以下、本発明を適用した画像形成装置の一実施形態として、電子写真方式の4ドラム型に中間転写方式を採用したカラ−プリンタについて説明する。まず、プリンタの基本的な構成について説明する。
図1は、プリンタの要部構成を示す構成図である。図1に示すように、このプリンタは、シアン(C),イエロ−(Y),マゼンタ(M),ブラック(BK)の有色トナ−像を作像するための4つの画像形成ユニット1Y,M,C,BKを備えている。以下添字C,Y,M,BKはシアン、イエロ−、マゼンタ、ブラックの各色をそれぞれ示す。
この画像形成ユニット1C,Y,M,BKは、それぞれ各色のトナ−像を担持し、図中矢印A方向に回転する感光体2Y,M,C,BKを備えている。この各色用の各感光体2としては、通常OPC感光体が用いられる。これら各感光体2Y,M,C,BKの周囲には、各感光体2表面を一様に帯電する帯電装置3Y,M,C,BKや、一様に帯電された各感光体2表面を画像デ−タに基づきレ−ザ光を露光走査して静電潜像を形成する露光装置4Y,M,C,BK、各感光体2表面に形成される静電潜像を現像する現像装置5Y,M,C,BK、トナ−像転写後の各感光体2表面をクリ−ニングするクリ−ニング装置6Y,M,C,BK、クリ−ニング後の各感光体2表面の残留電荷を除去する除電装置等を備えている。
現像装置5Y,M,C,BKには、2成分磁気ブラシ現像方式を用いている。なお、画像デ−タとは、外付けのスキャナによる原稿読取で得られた画像情報や、外部のパ−ソナルコンピュ−タから送られている画像情報等である。また、画像形成ユニット1Y,M,C,BKは、感光体2の周囲に配設される帯電装置3、現像装置5、クリ−ニング装置6とを1つのユニットとして共通の支持体に支持するものであり、プリンタ本体に対して着脱可能になっている。
上記プリンタは、画像形成ユニット1の下方に、感光体2Y,M,C,BKに現像されたトナ−画像を転写材たる用紙Pに転写する中間転写ユニット10を備えている。この中間転写ユニット10は、駆動ロ−ラを含む複数の張架ロ−ラ11,12,13により張架されて図中矢印B方向に回転駆動する中間転写ベルト20を備えている。中間転写ユニット10は、感光体2Y,M,C,BKと所定の電圧が印加される一次転写ロ−ラ14Y,M,C,BKとの間に中間転写ベルト20を挟み込んで一次転写ニップを形成する。また、中間転写ユニット10は二次転写バックアップロ−ラ13と所定の電圧が印加される二次転写ロ−ラ15の間に中間転写ベルト20を挟み込んで二次転写ニップを形成している。
画像形成ユニット1Y,M,C,BKで現像された感光体2Y,M,C,BK上の有色トナ−像は、一次転写ニップで中間転写ベルト20に順次重ね合わされて一次転写される。中間転写ベルト20上に転写された4色重ね合わせ有色トナ−像は、二次転写ニップで用紙Pに二次転写されることになる。
また、上記プリンタは、中間転写ユニット10の下方に、給紙カセット、レジストロ−ラ対16、転写搬送ベルト17、定着装置18等を備えている。給紙カセットは、プリンタの筺体内に出し入れ可能に構成され、収容する用紙Pの一番上の用紙を一枚づつレジストロ−ラ対16に向けて送り出す。レジストロ−ラ対16は、給紙カセットにより供給された用紙Pをロ−ラ間に挟み込み、中間転写ベルト20上の4色重ね合わせ有色トナ−像に同期させ得るタイミングで二次転写ニップに送り出す。転写搬送ベルト17は、二次転写バイアスロ−ラ15により二次転写(一括転写)された用紙Pを定着装置18に向けて搬送する。定着装置18は、ハロゲンランプ等の発熱源を内包する定着ロ−ラと、これに向けて押圧される加圧ロ−ラとの当接による定着ニップに用紙Pを挟み込み、加熱や加圧の作用によりトナ−像を定着せしめる。
このような構成のプリンタにおいては、次のように画像形成が行われる。例えばシアン用の画像形成ユニット1Cでは、帯電装置3Cにより一様に帯電された感光体2Cの表面に、露光装置4Cで変調及び偏向されたレ−ザ光が走査されながら照射されて静電潜像が形成される。感光体2C上の静電潜像は、現像装置5Cで現像されてイエロ−色のトナ−像となる。中間転写ベルト20を挟んで一次転写ロ−ラ14Cに対向する一次転写ニップでは、感光体2C上のトナ−像が用紙Pに転写される。トナ−像が転写された後の感光体2Cの表面は、クリ−ニング装置15Cでクリ−ニングされ、除電装置により表面が初期化され次の静電潜像の形成に備えられる。
他の画像形成ユニット10Y,M、BKについても、上述した画像形成行程が中間転写ベルト20の移動に同期して実行され、中間転写ベルト20上に、4色重ね合わせトナ−像が形成される。一方、給紙カセットから給送された用紙Pは、レジストロ−ラ対16により所定のタイミングで送出されて二次転写ニップに搬送される。そして、二次転写ニップで4色重ね合わせトナ−像が用紙Pに一括転写される。4色重ね合わせトナ−像が一括転写された用紙Pは、転写搬送ベルト17によって搬送され、定着装置18による加熱・加圧作用により定着処理が施され、機外に排出される。
なお、上記二次転写時に転写されずに中間転写ベルト20上に残った残留トナ−は、クリ−ニング部材30によって中間転写ベルト20から除去される。このクリ−ニング部材30の下流側には、潤滑剤塗布装置31が配設されている。この潤滑剤塗布装置31は、固形潤滑剤と、中間転写ベルト20に摺擦して固形潤滑剤を塗布する導電性ブラシとで構成されている。前記導電性ブラシは、中間転写ベルト20に常時接触して、中間転写ベルト20に固形潤滑剤を塗布している。固形潤滑剤は、中間転写ベルト20のクリ−ニング性を高め、フィルミィングの発生を防止し耐久性を向上させる作用がある。
次に、本実施形態に係るプリンタの特徴部となる中間転写ベルト20の構成について詳細に説明する。
図2は、本実施形態に係る中間転写ベルトの要部構成を示す要部断面図である。図2に示すように、この中間転写ベルト20は、比較的屈曲性が得られる剛性な基層21の上に柔軟な弾性層22が積層されている。弾性層22には難燃剤や分散剤含まれている。弾性層22の最表面には球形微粒子23が面方向に独立して配列(埋没)され、表面が一様な凹凸形状を有してなる。弾性層22上の球形微粒子23は、球形微粒子同士の膜厚方向の重なり合いや、弾性層22中への球形微粒子の完全埋没が殆どない。
