JP6420064B2 - ポリイミド前駆体組成物及びポリイミドフィルム - Google Patents

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Description

本発明は、ポリイミド前駆体組成物及びポリイミドフィルムに関する。
ポリイミド樹脂は、不溶、不融の超耐熱性樹脂であり、耐熱酸化性、耐熱特性、耐放射線性、耐低温性、耐薬品性などに優れた特性を有している。このため、ポリイミド樹脂は、電子材料を含む広範囲な分野で用いられている。電子材料分野におけるポリイミド樹脂の適用例としては、例えば絶縁コーティング材、絶縁膜、半導体、TFT−LCDの電極保護膜などを挙げることができる。最近は、ディスプレイ材料の分野において従来使用されていたガラス基板に代わり、その軽さ、柔軟性を利用したフレキシブル基板としても採用が検討されている。
フレキシブル基板にポリイミド樹脂を適用しようとする場合、ガラス基板などの支持体上にポリイミド前駆体を含有する樹脂組成物を塗布して塗膜を形成し、次いでこれを加熱して前駆体をイミド化してポリイミドフィルムとし、必要に応じて該フィルム上にデバイスを形成した後、該フィルムを剥離して目的物を得る。この場合、支持体上に形成されるポリイミド膜は、基板との密着性に優れながらも良好な剥離が可能であることが必要である。
この点につき、例えば特許文献1及び2には、樹脂骨格中にシリコーン骨格を含んだポリイミド前駆体樹脂組成物が、ガラス基板を支持体とした場合の密着性及び剥離性に優れることが開示されている。
国際公開第2011/122198号パンフレット 国際公開第2011/122199号パンフレット
上記の通り、フレキシブル基板としてのポリイミドフィルムを製造する場合、ガラスなどからなる適当な支持体上に、ポリイミド前駆体を含有する組成物を塗布して塗膜を形成した後、熱処理を行ってイミド化することにより、ポリイミドフィルムを得る。この熱処理に当たっては、作業効率化のため、塗布後の支持体を複数枚まとめて熱処理装置へ搬入することが多い。この場合、塗布してから熱処理が開始されるまでの時間に差が生じることがある。
従来のポリイミド前駆体を含む樹脂組成物では、塗膜形成後、熱処理が開始されるまでの時間によって、熱処理後に得られるポリイミドフィルムと支持体との間の密着性が変化することがある。ポリイミドフィルムと支持体との間に十分な密着性がない場合には、後の工程においてポリイミドフィルムが支持体から剥離する問題が生じるおそれがある。一方で、過度の密着性を有する場合には、イミド化した後のフィルムを支持体から剥離する時に不具合を生じる。そこで、塗布してからの経過時間(静置時間)に関係なく、安定的に高い密着性を発現するとともに、良好な剥製性を示すポリイミドフィルムを与える樹脂組成物が求められている。
本発明は、上記に説明した問題点に鑑みてなされたものであり、塗布してから熱処理が開始されるまでの時間の違いによらずに、安定的に高い密着性を示すとともに、支持体から容易に剥離できるポリイミドフィルムを与えるポリイミド前駆体組成物を提供することを目的とする。
本発明者らは上記目的を達成すべく鋭意研究を行った。その結果、ポリイミド前駆体とシリコーンとを特定の質量比で含有する樹脂組成物が上記課題を達成できることを見出し、本発明を完成するに至った。即ち、本発明は以下の通りである。
[1]
(A)下記一般式(1)で表される構造を有するポリイミド前駆体100質量部及び
(B)下記一般式(2)で表されるシリコーン10質量部を超え50質量部以下
を含有する樹脂組成物。
Figure 0006420064
(式中、Rは、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1〜20の1価の脂肪族炭化水素及び炭素数6〜20の1価の芳香族基からなる群より選ばれ;
は炭素数4〜32の2価の有機基を示し;そして
は炭素数4〜32の4価の有機基を示す。)
Figure 0006420064
(式中、Rは、それぞれ独立に、炭素数3〜20の2価の脂肪族炭化水素及び炭素数6〜20の2価の芳香族基からなる群より選ばれ;
、R及びRは、それぞれ独立に、炭素数1〜3の1価の脂肪族炭化水素及び炭素数6〜10の1価の芳香族基からなる群より選ばれ;
l及びmはそれぞれ0〜50の整数であり、ただし(l+m)≧2を満たし;そして
、Z及びZは、それぞれ独立に、アミノ基、酸無水物基、エポキシ基、水酸基、メルカプト基、カルボキシル基、アクリル基、メタクリル基、炭素数1〜3の1価の脂肪族炭化水素及び炭素数6〜10の1価の芳香族基から選択され、ただしZ、Z及びZのうちの少なくとも1つはアミノ基、酸無水物基、エポキシ基、水酸基、メルカプト基、カルボキシル基、アクリル基及びメタクリル基からなる群より選ばれる。)
[2]
上記一般式(1)におけるXが、
2,2’−ジメチル−4,4’−ジアミノビフェニル(mTB)、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル(ODA)、パラフェニレンジアミン(PDA)、2,2’−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン(BAPP)、1,4−ジアミノシクロヘキサン(CHDA)、4,4’−ジアミノジシクロヘキシルメタン(MBCHA)、3,3’−ジヒドロキシ−4,4’−ジアミノビフェニル(HAB)、4,4’−ジアミノ−2,2’−ビス(トリフルオロメチル)ビフェニル(TFMB)及び4,4−ジアミノジフェニルスルフォン(4,4−DAS)からなる群より一つ以上選ばれるジアミンに由来する2価の基である、[1]に記載の樹脂組成物。
[3]
上記一般式(1)におけるXが、
ピロメリット酸二無水物(PMDA)、3,3’−4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(sBPDA)、4,4’−オキシジフタル酸二無水物(ODPA)、4,4’−(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸無水物(6FDA)、シクロヘキサン−1,2,4,5−テトラカルボン酸二無水物(HPMDA)及び1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸二無水物(CBDA)からなる群より一つ以上選ばれるテトラカルボン酸二無水物に由来する4価の基である、[1]又は[2]に記載の樹脂組成物。
[4]
(B)上記一般式(2)で表されるシリコーンの含有量が、(A)上記一般式(1)で表されるポリイミド前駆体100質量部に対して12質重量部〜30質量部である、[1]〜[3]いずれか1項に記載の樹脂組成物。
[5]
(B)上記一般式(2)で表されるシリコーンの数平均分子量が200〜12,000である、[1]〜[4]いずれか1項に記載の樹脂組成物。
[6]
(B)上記一般式(2)で表されるシリコーンが、下記一般式(3)で表されるシリコーンである、[1]〜[5]いずれか1項に記載の樹脂組成物。
Figure 0006420064
(式中、R、R、R、Z及びZは、それぞれ、上記一般式(2)におけるのと同じ意味であり;
nは2〜50の整数である。)
[7]
及びZが、それぞれ、アミノ基、酸無水物基及びエポキシ基からなる群より選ばれる基である、[6]に記載の樹脂組成物。
[8]
(C)溶媒を更に含有する、 [1]〜[7]いずれか1項に記載の樹脂組成物。
[9]
[8]に記載の樹脂組成物を、支持体の表面に展開して塗膜を形成し、次いで前記塗膜が形成された支持体を加熱して塗膜中の(A)ポリイミド前駆体をイミド化することにより形成される、ポリイミドフィルム。
[10]
[8]に記載の樹脂組成物を支持体の表面上に展開して塗膜を形成する展開工程と、
前記塗膜が形成された支持体を加熱して塗膜中の(A)ポリイミド前駆体をイミド化してポリイミドフィルムを形成するイミド化工程と、
前記ポリイミドフィルムを前記支持体から剥離してポリイミドフィルムを単離する剥離工程と
を具備する、ポリイミドフィルムの製造方法。
[11]
支持体の表面上に[8]に記載の樹脂組成物を展開して塗膜を形成し、次いで前記塗膜が形成された支持体を加熱して塗膜中の(A)ポリイミド前駆体をイミド化してポリイミドフィルムを形成することにより得られる、支持体上にポリイミドフィルムを有する積層体。
[12]
支持体の表面上に[8]に記載の樹脂組成物を展開して塗膜を形成する展開工程と、
前記塗膜が形成された支持体を加熱して塗膜中の(A)ポリイミド前駆体をイミド化してポリイミドフィルムを形成するイミド化工程と
を具備する、積層体の製造方法。
本発明によれば、塗布してから熱処理が開始されるまでの時間の違いに依存せずに安定的に高い密着性を示しながらも、良好な剥離が可能なポリイミドフィルムを与えるポリイミド前駆体組成物を得ることができる。
以下、本発明を実施するための形態(以下、「実施の形態」)について詳細に説明する。なお、本発明は、以下の実施の形態に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で種々変形して実施することができる。
((A)ポリイミド前駆体)
先ず、本実施の形態において用いられる(A)ポリイミド前駆体に関して説明する。
本実施の形態において、(A)ポリイミド前駆体は下記一般式(1)で示される構造を有するものである。
