JP2010239931A5 - - Google Patents

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電動リールのモータ制御装置
本発明は、モータ制御装置、釣り糸が巻き付けられるスプールを駆動するモータを制御する電動リールのモータ制御装置に関する。
電動リールは、スプールの糸巻取方向の回転をモータにより行うものである。電動リールでは、従来、スイッチの操作によりモータの回転速度、つまりスプールの巻き上げ速度を高低速に調整できるようになっている。スプールの巻き上げ速度が設定されると、負荷に関わらずその速度を維持するように電流が制御される。
この種の電動リールにおいて、仕掛けが船縁まで到達したときにモータをオフする船縁停止モードを有するものが知られている。このような船縁停止モードを有していると、魚を釣り上げるときや餌を交換するときに、仕掛けが船縁に配置されるので仕掛けや魚を回収しやすくなり、手返しが速くなる。
船縁停止モードを有する電動リールのモータ制御装置において、釣り竿の竿先まで巻き上げ可能なものが従来知られている(たとえば、特許文献1参照)。従来のモータ制御装置では、スプールの回転方向及び回転数を検出し、検出したスプールの回転方向及び回転数で糸長を計測している。そして計測した糸長が船縁位置に到達すると、モータに流す駆動電流を小さくして、仕掛けを竿先まで巻き上げたと見なす所定条件を検出すると、モータを停止している。
特開2004−73089号公報
釣り糸の糸長をスプールの回転方向及び回転数で計測すると、釣り糸に作用する負荷により実際の糸長と計測された糸長との間にずれが生じることがある。たとえば、仕掛けに大きな魚が掛かった時等の釣り糸に作用する負荷(張力)が大きい場合は、記憶された糸巻き径よりも小さな糸巻き径で巻かれてしまう。このため、実際に巻き取り残っている釣り糸長さより大きな数値が表示されてしまう。
また、仕掛けの回収時やフカセ釣りのように重りを使用せずに浮きから下に仕掛けの釣
り針を流す釣りを行う等の釣り糸に作用する負荷が小さい場合は記憶された糸巻き径より
大きな径で巻かれてしまう。このため、実際に巻き取り残っている釣り糸長さよりも小さ
な数値が表示されてしまう。
このため、前記従来の構成では、負荷があまり作用しない仕掛けの回収時等に実際に仕掛けが船縁位置まで巻き上げられているにもかかわらず、モータ制御装置が船縁位置まで巻き上げていないと判断するおそれがある。このような判断により、減速や停止の動作が遅れ、竿先のガイドに仕掛けが引っ掛かるおそれがある。仕掛けが竿先のガイドに引っ掛かると、ガイドが傷ついたり仕掛けの位置がずれたりするおそれがある。あるいは負荷が大きい状態で巻き上げた際には船縁で停止してから実際に仕掛けが手元に来るまで、モータを再駆動したり手で巻き足したりする必要がある。
本発明の課題は、釣り糸に作用する負荷に関わらず、船縁に仕掛けを正確に配置できるようにすることにある。
発明1に係る電動リールのモータ制御装置は、釣り糸が巻き付けられるスプールを駆動するモータを制御する装置であって、糸長計測手段と、負荷検出手段と、停止糸長設定手段と、モータ制御手段と、を備えている。糸長計測手段は、スプールから繰り出された釣り糸の糸長を計測する。負荷検出手段は、釣り糸に作用する負荷を検出する。停止糸長設定手段は、負荷検出手段の検出結果に応じて巻き上げ時にモータの回転を停止するための停止糸長を設定する。モータ制御手段は、糸長計測手段が計測した糸長が設定された停止糸長になるとモータの回転を停止する。
このモータ制御装置では、モータによりスプールが糸巻取方向に回転して釣り糸が巻き取られると、そのときに釣り糸に作用する負荷が負荷検出手段により、たとえばモータに流れる電流値等に基づいて検出される。そして、停止糸長設定手段では、負荷の大小に応じて、たとえば負荷が小さいときには、糸長計測手段の計測値が実際の糸長より短くなるので、負荷が大きい場合より船縁に仕掛けを配置するための停止糸長の設定値を長くする。すると釣り糸を巻き上げるとき、計測された糸長が停止糸長になると、モータの回転が停止して釣り糸の巻き上げが停止する。ここでは、釣り糸に作用する負荷に応じて停止糸長を設定できるので、負荷の大小に合わせて停止糸長を適切にする設定することができる。このため、釣り糸に作用する負荷に関わらず、船縁に仕掛けを正確に配置できるようになる。