まず、中間転写ベルト20の基層21について説明する。この構成材料としては、樹脂中に電気抵抗を調整する充填材(又は、添加材)、いわゆる電気抵抗調整材を含有してなるものが挙げられる。このような樹脂としては、難燃性の観点から、例えば、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、エチレン・テトラフルオロエチレン共重合体(ETFE)などのフッ素系樹脂や、ポリイミド樹脂又はポリアミドイミド樹脂等が好ましい。また、機械強度(高弾性)や耐熱性の点から、特にポリイミド樹脂又はポリアミドイミド樹脂が好適である。ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂としては、東レデュポン、宇部興産、新日本理化、JSR、ユニチカ、アイ・エス・ティ−、日立化成工業、東洋紡績、荒川化学等のメ−カ−から一般汎用品を入手し使用することができる。
上記電気抵抗調整材としては、金属酸化物やカ−ボンブラック、イオン導電剤、導電性高分子材料などがある。金属酸化物としては、例えば、酸化亜鉛、酸化スズ、酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化アルミニウム、酸化珪素等が挙げられる。また、分散性を良くするため、前記金属酸化物に予め表面処理を施したものも挙げられる。
カ−ボンブラックとしては、例えば、ケッチェンブラック、ファ−ネスブラック、アセチレンブラック、サ−マルブラック、ガスブラック等が挙げられる。イオン導電剤としては、例えば、テトラアルキルアンモニウム塩、トリアルキルベンジルアンモニウム塩、アルキルスルホン酸塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルサルフェ−ト、グルセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルアミン、ポリオキシエチレン脂肪アルコ−ルエステル、アルキルベタイン、過塩素酸リチウム等が挙げられる。これらのイオン導電剤は併用して用いてもよい。なお、本発明における電気抵抗調整材は、上記例示化合物に限定されるものではない。また、中間転写ベルトの製造方法においては、少なくとも樹脂成分を含む塗工液に必要に応じて、さらに分散助剤、補強材、潤滑材、熱伝導材、酸化防止剤などの添加材を含有してもよい。
上記電気抵抗調整材の含有量としては、カ−ボンブラックの場合には、塗工液中の全固形分の10〜25[wt%]、好ましくは15〜20[wt%]である。また、金属酸化物の場合の含有量としては、塗工液中の全固形分の1〜50[wt%]、好ましくは10〜30[wt%]である。含有量が前記それぞれの電気抵抗調整材の範囲よりも少ないと抵抗値の均一性が得られにくくなり、任意の電位に対する抵抗値の変動が大きくなる。また含有量が前記それぞれの範囲よりも多いと中間転写ベルトの機械強度が低下し、実使用上好ましくない。
中間転写ベルト20として好適に装備される基層21は、抵抗値として、好ましくは表面抵抗で1×108〜1×1013[Ω/□]、体積抵抗で1×108〜1×1011[Ω・cm]になる様なカ−ボンブラック等の電気抵抗調整材量を含有させるが、機械強度の面から、膜が脆く割れやすくならない程度の添加量で達成できるものを選択する。つまり、中間転写ベルト20とする場合には、前記樹脂成分(例えば、ポリイミド樹脂前駆体又はポリアミドイミド樹脂前駆体)と電気抵抗調整材の配合を適正に調整した塗工液を用いて、電気特性(表面抵抗及び体積抵抗)と機械強度のバランスが取れた無端状ベルトを製造して用いるのが好ましい。
基層21の厚みとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、30〜150[μm]が好ましく、40〜120[μm]がより好ましく、50〜80[μm]が特に好ましい。前記基層21の厚みが、30[μm]未満であると、亀裂によりベルトが裂けやすくなり、150[μm]を超えると、曲げによってベルトが割れることがあることがある。一方、前記基層21の厚みが前記特に好ましい範囲であると耐久性の点で、有利である。基層21に関しては、走行安定性を高めるために、膜厚ムラはなるべく無くすことが好ましい。
基層21の厚みを調整する方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。例えば、接触式や渦電流式の膜厚計での計測や膜の断面を走査型電子顕微鏡(SEM)で測定する方法が挙げられる。
次に基層21に積層する弾性層22について説明する。構成する材料としては、汎用の樹脂・エラストマ−・ゴムなどの材料を使用することが可能だが、本発明の効果を十分に発現するに十分な柔軟性(弾性)を有する材料を用いることが好ましく、エラストマ−材料やゴム材料を用いるのが良い。
エラストマ−材料としては、熱可塑性エラストマ−として、ポリエステル系、ポリアミド系、ポリエ−テル系、ポリウレタン系、ポリオレフィン系、ポリスチレン系、ポリアクリル系、ポリジエン系、シリコ−ン変性ポリカ−ボネ−ト系、フッ素系共重合体系等が挙げられる。また、熱硬化性として、ポリウレタン系、シリコ−ン変性エポキシ系、シリコ−ン変性アクリル系等が挙げられる。
また、ゴム材料としては、イソプレンゴム、スチレンゴム、ブタジエンゴム、ニトリルゴム、エチレンプロピレンゴム、ブチルゴム、シリコ−ンゴム、クロロプレンゴム、アクリルゴム、クロロスルホン化ポリエチレン、フッ素ゴム、ウレタンゴム、ヒドリンゴム等が挙げられる。
上記各種エラストマ−、ゴムの中から、性能が得られる材料を適宜選択するが、本発明においては、耐オゾン性、柔軟性、球形微粒子23との接着性、難燃性付与、耐環境安定性の面からアクリルゴムが最も好ましい。以下、アクリルゴムについて説明する。
弾性層22に用いられるアクリルゴムは現在市販されているもので良く、特に限定されるものではない。しかし、アクリルゴムの各種架橋系(エポキシ基、活性塩素基、カルボキシル基)の中ではカルボキシル基架橋系がゴム物性(特に圧縮永久歪み)及び加工性が優れているので、カルボキシル基架橋系を選択することが好ましい。
カルボキシル基架橋系のアクリルゴムに用いる架橋剤は、アミン化合物が好ましく、多価アミン化合物が最も好ましい。このようなアミン化合物として、具体的には脂肪族多価アミン架橋剤、芳香族多価アミン架橋剤などが挙げられる。
