JP4622584B2 - 電子写真機器用無端ベルトおよびその製法 - Google Patents

電子写真機器用無端ベルトおよびその製法 Download PDF

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Description

本発明は、電子写真機器用無端ベルトおよびその製法に関するものであり、詳しくはフルカラーLBP(レーザービームプリンター)やフルカラーPPC(プレーンペーパーコピア)等の電子写真技術を採用した電子写真機器において、中間転写ベルトや紙転写搬送ベルト等に用いられる電子写真機器用無端ベルトおよびその製法に関するものである。
一般に、フルカラーLBPやフルカラーPPC等の電子写真技術を採用した電子写真機器において、トナー像の転写用,紙転写搬送用,感光体基体用等の用途に、無端ベルト(シームレスベルト)が多用されている。このような無端ベルトとしては、例えば、PVDF(ポリフッ化ビニリデン)等のフッ素系樹脂に、導電性カーボンブラックを配合したものを、ディッピング法等の成形方法により、筒状フィルムに形成したものが用いられている。
しかし、上記フッ素系樹脂製ベルトは、電気特性には優れるものの、弾性率等のベルト物性が低くなるとともに、コストが高くなるという難点がある。
そこで、剛性に優れる点で、ポリアミドイミド樹脂やポリイミド樹脂を用いて基層(ベース層)を形成した無端ベルトが提案されている(例えば、特許文献1,2参照)。
特開2001−152013号公報 特開2001−354854号公報
しかしながら、上記ポリアミドイミド樹脂やポリイミド樹脂を用いて基層(ベース層)を形成した無端ベルトは、剛性に優れているが、屈曲耐久性や靱性が劣る等の難点がある。特に、小径のロールを配置したベルトユニットで使用した場合には、基層(ベース層)に亀裂が発生し、無端ベルトが破断する等のおそれがある。
本発明は、このような事情に鑑みなされたもので、剛性に優れ、かつ、屈曲耐久性および靱性にも優れた電子写真機器用無端ベルトおよびその製法の提供をその目的とする。
上記の目的を達成するため、本発明の電子写真機器用無端ベルトは、基層および表層を含む2〜4層の電子写真機器用無端ベルトであって、上記電子写真機器用無端ベルトの基層が、ポリアミドイミド樹脂またはポリイミド樹脂からなる海相中に、ポリシロキサン化合物からなる島相がミクロ分散してなる海−島構造に形成され、上記海−島構造における島相の平均粒径が0.01〜10μmの範囲内であり、上記ポリシロキサン化合物が、下記の一般式(3)で表される繰り返し構造を有するシリコーンオイルであり、上記表層が、シリコーン系樹脂、フッ素系樹脂、ウレタン系樹脂、アクリル系樹脂、およびポリアミド系樹脂からなる群から選ばれた少なくとも一つを用いて形成されているという構成をとる。
Figure 0004622584
すなわち、本発明者らは、剛性に優れ、かつ、屈曲耐久性および靱性にも優れた電子写真機器用無端ベルトを得るため、基層(ベース層)を中心に鋭意研究を重ねた。その研究の過程で、基層および表層を含む2〜4層の電子写真機器用無端ベルトにおいて、その基層を、ポリアミドイミド樹脂またはポリイミド樹脂からなる海相中に、ポリシロキサン化合物(シリコーンオイル)(以下、単に「ポリシロキサン化合物」という場合もある。)からなる島相がミクロ分散してなる海−島構造に形成すると、所期の目的が達成できることを見いだし、本発明に到達した。すなわち、上記ポリシロキサン化合物は、ポリアミドイミド樹脂もしくはポリイミド樹脂と非相溶であるため、ポリアミドイミド樹脂もしくはポリイミド樹脂からなる海相中に、ポリシロキサン化合物からなる島相がミクロ分散して、海−島構造に形成される。そのため、ポリシロキサン化合物からなる島相により、応力が緩和され、屈曲耐久性や靱性が向上するようになると考えられる。
このように、本発明の電子写真機器用無端ベルトは、基層および表層を含む2〜4層の電子写真機器用無端ベルトにおいて、その基層が、ポリアミドイミド樹脂またはポリイミド樹脂からなる海相中に、ポリシロキサン化合物からなる島相がミクロ分散してなる海−島構造に形成されている。そのため、上記ポリシロキサン化合物からなる島相により、応力が緩和され、屈曲耐久性や靱性(ベンチ耐久性等)が向上し、その結果、電子写真機器用無端ベルトの高耐久化と高剛性化とを両立することができるという効果が得られる。
