JP5268403B2 - 電子写真機器用無端ベルトおよびその製法 - Google Patents

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Description

本発明は、電子写真機器用無端ベルトに関するものであり、詳しくはフルカラーLBP(レーザービームプリンター)やフルカラーPPC(プレーンペーパーコピア)等の電子写真技術を採用した電子写真機器において、中間転写ベルトや紙転写搬送ベルト等に用いられる電子写真機器用無端ベルトに関するものである。
近年、フルカラーLBPやフルカラーPPC等の電子写真技術を採用した電子写真機器において、中間転写ベルト等の導電性ベルト(無端ベルト)が多く使用されている。この中間転写ベルトは、感光ドラムに形成したトナー像をベルトに一次転写し、さらにベルト上のトナー像を用紙に二次転写する役割をなすものである。従来、上記導電性ベルトとしては、ポリイミド,ポリカーボネート,ポリフッ化ビニリデン,ポリアミドイミド等の熱可塑性樹脂によるベルトが使用されてきた。最近では、高速、高寿命を実現するため、剛性に優れ、低コスト化できるポリイミドやポリアミドイミドを使用したベルトが主流となっている(例えば、特許文献1,2)。
特開2001−152013号公報 特開2001−354854号公報
しかしながら、上記樹脂を基層としたベルトは、靱性に乏しく、屈曲耐久性が劣るとともに、ベルトをロールに張架した状態で高湿度環境に放置すると、ベルトにしわやクセが発生しやすく、ベルトの変形により画像不具合が生じるという難点もある。
本発明は、このような事情に鑑みなされたもので、高剛性かつ高耐久性(耐屈曲性が良好)で、高湿度環境下におけるしわ等の発生を抑制することができる、電子写真機器用無端ベルトおよびその製法の提供をその目的とする。
上記の目的を達成するため、本発明は、少なくとも基層を備えた電子写真機器用無端ベルトであって、上記基層が、下記の(A)〜(C)を必須成分とするポリアミドイミド樹脂を用いて形成され、上記基層中に下記の(D)が含有されている電子写真機器用無端ベルトを第1の要旨とする。また、本発明は、上記電子写真機器用無端ベルトの製法であって、上記(A)〜(C)を必須成分とするポリアミドイミド樹脂を用いて基層を形成した後、上記(D)を含有する反応液中に上記基層を浸漬して、上記ポリアミドイミド樹脂中に水素結合を生成させる電子写真機器用無端ベルトの製法を第2の要旨とする。
(A)芳香族イソシアネート化合物。
(B)芳香族系多価カルボン酸の無水物。
(C)カルボン酸両末端ポリマーおよびフッ素含有低分子量有機化合物の少なくとも一方。
(D)多価アルコール。
すなわち、本発明者らは、高剛性かつ高耐久性で、高湿度環境下におけるしわ等の発生を抑制することができる電子写真機器用無端ベルトを得るため、基層(ベース層)を中心に鋭意研究を重ねた。その研究の過程で、高湿度環境下においては、ポリアミドイミド樹脂が軟化し、図4に示すように、その極性部であるアミドイミド結合(−CONH−)間に、水分子による水素結合(図中、鎖線で示す)が生成することを突き止めた。電子写真機器の運転中は、ランプ等の熱で水分が除かれるため、多湿にならないが、夏季の夜間冷房切れや熱帯等の高湿度環境下では、上記のようにアミドイミド結合間に水素結合が生じる。この水素結合生成反応は、可逆性があるため、起動後しばらくすると機器のモーター等の熱により水分が除かれるが、機器の駆動停止後、高湿度環境下に再び放置することになると、再び水素結合が生成する。そのため、図6に示すように、電子写真機器の再起動時には、まだ水分が除去されないため、その水分に起因して、無端ベルト11の一部にしわ12が発生し、ベルトの変形による画像不具合が生じることを突き止めた。この問題を解決するため、本発明者らは、上記(A)〜(C)を必須成分とするポリアミドイミド樹脂を用いて基層を作製し、この基層中に多価アルコールを予め含有させておくと、高剛性かつ高耐久性で、しかも高湿度環境下におけるしわ等の発生を抑制することができることを見いだし、本発明に到達した。この理由はつぎのように考えられる。すなわち、基層中に多価アルコールを含有させると、例えば、図1に示すように、隣接するポリアミドイミド樹脂のアミドイミド結合(−CONH−)間の少なくとも一部に、グリセリン(多価アルコール)との反応により水素結合(図中、鎖線で示す)が生成する。この水素結合は、かなりの高温でも安定であるため、高湿度環境下において安定で、かつ、機器駆動時の熱によっても安定であって、グリセリン(多価アルコール)がその熱で揮発することなく基層内に存在している。すなわち、グリセリン(多価アルコール)による水素結合によれば、水の水素結合のような結合の生成,結合の解離が生じないため、しわの発生等を抑制することができ、電子写真機器の起動時においても良好な画像を得ることができる。また、水の存在,不存在によるベルトの周長変化等を防止することができる。
このように、本発明の電子写真機器用無端ベルトは、基層のみからなる単層、もしくは基層を含む2層以上の層からなる複層の電子写真機器用無端ベルトにおいて、その少なくとも基層が、上記(A)〜(C)を必須成分とするポリアミドイミド樹脂を用いて形成されているため、高剛性かつ高耐久性に優れている。しかも、上記基層中に多価アルコールが含有されているため、高湿度環境下におけるしわ等の発生を抑制することができ、良好な画像を得ることができる。また、水分によるベルトの周長変化やしわやクセがなくなり、特別な制御機構をマシン側に設けることなく、簡易センサーによってベルトの位置情報を正確に読み取ることができる。