脂肪族多価アミン架橋剤としては、ヘキサメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミンカ−バメイト、N,N’−ジシンナミリデン−1,6−ヘキサンジアミンなどが挙げられる。芳香族多価アミン架橋剤としては、4,4’−メチレンジアニリン、m−フェニレンジアミン、4,4’−ジアミノジフェニルエ−テル、3,4’−ジアミノジフェニルエ−テル、4,4’−(m−フェニレンジイソプロピリデン)ジアニリン、4,4’−(p−フェニレンジイソプロピリデン)ジアニリン、2,2’−ビス〔4−(4−アミノフェノキシ)フェニル〕プロパン、4,4’−ジアミノベンズアニリド、4,4’−ビス(4−アミノフェノキシ)ビフェニル、m−キシリレンジアミン、p−キシリレンジアミン、1,3,5−ベンゼントリアミン、1,3,5−ベンゼントリアミノメチルなどが挙げられる。
上記架橋剤の配合量は、アクリルゴム100重量部に対し、好ましくは0.05〜20重量部、より好ましくは0.1〜5重量部である。架橋剤の配合量が少なすぎると、架橋が十分に行われないため、架橋物の形状維持が困難になる。一方、含有量が多すぎると、架橋物が硬くなりすぎ、架橋ゴムとしての弾性などが損なわれる。
また、上記アクリルゴムよりなる弾性層22においては、さらに架橋促進剤を配合して上記架橋剤に組み合わせて用いてもよい。架橋促進剤も限定はないが、前記多価アミン架橋剤と組み合わせて用いることができる架橋促進剤であることが好ましい。このような架橋促進剤としては、例えば、グアニジン化合物、イミダゾ−ル化合物、第四級オニウム塩、第三級ホスフィン化合物、弱酸のアルカリ金属塩などが挙げられる。
グアニジン化合物としては、1,3−ジフェニルグアニジン、1,3−ジオルトトリルグアニジンなどが挙げられる。イミダゾ−ル化合物としては、2−メチルイミダゾ−ル、2−フェニルイミダゾ−ルなどが挙げられる。第四級オニウム塩としては、テトラn−ブチルアンモニウムブロマイド、オクタデシルトリ−n−ブチルアンモニウムブロマイドなどが挙げられる。
多価第三級アミン化合物としては、トリエチレンジアミン、1,8−ジアザ−ビシクロ[5.4.0]ウンデセン−7(DBU)などが挙げられる。第三級ホスフィン化合物としては、トリフェニルホスフィン、トリ−p−トリルホスフィンなどが挙げられる。弱酸のアルカリ金属塩としては、ナトリウムまたはカリウムのリン酸塩、炭酸塩などの無機弱酸塩あるいはステアリン酸塩、ラウリル酸塩などの有機弱酸塩が挙げられる。
架橋促進剤の使用量は、アクリルゴム100重量部あたり、好ましくは0.1〜20重量部、より好ましくは0.3〜10重量部である。架橋促進剤が多すぎると、架橋時に架橋速度が早くなりすぎたり、架橋物表面ヘの架橋促進剤のブル−ムが生じたり、架橋物が硬くなりすぎたりする場合がある。架橋促進剤が少なすぎると、架橋物の引張強さが著しく低下したり、熱負荷後の伸び変化または引張強さ変化が大きすぎたりする場合がある。
アクリルゴムの調製にあたっては、ロ−ル混合、バンバリ−混合、スクリュ−混合、溶液混合などの適宜の混合方法が採用できる。配合順序は特に限定されないが、熱で反応や分解しにくい成分を充分に混合した後、熱で反応しやすい成分あるいは分解しやすい成分として、例えば架橋剤などを、反応や分解が起こらない温度で短時間に混合すればよい。
アクリルゴムは、加熱することにより架橋物とすることができる。加熱温度は、好ましくは130〜220[℃]、より好ましくは140〜200[℃]であり、架橋時間は好ましくは30秒〜5時間である。加熱方法としては、プレス加熱、蒸気加熱、オ−ブン加熱、熱風加熱などのゴムの架橋に用いられる方法を適宜選択すればよい。また、一度架橋した後に、架橋物の内部まで確実に架橋させるために、後架橋を行ってもよい。後架橋は、加熱方法、架橋温度、形状などにより異なるが、好ましくは1〜48時間行う。後架橋を行う際の加熱方法、加熱温度は適宜選択すればよい。
弾性層22の柔軟性は、気温25[℃]、相対湿度50[%]RHの環境下でのマイクロゴム硬度値が40以下であることが好ましい。マイクロゴム硬度は市販のマイクロゴム硬度計を使用することが出来るが、例えば高分子計器株式会社の「マイクロゴム硬度計MD−1」を使用することにより求めることができる。
弾性層22の膜厚は400〜1000[μm]が好ましく、より好ましくは500〜700[μm]である。400[μm]以下では表面凹凸がある紙種に対する画像品質は不充分になってしまう。また1000[μm]以上では膜の重さが重くなったり、たわみやすくなったり、反りが大きくなって走行性が不安定になったり、ベルトを張架させるためのロ−ラ曲率部での屈曲により亀裂が発生しやすくなったりするため好ましくない。
弾性層22のベルト幅方向の長さは、昨今の電子写真の高速化、高画質化、高耐久化の面から300[mm]以上とするのが好ましい。弾性層22は、上記選択した材料に、電気特性を調整するための抵抗調整剤、必要に応じて、酸化防止剤、補強剤、充填剤、加硫促進剤などの材料を適宜含有させた配合を行う。
中間転写ベルト20に必要な抵抗率制御はアクリルゴム単体では抵抗率が高いために導電剤の添加が必要となる。抵抗率の制御としては、カ−ボンやイオン導電剤の添加が可能であるが、本発明ではゴム硬度が重要となるので少量添加で効果がありゴム硬度に影響を与えないイオン導電剤の使用が好ましい。具体的には種々の過塩素酸塩やイオン性液体をゴム100部に対して0.01部〜3部添加するのが好ましい。イオン導電剤の添加量が0.01部以下では抵抗率を下げる効果が得られず、3部以上の添加量ではベルト表面へ導電剤がブル−ム又はブリ−ドする可能性が高くなってしまう。中間転写ベルト20に使用される弾性層22の抵抗値としては、表面抵抗で1×108〜1×1013[Ω/□]、体積抵抗で1×107〜1×1012[Ω・cm]となる様に調整されることが好ましい。
弾性層22に含まれる難燃剤について説明する。樹脂やゴム弾性層であるアクリルゴムへの難燃性付与には公知の難燃剤を使用することが可能である。ただし、環境負荷が大きいハロゲン含有難燃剤の使用は避ける。環境負荷も非常に小さく安価な難燃剤として公知なものに、水酸化アルミニウムなどの水酸化金属化合物がある。