そして、上記海−島構造における島相の平均粒径が0.01〜10μmの範囲内であると、島相による応力緩和効果と、海相による屈曲耐久性や靱性(ベンチ耐久性等)の向上効果とのバランスが良好となる。
また、上記海−島構造における海相と島相との面積比が、海相/島相=99.95/0.05〜90/10の範囲内であると、島相による応力緩和効果と、海相による屈曲耐久性や靱性(ベンチ耐久性等)の向上効果とのバランスが良好となる。
つぎに、本発明の実施の形態について説明する。
本発明の電子写真機器用無端ベルトは、例えば、図1に示すように、基層1の外周面に表層2が直接形成されて構成されている。
本発明においては、上記無端ベルトの基層1が、ポリアミドイミド樹脂またはポリイミド樹脂からなる海相中に、ポリシロキサン化合物からなる島相がミクロ分散してなる海−島構造に形成されているのであって、これが最大の特徴である。
上記基層1を形成する材料(基層用材料)中のポリアミドイミド(PAI)樹脂としては、特に限定はなく、例えば、脂肪族ポリアミドイミド樹脂と、芳香族ポリアミドイミド樹脂等があげられるが、フィルム機械特性に優れる点で、芳香族ポリアミドイミド樹脂が好適に用いられる。
上記芳香族ポリアミドイミド樹脂としては、例えば、下記の一般式(1)で表される繰り返し構造(すなわち、ベンゼン環とイミド基とアミド基との組み合わせによる分子構造)を有するものがあげられる。
Figure 0004622584
上記PAI樹脂は、例えば、トリメリット酸,その無水物,酸塩化物等の酸成分と、ジアミンまたはジイソシアネートとを、N,N′−ジメチルアセトアミドやN−メチル−2−ピロリドン(NMP)等の極性溶剤中、所定温度(通常、60〜200℃程度)に加熱しながら撹拌することにより製造することができる。
上記PAI樹脂の製造に用いる酸成分としては、例えば、トリメリット酸およびその無水物または酸塩化物の他、ベンゼン−1,2,4,5−テトラカルボン酸(ピロメリット酸),ビフェニルテトラカルボン酸,ビフェニルスルホンテトラカルボン酸,ベンゾフェノンテトラカルボン酸,ビフェニルエーテルテトラカルボン酸,エチレングリコールビストリメリテート,プロピレングリコールビストリメリテート等のテトラカルボン酸およびこれらの無水物、シュウ酸,アジピン酸,マロン酸,セバチン酸,アゼライン酸,ドデカンジカルボン酸,ジカルボキシポリブタジエン,ジカルボキシポリ(アクリロニトリル−ブタジエン),ジカルボキシポリ(スチレン−ブタジエン)等の脂肪族ジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸,1,3−シクロヘキサンジカルボン酸,4,4′−ジシクロヘキシルメタンジカルボン酸,ダイマー酸等の脂環族ジカルボン酸、テレフタル酸,イソフタル酸,ジフェニルスルホンジカルボン酸,ジフェニルエーテルジカルボン酸,ナフタレンジカルボン酸等の芳香族ジカルボン酸があげられる。これらは単独でもしくは2種以上併せて用いられる。これらのなかでも、反応性、耐熱性、溶解性等の点から、トリメリット酸無水物が好適に用いられる。
また、上記PAI樹脂の製造に用いるジアミンまたはジイソシアネートとしては、例えば、エチレンジアミン,プロピレンジアミン,ヘキサメチレンジアミン等の脂肪族ジアミンおよびこれらのジイソシアネートや、1,4−シクロヘキサンジアミン,1,3−シクロヘキサンジアミン,イソホロンジアミン,4,4′−ジシクロヘキシルメタンジアミン等の脂環族ジアミンおよびこれらのジイソシアネートや、m−フェニレンジアミン,p−フェニレンジアミン,4,4′−ジアミノジフェニルメタン,4,4′−ジアミノジフェニルエーテル,4,4′−ジアミノジフェニルスルホン,ベンジジン,o−トリジン,2,4−トリレンジアミン,2,6−トリレンジアミン,キシリレンジアミン等の芳香族ジアミンおよびこれらのジイソシアネート等があげられる。これらは単独でもしくは2種以上併せて用いられる。これらのなかでも、耐熱性、機械的特性,溶解性等の点から、4,4′−ジアミノジフェニルメタンおよびそのジイソシアネート、2,4−トリレンジアミンおよびそのジイソシアネート、o−トリジンおよびそのジイソシアネート、イソホロンジアミンおよびそのジイソシアネートが好適に用いられる。