また、上記多価アルコールが、グリセリン、エチレングリコールおよびトリメチロールプロパンからなる群から選ばれた少なくとも一つであると、高湿度環境下における不揮発性が向上し、ベルトの信頼性が一層向上する。
そして、上記基層中の上記多価アルコールの含有率が1.7重量%以上であると、高湿度環境下におけるしわの発生等がさらに抑制される。
また、上記基層の外周面に、フッ素樹脂を含有する表層を形成すると、ベルト表面の撥水性が高くなるため、ベルト内への水分の浸入をさらに抑制することができる。
そして、上記(A)〜(C)を必須成分とするポリアミドイミド樹脂を用いて基層を形成した後、上記(D)を含有する反応液中に上記基層を浸漬して、上記ポリアミドイミド樹脂中に水素結合を生成させることにより、高剛性かつ高耐久性で、しかも高湿度環境下におけるしわ等の発生を抑制することができ、良好な画像を得ることができる電子写真機器用無端ベルトを、効率よく製造することができる。
つぎに、本発明の実施の形態について説明する。
本発明の電子写真機器用無端ベルトとしては、例えば、基層のみからなる単層構造、基層の外周面に直接もしくは他の層を介して表層を形成した多層構造等があげられる。
本発明においては,上記基層が、下記の(A)〜(C)を必須成分とするポリアミドイミド樹脂を用いて形成され、上記基層中に下記の(D)が含有されているのであって、これが最大の特徴である。
(A)芳香族イソシアネート化合物。
(B)芳香族系多価カルボン酸の無水物。
(C)カルボン酸両末端ポリマーおよびフッ素含有低分子量有機化合物の少なくとも一方。
(D)多価アルコール。
上記ポリアミドイミド(PAI)樹脂の形成に用いる、上記芳香族系イソシアネート化合物(A成分)としては、例えば、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、トルエンジイソシアネート(TDI)、トリジンジイソシアネート(TODI)、キシリレンジイソシアネート(XDI)、リジンジイソシアネート(LDI)、ナフタレンジイソシアネート(NDI)、パラフェニレンジイソシアネート(PPDI)、テトラメチルキシレンジイソシアネート(TMXDI)等があげられる。これらは単独でもしくは二種以上併せて用いられる。これらのなかでも、反応性、コスト、溶解性の点で、MDI、TODIが好適に用いられる。
また、上記芳香族系多価カルボン酸の無水物(B成分)とは、分子中に芳香族環を有し、上記芳香族系イソシアネート化合物(A成分)と縮合反応するものをいい、例えば、芳香族系多価カルボン酸無水物(B1)、芳香族系多価カルボン酸二無水物(B2)等があげられる。これらは単独でもしくは二種以上併せて用いられる。なお、本発明においては、上記芳香族系多価カルボン酸の無水物(B成分)とともに、芳香族系多価カルボン酸を併用しても差し支えない。
上記芳香族系多価カルボン酸無水物(B1)としては、例えば、トリメリット酸無水物(無水トリメリット酸)、ナフタレン−1,2,4−トリカルボン酸無水物等があげられる。これらは単独でもしくは二種以上併せて用いられる。これらのなかでも、反応性、コスト、溶解性等の点から、トリメリット酸無水物(無水トリメリット酸)が好適に用いられる。
また、上記芳香族系多価カルボン酸二無水物(B2)としては、例えば、ベンゼン−1,2,4,5−テトラカルボン酸二無水物(ピロメリット酸二無水物)、ベンゾフェノン−3,3′,4,4′−テトラカルボン酸二無水物、ジフェニルエーテル−3,3′,4,4′−テトラカルボン酸二無水物、ベンゼン−1,2,3,4−テトラカルボン酸二無水物、ビフェニル−3,3′,4,4′−テトラカルボン酸二無水物、ビフェニル−2,2′,3,3′−テトラカルボン酸二無水物、ナフタレン−2,3,6,7−テトラカルボン酸二無水物、ナフタレン−1,2,4,5−テトラカルボン酸二無水物、ナフタレン−1,4,5,8−テトラカルボン酸二無水物、デカヒドロナフタレン−1,4,5,8−テトラカルボン酸二無水物、4,8−ジメチル−1,2,3,5,6,7−ヘキサヒドロナフタレン−1,2,5,6−テトラカルボン酸二無水物、2,6−ジクロロナフタレン−1,4,5,8−テトラカルボン酸二無水物、2,7−ジクロロナフタレン−1,4,5,8−テトラカルボン酸二無水物、2,3,6,7−テトラクロロナフタレン−1,4,5,8−テトラカルボン酸二無水物、フェナントレン−1,3,9,10−テトラカルボン酸二無水物、ペリレン−3,4,9,10−テトラカルボン酸二無水物、ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)メタン二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)メタン二無水物、1,1−ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)エタン二無水物、1,1−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)エタン二無水物、2,2−ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)プロパン二無水物、2,3−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)プロパン二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)スルホン二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)エーテル二無水物、エチレングリコールビス(アンヒドロトリメリテート)、プロピレングリコールビス(アンヒドロトリメリテート)等があげられる。これらは単独でもしくは二種以上併せて用いられる。これらのなかでも、反応性、コスト、溶解性等の点から、エチレングリコールビス(アンヒドロトリメリテート)が好適に用いられる。