発明2に係る電動リールのモータ制御装置は、発明1に記載の装置において、停止糸長設定手段は、巻き上げ時に負荷検出手段が検出した負荷が所定値より小さいとき、負荷が所定値を超える場合より停止糸長を長く設定する。この場合には、負荷が所定値より小さいときに所定値より大きいときより停止糸長を長く設定するので、釣り糸に作用する負荷に関わらず、さらに精度良く船縁に仕掛けを配置できるようになる。また、仕掛けが竿先のガイドに引っ掛かるのを防止できる。
発明3に係る電動リールのモータ制御装置は、発明2に記載の装置において、スプールの回転方向及び回転速度を検出する回転検出手段をさらに備え、停止糸長設定手段は、回転検出手段の検出結果をもとに巻き上げ時にモータが回転を開始して所定時間経過後から予め設定された第1糸長より長い第2糸長までに負荷検出手段で検出された負荷の平均値と所定値とを比較し、平均値が所定値より小さいとき、第1糸長より長く第2糸長より短い所定の第3糸長に停止糸長を設定する。この場合には、変動する負荷の平均値と所定値とを比較して停止糸長を設定するので、さらに精度良く船縁に仕掛けを配置できるようにすることになる。特に、第1糸長を標準的な停止糸長に設定すると、負荷が小さいときに、標準的な停止糸長より船縁停止位置が長くなるので、仕掛けを船縁に配置しやすくなる。また、仕掛けが竿先のガイドに引っ掛かるのを防止できる。
発明4に係る電動リールのモータ制御装置は、発明3に記載の装置において、平均値が所定値を超えるとき、先に設定された第1糸長以下の糸長に停止糸長を設定する。この場合には、負荷が所定値を超えて、仕掛けに獲物が掛かった場合には、計測された糸長と実際の糸長とのずれが小さいので、先に設定した停止糸長を使用し、船に応じた最適な位置に仕掛けを配置しやすくなる。
発明5に係る電動リールのモータ制御装置は、発明3又は4に記載の装置において、停止糸長設定手段は、モータ制御手段に電源が投入されたとき、停止糸長を第1糸長に設定する。この場合には、釣りを開始するときに、標準的な船縁停止位置に仕掛けを配置することができる。
発明6に係る電動リールのモータ制御装置は、発明3から5のいずれかに記載の装置において、停止糸長設定手段は、糸長計測手段の計測結果が第1糸長以下でかつ回転検出手段によりスプールの回転が所定時間以上停止していると判断したとき、そのときの糸長を停止糸長に設定する。この場合には、船の大きさなどで変化する船縁停止位置を釣り人が実際に停止させた位置に設定できるので、常に最適な船縁停止位置を設定できる。
発明7に係る電動リールのモータ制御装置は、発明5又は6に記載の装置において、停止糸長設定手段は、第3糸長でモータの回転が停止した後に釣り糸が繰り出されモータにより巻き上げらかつ平均値が所定値を超えるとき、次の停止糸長を第1糸長に設定する。この場合には、停止糸長が長い第3糸長に設定した後の巻き上げにおいて、仕掛けに魚が掛かったとき等の負荷の平均値が所定値を超えるときには、第3糸長より短い第1糸長に停止糸長が設定されるので、仕掛けが船縁に配置され、仕掛けに掛かった魚を取り込みやすくなる。
発明8に係る電動リールのモータ制御装置は、発明3から7のいずれかに記載の装置において、巻き上げ時に負荷検出手段と回転検出手段の検出結果によりモータの回転を減速するための減速糸長を設定する減速糸長設定手段をさらに備え、モータ制御手段は、減速糸長でモータの回転を減速する。この場合には、モータの回転の減速開始位置が巻き上げ速度だけでなく、負荷も考慮して設定されるので、たとえば低負荷高速巻き上げの場合では、仕掛けの水面からの飛び出し等がないように早めに減速するように設定し、高負荷低速巻き上げの場合には、遅めに減速するように設定することにより、設定された停止位置に精度良く停止しやすくなり、モータに作用する負荷やモータ回転数に関わらず巻き上げ時にたとえば船縁などの所定の位置に仕掛けを配置できるようになる。