また、上記PAI樹脂の数平均分子量(Mn)は、5,000〜100,000の範囲内が好ましく、特に好ましくは10,000〜50,000の範囲内である。なお、数平均分子量(Mn)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフ(GPC)法により測定することができる。
つぎに、上記ポリイミド(PI)樹脂としては、下記の一般式(2)で表される繰り返し構造(すなわち、ベンゼン環とイミド基との組み合わせによる分子構造)を有するものであれば特に限定されるものではない。
Figure 0004622584
上記一般式(2)において、Rで表される2価の有機基としては、例えば、エチレンジアミン,プロピレンジアミン,ヘキサメチレンジアミン等の脂肪族ジアミンや、1,4−シクロヘキサンジアミン,1,3−シクロヘキサンジアミン,イソホロンジアミン,4,4′−ジシクロヘキシルメタンジアミン等の脂環族ジアミンや、m−フェニレンジアミン,p−フェニレンジアミン,4,4′−ジアミノジフェニルメタン,4,4′−ジアミノジフェニルエーテル,4,4′−ジアミノジフェニルスルホン,ベンジジン,o−トリジン,2,4−トリレンジアミン,2,6−トリレンジアミン,キシリレンジアミン等の芳香族ジアミン等のジアミン残基等があげられる。
上記PI樹脂は、上記一般式(2)で表される繰り返し構造中のR(2価の有機基)の種類により、熱可塑性PI樹脂と熱硬化性PI樹脂とに分類されるが、構造が剛直でフスィルム機械特性に優れる点で、熱硬化性PI樹脂が好適に用いられる。
上記PI樹脂は、例えば、酸ジ無水物と、ジアミンとを、N,N′−ジメチルアセトアミドやN−メチル−2−ピロリドン(NMP)等の極性溶剤中、イミド化しない程度の低温(約25℃以下)で攪拌しながら重縮合反応させることにより、全芳香族ポリアミド酸等のポリイミド前駆体を得ることができる。
上記酸ジ無水物としては、例えば、ピロメリット酸二無水物(PMDA)、ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(BPTA)、オキシジフタル酸二無水物(ODPA)、ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物(BTDA)、ベンゼンテトラカルボン酸二無水物、ナフタレンテトラカルボン酸二無水物等があげられる。これらは単独でもしくは2種以上併せて用いられる。なお、上記ジアミンとしては、前述のPAI樹脂に関する記載で例示したものと同様のものが用いられる。
また、上記PI樹脂の数平均分子量(Mn)は、1,000〜50万の範囲内が好ましく、特に好ましくは1万〜10万の範囲内である。
つぎに、上記ポリシロキサン化合物としては、島相がミクロ分散しやすい点で、下記の一般式(3)で表される繰り返し構造を有するシリコーンオイルが用いられる。
Figure 0004622584
上記一般式(3)において、R1 ,R2で表される有機基としては、特に限定はなく、例えば、メチル基,エチル基等のアルキル基や、フェニル基、アミノ基、エポキシ基、カルボキシル基、アルコキシ基、エーテル基等があげられる。また、上記一般式(3)における繰り返し単位nは、正数であれば特に限定はないが、好ましくはn=10〜1,000であり、特に好ましくはn=20〜300である。
上記シリコーンオイルとしては、特に限定はないが、コストの点から、メチル基,フェニル基,水素原子等を置換基として結合してストレートシリコーンオイル等が好適に用いられる。
ここで、上記ポリシロキサン化合物の配合量は、上記PAI樹脂またはPI樹脂の固形分100重量部(以下「部」と略す)に対して、0.01〜10部の範囲内が好ましく、特に好ましくは0.1〜5部の範囲内である。すなわち、上記ポリシロキサン化合物の配合量が0.01部未満では、応力緩和部位が少なすぎるため、強度アップ効果が乏しく、逆に10部を超えると、剛性(引張弾性率)が低下する傾向がみられるからである。
また、上記ポリシロキサン化合物の数平均分子量(Mn)は、100〜5万の範囲内が好ましく、特に好ましくは1,000〜2万の範囲内である。
なお、上記基層1の形成に用いる材料(基層用材料)としては、上記ポリアミドイミド樹脂,ポリイミド樹脂,ポリシロキサン化合物とともに、導電性充填剤やリン含有ポリエステル系樹脂等を用いても差し支えない。また、上記基層用材料には、上記各成分とともに、DMF,DMAC,トルエン,アセトン,NMP等の有機溶剤や、炭酸カルシウム等の通常の充填剤を、必要に応じて含有させることも可能である。