本発明における芳香族系多価カルボン酸の無水物(B成分)としては、上記芳香族系多価カルボン酸無水物(B1)と、芳香族系多価カルボン酸二無水物(B2)とを併用して用いることが好ましい。このように、B1とB2とを併用すると、PAI樹脂中のイミド基の比率が高くなるため、吸水性が低下し、無端ベルトの曲がり癖を改善することができるようになる。
上記B1と、B2とのモル混合比は、B1/B2=90/10〜50/50の範囲が好ましく、特に好ましくはB1/B2=80/20〜60/40の範囲である。このような割合でB1とB2とを併用すると、耐屈曲性を悪化させずに、曲がり癖を改善することができるため好ましい。
ここで、上記芳香族イソシアネート化合物(A成分)のイソシアネート基の総モル数(a)と、芳香族系多価カルボン酸の無水物(B成分)の酸無水物基とカルボキシル基との総モル数(b)とのモル混合比は、(a)/(b)=90/100〜130/100の範囲が好ましく、特に好ましくは(a)/(b)=100/100〜120/100の範囲である。すなわち、(a)/(b)の値が、上限または下限の範囲から外れると、PAI樹脂の分子量を高くすることが困難となり、耐久性が悪化する傾向がみられるからである。
つぎに、本発明においては、上記A成分およびB成分とともに、カルボン酸両末端ポリマー(C1)およびフッ素含有低分子量有機化合物(C2)の少なくとも一方(片方または双方)(C成分)が用いられる。
上記カルボン酸両末端ポリマー(C1)は、ポリマーの末端にカルボン酸をそれぞれ1個有するものであればよく、例えば、カルボン酸両末端ポリブタジエン、カルボン酸両末端水素添加ポリブタジエン、カルボン酸両末端ポリエステル、カルボン酸両末端ポリアミド、カルボン酸両末端ポリアクリロニトリル−ブタジエン共重合体等があげられる。これらは単独でもしくは二種以上併せて用いられる。
上記ポリマーの両末端にカルボン酸を導入するために用いるカルボン酸としては、例えば、脂肪族カルボン酸、芳香族カルボン酸等があげられる。これらは単独でもしくは二種以上併せて用いられる。
上記脂肪族カルボン酸としては、例えば、アジピン酸、セバシン酸、スベリン酸、シュウ酸、コハク酸、コルク酸、アゼライン酸、ドデカンジカルボン酸、ウンデカンジカルボン酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸等があげられる。また、上記芳香族カルボン酸としては、例えば、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、クロルフタル酸、ニトロフタル酸等があげられる。
上記カルボン酸両末端ポリマー(C1)は、通常の製法に従って合成したポリブタジエン、水素添加ポリブタジエン、ポリエステル、ポリアミド等のポリマーの両末端に、上記のようなカルボン酸を導入することにより得ることができる。なお、上記ポリブタジエン、水素添加ポリブタジエン、ポリエステル、ポリアミド等のポリマーの合成法は、特に限定するものではない。例えば、ポリエステルやポリアミドは、第4版 実験化学講座28 高分子合成(日本化学会編、1992年、丸善株式会社発行)の第208頁〜第231頁および第252頁〜第287頁に記載の方法に準じて作製することができる。
上記カルボン酸両末端ポリマー(C1)のうち、カルボン酸両末端ポリエステルは、例えば、つぎのようにして作製することができる。すなわち、加熱装置、攪拌装置、還流装置、水分離器、蒸留塔および温度計を備えた反応槽に、アジピン酸やセバシン酸等のジカルボン酸と、メチルペンタンジオール,ノナンジオール,メチルオクタンジオール等のジオールとを仕込み、所定温度(例えば、220℃)まで所定時間(例えば、1時間)かけて昇温する。さらに所定温度(例えば、220℃)で縮重合反応を続けた後、所定温度(例えば、室温)まで冷却することにより、所望のカルボン酸両末端ポリエステルを得ることができる。
なお、カルボン酸両末端ポリブタジエン等のカルボン酸両末端ポリマー(C1)も、上記製法に準じて作製することができる。
上記カルボン酸両末端ポリマー(C1)の酸価は、15〜150mgKOH/gの範囲が好ましく、特に好ましくは45〜110mgKOH/gの範囲である。
また、上記カルボン酸両末端ポリマー(C1)の数平均分子量(Mn)は、750〜7500の範囲が好ましく、特に好ましくは1000〜2500の範囲である。
上記カルボン酸両末端ポリマー(C1)の含有量は、上記A成分〜C成分の合計量全体の5〜50重量%の範囲が好ましく、特に好ましくは10〜30重量%の範囲である。すなわち、カルボン酸両末端ポリマー(C1)の含有量が5重量%未満であると、耐久性が悪くなる傾向がみられ、逆に50重量%を超えると、クリープ率が悪化する傾向がみられるからである。
ここで、上記芳香族イソシアネート化合物(A成分)のイソシアネート基の総モル数(a)と、芳香族系多価カルボン酸の無水物(B成分)の酸無水物基とカルボキシル基との総モル数(b)、およびカルボン酸両末端ポリマー(C1)のカルボキシル基の総モル数(c)の合計総モル数〔(b)+(c)〕とのモル混合比は、(a)/〔(b)+(c)〕=90/100〜130/100の範囲が好ましく、特に好ましくは(a)/〔(b)+(c)〕=100/100〜120/100の範囲である。すなわち、(a)/〔(b)+(c)〕の値が、上限または下限の範囲から外れると、PAI樹脂の分子量を高くすることが困難となり、耐久性が悪化する傾向がみられるからである。