水酸化金属化合物を単独で添加することで難燃性を得るには、樹脂やゴムに対し100部以上添加する必要があるが、このようにすると、樹脂やゴムの硬度が上昇して柔軟性が悪化する。その結果、樹脂やゴムがもろくなったり、表面凹凸がある紙種に対する画像品質が低下したりするので、水酸化金属化合物を単独で添加することは避ける。難燃性を付与するための公知技術である、水酸化金属化合物と燐化合物とを混合して添加することにより、UL94VTM燃焼試験においてVTM−0が達成可能な複写機用弾性中間転写ベルトを実現できる。
具体的には、水酸化金属化合物の添加量をゴム100部に対して20部〜80部添加(より好ましくは10部〜70部)するとともに燐化合物を10部〜20部添加するのが好ましい。添加量が上記範囲以下になると難燃性が得られず、上記範囲以上になると記録紙の表面凹凸に対する追従性が悪化する。
燐化合物や水酸化アルミニウムなどの水酸化金属化合物としては、特に制限はなく、適宜合成したものを使用してもよいし、市販品を使用してもよい。また、水酸化金属化合物の分散性を向上するためには、粒子径の細かいもの用いることが望ましい。具体的には、粒子径が1.0[μm]以下、より好ましくは0.75[μm]以下の材料を選択するのが望ましい。これにより、難燃性を向上させるとともに、分散性を向上できるので画像品質についても改善される。
水酸化アルミニウムとしては、巴工業株式会社より市販されているB−30(平均粒子径:55〜75[μm])、B−325(平均粒子径:23〜31[μm])、B−316(平均粒子径:16〜20[μm])、B−309(平均粒子径:12.5〜10.5[μm])、B−303(平均粒子径:3.8〜4.8[μm])など各種グレ−ドを使用してもよい。また、昭和電工株式会社より市販されている商品名「ハイジライト」のH−21(中心径:27[μm])、H−31(中心径:18[μm])、H−32(中心径:8[μm])、H−42(中心径:1.0[μm])、H−43(中心径:0.75[μm])など各種グレ−ドを使用してもよい。
また、燐化合物としては、燐化学工業株式会社より市販されているノ−バレッド120UF(平均粒子径:10〜15[μm])、ノ−バエクセル140F(平均粒子径:5〜15[μm])、ノ−バエクセルSFT100(平均粒子径:2〜5[μm])の各種グレ−ドを使用してもよい。
難燃性化合物配合フィルムの難燃性は、UL94−VTM試験(薄手材料垂直燃焼試験)に準拠して評価することができる。
弾性層22に含まれる分散剤について説明する。上記難燃剤の塗工溶液内での分散性を向上させるために分散剤を添加する必要がある。水酸化金属化合物系の難燃剤を用いて中間転写ベルトを製造する場合、上記難燃剤の分散性が画像品質に影響を及ぼすことが分かっている。つまり、上記難燃剤が十分に分散せず水酸化金属化合物が一部に局在化する現象がおこると、その局在化した部分では中間転写ベルトから紙へとトナ−が十分に転写されなくなる。
上記難燃剤の局在化は、特に、螺旋塗工を行ったときに塗工間筋部において確認された。螺旋状に難燃剤が局在化した筋を「スパイラル筋」と呼ぶ。このスパイラル筋は、高温高湿度環境下でトナ−濃度の低い画像(ハ−フト−ン画像等)を画像形成したときに確認された。
スパイラル筋の異常画像が発生する原因の詳細については分かっていない。水酸化金属化合物が局在化した部分では、静電容量や抵抗値が変化してトナ−転写時における初期の転写電流に影響を及ぼすので、この部分では通常の転写電流のままでは転写ができなくなってしまったためと考えられる。
水酸化金属化合物を含む難燃剤の分散性と分散剤の酸価とは相関関係がある。これは、水酸化金属化合物と分散剤の酸との間において、水素結合による親和力が生じたことにより、粘度の高い弾性塗工液中においても難燃剤が安定して存在できるようになったためと考えられる。
分散剤の酸価は、JIS K0070に準拠した方法により求めるものとする。なお、酸価とは、試料1g中に含有する樹脂酸、遊離脂肪酸などを中和するのに必要とする水酸化カリウムのmg数である。
水酸化金属化合物の分散性を向上するためには、分散剤の酸価が15[mgKOH/g]以上であることが好ましく、50[mgKOH/g]以上であることがより好ましい。分散剤の酸価が150[mgKOH/g]以上であることがさらに好ましい。酸価は高ければ高いほど望ましい。一方、分散剤の酸価が15[mgKOH/g]以下であると、上記親和力が十分に働かないため分散性はあまり改善しない。
分散剤は、炭化水素を主な構成とする疎水基と、親水基とを同一分子内に有する両親媒性の化合物である。親水基としては、−OH、−EO、−COOH、−SO3H、−NH3、−NO2などの置換基を含むもの、もしくは上記置換基がそれぞれ−OX、−COOX、−SO3X(Xはアルカリ金属、アンモニア、有機アミン類など)、−NX3(Xはアルキル、フェニル等)、−NM4X(Mは例えば、H、アルキル、フェニル等であり、Xは例えば、ハロゲン、カルボン酸等の酸アニオン類、BF4等)等を含む単量体が挙げられる。
酸価を特徴とした分散剤の選択を考慮しているため親水基として少なくともヒドロキシル基、カルボキシル基やスルホン酸、スルフィン酸、リン酸、ホウ酸、ホスホン酸、等といった酸性官能基を1種または2種類以上有しており、最終的な酸価が15mgKOH/g以上であることが望ましい。
酸価が15以上であれば、低分子量のものから、オリゴマ−、ポリマ−まで上記分散剤として用いることができる。ブリ−ド防止の点から、オリゴマ−やポリマ−を上記分散剤として用いるのが望ましい。なお、ポリマーとは、複数のモノマー(単量体)が重合する(結合して鎖状や網状になる)ことによってできた化合物のことである。また、単一体であっても、ブロック共重合体やランダム共重合体であっても、複数の材料のブレンドあってもよい。
親水基が含まれているモノマ−として、例えば、アクリル酸、アクリル酸アルキルエステル、メタクリル酸、メタクリル酸アルキルエステル、マレイン酸、マレイン酸モノエステル、フマル酸、フマル酸モノエステル、ビニルスルホン酸、スチレンスルホン酸、スルホン化ビニルナフタレン、酢酸ビニル、ビニルナフタレン、アクリルアミド、メタクリロキシエチルホスフェ−ト、ビスメタクリロキシエチルホスフェ−ト、メタクリロオキシエチルフェニルアシドホスフェ−ト、エチレングリコ−ルジメタクリレ−ト、ジエチレングリコ−ルジメタクリレ−ト等が挙げられる。