本発明によれば、釣り糸に作用する負荷に応じて停止糸長を設定できるので、負荷の大小に合わせて停止糸長を適切にする設定することができる。このため、釣り糸に作用する負荷に関わらず、船縁に仕掛けを配置できるようになる。
本発明の一実施形態を採用した電動リールの平面図。 その電動リールの表示部周辺の平面図。 その電動リールの制御ブロック図。 記憶部の格納内容を示す図。 その電動リールのメインルーチンを示すフローチャート。 スイッチ入力処理を示すフローチャート。 各動作モード処理を示すフローチャート。 船縁停止位置設定処理を示すフローチャート。
本発明の一実施形態による電動リールは、図1に示すように、釣り竿Rに装着されるリール本体1と、リール本体1の側方に配置されたスプール回転用のハンドル2と、ハンド
ル2のリール本体1側に配置されたドラグ調整用のスタードラグ3とを主に備えている。
リール本体1は、左右1対の側板7a、7bとそれらを連結する複数の連結部材8とからなるフレーム7と、フレーム7の左右を覆う左右の側カバー9a、9bとを有している。ハンドル2側(図1の右側)の側カバー9bには、ハンドル2の回転軸が回転自在に支持され、ハンドル2と逆側(図1の左側)の側カバー9aには、バッテリ等の外部電源PS接続用の電源コード18を接続するためのコネクタ19が設けられている。
リール本体1の内部には、ハンドル2に連結されたスプール10が回転自在に支持されている。スプール10の内部には、スプール10を糸巻き上げ方向に回転駆動する直流駆動のモータ12が配置されている。また、リール本体1のハンドル2側側面には、クラッチ操作レバー11と、変更レバー13と、が配置されている。クラッチ操作レバー11は、ハンドル2及びモータ12とスプール10との駆動伝達をオンオフするクラッチ操作を行うために設けられている。このクラッチをオンすると、仕掛けの自重による糸繰り出し中に、糸繰り出し動作を停止できる。変更レバー13は、モータ12の回転をオン、オフするとともに、モータ12の回転を停止状態から最大回転状態まで揺動位置により指定するためのレバー部材である。変更レバー13は、たとえば、モータ12を停止からたとえば30段階の回転状態に調整できる。変更レバー13は、たとえばロータリエンコーダを有しており、その揺動角度により回転の段階を判別可能である。
リール本体1の上部にはカウンタケース4が固定されている。カウンタケース4は、リール本体1の上部に配置され、上面に表示窓20が形成されている。カウンタケース4の上面には、図2に示すように、表示窓20を介して仕掛けの水深や棚位置を水面からと底からとの2つの基準で表示するための液晶ディスプレイからなる表示部5が臨んでおり、表示部5の周囲にはスイッチ操作部6が設けられている。カウンタケース4の内部には、モータ12及び表示部5を制御するリール制御部30が設けられている。
表示部5は、中央に配置された4桁の7セグメント表示の水深表示領域5aと、その右下方に配置された3桁のメモ水深表示領域5bと、水深表示領域5aの左下方に配置された段数表示領域5cとを有している。段数表示領域5cは、変更レバー13の位置(段数)をたとえば30段階で表示する。
スイッチ操作部6は、表示部5の図下側に左右に並べて配置されたメニュースイッチMNと、0セット決定スイッチZDと、右側に配置されたメモスイッチMMとを有している。メニュースイッチMNは、押すごとに底・糸送の表示が順に点滅する。0セット決定スイッチZDを押すと点滅表示部分をオンオフできる。0セット決定スイッチZDは、メニュースイッチMNの操作で選択されたモードをオンオフする。また、長押し(たとえば3秒以上)すると仕掛けを表示部5の仕掛けの水深を0にセットする0セット処理を行える。0セット処理を行う場合、釣り人は仕掛けを水面に合わせる。メモスイッチMMは、魚が群れている棚又は海底の水深を後述する表示データ記憶エリア50に記憶する際に使用される。
