転写工程に備え
る。単色の画像形成モードにおいて、一次転写工程で、
中間転写ベルト8の裏面に一次転写手段により転写バイ
アス値Vb =+1200Vを印加した場合、非画像部に
おける感光体表面電位VLと中間転写ベルト8の裏面電
位Vb の電位差Vst (=VL−Vb )は−1200V
となり、中間転写ベルト8上の非画像部に約−300V
程度分の放電による電位が発生した。この時、トナー画
像部での放電は発生せず、約−200V分の電位を有す
るトナー画像が中間転写ベルト8上に移動した。中間転
写ベルト8上へのトナー画像の一次転写工程が完全に終
了した後、中間転写ベルト8の裏面の金属電極をアース
に切り替えると、非画像部の電位は−300V、トナー
画像部の電位は−200Vとなった(図4(b)参
照)。この状態は、トナー画像部の電位よりも非画像部
の電位の方が−100V程度マイナス側に大きくなって
おり、中間転写ベルト8上のトナー画像に転写チリがわ
ずかに発生していたが、実用上全く問題のないレベルで
あった。その後、中間転写ベルト8の金属電極をアース
した状態で、二次転写部の転写ローラ30に+2000
V程度の転写電圧を印加して記録紙10上にトナー画像
を転写した。二次転写工程後、記録紙10は定着装置へ
搬送され、トナー画像が加熱溶融されて記録紙10上に
定着された。一次転写での転写チリが僅かであったた
め、最終的な画像においても転写チリの少ない良好な画
像が得られた。
【0050】上記実施例ではバイアスローラ22を介し
て転写バイアス値Vb =+1200Vを印加しただけで
あり、この転写バイアス値の印加によって放電も行われ
ている。すなわち、この場合にはバイアスローラ22等
からなる転写手段としての一次転写手段が、放電発生手
段の機能を兼ねたことになる。従って、バイアスローラ
20を有する放電発生手段を設けなくても上記の転写チ
リが抑制された転写工程を得ることができる。すなわ
ち、本発明における転写手段と放電発生手段は相互に相
手方の機能を兼ね得る立場にあり、構成上においては必
ずしも区別する必要はない。勿論、バイアスローラ20
とバイアスローラ22を介して転写バイアス値と放電バ
イアス値を別個に印加してもよい。実施例1では放電発
生手段を構成するバイアスローラ20が転写工程の前半
部すなわち上流側に設けられているので、放電発生手段
による放電バイアス値の印加によって、トナー画像の転
写に先駆けて中間転写ベルト8上の非画像部にポテンシ
ャル井戸を形成し、このポテンシャル井戸の中にトナー
画像を嵌め込むようにすれば、トナー画像の転写が極め
て安全に行われることになり、転写チリを一層抑制する
ことができる。この場合には放電バイアス値をもって転
写バイアス値を兼ねることができる。
【0051】〔比較例1〕感光体として負帯電性の機能
分離型有機感光体を用い、実施例1と同様に、感光層の
誘電率εsを3.2、厚さLsを28μmとした。感光
体表面を均一にVs =600V程度に帯電し、画像部を
露光して電位をVL=100V程度まで低下させた。現
像工程において、−500Vの現像バイアス値で負帯電
性のトナーを反転現像し、−200Vの電位を持つトナ
ー画像を形成した。現像後のトナー画像の表面電位はV
t =−300であった。転写体(中間転写ベルト)裏面
に転写バイアス値Vb =+600Vを印加したところ、
転写電位差は実施例1と同様にVs t =−1200Vと
なり、放電により転写体の非画像部に約−130V分の
電荷が誘起された。トナー画像部での放電は発生せず、
約−200V分の電位を持ったトナー画像が転写体上に
移動した。ここで、転写体裏面をアースすると、非画像
部の電位は−130V、トナー画像部の電位は−200
Vとなった。一次転写工程終了後に転写体表面を観察し
たところ、転写チリが目立ち、最終的な定着画像におい
ても画線の滲みが認められるレベルであった。
【0052】〔実施例2〕感光層を、顔料組成が5重量
%、PC組成が50重量%、有機アクセプタ性化合物が
5重量%、有機正孔輸送物質が40重量%として有機正
孔輸送物質の含有率を増加させた以外は、実施例1と同
様にした。一次転写工程において、転写体(中間転写ベ
ルト8)裏面に転写バイアス値Vb =+1200Vを印
加した場合、非画像部では、感光体表面電位と転写体裏