上記モノマ−を重合させたポリマーの一例として、含窒素炭化水素系の樹脂、上記含酸素炭化水素系の樹脂、含硫黄炭化水素系の樹脂などが挙げられる。
含窒素炭化水素系の樹脂として、ポリアクリロニトリル(PAN)、ポリアクリルアミド(PAM)、ポリビニルピロリドン(PVP)、ポリイソプロピルアクリルアミド、ポリエチレンイミン、ジメチルアミノエチルアクリレ−ト(DAA)、ジメチルアミノエチルメタクリレ−ト(DAM)、ジアリルジメチルアンモニウム塩重合物、ポリビニルイミダゾリン、ポリアリルアミン、ジシアンアミド系縮合物、エピクロルヒドリン−ジメチルアミン縮合物、ポリアミジン、ポリアミド6(PA6)、ポリアミド11(PA11)、ポリアミド12(PA12)、ポリアミド4−6(PA4−6)、ポリアミド6−6(PA6−6)、ポリアミド6−10(PA6−10)、ポリアミド6−12(PA6−12)、ポリアミドイミド、ポリ−p−フェニレンテレフタルアミド、ポリイミド(PI)、ポリエ−テルイミド(PEI)、AS樹脂(SAN)、ABS樹脂(ABS)、アクリロニトリル−ブタジエンゴム(NBR)などが使用できる。
上記含酸素炭化水素系の樹脂として、ポリビニルアルコ−ル(PVA)、ポリ酢酸ビニル(PVAc)、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)、エチレン−ビニルアルコ−ル共重合体(EVOH)、ポリビニルホルマ−ル(PVF)、ポリビニルブチラ−ル(PVB)、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)、ポリカ−ボネ−ト(PC)、ポリエチレンテレフタレ−ト(PET)、ポリブチレンフタレ−ト(PBT)、ポリエチレンナフタレ−ト(PEN)、ポリアレ−ト(PAR)、ポリアセタ−ル(POM)、ポリオキシベンゾイルエステル(POB)、ポリエチレングリコ−ル(PEG)、ポリエチレンオキシド(PEO)、ポリメチルビニルエ−テル、ポリフェニレンオキシド(PPO)、ポリエ−テルエ−テルケトン(PEEK)、ポリエ−テルケトン(PEK)などが使用できる。
含硫黄炭化水素系の樹脂として、ポリフェニレンスルフィド(PPS)、ポリエ−テルスルフォン(PES)、ポリスルフォン(PSF)などが使用できる。また、生体高分子のうちの、タンパク質や多糖、核酸なども含硫黄炭化水素系の樹脂として使用できる。
分散性について満足な効果を得るためには、分散剤は、難燃剤に対して0.5〜100部(より好ましくは20〜60部)添加する必要がある。0.5部以下であると満足な分散性が得られず、100部以上であると成形後にブリ−ドアウトをすることがあるので望ましくない。
使用する分散剤は酸価が15以上であれば、特に制限はなく、適宜合成したものを使用してもよいし、市販品を使用してもよい。市販品としては、ビックケミ−・ジャパンより市販されている「DIPERBYK−102(酸価:101)」、「DIPERBYK−145(酸価:76)」、「BYK−P105(酸価:365)」など各種グレ−ドが使用できる。
次に、弾性層22上に付着している球形微粒子23について説明する。ここで、球形微粒子とは、体積平均粒径が100[μm]以下で真球状の形状をしており、有機溶剤に不溶で3[%]熱分解温度が200[℃]以上である微粒子のことをいう。
球形微粒子23の材料については特に問わないが、例えばアクリル樹脂、メラミン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂、シリコ−ン樹脂、フッ素樹脂等の樹脂を主成分としてなる球形微粒子が挙げられる。また、これらの樹脂材料からなる粒子の表面を異種材料で表面処理を施したものでも良い。また、ここで言う球形微粒子23の中には、ゴム材料からなる球形微粒子も含む。ゴム材料で作製された球形微粒子の表面を硬い樹脂をコ−トしたような構成のものも適用可能である。また、球形微粒子23には、中空状や、多孔質である球形微粒子を用いてもよい。
このような球形微粒子23は、弾性層よりも滑性及びトナ−に対し離型性を有する。これにより、中間転写ベルト20の耐摩耗性を向上させ、しかも離型性の向上によりトナ−の余分な付着を抑制し、クリ−ニング性及び転写性を高めることができる。
上記球形微粒子23としては、前記樹脂中で、滑性及びトナ−に対しての離型性を有し、耐磨耗性を付与できる機能の高いものとして、シリコ−ン球形微粒子が最も好ましい。これら樹脂を用い、重合法などにより球状の形状に作製された粒子であることが好ましく、真球に近いものほど好ましい。その粒径は、体積平均粒径が、1.0〜5.0[μm]であり、単分散粒子であることが望ましい。ここで言う単分散粒子とは、単一粒子径の粒子という意味ではなく、粒度分布が極めてシャ−プなもののことを指す。
具体的には、±(平均粒径×0.5)[μm]以下の分布幅のもので良い。粒径が1.0[μm]以下の場合、粒子による転写性能の効果が十分に得られず、一方、5.0[μm]以上では、表面粗さが大きくなり、粒子間の隙間が大きくなるため、トナ−がうまく転写できなくなったりクリ−ニング不良となったりする不具合が生じる。さらには、粒子は絶縁性が高いものが多いため、粒径が大きすぎると粒子による帯電電位の残留により、連続画像出力時にこの電位の蓄積による画像乱れが発生する不具合も生じる。
上記球形微粒子23としては、特に制限はなく、適宜合成したものを使用してもよいし、市販品を使用してもよい。前記市販品としては、シリコ−ン粒子(モメンティブ・パフォ−マンス・マテリアルズ社製、商品名「トスパ−ル120」、商品名「トスパ−ル145」、商品名「トスパ−ル2000B」)、アクリル粒子(積水化成品工業社製、商品名「テクポリマ−MBX−SS」)などが挙げられる。
次に、上記中間転写ベルト20の表面状態についてさらに詳細に説明する。
図3は、中間転写ベルトの表面を真上から拡大して観察したときの模式図を示す。図3に示すように、中間転写ベルト20の表面状態は、均一な粒径の球形微粒子23が独立して整然と配列する形態を採り、球形微粒子23同士の重なり合いは殆ど観測されない。この表面を構成する各球形微粒子23の樹脂層面における断面の径も均一なほうが好ましく、具体的には、±(平均粒径×0.5)[μm]以下の分布幅となることが好ましい。
