JP4054540B2 - 電動リール - Google Patents
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- H02P8/00—Arrangements for controlling dynamo-electric motors of the kind having motors rotating step by step
- H02P8/14—Arrangements for controlling speed or speed and torque
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、釣り用リール、特に、モータによりスプールを駆動する電動リールに関する。
【0002】
【従来の技術】
一般に、巻き上げ時のスプールの回転をモータで行う電動リールは、たとえば、100m以上の水深を回遊する魚を船の上から釣るときによく使用される。この種の電動リールは、リール本体と、リール本体に装着されたスプールと、スプールを回転させるハンドルと、スプールを巻き上げ方向に回転させるモータとを備えている。リール本体の上面には、水深等を表示するディスプレイや各種の入力等を行うスイッチが設けられた操作パネルが装着されている。
【0003】
このような電動リールでは、従来、巻き上げ速度を複数の段階に予め設定し、設定された段階のいずれかをレバーやスイッチ等の操作入力手段により選択し、スプール回転等を監視して巻き上げ速度が選択された設定速度範囲内に入るようにモータを制御している。具体的には、モータをPWM(パルス幅変調)駆動し、スプール回転が操作入力手段により選択された段階の設定速度範囲を外れると、デューティ比(パルス幅)を変化させて供給電力量を増減させ、スプール回転が設定速度範囲内に入るようにモータを制御している。したがって、たとえば大物がかかって負荷が増大して速度が低下した状態であっても、デューティ比を大きくする(電流を多く流す)制御を行って設定範囲内に入るように巻き上げ速度を増加させる。このため、巻き上げトルクが増大し、ドラグの設定や魚種によってはハリス切れや口切れが生じる場合がある。
【0004】
そこで、特開2000−300129号公報には、電動リールのモータをトルク一定に制御する技術が開示されている。前記公報に開示された技術では、モータがトルク一定に制御されるので、巻き上げトルクの無用な増加を抑えることができ、ハリス切れや口切れが生じにくくなる。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、巻き上げ途中に釣り糸の巻き上げ量が大きくなると糸巻径が大きくなり、巻き上げトルクは糸巻径と張力との積であるので、トルク一定にモータを制御しても釣り糸に作用する張力は徐々に小さくなる。また、逆に糸巻き量が減少すると、糸巻径が小さくなり張力が徐々に大きくなる。このように張力が変動すると、トルクを一定に制御しても細い仕掛けや口が弱い魚ではハリス切れや口切れが生じるおそれがある。
【0006】
本発明の課題は、モータをトルク制御する電動リールにおいて、巻き上げ時に釣り糸に作用する張力を変動しにくくすることにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
発明1に係る電動リールは、釣り竿に装着されるリールであって、釣り竿に装着されるリール本体と、スプールと、電動のモータと、操作入力手段と、トルク検出手段と、トルク設定手段と、糸巻径検出手段と、上限トルク補正手段と、第1モータ制御手段とを備えている。スプールは、リール本体に回転自在に装着されている。モータは、スプールを巻き上げ方向に回転させるためのものである。操作入力手段はモータを段階的に制御する操作を行うための手段である。トルク検出手段は、モータに作用する巻き上げトルクを検出するための手段である。トルク設定手段は、目標とする上限の巻き上げトルクを複数の段階において設定するための手段である。糸巻径検出手段は、スプールに巻き取られる釣り糸の糸巻径を検出する手段である。上限トルク補正手段は、複数の段階のそれぞれにおいて、トルク設定手段で設定された上限巻き上げトルクを、釣り糸の張力が一定になるように糸巻径検出手段の検出結果に応じて補正する手段である。第1モータ制御手段は、複数の段階のそれぞれにおいて、トルク検出手段で検出された巻き上げトルクが上限トルク補正手段で補正された目標とする上限巻き上げトルクを超えないようにモータのトルクを制御する手段である。
【0008】
また、トルク検出手段はモータに供給される電流値により巻き上げトルクを検出するものであり、トルク設定手段において設定される上限巻上げトルクは許容電流値であり、上限トルク補正手段は糸巻径に応じて許容電流値を補正する。そして、第1モータ制御手段は、複数の段階のそれぞれにおいて、補正された許容電流値を超えないようにモータに供給する電流を制御する。
【0009】
この電動リールでは、トルク設定手段により上限の巻上げトルクが予め設定され、トルク検出手段で検出された巻き上げトルクが、トルク設定手段で設定されかつ糸巻径検出手段の検出結果により補正された上限巻き上げトルクを超えないようにモータのトルクが制御される。
【0010】
ここでは、検出された巻き上げトルクが、予め設定されかつ糸巻径に応じて釣り糸の張力が一定になるように補正された上限巻き上げトルクを超えないようにモータのトルクが制御されるので、釣り糸に作用する張力が設定された張力を超えることがない。このため、巻き上げ時に釣り糸に作用する張力の無用な変動を抑えることができ、口切れやハリス切れが生じにくくなる。
【0011】
また、トルクが複数段階に制御されるので、魚種や釣法に応じてトルクを幅広く設定できる。
【0012】
さらに、電流により巻き上げトルクを検出しているので、トルクの検出が容易でありかつ精度が高くなる。また、電流値も補正された電流値以上に増加しにくいので焼損等の熱によるモータの損傷が生じにくい。
【0013】
発明2に係る電動リールは、発明1のリールにおいて、スプールの巻き上げ速度を検出するための速度検出手段と、目標とする上限の巻上げ速度を複数の段階のそれぞれにおいて設定する上限速度設定手段と、複数の段階のそれぞれにおいて速度検出手段が検出した巻き上げ速度が上限速度設定手段で設定された上限巻き上げ速度を超えないようにモータの速度を制御する第2モータ制御手段と、第1モータ制御手段による制御と第2モータ制御手段による制御とを択一的に選択するための制御選択手段と、をさらに備えている。
【0014】
