JP4433980B2 - 電子写真機器用無端ベルト - Google Patents

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Description

本発明は、新規なポリアミドイミド樹脂を用いた電子写真機器用無端ベルトに関するものであり、詳しくはフルカラーLBP(レーザービームプリンター)やフルカラーPPC(プレーンペーパーコピア)等の電子写真技術を採用した電子写真機器において、中間転写ベルトや紙転写搬送ベルト等に用いられる電子写真機器用無端ベルトに関するものである。
一般に、フルカラーLBPやフルカラーPPC等の電子写真技術を採用した電子写真機器において、トナー像の転写用,紙転写搬送用,感光体基体用等の用途に、無端ベルト(シームレスベルト)が多用されている。このような無端ベルトとしては、例えば、PVDF(ポリフッ化ビニリデン)等のフッ素系樹脂,ポリイミド樹脂等に、導電性カーボンブラックを配合したものを、ディッピング法,押出成形法,遠心成形法等の成形方法により、筒状フィルムに形成したものが用いられている。
しかし、上記フッ素系樹脂製ベルトは、電気特性には優れるものの、弾性率等のベルト物性が低く、コストが高くなるという難点がある。また、上記ポリイミド樹脂製ベルトは、ベルト物性については特に問題はないものの、電気特性においてロット毎のばらつきが大きく、コストも高いという難点がある。そして、このようなベルト物性の低さ、電気抵抗のばらつきは、複写画像の画質の低下原因となる。
また、数平均分子量1.3万以上のポリアミドイミド樹脂と半導電性カーボンブラックとからなる半導電性ポリアミドイミド組成物が提案されており、この組成物を中間転写ベルトに用いる旨の開示がある(特許文献1参照)。
特開2001−354854号公報
しかしながら、上記ポリアミドイミド樹脂は、耐久性の点では問題ないが、吸水量が大きいため、カール癖が悪く、実使用時に、ベルトに、カール癖にもとづくうねりが生じる。したがって、上記特許文献1に記載の半導電性ポリアミドイミド組成物を用いて中間転写ベルトを作製した場合、そのカール癖の悪さにより、画像不具合が発生するという難点がある。
本発明は、このような事情に鑑みなされたもので、耐久性に優れ、優れた画質が得られる電子写真機器用無端ベルトの提供をその目的とする。
上記の目的を達成するため、本発明の電子写真機器用無端ベルトは、少なくとも基層を備えた電子写真機器用無端ベルトであって、上記基層が、分子構造中に下記の一般式(1)で表される構造単位を有するポリアミドイミド樹脂を用いて形成されているという構成をとる。
Figure 0004433980
すなわち、本発明者らは、耐久性に優れ、優れた画質が得られる電子写真機器用無端ベルトを得るべく、鋭意研究を重ねた。そして、ポリアミドイミド樹脂と、ポリエーテルスルホン樹脂とを併用することを想起し、これにより、ポリアミドイミド樹脂のカール癖の悪さを改善できるのではないかと考え、研究を続けた。しかし、ポリアミドイミド樹脂と、ポリエーテルスルホン樹脂とを単に併用するだけでは、ポリアミドイミド樹脂のカール癖の悪さを改善することはできるが、ポリエーテルスルホン樹脂の引き裂き力が低いため、耐久性の点で不充分であった。そこで、さらに研究を重ねた結果、ポリアミドイミド樹脂の分子構造中に、前記一般式(1)で表されるポリエーテルスルホン樹脂の分子骨格を導入させてなる新規なポリアミドイミド樹脂を開発し、この新規なポリアミドイミド樹脂を用いて、電子写真機器用無端ベルトの基層(ベース層)を形成すると、耐久性に優れ、優れた画質が得られる電子写真機器用無端ベルトが得られることを見いだし、本発明に到達した。
このように、本発明の電子写真機器用無端ベルトは、基層のみからなる単層、もしくは基層を含む2層以上の層からなる複層の電子写真機器用無端ベルトにおいて、その基層を上記新規なポリアミドイミド樹脂を用いて形成しているため、耐久性に優れ、優れた画質の複写画像を得ることができる。
つぎに、本発明の実施の形態について説明する。
本発明の電子写真機器用無端ベルトは、例えば、図1に示すように、基層1の外周面に表層2が直接形成されて構成されている。
本発明においては、上記基層1が、特殊なポリアミドイミド樹脂を用いて形成されているのであって、これが最大の特徴である。