面電位の電位差は実施例1と同様の−1200Vとなる
が、転写体上には更に多い約−400V程度分の放電に
よる電荷が誘起された。この時トナー画像部での放電は
発生せず、約−200V分の電位を持つトナー画像が転
写体上に移動した。一次転写工程が完全に終了した後、
転写体の裏面をアースすると、非画像部の電位は−40
0V、トナー画像部の電位は−200Vとなった。トナ
ー画像部電位よりも非画像部の電位の方が−200V程
度マイナス側に大きくなっており、一次転写での転写チ
リはほとんど見られなかった。このため、最終的な定着
画像もボケや滲みのない良好なものであった。
【0053】〔比較例2〕感光層成膜時の二次乾燥温度
を110℃にした以外は実施例1と同様にした。一次転
写工程において、転写体(中間転写ベルト)裏面に転写
バイアス値Vb=+1200Vを印加した場合、非画像
部では、感光体表面電位と転写体裏面電位の電位差は実
施例1と同様の−1200Vとなるが、転写体上には約
−200V程度分の放電による電位しか発生しなかっ
た。この時、トナー画像部での放電は発生せず、約−2
00V分の電位を持つトナー画像が転写体上に移動し
た。一次転写工程が完全に終了した後、転写体を裏面を
アースすると、非画像部の電位は−200V、トナー画
像部の電位は−200Vとなった。この状態では、トナ
ー画像部の電位と非画像部の電位が等しく、転写体上の
トナー画像には転写チリが発生していた。最終的な定着
画像においても転写チリの発生が確認できたが、比較的
少ないレベルであった。このことから、乾燥温度の範囲
制限等に拘わらず、負帯電性の分離型有機感光体を用い
た場合に比べて、単層型有機感光体を用いれば基本的に
転写チリを抑制できることが判る。
【0054】〔実施例3〕実施例1における転写手段の
電源と放電発生手段の電源を共通化した。すなわち、バ
イアスローラ20とバイアスローラ22を共通の電源に
接続した。その結果、実施例1と同様の転写機能を得る
ことができ、転写チリ抑制レベルも同じであった。これ
により、実施例1の構成に比べ、電源の削減によるコス
ト低減と、装置の小型化を実現できる。
【0055】〔実施例4〕実施例1において、中間転写
ベルト8上に一色目のシアントナー画像を形成し、二色
目はイエロートナー画像を同様な作像条件で感光体2上
に形成した。二色目転写時の転写手段又は放電発生手段
による出力をVb =+1500Vとすると、中間転写
ベルト8上の非画像部の電位は前述と同じ+1200
V、一色目のトナー画像部の表面電位は+1300Vと
なった。非画像部ではさらに−300Vの放電が発生
し、トナー画像部では放電は発生せずトナー画像の移動
のみが生じた。二色目の転写工程後、中間転写ベルト8
の裏面をアースすると、非画像部の電位は−600V、
トナー画像部の表面電位は−400Vとなった(図4
(c)参照)。従って、二色重ねしたトナー画像部の電
位よりも非画像部の電位の方が−200V程度以上マイ
ナス側に大きく、転写チリは発生しなかった。最終的な
グリーン色の定着画像においても転写チリのない良好な
カラー画像が得られた。
【0056】実施例1において、中間転写ベルト8とし
て、PVDF樹脂中に抵抗制御剤として酸化チタン微粒
子を混合させた厚み70μmの中抵抗ベース層の上に、
表面層として高抵抗のPVDF層を70μmの厚みで形
成した積層ベルトを用いた。ベ中抵抗ベース層の体積抵
抗率は108 Ωcm、表面層の体積抵抗率は1014Ωc
mとした。また、一次転写部と二次転写部の間の2箇所
に、中間転写ベルト8の裏面に接するアース部材を設け
た。ベルト裏面の電気抵抗により、一次転写部で印加さ
れたベルト裏面の転写バイアス値Vb は、電流が流れる
ことによってベルト移動とともに徐々に減衰していき、
電流はアース部材に流れ込み、ベルト裏面は接地状態と
なる。この状態では、画像先端部が二次転写工程に到達
しても、画像後端部の一次転写工程を同時に行うことが
でき、バイアスリークなどの問題はなかった。一次転写
工程が完全に終了する前に、二次転写工程を行うことが
できるので、単色モード時では連続的に作像動作を行う
ことができた。これにより作業能率が向上した。
【0057】上記実施例では、カラ−画像形成装置及び