Figure 0006420064
(式中、Rは、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1〜20の1価の脂肪族炭化水素及び炭素数6〜20の1価の芳香族基からなる群より選ばれ;
は炭素数4〜32の2価の有機基を示し;そして
は炭素数4〜32の4価の有機基を示す。)
<ジアミン由来の基>
前記Xは、炭素数4〜32の2価の有機基であり、テトラカルボン酸酸二無水物とジアミンとを反応させた時の、ジアミンに由来する基である。このようなXを与えるジアミンとしては、脂環式ジアミン及び芳香族ジアミンが挙げられる。これらのジアミンは1種用いても2種以上を用いてもかまわない。
前記脂環式ジアミンとしては、特に限定されないが、例えば、4,4’−ジアミノジシクロヘキシルメタン(MBCHA)、4,4’−ジアミノ−3,3’−ジメチルシクロヘキシルメタン、4,4’−ジアミノ−3,3’,5,5’−テトラメチルシクロヘキシルメタン、1,3−ジアミノシクロヘキサン、1,4−ジアミノシクロヘキサン(CHDA)、1−アミノ−3−アミノメチル−3,5,5−トリメチルシクロヘキサン、2,2−ビス(4,4’−ジアミノシクロヘキシル)プロパン、1,3−ビスアミノメチルシクロヘキサン、1,4−ビスアミノメチルシクロヘキサン、2,3−ジアミノビシクロ〔2.2.1〕ヘプタン、2,5−ジアミノビシクロ〔2.2.1〕ヘプタン、2,6−ジアミノビシクロ〔2.2.1〕ヘプタン、2,7−ジアミノビシクロ〔2.2.1〕ヘプタン、2,5−ビス(アミノメチル)−ビシクロ〔2.2.1〕ヘプタン、2,6−ビス(アミノメチル)−ビシクロ〔2.2.1〕ヘプタン、2,3−ビス(アミノメチル)−ビシクロ〔2.2.1〕ヘプタン、3(4),8(9)−ビス(アミノメチル)−トリシクロ〔5.2.1.02,6〕デカンなどの他、後述する芳香族ジアミンの水素添加体などが挙げられる。
前記芳香族ジアミンとしては、特に限定されないが、例えば、p−フェニレンジアミン(PDA)、m−フェニレンジアミン、2,4−ジアミノトルエン、ベンジジン、3,3’−ジメチル−4,4’−ジアミノビフェニル(o−トリジン)、2,2’−ジメチル−4,4’−ジアミノビフェニル(m−トリジン、mTB)、3,3’−ジエチル−4,4’−ジアミノビフェニル、2,2’−ジエチル−4,4’−ジアミノビフェニル、4,4’−ジアミノ−2,2’−ビス(トリフルオロメチル)ビフェニル(TFMB)、3,3−ジメトキシ−4,4−ジアミノビフェニル、2,2’−ジクロロ−4,4’−ジアミノ−5,5’−ジメトキシビフェニル、2,2’,5,5’−テトラクロロ−4,4’−ジアミノビフェニル、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル(ODA)、3,4’−ジアミノジフェニルエーテル、3,3’−ジアミノジフェニルエーテル、3,7−ジアミノ−ジメチルジベンゾチオフェン−5,5−ジオキシド、4,4’−ジアミノベンゾフェノン、3,3’−ジアミノベンゾフェノン、4,4’−ビス(4−アミノフェニル)スルフィド、4,4’−ジアミノジフェニルスルホン(4,4−DAS)、4,4’−ジアミノベンズアニリド、1,n−ビス(4−アミノフェノキシ)アルカン、1,3−ビス[2−(4−アミノフェノキシエトキシ)]エタン、9,9−ビス(4−アミノフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−アミノフェノキシフェニル)フルオレン、5(6)−アミノ−1−(4−アミノメチル)−1,3,3−トリメチルインダン、1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン(TPE−Q)、1,3−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン(TPE−R)、1,3−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン(APB)、2,5−ビス(4−アミノフェノキシ)ビフェニル(P−TPEQ)、4,4’−ビス(4−アミノフェノキシ)ビフェニル、4,4’−ビス(3−アミノフェノキシ)ビフェニル、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシフェニル)]プロパン(BAPP)、2,2−ビス(4−アミノフェノキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、2,2−ビス[4―(4−アミノフェノキシ)フェニル]ヘキサフルオロプロパン、4,4’−メチレン−ビス(2−クロロアニリン)、9,10−ビス(4−アミノフェニル)アントラセン、o−トリジンスルホンなどが挙げられる。
これらの中でも
2,2’−ジメチル−4,4’−ジアミノビフェニル(mTB)、パラフェニレンジアミン(PDA)及び1,4−ジアミノシクロヘキサン(CHDA)からなる群より選ばれる少なくとも1種を使用することが、線膨張係数(CTE)の低減、ガラス転移温度(Tg)の向上及び機械伸度の向上の観点から好ましく;
4,4’−ジアミノジフェニルエーテル(ODA)及び2,2’−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン(BAPP)からなる群より選ばれる少なくとも1種を使用することが耐薬品性の観点から好ましく;
PDA、mTB、3,3’−ジヒドロキシ−4,4’−ジアミノビフェニル(HAB)を使用することがガラス基板の反り低減の観点から好ましく;そして
4,4’−ジアミノジシクロヘキシルメタン(MBCHA)、CHDA、4,4−ジアミノジフェニルスルフォン(4,4−DAS)及び4,4’−ジアミノ−2,2’−ビス(トリフルオロメチル)ビフェニル(TFMB)からなる群より選ばれる少なくとも1種を使用することが、黄色度低下及び全光線透過率の向上の観点から好ましい。
<テトラカルボン酸二無水物由来の基>
前記Xは、炭素数4〜32の4価の有機基であり、テトラカルボン酸二無水物とジアミンとを反応させた時のテトラカルボン酸二無水物に由来する基である。このようなXを与える酸二無水物としては、例えば炭素数が8〜36の芳香族テトラカルボン酸二無水物、炭素数が6〜36の脂環式テトラカルボン酸二無水物などが挙げられる。
これらのテトラカルボン酸二無水物は1種用いても2種以上を用いてもかまわない。
前記芳香族テトラカルボン酸二無水物としては、特に限定されないが、例えば、4,4’−(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸無水物(6FDA)、5−(2,5−ジオキソテトラヒドロ−3−フラニル)−3−メチル−シクロヘキセン−1,2ジカルボン酸無水物、ピロメリット酸二無水物(PMDA)、1,2,3,4−ベンゼンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物(BTDA)、2,2’,3,3’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(sBPDA)、3,3’,4,4’―ジフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物(DSDA)、2,2’,3,3’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、メチレン−4,4’−ジフタル酸二無水物、1,1−エチリデン−4,4’−ジフタル酸二無水物、2,2−プロピリデン−4,4’−ジフタル酸二無水物、1,2−エチレン−4,4’−ジフタル酸二無水物、1,3−トリメチレン−4,4’−ジフタル酸二無水物、1,4−テトラメチレン−4,4’−ジフタル酸二無水物、1,5−ペンタメチレン−4,4’−ジフタル酸二無水物、4,4’−オキシジフタル酸二無水物(ODPA)、チオ−4,4’−ジフタル酸二無水物、スルホニル−4,4’−ジフタル酸二無水物、1,3−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)ベンゼン二無水物、1,3−ビス(3,4−ジカルボキシフェノキシ)ベンゼン二無水物、1,4−ビス(3,4−ジカルボキシフェノキシ)ベンゼン二無水物、1,3−ビス[2−(3,4−ジカルボキシフェニル)−2−プロピル]ベンゼン二無水物、1,4−ビス[2−(3,4−ジカルボキシフェニル)−2−プロピル]ベンゼン二無水物、ビス[3−(3,4−ジカルボキシフェノキシ)フェニル]メタン二無水物、ビス[4−(3,4−ジカルボキシフェノキシ)フェニル]メタン二無水物、2,2−ビス[3−(3,4−ジカルボキシフェノキシ)フェニル]プロパン二無水物、2,2−ビス[4−(3,4−ジカルボキシフェノキシ)フェニル]プロパン二無水物(BPADA)、ビス(3,4−ジカルボキシフェノキシ)ジメチルシラン二無水物、1,3−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン二無水物、2,3,6,7−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、1,4,5,8−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、1,2,5,6−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、3,4,9,10−ペリレンテトラカルボン酸二無水物、2,3,6,7−アントラセンテトラカルボン酸二無水物、1,2,7,8−フェナントレンテトラカルボン酸二無水物などが挙げられる。