発明3に係る電動リールは、発明1又は2に記載のリールにおいて、糸巻径検出手段は、スプールの回転位置データを検出する回転位置データ検出手段と、検出された回転位置データに基づきスプールから繰り出される又はスプールに巻き付けられる釣り糸の長さを算出する糸長算出手段と、算出された糸長とスプールに取り付けられる全体の糸長とスプールの胴径とにより釣り糸が巻き付けられた前記スプールの糸巻径を算出する糸巻径算出手段とを有する。この場合には、スプール回転位置データに基づいて算出される釣り糸の長さ、つまり仕掛けの水深表示のためのデータを用いて簡単に糸巻径を算出でき,糸巻径の検出が容易になる。
【0015】
発明3に係る電動リールは、発明2に記載のリールにおいて、糸長算出手段は、スプールに釣り糸を巻き付ける際に略最終巻き付け部分での釣り糸の所定長さと回転位置データ検出手段の検出結果との第1関係を学習する関係学習手段と、第1関係に基づき、スプールの単位回転当たりの糸長と回転位置データとの第2関係を求める関係算出手段とを有し、回転位置データ検出手段により検出された回転位置データと関係算出手段で算出された第2関係とに基づき、釣り糸の長さを求める。
【0016】
この場合には、スプールに釣り糸を巻き付けたときに、略最終巻き付け部分での釣り糸の所定長さと回転位置データ検出手段の検出結果との第1関係、つまり最終巻き付け部分での糸巻径に対するスプールの単位回転当たりの糸長を学習し、この第1関係に基づき、巻き初めから徐々に太くなる糸巻径に対するスプールの単位回転当たりの糸長と回転位置データとの第2関係を求める。そして、スプールの回転位置データにより第2関係から糸長を算出する。ここでは、略最終巻き付け部分の短い所定長さでの学習だけで糸巻径により変化するスプールの回転位置データと糸長との第2関係を算出することができるので、糸長検出器を装着することなく、糸長を計測することができる。しかも、学習により糸長を算出しているので、釣り糸の種類に限定されることなく糸長を計測できる。
【0017】
発明4に係る電動リールは、発明3に記載のリールにおいて、関係学習手段は、巻き付終了後所定長さ分釣り糸を繰り出したとき又はさらに巻き取ったときに回転位置データ検出手段により検出されたスプールの第1回転位置データを受け付ける第1回転位置データ受付手段を有し、関係算出手段は、スプールへの釣り糸の巻き付け開始時から巻き付け終了時までの回転位置データ検出手段により検出されたスプールの第2回転位置データを受け付ける第2回転位置データ受付手段と、巻き付け開始時のスプールの糸巻径を受け付ける糸巻径受付手段と、第1及び第2回転位置データと所定長さと糸巻径とにより第2関係を一次直線に近似する直線近似手段とを有し、糸長算出手段は、直線近似手段で一次直線に近似された第2関係と回転位置データ検出手段が検出した回転位置データとに基づき、釣り糸の長さを算出する。
【0018】
この場合には、スプールへの釣り糸の巻き付けが終了した後所定長さ釣り糸を繰り出した又は巻き取ったときの第1回転位置データにより最終巻き付け部分近傍での糸巻径に対するスプールの単位回転当たりの糸長を求める。そして、スプールの単位回転当たりの糸長とスプール回転位置データとの関係が巻き付け開始時の糸巻径による糸長を切片とする一次直線に回帰することに着目して、巻き付け開始から巻き付け終了までの第2回転位置データ、つまりスプールの総回転数と、第1回転位置データと、所定長さと、巻き付け開始時の糸巻径とにより一次直線の傾きを算出して第2関係を一次直線に近似する。そして、この一次直線を巻き付け開始時から回転位置データが示す部分まで積分することで回転位置データにより糸長を求める。ここでは、第2関係が一次直線に回帰することに着目して演算処理により回転位置データから糸長を算出しているので、演算処理が容易であり回転位置データから瞬時に糸長を計測できる。しかも、一次直線の単位回転当たりの糸長によりそのときの糸巻径を簡単に求めることができ、糸巻径の検出も容易になる。
【0019】
発明5に係る電動リールは、発明4に記載のリールにおいて、関係学習手段は、巻き付け終了後に釣り糸の先端に所定長さを有する別の釣り糸を結び付けてその釣り糸を所定長さ巻き取ったときの回転位置データ検出手段の検出結果により第1関係を学習する。この場合には、長さを特定する印が釣り糸に付されていなくても巻き取り動作を続けるだけで簡単に学習操作を行える。
【0020】
発明6に係る電動リールは、発明4又は5に記載のリールにおいて、関係学習手段は、所定長さ毎に印が付けされた釣り糸を巻き付け終了後に所定長さ繰り出したときの回転位置データ検出手段の検出結果により第1関係を学習する。この場合には、釣り糸に付けられた印を利用して簡単に学習操作を行える。
【0021】
発明7に係る電動リールは、発明4又は5に記載のリールにおいて、関係学習手段は、スプールに釣り糸が巻き付けられるとき釣り糸に接触して糸長を検出する糸長検出手段の検出結果と、糸長検出手段の糸長検出時に回転位置検出手段により検出された回転位置とにより第1関係を学習する。この場合には、糸長検出手段を装着しなければならないが、糸巻き付け開始から終了までではなく糸巻き付けの最終部分でのみ釣り糸に糸長検出手段を接触させればいいので、糸長検出手段の移動距離が少なくなりコンパクトな糸長検出手段で第1関係を学習することができる。
【0022】
【発明の実施の形態】
本発明の一実施形態による電動リールは、図1に示すように、釣り竿Rに装着されるリール本体1と、リール本体1の側方に配置されたスプール回転用のハンドル2と、ハンドル2のリール本体1側に配置されたドラグ調整用のスタードラグ3とを主に備えている。
【0023】
リール本体1は、左右1対の側板7a、7bとそれらを連結する複数の連結部材8とからなるフレーム7と、フレーム7の左右を覆う左右の側カバー9a、9bとを有している。ハンドル2側(図1の右側)の側カバー9bには、ハンドル2の回転軸が回転自在に支持されている。後部の連結部材8には、外部電源接続用の電源コードを接続するためのコネクタコード19が設けられている。
【0024】
リール本体1の内部には、ハンドル2に連結されたスプール10が回転自在に支持されている。スプール10の内部には、スプール10を糸巻き上げ方向に回転駆動する直流駆動のモータ12が配置されている。また、リール本体1のハンドル2側側面には、ハンドル2及びモータ12とスプール10との駆動伝達をオンオフするクラッチの操作レバー11が配置されている。このクラッチをオンすると、仕掛けの自重による糸繰り出し中に、糸繰り出し動作を停止できる。
【0025】
リール本体1の上部にはカウンタケース4が固定されている。カウンタケース4は、リール本体1の上部に配置され、上面に表示窓20が形成されている。カウンタケース4の上部には、仕掛けの水深や棚位置を水面からと底からとの2つの基準で表示するための液晶ディスプレイからなる表示部5が臨んでおり、表示部5の周囲には操作キー部6が設けられている。
【0026】