上記導電性充填剤としては、特に限定はないが、例えば、カーボンブラック,グラファイト等の導電性粉末、アルミニウム粉末,ステンレス粉末等の金属粉末、導電性酸化亜鉛(c−ZnO),導電性酸化チタン(c−TiO2),導電性酸化鉄(c−Fe34),導電性酸化錫(c−SnO2)等の導電性金属酸化物、第四級アンモニウム塩,リン酸エステル,スルホン酸塩,脂肪族多価アルコール,脂肪族アルコールサルフェート塩のようなイオン性導電剤等があげられる。これらは単独でもしくは2種以上併せて用いられる。
また、上記リン含有ポリエステル系樹脂としては、リン含有量がリン含有ポリエステル系樹脂全体の3〜15重量%の範囲内にあるものが好ましく、特に好ましくはリン含有量が5〜10重量%の範囲内にあるものである。上記リン含有量がこのような範囲内にあると、難燃性が向上するため好ましい。
ここで、上記基層用材料は、例えば、つぎのようにして作製することができる。まず、基層1中の海相がポリアミドイミド樹脂からなる場合について説明する。すなわち、撹拌機、窒素導入管、温度計、冷却管を備えた反応容器を準備し、トリメリット酸無水物等の酸成分と、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)等のジイソシアネートとを所定量配合し、NMP等の極性溶剤を仕込み、窒素気流下、撹拌しながら所定時間(好ましくは、1〜3時間)かけて所定温度(好ましくは、130〜150℃)まで昇温する。つぎに、所定温度(好ましくは、130〜150℃)で所定時間(好ましくは、約3〜5時間)反応させた後、反応を停止することにより、PAI樹脂溶液を調製する。つぎに、上記PAI樹脂溶液に、ジメチルシリコーンオイル等のポリシロキサン化合物を所定量添加し、常温(通常、25℃程度)下で、羽根撹拌で混合する。つづいて、この溶液に、カーボンブラック等を適宜配合し、撹拌羽根で混合した後、ボールミル分散することにより基層用材料を調製することができる。
この基層用材料を用いてなる電子写真機器用無端ベルトは、その基層が、ポリアミドイミド樹脂からなる海相中に、ポリシロキサン化合物からなる島相がミクロ分散してなる海−島構造に形成されている。
つぎに、上記基層1中の海相がポリイミド樹脂からなる場合の、上記基層用材料の製法について説明する。すなわち、撹拌機、窒素導入管、温度計、冷却管を備えた反応容器を準備し、ピロメリット酸二無水物(PMDA)等の酸ジ無水物と、4,4′−ジアミノジフェニルエーテル(ODA)等のジアミンとを所定量配合し、NMP等の極性溶剤を仕込み、窒素気流下、撹拌しながら、常温(通常、25℃程度)以下の温度で、所定時間(通常、3時間程度)反応させた後、反応を停止することにより、PIの前駆体であるポリアミド酸溶液を調製する。この場合、常温を超える温度で反応を行うと、イミド化が進行し、NMP等の極性溶剤に不溶となる傾向がみられるため、常温以下の温度で反応を行うことが好ましい。つぎに、上記ポリアミド酸溶液に、ジメチルシリコーンオイル等のポリシロキサン化合物を所定量添加し、常温(通常、25℃程度)下で、羽根撹拌で混合する。つづいて、この溶液に、カーボンブラック等を適宜配合し、撹拌羽根で混合した後、ボールミル分散することにより基層用材料を調製することができる。
この基層用材料を用いてなる電子写真機器用無端ベルトは、その基層が、ポリイミド樹脂からなる海相中に、ポリシロキサン化合物からなる島相がミクロ分散してなる海−島構造に形成されている。
ここで、本発明の電子写真機器用無端ベルトにおける基層1の海−島構造においては、島相の平均粒径は0.01〜10μmの範囲内であり、好ましくは0.1〜5μmの範囲内である。すなわち、島相の平均粒径が0.01μm未満であると、応力緩和部位が少なすぎるため、強度アップ効果が乏しくなり、逆に島相の平均粒径が10μmを超えると、剛性(引張弾性率)が低下するからである。
なお、上記島相の平均粒径の測定法は、特に限定はないが、例えば、走査形電子顕微鏡(SEM)や走査形プローブ顕微鏡(SPM)等により、各島相を観察してその径を測定し、それら粒径の平均値を求めることによって算出することができる。