前記脂環式テトラカルボン酸二無水物としては、特に限定されないが、例えば、エチレンテトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸二無水物(以下、CBDAとも記す)、シクロペンタンテトラカルボン酸二無水物、シクロヘキサン−1,2,3,4−テトラカルボン酸二無水物、シクロヘキサン−1,2,4,5−テトラカルボン酸二無水物(以下、CHDAと記す)、3,3’,4,4’−ビシクロヘキシルテトラカルボン酸二無水物、カルボニル−4,4’−ビス(シクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸)二無水物、メチレン−4,4’−ビス(シクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸)二無水物、1,2−エチレン−4,4’−ビス(シクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸)二無水物、1,1−エチリデン−4,4’−ビス(シクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸)二無水物、2,2−プロピリデン−4,4’−ビス(シクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸)二無水物、オキシ−4,4’−ビス(シクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸)二無水物、チオ−4,4’−ビス(シクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸)二無水物、スルホニル−4,4’−ビス(シクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸)二無水物、ビシクロ[2,2,2]オクト−7−エン−2,3,5,6−テトラカルボン酸二無水物、rel−[1S,5R,6R]−3−オキサビシクロ[3,2,1]オクタン−2,4−ジオン−6−スピロ−3’−(テトラヒドロフラン−2’,5’−ジオン)、4−(2,5−ジオキソテトラヒドロフラン−3−イル)−1,2,3,4−テトラヒドロナフタレン−1,2−ジカルボン酸無水物、エチレングリコール−ビス−(3,4−ジカルボン酸無水物フェニル)エーテルなどが挙げられる。
これらの中でも、
ピロメリット酸二無水物(PMDA)を使用することが、CTEの低減、耐薬品性の向上、ガラス転移温度(Tg)向上及び機械伸度向上の観点から好ましく;
3,3’−4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(sBPDA)を使用することがガラス基板の反り低減、黄色度の低下、耐薬品性の向上、Tg向上及び機械伸度向上の観点から好ましく;
4,4’−オキシジフタル酸二無水物(ODPA)及び4,4’−(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸無水物(6FDA)からなる群より選ばれる少なくとも1種を使用することが黄色度の低下、複屈折率の低下及び機械伸度向上の観点から好ましく;そして
シクロヘキサン−1,2,4,5−テトラカルボン酸二無水物(HPMDA)及び1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸二無水物(CBDA)からなる群より選ばれる少なくとも1種を使用することがガラス基板の反り低減及び黄色度の低下の観点から好ましい。
<(A)ポリイミド前駆体の分子量>
本実施の形態における(A)ポリイミド樹脂前駆体の重量平均分子量(Mw)は、5,000以上1,000,000以下であることが好ましく、50,000以上500,000以下であることがより好ましく、70,000以上250,000以下であることが更に好ましい。重量平均分子量が5,000以上であることにより、該樹脂組成物を用いて得られる樹脂層の強伸度が改善され、機械物性に優れることとなり、好ましい。一方で、重量平均分子量が1,000,000以下であることにより、塗工時に所望の膜厚に滲みなく塗工できることとなり、好ましい。(A)ポリイミド前駆体の重量平均分子量は、高い機械伸度を得る観点から、特に50,000以上であることが好ましい。
ここで、重量平均分子量とは、既知の数平均分子量を有する単分散ポリスチレンを標準として、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によって測定される分子量をいう。
<(A)ポリイミド前駆体の製造方法>
上記のような(A)ポリイミド前駆体は、例えば上記に説明したテトラカルボン酸二無水物及びジアミンを、好ましくは溶媒に溶解した状態で反応させることにより、容易に製造することができる。
テトラカルボン酸二無水物とジアミンとの反応に際しては、テトラカルボン酸二無水物1モルに対して、ジアミンを0.9モル〜1.1モルの範囲で使用することが好ましく、0.95モル〜1.05モルの範囲で使用することがより好ましい。
テトラカルボン酸二無水物とジアミンとの反応に使用される溶媒は、テトラカルボン酸二無水物、ジアミン及び生成するポリアミド酸を溶解することができる溶媒であれば、特に限定されない。この溶媒としては、有機溶媒を好ましく使用することができる。具体的には例えばジメチレングリコールジメチルエーテル(DMDG)、m−クレゾール、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)、ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルアセトアミド(DMAc)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、アセトン、ジエチルアセタール、エクアミドM100(商品名:出光興産社製)及びエクアミドB100(商品名:出光興産社製)から選ばれる1種以上の極性溶媒を使用することが有用である。
反応条件は、特に限定されないが、例えば、反応温度として−20〜150℃、反応時間として2〜48時間の条件を例示することができる。反応は、アルゴン、窒素などの不活性雰囲気下で行うことが好ましい。
上記のようにして、本実施の態様における(A)ポリイミド前駆体の一態様であるポリアミド酸と、溶媒と、を含有するポリアミド酸溶液を得ることができる。
このポリアミド酸溶液は、そのまま樹脂組成物の調製に供しても良いし、該溶液からポリアミド酸を単離したうえで樹脂組成物の調製に供しても良い。或いは、上述の方法によってポリアミド酸溶液を作製した後、該溶液を例えば130℃〜200℃において例えば5分〜2時間加熱することにより、ポリマーが析出を起こさない程度にポリマーの一部を脱水して部分イミド化したものを使用しても良い。加熱温度及び時間をコントロールすることにより、イミド化率を制御することができる。(A)ポリイミド前駆体として部分イミド化したポリアミド酸を用いることにより、得られる樹脂組成物溶液の保管時の粘度安定性を向上することができる。イミド化率の範囲としては、5%〜70%が、溶液への溶解性及び保存安定性の観点から好ましい。
((B)シリコーン)
次に、本実施の形態において用いられる(B)シリコーンに関して説明する。
本実施の形態において、(B)シリコーンは下記一般式(2)で示される構造を有するものである。
Figure 0006420064
(前記一般式(2)中、Rは、それぞれ独立に、炭素数3〜20の2価の脂肪族炭化水素及び炭素数6〜20の2価の芳香族基からなる群より選ばれ;
、R及びRは、それぞれ独立に、炭素数1〜3の1価の脂肪族炭化水素及び炭素数6〜10の1価の芳香族基からなる群より選ばれ;
l及びmはそれぞれ0〜50の整数であり、ただし(l+m)≧2を満たし;そして
、Z及びZは、それぞれ独立に、アミノ基、酸無水物基、エポキシ基、水酸基、メルカプト基、カルボキシル基、アクリル基、メタクリル基、炭素数1〜3の1価の脂肪族炭化水素及び炭素数6〜10の1価の芳香族基からなる群より選択され、ただしZ、Z及びZのうちの少なくとも1つはアミノ基、酸無水物基、エポキシ基、水酸基、メルカプト基、カルボキシル基、アクリル基及びメタクリル基からなる群より選ばれる。)
前記一般式(2)中のRの好ましい構造は、メチレン基、炭素数2〜20のアルキレン基、炭素数6〜20のアリーレン基などであり、具体的には例えばメチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、フェニレン基などを挙げることができる。
前記一般式(2)中のR、R及びRの好ましい構造は、炭素数1〜3のアルキル基、炭素数6〜10のアリール基であり、具体的には例えばメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、フェニル基などを挙げることができる。特に、R、R及びRのうちの少なくとも一部がフェニル基であることが好ましい。