本発明において、フッ素含有低分子量有機化合物(C2)とは、通常、数平均分子量(Mn)が5000以下の化合物をいい、好ましくは数平均分子量(Mn)が100〜4800の範囲の化合物、特に好ましくは数平均分子量(Mn)が400〜1500の範囲の化合物をいう。すなわち、上記フッ素含有低分子量有機化合物(C2)の数平均分子量(Mn)が5000を超えると、ポリアミドイミド樹脂本来の耐屈曲性が低下する傾向がみられるからである。したがって、ポリビニリデンクロライド(PVDF),四フッ化エチレン(PTFE),ポリクロロトリフルオロエチレン(PCTFE),ポリビニルクロライド(PVF)等の数平均分子量(Mn)が数万レベルであるフッ素系樹脂は、本発明で言うフッ素含有低分子量有機化合物(C2)には含まれない。なお、上記数平均分子量(Mn)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフ(GPC)法により測定することができる。
上記フッ素含有低分子量有機化合物(C2)としては、上記芳香族系イソシアネート化合物(A成分)のイソシアネート基に対する反応基を有するものが好ましく、例えば、下記の一般式(1)〜(4)で表されるフッ素含有低分子量有機化合物等があげられる。これらは単独でもしくは二種以上併せて用いられる。なお、上記反応基としては、例えば、水酸基、エポキシ基、トリアルコキシシリル基等があげられる。
Figure 0005268403
上記一般式(1)〜(4)において、Rfで表されるフッ素化アルキル基は、炭素数1〜16のものが好ましく、特に好ましくは炭素数1〜8のものである。また、上記一般式(3)において、Rで表されるアルキル基は、炭素数1〜8のものが好ましく、特に好ましくは炭素数1〜3のものである。
上記一般式(1)で表されるフッ素含有低分子量有機化合物としては、例えば、下記の構造式(1a)で表されるトリフルオロエタノール、下記の構造式(1b)で表されるペンタデカフルオロオクタノール、下記の構造式(1c)で表される1H,1H,5H−オクタフルオロペンタノール、下記の構造式(1d)で表される2,2−ビス(トリフルオロメチル)プロパノール、下記の構造式(1e)で表される2,2,3,3,3−ペンタフルオロプロパノール、下記の構造式(1f)で表される1H,1H,9H−ヘキサデカフルオロノナノール、下記の構造式(1g)で表される3−パーフルオロオクチル−1,2−エポキシプロパン等があげられる。
Figure 0005268403
上記一般式(2)で表されるフッ素含有低分子量有機化合物としては、例えば、下記の構造式(2a)で表される3−(2−パーフルオロオクチルエトキシ)−1,2−ジヒドロキシプロパン、下記の構造式(2b)で表される3−(2−パーフルオロヘキシルエトキシ)−1,2−ジヒドロキシプロパン、下記の構造式(2c)で表される3−(2−パーフルオロヘキシルエトキシ)−1,2−エポキシプロパン等があげられる。
Figure 0005268403
上記一般式(3)で表されるフッ素含有低分子量有機化合物としては、例えば、下記の構造式(3a)で表されるN−プロピル−N−(2,3−ジヒドロキシプロピル)パーフルオロオクタンスルホンアミド、下記の構造式(3b)で表されるN−プロピル−N−(2,3−エポキシプロピル)パーフルオロオクタンスルホンアミド、下記の構造式(3c)で表されるN−〔3−(トリメトキシシリル)プロピル〕−N−プロピルパーフルオロオクタンスルホンアミド、下記の構造式(3d)で表されるN−〔3−(トリメトキシシリル)プロピル〕−N−エチルパーフルオロオクタンスルホンアミド等があげられる。
Figure 0005268403
上記一般式(4)で表されるフッ素含有低分子量有機化合物の具体例としては、下記の構造式(4a)で表されるフッ素系界面活性剤(OMNOVA社製、PF636)、下記の構造式(4b)で表されるフッ素系界面活性剤(OMNOVA社製、PF6320)、下記の構造式(4c)で表されるフッ素系界面活性剤(OMNOVA社製、PF656)、下記の構造式(4d)で表されるフッ素系界面活性剤(OMNOVA社製、PF6520)等があげられる。
Figure 0005268403
なお、上記一般式(4)で表されるフッ素含有低分子量有機化合物以外のフッ素系界面活性剤を使用することも可能であり、例えば、OMNOVA社製のPF651,PF652,PF151N,PFAT−1001,PFAT−1045,PFAT−1084,PFAT−1085,PFAT−1089等があげられる。
上記フッ素含有低分子量有機化合物(C2)の含有量は、上記A成分〜C成分の合計量全体の1〜20重量%の範囲が好ましく、特に好ましくは2〜15重量%の範囲である。すなわち、フッ素含有低分子量有機化合物(C2)の含有量が少なすぎると、ベルトを湿熱環境に放置した際のしわの発生を抑制する効果が小さくなる傾向がみられ、逆に多すぎると、ベルトの耐屈曲性が低下する傾向がみられるからである。
本発明においては、上記A〜C成分を必須成分とするポリアミドイミド樹脂を用いて形成された基層中に、多価アルコール(D成分)が含有されている。ここで、多価アルコール(D成分)が含有されているとは、例えば、上記A〜C成分を必須成分とするポリアミドイミド樹脂を用いて基層を形成した後、上記多価アルコール(D成分)を含有する反応液中に上記基層を浸漬することにより、上記基層中に多価アルコール(D成分)が含有されていること、もしくは上記A〜C成分とともに多価アルコール(D成分)を用いて基層を形成することにより、基層中に多価アルコール(D成分)が含有されていること等をいう。