上記基層1用材料である上記特殊なポリアミドイミド(PAI)樹脂は、分子構造中に下記の一般式(1)で表される構造単位を有していれば、特に限定するものではない。
Figure 0004433980
このような特殊なPAI樹脂は、例えば、下記の(A)〜(C)を用いて、作製することができる。
(A)芳香族系ジイソシアネート化合物。
(B)芳香族系多価カルボン酸の無水物、または芳香族系多価カルボン酸の無水物と芳香族系多価カルボン酸との混合物(以下、「酸成分」と略す)。
(C)末端に水酸基を有するポリエーテルスルホン樹脂。
上記(A)の芳香族系ジイソシアネート化合物としては、特に限定はないが、例えば、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、トルエンジイソシアネート(TDI)、トリジンジイソシアネート(TODI)、キシリレンジイソシアネート(XDI)、リジンジイソシアネート(LDI)、ナフタレンジイソシアネート(NDI)、パラフェニレンジイソシアネート(PPDI)、テトラメチルキシレンジイソシアネート(TMXDI)等があげられる。これらは単独でもしくは2種以上併せて用いられる。これらのなかでも、反応性、コスト、溶解性の点で、MDI、TODIが好適に用いられる。
上記酸成分(B)の芳香族系多価カルボン酸およびその無水物としては、上記芳香族系ジイソシアネート化合物(A)と縮合反応し、芳香族環を有するものであれば特に限定はないが、例えば、トリメリット酸、ナフタレン−1,2,4−トリカルボン酸およびこれらの無水物の他、ベンゼン−1,2,4,5−テトラカルボン酸(ピロメリット酸)、ベンゾフェノン−3,3′,4,4′−テトラカルボン酸、ジフェニルエーテル−3,3′,4,4′−テトラカルボン酸、ベンゼン−1,2,3,4−テトラカルボン酸、ビフェニル−3,3′,4,4′−テトラカルボン酸、ビフェニル−2,2′,3,3′−テトラカルボン酸、ナフタレン−2,3,6,7−テトラカルボン酸、ナフタレン−1,2,4,5−テトラカルボン酸、ナフタレン−1,4,5,8−テトラカルボン酸、デカヒドロナフタレン−1,4,5,8−テトラカルボン酸、4,8−ジメチル−1,2,3,5,6,7−ヘキサヒドロナフタレン−1,2,5,6−テトラカルボン酸、2,6−ジクロロナフタレン−1,4,5,8−テトラカルボン酸、2,7−ジクロロナフタレン−1,4,5,8−テトラカルボン酸、2,3,6,7−テトラクロロナフタレン−1,4,5,8−テトラカルボン酸、フェナントレン−1,3,9,10−テトラカルボン酸、ペリレン−3,4,9,10−テトラカルボン酸、ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)メタン、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)メタン、1,1−ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)エタン、1,1−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)エタン、2,2−ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)プロパン、2,3−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)プロパン、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)スルホン、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)エーテル、エチレングリコールビス(アンヒドロトリメリテート)、プロピレングリコールビス(アンヒドロトリメリテート)およびこれらの二無水物等があげられる。これらは単独でもしくは2種以上併せて用いられる。これらのなかでも、反応性、コスト、溶解性等の点から、トリメリット酸の無水物(無水トリメリット酸)が好適に用いられる。