表示部5は、図2に示すように、中央に配置された4桁の7セグメント表示の水深表示領域5aと、その下方に配置された3桁の底棚水深表示領域5bと、水深表示領域5aの図2右側に配置された段数表示領域5cとを有している。段数表示領域5cは、操作キー部6により操作された現在の巻き上げトルク又は速度を7段階で表示する。また、水深表示領域5aの上方には表示モードを示す「底から」の文字が表示される。また、速度モードとトルクモードの制御モードを示す「等速・トルク」の文字のいずれかが表示される。さらに「学習」、「指定」、「下巻」、「糸送止」、「0セット」の5つの文字を表示可能である。「底から」の文字は、水深表示モードが底からモードの時に表示される。底からモードとは、仕掛けの水深を底基準で表示するモードである。なお、通常は、仕掛けの水深は水面基準(上からモード)で表示される。また、「学習」〜「下巻」までの文字は、糸巻モードの種類を示しており、いずれかが択一的に選択されると選択された糸巻モードの文字が表示される。
【0027】
操作キー部6は、表示部5の図1右側に上下に並べて配置された変更スイッチSK及びモータスイッチPWと、左側に上下に並べて配置されたモータモードスイッチVT、糸巻モードを切り換えるための糸巻モードスイッチMD及び底や棚を設定するためのメモスイッチTBとを有している。
【0028】
モータスイッチPWは、モータ12をオンオフするためのスイッチであり、モータスイッチPWがオン操作されたときモータ12を回転させる連続巻き上げ可能なスイッチとなっている。
【0029】
変更スイッチSKは、駆動されたモータ12の速度又はトルクを増減するためのスイッチであり、上下の2つのスイッチと中立位置とを有するシーソー型のスイッチである。この変更スイッチSKの上スイッチSK1を押すと速度又はトルクが増加し下スイッチSK2を押すと減少する。
【0030】
モータモードスイッチVTは、モータ12を制御するモードをトルク制御するトルクモードと速度制御する速度モードとに切り換えるためのスイッチであり、スイッチを押す毎に制御モードが切り換わる。なお、初期設定では制御モードが速度モードに設定されている。
【0031】
糸巻モードキーMDは、3種の糸巻モードを設定するためのスイッチであり、たとえばこれを1回押すと学習モードに設定され、2回連続して押すと指定モード、3回連続して押すと下巻モードにそれぞれ糸巻モードが設定される。ここで、学習モードは、糸径や長さが未知の釣り糸をスプール10に巻き付ける際に使用される糸巻モードであり、糸巻き付け最終部分でのスプール回転数とスプール1回転当たりの糸長との関係を学習して釣り糸全長にわたるスプール回転数と1回転当たりの糸長とを求めるために使用されるモードである。指定モードは、記憶部46内に用意された号数及び長さの釣り糸をスプールに巻き付けるときに使用されるモードである。下巻モードは、あらかじめ指定された糸巻径まで下糸を巻いた後に未知の釣り糸を巻き付ける際に使用されるモードである。この下巻モードは、糸巻径が異なるだけで基本的には学習モードと同じ考えで学習を行う。
【0032】
メモスイッチTBは、仕掛けが底に到達したときに押されたり、棚位置に到達すると押されるスイッチであり、そのときの水深が底や棚として設定される。このメモスイッチTBを所定時間以上押すと、釣り糸が切れたときになどに水深表示の0点を新たな位置にセットできる。
【0033】
リール制御部30は、カウンタケース4内に配置されたCPU、RAM、ROM、I/Oインターフェイス等を含むマイクロコンピュータを含んでいる。リール制御部30は、制御プログラムに従って表示部5の表示制御やモータ駆動制御等の各種の制御動作を実行する。リール制御部30には、図3に示すように、操作キー部6の各種のスイッチと、スプールセンサ41と、スプールカウンタ42と、トルクセンサ43とが接続されている。また、リール制御部30には、ブザー44と、PWM駆動回路45と、表示部5と、記憶部46と、他の入出力部とが接続されている。
【0034】
スプールセンサ41は、前後に並べて配置された2つのリードスイッチから構成されており、いずれのリードスイッチが先に検出パルスを発したかによりスプール10の回転方向を検出できる。スプールカウンタ42は、スプールセンサ41のオンオフ回数を計数するカウンタであり、この計数値によりスプール回転数に関する回転位置データが得られる。スプールカウンタ42は、スプール10が正転(糸繰り出し方向の回転)すると計数値が減少し、逆転すると増加する。トルクセンサ43は、トルク制御に使用する巻き上げトルクを検出するためのセンサであり、具体的にはモータ12に流される電流を検出することにより巻き上げトルクを検出する。ブザー44は、警報音を鳴らすために使用される。PWM駆動回路45は、モータ12をPWM駆動するものであり、リール制御部30によりデューティ比が制御されてモータ12をトルク可変に駆動する。
【0035】
記憶部46はたとえばEEPROM等の不揮発メモリから構成されている。記憶部46には、図4に示すように、棚位置等の表示データを記憶する表示データ記憶エリア50と、実際の糸長とスプール回転数との関係を示す学習データを記憶する学習データ記憶エリア51と、速度の段数SCに応じたスプール10の巻き上げ速度(rpm)の上限値を記憶する速度データ記憶エリア52と、トルクの段数に応じたモータ12の巻き上げトルク(アンペア)の上限値を記憶するトルクデータ記憶エリア53と、種々のデータを記憶するデータ記憶エリア54とが設けられている。
【0036】
速度データ記憶エリア52には、たとえば、段数SCが1速の場合に上限の速度データSS=257rpm,2速の場合にSS=369rpm,3速の場合にSS=503rpm,4速の場合にSS=665rpm,5速の場合にSS=1000rpmがそれぞれ記憶されている。また、トルクデータ記憶エリア53には、たとえば、段数TCが1段の場合に上限のトルクデータTS=2A,2段の場合にTS=3.5A,3段の場合にTS=5A,4段の場合にTS=6.5A,5段の場合にTS=8Aがそれぞれ記憶されている。
【0037】
データ記憶エリア54にはPWM制御用のデューティ比のデータや各種の一時的なデータが格納されている。また、各トルク段数毎の最大デューティ比及び最小デューティ比のデータも格納されている。
【0038】
次に本実施形態における糸長算出方法の概略を説明する。
【0039】
本発明では、スプール1回転当たりの糸長Yとスプール回転数Xとの関係を一次直線に近似させることができることを利用して糸長Lを算出している。
【0040】
太さと全長が不明な釣り糸を糸巻径Bmmからスプール10に層状に巻き付けていき、c回転で全ての釣り糸を巻き終わったとする。次に、その状態からSmm釣り糸を繰り出したとき、スプール10がd回転したとする。
【0041】
いま、スプール回転数Xとスプール1回転当たりの糸長Yとの関係を、横軸にスプール回転数Xを、縦軸にスプール1回転当たりの糸長をとると、一次直線で定義できるので、傾きをAとすると、下記式で表せる。
【0042】
Y=AX+Bπ (1)