そして、上記島相の平均粒径の調整は、例えば、ジメチルシリコーンオイルの動粘度を制御することにより行われる。そのため、上記シリコーンオイルの動粘度は、10〜10万mm2 /sの範囲内が好ましく、特に好ましくは100〜1万mm2 /sの範囲内である。
また、本発明の電子写真機器用無端ベルトにおける基層1の海−島構造においては、海相と島相との面積比が、海相/島相=99.95/0.05〜90/10の範囲内であることが好ましく、特に好ましくは海相/島相=99.9/0.1〜95/5の範囲内である。すなわち、海相の面積比が99.95を超える(すなわち、島相の面積比が0.05未満である)と、応力緩和部位が少なすぎるため、強度アップ効果が乏しくなる傾向がみられ、逆に海相の面積比が90未満である(すなわち、島相の面積比が10を超える)と、剛性(引張弾性率)が低下する傾向がみられるからである。
なお、上記海相と島相との面積比の算出方法は、特に限定はないが、例えば、マイクロスコープを用いて二値化する等の方法により算出することができる。
つぎに、上記表層2の形成に用いる材料(表層用材料)としては、シリコーン系樹脂、フッ素系樹脂、ウレタン系樹脂、アクリル系樹脂、およびポリアミド系樹脂からなる群から選ばれた少なくとも一つが用いられる。これらのなかでも、作業性を考慮して、液状または溶剤可溶タイプのものが好適に用いられる。また、汚れ防止、塗膜強度、あるいは密着性を向上させる目的で、前記樹脂材料を変性したものを用いてもよく、例えば、変性アクリル系樹脂があげられる。この変性アクリル系樹脂としては、アクリル樹脂の分子構造を母体とし、他の樹脂ないし樹脂成分で変性されたものであれば特に限定はないが、シリコーン変性アクリル系樹脂が好適に用いられる。
上記シリコーン変性アクリル系樹脂としては、例えば、シリコーングラフトアクリル系樹脂があげられる。このシリコーングラフトアクリル系樹脂としては、アクリル系樹脂(主鎖)にシリコーン系樹脂がグラフト重合したものであれば特に限定するものではない。このシリコーングラフトアクリル系樹脂の具体例としては、東亞合成社製のサイマックUS−350等があげられる。
なお、上記表層用材料としては、前記樹脂材料に対して、イソシアネート樹脂,アミノ樹脂,フェノール樹脂,キシレン樹脂等の樹脂架橋剤を用いて、樹脂架橋を施した材料や、感光性モノマーまたはポリマーに光重合開始剤を混合した紫外線硬化型材料を用いても差し支えない。
上記表層用材料は、例えば、変性アクリル系樹脂と、DMF,トルエン,アセトン等の有機溶剤とを適宜に配合し、撹拌羽根で混合することにより調製することができる。なお、各層を精度良く形成するためには、隣接する層の形成材料に用いる有機溶剤は、互いに異なった種類のものを使用することが好ましい。すなわち、表層用材料に用いる有機溶剤と、基層用材料に用いる有機溶剤とは、互いに異なった種類のものを使用することが好ましい。
ここで、前記図1に示した、本発明の電子写真機器用無端ベルトは、例えばつぎのようにして作製することができる。すなわち、前記と同様にして、基層用材料を調製し、これを金型(円筒形基体)の表面にスプレーコーティングする。ついで、これを150〜300℃で3〜6時間乾燥することにより、金型の表面に基層1を形成する。つぎに、この基層1の表面に、前記と同様にして調製した表層用材料を、ディッピング法にてコーティングし乾燥した後、基層1と円筒形基体との間にエアーを吹き付けることにより、円筒形基体を抜き取り、基層1の表面に、表層2が形成されてなる2層構造の無端ベルト(図1参照)を作製することができる。なお、表層2の形成方法は、上記ディッピング法に限定されるものではなく、基層1の形成方法と同様に、スプレーコーティングすることにより形成しても差し支えない。
また、本発明の電子写真機器用無端ベルトの基層1は、上記製法以外に、押出成形法、インフレーション法、ブロー成形法、ディッピング法、遠心成形法等により、作製することも可能である。
本発明の電子写真機器用無端ベルトの各層の厚みは、ベルトの用途に応じて適宜に設定されるが、基層1の厚みは、通常、30〜300μmの範囲内であり、好ましくは50〜200μmの範囲内である。また、表層2の厚みは、0.1〜10μmの範囲内が好ましく、特に好ましくは0.5〜5μmの範囲内である。また、本発明の電子写真機器用無端ベルトは、内周長が90〜1500mmで、幅が100〜500mm程度のものが好ましい。すなわち、上記寸法の範囲内に設定すると、電子写真複写機等に組み込んで使用するのに適した大きさとなるからである。