前記一般式(2)中のZ及びZとしては、それぞれ独立に、アミノ基、酸無水物基又はエポキシ基であることが好ましく、より好ましくはアミノ基又は酸無水物基である。Z及びZがアミノ基又は酸無水物基である場合、ポリイミドフィルムを形成する際の加熱工程中に、(A)ポリイミド前駆体と(B)シリコーンとがアミド交換反応を起こすことにより、シリコーン成分がより均一に分散したフィルムを得ることが容易となる。
前記一般式(2)において、R及びZ、R及びZをそれぞれまとめて1つの基として考えた場合の基−R−Z及び基−R−Zとしては、それぞれ、例えば以下の様な基を例示することができる。
又はZがアミノ基である場合:アミノプロピル基、N−フェニルアミノプロピル基、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピル基など;
又はZが酸無水物基である場合:(2,5−ジオキソテトラヒドロフラン−3−イル)エチル基、(2,5−ジオキソテトラヒドロフラン−3−イル)プロピル基、(2,5−ジオキソテトラヒドロフラン−3−イル)エトキシ基、(2,5−ジオキソテトラヒドロフラン−3−イル)プロポキシ基など;及び
又はZがエポキシ基である場合:グリシジル基、2−グリシドキシエチル基、3−グリシドキシプロピル基、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル基、3,4−エポキシシクロヘキシルエチル基、3,4−エポキシシクロヘキシルプロピル基など。
前記一般式(2)において、nは2〜50であることが、mは0であることが、それぞれ好ましい。
また、(B)上記一般式(2)で表されるシリコーンについてGPCにより測定したポリスチレン換算の数平均分子量は、200〜12,000であることが好ましい。このようなシリコーンを用いた場合、耐熱性、耐水性などの諸特性に優れたフィルムを得られ易い。
また、本実施の形態において、前記一般式(2)で表されるシリコーンは、下記一般式(3)で表されるシリコーンであることが好ましい。このような場合、得られるポリイミドフィルムの柔軟性がより良好となる傾向がある。
Figure 0006420064
(式中、R、R、R、Z及びZは、それぞれ、上記一般式(2)におけるのと同じ意味であり;
nは2〜50の整数である。)
本実施の形態における前記一般式(3)で表される化合物としては、具体的には、例えば
両末端アミノ変性メチルフェニルシリコーンオイル(信越化学社製:X−22−1660B−3(数平均分子量4,400)、X−22−9409(数平均分子量2,600));
両末端アミノ変性ジメチルシリコーン(信越化学社製:X22−161A(数平均分子量1,600)、X22−161B(数平均分子量3,000)、KF−8021(数平均分子量4,400)、東レダウコーニング製:BY16−835U(数平均分子量900)、チッソ社製:サイラプレーンFM3311(数平均分子量1,000));
両末端酸無水物変性シリコーン(信越化学社製:X−22−168A(数平均分子量2,000));
両末端カルボキシ変性シリコーン(信越化学社製:X−22−162C(数平均分子量4,600));
両末端エポキシ変性シリコーン(信越化学社製:X−22−163A(数平均分子量2,000);
両末端メルカプト変性シリコーン(信越化学社製:X−22−167B(数平均分子量3,400));
両末端アクリル変性シリコーン(信越化学社製:X−22−1602(数平均分子量2,400));
両末端メタクリル変性シリコーン(信越化学社製:X−22−164B(数平均分子量3,260));
側鎖アミノ変性メチルシリコーン(信越化学社製:KF−8002(数平均分子量3,400))
などが挙げられる。
これらの中で、
両末端アミノ変性シリコーンが、得られるポリイミドフィルムに適度の柔軟性を与える傾向にあるため好ましく;
両末端アミノ変性メチルフェニルシリコーンオイルが、耐薬品性の向上及び耐熱性の向上の観点から、より好ましい。
本実施の形態において(B)シリコーンは、(A)ポリイミド前駆体100質量部に対して10質量部を超え50質量部以下添加される。(B)シリコーンを10質量部を超えて添加することにより、樹脂組成物を支持体上に塗工した後の継時的な密着性の変化が抑制され、安定的に適度な密着性を発現させることができる。また、(B)シリコーンの添加量を50質量部以下とすることにより、樹脂組成物中における(A)ポリイミド前駆体と(B)シリコーンとの相分離を抑制でき、継時的密着力変化のない均一な塗膜を得ることができる。本実施の形態において、密着性の変化、耐熱性、及び支持体との間に発生する応力の低下効果の観点から、(B)シリコーンの添加量は、11質量部〜40質量部がより好ましく、12質量部〜30質量部が更に好ましい。
本実施の形態による樹脂組成物は、塗工後、加熱処理までの経過時間の長短によらずに、優れた密着性と良好な剥離性とが両立されたポリイミドフィルムを与える。
本実施の形態による樹脂組成物を用いた時の、上記のような密着性の変化に関するメカニズムは十分解明できていない。しかしながら本発明者らは、以下のように考えている。
即ち、従来技術におけるような、骨格中にシリコーンを導入したポリイミド前駆体を含有する組成物の場合には、ポリイミド前駆体の骨格中にシリコーンが含まれるポリマーと、含まれないポリマーとが混在する。この場合、これら2種のポリマーのそれぞれと支持体(例えばガラス基板)との間の親和性の違いにより、塗膜内でこれらのポリマーが流動し、エネルギー的に最安定な状態へ推移していくと推察される。そのため、熱処理までの時間によって2種のポリマーの分散状態が異なることとなる結果、得られるポリイミドフィルムの密着性が変化するものと考えられる。これに対して本実施の形態においては、組成物中の(B)シリコーン成分は、塗工後の塗膜中ではポリマー骨格に含まれず、独立した別個の成分として存在するために、最安定な状態への位置変化がより速く行われる。従って本実施の形態の場合には、2種のポリマーが最安定状態へと迅速に移行した後に加熱されてポリイミドとなる。このことにより、塗膜形成後、加熱開始までの時間にかかわらず、形成されるポリイミドフィルムは安定的な密着性を示すことになるのであろう。
また、上記の加熱時には、ポリイミド前駆体のイミド化と同時に、該前駆体中の官能基とシリコーンとの反応が進行してポリマー骨格中にシリコーン成分が導入されると推察される。このことにより、形成されるポリイミドと支持体との密着性は過度に高くはならず、良好な剥離性が発現されるものと思われる。
<その他の成分>
本実施の形態による樹脂組成物は、上記のような(A)ポリイミド前駆体及び(B)シリコーン、並びに後述の(C)溶媒の他に、本実施の形態の効果を損なわない限り、その他の成分を含有していても良い。
このようなその他の成分としては、例えば樹脂類、レベリング剤、シランカップリング剤、などを挙げることができる。
上記樹脂類は、(A)ポリイミド前駆体以外の樹脂であり、例えば、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、アクリル樹脂、ポリエーテル樹脂、メラミン樹脂やウレタン変性エポキシ樹脂、ゴム変性エポキシ樹脂、アルキッド変性エポキシ樹脂等の変性エポキシ樹脂、フェノキシ樹脂などを挙げることができる。
上記レベリング剤としては、例えば、シリコーン系レベリング剤、フッ素系レベリング剤、アクリル系レベリング剤、ビニル系レベリング剤などを挙げることができる。
上記シランカップリング剤としては、例えば、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−フェニル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、t−ブチル(3−(トリメチルシリル)プロピル)カーバメート、γ−グリシジルオキシプロピルトリメトキシシランなどを挙げることができる。
(樹脂組成物)
本実施の形態における樹脂組成物は、上記のような(A)ポリイミド前駆体及び(B)シリコーン、並びに必要に応じて配合されるその他の成分が、好ましくは(C)溶媒に溶解した形態の溶液組成物(ワニス)として用いられる。
上記(C)溶媒としては、(A)ポリイミド前駆体の一態様であるポリアミド酸の製造に用いられる溶媒として上述した有機溶媒を好ましく使用することができる。溶媒の使用量は、樹脂組成物の固形分濃度が5質量%〜50質量%となる量とすることが好ましく、この値が8質量%〜40質量%となる量とすることが好ましい。
本実施の形態における樹脂組成物の好ましい製造方法としては、例えば
先ず、上述の方法により、ポリアミド酸又はその部分イミド化物を含有する溶液を調製し;
次いで、該溶液に、所望の(B)シリコーンを混合する方法を、好ましく例示することができる。この時、必要に応じて(B)シリコーンの他にその他の成分を、同時に又は任意の順序で添加しても良い。得られた溶液組成物は、必要に応じて適当な孔径を有するフィルターでろ過した後に使用に供しても良い。
(ポリイミドフィルム及び積層体の製造方法)
上記に説明した本実施の態様における樹脂組成物は、ポリイミドフィルム、及び支持体上に該ポリイミドフィルムを有する積層体の製造に用いることができる。
本実施の形態に係る上記の積層体は、例えば