したがって、スプール回転数Xとスプール1回転当たりの糸長Yとの関係を示すグラフは、図5に示すようになる。
【0043】
いま、スプール10がc回転したときのスプール1回転当たりの糸長をY(c),c回転の巻き取り後、所定長さS繰り出してd回転したときのスプール1回転当たりの糸長をY(c−d)とすると、これらは以下のように表せる。
【0044】
Y(c)=A・c+Bπ (2)
Y(c−d)=A・(c−d)+Bπ (3)
図5に示すグラフでは、ハッチングで示す台形の面積が巻き付け終了後の糸繰り出し長さSに相当しているので、糸繰り出し長さSは以下のように表せる。
【0045】
S=d・{Y(c)+Y(c−d)}/2 (4)
(4)式に(2),(3)式を代入すると、
S=d・{A・c+Bπ+A・(c−d)+Bπ}/2
=d・{A・(2c−d)+2Bπ}/2 (5)
(5)式を傾きAについて解くと以下のようになる。
【0046】
A=2(S−Bπd)/d(2c−d) (6)
したがって、4つのデータS,B,c,dを(6)式に代入することにより一次直線の傾きAを求めることができることがわかる。
【0047】
たとえば、スプール10が巻き初めから2000回転で巻終わり、そこから10m繰り出したときにスプールが60回転した場合、スプール10の糸巻胴径(糸巻径)が30mmであったとすると、一次直線の傾きAは下記のようになる。
【0048】
A=2(10000−94.2*60)/60(2*2000−60)
=0.0368
そして、傾きA,切片Bπの近似の一次直線が決定できれば、一次直線をスプール1回転毎に積分処理(面積算出処理)することで巻き初めから巻終わりまでのたとえばスプール1回転毎の糸長L1〜LNを求める。そして、巻終わり時のスプール回転数cのときの水深LXを「0」にセットしてそれから巻き初めまでの水深LX(=LN)とスプール回転数Xとの関係を算出して記憶部46の学習データ記憶エリア51にたとえばマップ形式(LX=MAP(X))で記憶する。
【0049】
実釣り時にスプール10が回転すると、そのときにスプールセンサ41が検出したスプール回転数Xに基づき、記憶部46のマップから糸長LXを読み出し、読み出した糸長LXに基づいて仕掛けの水深(釣り糸先端の水深)を表示部5に表示する。
【0050】
次に、リール制御部30によって行われる具体的な制御処理を、図6以降の制御フローチャートに従って説明する。
【0051】
電動リールが電源コードを介して外部電源に接続されると、図6のステップS1において初期設定を行う。この初期設定ではスプールカウンタ42の計数値をリセットしたり、各種の変数やフラグをリセットしたり、モータ制御モードを速度モードにし、表示モードを上からモードにする。
【0052】
次にステップS2では表示処理を行う。表示処理では、水深表示等の各種の表示処理を行う。ここで、速度モードのときには、段数表示領域5cに変更スイッチSKにより操作された速度段数が、トルクモードのときにはトルク段数が表示される。また、速度モードとトルクモードとのいずれか制御モードが表示される。
【0053】
ステップS3では、操作キー部6のいずれかのスイッチが押されたか否かを判断する。またステップS4ではスプール10が回転しているか否かを判断する。この判断は、スプールセンサ41の出力により判断する。ステップS5ではその他の指令や入力がなされたか否かを判断する。
【0054】
スイッチが押された場合にはステップS3からステップS6に移行してキー入力処理を実行する。またスプール10の回転が検出された場合にはステップS4からステップS7に移行する。ステップS7では各動作モード処理を実行する。その他の指令あるいは入力がなされた場合にはステップS5からステップS8に移行してその他の処理を実行する。
【0055】
ステップS6のキー入力処理では図7のステップS11でモータ制御モードスイッチVTが押されたか否かを判断する。ステップS12では、糸巻モードスイッチMDが押されたか否かを判断する。ステップS13では、モータスイッチPWが押された否かを判断する。ステップS14では、変更スイッチSKの上スイッチSK1が押されたか否かを判断する。ステップS15では、変更スイッチSKの下スイッチSK2が押されたか否かを判断する。ステップS16では、その他のスイッチが操作されたか否かを判断する。その他のスイッチの操作にはメモスイッチTB等の操作を含んでいる。
【0056】
モータモードスイッチVTが押されるとステップS11からステップS17に移行する。ステップS17では、モータ制御モードが速度モードか否かを判断する。速度モード中にモータモードスイッチVTが押されるということは釣り人がトルクモードにしようとするためであるので、ステップS19に移行して制御モードをトルクモードにセットする。これにより、変更スイッチSKの操作に応じてトルク制御が行われる。速度モードではなくトルクモードの時にはステップS17からステップS18に移行し、モータ制御モードを速度モードにセットする。
【0057】
糸巻モードスイッチMDが押されるとステップS12からステップS20に移行する。ステップS20では、学習モードが設定されたか否かを判断する。糸巻モードスイッチMDの1回の操作により学習モードが設定されるとステップS20からステップS21に移行し後述する学習モード処理を実行する。糸巻モードスイッチMDの複数回の操作により指定モードや下巻モード等の他の糸巻モードが設定された場合には、ステップS20からステップS22に移行し設定された他の糸巻モードを実行する。
【0058】
モータスイッチPWが押されると、ステップS13からステップS23に移行する。ステップS23では、モータ12がすでにオンしている(回転している)か否かを判断する。モータ回転中にモータスイッチPWが押されるということは釣り人がモータ12を停止しようとするためであるので、ステップS25に移行してモータ12をオフする。モータ停止中の場合にはステップS23からステップS24に移行してモータ12をオンする。
【0059】
変更スイッチSKの上スイッチSK1が押されると、ステップS14からステップS26に移行する。ステップS26では、制御モードが速度モードか否かを判断する。速度モードのときには、ステップS28に移行し、後述する速度増加処理を行う。トルクモードのときには、ステップS26からステップS27に移行し、後述するトルク増加処理を行う。ここでは、上スイッチSK1が押されていると速度増加又はトルク増加処理を行うので、結果として上スイッチSK1を押している時間だけこれらの増加処理が行われる。
【0060】
変更スイッチSKの下スイッチSK2が押されると、ステップS15からステップS29に移行する。ステップS29では、制御モードが速度モードか否かを判断する。速度モードのときには、ステップS31に移行し、後述する速度減少処理を行う。トルクモードのときには、ステップS29からステップS30に移行し、後述するトルク減少処理を行う。ここでも、下スイッチSK1が押されていると速度減少又はトルク減少処理を行うので、結果として下スイッチSK1を押している時間だけこれらの減少処理が行われる。