上記(C)の末端に水酸基を有するポリエーテルスルホン(PES)樹脂としては、PES樹脂の片末端もしくは両末端に、フェノール性水酸基等の水酸基を有するものが用いられる。また、このPES樹脂としては、上記(A)または(B)との共重合により、PAI樹脂の分子構造中に、上記一般式(1)で表される構造単位(PES骨格)を導入できるものが用いられる。
上記(A)〜(C)の配合割合としては、(A)と(B)の合計重量〔(A)+(B)〕と、(C)の重量比が、〔(A)+(B)〕/(C)=99/1〜60/40の範囲内であることが好ましく、特に好ましくは〔(A)+(B)〕/(C)=90/10〜70/30の範囲内である。すなわち、(A)+(B)の重量比が99を超える〔(C)の重量比が1未満である〕と、PAI樹脂のカール癖の悪さを充分に改善することができなくなり、逆に(A)+(B)の重量比が60未満である〔(C)の重量比が40を超える〕と、耐久性が劣る傾向がみられるからである。
上記特殊なPAI樹脂の製法としては、特に限定はないが、大別してつぎの2通りの製法に分けられる。
〔第1の製法〕
上記芳香族系ジイソシアネート化合物(A)と、末端に水酸基を有するPES樹脂(C)を反応させた後、上記酸成分(B)を反応させる方法。すなわち、撹拌機、窒素導入管、温度計、冷却管を備えた反応容器に、MDI等の芳香族系ジイソシアネート化合物(A)と、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)等の極性溶剤とを仕込み、窒素気流下、撹拌してMDI等の芳香族系ジイソシアネート化合物(A)を溶解させる。ついで、この溶液に、NMP等の極性溶剤に溶解させた末端に水酸基を有するPES樹脂(C)を滴下混合し、所定条件(好ましくは、常温×2時間)で反応させる。その後、無水トリメリット酸等の酸成分(B)を添加し、撹拌しながら所定時間(好ましくは、1時間)かけて所定温度(好ましくは、130℃)まで昇温し、所定条件(好ましくは、130℃×約5時間)で反応させた後反応を停止することにより、分子構造中に前記一般式(1)で表される構造単位(PES骨格)を有するPAI溶液を調製することができる。
なお、上記極性溶剤としては、NMP以外に、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、N,N−ジメチルアセトアミド(DMAC)、γ−ブチロラクトン等があげられる。
〔第2の製法〕
上記酸成分(B)と、末端に水酸基を有するPES樹脂(C)とを反応させた後、上記芳香族系ジイソシアネート化合物(A)を反応させる方法。すなわち、撹拌機、窒素導入管、温度計、冷却管を備えた反応容器に、無水トリメリット酸等の酸成分(B)と、NMP等の極性溶剤と、末端に水酸基を有するPES樹脂(C)とを仕込み、窒素気流下、所定条件(好ましくは、100℃×約3時間)で反応させた後、液温を30℃以下に降下させる。その後、MDI等の芳香族系ジイソシアネート化合物(A)を添加し、撹拌しながら所定時間(好ましくは、1時間)かけて所定温度(好ましくは、130℃)まで昇温し、所定条件(好ましくは、130℃×約5時間)で反応させた後反応を停止することにより、分子構造中に前記一般式(1)で表される構造単位(PES骨格)を有するPAI溶液を調製することができる。
なお、上記基層用材料としては、上記特殊なPAI樹脂とともに、導電性充填剤を用いても差し支えない。
上記導電性充填剤としては、特に限定はないが、例えば、カーボンブラック,グラファイト等の導電性粉末、アルミニウム粉末,ステンレス粉末等の金属粉末、導電性酸化亜鉛(c−ZnO),導電性酸化チタン(c−TiO2 ),導電性酸化鉄(c−Fe3 4 ),導電性酸化錫(c−SnO2 )等の導電性金属酸化物、第四級アンモニウム塩,リン酸エステル,スルホン酸塩,脂肪族多価アルコール,脂肪族アルコールサルフェート塩等のイオン性導電剤等があげられる。これらは単独でもしくは2種以上併せて用いられる。
また、上記基層用材料には、上記各成分とともに、DMF,DMAC,トルエン,アセトン,NMP等の有機溶剤や、充填剤を、必要に応じて含有させることも可能である。
上記基層1を形成する導電性組成物は、例えば、PAI樹脂と、導電性充填剤と、有機溶剤と、充填剤とを必要に応じて適宜に配合し、撹拌羽根で混合した後、リングミル,ボールミル,サンドミル等を用いて分散させることにより調製することができる。