上記多価アルコール(D成分)としては、電子写真機器の通常の使用環境(10℃×20%〜35℃×80%)において揮発せず、しかも高湿度環境下(例えば、40℃×80%〜50℃×95%)に放置した場合でも、揮発しないものが好ましく、例えば、グリセリン、エチレングリコール、トリメチロールプロパン(TMP)、プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール(BG)、ジプロピレングリコール(DPG)、ネオペンチルグリコール等があげられる。これらは単独でもしくは二種以上併せて用いられる。これらのなかでも、不揮発性の点で、グリセリン、エチレングリコール、トリメチロールプロパンが好ましい。
上記多価アルコール(D成分)は、分子量が小さく、分子内に水酸基を多く含む方が反応性が高いため好ましい。上記多価アルコール(D成分)の分子量は、50〜150の範囲が好ましく、特に好ましくは60〜100の範囲である。
上記基層中における上記多価アルコール(D成分)の含有率は、1.7重量%以上が好ましく、特に好ましくは2.5〜3重量%の範囲である。すなわち、上記多価アルコール(D成分)の含有率が少なすぎると、しわを防ぐ効果が小さくなる傾向がみられるからである。
ここで、上記多価アルコール(D成分)の含有率は、後述するように、例えば、ガスクロマトグラフ質量分析にて、反応液(多価アルコール)の定量を行い、基層の重量から算出することができる。
つぎに、上記PAI樹脂は、例えば、つぎのようにして調製することができる。すなわち、撹拌機、窒素導入管、温度計、冷却管を備えた反応容器を準備し、上記芳香族イソシアネート化合物(A成分)と、無水トリメリット酸等の芳香族系多価カルボン酸の無水物(B成分)と、カルボン酸両末端ポリマーおよびフッ素含有低分子量有機化合物の少なくとも一方(C成分)とを所定量配合し、N−メチル−2−ピロリドン(NMP),N,N−ジメチルホルムアミド(DMF),N,N−ジメチルアセトアミド(DMAC),γ−ブチロラクトン等の極性溶剤を仕込み、窒素気流下、撹拌しながら所定時間(好ましくは、1〜3時間)かけて所定温度(好ましくは、130〜150℃)まで昇温する。つぎに、所定温度(好ましくは、130〜150℃)で所定時間(好ましくは、約3〜5時間)反応させた後、反応を停止することにより、PAI樹脂を調製することができる。
このようにして得られるPAI樹脂は、数平均分子量(Mn)が5,000〜100,000の範囲が好ましく、特に好ましくはMnが10,000〜50,000の範囲である。すなわち、PAI樹脂のMnが小さすぎると、引き裂き強度が低くなり、耐久性が悪化し、逆にPAI樹脂のMnが大きすぎると、溶液粘度が高くなり加工性が悪化する傾向がみられるからである。なお、数平均分子量(Mn)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフ(GPC)法により測定することができる。
なお、上記基層の形成に用いる材料(基層用材料)としては、上記PAI樹脂とともに、導電性充填剤,リン含有ポリエスル系樹脂,ポリエーテルスルホン(PES)樹脂等を用いても差し支えない。また、上記基層用材料には、上記各成分材料とともに、DMF,DMAC,トルエン,アセトン,NMP等の有機溶剤や、炭酸カルシウム等の通常の充填剤を、必要に応じて含有させることも可能である。
上記導電性充填剤としては、例えば、カーボンブラック,グラファイト等の導電性粉末、アルミニウム粉末,ステンレス粉末等の金属粉末、導電性酸化亜鉛(c−ZnO),導電性酸化チタン(c−TiO2 ),導電性酸化鉄(c−Fe3 4 ),導電性酸化錫(c−SnO2 )等の導電性金属酸化物、第四級アンモニウム塩,リン酸エステル,スルホン酸塩,脂肪族多価アルコール,脂肪族アルコールサルフェート塩のようなイオン性導電剤等があげられる。これらは単独でもしくは二種以上併せて用いられる。
また、上記リン含有ポリエスル系樹脂としては、リン含有量がリン含有ポリエスル系樹脂全体の3〜20重量%の範囲にあるものが好ましく、特に好ましくはリン含有量が5〜15重量%の範囲にあるものである。上記リン含有量がこのような範囲にあると、難燃性が向上するため好ましい。
上記リン含有ポリエステル系樹脂の配合量は、ポリアミドイミド樹脂100重量部(以下「部」と略す)に対して、1〜30部の範囲が好ましく、特に好ましくは2〜15部の範囲である。
つぎに、上記ポリエーテルスルホン(PES)樹脂としては、芳香族環が、スルホニル基(−SO2 −)またはエーテル基(−O−)を介して結合された構造単位を繰り返し単位とするものであれば特に限定はない。上記PES樹脂は、このような構造単位を繰り返し単位として高分子化した固形ポリマーであって、有機溶媒に可溶であり、また熱によって可塑化し、押出成形等の各種の成形法によってフィルム状に成形可能な高分子量体である。この熱による可塑化温度(軟化温度)は、重合度(n)により若干の差はあるものの、通常、200〜270℃程度の範囲にある。
上記PES樹脂の構造単位としては、例えば、下記の化学式(5)〜(7)で表される構造単位が好適に用いられる。上記PES樹脂としては、上記化学式(5)〜(7)で表される構造単位の1種を単独で繰り返し単位とするものに限定されず、上記化学式(5)〜(7)で表される構造単位の二種以上を繰り返し単位とするものであっても差し支えない。
Figure 0005268403
Figure 0005268403