【0061】
他のスイッチ入力がなされると、ステップS16からステップS32に移行し、たとえば、現在の水深の底棚値にセットするなどの操作されたスイッチ入力に応じた他のキー入力処理を行う。
【0062】
ステップS21の学習処理では、図8のステップS40で糸巻き取りが開始したか否かを判断する。この判断は、スプールセンサ41によりスプール10が回転を開始したことを検出したことにより判断する。ステップS41では、糸巻き取りが終了したか否かを判断する。この判断は、所定のキー操作(たとえばメモキーTBの所定時間以上の操作)がなされたか否かにより判断する。糸巻き取りが終了した後、たとえば10m釣り糸を繰り出してスプール回転数とスプール1回転当たりの糸長との関係を学習するのであるが、ステップS42では、その10mの繰り出しが終了したか否かを判断する。この判断も所定のキー操作がなされたか否かにより判断する。なお、釣り糸にたとえば10m毎に異なる色づけがなされている場合には、上記繰り出し操作が行えるが、釣り糸によっては色づけがなされていない場合がある。このような場合には、10mの釣り糸を先端に結んでさらに10m釣り糸を巻き取ってもよい。繰り出しが終了していない場合には、ステップS40に戻る。
【0063】
糸巻き取りが開始されるとステップS40からステップS43に移行する。ステップS43では、スプール回転数Xをスプールカウンタ42の値に応じて増加させる。たとえば、スプールセンサ41がスプール1回転当たり10パルス出力し、スプールカウンタ42がスプール1回転当たり10ずつ増加するときには、スプールカウンタ42が10増加するとスプール回転数Xを1増加する。
【0064】
糸巻き取りが終了してスプール10の回転が停止するとステップS41からステップS44に移行する。ステップS44では、巻き取り完了したときのスプール回転数Xを総回転数cにセットする。ステップS45では、釣り糸の繰り出しに応じてスプール回転数Xを減じていく。この減算もステップS43と同様にたとえばスプールカウンタ42が10ずつ減じていくとスプール回転数Xを1減少させる。
【0065】
糸繰り出しが終了するとステップS42からステップS46に移行する。ステップS46では、スプール総回転数cから繰り出しにより減少したスプール回転数Xを減算し、減算値を繰り出し回転数dにセットする。この繰り出し回転数dが10m釣り糸を繰り出したときのスプール10の回転数である。ステップS47では、記憶部46から糸巻径Bπ及び繰り出し長さSを読み出す。この2つのデータは、あらかじめ記憶部46に書き込まれている。
【0066】
ステップS48では、得られた4つのデータc,d,Bπ,Sにより上記(6)式により近似一次直線の傾きAを求め、近似一次直線を算出する。これにより、糸径及び長さが未知の釣り糸の全長にわたる、スプール1回転長さYとスプール回転数Xとの関係が決定される。このスプール1回転長さYを用いて糸巻径SD(Y/π)を求め、トルクモードのときの設定トルクを糸巻径SDにより補正して張力が一定になるようにしている。
【0067】
ステップS49では、得られた一次直線を積分処理して巻き初めから巻終わりまでのスプール回転数Xと糸長LNとの関係を算出する。そして、巻終わりを水深0にセットして糸長LNを水深LXに変換する。これによりスプール回転数Xと水深LXとの関係が決定される。
【0068】
ステップS50では、得られたスプール回転数Xと水深LXの関係をマップ形式で記憶部46に記憶してメインルーチンに戻る。これにより、前述した学習処理が実行され、釣り糸全体にわたる学習を行うことなく最終部分のみの学習で糸巻径により変化するスプール回転数と糸長との関係を補正できる。これらの処理が終了するとキー入力ルーチンに戻る。
【0069】
ステップS28の速度増加処理では、図9のステップS51で、前にセットされた速度段数SCをデータ記憶エリア54から読み出す。ここで、データ記憶エリア54には、速度段数SCが増加又は減少するごとにその値が記憶される。また、電源が投入されたとき及びモータスイッチPWが押されてモータ12が停止したときに、速度段数SCが「0」にセットされ、データ記憶エリア54に記憶される。
ステップS52では、読み出した速度段数SCを1段アップする。このときの増加した速度段数SCは、表示処理において段数表示領域5cに表示されるとともに、データ記憶エリア54に記憶される。なお、モータスイッチPWが押された直後は、速度段数SCが1段アップして「1」にセットされる。また、速度段数SCが「7」にセットされるとそれ以上増加することはない。 ステップS53では、速度データ記憶エリア52から増加した速度段数SCに応じた速度データSSを読み出しセットする。ステップS54では、スプールセンサ41の出力からスプール10の速度データSPを読み込む。
【0070】
ステップS55では、読み込んだ速度データSPが、セットされた速度段数SCに応じた速度データSS以上になったか否かを判断する。速度データSPが速度データSS未満のときには、ステップS55からステップS56に移行する。ステップS56では、現在のデューティ比Dをデータ記憶エリア54から読み出す。データ記憶エリア54には、デューティ比Dがセットされる都度、セットされたデューティ比Dが記憶される。
【0071】
ステップS57では、データ記憶エリア54から読み出した現在のデューティ比Dが最大デューティ比DU以上になったか否かを判断する。この最大デューティ比DUは、通常「100」であるが、速度段数SCやモータ12の負荷等に応じて最大デューティ比DUの設定を変更してもよい。デューティ比Dが最大デューティ比DU未満のときには、ステップS57からステップS58に移行し、デューティ比Dを所定の増分DI増加してセットする。この新たにセットされたデューティ比Dはデータ記憶エリア54に記憶される。なお、この増分DIは、たとえば「5」である。ステップS57で、デューティ比Dが最大デューティ比DU以上と判断するとステップS59に移行する。ステップS59では、デューティ比Dを最大デューティ比DUにセットする。
【0072】
一方、ステップS55で、速度データSPが速度データSS以上と判断したときには、何も処理せずキー入力処理に戻る。また、ステップS58又はS59の処理が終わるとキー入力処理に戻る。
【0073】
この速度増加処理では、上スイッチSK1を押している時間だけ速度段数SCをアップし、アップした速度段数SCに応じた巻き上げ速度までスプール10の速度を増加させる。また、上スイッチSK1を押すのをやめると、再度、上スイッチSK1又は下スイッチSK2が押されるまで速度増加処理や速度減少処理は行われないので、速度増加結果の速度段数SCが維持され、その巻き上げ速度が維持される。
【0074】