これによる単色モード時の転写チリ抑制機能について説
明したが、本発明は、中間転写体を用いない通常の白黒
の画像形成装置においても同様に実施でき、同様の転写
チリ抑制機能を得ることができる。この場合、転写体と
しての記録紙の裏面に転写バイアス値又は放電バイアス
値が転写手段又は放電発生手段によって印加され、記録
紙と感光体との間で放電現象が発生する。
【0058】
【発明の効果】請求項1記載の発明によれば、少なくと
も電荷発生顔料と有機正孔輸送物質を含有した単層型有
機感光体を用い、転写工程時に、感光体の非画像部と転
写体との間に放電を発生させて転写体の非画像部に電荷
を誘起させ、誘起電荷によるポテンシャル井戸の中にト
ナー画像を嵌め込むこととしたので、転写チリを抑制す
ることができる。
【0059】請求項2記載の発明によれば、感光層に有
機アクセプタ性化合物を含む感光体を用いることとした
ので、請求項1の効果に加え、感光体の帯電極性を可変
できるとともに、感光体の残留電位の低下、静電的特性
の長寿命化、転写電位の繰り返し安定化を得ることがで
きる。
【0060】請求項3記載の発明によれば、少なくとも
電荷発生顔料と有機正孔輸送物質を含有した単層型有機
感光体を用い、転写工程時に、感光体の非画像部と転写
体との間に放電を発生させて転写体の非画像部に電荷を
誘起させ、誘起電荷によるポテンシャル井戸の中にトナ
ー画像を嵌め込むこととしたので、転写チリを抑制する
ことができる。
【0061】請求項4記載の発明によれば、感光層に有
機アクセプタ性化合物を含む感光体を用いることとした
ので、請求項1の効果に加え、感光体の帯電極性を可変
できるとともに、感光体の残留電位の低下、静電的特性
の長寿命化、転写電位の繰り返し安定化を得ることがで
きる。
【0062】請求項5記載の発明によれば、転写体上の
非画像部に放電によって誘起される電荷のポテンシャル
井戸をトナー画像の転写に先駆けて形成するので、請求
項3又は4の効果に加え、転写チリの抑制を確実にする
ことができる。
【0063】請求項6記載の発明によれば、有機感光層
中の有機正孔輸送物質の含有率を限定したので、請求項
3,4又は5の効果に加え、感光層の機械的強度を保持
しながら転写体上の非画像部における高い電位形成を行
うことができる。
【0064】請求項7記載の発明によれば、製造時にお
ける感光層の乾燥温度範囲を有機正孔輸送物質の融点と
の関係で限定したので、請求項6の効果に加え、有機正
孔輸送物質による転写体上の非画像部における電位の増
加特性を最大限にすることができ、転写チリの抑制機能
を一層高めることができる。
【0065】請求項8記載の発明によれば、転写手段が
放電発生手段を兼ねる構成としたので、請求項3,4,
5又は6の効果に加え、両者が存在する場合に比べて製
造コストの低減、装置の小型化を計ることができる。
【0066】請求項9記載の発明によれば、転写体を中
間転写ベルトとしたので、請求項3,4,5,6又は7
の効果に加え、カラー画像の形成においても高い転写チ
リ抑制機能を得ることができる。
【0067】請求項10記載の発明によれば、中間転写
ベルトを、少なくとも中抵抗層からなるベース層と、高
抵抗層からなる表面層を有する積層構造としたので、請
求項9の効果に加え、ベルト裏面の電圧印加状態の切り
替え動作などが必要ないので作業効率を向上させること
ができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に一実施例に係る画像形成装置の概要図
である。
【図2】従来の感光体を用いた場合の転写工程の電位モ
デル図で、(a)は感光体現像後の状態を示す図、
(b)は通常の転写バイアス値を印加して転写した後の
状態を示す図、(c)は過剰な転写バイアス値を印加し
て転写した後の状態を示す図である。
【図3】トナー画像部と非画像部の電位差と散りトナー
数との関係を示すグラフである。
【図4】本発明の転写工程の電位モデル図で、(a)は
感光体現像後の状態を示す図、(b)は一色目転写後の
状態を示す図、(c)は二色目転写後の状態を示す図で
ある。
【図5】本発明の一実施例に係る画像形成装置の感光層
の組成を示す化学構造図で、(a)は電荷発生顔料とし
ての化合物1を示す図、(b)は結着剤としての化合物