Figure 0005268403
上記化学式(5)で表される構造単位を繰り返し単位とするPES樹脂は、例えば、4,4′−ジヒドロキシジフェニルスルホンと、4,4′−ジクロロジフェニルスルホンとの当モルを、有機極性溶媒中で混合し、通常、150〜350℃の加熱下で、縮合重合することによって合成することができる。
また、上記化学式(6)で表される構造単位を繰り返し単位とするPES樹脂は、4,4′−ジクロロフェニルスルホンと、1,4−ジヒドロキシフェニルとの当モルを、有機極性溶媒中で混合し、通常、150〜350℃の加熱下で、縮合重合することによって合成することができる。
さらに、上記化学式(7)で表される構造単位を繰り返し単位とするPES樹脂は、4,4′−ジクロロフェニルスルホンと、4,4−ジヒドロキシジフェニルとの当モルを、有機極性溶媒中で混合し、通常、150〜350℃の加熱下で、縮合重合することによって合成することができる。
上記有機極性溶媒としては、出発原料および合成したPES樹脂の双方を溶解可能であるものが好ましく、例えば、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、N,N−ジメチルアセトアミド(DMAC)、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)等があげられる。
なお、上記化学式(7)で表される構造単位は、2つのフェニル基が直結されているものに限定されず、アルキレン基等を介して、2つのフェニル基が結合されていても差し支えない。
上記PES樹脂の数平均分子量(Mn)は、10,000〜500,000の範囲が好ましく、特に好ましくは20,000〜400,000の範囲である。
上記PES樹脂の配合量は、上記ポリアミドイミド樹脂100部に対して、1〜60部の範囲が好ましく、特に好ましくは10〜40部の範囲である。
ここで、上記基層用材料は、例えば、上記ポリアミドイミド樹脂と、必要に応じて導電性充填剤,リン含有ポリエスル系樹脂,PES樹脂,充填剤,有機溶剤とを適宜に配合し、撹拌羽根で混合した後、リングミル,ボールミル,サンドミル等を用いて分散させることにより調製することができる。
本発明の電子写真機器用無端ベルトは、少なくとも基層を備えた構造であればよく、例えば、基層のみからなる単層構造、基層の外周面に表層を直接形成した2層構造、基層と表層との間に熱可塑性樹脂層もしくはゴム弾性層を介在させた3層構造、基層と表層との間に、熱可塑性樹脂層およびゴム弾性層の双方を介在させた4層構造等があげられる。ただし、これらの場合において、基層は、前記A〜D成分を用いて形成されている必要がある。
上記表層の形成に用いる材料(表層用材料)としては、例えば、フッ素系樹脂、シリコーン系樹脂、ウレタン系樹脂、アクリル系樹脂、ポリアミド系樹脂等があげられる。これらは単独でもしくは二種以上併せて用いられる。これらのなかでも、ベルト内への水分の浸入を抑制できる点で、フッ素系樹脂が好ましい。
上記表層用材料は、例えば、フッ素系樹脂等と、DMF,トルエン,アセトン等の有機溶剤とを適宜に配合し、撹拌羽根で混合することにより調製することができる。
この場合、上記基層と表層との間に介在させる熱可塑性樹脂層用材料としては、熱可塑性樹脂とともに、必要に応じて、メチルエチルケトン(MEK),トルエン等の溶剤等が用いられる。なお、この熱可塑性樹脂層用材料中にも、先に述べたような、導電性充填剤を配合しても差し支えない。さらに、上記表層材料には、樹脂架橋を施す材料を配合しても差し支えない。上記樹脂架橋を施す材料としては、例えば、イソシアネート樹脂、アミノ樹脂、フェノール樹脂、キシレン樹脂、感光体モノマーまたはポリマーに光重合剤を混合した紫外線硬化型材料等があげられる。
また、上記熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリフッ化ビニリデン(PVDF),テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA),エチレン−テトラフルオロエチレン共重合体(ETFE)等のフッ素系樹脂、ポリエチレン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、アクリル系樹脂、ポリカーボネート(PC)系樹脂、ポリアミド系樹脂、EVA(エチレン−酢酸ビニル共重合体)系樹脂、EEA(エチレン−アクリル酸エチル共重合体)系樹脂等があげられる。これらは単独でもしくは二種以上併せて用いられる。これらのなかでも、難燃性に優れる点で、PVDF等のフッ素系樹脂を用いることが好ましい。
また、上記基層と表層との間に介在させるゴム弾性層用材料としては、ゴム材および加硫剤とともに、必要に応じて、加硫促進剤、溶剤、加工助剤、老化防止剤、難燃材等が用いられる。なお、このゴム弾性層用材料中にも、先に述べたような、導電性充填剤を配合しても差し支えない。
上記ゴム材としては、難燃性の観点から、塩素化ポリエチレンゴム(CPE)、クロロプレンゴム(CR)、アクリロニトリル−ブタジエンゴム(NBR)、シリコーンゴム等が用いられる。これらのなかで、電子写真機器用無端ベルトに要求される電気特性、弾力性、耐久性に合わせて最適材料が選定される。