なお、本発明の電子写真機器用無端ベルトは、前記図1に示したような、基層1の外周面に表層2を直接形成した2層構造に限定されるものではない。本発明の電子写真機器用無端ベルトは、例えば、基層1と表層2との間に、熱可塑性樹脂層もしくはゴム弾性層を介在させた3層構造、基層1と表層2との間に、熱可塑性樹脂層およびゴム弾性層の双方を介在させた4層構造等であっても差し支えない。ただし、これらの場合において、基層1は、前述の海−島構造に形成されている必要がある。
この場合、上記基層1と表層2との間に介在させる熱可塑性樹脂層用材料としては、特に限定はないが、熱可塑性樹脂とともに、必要に応じて、メチルエチルケトン(MEK),トルエン等の溶剤等が用いられる。なお、この熱可塑性樹脂層用材料中にも、先に述べたような、導電性充填剤を配合しても差し支えない。
また、上記熱可塑性樹脂としては、特に限定はなく、例えば、ポリフッ化ビニリデン(PVDF),テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA),エチレン−テトラフルオロエチレン共重合体(ETFE)等のフッ素系樹脂、ポリエチレン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、アクリル系樹脂、ポリカーボネート(PC)系樹脂、ポリアミド系樹脂、EVA(エチレン−酢酸ビニル共重合体)系樹脂、EEA(エチレン−アクリル酸エチル共重合体)系樹脂等があげられる。これらは単独でもしくは2種以上併せて用いられる。これらのなかでも、難燃性に優れる点で、PVDF等のフッ素系樹脂を用いることが好ましい。
また、上記基層1と表層2との間に介在させるゴム弾性層用材料としては、ゴム材および加硫剤とともに、必要に応じて、加硫促進剤、溶剤、加工助剤、老化防止剤等が用いられる。なお、このゴム弾性層用材料中にも、先に述べたような、導電性充填剤を配合しても差し支えない。
上記ゴム材としては、特に限定はないが、難燃性の観点から、塩素化ポリエチレンゴム(CPE)、クロロプレンゴム(CR)等が用いられる。これらのなかで、電子写真機器用無端ベルトに要求される電気特性、弾力性、耐久性に合わせて最適材料が選定される。
本発明の電子写真機器用無端ベルトは、フルカラーLBPやフルカラーPPC等の電子写真技術を採用した電子写真機器において、トナー像の転写用,紙転写搬送用,感光体基体用等の用途に好適に用いられるが、これに限定するものではなく、例えば、フルカラーではない、単色の電子写真複写機の転写ベルト等にも使用することができる。
まず、実施例、参考例および比較例に先立ち、下記に示す材料を準備した。
〔トリメリット酸無水物(TMA)〕
Mn:192.12
〔ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)〕
日本ポリウレタン社製、ミリオネートMT(Mn:250.26)
〔ピロメリット酸二無水物(PMDA)〕
ダイセル化学工業社製(Mn:218)
〔4,4′−ジアミノジフェニルエーテル(ODA)〕
和歌山精化工業社製(Mn:200.2)
〔ジメチルシリコーンオイル〕
信越化学工業社製、KF−96−100CS(動粘度:100mm2 /s)
信越化学工業社製、KF−96−1000CS(動粘度:1000mm2 /s)
信越化学工業社製、KF−96−10000CS(動粘度:10000mm2 /s)
〔カーボンブラック〕
昭和キャボット社製、ショウブラックN220
つぎに、実施例について参考例および比較例と併せて説明する。
参考例1〕
(基層用材料の調製)
撹拌機、窒素導入管、温度計、冷却管を備えた反応容器に、トリメリット酸無水物(TMA)38部と、MDI50部と、NMP溶剤200部とを仕込み、窒素気流下、撹拌しながら1時間かけて130℃まで昇温し、そのまま130℃で約5時間反応させた後反応を停止し、PAI−NMP溶液(固形分濃度:26重量%)を調製した。つぎに、このPAI−NMP溶液に、ジメチルシリコーンオイル0.1部を添加し、常温(25℃)下で、羽根撹拌で混合した。つづいて、この溶液に、カーボンブラック4部を配合し、撹拌羽根で混合した後、ボールミル分散させて基層用材料を調製した。
(無端ベルトの作製)