2を示す図、(c)は有機アクセプタ性化合物としての
化合物3を示す図、(d)は有機正孔輸送物質としての
化合物4を示す図である。
【符号の説明】
2 感光体 4,5,6,7 現像器(現像手段) 8 転写体としての中間転写ベルト 12 帯電手段 20 バイアスローラ(放電発生手段) 22 バイアスローラ(転写手段)

Claims (10)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】導電性基体上に直接または下引き層を介し
    て少なくとも電荷発生顔料と有機正孔輸送物質が結着剤
    中に分散された単層の有機感光層を設けた感光体を用
    い、感光体上にトナー画像を形成し、このトナー画像を
    転写電界によって転写体表面に転写するとともに、感光
    体上の非画像部と転写体間の放電により転写体表面の非
    画像部にトナーと同極性の電荷を発生させ、転写体上で
    の非画像部の電位が、転写されたトナー画像の表面電位
    よりも絶対値が大きくなるように、転写工程時の電界強
    度を設定することを特徴とする画像形成方法。
  2. 【請求項2】請求項1記載の画像形成方法において、 上記結着剤中に有機アクセプタ性化合物が分散されてい
    る感光体を用いることを特徴とする画像形成方法。
  3. 【請求項3】導電性基体上に直接または下引き層を介し
    て少なくとも電荷発生顔料と有機正孔輸送物質が結着剤
    中に分散された単層の有機感光層を設けた感光体と、感
    光体を均一に帯電する帯電手段と、露光手段と、感光体
    上に形成された静電潜像を現像して感光体上にトナー画
    像を形成する現像手段と、感光体上に形成されたトナー
    画像を転写体表面に転写する転写手段と、トナー画像の
    転写工程において感光体上の非画像部と転写体間に放電
    を発生させる放電発生手段とを有し、転写体上における
    非画像部の転写工程後の電位が、転写されたトナー画像
    の表面電位よりも絶対値が大きくなるように上記転写手
    段及び放電発生手段を制御することを特徴とする画像形
    成装置。
  4. 【請求項4】請求項3記載の画像形成装置において、 上記結着剤中に有機アクセプタ性化合物が分散されてい
    ることを特徴とする画像形成装置。
  5. 【請求項5】請求項3又は4記載の画像形成装置におい
    て、 転写工程において、上記放電発生手段による転写体上の
    非画像部への電位形成が、上記転写手段によるトナーの
    転写に先駆けて始まるように制御することを特徴とする
    画像形成装置。
  6. 【請求項6】請求項3,4又は5記載の画像形成装置に
    おいて、 トナーが負帯電性、上記感光体が正帯電性であり、有機
    感光層中の有機正孔輸送物質の含有率が20重量%〜6
    0重量%の範囲であることを特徴とする画像形成装置。
  7. 【請求項7】請求項6記載の画像形成装置において、 上記感光体が、有機感光層塗布後の乾燥温度を有機正孔
    輸送物質の融点の−5℃から+30℃の範囲として製造
    されたものであることを特徴とする画像形成装置。
  8. 【請求項8】請求項3,4,5又は6記載の画像形成装
    置において、 上記転写手段が上記放電発生手段を兼ねることを特徴と
    する画像形成装置。
  9. 【請求項9】請求項3,4,5,6又は7記載の画像形
    成装置において、 上記転写体が、トナー画像を一時的に担持する無端ベル
    ト状の中間転写ベルトであることを特徴とする画像形成
    装置。
  10. 【請求項10】請求項9記載の画像形成装置において、 上記中間転写ベルトが、少なくとも中抵抗層からなるベ
    ース層と、高抵抗層からなる表面層を有する積層構造で
    あることを特徴とする画像形成装置。
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Cited By (5)

* Cited by examiner, † Cited by third party
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