つぎに、本発明の電子写真機器用無端ベルトの製法について説明する。例えば、基層のみからなる単層構造の無端ベルトは、つぎのようにして作製することができる。すなわち、上記と同様にしてPAI樹脂を含有する基層用材料を調製し、これを金型(円筒形基体)の表面にスプレーコーティングする。つぎに、これを通常、150〜300℃で3〜6時間乾燥した後、基層と円筒形基体との間にエアーを吹き付けることにより、円筒形基体を抜き取り、基層を作製する。この基層を、前記多価アルコール(D成分)を含有する反応液中に浸漬(ディッピング)し、水素結合生成反応を行う。これにより、ポリアミドイミド樹脂の隣接するアミドイミド結合の間に、多価アルコールが結合するようになる(図1参照)。その後、この基層を上記反応液(多価アルコール)から取り出し、反応液を拭き取った後、基層の表裏面をアセトン等の溶剤で洗浄する。このようにして、基層のみからなる単層構造の無端ベルトを作製することができる。
上記水素結合生成反応は、反応時間が長く、反応温度が高い方が反応性が高いため好ましい。上記反応時間は、1時間以上が好ましく、特に好ましくは3時間以上であり、反応温度は、40℃以上が好ましく、特に好ましくは60〜100℃の範囲である。
なお、上記A〜C成分とともに、予め多価アルコール(D成分)を添加した基層用材料を用いて、前記と同様にして基層を形成し、基層のみからなる単層構造の無端ベルトを作製しても差し支えない。
また、上記基層は、上記製法以外に、押出成形法、インフレーション法、ブロー成形法、ディッピング法、遠心成形法等により形成しても差し支えない。
また、上記基層の外周面に直接表層を形成してなる2層構造の無端ベルトは、例えば、上記のようにして作製した基層の外周面に、前記と同様にして調製した表層用材料を、ディッピング法等に塗工し乾燥することにより作製することができる。なお、上記表層の形成方法は、上記ディッピング法に限定されるものではなく、スプレーコーティング等により形成しても差し支えない。
本発明の電子写真機器用無端ベルトの各層の厚みは、ベルトの用途に応じて適宜に設定されるが、基層の厚みは、通常、30〜300μmの範囲であり、好ましくは50〜200μmの範囲である。また、表層の厚みは、0.1〜10μmの範囲が好ましく、特に好ましくは0.5〜5μmの範囲である。また、本発明の電子写真機器用無端ベルトは、内周長が90〜1500mmで、幅が100〜500mm程度のものが好ましい。すなわち、上記寸法の範囲に設定すると、電子写真複写機等に組み込んで使用するのに適した大きさとなるからである。
本発明の電子写真機器用無端ベルトは、フルカラーLBPやフルカラーPPC等の電子写真技術を採用した電子写真機器において、トナー像の転写用,紙転写搬送用,感光体基体用等の用途に好適に用いられるが、これに限定するものではなく、例えば、フルカラーではない、単色の電子写真複写機の転写ベルト等にも使用することができる。
つぎに、実施例について比較例と併せて説明する。
まず、実施例および比較例に先立ち、下記に示す材料を準備した。
〔MDI(A成分)〕
日本ポリウレタン社製、ミリオネートMT(Mn:250.26)
〔TODI(A成分)〕
日本曹達社製、TODI/R203(Mn:264.29)
〔芳香族系多価カルボン酸無水物(B成分)〕
無水トリメリット酸(Mn:192.12)
〔カルボン酸両末端ポリマー(C成分)〕
3−メチル−1,5−ペンタンジオールとセバシン酸とを縮合して得られるカルボン酸両末端ポリエステル(酸価:56mgKOH/g、Mn:2000)
〔フッ素含有低分子量有機化合物a(C成分)〕
前記構造式(4a)で表されるフッ素系界面活性剤(OMNOVA社製、PF636、Mn:1122、OH価:100mgKOH/g)
〔フッ素含有低分子量有機化合物b(C成分)〕
前記構造式(4b)で表されるフッ素系界面活性剤(OMNOVA社製、PF6320、Mn:3698、OH価:33mgKOH/g)
〔多価アルコールa(D成分)〕
グリセリン(分子量:92、沸点:290℃、OH価:3mgKOH/g)
〔多価アルコールb(D成分)〕
エチレングリコール(分子量:62、沸点:197℃、OH価:2mgKOH/g)
〔多価アルコールc(D成分)〕
トリメチロールプロパン(分子量:134、沸点:292℃、OH価:3mgKOH/g)
〔カーボンブラック〕
昭和キャボット社製、ショウブラックN220
〔実施例1〕
(基層の作製)
撹拌機,窒素導入管,温度計および冷却管を備えた反応容器に、後記の表1に示す*印の付いた材料を同表に示す割合で配合し、窒素気流下、撹拌しながら1時間かけて130℃まで昇温し、そのまま130℃で約5時間反応させた後反応を停止し、PAI−NMP溶液(固形分濃度:24重量%)を調製した。つぎに、このPAI−NMP溶液に、後記の表1に示す*印の付いていない材料(カーボンブラック)を同表に示す割合で配合し、撹拌羽根で混合した後、ボールミル分散させて基層用材料を調製した。つぎに、金型(円筒形基体)を準備し、この表面に上記基層用材料をスプレーコーティングして、金型の表面に基層を形成し、250℃で2時間加熱処理をした。つぎに、基層と円筒形基体との間にエアーを吹き付けることにより、円筒形基体を抜き取り、基層を作製した。
(反応工程)
下記の表1に示すように、反応液(多価アルコール)中に、上記基層をディッピングし、水素生成反応を行った(反応時間:3時間、反応温度:80℃)。つぎに、この基層を上記反応液(多価アルコール)から取り出し、反応液を拭き取った後、基層の表裏面をアセトンで洗浄した。このようにして、基層(厚み:80μm)のみからなる単層構造の無端ベルトを作製した。
〔実施例2〜12〕
(基層の作製)
後記の表1および表2に示す材料を同表に示す割合で配合する以外は、実施例1と同様にして、基層用材料を調製した。そして、この基層用材料を用いて、実施例1に準じて、基層を作製した。
(反応工程)