(A)ポリイミド前駆体及び(B)シリコーン、並びに溶媒を含有する本実施の形態に係る樹脂組成物を、支持体の表面上に展開して塗膜を形成する展開工程と、
前記塗膜が形成された支持体を加熱して塗膜中のポリイミド前駆体をイミド化してポリイミドフィルムを形成するイミド化工程と
を順次に行うことにより製造される。上記イミド化工程においては、(A)ポリイミド前駆体のイミド化の他、(A)ポリイミド前駆体と(B)シリコーンとの反応が起こっているものと考えられる。
本実施の態様におけるポリイミドフィルムは、上記積層体の製造におけるイミド化工程後に、
ポリイミドフィルムを支持体から剥離してポリイミドフィルムを単離する剥離工程を更に経由することにより、得ることができる。
ここで、支持体としては、特に限定されるものではないが、例えば、無アルカリガラス基板などのガラス基板のような無機基板を挙げることができる。支持体の厚さは、例えば200μm〜5mmとすることができ、300μm〜1mmとすることが好ましい。
樹脂組成物の展開に先立って、支持体上に予め接着層を形成しておいても良い。この接着層としては、例えば上記のシランカップリング剤などからなる層を挙げることができる。接着層の厚さは、例えば0.01μm〜10μmとすることができる。
上述のような支持体(又は該支持体の有する接着層)上に樹脂組成物を展開する方法としては、例えば、スピンコート、スリットコート、ブレードコートなどの既知の塗工方法が挙げられる。樹脂組成物を支持体上に展開した後、主として脱溶媒を目的として300℃未満の温度で1分間〜300分間の熱処理を行うことが好ましい。この熱処理温度はより好ましくは30℃〜150℃であり、熱処理時間はより好ましくは1.5分間〜100分間である。
上記イミド化工程においては、窒素などの適宜の不活性雰囲気下で、好ましくは300℃〜550℃、より好ましくは300℃〜450℃の温度において、好ましくは1分間〜300分間、より好ましくは5分間〜180分間熱処理を行う。この熱処理により、塗膜中の(A)ポリイミド前駆体がイミド化するとともに、おそらくはこれらのポリマーと(B)シリコーンとの反応が起こることにより、支持体上にポリイミドフィルムを有する積層体が得られる。該積層体におけるポリイミドフィルムの厚さは、特に限定されないが、10μm〜200μmの範囲であることが好ましく、より好ましくは10μm〜50μmである。
上記のようにして得られた積層体は、これをそのまま使用に供しても良いし、
形成されたポリイミドフィルムを積層体中の支持体から剥離してポリイミドフィルムを単離する剥離工程を経由し、支持体を有さないポリイミドフィルム単体として使用に供しても良い。
(積層体)
本実施の形態に係る積層体は、支持体上にポリイミドフィルムを有する積層体である。支持体とポリイミドフィルムとの間に、接着層が介在していても良い。
この積層体は、例えば、フレキシブルデバイスの製造に用いられる。より具体的には、例えば積層体のポリイミドフィルムの面上に半導体デバイスを形成し、その後、支持体を剥離してポリイミドフィルムからなるフレキシブル透明基板を具備するフレキシブルデバイスを得ることができる。
上記に説明したように、本実施の形態に係る樹脂組成物は、安定な密着性を示すとともに、剥離性に優れたポリイミドフィルムを得ることができる。そして、このポリイミドフィルムは、ポリイミド特有の高い耐熱性を示し、TFT作成工程に耐え得る実用的なガラス転移温度を有しているから、フレキシブルディスプレイの透明基板としての使用に適しているのである。
更に詳細に説明すると、以下の通りである。
フレキシブルディスプレイを形成する時には、例えばガラス基板を支持体として用いてその上にフレキシブル基板を形成し、更にその上にTFTなどデバイスの形成を行う。TFTを基板上に形成する工程は、典型的には、150℃〜650℃の広い範囲の温度で実施される。しかし、所望する性能を実際に具現するためには、主に250℃〜350℃付近で、無機物材料を用いて、例えばTFT−IGZO(InGaZnO)酸化物半導体、a−Si−TFT、poly−Si−TFTなどを形成する。
ここで、フレキシブル基板とガラス基板との間に生じる残留応力が高ければ、これらが高温のデバイス形成工程において膨張した後、常温冷却時に収縮する際、ガラス基板の反り及び破損、フレキシブル基板のガラス基板からの剥離などの問題が生じる。一般的にガラス基板の熱膨張係数は樹脂に比較して小さいため、フレキシブル基板との間に残留応力が発生することが通常である。
本実施の形態に係るポリイミドフィルムを有する積層体は、この点を考慮して、フィルムの厚さ10μmを基準として、ポリイミドフィルムと支持体との間に生じる残留応力を25MPa以下とすることができる。
(ポリイミドフィルム)
本実施の形態に係るポリイミドフィルムは、フィルムの厚さ20μmを基準として、機械伸度を30%以上とすることができる。機械伸度が30%以上であることにより、フレキシブル基板を取り扱う時の破断強度に優れるから、歩留まりを向上させる観点から好ましい。
また、本実施の形態に係るポリイミドフィルムは、そのガラス転移温度を、250℃以上とすることができる。ガラス転移温度が250℃以上であることにより、TFT素子を作製する温度においても、フィルムの軟化が生じることがない。
更に、本実施の形態に係るポリイミドフィルムは、フォトレジスト剥離液に耐え得る耐薬品性を具備することができる。ポリイミドフィルムが剥離液耐性を有することにより、TFT素子の作製におけるフォトリソグラフィ工程の時に、フィルムが損なわれることがない。
上記物性を満たす本実施の形態に係るポリイミドフィルムは、既存のポリイミドフィルムが有する黄色により使用が制限された用途にも使用することができる。特にフレキシブルディスプレイ用無色透明基板として好適である。
更には、例えば、保護膜、TFT−LCDなどにおける散光シート及び塗膜(例えば、TFT−LCDのインターレイヤー、ゲイト絶縁膜、液晶配向膜など)、タッチパネル用ITO基板、スマートフォン用カバーガラス代替樹脂基板などの無色透明性及び低複屈折の双方が要求される分野においても使用可能である。本実施の形態に係るポリイミドフィルムを液晶配向膜として適用すると、開口率の増加に寄与するとともに、高コントラスト比のTFT−LCDを製造することが可能となる。
以下、実施例により本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
実施例及び比較例における各種評価は次の通りに行った。
(重量平均分子量の測定)
重量平均分子量(Mw)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)にて、下記の条件により測定した。また、重量平均分子量を算出するための検量線は、スタンダードポリスチレン(東ソー社製)を用いて作成した。
溶媒:N,N−ジメチルホルムアミド(和光純薬工業社製、高速液体クロマトグラフ用)、測定直前に24.8mmol/Lの臭化リチウム一水和物(和光純薬工業社製、純度99.5%)及び63.2mmol/Lのリン酸(和光純薬工業社製、高速液体クロマトグラフ用)を加えたもの
カラム:Shodex KD−806M(昭和電工社製)
流速:1.0mL/分
カラム温度:40℃
ポンプ:PU−2080Plus(JASCO社製)
検出器:RI−2031Plus(RI:示差屈折計、JASCO社製)及びUV‐2075Plus(UV−VIS:紫外可視吸光計、JASCO社製)
(ガラス基板との密着力の評価)
各実施例及び比較例で調製し樹脂前駆体組成物を用いて、上記バーコーターで無アルカリガラス基板(厚さ0.7mm)に塗工した後、室温においてレベリングを行った。ここで、各組成物について、レベリング時間を5分間及び60分間の二水準で変量した2種類の試料を作製した。
次いで、上記塗工及びレベリング後の基板につき、縦型キュアオーブン(光洋リンドバーグ社製、型式名VF−2000B)を用いて140℃において60分間加熱し、さらに窒素雰囲気下で350℃において60分間加熱して、膜厚20μmの樹脂膜(ポリイミドフィルム)を有する積層体を、レベリング時間の異なる2種類ずつ作製した。
上記積層体を室温に24時間静置した後、カッターを用いて幅10mm×長さ50mmに切削した。フィルムを端部から20mmの長さまで引き剥がした後、該引き剥がし部分を基板面に対して180度の角度となるように、速度50mm/minで引っ張ってピール強度を測定した。レべリング時間が5分の試料のピール強度(5分後密着力)と、レべリング時間が60分の試料のピール強度(60分後密着力)と、を比較し、以下の基準で密着力を評価した。
[密着力の強さ]
5分後密着力及び60分後密着力の双方が1.0N/cm以上であった場合:密着力「高」
5分後密着力及び60分後密着力のいずれかが1.0N/cm未満であった場合:密着力「不良」
[剥離性]
5分後密着力及び60分後密着力の双方が3.5N/cm以下であった場合:剥離性「良好」
5分後密着力及び60分後密着力のいずれかが3.5N/cmを超えた場合:剥離性「不良」
[密着力変化]
5分後密着力と60分後密着力との差が0.2N/cm以下であった場合:密着力変化「良好」
5分後密着力と60分後密着力との差が0.2N/cmを超え0.4N/cm以下であった場合:密着力変化「可」
5分後密着力と60分後密着力との差が0.4N/cmを超え1N/cm以下であった場合:密着力変化「不可」