リール制御部30は、カウンタケース4内に配置されたCPU、RAM、ROM、I/Oインターフェイス等を含むマイクロコンピュータを含んでいる。リール制御部30は、制御プログラムに従って表示部5の表示制御やモータ駆動制御等の各種の制御動作を実行する。リール制御部30には、図3に示すように、変更レバー13と、スイッチ操作部6の各種のスイッチと、スプールセンサ(回転検出手段の一例)41と、スプールカウンタ42と、電流値検出部(負荷検出手段の一例)43とが接続されている。また、リール制御部30には、ブザー44と、PWM駆動回路45と、表示部5と、記憶部46と、他の入出力部とが接続されている。
スプールセンサ41は、前後に並べて配置された2つのリードスイッチから構成されており、いずれのリードスイッチが先に検出パルスを発したかによりスプール10の回転方向を検出できる。また、検出パルスによりスプールの回転数を検出できる。スプールカウンタ42は、スプールセンサ41の検出パルスを計数するカウンタであり、この計数値によりスプール10の回転数に関する回転位置データが得られる。スプールカウンタ42は、スプール10が正転(糸繰り出し方向の回転)すると計数値が減少し、逆転すると増加する。この計数値により糸長を計測できる。電流値検出部43は、モータ12に流される電流を検出することにより釣り糸に作用する負荷(張力)を検出する。ブザー44は、警報音を鳴らすために使用される。PWM駆動回路45は、モータ12をPWM駆動するものであり、リール制御部30によりデューティ比が制御されてモータ12を速度及び釣り糸に作用する張力に応じて駆動する。
記憶部46はたとえばEEPROM等の不揮発メモリから構成されている。記憶部46には、図4に示すように、棚位置等の表示データを記憶する表示データ記憶エリア50と、実際の糸長とスプール回転数との関係を示す糸長データを記憶する糸長データ記憶エリア51と、段数SCに応じたスプール10の巻き上げ速度(rpm)及び巻き上げトルクの上限値を記憶する回転データ記憶エリア52と、種々のデータを記憶するデータ記憶エリア53とが設けられている。
回転データ記憶エリア52には、速度一定モードでの段数毎の最大デューティ比及び最小デューティ比のデータや張力一定モードでの最大電流値及び最小電流値が記憶されている。この実施形態では、たとえば、段数SCが1から4段までは、この実施形態では、スプール10の速度が徐々に速くなる速度一定モードに制御され、5段から30段までは、釣り糸に作用する張力が徐々に大きくなる張力一定モードで制御される。
データ記憶エリア53には糸長に関する各種のデータが格納されている。たとえば、第1糸長L1(たとえば、6m)、第2糸長L2(たとえば、21m)、第3糸長L3(たとえば、10m)、設定された船縁停止位置FNや船縁停止前の減速位置RXを設定するための速度係数データVA及び負荷係数データTBも格納されている。
次に、リール制御部30によって行われる具体的な制御処理を、図5以降の制御フローチャートに従って説明する。
電動リールが電源コード18を介して外部電源PSに接続されると、図5のステップS1において初期設定を行う。この初期設定ではスプールカウンタ42の計数値をリセットしたり、各種の変数やフラグをリセットしたりする。また、船縁停止位置FN(停止水深の一例)を標準的な船縁停止位置である第1糸長L1(たとえば、6m)にセットする。
次にステップS2では表示処理を行う。表示処理では、水深表示等の各種の表示処理を行う。ここで、段数表示領域5cに段数SCを表示する。
ステップS3では、後述する各動作モードで算出される水深LXが第1糸長L1以下か否かを判断する。ステップS4では、スイッチ操作部6のいずれかのスイッチが押されたか否かのスイッチ入力の判断を行う。またステップS5ではスプール10が回転しているか否かを判断する。この判断は、スプールセンサ41の出力により判断する。ステップS6では、その他の指令や入力がなされたか否かを判断する。
水深LXが第1糸長L1以下のときには、ステップS3からステップS7に移行する。ステップS7では、その水深で5秒以上停止しているか否かを判断する。6m以下の水深で5秒以上停止しているのは、船縁で釣った魚を取り込んだり、仕掛けに餌を付け直したりする等の動作を行っているときが多い。このため、5秒以上停止していると判断するとステップS8に移行し、そのときの水深LXを船縁停止位置FNにセットする。5秒未満の時はステップS7からステップS4に移行する。