後記の表1および表2に示す反応液(多価アルコール)、反応条件(反応時間、反応温度)に変更する以外は、実施例1に準じて、反応を行った。これにより、基層(厚み:80μm)のみからなる単層構造の無端ベルトを作製した。
〔比較例1〜3〕
水素生成反応を行わない以外は、実施例1に準じて、無端ベルトを作製した。すなわち、後記の表3に示す材料を同表に示す割合で配合する以外は、実施例1と同様にして、基層用材料を調製した。つぎに、金型(円筒形基体)を準備し、この表面に上記基層用材料をスプレーコーティングして、金型の表面に基層を形成し、250℃で2時間加熱処理をした。つぎに、基層と円筒形基体との間にエアーを吹き付けることにより、円筒形基体を抜き取り、基層(厚み:80μm)のみからなる単層構造の無端ベルトを作製した。
Figure 0005268403
Figure 0005268403
Figure 0005268403
このようにして得られた実施例および比較例の無端ベルトを用い、下記の基準に従って各特性の評価を行った。これらの結果を上記の表1〜表3に併せて示した。
〔多価アルコール含有率〕
ガスクロマトグラフ質量分析にて、試料(無端ベルトの基層)に含有される反応液(多価アルコール)の定量を行い、試料(無端ベルトの基層)の重量から多価アルコール含有率(重量%)を算出した。
〔開き角度〕
図2に示すように、無端ベルトを25mm×150mmの大きさに切断して、短冊状のテストピース20を作製した。このテストピース20を、直径13mmの金属製パイプ21に巻き付けた後、テストピース20の端部同士を重ね合わせ、ここに0.5kgのオモリ(図示せず)をかけて吊るし、50℃×95%RHの環境下、24時間放置した。つぎに、オモリを外し、図3に示すように、重ね合わせたテストピース20の両端を開放した後、テストピース20の円弧状部分を中心に、これを挟む左右のテストピース20の表面を上方に延長させたと仮想し、その左右仮想延長部23で作った角度θを、開き角度θとして測定した。この開き角度θが180°に近い方(好ましくは、90°以上)が、曲がり癖(カール癖)が少ないことを示している。
〔しわ評価〕
図5に示すように、得られた無端ベルト1を、金属製パイプ2(外径35mm),金属製パイプ3(外径19mm),金属製パイプ3(外径19mm)に巻き付けた後、8kg重(片側4kg重)のオモリ(図示せず)を吊るし、45℃×90%の環境下で10日間放置した。その後、無端ベルトの表面を目視で観察した。評価は、しわがないものを○、軽微なうねりがあるが実用上問題ないものを△、しわがあるものを×とした。
〔画像評価〕
図5に示すように、得られた無端ベルト1を、金属製パイプ2(外径35mm),金属製パイプ3(外径19mm),金属製パイプ3(外径19mm)に巻き付けた後、8kg重(片側4kg重)のオモリ(図示せず)を吊るし、45℃×90%の環境下で10日間放置した。その後、無端ベルトを市販のフルカラー電子写真複写機(リコー社製、imagio MPC2500) に組み込み、画出し評価を行った。評価は、2色グリーンべた画像(イエロー・シアンのみ)に異常がないものを○、しわ跡等の異常があるものを×とした。
上記表の結果から、実施例品は、多価アルコールを含有しているため、開き角度が大きく、しわ評価および画像評価も良好であった。
これに対し、比較例品は、多価アルコールを含有していないため、開き角度が小さく、しわ評価および画像評価がいずれも劣っていた。
本発明の電子写真機器用無端ベルトは、フルカラーLBPやフルカラーPPC等の電子写真技術を採用した電子写真機器において、中間転写ベルトや紙転写搬送ベルト等に好適に用いられる。
本発明におけるポリアミドイミド樹脂中の多価アルコールの結合状態を示す模式図である。 電子写真機器用無端ベルトの開き角度の測定方法を示す説明図である。 測定する開き角度を示す説明図である。 従来例におけるポリアミドイミド樹脂中の水素結合を示す模式図である。 しわ評価および画像評価を示す説明図である。 従来の電子写真機器用無端ベルトの一例を示す模式図である。
符号の説明
1 無端ベルト
2 金属製パイプ(外径35mm)
3 金属製パイプ(外径19mm)

Claims (5)

  1. 少なくとも基層を備えた電子写真機器用無端ベルトであって、上記基層が、下記の(A)〜(C)を必須成分とするポリアミドイミド樹脂を用いて形成され、上記基層中に下記の(D)が含有されていることを特徴とする電子写真機器用無端ベルト。
    (A)芳香族イソシアネート化合物。
    (B)芳香族系多価カルボン酸の無水物。
    (C)カルボン酸両末端ポリマーおよびフッ素含有低分子量有機化合物の少なくとも一方。
    (D)多価アルコール。
  2. 上記(D)の多価アルコールが、グリセリン、エチレングリコールおよびトリメチロールプロパンからなる群から選ばれた少なくとも一つである請求項1記載の電子写真機器用無端ベルト。
  3. 上記基層中の上記(D)の含有率が1.7重量%以上である請求項1または2記載の電子写真機器用無端ベルト。
  4. 上記基層の外周面に直接もしくは他の層を介して表層が形成され、上記表層がフッ素樹脂を含有する請求項1〜3のいずれか一項に記載の電子写真機器用無端ベルト。
  5. 請求項1〜4のいずれか一項に記載の電子写真機器用無端ベルトの製法であって、上記(A)〜(C)を必須成分とするポリアミドイミド樹脂を用いて基層を形成した後、上記(D)を含有する反応液中に上記基層を浸漬して、上記ポリアミドイミド樹脂中に水素結合を生成させることを特徴とする電子写真機器用無端ベルトの製法。
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