5分後密着力と60分後密着力との差が1N/cm以上であった場合:密着力変化「不良」
上記密着力変化が「良好」及び「可」であれば、実用的に、静置時間(レべリング時間)に関係なく、安定的な密着性を発現できているものと考えてよい。
[製造例1]
オイルバス上に設置した撹拌棒付きセパラブルフラスコに、窒素ガスを導入しながら、後述するジアミン及びテトラカルボン酸二無水物を添加した後のモノマー濃度が15質量%となるようにN−メチル−2−ピロリドン(NMP)を投入し、ここにジアミンとして2,2’−ジメチル−4,4’−ジアミノビフェニル(mTB)201.7g、続いてテトラカルボン酸二無水物としてピロメリット酸二無水物(PMDA)218.1gを、それぞれ撹拌しながら加えて、室温で30分撹拌を継続した。これを50℃に昇温し、12時間撹拌して反応を行った後、オイルバスを外してフラスコ内温を室温に戻すことにより、ポリイミド前駆体1のNMP溶液を得た。
得られたポリイミド前駆体1の重量平均分子量(Mw)を、モノマー組成とともに表1に示した。
[製造例2〜3、製造例9〜15及び製造例20〜23]
上記製造例1において、ジアミン及びテトラカルボン酸二無水物の種類及び量を表1に記載の通りとし、更に固形分濃度が表1に記載した値になるようにNMPを添加した以外は製造例1と同様にして、ポリイミド前駆体2〜3、ポリイミド前駆体9〜15及びポリイミド前駆体20〜23のNMP溶液をそれぞれ得た。
得られた各ポリイミド前駆体の重量平均分子量(Mw)を、各モノマー組成とともに表1に示した。
[製造例4]
オイルバス上に設置した撹拌棒付きセパラブルフラスコに、窒素ガスを導入しながら、後述するジアミン及びテトラカルボン酸二無水物を添加した後のモノマー濃度が14質量%となるようにNMPを投入し、続いてジアミンとして2,2’−ジメチル−4,4’−ジアミノビフェニル(mTB)161.3g及び4,4’−ジアミノジフェニルエーテル(ODA)38.0gを撹拌しながら加えた。フラスコの内温を50℃に昇温してジアミンを溶解させた後、テトラカルボン酸二無水物としてピロメリット酸二無水物(PMDA)196.1gを加えて30分撹拌を継続した。これを50℃に昇温し、12時間撹拌して反応を行った後、オイルバスを外してフラスコ内温を室温に戻すことにより、ポリイミド前駆体4のNMP溶液を得た。
得られたポリイミド前駆体の重量平均分子量(Mw)を、モノマー組成とともに表1に示した。
[製造例5及び6]
上記製造例4において、ジアミン及びテトラカルボン酸二無水物の種類及び量を表1に記載の通りとし、更に固形分濃度が表1に記載した値になるようにNMPを添加した以外は製造例4と同様にして、ポリイミド前駆体5及び6のNMP溶液をそれぞれ得た。
得られた各ポリイミド前駆体の重量平均分子量(Mw)を、各モノマー組成とともに表1に示した。
[製造例7]
オイルバス上に設置した撹拌棒付きセパラブルフラスコに、窒素ガスを導入しながら、後述するジアミン及びテトラカルボン酸二無水物を添加した後の濃度が16質量%となるようにNMPを投入し、続いてジアミンとして1,4−ジアミノシクロヘキサン(CHDA)113.0gを撹拌しながら加え、フラスコ内温を50℃に加温してジアミンを溶解させた。その後、テトラカルボン酸二無水物として3,3’−4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(sBPDA)294.2gを加えて、120℃のオイルバス上で白濁が消失するまで撹拌した。白濁が消失後、オイルバスを外してフラスコ内温を室温に戻し、更に24時間撹拌を継続することにより、ポリイミド前駆体7のNMP溶液を得た。
得られたポリイミド前駆体の重量平均分子量(Mw)を、モノマー組成とともに表1に示した。
[製造例8]
上記製製造例7において、ジアミン及びテトラカルボン酸二無水物の種類及び量を表1に記載の通りとし、更に固形分濃度が表1に記載した値になるようにNMPを添加した以外は製造例7と同様にして、ポリイミド前駆体8のNMP溶液を得た。
得られたポリイミド前駆体の重量平均分子量(Mw)を、モノマー組成とともに表1に示した。
[製造例16]
オイルバス上に設置した撹拌棒付きセパラブルフラスコに、窒素ガスを導入しながら、後述するジアミン及びテトラカルボン酸二無水物添加した後のモノマー濃度が20質量%となるようにNMPを投入し、4,4’−ジアミノ−2,2’−ビス(トリフルオロメチル)ビフェニル(TFMB)307.4gを撹拌しながら加えた。フラスコ内温を50℃に加温してジアミンを溶解させた後、テトラカルボン酸二無水物としてピロメリット酸二無水物(PMDA)98.1g及び4,4’−オキシジフタル酸二無水物(ODPA)155.1gを加えて8時間撹拌しして反応を行った。その後、オイルバスを外してフラスコ内温を室温に戻すことにより、ポリイミド前駆体16のNMP溶液を得た。
得られたポリイミド前駆体の重量平均分子量(Mw)を、モノマー組成とともに表1に示した。
[製造例17〜19]
上記製造例16において、ジアミン及びテトラカルボン酸二無水物の種類及び量を表1に記載の通りとし、更に固形分濃度が表1に記載した値になるようにNMPを添加した以外は製造例16と同様にして、ポリイミド前駆体17〜19のNMP溶液をそれぞれ得た。
得られた各ポリイミド前駆体の重量平均分子量(Mw)を、各モノマー組成とともに表1に示した。
[比較製造例]
以下の比較製造例においては、ジアミンとして、上記実施例で使用したジアミンとともにシリコーンジアミンを併用してポリイミド前駆体の製造を行った。
[比較製造例1]
オイルバス上に設置した撹拌棒付きセパラブルフラスコに、窒素ガスを導入しながら、後述するジアミン(シリコーンジアミンを含む。)及びテトラカルボン酸二無水物を添加した後の濃度が16質量%となるようにNMPを投入した。ここに、ジアミンとして2,2’−ジメチル−4,4’−ジアミノビフェニル(mTB)201.7gを撹拌しながら加え、続いてテトラカルボン酸二無水部としてピロメリット酸二無水物(PMDA)218.1gを加えて、室温で30分撹拌した。これを80℃に昇温した後、シリコーンジアミンとしてX−22−1660B−3(信越化学工業製、数平均分子量4,400)86.9gを、滴下漏斗から滴下した。滴下終了後、更に1時間撹拌を継続した後、オイルバスを外してフラスコ内温を室温に戻すことにより、比較ポリイミド前駆体1のNMP溶液を得た。このNMP溶液をGPCで測定した結果、シリコーンジアミンに由来するピークは観測されず、原料として添加したシリコーンジアミンのすべてがポリマー鎖中に導入されていることを確認した。
得られたポリイミド前駆体の重量平均分子量(Mw)を、モノマー組成とともに表2に示した。
[比較製造例2〜3、比較製造例9〜15及び比較製造例20〜23]
上記比較製造例1において、ジアミン、テトラカルボン酸二無水物及びシリコーンジアミンの種類及び量を表2に記載の通りとし、更に固形分濃度が表2に記載した値になるようNMPを添加した以外は比較製造例1と同様にして、比較ポリイミド前駆体2〜3、比較ポリイミド前駆体9〜15及び比較ポリイミド前駆体20〜23のNMP溶液をそれぞれ得た。これらのNMP溶液をGPCで測定した結果、いずれの比較製造例においてもシリコーンジアミンに由来するピークは観測されず、原料として添加したシリコーンジアミンのすべてがポリマー鎖中に導入されていることを確認した。
得られた各ポリイミド前駆体の重量平均分子量(Mw)を、各モノマー組成とともに表2に示した。
[比較製造例4]
オイルバス上に設置した撹拌棒付きセパラブルフラスコに、窒素ガスを導入しながら、後述するジアミン、シリコーンジアミン及びテトラカルボン酸二無水物1を添加した後のモノマー濃度が15質量%となるようにNMPを投入した。ここに、ジアミンとして2,2’−ジメチル−4,4’−ジアミノビフェニル(mTB)161.3g及び4,4’−ジアミノジフェニルエーテル(ODA)38.0gを撹拌しながら加え、フラスコ内温を50℃に加温してジアミンを溶解させた。その後、テトラカルボン酸二無水物としてピロメリット酸二無水物(PMDA)196.1gを加えて30分撹拌した。これを80℃に昇温し、シリコーンジアミンとしてX−22−1660B−374.7gを滴下漏斗から滴下した。滴下終了後、更に1時間撹拌を継続した後、オイルバスを外してフラスコ内温を室温に戻すことにより、比較ポリイミド前駆体4のNMP溶液を得た。このNMP溶液をGPCで測定した結果、シリコーンジアミンに由来するピークは観測されず、原料として添加したシリコーンジアミンのすべてがポリマー鎖中に導入されていることを確認した。
得られたポリアミド酸の重量平均分子量(Mw)を、モノマー組成とともに表2に示した。
[比較製造例5及び6]
上記比較製造例4において、ジアミン、シリコーンジアミン及びテトラカルボン酸二無水物の種類及び量を表2に記載の通りとし、更に固形分濃度が表2に記載した値になるようNMPを添加した以外は比較製造例4と同様にして、比較ポリイミド前駆体5及び6のNMP溶液をそれぞれ得た。これらのNMP溶液をGPCで測定した結果、いずれの比較製造例においてもシリコーンジアミンに由来するピークは観測されず、原料として添加したシリコーンジアミンのすべてがポリマー鎖中に導入されていることを確認した。
得られた各ポリアミド酸の重量平均分子量(Mw)を、各モノマー組成とともに表2に示した。
[比較製造例7]