これを形成するためにできるだけ粒径の揃った粒子を用いることが好ましいが、これを用いなくてもある粒径のものが選択的に表面に形成できる方法により表面を形成して前記粒径分布幅となる構成としても良い。この球形微粒子23による表面の占有面積率(投影面積率)としては、60[%]以上が好ましい。60[%]以下では弾性層23の露出部が多すぎてトナ−が弾性層23と接触し良好な転写性が得られない。また、上限に関しては、露出部を低減する意味で100[%]に近いほど好ましい。
上記球形微粒子23は、弾性層22中へ一部埋設された形態を取るが、その埋没率は、50[%]を超え、100[%]に満たないものが好ましく、51〜90[%]であることがより好ましい。50[%]以下では、画像形成装置での長期使用において球形微粒子23の脱離が起きやすく、耐久性に劣る。一方、100[%]では、球形微粒子23による転写性への効果が低減し好ましくない。埋没率とは、球形微粒子23の深さ方向の径の弾性層22に埋没している率のことであるが、ここでいう、埋没率は、すべての球形微粒子23が50[%]を超え100[%]に満たないという意味ではなく、ある視野で見たときの平均埋没率で表わしたときの数値が50[%]を超え100[%]に満たなければよい。
しかし、埋没率50[%]のときは、電子顕微鏡による断面観測において、弾性層22中へ完全埋没している球形微粒子23が殆ど観測されない(弾性層22中に完全に埋没している球形微粒子23の個数[%]は粒子全体のうち5[%]以下)。中間転写ベルト20における球形微粒子23の埋没率を測定する方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、中間転写ベルト20の断面を走査型電子顕微鏡(SEM)にて観察することにより、測定することができる。
次に、上記構成の中間転写ベルト20の作製方法の一例を説明する。まず、少なくとも樹脂成分を含む塗工液、すなわち前記ポリイミド樹脂前駆体又はポリアミドイミド樹脂前駆体を含む塗工液を用いて基層21を作製する方法について説明する。
円筒状の型、例えば、円筒状の金属金型をゆっくりと回転させながら、少なくとも樹脂成分を含む塗工液(例えば、ポリイミド樹脂前駆体又はポリアミドイミド樹脂前駆体を含む塗工液)をノズルやディスペンサ−のような液供給装置にて円筒の外面全体に均一になるように塗布・流延(塗膜を形成)する。その後、回転速度を所定速度まで上げ、所定速度に達したら一定速度に維持し、所望の時間回転を継続する。
そして、円筒状の金属金型を回転させつつ徐々に昇温させながら、約80〜150[℃]の温度で塗膜中の溶媒を蒸発させていく。この過程では、雰囲気の蒸気(揮発した溶媒等)を効率よく循環して取り除くことが好ましい。自己支持性のある膜が形成されたところで金型ごと高温処理の可能な加熱炉(焼成炉)に移し、段階的に昇温し、最終的に250〜450[℃]程度の高温加熱処理(焼成)し、十分にポリイミド樹脂前駆体又はポリアミドイミド樹脂前駆体のイミド化又はポリアミドイミド化を行う。充分に冷却後、引き続き、弾性層22を積層する。
上記弾性層22は、ゴムを有機溶剤に溶解させたゴム塗料を用い、基層21上に塗布形成し、その後、溶剤を乾燥、加硫することで製造することができる。塗布成形法としては、基層21と同じく、螺旋塗工、ダイ塗工、ロ−ル塗工などの既存の塗工法が適用できるが、凹凸転写性を良くする為には弾性層22の厚みを厚くすることが必要である。また、厚膜を形成する塗工法としては、ダイ塗工、及び螺旋塗工が優れている。
前述したように、弾性層22の厚みを幅方向で変えやすいといった点で螺旋塗工が優れている。そのためここでは、螺旋塗工について説明する。まず基層21を周方向に回転させながら、丸型、又は広幅のノズルによりゴム塗料を連続的に供給しながら、ノズルを基層21の幅方向に移動させて、基層21上に塗料を螺旋状に塗工する。基層21上に螺旋状に塗工された塗料は、所定の回転速度、乾燥温度を維持させることでレベリングされながら乾燥される。
その後、さらに所定の加硫温度で加硫(架橋)させて形成される。加硫された弾性層22は、その後充分に冷却する。ベルト幅方向への膜厚を変化させるには、ノズルの吐出量、ノズル金型間の距離を変化させるか、もしくは金型の回転速度を変えることにより作製することができる。
図4は、球形微粒子層の形成方法を説明する構成図である。球形微粒子層の形成方法としては、例えば、図4に示すように、基層21及び弾性層22が積層されてなる無端状ベルト102が作製された円筒状の金属製の金型101の周囲に粉体供給装置105と押し当て部材103を設置する。そして、金型101を回転させながら、粉体供給装置105から球形微粒子104を弾性層22の表面に均一にまぶし、表面にまぶされた球形微粒子104を押し当て部材103により一定圧力にて押し当てる。この押し当て部材103により、弾性層22へ球形微粒子104を埋設させつつ、余剰な球形微粒子を取り除く。本実施形態では、特に単分散の球形微粒子を用いるために、このような押し当て部材103でのならし工程のみの簡単な工程で、均一な単一粒子層を形成することが可能である。
このようにして、球形微粒子104を均一に表面に並べたのち、回転させながら所定温度、所定時間で加熱することにより硬化させ、弾性層22中に球形微粒子の一部を埋設させることができる。充分に冷却後、金型101から基層21ごと脱離させ、所望の中間転写ベルト20を得る。
上記行程において、球形微粒子23の弾性層22中への埋没率の調整は、例えば、押し当て部材103の押し当て時間の長さや押圧力を加減することにより、容易に果たすことができる。流延塗工液の粘度、固形分、溶剤の使用量、粒子材質等にも依るが、目安として、流延塗工液の粘度100〜100000[mPa・s]において、押し当て部材103の押圧力を、1〜1000[mN/cm]の範囲とすることにより、前記50〜100[%]の埋没率を比較的容易に達成することができる。
こうして作製された中間転写ベルト20の抵抗は、カ−ボンブラック、イオン導電剤の量を可変することにより調整される。この際、球形微粒子23の大きさや占有面積率によって抵抗が変わりやすいので注意する。抵抗の測定は市販の計測器を使用できるが、たとえばダイアインスツルメンツ社のハイレスタを使用することにより測定することができる。