金型(円筒形基体)を準備し、この表面に上記基層用材料をスプレーコーティングして常温〜250℃まで2時間かけて昇温させた後、250℃で1時間加熱処理をした。つぎに、基層と円筒形基体との間にエアーを吹き付けることにより、円筒形基体を抜き取り、基層(厚み:80μm)のみからなる単層構造の無端ベルトを作製した。
参考例2,3,7,8〕
(基層用材料の調製)
ジメチルシリコーンオイルの配合量もしくは動粘度を、後記の表1および表2に示すように変更する以外は、参考例1と同様にして、基層用材料を調製した。
(無端ベルトの作製)
上記基層用材料を用いる以外は、参考例1と同様にして、基層(厚み:80μm)のみからなる単層構造の無端ベルトを作製した。
参考例4〕
(基層用材料の調製)
撹拌機、窒素導入管、温度計、冷却管を備えた反応容器に、ピロメリット酸二無水物(PMDA)44部と、4,4′−ジアミノジフェニルエーテル(ODA)40部と、NMP溶剤200部とを仕込み、窒素気流下、撹拌しながら、常温(25℃)以下の温度で、約3時間反応させた後、反応を停止することにより、PIの前駆体であるポリアミド酸−NMP溶液(固形分濃度:26重量%)を調製した。つぎに、このポリアミド酸−NMP溶液に、ジメチルシリコーンオイル0.1部を添加し、常温下で羽根撹拌により混合した。つづいて、この溶液に、カーボンブラック4部を配合し、撹拌羽根で混合した後、ボールミル分散させて基層用材料を調製した。
(無端ベルトの作製)
金型(円筒形基体)を準備し、この表面に上記基層用材料をスプレーコーティングして常温〜300℃まで2時間かけて昇温させた後、300℃で1時間加熱処理をした。つぎに、基層と円筒形基体との間にエアーを吹き付けることにより、円筒形基体を抜き取り、基層(厚み:80μm)のみからなる単層構造の無端ベルトを作製した。
参考例5,6〕
(基層用材料の調製)
ジメチルシリコーンオイルの配合量もしくは動粘度を、後記の表1に示すように変更する以外は、参考例4と同様にして、基層用材料を調製した。
(無端ベルトの作製)
上記基層用材料を用いる以外は、参考例4と同様にして、基層(厚み:80μm)のみからなる単層構造の無端ベルトを作製した。
〔実施例
(基層用材料の調製)
参考例1と同様にして、基層用材料を調製した。
(表層用材料の調製)
シリコーングラフトアクリル系樹脂(東亞合成社製、サイマックUS−350)100部と、トルエン溶剤500部とを配合し、撹拌羽根で混合して、表層用材料を調製した。
(無端ベルトの作製)
金型(円筒形基体)を準備し、この表面に上記基層用材料をスプレーコーティングして常温〜250℃まで2時間かけて昇温させた後、250℃で1時間加熱処理をした。つぎに、この基層の表面に、上記表層用材料をディッピング法にてコーティングし、乾燥した後、基層と円筒形基体との間にエアーを吹き付けることにより、円筒形基体を抜き取り、基層(厚み:80μm)の表面に、表層(厚み:1μm)が形成されてなる2層構造の無端ベルトを作製した。
〔比較例1〕
(基層用材料の調製)
ジメチルシリコーンオイルを配合しない以外は、参考例1と同様にして、基層用材料を調製した。
(無端ベルトの作製)
上記基層用材料を用いる以外は、参考例1と同様にして、基層(厚み:80μm)のみからなる単層構造の無端ベルトを作製した。
〔比較例2〕
(基層用材料の調製)
ジメチルシリコーンオイルを配合しない以外は、参考例4と同様にして、基層用材料を調製した。
(無端ベルトの作製)
上記基層用材料を用いる以外は、参考例1と同様にして、基層(厚み:80μm)のみからなる単層構造の無端ベルトを作製した。
このようにして得られた実施例、参考例および比較例の無端ベルトを用い、下記の基準に従って各特性の評価を行った。これらの結果を後記の表1および表2に併せて示した。
〔引張弾性率〕
JIS K7127に準じて、引張弾性率を測定した。なお、引張速度は、毎分10±2.0mmとした。
〔MIT回数(耐屈曲性)〕
各無端ベルトを15mm×150mmの短冊状に切り出し、ラボ環境(25℃×45%RH)下において、MIT耐揉疲労試験機(東洋精機製作所社製、Folding Endurancetester MIT−D)を用いてMIT試験を行い、MIT回数を測定した。試験条件は、スプリング介在状態で荷重1.0kg、反復速度175サイクル/分、振り角135°(左右とも)とした。なお、MIT回数は、耐屈曲性の評価の指標となるものであり、このMIT回数が多い程、耐屈曲性に優れていることを示す。