オイルバス上に設置した撹拌棒付きセパラブルフラスコに、窒素ガスを導入しながら、後述するジアミン及びテトラカルボン酸二無水物を添加した後の濃度が16質量%となるようにNMPを加えた。続いてジアミンとして1,4−ジアミノシクロヘキサン(CHDA)113.0gを撹拌しながら加え、フラスコ内温を50℃に加温してジアミンを溶解させた後、テトラカルボン酸二無水物として3,3’−4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(sBPDA)294.2gを加えて、120℃のオイルバス上で白濁が消失するまで撹拌した。白濁が消失後、オイルバスを外してフラスコ内温を室温に戻した後、更に24時間撹拌を継続した。これを50℃に昇温し、シリコーンジアミンとしてX−22−1660B−3(120.1gを滴下漏斗から滴下した。その後、同温度で3時間撹拌を継続した後、オイルバスを外してフラスコ内温を室温に戻すことにより、比較ポリイミド前駆体7のNMP溶液(を得た。このNMP溶液をGPCで測定した結果、シリコーンジアミンに由来するピークは観測されず、原料として添加したシリコーンジアミンのすべてがポリマー鎖中に導入されていることを確認した。
得られたポリイミド前駆体の重量平均分子量(Mw)を、モノマー組成とともに表2に示した。
[比較製造例8]
上記比較製造例7において、ジアミン、シリコーンジアミン及びテトラカルボン酸二無水物の種類及び量を表2に記載の通りとし、更に固形分濃度が表2に記載した値になるようNMPを添加した以外は製造例7と同様にして、比較ポリイミド前駆体8のNMP溶液を得た。このNMP溶液をGPCで測定した結果、シリコーンジアミンに由来するピークは観測されず、原料として添加したシリコーンジアミンのすべてがポリマー鎖中に導入されていることを確認した。
得られたポリアミド酸の重量平均分子量(Mw)を、モノマー組成とともに表2に示した。
[比較製造例16]
オイルバス上に設置した撹拌棒付きセパラブルフラスコに、窒素ガスを導入しながら、後述するジアミン、シリコーンジアミン及びテトラカルボン酸二無水物を添加した後の濃度が20質量%となるようにNMPを加えた。ここに、ジアミンとして4,4’−ジアミノ−2,2’−ビス(トリフルオロメチル)ビフェニル(TFMB)307.4gを撹拌しながら加え、フラスコ内温を50℃に加温してジアミンを溶解させた後、テトラカルボン酸二無水物としてピロメリット酸二無水物(PMDA)98.1g及び4,4’−オキシジフタル酸二無水物(ODPA)155.1gを加えて8時間撹拌した。これを80℃に昇温した後、シリコーンジアミンとしてX−22−1660B−368.5gを滴下漏斗から滴下した。滴下終了後、1時間撹拌を継続した後、オイルバスを外してフラスコ内温を室温に戻すことにより、比較ポリイミド前駆体16のNMP溶液を得た。このNMP溶液をGPCで測定した結果、シリコーンジアミンに由来するピークは観測されず、原料として添加したシリコーンジアミンのすべてがポリマー鎖中に導入されていることを確認した。
得られたポリイミド前駆体の重量平均分子量(Mw)を、モノマー組成とともに表2に示した。
[比較製造例17〜19]
上記比較製造例16において、ジアミン1シリコーンジアミン及びテトラカルボン酸二無水物の種類及び量を表2に記載の通りとし、更に固形分濃度が表2に記載した値になるようNMPを添加した以外は製造例16と同様にして比較ポリイミド前駆体17〜19のNMP溶液をそれぞれ得た。
得られた各ポリアミド酸の重量平均分子量(Mw)を、各モノマー組成とともに表2に示した。これらのNMP溶液をGPCで測定した結果、いずれの比較製造例においてもシリコーンジアミンに由来するピークは観測されず、原料として添加したシリコーンジアミンのすべてがポリマー鎖中に導入されていることを確認した。
Figure 0006420064
Figure 0006420064
表1及び表2におけるモノマーの略称は、それぞれ以下の意味である。
[ジアミン]
mTB:2,2’−ジメチル−4,4’−ジアミノビフェニル
ODA:4,4’−ジアミノジフェニルエーテル
pDA:パラフェニレンジアミン
BAPP:2,2’−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン
CHDA:1,4−ジアミノシクロヘキサン
MBCHA:4,4’−ジアミノジシクロヘキシルメタン
HAB:3,3’−ジヒドロキシ−4,4’−ジアミノビフェニル
TFMB:4,4’−ジアミノ−2,2’−ビス(トリフルオロメチル)ビフェニル
4,4−DAS:4,4−ジアミノジフェニルスルフォン
[テトラカルボン酸二無水物]
PMDA:ピロメリット酸二無水物
HPMDA:シクロヘキサン−1,2,4,5−テトラカルボン酸二無水物
CBDA:1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸二無水物
sBPDA:3,3’−4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物
ODPA:4,4’−オキシジフタル酸二無水物
6FDA:4,4’−(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸無水物
[シリコーンジアミン]
X−22−1660B−3:両末端アミン変性メチルフェニルシリコーンオイル(信越化学工業社製、数平均分子量4,400)
なお、表2におけるシリコーンジアミンの「添加量(質量部)」欄の数字は、モノマーとしてのシリコーンジアミンの添加量を、ジアミン及びテトラカルボン酸二無水物の合計を100質量部とした場合の質量部に換算した値である。
(実施例1)
上記製造例1で得られたポリイミド前駆体1のNMP溶液に、シリコーンとしてX−22−1660B−3(信越化学社製、数平均分子量4,400)を、ポリイミド前駆体100質量部に対して20.7質量部加えて混合することにより、樹脂組成物を得た。
この樹脂組成物を用い、上記記載の方法により、密着力変化の評価を行った。得られた結果は表3にまとめた。
(実施例2〜30)
使用したNMP溶液に含有されるポリイミド前駆体の種類、及びシリコーンの種類及び量を、それぞれ表3に記載した通りとした以外は実施例1と同様にして樹脂組成物を得た。
これらの樹脂組成物を用い、上記記載の方法により、密着力変化の評価を行った。得られた結果は表3にまとめた。
(比較例1)
上記比較製造例1で得られた比較ポリイミド前駆体1のNMP溶液をそのまま樹脂組成物として使用し、上記記載の方法により、密着力変化の評価を行った。得られた結果は、表4にまとめた。
(比較例2〜23)
上記比較製造例で得られた、表3に記載した種類の比較ポリイミド前駆体を含有するNMP溶液をそれぞれそのまま樹脂組成物として使用し、上記記載の方法により、密着力変化の評価行った。得られた結果は表4にまとめた。
(比較例24)
上記製造例1で得られたポリイミド前駆体1のNMP溶液に、シリコーンとしてX−22−1660B−3(信越化学社製、数平均分子量4,400)をポリイミド前駆体100質量部に対して4.8質量部加えて混合することにより、樹脂組成物を得た。
この樹脂組成物を用い、上記記載の方法により、密着力変化の評価を行った。得られた結果は表4にまとめた。
(比較例25)
上記比較例24において、使用したX−22−1660B−3に量を表4に記載の通りとした以外は比較例24と同様にして樹脂組成物を得た。
この樹脂組成物を用い、上記記載の方法によっ密着力変化の評価を試みた。しかし、得られたポリイミドフィルムは相分離をおこして不均一な状態であり、密着力(ピール強度)のばらつきが大きかったため、定量的な評価はできなかった。
Figure 0006420064
Figure 0006420064
表3及び表4におけるシリコーンの略称は、それぞれ以下の意味である。
X−22−1660B−3:両末端アミノ変性メチルフェニルシリコーンオイル(信越化学工業製、数平均分子量4,400)
X−22−9409:両末端アミノ変性メチルフェニルシリコーンオイル(信越化学工業製、数平均分子量2,600)
X22−161B:両末端アミノ変性メチルフェニルシリコーン(信越化学工業製、、数平均分子量3,000)
X22−161A:両末端アミノ変性メチルフェニルシリコーン(信越化学工業製、、数平均分子量1,600)
KF−8002:側鎖アミノ変性メチルシリコーン(信越化学工業製、数平均分子量3,400)
X−22−163A:両末端エポキシ変性シリコーン(信越化学工業製、数平均分子量2,000)
X−22−168A:両末端酸無水物変性シリコーン(信越化学工業製:X−22−168A(数平均分子量2,000)
DMS−Z21:両末端酸無水物変性メチルシリコーン(ゲレスト社製、数平均分子量600〜800、アミン価300〜400、重合度m=4〜7)
本発明の樹脂組成物を用いて製造されるポリイミドフィルム及び積層体は、例えば、半導体絶縁膜、TFT−LCD絶縁膜、電極保護膜などとしてしようできるほか、フレキシブルデバイスの基板として好適に利用することができる。ここで、フレキシブルデバイスとは、例えば、フレキシブルディスプレイ、フレキシブル太陽電池、フレキシブルタッチパネル電極基板、フレキシブル照明、フレキシブルバッテリーなどをいう。

Claims (16)

  1. (A)下記一般式(1)で表される構造を有するポリイミド前駆体100質量部及び