ステップS27のトルク増加処理では、最大デューティ比TDUが各トルク段数TC毎に設定されている点が速度増加処理と異なる。すなわち、トルク制御の場合、モータ12に与える電流値の最大値、つまり最大デューティ比TDUは、各トルク段数TC毎に設定されているため、各トルク段数TCでそれ以上トルクがあがることがない。トルク増加処理では、図10のステップS61で、前にセットされたトルク段数TCをデータ記憶エリア54から読み出す。ここで、データ記憶エリア54には、トルク段数TCが増加又は減少するごとにその値が記憶される。また、電源が投入されたとき及びモータスイッチPWが押されてモータ12が停止したときに、トルク段数TCが「0」にセットされ、データ記憶エリア54に記憶される。
ステップS62では、読み出したトルク段数TCを1段アップする。このときの増加したトルク段数TCは、表示処理において段数表示領域5cに表示されるとともに、データ記憶エリア54に記憶される。なお、モータスイッチPWが押された直後は、トルク段数TCが1段アップして「1」にセットされる。また、トルク段数TCが「7」にセットされるとそれ以上増加することはない。 ステップS63では、トルクデータ記憶エリア53から増加したトルク段数TCに応じたトルクデータTSを読み出しセットする。ステップS64では、セットしたトルクデータTSを糸巻径SDにより補正する補正処理を行う。この補正処理により、設定されるトルクデータTSを糸巻径SDにより補正して釣り糸に作用する張力が常に一定になるようにする。
【0075】
この補正処理では、図11のステップS71でスプール回転数Xを読み込む。ステップS72では、スプール回転数Xから学習処理により得られたスプール1回転長さYとスプール回転数Xとの関係を示す一次式からスプール1回転長さYを算出する。ステップS73では、得られたスプール1回転長さYをπで除算して糸巻径SDを算出する。ステップS74では、得られた糸巻径SDを用いてトルクデータTSを補正して張力の変動を抑えるようにする。具体的には、スプール12の糸巻胴部の糸巻径Bに対する糸巻径SDの割合に応じて小さくなる張力が一定になるように補正する。つまり、張力の低下を抑えるためにトルクデータTSを徐々に大きくする。
【0076】
図10のステップS65では、トルクセンサ43の出力からスプール10のトルクデータAMを読み込む。ステップS66では、読み込んだトルクデータAMが、トルク段数TCに応じた補正されたトルクデータTS以上になったか否か判断する。トルクデータAMがトルクデータTS未満のときには、ステップS66からステップS67に移行する。ステップS67では、現在のデューティ比Dをデータ記憶エリア54から読み出す。データ記憶エリア54には、デューティ比Dがセットされる都度、セットされたデューティ比Dが記憶される。
【0077】
ステップS68では、データ記憶エリア54から読み出した現在のデューティ比Dが各トルク段数TC毎に設定された最大デューティ比TDU以上になったか否かを判断する。デューティ比Dが最大デューティ比TDU未満のときには、ステップS68からステップS69に移行し、デューティ比Dを所定の増分DI増加してセットする。この新たにセットされたデューティ比Dはデータ記憶エリア54に記憶される。なお、この増分DIは、たとえば「5」である。ステップS68で、デューティ比Dが最大デューティ比TDU以上と判断するとステップS70に移行する。ステップS70では、デューティ比Dを最大デューティ比TDUにセットする。
【0078】
一方、ステップS66で、トルクデータAMがトルクデータTS以上と判断したときには、何も処理せずキー入力処理に戻る。また、ステップS69又はS70の処理が終わるとキー入力処理に戻る。
【0079】
このトルク増加処理では、上スイッチSK1を押している時間だけトルク段数TCをアップし、アップしたトルク段数TCに応じたトルクまでモータ12のトルクを増加させる。また、上スイッチSK1を押すのをやめると、再度、上スイッチSK1又は下スイッチSK2が押されるまでトルク増加処理やトルク減少処理は行われないので、トルク増加結果のトルク段数TCが維持され、そのトルクが維持される。この結果、負荷が大きくなると速度は遅くなり、負荷が小さくなると速度は速くなる。このため、負荷が小さい仕掛けの回収時などに仕掛けを高速で回収でき、手返しが速くなる。しかも糸巻径の増加に応じてトルクデータTSを補正して釣り糸に作用する張力が一定になるようにしているので、巻き上げ時にハリス切れや口切れを生じにくくなるとともにドラグの調整を行う必要がなくなる。
【0080】
ステップS31の速度減少処理では、図12のステップS81で、前にセットされた速度段数SCをデータ記憶エリア54から読み出す。ステップS82では、読み出した速度段数SCを1段ダウンする。このときの減少した速度段数SCは、表示処理において段数表示領域5eに表示されるとともに、データ記憶エリア54に記憶される。なお、速度段数SCが「1」にダウンされるとそれ以上減少することはない。ステップS83では、速度データ記憶エリア52から減少した速度段数SCに応じた速度データSSを読み出す。ステップS84では、スプールセンサ41の出力からスプール10の速度データSPを読み込む。
【0081】
ステップS85では、読み込んだ速度データSPが、セットされた速度段数SCに応じた速度データSS以下になったか否かを判断する。速度データSPが速度データSSを超えるときには、ステップS85からステップS86に移行する。ステップS86では、現在のデューティ比Dをデータ記憶エリア84から読み出す。
【0082】
ステップS87では、データ記憶エリア54から読み出した現在のデューティ比Dが最小デューティ比DL以上になったか否かを判断する。この最小デューティ比DLは、通常「40」である。デューティ比Dが最小デューティ比DLを超えるときには、ステップS57からステップS88に移行し、デューティ比Dを所定の減分DI減少させてセットする。このセットされたデューティ比Dはデータ記憶エリア54に記憶される。なお、この減分DIは、たとえば「5」である。ステップS88で、デューティ比Dが最小デューティ比DL以下と判断するとステップS89に移行する。ステップS89では、デューティ比Dを最小デューティ比DLにセットする。
【0083】
一方、ステップS85で、読み込んだ速度データSPがセットされた速度段数SCに応じた速度データSS以下になったと判断すると何も処理せずキー入力処理に戻る。また、ステップS88又はS89の処理が終わるとキー入力処理に戻る。
【0084】
この減速処理では、下スイッチSK2を押している時間速度段数SCをダウンし、ダウンした速度段数SCに応じた巻き上げ速度までスプール10の巻き上げ速度を減少させる。また、下スイッチSK2を押すのをやめると、再度、上スイッチSK1又は下スイッチSK2が押されるまで速度増加処理や速度減少処理は行われないので、速度減少結果の速度段数SCが維持され、その巻き上げ速度が維持される。