〔ベンチ耐久試験〕
直径13mmの金属製ローラーを2本準備し、2本の金属製ローラー間に無端ベルト(幅150mm)を張架した状態で、一方の金属製ローラーをテーブル上に固定した。ついで、テーブルに固定していない他方の金属製ローラーがテーブルの端部になるように配置し、この金属製ローラーの両端にオモリを2kgずつ吊り下げ(総荷重4kg)、ラボ環境(25℃×40%RH)下で、無端ベルトを回転駆動させた。そして、無端ベルトに亀裂が確認できるまでの累積回転数を測定した。
〔海相/島相の面積比〕
無端ベルトの基層の海−島構造について、マイクロスコープ(キーエンス社製、VIOLET LASER VK−9510)を用いて二値化し、海相と島相の面積比を算出した。
〔島相の平均粒径〕
無端ベルトの基層の海−島構造につき、SEM(日立ハイテクノロジーズ社製、S−3000N)を用いて、島相の平均粒径を測定した。
Figure 0004622584
Figure 0004622584
上記結果から、実施例品、ポリアミドイミド樹脂溶液中もしくはポリイミド樹脂溶液中にシリコーンオイルを分散させているため、海−島構造を形成し、シリコーンオイルからなる島相がミクロ分散していた。そのため、実施例品、耐屈曲性およびベンチ耐久性が優れていた。
これに対し、比較例1品は、ポリアミドイミド樹脂溶液中にシリコーンオイルを分散させていないため、海−島構造を形成しておらず、参考例1品に比べて、耐屈曲性およびベンチ耐久性が劣っていた。また、比較例2品は、ポリイミド樹脂溶液中にシリコーンオイルを分散させていないため、海−島構造を形成しておらず、参考例4品に比べて、ベンチ耐久性が劣っていた。
本発明の電子写真機器用無端ベルトは、フルカラーLBP(レーザービームプリンター)やフルカラーPPC(プレーンペーパーコピア)等の電子写真技術を採用した電子写真機器において、中間転写ベルトや紙転写搬送ベルト等に好適に用いられる。
本発明の電子写真機器用無端ベルトの一例を示す部分断面図である。
1 基層
2 表層

Claims (7)

  1. 層および表層を含む2〜4層の電子写真機器用無端ベルトであって、上記電子写真機器用無端ベルトの基層が、ポリアミドイミド樹脂またはポリイミド樹脂からなる海相中に、ポリシロキサン化合物からなる島相がミクロ分散してなる海−島構造に形成され、上記海−島構造における島相の平均粒径が0.01〜10μmの範囲内であり、上記ポリシロキサン化合物が、下記の一般式(3)で表される繰り返し構造を有するシリコーンオイルであり、上記表層が、シリコーン系樹脂、フッ素系樹脂、ウレタン系樹脂、アクリル系樹脂、およびポリアミド系樹脂からなる群から選ばれた少なくとも一つを用いて形成されていることを特徴とする電子写真機器用無端ベルト。
    Figure 0004622584
  2. 上記海−島構造における海相と島相との面積比が、海相/島相=99.95/0.05〜90/10の範囲内である請求項1記載の電子写真機器用無端ベルト。
  3. 上記シリコーンオイルの動粘度が10〜10万mm2/sの範囲内である請求項1または2記載の電子写真機器用無端ベルト。
  4. 上記ポリシロキサン化合物の配合量が、上記ポリアミドイミド樹脂またはポリイミド樹脂の固形分100重量部に対して、0.01〜10重量部の範囲内である請求項1〜3のいずれか一項に記載の電子写真機器用無端ベルト。
  5. 上記ポリシロキサン化合物の数平均分子量(Mn)が、100〜5万の範囲内である請求項1〜4のいずれか一項に記載の電子写真機器用無端ベルト。
  6. 上記表層のアクリル系樹脂が、シリコーン変性アクリル系樹脂である請求項1〜5のいずれか一項に記載の電子写真機器用無端ベルト。
  7. 請求項1〜のいずれか一項に記載の電子写真機器用無端ベルトの製法であって、ポリアミドイミド樹脂またはポリイミド樹脂と、ポリシロキサン化合物とを含有する基層用材料を金型(円筒形基体)の表面にスプレーコーティングし、これを乾燥して、金型の表面に基層を形成する工程と、上記基層と円筒形基体との間にエアーを吹き付けることにより、円筒形基体を抜き取る工程とを備えたことを特徴とする電子写真機器用無端ベルトの製法。
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