    (B)下記一般式(2)で表されるシリコーン10質量部を超え50質量部以下
    を含有する、フレキシブル基板形成用樹脂組成物。
    Figure 0006420064
    (式中、Rは、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1〜20の1価の脂肪族炭化水素及び炭素数6〜20の1価の芳香族基からなる群より選ばれ;
    は炭素数4〜32の2価の有機基を示し;そして
    は炭素数4〜32の4価の有機基を示す。)
    Figure 0006420064
    (式中、Rは、それぞれ独立に、炭素数3〜20の2価の脂肪族炭化水素及び炭素数6〜20の2価の芳香族基からなる群より選ばれ;
    、R及びRは、それぞれ独立に、炭素数1〜3の1価の脂肪族炭化水素及び炭素数6〜10の1価の芳香族基からなる群より選ばれ;
    l及びmはそれぞれ0〜50の整数であり、ただし(l+m)≧2を満たし;そして
    、Z及びZは、それぞれ独立に、アミノ基、酸無水物基、エポキシ基、水酸基、メルカプト基、カルボキシル基、アクリル基、メタクリル基、炭素数1〜3の1価の脂肪族炭化水素及び炭素数6〜10の1価の芳香族基から選択され、ただしZ、Z及びZのうちの少なくとも1つはアミノ基、酸無水物基、エポキシ基、水酸基、メルカプト基、カルボキシル基、アクリル基及びメタクリル基からなる群より選ばれる。)
  2. 上記一般式(1)におけるXが、
    2,2’−ジメチル−4,4’−ジアミノビフェニル(mTB)、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル(ODA)、パラフェニレンジアミン(PDA)、2,2’−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン(BAPP)、1,4−ジアミノシクロヘキサン(CHDA)、4,4’−ジアミノジシクロヘキシルメタン(MBCHA)、3,3’−ジヒドロキシ−4,4’−ジアミノビフェニル(HAB)、4,4’−ジアミノ−2,2’−ビス(トリフルオロメチル)ビフェニル(TFMB)及び4,4−ジアミノジフェニルスルフォン(4,4−DAS)からなる群より一つ以上選ばれるジアミンに由来する2価の基である、請求項1に記載の樹脂組成物。
  3. 上記一般式(1)におけるXが、
    ピロメリット酸二無水物(PMDA)、3,3’−4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(sBPDA)、4,4’−オキシジフタル酸二無水物(ODPA)、4,4’−(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸無水物(6FDA)、シクロヘキサン−1,2,4,5−テトラカルボン酸二無水物(HPMDA)及び1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸二無水物(CBDA)からなる群より一つ以上選ばれるテトラカルボン酸二無水物に由来する4価の基である、請求項1又は2に記載の樹脂組成物。
  4. (B)上記一般式(2)で表されるシリコーンの含有量が、(A)上記一般式(1)で表されるポリイミド前駆体100質量部に対して12質重量部〜30質量部である、請求項1〜3いずれか1項に記載の樹脂組成物。
  5. (B)上記一般式(2)で表されるシリコーンの数平均分子量が200〜12,000である、請求項1〜4いずれか1項に記載の樹脂組成物。
  6. (B)上記一般式(2)で表されるシリコーンが、下記一般式(3)で表されるシリコーンである、請求項1〜5いずれか1項に記載の樹脂組成物。
    Figure 0006420064
    (式中、R、R、R、Z及びZは、それぞれ、上記一般式(2)におけるのと同じ意味であり;
    nは2〜50の整数である。)
  7. 及びZが、それぞれ、アミノ基、酸無水物基及びエポキシ基からなる群より選ばれる基である、請求項6に記載の樹脂組成物。
  8. (C)溶媒を更に含有する、 請求項1〜7いずれか1項に記載の樹脂組成物。
  9. 請求項8に記載の樹脂組成物を、支持体の表面に展開して塗膜を形成し、次いで前記塗膜が形成された支持体を加熱して塗膜中の(A)ポリイミド前駆体をイミド化する、フレキシブル基板用ポリイミドフィルムの製造方法
  10. (A)下記一般式(1)で表される構造を有するポリイミド前駆体100質量部、
    (B)下記一般式(2)で表されるシリコーン10質量部を超え50質量部以下及び
    (C)溶媒
    を含有する樹脂組成物を支持体の表面上に展開して塗膜を形成する展開工程と、
    前記塗膜が形成された支持体を加熱して塗膜中の(A)ポリイミド前駆体をイミド化してポリイミドフィルムを形成するイミド化工程と、
    前記ポリイミドフィルムを前記支持体から剥離してポリイミドフィルムを単離する剥離工程と
    を具備する、ポリイミドフィルムの製造方法。
    Figure 0006420064
    (式中、R は、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1〜20の1価の脂肪族炭化水素及び炭素数6〜20の1価の芳香族基からなる群より選ばれ;
    は炭素数4〜32の2価の有機基を示し;そして
    は炭素数4〜32の4価の有機基を示す。)
    Figure 0006420064
    (式中、R は、それぞれ独立に、炭素数3〜20の2価の脂肪族炭化水素及び炭素数6〜20の2価の芳香族基からなる群より選ばれ;
    、R 及びR は、それぞれ独立に、炭素数1〜3の1価の脂肪族炭化水素及び炭素数6〜10の1価の芳香族基からなる群より選ばれ;
    l及びmはそれぞれ0〜50の整数であり、ただし(l+m)≧2を満たし;そして
    、Z 及びZ は、それぞれ独立に、アミノ基、酸無水物基、エポキシ基、水酸基、メルカプト基、カルボキシル基、アクリル基、メタクリル基、炭素数1〜3の1価の脂肪族炭化水素及び炭素数6〜10の1価の芳香族基から選択され、ただしZ 、Z 及びZ のうちの少なくとも1つはアミノ基、酸無水物基、エポキシ基、水酸基、メルカプト基、カルボキシル基、アクリル基及びメタクリル基からなる群より選ばれる。)
  11. 上記一般式(1)におけるX が、
    2,2’−ジメチル−4,4’−ジアミノビフェニル(mTB)、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル(ODA)、パラフェニレンジアミン(PDA)、2,2’−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン(BAPP)、1,4−ジアミノシクロヘキサン(CHDA)、4,4’−ジアミノジシクロヘキシルメタン(MBCHA)、3,3’−ジヒドロキシ−4,4’−ジアミノビフェニル(HAB)、4,4’−ジアミノ−2,2’−ビス(トリフルオロメチル)ビフェニル(TFMB)及び4,4−ジアミノジフェニルスルフォン(4,4−DAS)からなる群より一つ以上選ばれるジアミンに由来する2価の基である、請求項10に記載のポリイミドフィルムの製造方法。
  12. 上記一般式(1)におけるX が、
    ピロメリット酸二無水物(PMDA)、3,3’−4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(sBPDA)、4,4’−オキシジフタル酸二無水物(ODPA)、4,4’−(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸無水物(6FDA)、シクロヘキサン−1,2,4,5−テトラカルボン酸二無水物(HPMDA)及び1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸二無水物(CBDA)からなる群より一つ以上選ばれるテトラカルボン酸二無水物に由来する4価の基である、請求項10又は11に記載のポリイミドフィルムの製造方法。
  13. (B)上記一般式(2)で表されるシリコーンの含有量が、(A)上記一般式(1)で表されるポリイミド前駆体100質量部に対して12質重量部〜30質量部である、請求項10〜12いずれか1項に記載のポリイミドフィルムの製造方法。
  14. (B)上記一般式(2)で表されるシリコーンの数平均分子量が200〜12,000である、請求項10〜13いずれか1項に記載のポリイミドフィルムの製造方法。
  15. (B)上記一般式(2)で表されるシリコーンが、下記一般式(3)で表されるシリコーンである、請求項10〜14いずれか1項に記載のポリイミドフィルムの製造方法。
    Figure 0006420064
    (式中、R 、R 、R 、Z 及びZ は、それぞれ、上記一般式(2)におけるのと同じ意味であり;
    nは2〜50の整数である。)
  16. 及びZ が、それぞれ、アミノ基、酸無水物基及びエポキシ基からなる群より選ばれる基である、請求項15に記載のポリイミドフィルムの製造方法。
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