スイッチ入力がなされた場合にはステップS4からステップS9に移行してスイッチ入力処理を実行する。またスプール10の回転が検出された場合にはステップS5からステップS10に移行する。ステップS10では各動作モード処理を実行する。その他の指令あるいは入力がなされた場合にはステップS6からステップS11に移行してその他の処理を実行する。
ステップSのスイッチ入力処理では図6のステップS15で変更レバー13が操作されたか否かを判断する。ステップS16では、メモスイッチMMが押されたか否かを判断する。ステップS17では、その他のスイッチが操作されたか否かを判断する。その他のスイッチの操作にはメニュースイッチMN、0セット決定スイッチZD等の操作を含んでいる。
変更レバー13が揺動操作されたと判断するとステップS15からステップS18に移
行する。ステップS18では、変更レバー13が段数SC=0に操作されたか否かを判断
する。ステップS19では、変更レバー13が段数SC=1−4段のいずれかに操作され
たか否かを判断する。ステップS20では、変更レバー13が段数SC=5−30段のい
ずれかに操作されたか否かを判断する。
変更レバー13がSC=0に操作されると、ステップS18からステップS21に移行し、モータ12を停止する。変更レバー13がSC=1−4のいずれかに操作されると、ステップS19からステップS22に移行する。ステップS22では、段数SCに応じたデューティ比で段数毎に設定された速度になるようにモータ12を速度一定制御する。変更レバー13がSC=5−30のいずれかに操作されると、ステップS20からステップS23に移行する。ステップS23では、段数SCに応じた電流値で段数毎に設定された張力になるようにモータ12を張力一定制御する。
メモスイッチMMが操作されると、ステップS16からステップS24に移行する。ステップS24では、メモスイッチMMが押圧されたときの水深を棚位置又は底位置として表示データ記憶エリア50に記憶する。
他のスイッチ入力がなされると、ステップS17からステップS25に移行し、たとえば、底からモードへの変更やモータ12を最大回転数で回転する等の操作されたスイッチ入力に応じた他のスイッチ入力処理を行う。
ステップS10の各動作モード処理では、図7のステップS31でスプール10の回転方向が糸繰り出し方向か否かを判断する。この判断は、スプールセンサ41のいずれのリードスイッチが先にパルスを発したか否かにより判断する。スプール10の回転方向が糸繰り出し方向と判断するとステップS31からステップS32に移行する。ステップS32では、スプール回転数が減少する毎にスプール回転数から記憶部46に記憶されたデータを読み出して水深(放出された糸長)LXを算出する。この水深LXがステップS2の表示処理で表示される。ステップS33では、得られた水深LXが棚又は底位置に一致したか、つまり、仕掛けが棚又は底に到達したか否かを判断する。棚又は底位置は、仕掛けが棚又は底に到達したときにメモスイッチMMを押すことで記憶部46の表示データ記憶エリア50にセットされる。ステップS34では、学習モード等の他のモードか否かを判断する。
水深が棚位置又は底位置に一致するとステップS33からステップS35に移行し、仕掛けが棚又は底に到達したことを報知するためにブザー44を鳴らす。他のモードの場合には、ステップS34からステップS36に移行し、指定された他のモードを実行する。他のモードではない場合には、各動作モード処理を終わりメインルーチンに戻る。
スプール10の回転が糸巻き取り方向と判断するとステップS31からステップS37に移行する。ステップS37では、スプール回転数から記憶部46に記憶されたデータを読み出して水深LXを算出する。この水深LXがステップS2の表示処理で表示される。