【0085】
ステップS30のトルク減少処理では、最小デューティ比TDLが各トルク段数TC毎に設定されている点が速度減少処理と異なる。すなわち、トルク制御の場合、モータ12に与える電流値の最小値、つまり最小デューティ比TDLは、各トルク段数TC毎に設定されているため、各トルク段数TCでそれ以下にトルクが下降することがない。トルク減少処理では、図13のステップS91で、前にセットされたトルク段数TCをデータ記憶エリア54から読み出す。ここで、データ記憶エリア54には、トルク段数TCが増加又は減少するごとにその値が記憶される。また、電源が投入されたとき及びモータスイッチPWが押されてモータ12が停止したときに、トルク段数TCが「0」にセットされ、データ記憶エリア54に記憶される。
【0086】
ステップS92では、読み出したトルク段数TCを1段ダウンする。このときの減少したトルク段数TCは、表示処理において段数表示領域5eに表示されるとともに、データ記憶エリア54に記憶される。なお、モータスイッチPWが押された直後は、トルク段数TCが1段アップして「1」にセットされる。また、トルク段数TCが「0」にセットされるとそれ以上減少することはない。
【0087】
ステップS93では、トルクデータ記憶エリア53から増加したトルク段数TCに応じたトルクデータTSを読み出しセットする。ステップS94では、セットされたトルクデータTSを糸巻径SDに応じて補正する。このTS補正処理はトルク増加処理と同様であるので説明を省略する。ステップS95では、トルクセンサ43の出力からスプール10のトルクデータAMを読み込む。
【0088】
ステップS96では、読み込んだトルクデータAMが、セットされたトルク段数TCに応じたトルクデータTS以下になったか否かを判断する。トルクデータAMがトルクデータTSを超えるときには、ステップS96からステップS97に移行する。ステップS97では、現在のデューティ比Dをデータ記憶エリア54から読み出す。データ記憶エリア54には、デューティ比Dがセットされる都度、セットされたデューティ比Dが記憶される。
【0089】
ステップS98では、データ記憶エリア54から読み出した現在のデューティ比Dが各トルク段数TC毎に設定された最小デューティ比TDL以下になったか否かを判断する。デューティ比Dが最小デューティ比TDLを超えているときには、ステップS98からステップS99に移行し、デューティ比Dを所定の減分DI減少させてセットする。この新たにセットされたデューティ比Dはデータ記憶エリア54に記憶される。なお、この減分DIは、たとえば「5」である。ステップS98で、デューティ比Dが最小デューティ比TDL以下と判断するとステップS100に移行する。ステップS100では、デューティ比Dを最小デューティ比TDLにセットする。
【0090】
一方、ステップS96で、トルクデータAMがトルクデータTS以下と判断したときには、何も処理せずキー入力処理に戻る。また、ステップS99又はS100の処理が終わるとキー入力処理に戻る。
【0091】
このトルク減少処理でも、下スイッチを押している時間だけトルク段数TCをダウンし、ダウンしたトルク段数TCに応じたトルクまでモータ12のトルクを減少させる。また、下スイッチSK2を押すのをやめると、再度、上スイッチSK1又は下スイッチSK2が押されるまでトルク増加処理やトルク減少処理は行われないので、トルク減少結果のトルク段数TCが維持され、そのトルクが維持される。この結果、負荷が小さくなると速度は増加する。しかし、一定の張力で巻き上げるので、巻き上げ時にハリス切れや口切れを生じにくくなる。
【0092】
ステップS7の各動作モード処理では、図14のステップS101でスプール10の回転方向が糸繰り出し方向か否かを判断する。この判断は、スプールセンサ41のいずれのリードスイッチが先にパルスを発したか否かにより判断する。スプール10の回転方向が糸繰り出し方向と判断するとステップS101からステップS102に移行する。ステップS102では、スプール回転数が減少する毎にスプール回転数から記憶部46に記憶されたデータを読み出し水深を算出する。この水深がステップS2の表示処理で表示される。ステップS103では、得られた水深が底位置に一致したか、つまり、仕掛けけが底に到達したか否かを判断する。底位置は、仕掛けけが底に到達したときにメモスイッチTBを押すことで記憶部46にセットされる。ステップS104では、他のモードか否かを判断する。他のモードではない場合には、各動作モード処理を終わりメインルーチンに戻る。
【0093】
水深が底位置に一致するとステップS103からステップS105に移行し、仕掛けが底に到達したことを報知するためにブザー44を鳴らす。他のモードの場合には、ステップS104からステップS106に移行し、指定された他のモードを実行する。
【0094】
スプール10の回転が糸巻き取り方向と判断するとステップS101からステップS107に移行する。ステップS107では、スプール回転数から記憶部46に記憶されたデータを読み出し水深を算出する。この水深がステップS2の表示処理で表示される。ステップS108では、水深が船縁停止位置に一致したか否かを判断する。船縁停止位置まで巻き取っていない場合にはメインルーチンに戻る。船縁停止位置に到達するとステップS108からステップS109に移行する。ステップS109では、仕掛けが船縁にあることを報知するためにブザー44を鳴らす。ステップS110では、モータ12をオフする。これにより魚が釣れたときに取り込みやすい位置に魚が配置される。この船縁停止位置は、たとえば水深6m以内で所定時間以上スプール10が停止しているとセットされる。
【0095】
この電動リールでは、モータ制御モードスイッチVTによりトルクモードが選択されると、各トルク段数毎に張力一定にモータ12が制御される。このため、巻き上げ時にハリス切れや口切れを生じにくくなる。
【0096】
〔他の実施形態〕
(a)前記実施形態では変更スイッチSKの上スイッチ又は下スイッチの操作時間で速度又はトルクの段数を増減するように構成したが、操作回数に応じて増減するようにしてもよい。
【0097】
(b)前記実施形態ではシーソー型の押しボタン型の変更スイッチSKにより段数の増減操作を行ったが、リール本体1に揺動自在に装着された操作レバーにより段数の増減操作を行ってもよい。この場合、段数の増減操作のみをこの操作レバーの揺動角度に応じて行ってもよく、また、段数の増減操作とモータのオンオフ操作とをこの操作レバーで行ってもよい。
【0098】
(c)前記実施形態では、糸長の学習結果のデータにより糸巻径を算出したが、糸長検出器等を電動リールに装着し、それによる学習結果に基づいて糸巻径を検出するようにしてもよい。また、光センサや超音波センサなどの検出子を用いた糸巻径検出器で糸巻径を直接検出するようにしてもよい。