つぎに、基層1の外周面に形成される表層2用材料としては、特に限定はなく、例えば、シリコーン系樹脂、フッ素系樹脂、ウレタン系樹脂、アクリル系樹脂、ポリアミド系樹脂等があげられる。これらは単独でもしくは2種以上併せて用いられる。これらのなかでも、通常作業性を考慮して、液状または溶剤可溶タイプが好適に用いられる。また、汚れ防止、塗膜強度、あるいは密着性を向上させる目的で、前記樹脂材料を変性したものを用いてもよく、例えば、変性アクリル系樹脂があげられる。この変性アクリル系樹脂としては、アクリル樹脂の分子構造を母体とし、他の樹脂ないし樹脂成分で変性されたものであれば特に限定はないが、シリコーン変性アクリル系樹脂が好適に用いられる。
上記シリコーン変性アクリル系樹脂としては、例えば、シリコーングラフトアクリル系樹脂があげられる。このシリコーングラフトアクリル系樹脂としては、アクリル系樹脂(主鎖)にシリコーン系樹脂がグラフト重合したものであれば特に限定するものではない。このシリコーングラフトアクリル系樹脂の具体例としては、東亞合成社製のサイマックUS−350等があげられる。
なお、上記表層2用材料としては、前記樹脂材料に対して、イソシアネート樹脂,アミノ樹脂,フェノール樹脂,キシレン樹脂等の樹脂架橋剤を用いて、樹脂架橋を施した材料や、感光性モノマーまたはポリマーに光重合開始剤を混合した紫外線硬化型材料を用いても差し支えない。
上記表層2用材料は、例えば、変性アクリル系樹脂と、DMF,トルエン,アセトン等の有機溶剤とを適宜に配合し、撹拌羽根で混合することにより調製することができる。なお、各層を精度良く形成するためには、隣接する層の形成材料に用いる有機溶剤は、互いに異なった種類のものを使用することが好ましい。すなわち、表層2用材料に用いる有機溶剤と、基層1用材料に用いる有機溶剤とは、互いに異なった種類のものを使用することが好ましい。
前記図1に示した、本発明の電子写真機器用無端ベルトは、例えばつぎのようにして作製することができる。すなわち、前記と同様にして、基層用材料を調製し、これを金型(円筒形基体)の表面にスプレーコーティングする。ついで、これを150〜300℃で3〜6時間乾燥することにより、金型の表面に基層1を形成する。つぎに、この基層1の表面に、前記と同様にして調製した表層2用材料を、ディッピング法にてコーティングし乾燥した後、基層1と円筒形基体との間にエアー吹き付け等することにより、円筒形基体を抜き取り、基層1の表面に、表層2が形成されてなる2層構造の無端ベルト(図1参照)を作製することができる。なお、表層2の形成方法は、上記ディッピング法に限定されるものではなく、基層1の形成方法と同様に、スプレーコーティングすることにより形成しても差し支えない。
また、本発明の電子写真機器用無端ベルトの基層1は、上記製法以外に、押出成形法、インフレーション法、ブロー成形法、ディッピング法、遠心成形法等により、作製することも可能である。そして、上記表層2の形成を省略することにより、基層1のみからなる単層構造の無端ベルトを作製することができる。
本発明の電子写真機器用無端ベルトの各層の厚みは、ベルトの用途に応じて適宜に設定されるが、基層1の厚みは、通常、30〜300μmの範囲内であり、好ましくは50〜200μmの範囲内である。また、表層2の厚みは、0.1〜10μmの範囲内が好ましく、特に好ましくは0.5〜5μmの範囲内である。また、本発明の電子写真機器用無端ベルトは、内周長が90〜1500mmで、幅が100〜500mm程度のものが好ましい。すなわち、上記寸法の範囲内に設定すると、電子写真複写機等に組み込んで使用するのに適当な大きさとなるからである。
なお、本発明の電子写真機器用無端ベルトは、少なくとも基層1を備えた構造であればよく、前記図1に示したような、基層1の外周面に表層2を直接形成した2層構造に限定されるものではない。本発明の電子写真機器用無端ベルトは、例えば、基層1のみからなる単層構造、基層1と表層2との間に、熱可塑性樹脂層もしくはゴム弾性層を介在させた3層構造、基層1と表層2との間に、熱可塑性樹脂層およびゴム弾性層の双方を介在させた4層構造等であっても差し支えない。ただし、基層1は、前述の特殊なPAI樹脂を用いて形成されている必要がある。