ステップS38では、船縁停止位置FNの設定処理を行う。ステップS38の船縁位置設定処理では、図8のステップS51で、タイマTMがスタートしているか否かを判断する。このタイマTMは、巻き上げ開始から負荷の測定を開始するまでの時間を計測するためのタイマであり、この実施形態では、巻き上げ開始からの時間を2秒に設定している。ここで、巻き上げ開始から2秒後に負荷を検出するようにした理由は、巻き上げ直後は、モータ12の加速などによりモータ12に流れる電流値が大きくなり安定しないからである。
ステップS52では、すでにタイマTMがタイムアップしている、すなわち、巻き上げ開始から2秒以上経過したか否かを判断する。ステップS53では、水深LXが第1糸長L1より15m手前の第2糸長L2(たとえば、21m)まで釣り糸が巻き上げられたか否かを判断する。この判断は、負荷の測定を終了するか否かを判断するために使用される。ステップS53が終わると、各動作モード処理に戻る。
タイマTMがスタートしていない場合は、ステップS51からステップS54に移行し、タイマTMをスタートさせ、ステップS52に移行する。ステップS55では、変数N及び変数SSを0にリセットする。変数Nは、負荷の測定回数を計数する変数であり、変数SSは、負荷の合計を算出するための変数である。
タイマTMがタイムアップしていると判断すると、ステップS52からステップS56に移行する。ステップS56では、変数Nを1インクリメントする。ステップS57では、電流値検出部43からの電流値を読み込み、それを負荷として取り込む。なお、電流値の読み込みタイミングは、たとえば1秒ごとに行われる。ステップS58では、取り込んだ張力TNを変数SSに加算し、新たな変数SSを算出し、ステップS53に移行する。
第2糸長L2まで釣り糸が巻き取られると、ステップS53からステップS59に移行する。ステップS59では、検出された負荷の合計を示す変数SSから負荷の平均値ST(ST=SS/N)を算出する。ステップS0では、算出した負荷の平均値STが予め設定された所定負荷Ts(たとえば、5A)を超えているか否かを判断する。
負荷の平均値STが所定負荷Tsより小さいと判断すると、ステップS60からステップS61に移行する。ステップS61では、負荷の平均値STが所定負荷Tsより小さい旨を示すフラグFFをセットする。ステップS62では、船縁停止位置FNを第3糸長L3(たとえば、10m)、つまり標準的なの船縁停止位置である第1糸長L1(たとえば、6m)より大きな値に設定する。すなわち、釣り糸に作用する負荷が小さいときには、負荷が大きいときより船縁停止位置FNを大きくしている。ステップS62が終了すると各動作モード処理に戻る
負荷の平均値STが所定負荷Tsを超えていると判断すると、ステップS60からステップS63に移行する。ステップS63では、フラグFFがセットされているか否かを判断する。この判断は、もし、フラグFFがセットされている場合は、この前に巻き上げたときに負荷が小さかったということである。この場合、船縁停止位置FNが第3糸長L3である10mにセットされているので、魚が仕掛けに掛かっている場合、仕掛けが船縁の下方に配置され、魚を取り込みにくくなる。フラグFFがセットされている場合は、ステップS63からステップS64に移行し、フラグFFをリセットする。ステップS65では、船縁停止位置FNを第1糸長L1(たとえば、6m)にセットし、各動作モード処理にもどる。また、フラグFFがセットされていない場合は、各動作モード処理に戻る。
図7の各動作モード処理のステップS39では、水深LXが船縁停止位置FNより10m手前にきたか、つまり、仕掛けがあと10mで船縁停止位置FNに至る位置まで巻き上げられたか否かを判断する。この判断は減速位置RXを設定するために使用される。すなわち、巻き上げ毎に減速位置RXを設定するのは無駄であるので、この位置まで巻き上げれば本当に船縁まで巻き上げると判断している。
ステップS40では、算出結果に基づく水深LXが減速位置RXに一致したか否かを判断する。ステップS41では、算出結果に基づく水深LXが船縁停止位置FNに一致したか否かを判断する。