【0099】
【発明の効果】
本発明によれば、予め設定された張力を超えないようにモータが制御されるので、張力を一定範囲に制御できる。このため、張力の無用な増加を抑えることができ、口切れやハリス切れが生じにくくなる。
【0100】
別の発明によれば、検出された巻き上げトルクが予め設定され糸巻径により補正された巻き上げトルク、すなわち張力を超えないようにモータのトルクが制御されるので、釣り糸に作用する張力が設定された張力を超えることがない。このため、張力の無用な増加を抑えることができ、口切れやハリス切れが生じにくくなる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の一実施形態を採用した電動リールの平面図。
【図2】 その電動リールの表示部周辺の平面図。
【図3】 その電動リールの制御ブロック図。
【図4】 記憶部の格納内容を示す図。
【図5】 スプール回転数とスプール1回転当たりの糸長との関係を示すグラフ。
【図6】 その電動リールのメインルーチンを示すフローチャート。
【図7】 キー入力処理サブルーチンを示すフローチャート。
【図8】 学習処理サブルーチンを示すフローチャート。
【図9】 速度増加処理サブルーチンを示すフローチャート。
【図10】 トルク増加処理サブルーチンを示すフローチャート。
【図11】 トルク補正処理サブルーチンを示すフローチャート。
【図12】 速度減少処理サブルーチンを示すフローチャート。
【図13】 トルク減少処理サブルーチンを示すフローチャート。
【図14】 各動作モード処理サブルーチンを示すフローチャート。
【符号の説明】
1 リール本体
10 スプール
12 モータ
30 リール制御部
41 スプールセンサ
43 トルクセンサ
46 記憶部
52 速度データ記憶エリア
53 トルクデータ記憶エリア
PW モータスイッチ
SK 変更スイッチ
VT モータ制御モードスイッチ
Claims (8)
- 釣り竿に装着される電動リールであって、
前記釣り竿に装着されるリール本体と、
前記リール本体に回転自在に装着されたスプールと、
前記スプールを巻き上げ方向に回転させるための電動のモータと、
前記モータを段階的に制御する操作を行うための操作入力手段と、
前記モータに作用する巻き上げトルクを検出するためのトルク検出手段と、
目標とする上限の巻き上げトルクを複数の段階において設定するためのトルク設定手段と、
前記スプールに巻き取られる釣り糸の糸巻径を検出する糸巻径検出手段と、
前記複数の段階のそれぞれにおいて、前記トルク設定手段で設定された前記上限巻き上げトルクを、釣り糸の張力が一定になるように前記糸巻径検出手段の検出結果に応じて補正する上限トルク補正手段と、
前記複数の段階のそれぞれにおいて、前記トルク検出手段で検出された巻き上げトルクが、前記上限トルク補正手段で補正された目標とする上限巻き上げトルクを超えないように前記モータのトルクを制御する第1モータ制御手段と、
を備え、
前記トルク検出手段は、前記モータに供給される電流値により前記巻き上げトルクを検出するものであり、
前記トルク設定手段において設定される上限巻上げトルクは許容電流値であり、
前記上限トルク補正手段は、前記糸巻径に応じて前記許容電流値を補正し、
前記第1モータ制御手段は、前記複数の段階のそれぞれにおいて、前記補正された許容電流値を超えないように前記モータに供給する電流を制御する、
電動リール。 - 前記スプールの巻き上げ速度を検出するための速度検出手段と、
目標とする上限の巻上げ速度を前記複数の段階のそれぞれにおいて設定する上限速度設定手段と、
前記複数の段階のそれぞれにおいて、前記速度検出手段が検出した巻き上げ速度が前記上限速度設定手段で設定された上限巻き上げ速度を超えないように前記モータの速度を制御する第2モータ制御手段と、
前記第1モータ制御手段による制御と第2モータ制御手段による制御とを択一的に選択するための制御選択手段と、
をさらに備える、請求項1に記載の電動リール。 - 前記糸巻径検出手段は、
前記スプールの回転位置データを検出する回転位置データ検出手段と、
前記検出された回転位置データに基づき前記スプールから繰り出される又は前記スプールに巻き付けられる釣り糸の長さを算出する糸長算出手段と、
前記算出された糸長と、前記スプールに取り付けられる全体の糸長と、前記スプールの胴径とにより釣り糸が巻き付けられた前記スプールの糸巻径を算出する糸巻径算出手段とを有する、請求項1又は2に記載の電動リール。 - 前記糸長算出手段は、
前記スプールに釣り糸を巻き付ける際に略最終巻き付け部分での釣り糸の所定長さと前記回転位置データ検出手段の検出結果との第1関係を学習する関係学習手段と、
前記第1関係に基づき、前記スプールの単位回転当たりの糸長と前記回転位置データとの第2関係を求める関係算出手段とを有し、
前記回転位置データ検出手段により検出された回転位置データと前記関係算出手段で算出された前記第2関係とに基づき、前記釣り糸の長さを求める、請求項3に記載の電動リール。 - 前記関係学習手段は、巻き付終了後所定長さ分前記釣り糸を繰り出したとき又はさらに巻き取ったときに前記回転位置データ検出手段により検出された前記スプールの第1回転位置データを受け付ける第1回転位置データ受付手段を有し、
前記関係算出手段は、前記スプールへの釣り糸の巻き付け開始時から巻き付け終了時までの前記回転位置データ検出手段により検出された前記スプールの第2回転位置データを受け付ける第2回転位置データ受付手段と、前記巻き付け開始時の前記スプールの糸巻径を受け付ける糸巻径受付手段と、前記第1及び第2回転位置データと前記所定長さと前記糸巻径とにより前記第2関係を一次直線に近似する直線近似手段とを有し、
前記糸長算出手段は、前記直線近似手段で一次直線に近似された前記第2関係と前記回転位置データ検出手段が検出した回転位置データとに基づき、前記釣り糸の長さを算出する、請求項4に記載の電動リール。 - 前記関係学習手段は、前記巻き付け終了後に前記釣り糸の先端に前記所定長さを有する別の釣り糸を結び付けてその釣り糸を前記所定長さ巻き取ったときの前記回転位置データ検出手段の検出結果により前記第1関係を学習する、請求項4又は5に記載の電動リール。
- 前記関係学習手段は、所定長さ毎に印が付けされた釣り糸を巻き付け終了後に前記所定長さ繰り出したときの前記回転位置データ検出手段の検出結果により前記第1関係を学習する、請求項4又は5に記載の電動リール。
- 前記関係学習手段は、前記スプールに釣り糸が巻き付けられるとき前記釣り糸に接触して糸長を検出する糸長検出手段の検出結果と、前記糸長検出手段の糸長検出時に前記回転位置検出手段により検出された回転位置とにより前記第1関係を学習する、請求項4又は5に記載の電動リール。
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