上記基層1と表層2との間に介在させる熱可塑性樹脂層用材料としては、特に限定はないが、熱可塑性樹脂とともに、必要に応じて、メチルエチルケトン(MEK),トルエン等の溶剤等が用いられる。なお、この熱可塑性樹脂層用材料中にも、先に述べたような、導電性充填剤を配合しても差し支えない。
上記熱可塑性樹脂としては、特に限定はなく、例えば、ポリフッ化ビニリデン(PVDF),テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA),エチレン−テトラフルオロエチレン共重合体(ETFE)等のフッ素系樹脂、ポリエチレン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、アクリル系樹脂、ポリカーボネート(PC)系樹脂、ポリアミド系樹脂、EVA(エチレン−酢酸ビニル共重合体)系樹脂、EEA(エチレン−アクリル酸エチル共重合体)系樹脂等があげられる。これらは単独でもしくは2種以上併せて用いられる。これらのなかでも、難燃性に優れる点で、PVDF等のフッ素系樹脂を用いることが好ましい。
また、上記基層1と表層2との間に介在させるゴム弾性層用材料としては、ゴム材および加硫剤とともに、必要に応じて、加硫促進剤、溶剤、加工助剤、老化防止剤等が用いられる。なお、このゴム弾性層用材料中にも、先に述べたような、導電性充填剤を配合しても差し支えない。
上記ゴム材としては、特に限定はないが、難燃性の観点から、塩素化ポリエチレンゴム(CPE)、クロロプレンゴム(CR)等が用いられる。これらのなかで、各中間転写ベルトに要求される電気特性、弾力性、耐久性に合わせて最適材料を選定する。
本発明の電子写真機器用無端ベルトは、フルカラーLBPやフルカラーPPC等の電子写真技術を採用した電子写真機器において、トナー像の転写用,紙転写搬送用,感光体基体用等の用途に好適に用いられるが、これに限定するものではなく、例えば、フルカラーではない、単色の電子写真複写機の転写ベルト等にも使用することができる。
つぎに、実施例について比較例と併せて説明する。
〔基層用材料の調製〕
撹拌機、窒素導入管、温度計、冷却管を備えた反応容器に、MDI(日本ポリウレタン工業社製、ミリオネートMT)50部と、NMP溶剤164部とを仕込み、窒素気流下、撹拌してMDIを溶解させた。ついで、このMDI溶液に、フェノール性水酸基末端PES(住友化学工業社製、スミカエクセル5003P)30重量%NMP溶液3部を滴下混合し、常温で2時間反応させた。その後、無水トリメリット酸38部を添加し、撹拌しながら1時間かけて130℃まで昇温し、130℃で約5時間反応させた後反応を停止し、分子構造中に前記一般式(1)で表される構造単位(PES骨格)を有するPAI−NMP溶液を調製した。つぎに、このPAI−NMP溶液に、カーボンブラック(昭和キャボット社製、ショウブラックN220)3部を配合し、撹拌羽根で混合した後、ボールミル分散させて基層用材料を調製した。
〔表層用材料の調製〕
シリコーングラフトアクリル系樹脂(東亞合成社製、サイマックUS−350)100部と、トルエン溶剤500部とを配合し、撹拌羽根で混合して、表層用材料を調製した。
〔無端ベルトの作製〕
金型(円筒形基体)を準備し、この表面に上記基層用材料をスプレーコーティングして、金型の表面に基層を形成し、250℃で2時間加熱処理をした。つぎに、この基層の表面に、上記表層用材料をディッピング法にてコーティングし、乾燥した後、基層と円筒形基体との間にエアーを吹き付けることにより、円筒形基体を抜き取り、基層(厚み:80μm)の表面に、表層(厚み:1μm)が形成されてなる2層構造の無端ベルトを作製した。
フェノール性水酸基末端PES30重量%NMP溶液の配合割合を73部に変更するとともに、カーボンブラックの配合割合を3.9部に変更する以外は、実施例1と同様にして、基層用材料を調製した。そして、この基層用材料を用いる以外は、実施例1と同様にして、無端ベルトを作製した。
フェノール性水酸基末端PES30重量%NMP溶液の配合割合を197部に変更するとともに、カーボンブラックの配合割合を5.5部に変更する以外は、実施例1と同様にして、基層用材料を調製した。そして、この基層用材料を用いる以外は、実施例1と同様にして、無端ベルトを作製した。