水深LXが船縁停止位置FNより10mの水深に一致すると、ステップS39からステップS42に移行する。ステップS42では減速位置RXがすでに設定されているか否かを判断する。ステップS42で、すでに減速位置RXがセットされていると判断した場合には、ステップS40に移行する。減速位置RXがセットされていないと判断した場合には、ステップS43に移行し、減速位置RXをセットし、ステップS40に移行する。
この減速位置RXは、スプールセンサ41の検出結果に基づくスプール回転速度データDVと、電流値検出部43の検出結果に基づく負荷(張力TN)とにより決定される。減速度を同じに設定しても、負荷が小さくなると実際の減速度は小さくなる。このため、船縁停止位置FNからの減速を開始する糸長データ(水深)としての減速位置RXを回転速度と負荷とにより決定している。具体的には、減速位置RXは、下記式により決定される。
RX=FN+2×(VA×DV−TB×TN)
ここで、VAは、速度係数データであり、TBは、負荷係数データである。なお、(VA×DV−TB×TN)の値は、たとえば0.5〜1.5の間で変化するように速度係数データVA及び、負荷係数データTBが設定されている。
したがって、減速位置RXは、船縁停止位置FNよりたとえば2m手前の位置を基準にして速度が速くなりトルクが小さくなると船縁停止位置FNからたとえば最大3m離れた減速位置になり、速度が遅くなりトルクが大きくなると船縁停止位置FNにたとえば最小1mまで近づいた減速位置になる。オーバーランを防ぐため、トルクが小さくかつ速度が速いときには減速位置RXを基準位置より深い水深側に大きく変化させ、トルクが大きく速度が遅いときには、減速位置RXを基準位置より浅い水深側に大きく変化させる。このように減速位置RXを速度及びトルクに応じて設定することにより、張力一定制御時に仕掛けを回収するときなどの低負荷高速時であっても、減速位置RXが船縁停止位置FNより大きく離れ、船縁停止位置FNに仕掛けが配置されやすい。船縁停止位置FNより10mの水深まで巻き取っていない場合にはステップS39からステップS40に移行する。
水深LXが減速位置RXに到達する、つまり減速位置RXまで仕掛けが巻き上げられるとステップS40からステップS44に移行する。ステップS44では、減速位置RXをリセットする。これにより次回の巻き上げ時には新たな減速位置RXがセットされる。ステップS45では、モータ12の回転を所定の減速度で減速し、ステップS41に移行する。減速位置RXまで巻き取っていない場合にはステップS40からステップS41に移行する。
船縁停止位置FNに到達するとステップS41からステップS46に移行する。ステップS46では、仕掛けが船縁にあることを報知するためにブザー44を鳴らす。ステップS47では、モータ12をオフする。これにより魚や釣れたときや仕掛けを回収して餌を交換するときに、取り込みやすい位置に魚や仕掛けが配置される。船縁停止位置FNまで巻き取っていない場合にはメインルーチンに戻る。
<特徴>
(A)釣り糸に作用する負荷に応じて船縁停止位置(停止糸長)FNを設定できるので、負荷の大小にあわせて船縁停止位置FNを適切にする設定することができる。このため、釣り糸に作用する負荷に関わらず、船縁に仕掛けを正確に配置できるようになる。
(B)負荷が所定値より小さいときに所定値より大きいときより船縁停止位置FNを長く設定するので、釣り糸に作用する負荷に関わらず、仕掛けが竿先に引っ掛からずに船縁に仕掛けを正確に配置できるようになる。
(C)変動する負荷の平均値STと所定値Tsとを比較して船縁停止位置FNを設定するので、さらに精度良く仕掛けが竿先に引っ掛からずに船縁に仕掛けを正確に配置できるようになる。特に、第1糸長L1を標準的な船縁停止位置FNに設定すると、負荷が小さいときに、船縁停止位置FNが標準的なものより長くなるので、仕掛けを船縁に配置しやすくなる。また、仕掛けが竿先のガイドに引っ掛かるのを防止できる。
(D)負荷の平均値STが所定値Tsを超えるとき、先に設定された第1糸長L1以下の糸長に船縁停止位置FNを設定する。このため、負荷の平均値STが所定値Tsを超えて、仕掛けに獲物が掛かった場合には、計測された糸長と実際の糸長とのずれが小さいので、先に設定した船縁停止位置FNを使用し、船に応じた最適な位置に仕掛けを配置しやすくなる。