以下、実施例に基づいて本発明を更に具体的に説明するが、本発明は、これら実施例によって制限されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない限りこれらの実施例を適宜改変したものも本発明の範囲内である。なお、ベルト中央部の膜厚(C)は幅方向中心部±50[mm]の平均膜厚を、端部の膜厚(フロント側F、リア側R)はそれぞれ幅方向両末端から50[mm]の平均膜厚を求めることによって、それぞれ算出した。膜厚は接触式の膜厚計で計測した。
ベルト表面上における球形樹脂微粒子の投影面積率は、ベルトの表面を走査電子顕微鏡(SEM)にて観察し、その画像を画像処理ソフト(Image−proplus;cyber netics社)を用いて二値化することによって算出した。難燃剤の粒子径は、走査電子顕微鏡(SEM)にて難燃剤のみを直接観察し、粒子数100個の粒子径の平均を求めることにより算出した。
[実施例1]
下記に示す基層用塗工液を調製し、この塗工液を用いて無端状ベルト基層を作製した。
基層用塗工液の調製について説明する。先ず、ポリイミド樹脂前駆体を主成分とするポリイミドワニス(U−ワニスA;宇部興産社製)に、予めビーズミルにてN−メチル−2−ピロリドン中に分散させたカーボンブラック(SpecialBlack4;エボニックデグサ社製)の分散液を、カーボンブラック含有率がポリアミック酸固形分の17[wt%]になるように調合し、よく攪拌混合して基層用塗工液Aを調製した。
ポリイミド基層ベルトの作製について説明する。外径500[mm]、長さ400[mm]の外面をブラスト処理にて粗面化した金属製の円筒状支持体を型として用い、ロールコート塗工装置に取り付けた。続いて、基層用塗工液Aをパンに流し込み、塗布ローラの回転速度40[mm/sec]で塗料を汲み上げ、規制ローラと塗布ローラのギャップを0.6[mm]として、塗布ローラ上の塗料厚みを制御した。
続いて、円筒状支持体の回転速度を35[mm/sec]に制御して塗布ローラに近づけ、塗布ローラとのギャップ0.4[mm]として塗布ローラ上の塗料を均一に円筒状支持体上に転写塗布した。そして、円筒状支持体の回転を維持しながら熱風循環乾燥機に投入して、110[℃]まで徐々に昇温して30分加熱、さらに昇温して200[℃]で30分加熱し、回転を停止した。その後、これを高温処理の可能な加熱炉(焼成炉)に導入し、段階的に320[℃]まで昇温して60分加熱処理(焼成)した。充分に冷却し、膜厚60[μm]のポリイミド基層ベルトAを得た。
ポリイミド基層ベルトへの弾性層の作製について説明する。下記に示す各成分を下記に示す割合で配合し混練することでゴム組成物を作成した。
アクリルゴム(日本ゼオン株式会社/NipolAR12):100重量部、
ステアリン酸(日油株式会社製 ビーズステアリン酸つばき):1重量部、
赤リン(燐化学工業株式会社製 ノーバエクセル140F):10重量部、
水酸化アルミニウム(昭和電工株式会社製 ハイジライトH42M、中心径1.0[μm]):40重量部、
架橋剤(デュポン ダウ エラストマー ジャパン製 Diak.No1(ヘキサメチレンジアミンカーバメイト)):0.6重量部、
架橋促進剤(Safic alcan社製 VULCOFAC ACT55(70%1,8−ジアザビシクロ(5,4,0)ウンデセン−7と二塩基酸との塩、30%アモルファスシリカ)):0.6重量部、
導電剤(日本カーリット株式会社製 QAP−01(過塩素酸テトラブチルアンモニウム)):0.3重量部。
次に、分散剤DIPERBYK−102(酸価:101)を水酸化アルミニウムに対して40重量部になるように事前に溶解させた有機溶剤(MAK)に上記ゴム組成物を溶かして固形分30[wt%]のゴム溶液を作製した。ポリイミド基層を有する円筒状支持体を回転させ、先に作製したゴム溶液をノズルより連続的に吐出しながら円筒状支持体の軸方法に移動させ螺旋状に塗工した。塗布量としては中央部の最終的な膜厚が550[μm]になるようにした。その後、ゴム溶液が塗工された円筒状支持体をそのまま回転しながら熱風循環乾燥機に投入して、昇温速度4[℃/分]で100[℃]まで昇温して120分加熱した。
凹凸形状の作製について説明する。乾燥機から取り出して冷却し、この表面に、図4の装置を用いて、球形微粒子23として、シリコーン球形微粒子(トスパール120(体積平均粒径:2.0[μm]品);モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ)をまんべんなく表面にまぶした。ポリウレタンゴムブレードの押し付け部材を、押圧力100[mN/cm]で押し当てて弾性層に固定化した。続いて、再び熱風循環乾燥機に投入し、昇温速度4℃/分で170℃まで昇温して60分加熱処理した。その後、金型から取り外して中間転写ベルト(ベルト番号Aの中間転写ベルトとする)を得た。このとき、粒子の投影面積率は83[%]であった。
[実施例2]
実施例1の弾性層の作製において、分散剤にBYK−P105(酸価:365)を用いた以外は、実施例1と同様にしてベルトを作製し、中間転写ベルト(ベルト番号Bの中間転写ベルトとする)を得た。このとき、粒子の投影面積率は76[%]であった。
[実施例3]
実施例2の弾性層の作製において、難燃剤としての水酸化アルミニウムをハイジライトH43M(中心径:0.75[μm])に変えた以外は、実施例2と同様にしてベルトを作製し、中間転写ベルト(ベルト番号Cの中間転写ベルトとする)を得た。このとき、粒子の投影面積率は77[%]であった。
[実施例4]
実施例3の凹凸形状の作製において、球形樹脂微粒子にシリコーン微粒子(信越化学製、X−52−854(体積平均粒子径:0.8[μm]))を用いたこと以外は、実施例3と同様にしてベルトを作製し、中間転写ベルト(ベルト番号Dの中間転写ベルトとする)を得た。このとき、粒子の投影面積率は72[%]であった。
[実施例5]
実施例3の凹凸形状の作製において、球形樹脂微粒子にシリコーン微粒子(モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ製、トスパール2000B(体積平均粒子径:6.0[μm]))を用いたこと以外は、実施例3と同様にしてベルトを作製し、中間転写ベルト(ベルト番号Eの中間転写ベルトとする)を得た。このとき、粒子の投影面積率は71[%]であった。
[実施例6]