MDI50部に代えて、MDI(日本ポリウレタン工業社製、ミリオネートMT)25部およびTODI(日本曹達社製、TODI/R203)26部を配合する以外は、実施例2と同様にして、基層用材料を調製した。そして、この基層用材料を用いる以外は、実施例1と同様にして、無端ベルトを作製した。
フェノール性水酸基末端PES30重量%NMP溶液の配合割合を293部に変更するとともに、カーボンブラックの配合割合を6.7部に変更する以外は、実施例1と同様にして、基層用材料を調製した。そして、この基層用材料を用いる以外は、実施例1と同様にして、無端ベルトを作製した。
〔基層用材料の調製〕
撹拌機、窒素導入管、温度計、冷却管を備えた反応容器に、無水トリメリット酸38部と、NMP溶剤164部と、フェノール性水酸基末端PES(住友化学工業社製、スミカエクセル5003P)30重量%NMP溶液3部を仕込み、窒素気流下、100℃で約3時間反応させた後、液温を30℃以下に降下させた。その後、MDI(日本ポリウレタン工業社製、ミリオネートMT)50部を添加し、撹拌しながら1時間かけて130℃まで昇温し、130℃で約5時間反応させた後反応を停止し、分子構造中に前記一般式(1)で表される構造単位(PES骨格)を有するPAI−NMP溶液を調製した。つぎに、このPAI−NMP溶液に、カーボンブラック(昭和キャボット社製、ショウブラックN220)3部を配合し、撹拌羽根で混合した後、ボールミル分散させて基層用材料を調製した。
〔無端ベルトの作製〕
上記基層用材料を用いる以外は、実施例1と同様にして、基層(厚み:80μm)の表面に、表層(厚み:1μm)が形成されてなる2層構造の無端ベルトを作製した。
フェノール性水酸基末端PES30重量%NMP溶液の配合割合を73部に変更するとともに、カーボンブラックの配合割合を3.9部に変更する以外は、実施例6と同様にして、基層用材料を調製した。そして、この基層用材料を用いる以外は、実施例1と同様にして、無端ベルトを作製した。
フェノール性水酸基末端PES30重量%NMP溶液の配合割合を197部に変更するとともに、カーボンブラックの配合割合を5.5部に変更する以外は、実施例6と同様にして、基層用材料を調製した。そして、この基層用材料を用いる以外は、実施例1と同様にして、無端ベルトを作製した。
MDI50部に代えて、MDI(日本ポリウレタン工業社製、ミリオネートMT)25部およびTODI(日本曹達社製、TODI/R203)26部を配合する以外は、実施例7と同様にして、基層用材料を調製した。そして、この基層用材料を用いる以外は、実施例1と同様にして、無端ベルトを作製した。
フェノール性水酸基末端PES30重量%NMP溶液の配合割合を293部に変更するとともに、カーボンブラックの配合割合を6.7部に変更する以外は、実施例6と同様にして、基層用材料を調製した。そして、この基層用材料を用いる以外は、実施例1と同様にして、無端ベルトを作製した。
〔比較例1〕
〔基層用材料の調製〕
撹拌機、窒素導入管、温度計、冷却管を備えた反応容器に、MDI(日本ポリウレタン工業社製、ミリオネートMT)50部と、無水トリメリット酸38部と、NMP溶剤164部とを仕込み、窒素気流下、撹拌しながら1時間かけて130℃まで昇温し、130℃で約5時間反応させた後反応を停止し、PAI30重量%NMP溶液を調製した。つぎに、このPAI30重量%NMP溶液に、カーボンブラック(昭和キャボット社製、ショウブラックN220)3部を配合し、撹拌羽根で混合した後、ボールミル分散させて基層用材料を調製した。
〔無端ベルトの作製〕
上記基層用材料を用いる以外は、実施例1と同様にして、基層(厚み:80μm)の表面に、表層(厚み:1μm)が形成されてなる2層構造の無端ベルトを作製した。
〔比較例2〕
〔基層用材料の調製〕
フェノール性水酸基末端PES(住友化学工業社製、スミカエクセル5003P)30重量%NMP溶液100部と、カーボンブラック(昭和キャボット社製、ショウブラックN220)1.3部とを配合し、撹拌羽根で混合した後、ボールミル分散させて基層用材料を調製した。
〔無端ベルトの作製〕
上記基層用材料を用いる以外は、実施例1と同様にして、基層(厚み:80μm)の表面に、表層(厚み:1μm)が形成されてなる2層構造の無端ベルトを作製した。
このようにして得られた実施例品および比較例品の無端ベルトを用い、下記の基準に従って各特性の評価を行った。これらの結果を後記の表1および表2に併せて示した。