(E)リール制御部30に電源が投入されたとき、船縁停止位置FNを第1糸長L1である6mに設定しているので、釣りを開始するときに標準的な船縁停止位置FNに仕掛けを配置することができる。
(F)糸長が6m(第糸長)以下でかつスプール10の回転が所定時間(たとえば5秒)以上停止していると判断したとき、そのときの糸長を船縁停止位置FNに設定している。このため、船の大きさなどで変化する船縁停止位置FNを釣り人が実際に停止させた位置に設定できるので、常に最適な停止位置を設定できる。
(G)船縁停止位置FNが長い第3糸長L3に設定した後の巻き上げにおいて、仕掛けに魚が掛かったとき等の負荷の平均値が所定値を超えるときには、第3糸長L3より短い第1糸長L1に船縁停止位置FNが設定されるので、仕掛けが船縁に配置され、仕掛けに掛かった魚を取り込みやすくなる。
(H)船縁まで仕掛けを巻き上げるときには、釣り糸に作用する負荷と、モータ12の速度(スプール10の回転速度)と、を考慮して減速位置をずらしてモータ12を減速している。このため負荷や速度が変動しても仕掛けを船縁に確実に配置できるようになる。
<他の実施形態>
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
(a)前記実施形態では、釣り糸に作用する負荷の平均値STと設定負荷Tsとを比較して船縁停止位置FNを変更したが、本発明はこれに限定されない。たとえば、ある糸長での負荷と設定負荷とを比較して船縁停止位置を変更してもよい。
(b)前記実施形態では、負荷の検出開始を巻き上げ開始してから2秒後に設定したが、本発明はこれに限定されない。また、第1糸長L1を6m、計測を終了するための第2糸長L2を第1糸長L1の15m手前の21m及び第3糸長L3を10mに設定したが、これらの数値は一例であり、本発明はこれらの数値で限定されない。例えば繰り出した糸長の最大値が50m以下であれば第3糸長L3を8mにし、200m以上であれば第3糸長L3を15mにするなど、繰り出した糸長の最大値に応じて第3糸長L3の値を変化させても良い。あるいは検出された負荷と繰り出された糸長から第3糸長L3を演算で求めても良い。いずれの場合でも第1糸長L1と第2糸長L2と第3糸長L3との関係は、L2>L3>L1が好ましい。
(c)前記実施形態では、船縁停止位置より10m手前で減速位置をセットしたが、減速位置のセットを巻き上げ中であればどこでもよい。また、減速位置の基準を2mに設定したが、これは一例であり基準位置は2mに限定されない。
(d)前記実施形態では、釣り糸に作用する負荷をモータ12に流れる電流値により負荷を判断したが、本発明はこれに限定されない。たとえば、モータ12に作用するトルクをトルクセンサにより検出し、それを釣り糸に作用する負荷として用いてもよい。また、釣り糸に作用する張力を直接検出し、それを釣り糸に作用する負荷として用いてもよい。
(e)前記実施形態では、負荷が所定値よりも小さい場合を説明したが、逆に負荷が所定値より大きい場合には第1糸長L1よりも短い第4糸長(たとえば、4m)で巻き上げを停止するようにしても良い。この場合にも、6m以下の水深で5秒以上停止していた水深LXを新たな船縁停止位置FNとし、次に巻き上げた際の負荷が所定値以下であれば第1糸長L1で停止させることが望ましい。
(f)前記実施形態の図5から図8のフローチャートは、モータ制御装置の処理手順の一例を示すものであり、本発明は、これらの処理手順に限定されない。
10 スプール
12 モータ
30 リール制御部
41 スプールセンサ(回転検出手段の一例)
43 電流値検出部(負荷検出手段の一例)
46 記憶部
53 データ記憶エリア

Claims (1)

  1. 前記停止糸長設定手段は、前記モータ制御手段に電源が投入されたとき、前記停止
    糸長を前記第1糸長に設定する、請求項3又は4に記載の電動リールのモータ制御装置。
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