実施例3の球形樹脂微粒子として用いたシリコーン微粒子の投影面積率を40[%]になるように変更した以外は、実施例3と同様にしてベルトを作製し、中間転写ベルト(ベルト番号Fの中間転写ベルトとする)を得た。このとき、粒子の投影面積率は40[%]であった。
[比較例1]
実施例1の弾性層の作製において、分散剤にDISPERBYK−130(酸価:3)を用いた以外は、実施例1と同様にしてベルトを作製し、中間転写ベルト(ベルト番号Gの中間転写ベルトとする)を得た。このとき、粒子の投影面積率は75[%]であった。
[比較例2]
実施例3の弾性層の作製において、分散剤にDISPERBYK−130(酸価:3)を用いた以外は実施例3と同様にしてベルトを作製し、中間転写ベルト(ベルト番号Hの中間転写ベルトとする)を得た。このとき、粒子の投影面積率は71[%]であった。
[比較例3]
実施例1の弾性層の作製において、分散剤を加えていない以外は、実施例1と同様にしてベルトを作製し、中間転写ベルト(ベルト番号Iの中間転写ベルトとする)を得た。このとき、粒子の投影面積率は80[%]であった。
[比較例4]
実施例3の弾性層の作製において、分散剤を加えていない以外は、実施例3と同様にしてベルトを作製し、中間転写ベルト(ベルト番号Jの中間転写ベルトとする)を得た。このとき、粒子の投影面積率は72[%]であった。
[比較例5]
実施例3の弾性層の作製において、難燃剤としての水酸化アルミニウムをハイジライトH42(中心径:8.0[μm])に変えた以外は、実施例3と同様にしてベルトを作製し、中間転写ベルト(ベルト番号Kの中間転写ベルトとする)を得た。このとき、粒子の投影面積率は74[%]であった。
各実施例1〜6、及び比較例1〜5の中間転写ベルトA〜Kを、図1で説明した画像形成装置に搭載し以下の様に評価を行った。その結果を表1に示す。
画像品質の評価について説明する。初期画像出力時点におけるベタ画像、初期画像出力時点におけるハーフトーン画像、および5万枚画像出力時点におけるハーフトーン画像の各テストチャートをそれぞれ普通紙(TYPE 6200)に印刷したものについて画像品質の評価を行った。ベタ画像はブラックのトナーによる全面ベタ、ハーフトーン画像はブラックのトナーによる全面ハーフトーンとした。画像出しは、気温28[℃]、相対湿度50[%RH]の高温高湿度環境下にて行った。
画像品質の評価は、具体的には、各テストチャートを印刷したものについて、それぞれ螺旋塗工によるスパイラル筋を目視にて確認した。判定は、◎が画質にスパイラル筋なし、○がスパイラル筋が僅かに見られるものの使用可能なレベル、×がスパイラル筋が見られ使用不可、とした。
実施例1〜6においては、いずれのテストチャートにも使用不可となるスパイラル筋は確認されなかった。これに対し、比較例1〜5においては、いずれのテストチャートにも使用不可となるスパイラル筋が確認された。
また、5万枚画像出力時点におけるベルト表面の状態についても評価した。具体的には、ベルトの表面におけるトナーフィルミングについては目視で、粒子の脱離状態についてはSEMで観察した。判定は、◎がベルトのフィルミングや粒子の脱離がないもの、○がフィルミングや粒子の脱離が見られるが使用可能なレベルのもの、×はフィルミングや粒子の脱離が見られ使用不可なレベルのものとした。
実施例1〜6、および比較例1〜5のいずれについても、フィルミングや粒子の脱離が見られ使用不可なレベルのものはなかった。
以上に説明したものは一例であり、本発明は、次の態様毎に特有の効果を奏する。
(態様A)
複数の張架部材によって張架されながら無端移動せしめられ、トナ−像が転写される転写ベルトにおいて、少なくとも基層21などの基層と弾性部材からなる弾性層22などの弾性層とが積層され、前記弾性層の表面には球形微粒子により凹凸形状を形成し、前記弾性層の材料には難燃剤及び分散剤が含有され、前記難燃剤が水酸化金属化合物を含み、前記分散剤の酸価が15[mgKOH/g]以上である。
上記弾性層の材料に上記難燃剤を含有することで、上記転写ベルトに難燃性を持たせることができる。水酸化金属化合物を含む難燃剤の分散性は、分散剤の酸価に影響される。これは、水酸化金属化合物と分散剤の酸との間において、水素結合による親和力が生じたことにより、粘度の高い弾性塗工液(上記弾性層の材料)中においても難燃剤が安定して存在できるようになるためである。酸価が15[mgKOH/g]以上の分散剤を上記弾性層の材料に含有させることで、上記難燃剤の分散性を向上させ、上記弾性層の一部に上記難燃剤が局在化するのを防止できることを実験により確認した。これにより、上記難燃剤が局在化することに起因するスパイラル筋などの異常画像の発生を防止できる。
(態様B)
態様Aにおいて、前記分散剤の酸価が150[mgKOH/g]以上である。
上記分散剤の酸価を150[mgKOH/g]以上とすることで、上記難燃剤の分散性をより改善できることを実験により確認した。
(態様C)
態様AまたはBのいずれかにおいて、前記弾性層の難燃剤の粒径が0.75[μm]以下である。
前記弾性層の難燃剤の粒径が0.75[μm]以下にすることで、上記難燃剤の分散性をより改善できることを実験により確認した。
(態様D)
態様A〜Cのいずれか一において、前記球形樹脂微粒子の体積平均粒子径が1〜5[μm]の球形である。
球形樹脂微粒子の体積平均粒子径が1.0[μm]以下では、粒子による転写性能の効果が十分に得られない。一方、5.0[μm]以上では、表面粗さが大きくなり、粒子間の隙間が大きくなるため、トナ−がうまく転写できなくなったりクリ−ニング不良となったりする不具合が生じる。
(態様E)
態様A〜Dのいずれか一において、前記球形樹脂微粒子が部分埋設される表層の全表面積に対して、部分埋設される球形樹脂微粒子の投影面積比率が60[%]以上である。
上記投影面積比率が60[%]以下では弾性層23の露出部が多すぎてトナ−が弾性層と接触し良好な転写性が得られない。
(態様F)
潜像が形成されトナ−像を担持可能な像担持体と、該像担持体上に形成された潜像をトナ−で現像する現像手段と、該現像手段により現像されたトナ−像が一次転写される転写ベルトと、該転写ベルトに担持されたトナ−像を記録媒体に二次転写する二次転写手段とを備えた画像形成装置において、前記転写ベルトとして、態様A〜Eのいずれか一の転写ベルトを用いる。
(態様G)
態様Fにおいて、互いに異なる色のトナ−像を担持する複数の像担持体が直列に配設されている。