〔開き角度〕
図2に示すように、無端ベルトを25mm×150mmの大きさに切断して、短冊状のテストピース20を作製した。このテストピース20を、直径13mmの金属製パイプ21に巻き付けた後、テストピース20の端部どうしを重ね合わせ、ここに0.3kgのオモリ(図示せず)をかけて吊るし、50℃×95%の環境下、24時間放置した。ついで、オモリを外し、図3に示すように、重ね合わせたテストピース20の両端を開放した後、テストピース20の円弧状部分を中心に、これを挟む左右のテストピース20の表面を上方に延長させたと仮想し、その左右仮想延長部23で作った角度θを、開き角度θとして測定した。この開き角度θが180°に近い方が、曲がり癖(カール癖)が少ないことを示しており、開き角度θが70°以上であれば画像に影響しない。
〔ベンチ耐久試験〕
直径13mmの金属製ローラーを2本準備し、2本の金属製ローラー間に無端ベルト(幅150mm)を張架した状態で、一方の金属製ローラーをテーブル上に固定した。ついで、テーブルに固定していない他方の金属製ローラーがテーブルの端部になるように配置し、金属製ローラーの両端にオモリを2kgずつ吊り下げ(総荷重4kg)、ラボ環境(25℃×40%)下で、無端ベルトを回転駆動させた。そして、無端ベルトに亀裂が確認できるまでの累積回転数を測定した。
〔実機画像評価〕
各無端ベルトをフルカラーPPC用ベルトユニットに装着し、このユニットを50℃×95%の環境下で2週間放置した。ついで、ベルトユニットをフルカラーPPCに組み込み、画出し評価を行い、濃度むら等の画像不良の有無を評価した。評価は、画像不良のないものを○、画像不良があるものを×とした。
Figure 0004433980
Figure 0004433980
上記結果から、いずれの実施例品も、開き角度が大きく、耐久性に優れ、実機画像評価も良好であった。
これに対し、比較例1品は、分子構造中にPES骨格を導入していない、通常のPAI樹脂を用いているため、カール癖を改善できず、開き角度が小さかった。また、実機画像評価も劣っていた。比較例2品は、PES樹脂のみを用いているため、引き裂き強度が弱く、耐久性が劣っていた。
本発明の電子写真機器用無端ベルトは、フルカラーLBP(レーザービームプリンター)やフルカラーPPC(プレーンペーパーコピア)等の電子写真技術を採用した電子写真機器において、中間転写ベルトや紙転写搬送ベルト等に好適に用いられる。
本発明の電子写真機器用無端ベルトの一例を示す部分断面図である。
電子写真機器用無端ベルトの開き角度の測定方法を示す説明図である。
測定する開き角度を示す説明図である。
符号の説明
1 基層
2 表層

Claims (4)

  1. 少なくとも基層を備えた電子写真機器用無端ベルトであって、上記基層が、分子構造中に下記の一般式(1)で表される構造単位を有するポリアミドイミド樹脂を用いて形成されていることを特徴とする電子写真機器用無端ベルト。
    Figure 0004433980
  2. 上記ポリアミドイミド樹脂が、下記の(A)と(C)を反応させた後、下記の(B)を反応させて得られたものである請求項1記載の電子写真機器用無端ベルト。
    (A)芳香族系ジイソシアネート化合物。
    (B)芳香族系多価カルボン酸の無水物、または芳香族系多価カルボン酸の無水物と芳香族系多価カルボン酸との混合物。
    (C)末端に水酸基を有するポリエーテルスルホン樹脂。
  3. 上記ポリアミドイミド樹脂が、下記の(B)と(C)を反応させた後、下記の(A)を反応させて得られたものである請求項1記載の電子写真機器用無端ベルト。
    (A)芳香族系ジイソシアネート化合物。
    (B)芳香族系多価カルボン酸の無水物、または芳香族系多価カルボン酸の無水物と芳香族系多価カルボン酸との混合物。
    (C)末端に水酸基を有するポリエーテルスルホン樹脂。
  4. 上記(A)と(B)の合計重量〔(A)+(B)〕と、(C)の重量比が、〔(A)+(B)〕/(C)=99/1〜60/40の範囲内である請求項2または3記載の電子写真機器用無端ベルト。
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